JP3596467B2 - 複列ころ軸受用保持器 - Google Patents

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Description

【0001】
技術分野
本発明は、鉄道車両の車軸や振動篩等のように、大きな振動を伴う位置で用いられるころ軸受、つまり少なくとも軸受ラジアル方向の振動を繰り返し受けるような箇所で使用されるころ軸受に係り、特にそのころ軸受に組み込まれるくし形の保持器に関する。
【0002】
背景技術
車両や各種産業機械等では回転軸を支承するために、ころ軸受が広く使用されている。このころ軸受は、例えば図1に示すように、内周面に外輪軌道1aを有する外輪1と、外周面に内輪軌道2aを有する内輪2と、上記外輪軌道1aと内輪軌道2aとの間に転動自在に組み込まれる複数個のころ3と、この複数個のころ3を保持した状態で、上記外輪軌道1aと内輪軌道2aとの間に回転自在に介装される保持器4とを備える。
上記複数のころ3は、外輪軌道1aと内輪軌道2aとの間に複列に配置され、各列のころ3が個別のくし形保持器4によって保持されている。つまり、図1は、2個のくし形保持器4を備えるものの例である。
上記各くし形保持器4は、図1及び図2に示すように、ころ端面3aと軸方向で対向する環状部5と、その環状部5の軸方向片側から突出してころ転動面3bと対向して周方向に並ぶ複数の柱部7とからそれぞれ構成される。上記環状部5と柱部7、7で囲まれた空間は、ころ3を収納するポケット8と呼ばれ、保持器4ところ3の間に所定のすきまを設けることによって、ころ3は転動自在に当該保特器4に保持される。
ここで、上記のような複列のころ3を有するころ軸受においては、図1に示すように、各ころ3の列毎に個別の保持器4を組み込む場合には、上記図2のように環状部5の軸方向片側からのみ柱部7が突出する形状のくし形保持器が2個用いられる。一方、複列のころ3を1個の保持器で保持する場合には、図3のように環状部5の軸方向両側からそれぞれ柱部7が突出する形状のくし形保持器が用いられる。
【0003】
以下の説明では、図2のように環状部5の軸方向片側から柱部7が突出する形状のくし形保持器を二体型、図3のように環状部5の軸方向両側から柱部7が突出する形状のくし形保持器を一体型と呼ぶ場合もある。
ところで、前述のような保持器4を備えるころ軸受を、車両の車軸や駆動装置、製鉄用圧延機、あるいは振動篩等のような、大きな振動を伴う箇所で用いた場合には、保持器4が軸受のラジアル方向に繰り返し振動し、保持器4の柱部7がころ3に何度も衝突する。このような衝突によって、図4に示すように、ころ3から保持器4の柱部7に対しラジアル方向の荷重W’が作用し、当該保持器4は図4(B)(C)のように変形する。
【0004】
このように、曲げ応力が環状部5および柱部7に繰り返して負荷されると、長期の使用によって、環状部5または柱部7に亀裂が発生して、保持器4に破損が生ずるのみならず、軸受が回転不能になることがある。
上記亀裂は、環状部5と柱部7との連結部に発生するので、この保持器4の破損を防止して軸受の寿命の劣化を防止するためには、上記ラジアル方向からの荷重W’によって当該連結部に生ずる曲げ応力を、緩和する必要がある。
【0005】
また、前述のような保持器4を備えるころ軸受を、急激な加減速や負荷変動が繰り返される箇所で用いた場合には、ころ3の公転速度が急激に変化するため、当該ころ3が、保持器4の柱部7に何度も衝突する。このような衝突によって、周方向から作用する荷重Wが、図2に示すように、ころ3から保持器4の柱部7に作用し、当該保持器4は図5に示すように変形する。
【0006】
このように、曲げ応力が環状部5および柱部7に繰り返して負荷される場合も、長期の使用によって、環状部5または柱部7に亀裂が発生して、保持器4に破損が生ずるのみならず、軸受が回転不能になることがある。
上記亀裂も、環状部5と柱部7との連結部に発生するので、この保持器4の破損を防止して軸受の寿命の劣化を防止するためには、上記周方向からの荷重Wによって当該連結部に生ずる曲げ応力を緩和する必要がある。
【0007】
ここで、保持器4が振動によって図4(A)中の白抜きの矢印方向に移動すると、ころ3から作用するラジアル方向の荷重W’によって、保持器4は図4に示すように変形する。すなわち、柱部7については、ころの軸方向の略中央部と対向する位置に荷重W’が作用するとともに、環状部5と柱部7との連結部にも上記荷重W’と釣り合う荷重が作用し、これらの荷重によって環状部5及び柱部7はそれぞれ曲げモーメントM1’、M3 ’を受けて、図4(B)(C)に示すように変形する。環状部5と柱部7の連結部における環状部5のA部分に生じる曲げ応力をσ1’、環状部5と柱部7の連結部における柱部7のC部分に生じる曲げ応力をσ3’とすると、各曲げ応力σ1’、σ3 ’は、材料力学的な力の釣り合い条件等から次式で表わされる。
【0008】
σ1 ’=M1 ’・e1’/I1’ ・・・(1)
σ3 ’=M3 ’・e3’/I3’ ・・・(2)
上記I1 ’、I3’は、それぞれ環状部5、及び柱部7の各断面二次モーメントであって、当該断面二次モーメントI1’、I3 ’は次式で定義される。
1 ’=∫A11 2dA1 ・・・(3)
3 ’=∫A33 2dA3 ・・・(4)
上記(3)、(4)式中のA1 、A3は、それぞれ環状部5、及び柱部7の各断面積である。
【0009】
また、上記(1)、(2)式中のe1 ’、e3’は、後述するように、後述の各座標系における図心から断面周縁までの距離の最大値である。
さらに、上記各断面二次モーメントI1 ’、I3’の座標系については、次のように定義したものである。すなわち、断面二次モーメントI1’は、図1に示すように、環状部5の断面上に、当該断面の図心を原点として、保持器外径面が規制される円すい面もしくは円筒面の法線方向にy1軸をとり、かつz1軸を、軸方向且つ上記円すい面もしくは円筒面の接線方向にとったy1−z1直交座標系によるものであり、柱部7の長さ方向に平行な中立軸に対する断面二次モーメントである。また、断面二次モーメントI3’は、柱部7の断面上に、当該断面の図心を原点として、上記円すい面もしくは円筒面の法線方向にy3軸をとり、かつz3軸を、円周方向且つ上記円すい面もしくは円筒面の接線方向にとったy3−z3直交座標系によるものであり、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する断面二次モーメントである。
【0010】
ここで、柱部7の長さ方向とは、軸受の軸方向若しくは略軸方向を向く方向である。
そして、上記(1)式中のe1 ’は、上記環状部5の柱部側の断面周縁におけるy1座標の最大値を表す。また、上記(2)式中のe3’は、上記柱部7の断面周縁におけるy3座標の絶対値の最大値を表す。
【0011】
