JP4181756B2 - フィルタープレスにおける原液供給装置及びその供給方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば浚渫、下水汚泥、建設残土等の高濃度難脱水性泥水の固液分離を行うフィルタープレスにおける原液供給装置及びその供給方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種産業界において、例えば水底等から発生するスラリー状となった種々の汚泥、残土等を分離、減容化して固形物を製造し、例えば埋立材として利用したり、また土壌改良材への各種用材化等として活用する技術として、フィルタープレスが幅広く利用されている。
このフィルタープレスの濾過工程において、濾過時間を短縮し、濾過効率の向上を行う方法として、まず固液混合物からなる原液を低圧大容量型ポンプ(以下、低圧ポンプとも言う)の一例である渦巻きポンプで圧送(圧力を加えながら送液)し、フィルタープレスに備えられた隣り合う濾板によって形成される複数の濾過室に急速に充填した後、高圧小容量型ポンプ(以下、高圧ポンプとも言う)に運転を切替え、濾過室に更に原液を圧送する方法を使用し、原液の濾過を実施している。
図6(A)に示すように、上記した低圧ポンプの場合、原液の送液時の圧力(圧送圧力)が高くなるに従って、原液の流量が急激に低下する。即ち、濾過室に脱水ケーキが生成しつつある状態では、脱水ケーキ内を通過しようとする濾水の通過抵抗が大きくなり、濾過室への原液の流量が低下、又は原液の供給ができない状態となる。一方、上記した高圧ポンプの場合、高圧ポンプの流量は低圧ポンプの流量よりも少なく、濾過室への原液の供給速度は遅いものの、濾過室に脱水ケーキが生成しつつある状態においても、原液の流量の低下が少なく、しかも低圧ポンプの圧送圧力よりも大きくできる。
【0003】
従って、上記した濾過工程における低圧ポンプと高圧ポンプの運転切替え時期を適正化(図6(A)中の低圧ポンプ運転時の実線と高圧ポンプ運転時の点線との交点で切り替える)し、それにより濾過効率の向上をはかる技術として、例えば特開2000−61213公報にフィルタープレスにおける原液供給装置が開示されている。
この技術の概要は、以下に示す通りである。
まず、低圧大容量型ポンプの運転時における濾液の単位時間当りの濾水量(以下、流量とも言う)を検出し、該流量が、予め設定している設定流量より小さくなった時期に低圧大容量型ポンプから高圧小容量型ポンプへと運転を自動的に切替える。
また、低圧大容量型ポンプ運転時における濾液の積算濾水量を検出し、該積算濾水量が、予め設定している設定積算濾水量に達した時期に両ポンプの運転を自動的に切替える。
更に、原液の圧送時の圧力を検出し、該検出圧力が、予め設定している設定圧力に達した時期に、両ポンプの運転を自動的に切替える。
これにより、フィルタープレスの処理能力や原液の性状等に関係なく、ポンプの運転切替え時期を適切に制御でき、その結果濾過効率を高めることが可能であると開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したフィルタープレスにおける原液供給装置には、以下の問題があり、実用技術としてはまだまだ改良の余地を有している。
フィルタープレスでの処理を対象とする汚泥、残土等は、前記したように種々あり、例えば浚渫汚泥の場合、浚渫する場所によりその性状、即ち成分、粘性、固体含有粒子径、介在物の有無等の土質条件が大きく異なり、時間の経過によっても不規則的にその形状が異なってくる。建設泥土においても、同様な現象となる場合がある。
このため、前記のように時系列的に土質条件が相違する処理対象物については、前記したフィルタープレスにおける原液供給装置のように、予めその濾液の単位時間当りの濾水量又は積算濾水量の基準値を設定して、高い濾過効率を維持することは難しい。従って、この装置を用いて高い濾過効率を維持するには、人手により、所定時間ごとに原液の性状をチェックし、その都度その結果に基づく前記基準値の設定のし直しが必要となるため、実際の技術として、要員の面、即ち熟練運転者による操業管理が常時必要となり、装置の自動、無人化を行うことが難しい。
また、前記原液の圧送時の検出圧力により、両ポンプの運転を自動的に切替える場合においても、朝、昼、夕方等の時系列で不規則的に土質条件が大きく異なってくる処理対象物については、同様な課題を有する。
