JP4182806B2 - 蒸解装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸解装置に関するものであり、詳しくは、木材などのチップ状試料を蒸解する蒸解装置であって、少ない液量で試料全量を均一に蒸解でき、かつ、稼働中に蒸解液を添加、採取できるバッチ方式の蒸解装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、クラフトパルプ(KP)の蒸解においては、工程の大型化と共に、省力化および省エネルギーの観点から、原料チップと蒸解液(白液)を連続的に供給しつつ蒸解を行う連続方式の蒸解装置(蒸解釜)が多く採用されている。連続方式による蒸解は、チップと蒸解液との接触効率が高いため、チップに対する蒸解液の供給比率(液比)を低く設定することが出来、また、パルプの収率を一層向上させることが出来る。
【0003】
また、近年では、パルプの収率や強度の向上を更に図るため、MCC法やEMCC法と言った修正蒸解法も採用されている。修正蒸解法においては、蒸解途中で黒液の一部を採取して黒液中の有機固形分を低減させたり、白液を分割添加して蒸解反応中のアルカリプロファイルを均一にすることが行われる。更に、化学薬品の添加および蒸解液の一部改質により、蒸解効果をより高めることもある。
【0004】
上記の様な蒸解条件の最適化、添加剤による効果の確認、あるいは、新規薬剤の比較などを確認するには、実際の蒸解工程を模した実験装置によるテストが有効であるが、斯かる実験装置としては、出来る限り小規模な処理を行うため、通常はバッチ方式の蒸解装置が使用される。バッチ方式の蒸解装置は、周知の通り、加熱可能な蒸解釜(アキュムレータ)に木材チップ及び苛性ソーダ等の蒸解液を収容し、加熱、加圧条件下に蒸解処理を回分で行う装置である(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭63−28159
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の様なバッチ方式の蒸解装置においては、圧力容器(蒸解釜)にチップと共に蒸解液を充満させた高い液比の状態で蒸解処理を行うため、種々の処理条件が連続方式の蒸解装置とは基本的に異なる。もっとも、連続方式に対応した実験装置としては、オートクレーブ内に木材チップと蒸解液を所定液比となる様に収容し、オートクレーブを回転させながら加温蒸解する低液比蒸解実験装置も考えられるが、この様な実験装置においては、配管の接続構造などの問題があり、実際、運転中の蒸解液の添加、採取は極めて困難である。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に蒸解条件などの確認実験を行う実験装置として好適なバッチ方式の蒸解装置であって、低液比でも試料の全量を均一に蒸解でき且つ稼働中に随時蒸解液を添加、採取でき、工場規模で行われる連続方式の蒸解工程に対応した蒸解実験を小規模で実施可能な蒸解装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、修正蒸解法に対応した蒸解実験を小容量でかつ低液比で実施し得る様に鋭意検討の結果、見出されたものであり、蒸解釜としての外套容器の内部に多孔構造になされた試料容器を回転可能に配置し、試料容器に試料を収容すると共に、外套容器に蒸解液を供給することにより、試料容器内の試料の均一な蒸解を低液比において実現した。そして、外套容器に対して配管を接続する様にしたことにより、蒸解液の分割的な添加や黒液の採取を可能にした。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、チップ状の試料を蒸解するバッチ方式の蒸解装置であって、蒸解液の供給口および排出口を有し且つ外周部に加熱手段が設けられた加圧可能な外套容器と、円筒状に形成され且つその軸線が略水平となる様に前記外套容器の内部に回転可能に支持された試料容器とを備え、かつ、前記試料容器は、試料が通過しない大きさの孔を多数有する構造になされていることを特徴とする蒸解装置に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る蒸解装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る蒸解装置の主要部の構造を示す側面側から見た縦断面図である。図2は、図1中のII−II線に沿って破断した縦断面図であり、試料容器内部の撹拌羽根の一形態を示す図である。
【0011】