なお、柱部7の断面形状が、軸方向に亙って変化しない場合、柱部7の断面二次モーメントも軸方向に亙って変化しないので、その断面二次モーメントの値をもってI3 ’とするが、柱部7の断面形状が、軸方向に亙って変化する場合、柱部7の断面二次モーメントも軸方向に亙って変化する。その場合、I3 ’とは、柱部7における、環状部5との連結部分Cでの断面二次モーメントであるものとする。
【0012】
上記(1)式及び(2)式から分かるように、全ての断面二次モーメントI1’、I3 ’を大きくすることで、各応力σ1’、σ3 ’が小さくなることが分かる。
また、上記ころ3から作用する円周方向からの荷重Wによって、図5に示すように、環状部5と柱部7との連結部にモーメントMが作用する。環状部5と柱部7の連結部における環状部5のA部分に生じる曲げ応力をσ1、環状部5と柱部7の連結部における柱部7のC部分に生じる曲げ応力をσ3とすると、各曲げ応力σ1 、σ3 は材料力学的な力の釣り合い条件等から次式で表わされる。
【0013】
σ1 =M・e1/(2I1)・・・(5)
σ3 =M・e3/I3 ・・・(6)
ここで、上記I1 、I3 はそれぞれ環状部5、柱部7の各断面二次モーメントであって、当該断面二次モーメントI1、I3 は次式で定義される。
1 =∫A11 2dA1 ・・・(7)
3 =∫A33 2dA3 ・・・(8)
上記(7)、(8)式中のA1 、A3はそれぞれ環状部5、柱部7の各断面積である。また、上記(5)、(6)式中のe1、e3 は、後述するように、それぞれ後述の各座標系における図心から断面周縁までの距離の最大値である。
【0014】
さらに、上記各断面二次モーメントI1 、I3の座標系については、上述と同様に、次のように定義したものである。すなわち、断面二次モーメントI1は、図1に示すように、環状部5の断面上に、当該断面の図心を原点として、保持器外径面が規制される円筒面の法線方向にy1軸をとり、かつz1 軸を、軸方向かつ上記円筒面の接線方向にとったy1−z1 直交座標系によるものであり、柱部7の長さ方向に垂直な中立軸に対する断面二次モーメントである。また、断面二次モーメントI3は、図1に示すように、柱部7の断面上に、当該断面の図心を原点として、上記円筒面の法線方向にy3軸をとり、かつz3 軸を、円周方向かつ上記円筒面の接線方向にとったy3−z3 直交座標系によるものであり、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する断面二次モーメントである。
【0015】
そして、上記(5)式中のe1 は、上記環状部5の柱部側の断面周縁におけるz1座標の最大値を表す。また、上記(6)式中のe3は、上記柱部7の断面周縁におけるz3 座標の最大値を表す。
なお、くし形保持器にあっては、柱部7の断面形状は、軸方向に亙って変化しないようにするのが一般的であるが、例えば自動調心ころ軸受用保持器等のように、柱部7の断面形状が軸方向に亙って変化する場合もある。このような場合は、I3とは、柱部7における、環状部5との連結部分Cでの断面二次モーメントであるものとする。
【0016】
上記(5)式及び(6)式から分かるように、全ての断面二次モーメントI1、I3 を大きくすることで、各応力σ1、σ3 が小さくなることが分かる。
以上のことから、従来にあっては、環状部5及び柱部7の全ての断面を大きくすることで、断面二次モーメントI1 ’及びI3 ’若しくはI1 及びI3 の少なくとも一方の断面二次モーメントの組を大きく設定して、保持器4の強度を向上させ、破損が生ずることを防止している。
【0017】
ここで、従来にあっては、保持器強度が弱い場合に断面積を大きくして強度を上げれば良いという経験的な認識はあるものの、上記のように環状部5及び柱部7の各断面二次モーメントを検討しそれらの強度を最適に組み合わせて設計していたわけではない。
このため、いずれの形式の保持器であっても、保持器や使用される軸受用途に関係なく、環状部5および柱部7の断面二次モーメントI1’、I3 ’の全て、若しくは断面二次モーメントI1、I3 の全てが大きくなるように設計すると、ころ3を保持する空間容積(ポケット8の大きさや数)が小さくなるため、保持器4の強度を高めるにつれて、軸受内に組み込めるころ3の数が少なくなったり、ころ3の寸法を小さくする必要が生じて、軸受の負荷能力が低下するという問題がある。また、必要以上に保持器の重量増大に繋がる。
【0018】
特に、ラジアル方向の荷重W’と円周方向からの荷重Wとの両荷重による合成荷重に対して強度を高めようとすると、断面二次モーメントI1’、I3 ’、及び断面二次モーメントI1、I3 の全てについて大きくしようとする結果、更に上記問題が顕在化する。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、保持器を組み込む軸受の負荷能力を低下させることなく、保持器の強度を向上させることが可能なころ軸受用保持器の提供を課題とする。
【0019】
発明の開示
本発明はいずれも、ころから受ける荷重方向を考慮しつつ、環状部の曲げ応力、及び、柱部の曲げ応力が互いに大きく異ならないように最適化することによって、軸受の負荷能力を低下させることなく、しかも保持器の重量増大を抑えつつ保持器の強度を向上できることに着目したものである。
すなわち、上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3’とし
上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
(e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.1、(d 1 /d 3 ’)=0.6〜2.2、
且つ
0.3≦(I1 ’/I3’)≦1.1の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器を提供するものである。
【0020】
次に、請求項2に記載した発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 ’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 ’とし、
上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
(e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.1、(d 1 /d 3 ’)=0.6〜1.8、
且つ
0.3≦(I1 ’/I3’)≦0.9の条件を満足することを特徴とするものである。
【0021】
次に、請求項3に記載した発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 ’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 ’とし、
上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
(e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.8、(d 1 /d 3 ’)=0.6〜3.0、