特に、図6(B)に示すように、本発明が対象としているフィルタープレスにおいては、土質A、B、C等に示すように、スラリーの土質によっても濾過圧力(複数の濾過室内に生成する脱水ケーキ内を通過しようとする濾水の通過抵抗)が相違し、濾過時間が変化するため、単に圧送時の検出圧力で設定すると、前記した理由のようにスラリーの性状が変化する場合、濾過効率を高くすることができない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、フィルタープレスでの処理を対象とする汚泥、残土等の性状が、時系列でランダムに変化しても、大掛かりな装置を必要とせず、しかも熟練した技術を有する要員も必要とすることなく、濾過効率を高めることが可能なフィルタープレスにおける原液供給装置及びその供給方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係るフィルタープレスにおける原液供給装置は、フィルタープレスが備えた複数の濾板のうち、隣り合う該濾板によって形成された複数の濾過室へ、固液混合物からなる原液を、低圧ポンプから高圧ポンプに切り替(換)えて供給するフィルタープレスにおける原液供給装置において、前記低圧ポンプから前記高圧ポンプへの運転切替え時の前後の特定時に、前記濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量を検出する濾液検出手段と、該濾液検出手段で検出される前記運転切替え前の濾水量Q1及び前記運転切替え後の濾水量Q2を比較演算する濾液比較演算手段と、前記濾液比較演算手段での演算結果が、Q1>Q2の場合には、次回の運転切替え時期T(n+1)をΔT1だけ遅らせて前記低圧ポンプの作動時間を延長し、前記濾液比較演算手段での演算結果が、Q1<Q2の場合には、次回の運転切替え時期T(n+1)をΔT2だけ早めて前記低圧ポンプの作動時間を短縮するポンプ運転切替え制御手段とを有する。
ここで、ΔT1、ΔT2は正の補正時間である。
これにより、複数の濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量を基に、複数の濾過室へ供給される原液の性状の変化に対応して、低圧ポンプから高圧ポンプへの運転の切替えを自動的に実施することが可能となる。
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係るフィルタープレスにおける原液供給方法は、フィルタープレスが備えた複数の濾板のうち、隣り合う濾板によって形成された複数の濾過室へ、固液混合物からなる原液を、最初は低圧ポンプを用いて、次に高圧ポンプを用いて供給するフィルタープレスにおける原液供給方法において、予め低圧ポンプから高圧ポンプへの運転切替え時期T(n)を設定して原液の供給を行うと共に、運転切替え時期T(n)を中心としてその前後の特定時における低圧ポンプ運転時の濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量Q1と、高圧ポンプの運転時の濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量Q2とを比較演算して、この演算結果に基づき次回以降の低圧ポンプから高圧ポンプへの運転切替え時期T(n+1)を、以下の式を満足するように逐次制御する。
Q1>Q2のときT(n+1)=T(n)+ΔT1
Q1<Q2のときT(n+1)=T(n)−ΔT2
ここで、ΔT1、ΔT2は正の補正時間である。
これにより、複数の濾過室へ供給される原液の性状を、複数の濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量を基に、的確にしかも瞬時に把握することができるため、原液の性状の変化に対応して、低圧ポンプから高圧ポンプへの運転切替え時期を容易に判断することが可能となる。
前記目的に沿う第2の発明に係るフィルタープレスにおける原液供給方法は、第1の発明に係るフィルタープレスにおける原液供給方法において、正の補正時間ΔT1と正の補正時間ΔT2との関係が、ΔT1=ΔT2である。