本発明の蒸解装置は、チップ状の試料を蒸解するバッチ方式の蒸解装置であり、連続方式の蒸解工程をシミュレーションするための実験装置として好適である。本発明において、試料としては、チップ状である限り、各種のリグノセルロース原料を使用でき、針葉樹または広葉樹の木材チップをはじめ、ケナフ、バガス、ワラ等の非木材植物も適用可能である。試料は、通常、その平均長さが木目方向に15〜20mm程度、巾が12〜25mm程度、厚さが3〜6mm程度となる様に作成される。
【0012】
本発明の蒸解装置は、図1及び図2に示す様に、蒸解液の供給口(13)及び排出口(14)を有し且つ外周部に加熱手段としてのヒーター(3)が設けられた加圧可能な外套容器(1)と、円筒状に形成され且つその軸線が略水平となる様に外套容器(1)の内部に回転可能に支持された試料容器(2)とから主として構成される。
【0013】
外套容器(1)は、耐熱性、耐薬品性に優れたステンレス等の材料によって耐圧容器として構成される。外套容器(1)の形状に特に制限はないが、外套容器(1)は、試料容器(2)の形状を考慮し、通常は円筒状に形成される。具体的には、外套容器(1)は、略水平に配置される筒状体の両端部にフランジ部(11a)及びフランジ部(11b)を設け、これらフランジ部にそれぞれ蓋としての蓋フランジ(12a)及び蓋フランジ(12b)を着脱自在に付設して構成される。すなわち、外套容器(1)の両端部の蓋フランジ(12a)及び蓋フランジ(12b)は、ボルト(5)の着脱により取り外し自在になされている。
【0014】
なお、蓋フランジ(12a)及び蓋フランジ(12b)の内側端面には、各々、フランジ部(11a)及びフランジ部(11b)に設けられた円環状の溝に嵌合する円環状の突条が形成されており、蓋フランジ(12a)及び蓋フランジ(12b)は、前記の溝にシール用パッキン(18)を介装してボルト(5)を締め込むことにより、フランジ部(11a)及びフランジ部(11b)に気密に装着できる様になされている。
【0015】
蓋フランジ(12a)及び蓋フランジ(12b)の各内側端面の中央には、後述する試料容器(2)の回転軸(21)を支持するための軸受機構(8)及び軸受部(17)が設けられる。軸受部(17)は、オイルレスメタル等から成り且つ回転軸(21)の先端が嵌合する軸受を取り付けて構成される。そして、軸受機構(8)は、回転軸(21)の一端部を支持すると共に、気密状態を保持して回転軸(21)に駆動力を伝達する機能を有する。
【0016】
具体的には、軸受機構(8)は、磁力誘導回転式の機構であり、基端が封止された略円筒状の外套管(80)と、当該外套管の内部に同軸に且つ回動自在に収納された駆動軸(81)と、当該駆動軸の内部に埋設された内部磁石(82)と、外套管(80)に対してその外周部に同軸に且つ回動自在に装着された円筒状の外部磁石(83)とから主として構成される。
【0017】
外套管(80)は、その外周部に付設されたフランジ(84)によって蓋フランジ(12a)に気密に装着され、また、駆動軸(81)は、その先端部が外套管(80)から突出し且つ回転軸(21)の一端部に対して相対的に着脱自在に係合する様になされている。そして、外部磁石(83)は、その外周部にベルト(9)が巻回されるプーリー部を備え、駆動モーター(図示省略)の回転力がベルト(9)を介して伝達されることにより、外套管(80)の外周部で回転する様になされている。すなわち、軸受機構(8)は、ベルト(9)を介して外部磁石(83)を回転させると、当該外部磁石によって内部磁石(82)が誘導され、駆動軸(81)が回転する機構である。
【0018】
外套容器(1)において、蒸解液の供給口(13)は、例えば蓋フランジ(12a)の上半部に設けられる。供給口(13)は、蓋フランジ(12a)の内部に形成された流路により外套容器(1)の内部に通じており、蒸解液貯槽から連なる配管(図示省略)を接続可能に構成される。なお、上記の蒸解液貯槽は、蒸解液を分割して添加するために複数基設置されてもよく、その場合、各蒸解液貯槽から供給口(13)へ至る上記の配管は、弁操作により1系統に切替える様に構成される。
【0019】
蒸解液の排出口(14)は、外套容器(1)の内部の黒液(蒸解に利用された蒸解液)を抜出すため、例えば蓋フランジ(12b)の下半部に設けられる。排出口(14)は、蓋フランジ(12b)の内部に形成された流路により外套容器(1)の内部に通じており、黒液貯槽へ至る配管(図示省略)を接続可能に構成される。なお、上記の黒液貯槽は、黒液を分割して採取するために複数基設置されてもよく、その場合、排出口(14)から各黒液貯槽へ至る上記の配管は、途中で分岐され且つ弁操作により分岐方向を切替える様に構成される。
【0020】