且つ
0.3≦(I1 ’/I3’)≦2.5の条件を満足することを特徴とするものである。
【0022】
次に、請求項4に記載した発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 ’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 ’とし、
上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
(e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.8、(d 1 /d 3 ’)=0.2〜1.2、
且つ
0.2≦(I1 ’/I3’)≦1.0の条件を満足することを特徴とするものである。
【0023】
次に、請求項5に記載した発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用 保持器において、
柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=0.6〜1.8、(d 1 /d 3 )=0.6〜2.2、
且つ
0.3≦(I1 /I3)≦0.9の条件を満足することを特徴とするものである。
【0024】
次に、請求項6に記載した発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし、
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=1.4〜3.2、(d 1 /d 3 )=0.6〜1.8、
且つ
0.7≦(I1 /I3)≦1.6の条件を満足することを特徴とするものである。
【0025】
次に、請求項7に記載した発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし、
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=1.0〜3.0、(d 1 /d 3 )=0.6〜3.0、
且つ
0.5≦(I1 /I3)≦1.5の条件を満足することを特徴とするものである。
【0026】
次に、請求項8に記載した発明は、各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし、
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱 部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=0.6〜2.0、(d 1 /d 3 )=0.2〜1.2、
且つ
0.3≦(I1 /I3)≦1.0の条件を満足することを特徴とするものである。
【0027】
次に、請求項9に記載した発明は、請求項1に記載の構成に対し、柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=0.6〜1.8、(d 1 /d 3 )=0.6〜2.2、
且つ
0.3≦(I1 /I3)≦0.9の条件を満足することを特徴とする。
【0028】
次に、請求項10に記載した発明は、請求項2に記載の構成に対し、柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=1.4〜3.2、(d 1 /d 3 )=0.6〜1.8、
且つ
0.7≦(I1 /I3)≦1.6の条件を満足することを特徴とする。
【0029】
次に、請求項11に記載した発明は、請求項3に記載の構成に対し、柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=1.0〜3.0、(d 1 /d 3 )=0.6〜3.0、
且つ
0.5≦(I1 /I3)≦1.5の条件を満足することを特徴とする。
【0030】
次に、請求項12に記載した発明は、請求項4に記載の構成に対し、柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
(e 1 /e 3 )=0.6〜2.0、(d 1 /d 3 )=0.2〜1.2、
且つ
0.3≦(I1 /I3)≦1.0の条件を満足することを特徴とする。
上記いずれの本発明であっても、ころから作用する荷重方向を考慮しつつ保持器の形式に応じて、各環状部の曲げ応力、及び柱部の曲げ応力が互いに大きく異ならないように設計されるため、軸受の負荷能力を低下させることなく保持器の強度が向上する。
【0031】
次に、その根拠について説明する。
ここで、軸受のラジアル方向(半径方向)及び円周方向の各荷重が、単独若しくは合成荷重として、組み込む軸受の使用部位によって作用するが、個々の荷重に対する根拠に分けて以下、説明する。
まず、保持器のラジアル方向への振動によって、ころから保持器に対し、ラジアル方向からの荷重W’が負荷される場合を説明する。
【0032】
例えば、環状部5の曲げ応力σ1 ’が柱部7の曲げ応力σ3’に比べて非常に大きい場合、つまりσ1’≫σ3’の場合には、保持器4の折損は図4に示す環状部5のA部分で生ずるから、その強度を向上させるために環状部5の断面二次モーメントI1’を大きくする一方で、ころ3を保持する空間容積が小さくならないように柱部7の断面二次モーメントI3’を小さくすれば良い。
【0033】
ここに、断面二次モーメントを大きくするには、通常その断面を大きくし、断面二次モーメントを小さくするには、通常その断面を小さくすればよい。勿論、断面形状を工夫することでも断面二次モーメントを変更することは可能である。
これとは逆に、柱部7の曲げ応力σ3 ’が環状部5の曲げ応力σ1’に比べて非常に大きい場合、つまりσ3’≫σ1’の場合には、保持器4の折損は柱部7のC部分で生ずるから、その強度を向上させるために柱部7の断面二次モーメントI3’を大きくする一方で、ころ3を保持する空間容積が小さくならないように、環状部5の断面二次モーメントI1’を小さくすれば良い。
【0034】
すなわち、環状部5の曲げ応力σ1 ’と柱部7の曲げ応力σ3’に大きな差がある場合、この応力の差を小さくすることによって、ころ数やころの寸法を小さくすることなく、つまりラジアル方向の荷重W’に対し軸受の負荷能力を低下させることなく保持器4の破損を生じ難くすることができる。
従来のように保持器4の各部の断面二次モーメントの全てを大きくして保持器4の強度を上げるのではなく、本発明は、曲げ応力が大きくなる部分の断面二次モーメントだけを大きくして保持器全体の負荷能力を高めた最適設計を行うことを考えたものである。
【0035】
そして、この観点から、本発明は、設計上とり得る範囲の各部の寸法諸元値から曲げ応力の最大値が最小となる(I1 ’/I3’)を規定した。
次に、ラジアル方向の荷重W’に対する各(I1 ’/I3 ’)の臨界的意義についてそれぞれ説明する。
無次元最大曲げ応力(σ’/σ0 ’)と、(I1 ’/I3’)の関係を材料力学モデルに基づいて計算したところ、図6に示す結果を得た。
