JP4182924B2 - 複列ころ軸受用保持器の設計方法 - Google Patents
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Description
上記各くし形保持器4は、図1及び図2に示すように、ころ端面3aと軸方向で対向する環状部5と、その環状部5の軸方向片側から突出してころ転動面3bと対向して周方向に並ぶ複数の柱部7とからそれぞれ構成される。上記環状部5と柱部7、7で囲まれた空間は、ころ3を収納するポケット8と呼ばれ、保持器4ところ3の間に所定のすきまを設けることによって、ころ3は転動自在に当該保特器4に保持される。
以下の説明では、図2のように環状部5の軸方向片側から柱部7が突出する形状のくし形保持器を二体型、図3のように環状部5の軸方向両側から柱部7が突出する形状のくし形保持器を一体型と呼ぶ場合もある。
上記亀裂は、環状部5と柱部7との連結部に発生するので、この保持器4の破損を防止して軸受の寿命の劣化を防止するためには、上記ラジアル方向からの荷重W’によって当該連結部に生ずる曲げ応力を、緩和する必要がある。
上記亀裂も、環状部5と柱部7との連結部に発生するので、この保持器4の破損を防止して軸受の寿命の劣化を防止するためには、上記周方向からの荷重Wによって当該連結部に生ずる曲げ応力を緩和する必要がある。
σ1 ’=M1 ’・e1’/I1’ ・・・(1)
σ3 ’=M3 ’・e3’/I3’ ・・・(2)
I1 ’=∫A1y1 2dA1 ・・・(3)
I3 ’=∫A3y3 2dA3 ・・・(4)
上記(3)、(4)式中のA1 、A3は、それぞれ環状部5、及び柱部7の各断面積である。
また、上記(1)、(2)式中のe1 ’、e3’は、後述するように、後述の各座標系における図心から断面周縁までの距離の最大値である。
そして、上記(1)式中のe1 ’は、上記環状部5の柱部側の断面周縁におけるy1座標の最大値を表す。また、上記(2)式中のe3’は、上記柱部7の断面周縁におけるy3座標の絶対値の最大値を表す。
なお、柱部7の断面形状が、軸方向に亙って変化しない場合、柱部7の断面二次モーメントも軸方向に亙って変化しないので、その断面二次モーメントの値をもってI3 ’とするが、柱部7の断面形状が、軸方向に亙って変化する場合、柱部7の断面二次モーメントも軸方向に亙って変化する。その場合、I3 ’とは、柱部7における、環状部5との連結部分Cでの断面二次モーメントであるものとする。
I3 ’を大きくすることで、各応力σ1’、σ3 ’が小さくなることが分かる。
また、上記ころ3から作用する円周方向からの荷重Wによって、図5に示すように、環状部5と柱部7との連結部にモーメントMが作用する。環状部5と柱部7の連結部における環状部5のA部分に生じる曲げ応力をσ1、環状部5と柱部7の連結部における柱部7のC部分に生じる曲げ応力をσ3とすると、各曲げ応力σ1 、σ3 は材料力学的な力の釣り合い条件等から次式で表わされる。
σ1 =M・e1/(2I1)・・・(5)
σ3 =M・e3/I3 ・・・(6)
I1 =∫A1z1 2dA1 ・・・(7)
I3 =∫A3z3 2dA3 ・・・(8)
上記(7)、(8)式中のA1 、A3はそれぞれ環状部5、柱部7の各断面積である。また、上記(5)、(6)式中のe1、e3 は、後述するように、それぞれ後述の各座標系における図心から断面周縁までの距離の最大値である。
さらに、上記各断面二次モーメントI1 、I3の座標系については、上述と同様に、次のように定義したものである。
なお、くし形保持器にあっては、柱部7の断面形状は、軸方向に亙って変化しないようにするのが一般的であるが、例えば自動調心ころ軸受用保持器等のように、柱部7の断面形状が軸方向に亙って変化する場合もある。このような場合は、I3とは、柱部7における、環状部5との連結部分Cでの断面二次モーメントであるものとする。
以上のことから、従来にあっては、環状部5及び柱部7の全ての断面を大きくすることで、断面二次モーメントI1 ’及びI3 ’若しくはI1 及びI3 の少なくとも一方の断面二次モーメントの組を大きく設定して、保持器4の強度を向上させ、破損が生ずることを防止している。
このため、いずれの形式の保持器であっても、保持器や使用される軸受用途に関係なく、環状部5および柱部7の断面二次モーメントI1’、I3 ’の全て、若しくは断面二次モーメントI1、I3 の全てが大きくなるように設計すると、ころ3を保持する空間容積(ポケット8の大きさや数)が小さくなるため、保持器4の強度を高めるにつれて、軸受内に組み込めるころ3の数が少なくなったり、ころ3の寸法を小さくする必要が生じて、軸受の負荷能力が低下するという問題がある。また、必要以上に保持器の重量増大に繋がる。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、保持器を組み込む軸受の負荷能力を低下させることなく、保持器の強度を向上させることが可能なころ軸受用保持器の設計方法の提供を課題とする。
柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3’としたときに、
(I1’/I3’)を、保持器の環状部の曲げ応力と柱部の曲げ応力とが互いに大きく異ならないように、軸受及び保持器の構造に応じて所定の範囲に設定することにより最適設計することを特徴とするころ軸受用保持器の設計方法を提供するものである。
本発明では、ころから作用する荷重方向を考慮しつつ保持器の形式に応じて、各環状部の曲げ応力、及び柱部の曲げ応力が互いに大きく異ならないように設計されるため、軸受の負荷能力を低下させることなく保持器の強度が向上する。
ここで、軸受のラジアル方向(半径方向)及び円周方向の各荷重が、単独若しくは合成荷重として、組み込む軸受の使用部位によって作用するが、個々の荷重に対する根拠に分けて以下、説明する。
まず、保持器のラジアル方向への振動によって、ころから保持器に対し、ラジアル方向からの荷重W’が負荷される場合を説明する。
これとは逆に、柱部7の曲げ応力σ3 ’が環状部5の曲げ応力σ1’に比べて非常に大きい場合、つまりσ3’≫σ1’の場合には、保持器4の折損は柱部7のC部分で生ずるから、その強度を向上させるために柱部7の断面二次モーメントI3’を大きくする一方で、ころ3を保持する空間容積が小さくならないように、環状部5の断面二次モーメントI1’を小さくすれば良い。
従来のように保持器4の各部の断面二次モーメントの全てを大きくして保持器4の強度を上げるのではなく、本発明は、曲げ応力が大きくなる部分の断面二次モーメントだけを大きくして保持器全体の負荷能力を高めた最適設計を行うことを考えたものである。
そして、この観点から、本発明は、設計上とり得る範囲の各部の寸法諸元値から曲げ応力の最大値が最小となる(I1 ’/I3’)を規定した。
無次元最大曲げ応力(σ’/σ0 ’)と、(I1 ’/I3’)の関係を材料力学モデルに基づいて計算したところ、図6に示す結果を得た。
ここで、無次元最大曲げ応力(σ’/σ0 ’)で考えたのは、無次元化することにより、どのような大きさの荷重にも適用できて汎用性が高まるためである。
また、σ0 ’は、一対の環状部5を剛体とみなしたときの、柱部7に生じる最大曲げ応力である。
ここで、図4(B)に示すように、d1 は、円周方向で隣り合う2個の柱部7,7の円周方向距離である。なお、上記円周方向で隣り合う2個の柱部7,7は、保持器が一体型の場合には、図3に示すように、環状部5に対して保持器の軸方向の互いに反対の側面から突出する。
そして、大部分のくし形のころ軸受用保持器においては、寸法の諸元から可能な範囲は、それぞれ(e1’/e3’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.2〜3.0であることに基づき、図6は、(e1’/e3’)=1.0〜1.8、(d1/d3’)=0.2〜3.0の範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)の各パラメータをランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と、上記(σ’/σ0’)の最小値との関係を求めたものである。
これに基づき、本発明では、0.2≦(I1 ’/I3 ’)≦2.5と規定した。
ここで、図6中の×印は、(e1 ’/e3’)及び(d1/d3 ’)のいずれかが、それぞれ(e1’/e3’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.2〜3.0の範囲に入らない場合における、(σ’/σ0’)を最小にする(I1 ’/I3 ’)を求めた例である。(I1 ’/I3’)が上記範囲(I1’/I3’)=0.2〜2.5に入っていないが、このような保持器は、(e1’/e3’)もしくは(d1 /d3 ’)の値が実際に用いられない、非実用的な寸法のものである。
(e1’/e3 ’)=1.0〜1.1、(d1 /d3’)=0.6〜2.2の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と、上記(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図7に示す。
(σ’/σ0 ’)が最小になり、複列円筒ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、複列円筒ころ軸受用の二体型保持器としては、
0.3≦(I1’/I3 ’)≦1.1となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
(e1 ’/e3 ’)=1.0〜1.1、(d1/d3 ’)=0.6〜1.8の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と上記(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図8に示す。