また、外套容器(1)は、蒸解液の他に添加剤を供給可能に構成されていてもよい。外套容器(1)においては、供給口(13)へ至る配管の途中の切替により、蒸解液の供給口(13)から添加剤を供給する様になされていてもよく、また、供給口(13)と同様の構造の添加剤供給口が蓋フランジ(12a)に設けられていてもよい。あるいは、後述する循環ラインの途中に添加する様になされていてもよい。
【0021】
更に、本発明の蒸解装置においては、外套容器(1)内の蒸解液の温度を均一化するため、排出口(14)から排出される蒸解液を供給口(13)へ返流する循環ラインが設けられていてもよい。この場合、循環ラインにもリボンヒータ等の保温・加温手段が装着されていることにより、蒸解液の温度制御が一層容易になる。更に、上記の循環ラインにおいては、温度制御と配管の圧力損失を勘案し、蒸解液の流量を例えば5〜500cc/分に制御されるのが好ましい。
【0022】
また、一方の蓋フランジ(12a)には、外套容器(1)の内部の温度を検出する温度センサー(6)が付設される。更に、他方の蓋フランジ(12b)には、外套容器(1)の内部に通じるガス均圧口(15)が設けられ、外套容器(1)内の圧力と上記の黒液貯槽や循環ラインの内圧とを同等の圧力にする様になされている。
【0023】
外套容器(1)の胴部(円筒部)の外周部には、蒸解処理にあたって当該外套容器の内部を加熱するため、加熱手段としてのヒーター(3)が設けられる。ヒーター(3)としては、例えば、ニクロム線を円筒状に巻回して成るドラム状ヒーターが使用される。なお、外套容器(1)の加熱手段の他の例としては、オイルバスやエアーバス等が挙げられる。また、外套容器(1)の胴部(円筒部)の外周部であって且つヒーター(3)の内側には、蒸解処理を中断する際などに外套容器(1)の内部の温度を迅速に降下させるため、冷却水などの媒体を流す冷却コイル(4)が配置される。
【0024】
試料容器(2)は、耐熱性、耐薬品性に優れたステンレス等の材料によって円筒状に形成され、その軸線が略水平となる様に外套容器(1)の内部に回転可能に支持される。そして、試料容器(2)は、その内部に収容した試料を外套容器(1)内の蒸解液に効率的に接触させるため、試料が通過しない大きさの孔を多数有する構造になされている。具体的には、試料容器(2)は、多数の孔を有する構造になされた円筒体(22)の中心に回転軸(21)を挿通し、かつ、円筒体(22)の両端部にそれぞれ略円板状の蓋(23)を着脱自在に装着して構成される。
【0025】
円筒体(22)は、例えばパンチング穴が多数開口された円筒管などによっても構成することが出来、この場合のパンチング穴としては、試料が通過しない大きさであれば、円形の他、多角形やスリット状等形状を問わない、さらに好ましくは、円筒体(22)は、試料と蒸解液との接触効率を一層高めるため、網状体によって籠状に構成される。すなわち、試料容器(2)の円筒部(胴部)は、網状体によって籠状に構成されるのが好ましい。網状体によって構成された円筒体(22)の網目の大きさは、試料が容易に通過しない限り特に限定はされないが、蒸解液が透過し易い様に、通常は60〜200メッシュとされる。
【0026】
回転軸(21)は、試料容器(2)を外套容器(1)から取り出すことが出来る様に、蓋フランジ(12a)及び蓋フランジ(12b)側に回動自在かつ着脱自在に支持される。すなわち、回転軸(21)の一端は、蓋フランジ(12a)に装着された上記の軸受機構(8)の駆動軸(81)先端に嵌合する様になされ、回転軸(21)の他端は、蓋フランジ(12b)の軸受部(17)に挿入される様になされており、これにより、試料容器(2)は、外套容器(1)に対して着脱自在に構成され、しかも、上記の軸受機構(8)により、外部の駆動モーターによって回転可能に構成されている。
【0027】
試料容器(2)の蓋(23)は、回転軸(21)の端部を挿通可能な穴が中央に開口された略円板状の部材であり、前記の穴に回転軸(21)の端部を相対的に挿通し、円筒体(22)の端部を複数のねじによって当該蓋の外周部に固定することにより、円筒体(22)の端部に取り付けられる。なお、回転軸(21)と円筒体(22)とは、上記の蓋(23)の装着および後述する撹拌羽根(7)によって一体化されている。
【0028】
本発明の蒸解装置においては、試料容器(2)の内部に収容した試料および蒸解液の攪拌効果を高め且つ試料に対して蒸解液を均一に接触させるため、試料容器(2)の内部には、当該試料容器に伴って回転する撹拌羽根(7)が軸線周りに付設される。撹拌羽根(7)としては、回転軸(21)に付設した螺旋型、水車型などの羽根や試料容器(2)の内周壁に突設した仕切板状の羽根などが挙げられる。