【0036】
ここで、無次元最大曲げ応力(σ’/σ0 ’)で考えたのは、無次元化することにより、どのような大きさの荷重にも適用できて汎用性が高まるためである。
また、上記σ’は、上述の定義に基づく、環状部5と柱部7の連結部における環状部5の曲げ応力σ1’、環状部5と柱部7の連結部における柱部7の曲げ応力σ3’のうちの最大のものである。このσ’が小さいほど、ころ3と柱部7の衝突による保持器4の破損は生じにくいことを表している。
【0037】
また、σ0 ’は、一対の環状部5を剛体とみなしたときの、柱部7に生じる最大曲げ応力である。
この(σ’/σ0 ’)は、三つのパラメータ(I1 ’/I3 ’)、(e1 ’/e3’)、(d1/d3 ’)が与えられれば計算することができる。
ここで、図4(B)に示すように、d1 は、円周方向で隣り合う2個の柱部7,7の円周方向距離である。なお、上記円周方向で隣り合う2個の柱部7,7は、保持器が一体型の場合には、図3に示すように、環状部5に対して保持器の軸方向の互いに反対の側面から突出する。
【0038】
また、d3 ’は、ころの転動面と対向する柱部7の側面における、ころ3との衝突による荷重W’が作用する位置(図4中で矢印W’の位置)から、ころ3の端面と対向する環状部5の側面までの軸方向距離である。なお、d3 ’は、通常、後述のd3 と同じ値である。
そして、大部分のくし形のころ軸受用保持器においては、寸法の諸元から可能な範囲は、それぞれ(e1’/e3’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.2〜3.0であることに基づき、図6は、(e1’/e3’)=1.0〜1.8、(d1/d3’)=0.2〜3.0の範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)の各パラメータをランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と、上記(σ’/σ0’)の最小値との関係を求めたものである。
【0039】
この図6から分かるように、(I1 ’/I3 ’)=0.2〜2.5であれば、設計可能な範囲の内から最適な値となって(σ’/σ0’)が最小になり、ころ軸受用保持器の破損を生じにくくすることができる。
これに基づき、本発明では、0.2≦(I1 ’/I3 ’)≦2.5と規定した。
【0040】
ここで、図6中の×印は、(e1 ’/e3’)及び(d1/d3 ’)のいずれかが、それぞれ(e1’/e3’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.2〜3.0の範囲に入らない場合における、(σ’/σ0’)を最小にする(I1 ’/I3 ’)を求めた例である。(I1 ’/I3’)が上記範囲(I1’/I3’)=0.2〜2.5に入っていないが、このような保持器は、(e1’/e3’)もしくは(d1 /d3 ’)の値が実際に用いられない、非実用的な寸法のものである。
【0041】
また、大部分の複列円筒ころ軸受において、保持器が二体型の場合には、(e1’/e3 ’)=1.0〜1.1、(d1 /d3’)=0.6〜2.2の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と、上記(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図7に示す。
【0042】
この図7から分かるように(I1 ’/I3’)=0.3〜1.1であれば(σ’/σ0 ’)が最小になり、複列円筒ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、複列円筒ころ軸受用の二体型保持器としては、0.3≦(I1’/I3 ’)≦1.1となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
【0043】
また、大部分の複列円筒ころ軸受において、保特器が一体型の場合には、(e1 ’/e3 ’)=1.0〜1.1、(d1/d3 ’)=0.6〜1.8の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と上記(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図8に示す。
【0044】
この図8から分かるように(I1 ’/I3’)=0.3〜0.9であれば、(σ’/σ0 ’)が最小になり、複列円筒ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、複列円筒ころ軸受用の一体型保持器としては、0.3≦(I1 ’/I3 ’)≦0.9となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
【0045】
また大部分の自動調心ころ軸受において、保持器が二体型の場合には、(e1’/e3 ’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.6〜3.0の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と上記(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図9に示す。
【0046】
この図9から分かるように、(I1 ’/I3’)=0.3〜2.5であれば、(σ’/σ0 ’)が最小になり、自動調心ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、自動調心ころ軸受用の二体型保持器としては、0.3≦(I1’/I3 ’)≦2.5となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
【0047】
さらに、大部分の自動調心ころ軸受において、保持器が一体型の場合には、(e1’/e3 ’)=1.0〜1.8、(d1/d3 ’)=0.2〜1.2の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1’/e3 ’)、(d1 /d3 ’)をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ’/σ0’)が最小値をとるときの(I1 ’/I3’)と上記(σ’/σ0 ’)の最小値との関係を求めてみた。その結果を図10に示す。
【0048】
この図10から分かるように、(I1 ’/I3’)=0.2〜1.0であれば、(σ’/σ0 ’)が最小になり、自動調心ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、自動調心ころ軸受用の一体型保持器としては、0.2≦(I1’/I3 ’)≦1.0となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
【0049】