これにより、低圧ポンプから高圧ポンプへの運転切替え時期T(n)の補正時間ΔT1及びΔT2の変化量が、運転切替え時期T(n)の前後で等しくなるため、例えば原液の性状が変化し、低圧ポンプの作動時間を長くした後、急に原液の性状が変化して、低圧ポンプの作動時間を短くしなければならない状態が生じた場合においても、短時間のうちに低圧ポンプの作動時間を短くすることが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係るフィルタープレスにおける原液供給装置を使用したフィルタープレスの説明図、図2は同フィルタープレスにおける原料供給装置に使用した高圧ポンプの説明図、図3は同フィルタープレスにおける原料供給方法のフローチャート、図4は同フィルタープレスにおける原料供給方法を説明するグラフ、図5(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例に係るフィルタープレスにおける原料供給方法を適用した試験結果の説明図、比較例に係る低圧ポンプの運転時間が長い場合の説明図、比較例に係る低圧ポンプの運転時間が短い場合の説明図である。
【0008】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るフィルタープレスにおける原液供給装置10は、フィルタープレス11が備えた複数の濾板12のうち、隣り合う濾板12によって形成された複数の濾過室13へ、固液混合物からなる原液の一例である泥水14を、低圧ポンプ(圧送圧力を例えば1MPa程度まで高めることが可能なポンプ)15から高圧ポンプ(圧送圧力を例えば4MPa程度まで高めることが可能なポンプ)16に切り替えて供給するものである。
また、この原液供給装置10は、低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時の前後の特定時に、濾過室13から排出される濾液の単位時間当りの濾水量を検出する濾液検出手段の一例である流量計17と、流量計17で検出される運転切替え前の濾水量Q1及び運転切替え後の濾水量Q2を比較演算する濾液比較演算手段と、濾液比較演算手段での演算結果が、Q1>Q2の場合には、次回の運転切替え時を所定時間(この実施の形態では、例えば10〜300秒程度)だけ遅らせて低圧ポンプ15の作動(運転)時間を延長し、濾液比較演算手段での演算結果が、Q1<Q2の場合には、次回の運転切替え時を所定時間(この実施の形態では、例えば10〜300秒程度)だけ早めて低圧ポンプ15の作動時間を短縮するポンプ運転切替え制御手段とを有する。以下、詳しく説明する。
【0009】
フィルタープレス11は、複数の濾板12のうち、隣り合う濾板12によって濾過室13を形成し、更に濾過室13を開枠して脱水ケーキを排出することができるように、複数の濾板12が移動可能に配置されたフィルタープレス本体18と、このフィルタープレス本体18の下方に配置され、濾過室13への泥水14の充填時に濾過室13から排出される濾液19を受ける濾水受け20と、複数の濾過室13に泥水14を供給する低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16を備えた原液供給装置10とを有する。
このフィルタープレス11の上流側には、例えば浚渫、下水汚泥、建設残土等の高濃度難脱水性泥水を撹拌すると共に、例えば凝集剤等を添加して、スラリー状となった種々の泥水14を製造するスラリー槽21が、分岐して低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16にそれぞれ接続される配管22を介して配置されている。また、例えば配管22の分岐点より上流側には、打ち込みポンプ(図示しない)が形成され、これにより、低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16へそれぞれ泥水14を供給することが可能な構成となっている。
一方、フィルタープレス11の下流側には、濾過室13から排出される濾液19を受ける濾水受け20から、送液管23を介して送液される濾液19を貯留するための濾水槽24が配置されている。なお、この送液管23には、濾液19の単位時間当りの濾水量を検出するための流量計17が設けられている。
【0010】