【0029】
具体的には、上記の撹拌羽根(7)としては、例えば図2に示す様に、試料容器(2)の回転方向に湾曲した複数枚の羽根板を回転軸(21)から試料容器(2)の内周壁に亙って取り付けて成る略水車型の羽根が使用される。図に例示した撹拌羽根(7)は、試料容器(2)の回転に伴い強制的に試料を回転させると共に、外套容器(1)の下部に滞留する蒸解液をすくい上げて回転軸(21)の近傍の試料に供給する機能を有する。
【0030】
なお、試料容器(2)の内容積は、実機で用いられる試料をそのまま使用し得る様に、通常は100ml以上とされる。試料容器(2)の内容積が100mlよりも小さい場合は、回分あたりの試料数(チップ数)が少なくなり、ばらつきの原因になるので好ましくない。また、試料容器(2)の回転速度は、通常は1〜100rpm、好ましくは20〜80rpmに制御される。その理由は次の通りである。すなわち、試料容器(2)の回転速度が1rpm未満の場合は、液の攪拌効果が低下して反応が不均一になり、他方、100rpmを超えた場合は、遠心力により液が回転軸(21)近傍に行き渡らなくなり、同様に反応が不均一になる。
【0031】
本発明の蒸解装置において、蒸解処理を行うには、先ず、試料容器(2)にチップ状の試料を充填する。その際、試料の充填量は、試料容器(2)内で試料が自由に移動し得る程度の量とされるが、前述した撹拌羽根(7)を用いれば、試料全体に蒸解液を接触させることが出来るので、試料容器(2)に試料を充満させることが可能となり好ましい。次いで、円筒体(22)に蓋(23)を装着して試料容器(2)の端部を封止した後、外套容器(1)に試料容器(2)を挿入し、蓋フランジ(12b)を閉止して外套容器(1)内で試料容器(2)を回転可能に支持する。続いて、ヒーター(3)を稼働させて外套容器(1)の内部を加温すると共に、外部の駆動モーターを作動させ、試料容器(2)を回転させる。そして、供給口(13)から蒸解液を外套容器(1)の内部へ供給して蒸解を行う。
【0032】
蒸解装置を用いた蒸解方法としては、サルファイド法、アルカリ法などを適用することも出来るが、一般的なクラフト法を適用する場合、液比や硫化度、有効アルカリ添加率、あるいは、蒸解温度、Hファクタなどの蒸解条件は、実機としての連続方式の蒸解装置に応じて適宜に設定することが出来る。なお、液比とは、蒸解すべきリグノセルロース原料の絶乾重量(kg)に対する、このリグノセルロース原料を蒸解するのに使用する蒸解液量とリグノセルロース原料が含有している水分量の和(リットル)の比のことで、以後、単位をL/kgで表す。クラフト法を適用する場合、例えば、液比は1.0〜6.0L/kg、好ましくは1.5〜4.0L/kgに設定される。その理由は次の通りである。すなわち、液比が1.0L/kg未満の場合は、循環する蒸解液が少なくなり、温度制御が困難になるばかりでなく、試料全てに蒸解液が行き渡りにくくなり、粕率(蒸解によりパルプにならない割合)が増加するので好ましくない。一方、液比が6.0L/kgを超えた場合には、蒸解効率が下がるばかりでなく、パルプの収率が低下するので好ましくない。
【0033】
また、上記の蒸解処理においては、外套容器(1)の供給口(13)を通じ、パルプの収率向上などを目的として、キノン、界面活性剤などの薬品を随時に添加してもよい。更に、良い蒸解効果をもたらすことが知られている既知の薬品の他、新規な知見を得るため、種々の効果を期待できる薬品についても添加可能である。そして、外套容器(1)の蒸解液の排出口(14)を通じ、蒸解途中で黒液を採取することも出来る。
【0034】
上記の様に、本発明の蒸解装置は、多孔構造になされた試料容器(2)が外套容器(1)の内部に回転可能に配置されており、試料容器(2)に試料を収容すると共に、外套容器(1)に蒸解液を供給して試料容器(2)を回転させるため、少ない蒸解液量でも試料容器(2)内の試料の全量に対して均一に蒸解液を接触させることが出来、低液比において均一な蒸解処理を小規模で実現することが出来る。そして、蒸解液の供給口(13)及び排出口(14)が外套容器(1)に設けられているため、稼働中においても蒸解液の分割的な添加や黒液の採取を行うことが出来る。換言すれば、本発明の蒸解装置によれば、少ない試料で再現性の高い実験結果が得られ、修正蒸解法などの工場規模の連続方式の蒸解工程に対応した低液比の蒸解実験を小規模で実施することが出来る。
【0035】
【実施例】
実施例1:
図1に示す装置と略同様の構造の蒸解装置を使用して蒸解実験を行った。但し、試料容器(2)内に撹拌羽根(7)が設けられていない点が図1の装置と相違していた。試料容器(2)としては、ステンレス製の100メッシュの金網にて構成された容器を使用した。試料としては、木目方向に20〜30mm、板目の木口面方向に5mm程度に切り揃えたアカマツのチップを使用した。蒸解実験においては、試料容器(2)の回転速度を60rpmに維持し、硫化度は27.8%、有効アルカリ添加率は18.0%、液比は6.0L/kgとした。また、蒸解液の供給にあたり、循環ライン及びポンプによる液循を行うと共に、循環ラインにヒータを設置して外套容器(1)の供給口(13)と排出口(14)における蒸解液の温度が同じになるように制御した。
【0036】
蒸解処理においては、初期温度を100℃、蒸解温度を170℃とし、その間の昇温を30分かけて行い、蒸解処理を48分間行った。蒸解後、水を循環させて外套容器(1)の内部を洗浄、冷却した後、試料容器(2)を取り出し、試料容器(2)内のパルプを回転軸(21)付近(以下、軸部付近と言う。)にあったものと試料容器(2)の内周部付近(以下、内周部付近と言う)にあったものとに分別した。そして、それぞれのパルプについてカッパー価を測定した。その結果、表1に示す様に、軸部付近のパルプと内周部付近のパルプのカッパー価の差は2.1(4.6%)であり、装置内において略均一な蒸解が行われたことが確認された。
【0037】
実施例2:
試料容器(2)内に撹拌羽根(7)が設けられた図1に示す構造の蒸解装置を使用した点を除き、実施例1と同様の条件で蒸解実験を行った。その結果、表1に示す様に、得られた軸部付近のパルプと内周部付近のパルプのカッパー価の差は1.6(4.1%)であり、装置内において均一な蒸解が行われたことが確認された。
【0038】
実施例3:
液比を3.0L/kgに設定した点以外は実施例2と同様の条件で蒸解実験を行った。その結果、表1に示す様に、得られた軸部付近のパルプと内周部付近のパルプのカッパー価の差は1.4(3.7%)であり、装置内においてより均一な蒸解が行われたことが確認された。
【0039】
比較例1:
蒸解装置として実施例1の装置を使用した点を除き、実施例3と同様の条件で蒸解実験を行った。その結果、表1に示す様に、得られた軸部付近のパルプと内周部付近のパルプのカッパー価の差は4.8(24.3%)であり、不均一な蒸解となったことが確認された。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明の蒸解装置によれば、多孔構造になされた試料容器が外套容器の内部に回転可能に配置されており、試料容器に試料を収容すると共に、外套容器に蒸解液を供給して試料容器を回転させる様になされており、試料の全量に対して均一に蒸解液を接触させることが出来、低液比において均一な蒸解処理を実現することが出来、しかも、外套容器に設けられた蒸解液の供給および排出口により稼働中においても蒸解液の分割的な添加や黒液の採取を行うことが出来るため、修正蒸解法などの工場規模の連続方式の蒸解工程に対応した低液比の蒸解実験を小規模で実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る蒸解装置の主要部の構造を示す側面側から見た縦断面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿って破断した縦断面図であり、試料容器内部の撹拌羽根の一形態を示す図である。
【符号の説明】
1 :外套容器
12a:蓋フランジ
12b:蓋フランジ
13 :蒸解液の供給口
14 :蒸解液の排出口
17 :軸受部
2 :試料容器
21 :回転軸
22 :円筒体
23 :試料容器の蓋
3 :ヒーター
4 :冷却コイル
7 :撹拌羽根
8 :軸受機構
Claims (5)
- チップ状の試料を蒸解するバッチ方式の蒸解装置であって、蒸解液の供給口および排出口を有し且つ外周部に加熱手段が設けられた加圧可能な外套容器と、円筒状に形成され且つその軸線が略水平となる様に前記外套容器の内部に回転可能に支持された試料容器とを備え、かつ、前記試料容器は、試料が通過しない大きさの孔を多数有する構造になされていることを特徴とする蒸解装置。
- 試料容器の円筒部が網状体によって構成されている請求項1に記載の蒸解装置。
- 試料容器の内部には、当該試料容器に伴って回転する撹拌羽根が軸線周りに付設されている請求項1又は2に記載の蒸解装置。
- 試料容器が外套容器に対して着脱自在に構成されている請求項1〜3の何れかに記載の蒸解装置。
- 外套容器は、添加剤を供給可能に構成されている請求項1〜4の何れかに記載の蒸解装置。
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