なお、図6〜図10から分かるように、(I1’/I3 ’)の値が小さくなるほど、(σ’/σ0’)の値も大きくなり、不利になることが明らかであり、耐衝撃性が弱くなる。したがって、使用される条件に応じて、上記各範囲内で(I1’/I3 ’)の値を大きく設定することが望ましい。
次に、ころの公転方向(円周方向)からの荷重Wが負荷される場合、つまり、柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントI1 と、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する断面二次モーメントの値I3 との比(I1 /I3 )の値の根拠について、上記図11〜15等を参照しつつ説明する。
【0050】
例えば、環状部5の曲げ応力σ1 が柱部7の曲げ応力σ3に比べて非常に大きい場合、つまりσ1 ≫σ3の場合には、保持器4の折損は環状部5のA部分で生ずるから、その強度を向上させるために環状部5の断面二次モーメントI1を大きくする一方で、ころ3を保特する空間容積が小さくならないように柱部7の断面二次モーメントI3を小さくすればよい。ここに、断面二次モーメントを小さくするには、通常その断面を小さくすればよい。勿論、断面形状を工夫することでも断面二次モーメントを変更することは可能である。
【0051】
これとは逆に、柱部7の曲げ応力σ3 が環状部5の曲げ応力σ1に比べて非常に大きい場合、つまりσ3 ≫σ1の場合には、保特器4の折損は柱部7のC部分で生ずるから、その強度を向上させるために柱部7の断面二次モーメントI3を大きくする一方で、ころ3を保持する空間容積が小さくならないように環状部5の断面二次モーメントI1を小さくすればよい。
【0052】
すなわち、環状部5の曲げ応力σ1 と柱部7の曲げ応力σ3に大きな差がある場合、この応力の差を小さくすることによって、ころ数やころの寸法を小さくすることなく、荷重Wに対する保持器4の破損を生じ難くすることができる。
本発明は、従来のように保持器4の各部の断面二次モーメントの全てを大きくして保持器4の強度を上げるのではなく、曲げ応力が大きくなる部分の断面二次モーメントだけを大きくして、保持器全体の負荷能力を高めた最適設計を行うことを考えたものである。
【0053】
そして、この観点から、本発明は、設計上とり得る範囲の各部の寸法諸元値から曲げ応力の最大値が最小となる(I1/I3 )を規定した。
次に、上記(I1 /I3 )の値の臨界的意義について説明する。
無次元最大曲げ応力(σ/σ0 )と(I1/I3 )の関係を材料力学モデルに基づいて計算したところ、図11に示す結果を得た。ここで、無次元最大曲げ応力(σ/σ0)で考えたのは、無次元化することにより、いかなる大きさの荷重にも適用できて汎用性が高まるためである。
【0054】
また、上記σは、上述の定義に基づく、環状部5と柱部7の連結部における環状部5の曲げ応力σ1と、環状部5と柱部7の連結部における柱部7の曲げ応力σ3のうちの最大のものである。このσが小さいほど、ころ3と柱部7の衝突による保特器4の破損は生じ難いことを表している。また、σ0は環状部5を剛体とみなしたときの、柱部7に生じる最大曲げ応力である。
【0055】
この(σ/σ0 )は三つのパラメータ(I1/I3 )、(e1 /e3 )、(d1 /d3 )が与えられれば計算することができる。
ここで、図2に示すように、d1 は、円周方向で隣り合う二個の柱部7、7間の円周方向距離である。なお、上記円周方向で隣り合う2個の柱部7,7は、保持器が一体型の場合には、図3に示すように、環状部5に対して保持器の軸方向の互いに反対の側面から突出する。
【0056】
また、d3は、ころ3の転動面と対向する柱部7の側面における、ころ3との衝突による荷重Wが作用する位置(図2中で矢印Fの位置)から、ころ3の端面と対向する環状部5の側面までの軸方向距離である。
そして、大部分のころ軸受用保持器においては、(e1/e3 )=0.6〜3.2、(d1 /d3 )=0.2〜3.0であるから、この範囲(e1/e3 )=0.6〜3.2、(d1/d3 )=0.2〜3.0の範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )の各パラメータをランダムに変化させて、(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めたものが、上記図11である。
【0057】
この図11から分かるように(I1 /I3)=0.3〜1.6であれば、設計可能な範囲の内から最適な値となって(σ/σ0)が最小になり、ころ軸受用保特器の破損を生じ難くすることができる。
これに基づき、本発明では、0.3≦(I1/I3 )≦1.6と規定した。
ここで、図11中の×印は、(e1 /e3)が(e1 /e3 )=0.6〜3.2の範囲に入らない場合における、(σ/σ0)を最小にする(I1 /I3 )を求めた例である。この場合の(I1/I3 )は上記範囲(I1 /I3)=0.3〜1.6に入っていないが、このような保特器は、(e1/e3 )の値が実際に用いられない、非実用的な寸法のものである。
【0058】
また、製鉄用の各種圧延機のように、軸受に負荷される荷重の非常に大きな箇所では、複列円筒ころ軸受や自動調心ころ軸受が多用される。大部分の複列円筒ころ軸受において、保持器が二体型の場合には、(e1/e3 )=0.6〜1.8、(d1 /d3)=0.6〜2.2の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めてみた。その結果を図12に示す。
【0059】
この図12から分かるように(I1 /I3)=0.3〜0.9であれば(σ/σ0 )が最小になり、複列円筒ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、複列円筒ころ軸受用の二体型保持器としては、0.3≦(I1/I3 )≦0.9となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
また、大部分の複列円筒ころ軸受において、保特器が一体型の場合には、(e1 /e3 )=1.4〜3.2、(d1/d3 )=0.6〜1.8の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めてみた。その結果を図13に示す。
【0060】
この図13から分かるように(I1 /I3)=0.7〜1.6であれば、(σ/σ0 )が最小になり、複列円筒ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、複列円筒ころ軸受用の一体型保持器としては、0.7≦(I1 /I3 )≦1.6となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