原料供給装置10は、前記した低圧ポンプ15、高圧ポンプ16、及び流量計17と、濾液比較演算手段とポンプ運転切替え制御手段とを備えた例えばコンピュータ(図示しない)とを有している。
この流量計17は、流量計17で検出される運転切替え前の濾水量Q1及び運転切替え後の濾水量Q2の測定値を、瞬時にコンピュータに送信することが可能なように、コンピュータに接続されているため、コンピュータ内の濾液比較演算手段により測定値を基に比較演算を瞬時に行うことが可能となっている。
また、濾液比較演算手段により比較演算した演算結果を、コンピュータ内のポンプ運転切替え制御手段に送ることで、低圧ポンプ15の作動時間の延長、又は短縮を行うことが可能となる。なお、このコンピュータを、低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16の駆動源である例えば電動モータへ、作動及び停止の信号を送ることができるように接続することで、確実に低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16の作動及び停止を行うことが可能となる。
【0011】
そして、原料供給装置10に備えられた低圧ポンプ15と高圧ポンプ16は並列に配置されている。この低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16には、低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16で圧送された泥水14を、濾過室13へ圧送するため、下流側から上流側にかけて2つに分岐する配管25が接続され、しかもこの配管25の分岐点より上流側には、低圧ポンプ15と高圧ポンプ16の泥水14の送液を制御する切替えバルブ26、27がそれぞれ形成されている。なお、この切替えバルブ26、27の切替え制御は、上記したコンピュータで行うことが好ましい。
また、図2に示すように、この高圧ポンプ16は2台の往復ポンプ28を備えている。この往復ポンプ28は、例えば圧力容器29の内部に設けた可撓性弾性体膜30、31の膨縮を利用し流体を圧送する腹膜型圧送装置であり、その構成は、圧力容器29内を可撓性弾性体膜30、31で順次仕切り、駆動流体室32、中間流体室33及び被圧送流体室34を形成したものである。
【0012】
この2台の往復ポンプ28の駆動流体室32は、それぞれ配管35を介して往復シリンダー36に接続されており、往復シリンダー本体37内のピストン38の往復運動により、一方の往復ポンプ28の駆動流体室32内に駆動流体の一例である油が充填されれば、他方の往復ポンプ28の駆動流体室32内の油が、往復シリンダー本体37内へ移動する構成となっている。なお、この往復シリンダー36の軸39は、例えば油圧シリンダー等の駆動シリンダー40の軸41にカップリング42を介して連結されているため、往復シリンダー36は駆動シリンダー40により駆動される。
【0013】
また、2台の往復ポンプ28の被圧送流体室34には、スラリー槽21から送液される泥水14を、各被圧送流体室34へそれぞれ吸入させるため、上流側から下流側にかけて2つに分岐する吸入管43が接続され、この吸入管43の分岐点より下流側には、各被圧送流体室34への泥水14の吸入を制御する吸入弁44、45がそれぞれ形成されている。そして、2台の往復ポンプ28の被圧送流体室34には、各被圧送流体室34から複数の濾過室13へ泥水14の吐出を行うため、下流側から上流側にかけて2つに分岐する吐出管46が接続され、しかもこの吐出管46の分岐点より上流側には、濾過室13への泥水14の吐出を制御する吐出弁47、48がそれぞれ形成されている。
このように構成することで、往復シリンダー36により各駆動流体室32に油を流入、流出させると共に、可撓性弾性体膜30を膨張、収縮させ、中間流体室33の中間液、及び可撓性弾性体膜31の膨張、収縮動作を介して、被圧送流体室34内の泥水14を吸入弁44、45、吐出弁47、48の動きと連動させ、被圧送流体室34内に泥水14を吸入、又は被圧送流体室34内から泥水14を吐出することができる。なお、中間液としては、性質がよく知られた液体、例えば水等を使用することが好ましい。ここで、駆動シリンダー40、吸入弁44、45、吐出弁47、48は、それぞれコンピュータにより制御し作動させることが好ましい。
【0014】