(σ’/σ0 ’)が最小になり、複列円筒ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、複列円筒ころ軸受用の一体型保持器としては、
0.3≦(I1 ’/I3 ’)≦0.9となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
(e1’/e3 ’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.6〜3.0の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と上記(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図9に示す。
さらに、大部分の自動調心ころ軸受において、保持器が一体型の場合には、(e1’/e3 ’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.2〜1.2の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と上記
(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図10に示す。
なお、図6〜図10から分かるように、(I1’/I3 ’)の値が小さくなるほど、(σ’/σ0’)の値も大きくなり、不利になることが明らかであり、耐衝撃性が弱くなる。したがって、使用される条件に応じて、上記各範囲内で(I1’/I3 ’)の値を大きく設定することが望ましい。
本発明は、従来のように保持器4の各部の断面二次モーメントの全てを大きくして保持器4の強度を上げるのではなく、曲げ応力が大きくなる部分の断面二次モーメントだけを大きくして、保持器全体の負荷能力を高めた最適設計を行うことを考えたものである。
そして、この観点から、本発明は、設計上とり得る範囲の各部の寸法諸元値から曲げ応力の最大値が最小となる(I1/I3 )を規定した。
無次元最大曲げ応力(σ/σ0 )と(I1/I3 )の関係を材料力学モデルに基づいて計算したところ、図11に示す結果を得た。ここで、無次元最大曲げ応力(σ/σ0)で考えたのは、無次元化することにより、いかなる大きさの荷重にも適用できて汎用性が高まるためである。
また、上記σは、上述の定義に基づく、環状部5と柱部7の連結部における環状部5の曲げ応力σ1と、環状部5と柱部7の連結部における柱部7の曲げ応力σ3のうちの最大のものである。このσが小さいほど、ころ3と柱部7の衝突による保特器4の破損は生じ難いことを表している。また、σ0は環状部5を剛体とみなしたときの、柱部7に生じる最大曲げ応力である。
ここで、図2に示すように、d1 は、円周方向で隣り合う二個の柱部7、7間の円周方向距離である。なお、上記円周方向で隣り合う2個の柱部7,7は、保持器が一体型の場合には、図3に示すように、環状部5に対して保持器の軸方向の互いに反対の側面から突出する。
そして、大部分のころ軸受用保持器においては、(e1/e3 )=0.6〜3.2、(d1 /d3 )=0.2〜3.0であるから、この範囲(e1/e3 )=0.6〜3.2、(d1/d3 )=0.2〜3.0の範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )の各パラメータをランダムに変化させて、(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めたものが、上記図11である。
これに基づき、本発明では、0.3≦(I1/I3 )≦1.6と規定した。
ここで、図11中の×印は、(e1 /e3)が(e1 /e3 )=0.6〜3.2の範囲に入らない場合における、(σ/σ0)を最小にする(I1 /I3 )を求めた例である。この場合の(I1/I3 )は上記範囲(I1 /I3)=0.3〜1.6に入っていないが、このような保特器は、(e1/e3 )の値が実際に用いられない、非実用的な寸法のものである。
また、大部分の複列円筒ころ軸受において、保特器が一体型の場合には、(e1 /e3 )=1.4〜3.2、(d1/d3 )=0.6〜1.8の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めてみた。その結果を図13に示す。
また大部分の自動調心ころ軸受において、保持器が二体型の場合には、(e1/e3 )=1.0〜3.0、(d1/d3 )=0.6〜3.0の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )をパラメータとしてランダムに変化させて、
(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めてみた。その結果を図14に示す。
さらに、大部分の自動調心ころ軸受において、保持器が一体型の場合には、