また大部分の自動調心ころ軸受において、保持器が二体型の場合には、(e1/e3 )=1.0〜3.0、(d1/d3 )=0.6〜3.0の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )をパラメータとしてランダムに変化させて、(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めてみた。その結果を図14に示す。
【0061】
この図14から分かるように、(I1 /I3)=0.5〜1.5であれば、(σ/σ0 )が最小になり、自動調心ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、自動調心ころ軸受用の二体型保持器としては、0.5≦(I1/I3 )≦1.5となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
さらに、大部分の自動調心ころ軸受において、保持器が一体型の場合には、(e1/e3 )=0.6〜2.0、(d1/d3 )=0.2〜1.2の範囲であることに鑑み、この範囲で(e1/e3 )、(d1 /d3 )をパラメータとしてランダムに変化させて(σ/σ0)が最小値をとるときの(I1 /I3)と上記(σ/σ0 )の最小値との関係を求めてみた。その結果を図15に示す。
【0062】
この図15から分かるように、(I1 /I3)=0.3〜1.0であれば、(σ/σ0 )が最小になり、自動調心ころ軸受用保持器の破損を生じ難くすることができる。すなわち、自動調心ころ軸受用の一体型保持器としては、0.3≦(I1/I3 )≦1.0となるように最適設計することが好ましいことが分かる。
なお、図11〜図15から分かるように、(I1/I3 )の値が大きくなるほど、(σ/σ0)の値も大きくなり、不利になることが明らかであり、耐衝撃性が弱くなる。したがって、使用される条件に応じて、(I1/I3 )の値を小さく抑えることが望ましい。
【0063】
ここで、上記説明では、保持器の軸受ラジアル方向に作用する荷重W’、及びころの公転方向(円周方向)に作用する荷重Wが個別に作用する場合で説明しているが、両荷重W’、Wによる合成荷重が作用することに対する強度を向上させるときには、上記(I1 /I3 )、及び(I1 ’/I3 ’)の両方がそれぞれ上記範囲に入るように設定すればよい。
【0064】
発明を実施するための最良の形態
次に、本発明の第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、第1の実施形態は、鉄道車両など保持器の軸受ラジアル方向の振動が頻繁に発生し、相対的に、ころが、保持器の柱部にラジアル方向からの衝突を繰り返すような場所に使用されるころ軸受に組み込まれる保持器の例である。また、第2の実施形態は、ころの公転速度の変化によって、ころが、保持器の柱部に周方向からの衝突を繰り返すような場所に使用されるころ軸受に組み込まれる保持器の例である。
【0065】
第1の実施形態の保持器4は、上記図1に示すような複列円筒ころ軸受に組み込まれるものである。
そして、環状部5、柱部7の各断面二次モーメントI1’、I3 ’が0.2≦(I1 ’/I3 ’)≦2.5となるように、環状部5及び柱部7の幅を設定した。
【0066】
これによって、ポケット8の数及び各ポケット8の空間の大きさをさほど小さくすることなく、保持器4の強度が向上した。
すなわち、環状部5の曲げ応力と柱部7の曲げ応力が互いに大きく異ならないように最適設計がなされたため、軸受の負荷能力を低下させることなく、ころ3と柱部7の衝突による保持器4の破損を生じ難くすることができた。
【0067】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の保持器4は、上記図1に示すような複列円筒ころ軸受に組み込まれるものである。
そして、環状部5、柱部7の各断面二次モーメントI1、I3 が0.3≦(I1 /I3 )≦1.6となるように、環状部5及び柱部7の幅を設定した。
【0068】
これによって、ポケット8の数及び各ポケツトの空間の大きさをさほど小さくすることなく、保持器4の強度が向上した。
すなわち、環状部5の曲げ応力と柱部7の曲げ応力が互いに大きく異ならないように最適設計がなされたため、軸受の負荷能力を低下させることなく、ころ3と柱部7の衝突による保持器4の破損を生じ難くすることができた。
【0069】
ここで、上記第1及び第2の実施形態では、それぞれラジアル方向の衝突及び円周方向の衝突の一方に対しての強度を最適化させることを、個別に実施した実施形態であるが、ラジアル方向の衝突及び円周方向の衝突の両方が繰り返し発生する場所で使用される場合であれば、一対の環状部5及び柱部7の各断面二次モーメントI1’、I3 ’、及びI1、I3 が、0.2≦(I1’/I3’)≦2.5、且つ0.3≦(I1/I3)≦1.6となるように、各環状部5及び柱部7の幅及び断面形状を設定すればよい。このようにすれば、ラジアル方向からの衝突及び円周方向の衝突の両方が個々に、若しくは合成荷重としてして繰り返し受ける場合であっても、環状部5の曲げ応力、柱部7の曲げ応力が互いに大きく異ならないように最適設計がなされたため、軸受の負荷能力を低下させることなく、ころ3と柱部7の衝突による保持器4の破損を生じにくくすることができる。
【0070】
次に、上記各実施形態に関連する実施例を説明する。
[実施例1]
上記第1の実施形態に基づき形成した本発明に基づく、くし形の保持器と、従来のくし形の保持器とを比較する落下衝撃試験を行ったところ、図16に示す結果を得た。
【0071】
保持器の形式は、二体型くし形保持器である。また、試験に用いた軸受は、自動調心ころ軸受である。
軸受Aは従来の保持器を用いており、(I1 ’/I3 ’)=3.4となっていた。また、軸受Bはいずれも本発明に基づいて作成した保持器であって、(I1 ’/I3 ’)=1.1に設定したものである。
【0072】
上記落下衝撃試験は、軸受を軸箱ごと操り返し落下させることで保持器の耐久性を調べるものであり、図16の試験においては、軸受A、Bいずれの場合にも、落下衝撃によって軸箱に生ずる加速度の最大値が重力加速度の150倍となるように落下高さを設定した。
図16に示すように、軸受Bに組み込まれた本発明に基づく保持器の全てに亙って、破損までの衝撃繰り返し数が軸受Aに比べて大幅に大きい。このように、本発明が保持器の破損防止に好適であることがわかる。
[実施例2]
次に、上記第2実施形態に基づき形成した本発明に基づく、くし型の保持器と、従来のくし型の保持器とを比較する落下衝撃試験を行ったところ、図17に示す結果を得た。
【0073】
保持器の形式は、一体型くし形保持器である。また、試験に用いた軸受は自動調心ころ軸受である。
軸受Aはいずれも従来の保持器を用いており、(I1/I3 )=2.07となっていた。また軸受Bはいずれも本発明に基づいて作成した保持器であって、(I1/I3 )=1.0に設定したものである。
【0074】
上記落下衝撃試験は、軸受を軸箱ごと繰り返し落下させることで保持器の耐久性を調べるものであり、図17の実験においては、軸受A、Bいずれの場合にも、落下衝撃によって軸箱に生ずる加速度の最大値が重力加速度の150倍となるように落下高さを設定した。