従って、高圧ポンプ16の作動後は、この2台の往復ポンプ28を交互に動作させることで、一方の往復ポンプ28から濾過室13へ泥水14が吐出される場合は、他方の往復ポンプ28が、スラリー槽21から泥水14を吸入することが可能となるため、外見上は濾過室13へ連続的に泥水14を圧送することが可能となる。
なお、低圧ポンプ15については、例えば、従来公知の渦巻きポンプやダイヤフラムポンプ(スネークポンプ)等を使用することが可能である。
【0015】
続いて、本発明の一実施の形態に係るフィルタープレスにおける原液供給方法を、前記した原液供給装置10を用い、図3、図4を参照しながら説明する。
本発明の一実施の形態に係るフィルタープレスにおける原液供給方法は、フィルタープレス11が備えた複数の濾板12のうち、隣り合う濾板12によって形成された複数の濾過室13へ、固液混合物からなる泥水14を、最初は低圧ポンプ15を用いて、次に高圧ポンプ16を用いて供給する方法である。
【0016】
まず、ステップST1で、予め濾過室13へ供給する泥水14の性状(成分、粘性、固体含有粒子径、介在物の有無等の土質条件)を調査し、低圧ポンプ15と高圧ポンプ16の全作動時間が最短となるように低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期T(n)を設定し、低圧ポンプ15の運転を開始して、スラリー槽21から濾過室13への泥水14の供給を行う。このとき、低圧ポンプ15のみ作動しているため、低圧ポンプ15側の切替えバルブ26は開、高圧ポンプ16側の切替えバルブ27は閉となっている。
そして、ステップST2で、濾過室13への泥水14の供給を行うと共に、運転切替え時期T(n)の前の特定時(例えば、5〜300秒程度)における低圧ポンプ15の運転時の濾過室13から排出される濾液19の単位時間当りの濾水量(流量)Q1(以下、濾水量Q1とも言う)を、送液管23に形成された流量計17を用いて計測し、この計測値をコンピュータに送信する。
【0017】
ステップST3において、運転切替え時期T(n)で、コンピュータからの信号により、低圧ポンプ15を駆動する電動モータを停止し、低圧ポンプ15の運転を停止する(図4中のTL)と共に低圧ポンプ15側の切替えバルブ26を閉、高圧ポンプ16側の切替えバルブ27を開とする。
ステップST4では、高圧ポンプ16を駆動する電動モータを作動させ、高圧ポンプ16の運転を開始する。これにより、駆動シリンダー40が駆動し、往復シリンダー36内のピストン38が往復運動を始め、2つの往復ポンプ28が作動する。
この2つの往復ポンプ28は、一方の往復ポンプ28の吸入弁44を閉、吐出弁47を開、他方の往復ポンプ28の吸入弁45を開、吐出弁48を閉とすることで、一方の往復ポンプ28からの泥水14の吐出、及び他方の往復ポンプ28への泥水14の吸入を可能としている。
従って、往復シリンダー36の往復運動により、上記した動きを2つの往復ポンプ28で交互に行うことで、高圧ポンプ16から連続的に泥水14を濾過室13へ供給することが可能となる。
【0018】
ステップST5では、濾過室13への泥水14の供給を行うと共に、運転切替え時期T(n)の後の特定時(例えば、5〜300秒程度)における高圧ポンプ16の運転時の濾過室13から排出される濾液19の単位時間当りの濾水量(流量)Q2(以下、濾水量Q2とも言う)を、流量計17を用いて計測し、この計測値をコンピュータに送信する。
なお、運転切替え時期T(n)から濾水量Q1を検出する特定時までの間隔ΔTLと、運転切替え時期T(n)から濾水量Q2を検出する特定時までの間隔ΔTHとは、高圧ポンプ16の作動状態が安定するまでの時間を考慮すれば、ΔTL≦ΔTHとすることが好ましい(図4参照)。
【0019】
ステップST6で、コンピュータに送信された濾水量Q1及び濾水量Q2の測定値を、コンピュータ内の濾液比較演算手段を用いて比較演算する。
この演算結果に基づき次回以降の低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期T(n+1)を、以下の式を満足するように、コンピュータ内のポンプ運転切替え制御手段を用い、低圧ポンプ15の作動時間を補正する。この補正した運転切替え時期T(n+1)を、次回の運転切替え時期として使用し、低圧ポンプ15の作動時間を逐次制御する。