(e1/e3 )=0.6〜2.0、(d1/d3 )=0.2〜1.2の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )をパラメータとしてランダムに変化させて(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めてみた。その結果を図15に示す。
なお、図11〜図15から分かるように、(I1/I3 )の値が大きくなるほど、(σ/σ0)の値も大きくなり、不利になることが明らかであり、耐衝撃性が弱くなる。したがって、使用される条件に応じて、(I1/I3 )の値を小さく抑えることが望ましい。
(I1 ’/I3 ’)の両方がそれぞれ上記範囲に入るように設定すればよい。
そして、環状部5、柱部7の各断面二次モーメントI1’、I3 ’が0.2≦(I1 ’/I3 ’)≦2.5となるように、環状部5及び柱部7の幅を設定した。
これによって、ポケット8の数及び各ポケット8の空間の大きさをさほど小さくすることなく、保持器4の強度が向上した。
すなわち、環状部5の曲げ応力と柱部7の曲げ応力が互いに大きく異ならないように最適設計がなされたため、軸受の負荷能力を低下させることなく、ころ3と柱部7の衝突による保持器4の破損を生じ難くすることができた。
そして、環状部5、柱部7の各断面二次モーメントI1、I3 が0.3≦(I1 /I3 )≦1.6となるように、環状部5及び柱部7の幅を設定した。
これによって、ポケット8の数及び各ポケツトの空間の大きさをさほど小さくすることなく、保持器4の強度が向上した。
すなわち、環状部5の曲げ応力と柱部7の曲げ応力が互いに大きく異ならないように最適設計がなされたため、軸受の負荷能力を低下させることなく、ころ3と柱部7の衝突による保持器4の破損を生じ難くすることができた。
[実施例1]
上記第1の実施形態に基づき形成した本発明に基づく、くし形の保持器と、従来のくし形の保持器とを比較する落下衝撃試験を行ったところ、図16に示す結果を得た。
保持器の形式は、二体型くし形保持器である。また、試験に用いた軸受は、自動調心ころ軸受である。
軸受Aは従来の保持器を用いており、(I1 ’/I3 ’)=3.4となっていた。また、軸受Bはいずれも本発明に基づいて作成した保持器であって、(I1 ’/I3 ’)=1.1に設定したものである。
図16に示すように、軸受Bに組み込まれた本発明に基づく保持器の全てに亙って、破損までの衝撃繰り返し数が軸受Aに比べて大幅に大きい。このように、本発明が保持器の破損防止に好適であることがわかる。
次に、上記第2実施形態に基づき形成した本発明に基づく、くし型の保持器と、従来のくし型の保持器とを比較する落下衝撃試験を行ったところ、図17に示す結果を得た。
保持器の形式は、一体型くし形保持器である。また、試験に用いた軸受は自動調心ころ軸受である。
軸受Aはいずれも従来の保持器を用いており、(I1/I3 )=2.07となっていた。また軸受Bはいずれも本発明に基づいて作成した保持器であって、(I1/I3 )=1.0に設定したものである。
図17に示すように、軸受Bに組み込まれた本願発明に基づく保持器は、全てに亘って破損までの衝撃繰り返し数が軸受Aに比べて大幅に大きい。このように、本発明が保持器の破損防止に好適であることがわかる。
試験に用いた軸受は、保持器以外は同一条件の自動調心ころ軸受であり、その軸受に組み込む保持器の(I1/I3)の値を図18に示すように変更して作成したものである。なお、図18に示す結果は、同一の(I1/I3)の値を持つ保持器を組み込んだ各軸受について、それぞれ3回実施しその平均値をとったものである。
ここで、(e1 /e3 )及び(d1/d3 )の値は、各(I1/I3)において(σ/σ0 )が最小値をとるように設定してある。
ここで、軸受Dの保持器の(I1/I3)は、本発明の対象外である図18における×印で示したもの、つまり寸法設計上に無理がある保持器を参考に示してある。つまり、設計上、負荷容量が下がるか、軸受の省スペースの点で無理のある軸受となるものである。すなわち、(I1/I3)を0.3よりも小さくすることは、(柱部の断面二次モーメントI3)≫(環状部の断面二次モーメントI1 )となって、環状部の軸方向の幅を小さく且つ柱部の円周方向の幅を大きく設定することとなる。このことから、同一の数だけころを組み込むために、保持するころの径を小さくしてあり、軸受A〜軸受Cと比べ負荷容量が小さくなっている。つまり(I1/I3 )を小さくしすぎると軸受の負荷容量が下がり、その対策としては軸受の幅を大きくつまり軸受自体を大型化せざるを得なく設計上の制限となる。
したがって、使用される条件に応じて、(I1/I3 )の値をできるだけ小さく抑えることが望ましい。ただし、上述のように現実に要求される負荷容量及び軸受の大型化の点から(I1/I3 )の値を0.3以上とする必要がある。
Claims (15)
- 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側又は両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形のころ軸受用保持器の設計方法において、
柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3’としたときに、
(I1’/I3’)を、保持器の環状部の曲げ応力と柱部の曲げ応力とが互いに大きく異ならないように、軸受及び保持器の構造に応じて所定の範囲に設定することにより最適設計することを特徴とするころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向片側のみから柱部が突出する保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.3≦(I 1 ’/I 3 ’)≦1.1の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向両側から柱部が突出する保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.3≦(I 1 ’/I 3 ’)≦0.9の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向片側のみから柱部が突出する保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.3≦(I 1 ’/I 3 ’)≦2.5の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向両側から柱部が突出する保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.2≦(I 1 ’/I 3 ’)≦1.0の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側又は両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形のころ軸受用保持器の設計方法において、
柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3としたときに、
(I1/I3)を、保持器の環状部の曲げ応力と柱部の曲げ応力とが互いに大きく異ならないように、軸受及び保持器の構造に応じて所定の範囲に設定することにより最適設計することを特徴とするころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向片側のみから柱部が突出する保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.3≦(I 1 /I 3 )≦0.9の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向両側から柱部が突出する保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.7≦(I 1 /I 3 )≦1.6の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向片側のみから柱部が突出する保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.5≦(I 1 /I 3 )≦1.5の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 上記環状部の軸方向両側から柱部が突出する保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器の設計方法において、
0.3≦(I 1 /I 3 )≦1.0の条件を満足することを特徴とする請求項6に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3としたときに、
(I1 /I3)を、保持器の環状部の曲げ応力と柱部の曲げ応力とが互いに大きく異ならないように、軸受及び保持器の構造に応じて所定の範囲に設定することにより最適設計することを特徴とする請求項1に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 としたときに、
0.3≦(I 1 /I 3 )≦0.9の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 としたときに、
0.7≦(I 1 /I 3 )≦1.6の条件を満足することを特徴とする請求項3に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 としたときに、
0.5≦(I 1 /I 3 )≦1.5の条件を満足することを特徴とする請求項4に記載のころ軸受用保持器の設計方法。 - 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 としたときに、
0.3≦(I 1 /I 3 )≦1.0の条件を満足することを特徴とする請求項5に記載のころ軸受用保持器の設計方法。
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