図17に示すように、軸受Bに組み込まれた本願発明に基づく保持器は、全てに亘って破損までの衝撃繰り返し数が軸受Aに比べて大幅に大きい。このように、本発明が保持器の破損防止に好適であることがわかる。
【0075】
さらに、上記(I1 /I3 )を変更して、上記と同一条件で落下衝撃試験を行った。その結果を図18に示す。使用する保持器の形式は、二体型くし形保持器とした。
試験に用いた軸受は、保持器以外は同一条件の自動調心ころ軸受であり、その軸受に組み込む保持器の(I1/I3)の値を図18に示すように変更して作成したものである。なお、図18に示す結果は、同一の(I1/I3)の値を持つ保持器を組み込んだ各軸受について、それぞれ3回実施しその平均値をとったものである。
【0076】
ここで、(e1 /e3 )及び(d1/d3 )の値は、各(I1/I3)において(σ/σ0 )が最小値をとるように設定してある。
図18から分かるように、(I1/I3)の値を小さくするほど、保持器の破損が発生しにくくなることが分かる。
ここで、軸受Dの保持器の(I1/I3)は、本発明の対象外である図18における×印で示したもの、つまり寸法設計上に無理がある保持器を参考に示してある。つまり、設計上、負荷容量が下がるか、軸受の省スペースの点で無理のある軸受となるものである。すなわち、(I1/I3)を0.3よりも小さくすることは、(柱部の断面二次モーメントI3)≫(環状部の断面二次モーメントI1 )となって、環状部の軸方向の幅を小さく且つ柱部の円周方向の幅を大きく設定することとなる。このことから、同一の数だけころを組み込むために、保持するころの径を小さくしてあり、軸受A〜軸受Cと比べ負荷容量が小さくなっている。つまり(I1/I3 )を小さくしすぎると軸受の負荷容量が下がり、その対策としては軸受の幅を大きくつまり軸受自体を大型化せざるを得なく設計上の制限となる。
【0077】
一方、図11〜図15から分かるように、(I1/I3 )の値が大きくなるほど、実際にとれる(σ/σ0)の最小値も大きくなり、不利になることが明らかであり、耐衝撃性が弱くなる。
したがって、使用される条件に応じて、(I1/I3 )の値をできるだけ小さく抑えることが望ましい。ただし、上述のように現実に要求される負荷容量及び軸受の大型化の点から(I1/I3 )の値を0.3以上とする必要がある。
【0078】
産業上の利用可能性
以上説明してきたように、発明を採用すると、くし形のころ軸受用保持器について、環状部の曲げ応力と柱部の曲げ応力とが互いに大きく異ならないように最適設計が実現できて、軸受の負荷能力を低下させることなく、ころと柱部の衝突による保持器の破損を生じ難くすることができるという効果が得られる。
特に、請求項1、5、9に係る発明を使用することで、二体型の複列円筒ころ軸受に採用される保持器として、より最適な設計が可能となる。
【0079】
また、請求項2、6、10に係る発明を使用することで、一体型の複列円筒ころ軸受に採用される保持器として、より最適な設計が可能となる。
また、請求項3、7、11に係る発明を使用することで、二体型の自動調心ころ軸受に採用される保持器として、より最適な設計が可能となる。
また、請求項4、8、12に係る発明を使用することで、一体型の自動調心ころ軸受に採用される保持器として、より最適な設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複列円筒ころ軸受を示す図であり、(A)はその部分断面図、(B)はそのb−b断面図を表す。
【図2】複列円筒ころ軸受用二体型保持器の部分平面図である。
【図3】複列円筒ころ軸受用一体型保持器の部分平面図である。
【図4】複列円筒ころ軸受用保持器における、ころと柱部のラジアル方向からの衝突による保持器の変形を示す模式図であり、(A)は部分断面図を、(B)(C)はそれぞれ部分斜視図を表している。
【図5】複列円筒ころ軸受用保持器における、ころと柱部の周方向からの衝突による保持器の変形を示す模式図である。
【図6】本発明のころ軸受用保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図7】本発明の複列円筒ころ軸受用二体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図8】本発明の複列円筒ころ軸受用一体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図9】本発明の自動調心ころ軸受用二体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図10】本発明の自動調心ころ軸受用一体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図11】本発明のころ軸受用保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図12】本発明の複列円筒ころ軸受用二体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図13】本発明の複列円筒ころ軸受用一体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図14】本発明の自動調心ころ軸受用二体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図15】本発明の自動調心ころ軸受用一体型保持器に係る、ころと柱部の衝突における無次元最大曲げ応力の計算結果を示す図である。
【図16】実施例に係る落下衝撃試験の結果を示す図である。
【図17】実施例に係る本発明の保特器と従来の保持器との比較耐久試験の結果を示す図である。
【図18】実施例に係る落下衝撃試験の結果を示す図である。

Claims (12)

  1. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3’とし
    上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
    (e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.1、(d 1 /d 3 ’)=0.6〜2.2、
    且つ
    0.3≦(I1 ’/I3’)≦1.1の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  2. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 ’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 ’とし、
    上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