Q1>Q2のときT(n+1)=T(n)+ΔT1 ・・・・・(1)
Q1<Q2のときT(n+1)=T(n)−ΔT2 ・・・・・(2)
ここで、ΔT1、ΔT2は正の補正時間である。
【0020】
Q1>Q2の場合、低圧ポンプ15の作動時間が短く、高圧ポンプ16の能力を発揮できる領域の前で運転切替えが行われていることを意味する。このため、運転切替え後の濾過室13への泥水14の供給量は、低圧ポンプ15の流量よりも少ない高圧ポンプ16の流量に比例するので、低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16の全作動時間が長くなり、濾過効率が低下する。一方、Q1<Q2の場合、低圧ポンプ15の運転時間が長く、高圧ポンプ16の能力が発揮できる領域まで、低圧ポンプ15を作動させていることを意味する。このため、高圧ポンプ16の能力が発揮できる領域において、圧送圧力が高圧ポンプ16よりも低い低圧ポンプ15を使用し、濾過室13へ泥水14の圧送が行われるので、低圧ポンプ15及び高圧ポンプ16の全作動時間が長くなり、濾過効率が低下する。
従って、前記した(1)式、(2)式に示すように、Q1>Q2の場合に、次回の運転切替え時期T(n+1)をΔT1だけ遅らせて低圧ポンプ15の作動時間を延長し、Q1<Q2の場合には、次回の運転切替え時期T(n+1)をΔT2だけ早めて低圧ポンプ15の作動時間を短縮する。ここで、Q1=Q2の場合は、低圧ポンプ15の作動時間を変えることなく、次回の運転切替え時期T(n+1)に、運転切替え時期T(n)を使用する。
【0021】
なお、上記した正の補正時間ΔT1(例えば、5〜300秒程度)と正の補正時間ΔT2(例えば、5〜300秒程度)との関係は、ΔT1=ΔT2であることが好ましい。
これにより、低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期T(n)の補正時間ΔT1及びΔT2の変化量を、運転切替え時期T(n)の前後で等しくすることができる。従って、例えば泥水14の性状が変化し、低圧ポンプ15の作動時間を長くした後、急に泥水14の性状が変化して、低圧ポンプ15の作動時間を短くしなければならない状態が生じたとしても、短時間のうちに低圧ポンプ15の作動時間を短くすることが可能となる。
なお、泥水14の性状が、低圧ポンプ15の作動時間を延長する方向、又は短縮する方向に大きく進行し易い場合等は、予めΔT1>ΔT2、又はΔT1<ΔT2の条件設定を行うことも可能である。
【0022】
ステップST7では、高圧ポンプ16による濾過室13への泥水14の供給が所定時間行われた後、高圧ポンプ16を駆動する電動モータを停止し、高圧ポンプ16の運転を停止する。
これにより、泥水14の脱水は完了し、隣り合う濾過室13に形成された脱水ケーキは、濾過室13を開枠することで排出される。なお、低圧ポンプ15の運転開始から、次回の低圧ポンプ15の運転開始までの時間は、通常例えば30〜60分間程度である。
前記した動作を繰返し行うことで、泥水14の性状の変化に対応した低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期の補正を容易に行うことが可能となる。
従って、フィルタープレス11において処理を対象とする汚泥、残土等の性状が、時系列でランダムに変化しても、その都度泥水14の性状を分析することなく、泥水14の性状に応じた濾過を容易に実施することができるため、濾過効率を高めることが可能となる。
【0023】
【実施例】
本発明に係るフィルタープレスにおける原液供給装置10及びその供給方法を適用し、試験を行った結果について説明する。
なお、ここでは、固形物の濃度が同一のスラリー状となった泥水を使用して、低圧ポンプ15の運転時間を種々変えた後、引き続き高圧ポンプ16を運転して、泥水14を濾過することで発生する脱水ケーキの含水量が一定値となるまでの濾過時間の測定を行った。なお、低圧ポンプ15の運転時間をTL、高圧ポンプ16の運転時間をTHとし、濾過時間、即ち低圧ポンプ15と高圧ポンプ16の運転時間を(TL+TH)とする。
【0024】
図5(A)に示すように、本発明の一実施の形態に係るフィルタープレスにおける原液供給装置及びその供給方法を適用することで、低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期T(n)を適正化できたため、低圧ポンプ15と高圧ポンプ16の運転時間(TL+TH)を短縮でき、濾過効率を高めることができた。
図5(B)に示すように、低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期T(n)が遅すぎる(低圧ポンプ15の運転時間TLを長くした)場合、脱水ケーキの含水量が一定値になるまでの濾過時間が長くなり、濾過効率が悪くなっている(Q1<Q2の場合)。
従って、前記した(2)式により、低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期T(n)を早めた運転切替え時期T(n+1)を設定することで、次回の濾過時間を短縮することが可能となる。
また、図5(C)に示すように、低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時間が早過ぎる(低圧ポンプ15の運転時間TLを短くした)場合、脱水ケーキの含水量が一定値になるまでの濾過時間が長くなり、濾過効率が悪くなっている(Q1>Q2の場合)。
従って、前記した(1)式により、低圧ポンプ15から高圧ポンプ16への運転切替え時期T(n)を遅くした運転切替え時期T(n+1)を設定することで、次回の濾過時間を短縮することが可能となる。
【0025】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、前記実施の形態においては、濾過室から排出される濾液を受ける濾水受けと、濾水槽との間に形成された送液管に、濾液検出手段として流量計を設けた場合について説明した。しかし、濾液の単位時間当りの濾水量を検出することが可能な他の位置、例えば濾水槽に、他の濾液検出手段、例えばレベル計を設置し、濾水槽に貯留される濾液の積算量から、濾液の単位時間当りの濾水量を求めることも可能である。
また、前記実施の形態においては、2台の往復ポンプを備えた高圧ポンプについて説明したが、高圧ポンプは1台の往復ポンプを備えることも可能であり、他の高圧ポンプ、例えばスクイズポンプ等を使用することも可能である。
【0026】
【発明の効果】
請求項1記載のフィルタープレスにおける原液供給装置においては、複数の濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量を基に、複数の濾過室へ供給される原液の性状の変化に対応して、低圧ポンプから高圧ポンプへの運転の切替えを自動的に実施することが可能となる。
従って、フィルタープレスにおいて処理を対象とする汚泥、残土等の性状が、時系列でランダムに変化しても、大掛かりな装置を必要とせず、しかも熟練した技術を有する要員も必要とすることなく、濾過効率を高めることが可能なフィルタープレスにおける原料供給装置を提供することができる。
【0027】
請求項2及び3記載のフィルタープレスにおける原液供給方法においては、複数の濾過室へ供給される原液の性状を、複数の濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量を基に、的確にしかも瞬時に把握することができるため、原液の性状の変化に対応して、低圧ポンプから高圧ポンプへの運転切替え時期を容易に判断することが可能となる。
従って、フィルタープレスにおいて処理を対象とする汚泥、残土等の性状が、時系列でランダムに変化しても、その都度原液の性状を分析することなく、原液の性状に応じた濾過を容易に実施することができるため、濾過効率を良好にすることが可能となる。
特に、請求項3記載のフィルタープレスにおける原液供給方法においては、低圧ポンプから高圧ポンプへの運転切替え時期T(n)の補正時間ΔT1及びΔT2の変化量が、運転切替え時期T(n)の前後で等しくなるため、例えば原液の性状が変化し、低圧ポンプの作動時間を長くした後、急に原液の性状が変化して、低圧ポンプの作動時間を短くしなければならない状態が生じた場合においても、短時間のうちに低圧ポンプの作動時間を短くすることが可能となる。
従って、原液の性状に応じた濾過を更に容易に実施することができるため、濾過効率を更に良好にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフィルタープレスにおける原液供給装置を使用したフィルタープレスの説明図である。