    (e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.1、(d 1 /d 3 ’)=0.6〜1.8、
    且つ
    0.3≦(I1 ’/I3’)≦0.9の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  3. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 ’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 ’とし、
    上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
    (e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.8、(d 1 /d 3 ’)=0.6〜3.0、
    且つ
    0.3≦(I1 ’/I3’)≦2.5の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  4. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し 且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に平行な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 ’、保持器の円周方向に平行な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 ’とし、
    上記環状部断面の図心から環状部のラジアル方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 ’、柱部断面の図心から柱部のラジアル方向の断面周縁の最大値をe 3 ’、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 ’としたとき、
    (e 1 ’/e 3 ’)=1.0〜1.8、(d 1 /d 3 ’)=0.2〜1.2、
    且つ
    0.2≦(I1 ’/I3’)≦1.0の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  5. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=0.6〜1.8、(d 1 /d 3 )=0.6〜2.2、
    且つ
    0.3≦(I1 /I3)≦0.9の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  6. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、複列円筒ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし、
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=1.4〜3.2、(d 1 /d 3 )=0.6〜1.8、
    且つ
    0.7≦(I1 /I3)≦1.6の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  7. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向片側のみから突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし、
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部 断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=1.0〜3.0、(d 1 /d 3 )=0.6〜3.0、
    且つ
    0.5≦(I1 /I3)≦1.5の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  8. 各ころの端面と軸方向で対向する1個の環状部と、その環状部の軸方向両側から突出し且つ各ころの転動面と対向して周方向に並ぶ複数の柱部とを有するくし形の保持器であって、自動調心ころ軸受に組み込まれるころ軸受用保持器において、
    柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI 1 、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI 3 とし、
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=0.6〜2.0、(d 1 /d 3 )=0.2〜1.2、
    且つ
    0.3≦(I1 /I3)≦1.0の条件を満足することを特徴とするころ軸受用保持器。
  9. 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=0.6〜1.8、(d 1 /d 3 )=0.6〜2.2、
    且つ
    0.3≦(I1 /I3)≦0.9の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のころ軸受用保持器。
  10. 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=1.4〜3.2、(d 1 /d 3 )=0.6〜1.8、
    且つ
    0.7≦(I1 /I3)≦1.6の条件を満足することを特徴とする請求項2に記載のころ軸受用保持器。
  11. 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=1.0〜3.0、(d 1 /d 3 )=0.6〜3.0、
    且つ
    0.5≦(I1 /I3)≦1.5の条件を満足することを特徴とする請求項3に記載のころ軸受用保持器。
  12. 柱部の長さ方向に垂直な中立軸に対する上記環状部の断面二次モーメントをI1、保持器の円周方向に垂直な中立軸に対する上記柱部の断面二次モーメントをI3とし、
    上記環状部断面の図心から環状部の軸方向の断面周縁までの距離の最大値をe 1 、柱部断面の図心から柱部の円周方向の断面周縁の最大値をe 3 、円周方向で隣り合う2個の柱部の円周方向距離をd 1 、ころの転動面と対向する柱部の側面における、ころとの衝突による荷重が作用する位置から、ころの端面と対向する環状部の側面までの軸方向距離をd 3 としたとき、
    (e 1 /e 3 )=0.6〜2.0、(d 1 /d 3 )=0.2〜1.2、
    且つ
    0.3≦(I1 /I3)≦1.0の条件を満足することを特徴とする請求項4に記載のころ軸受用保持器。
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