【図2】同フィルタープレスにおける原料供給装置に使用した高圧ポンプの説明図である。
【図3】同フィルタープレスにおける原料供給方法のフローチャートである。
【図4】同フィルタープレスにおける原料供給方法を説明するグラフである。
【図5】(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例に係るフィルタープレスにおける原料供給方法を適用した試験結果の説明図、比較例に係る低圧ポンプの運転時間が長い場合の説明図、比較例に係る低圧ポンプの運転時間が短い場合の説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれポンプの流量特性を示す説明図、土質の変化における濾過圧力と濾過時間との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10:原液供給装置、11:フィルタープレス、12:濾板、13:濾過室、14:泥水(原液)、15:低圧ポンプ、16:高圧ポンプ、17:流量計(濾液検出手段)、18:フィルタープレス本体、19:濾液、20:濾水受け、21:スラリー槽、22:配管、23:送液管、24:濾水槽、25:配管、26:切替えバルブ、27:切替えバルブ、28:往復ポンプ、29:圧力容器、30:可撓性弾性体膜、31:可撓性弾性体膜、32:駆動流体室、33:中間流体室、34:被圧送流体室、35:配管、36:往復シリンダー、37:往復シリンダー本体、38:ピストン、39:軸、40:駆動シリンダー、41:軸、42:カップリング、43:吸入管、44:吸入弁、45:吸入弁、46:吐出管、47:吐出弁、48:吐出弁
Claims (3)
- フィルタープレスが備えた複数の濾板のうち、隣り合う該濾板によって形成された複数の濾過室へ、固液混合物からなる原液を、低圧ポンプから高圧ポンプに切り替えて供給するフィルタープレスにおける原液供給装置において、
前記低圧ポンプから前記高圧ポンプへの運転切替え時の前後の特定時に、前記濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量を検出する濾液検出手段と、
該濾液検出手段で検出される前記運転切替え前の濾水量Q1及び前記運転切替え後の濾水量Q2を比較演算する濾液比較演算手段と、
前記濾液比較演算手段での演算結果が、Q1>Q2の場合には、次回の運転切替え時期T(n+1)をΔT1だけ遅らせて前記低圧ポンプの作動時間を延長し、前記濾液比較演算手段での演算結果が、Q1<Q2の場合には、次回の運転切替え時期T(n+1)をΔT2だけ早めて前記低圧ポンプの作動時間を短縮するポンプ運転切替え制御手段とを有することを特徴とするフィルタープレスにおける原液供給装置。
ここで、ΔT1、ΔT2は正の補正時間である。 - フィルタープレスが備えた複数の濾板のうち、隣り合う該濾板によって形成された複数の濾過室へ、固液混合物からなる原液を、最初は低圧ポンプを用いて、次に高圧ポンプを用いて供給するフィルタープレスにおける原液供給方法において、
予め前記低圧ポンプから前記高圧ポンプへの運転切替え時期T(n)を設定して前記原液の供給を行うと共に、前記運転切替え時期T(n)を中心としてその前後の特定時における前記低圧ポンプ運転時の前記濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量Q1と、前記高圧ポンプの運転時の前記濾過室から排出される濾液の単位時間当りの濾水量Q2とを比較演算して、この演算結果に基づき次回以降の前記低圧ポンプから前記高圧ポンプへの運転切替え時期T(n+1)を、以下の式を満足するように逐次制御することを特徴とするフィルタープレスにおける原液供給方法。
Q1>Q2のときT(n+1)=T(n)+ΔT1
Q1<Q2のときT(n+1)=T(n)−ΔT2
ここで、ΔT1、ΔT2は正の補正時間である。 - 請求項2記載のフィルタープレスにおける原液供給方法において、前記正の補正時間ΔT1と前記正の補正時間ΔT2との関係は、ΔT1=ΔT2であることを特徴とするフィルタープレスにおける原液供給方法。
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