JP4180376B2 - 硬質表面用酸性抗菌洗浄剤 - Google Patents

Description

本発明は、洗浄すべき表面に残る物質の残留量を減少させる水性で液状の洗浄及び抗菌組成物に関する。本発明の組成物は、ある種の有機カルボン酸類と、ベンジルアルコールやある種の低分子量グリコールエーテル類のような水に難溶性の脂肪族一価アルコール溶媒とを特定の量で相乗的に組み合わせたものを含有する。アニオン系の硫酸化又はスルホン化界面活性剤及び共溶媒(co-solvent)もこの好適な組成物に含まれる。

種々の表面上に存在する病原性微生物、特にこのような微生物が比較的長期にわたって活動し続けうる硬質表面(hard surfaces)上からの病原性微生物の除去は、消費者が依然として望んでいることである。従来では、四級アンモニウム化合物、高レベルのある種のアルコール、及び酸化剤が家庭用の抗菌性洗浄製品に用いられている。これらのタイプの薬剤を用いることの欠点は、目や皮膚にかゆみを生じる傾向があること、臭いが不快であること、揮発性有機化合物（ＶＯＣ）の量が多いこと、そして潜在的に表面を損傷する作用を有することにある。いくつかのタイプの硬質表面、特にガラス、施釉セラミック、及び磨き金属は、更に洗浄及び消毒の問題を呈する。洗浄後のこれらの表面の外観は、使用者が拭き取った後でも、表面上に残った洗浄組成物の残留物によってマイナスの影響を受ける。洗浄後に真水ですすぐことによってこれらの見苦しい残留物の除去が促されるが、このステップによって洗浄プロセスに更なる作業が加えられてしまう。よって、種々の硬質表面、特にガラス、施釉セラミック、及び磨き金属上で見苦しい残留物を残すことなく用いることのできる洗浄及び消毒組成物が求められている。また、このような組成物が主に水からなり、コスト、安全性、及び配合物であるＶＯＣを最小にするためにエタノール又はイソプロパノールなどのアルコール類を大量に使用しないようにすることが有益である。

ある種の酸が抗菌特性をもつことで公知であり、米国環境保護局（ＵＳＥＰＡ）などの政府機関により抗菌剤として認可されている。例えば、国立農薬情報検索システム(the National Pesticide Information Retrieval System)(環境及び規制情報システムセンター(Center for Environmental and Regulatory Information Systems)、パーデュー大学(Purdue University)、インディアナ州ウェストラファイエット(West Lafayette, Indiana))を用いて、現在のＵＳＥＰＡの殺菌剤登録データベースを検索することができる。このような検索は、クエン酸、塩酸、乳酸、燐酸、プロピオン酸、及び硫酸などの物質がＥＰＡの認可した活性抗菌剤であることを示している。

食品及び工業衛生の用途において現在使用されている抗菌性酸組成物の多くは希釈可能な濃縮物を使用する傾向にあり、そのいくつかは塩酸、燐酸、有機燐酸、硫酸、又は有機スルホン酸などの強酸を用いている。しかしながら、強酸、特に燐を含有する酸を含む洗浄組成物の使用は、消費者が使用する家庭用洗浄製品の配合には望ましくない。乳酸及びクエン酸などの有機弱酸が望ましく、これらは抗菌活性剤として米国環境保護局により認可されている。これらは弱酸であるため、その使用は一般に、使用者及びこれらが使用される表面の双方にとって鉱酸よりも安全である。しかしながら、これらの酸のみを水溶液中に低レベルで用いた場合、これらの酸は一般に強力な抗菌特性をもたない。組成物の抗菌活性を高め、また洗浄後の表面上の見苦しい残留物を生じないような第２の薬剤を、低レベルのこのような弱酸と組み合わせて使用することが理想的である。

酸−アニオン界面活性剤のある種の組み合わせが抗菌洗浄剤及び表面処理剤を処方するのに用いることができることも公知である。例えば、酸−アニオン系消毒剤が、食品加工設備及び乳製品業のような、種々の産業用抗菌の用途において満足に使用されている。非揮発性界面活性剤がこれらの配合に用いられているため、一度使用すると、清浄水ですすいで落とさない限り、非揮発性界面活性剤が多少表面に残ってしまう。通常、最適な効力は３以下のｐＨで得られる。腐食の問題を回避し、安全性の懸念を最小にするには約２乃至３のｐＨ範囲が好ましく、この範囲では、低乃至中程度の硬水の汚れ(soiling)、即ちしみ(spotting)に対する洗浄効力も若干ある。

従来技術には硬質表面を洗浄するための多くの組成物があり、そのいくつかは酸性の抗菌又は殺菌成分を含有する。これらの中でも、キャランダングら(Carandang, et al.)の米国特許第3,969,258号は、通常高い発泡性を示すアニオン界面活性剤を含有する低発泡性の酸性消毒剤組成物を教示している。Ｃ₈乃至Ｃ₁₈の脂肪族アルコール又はＣ₉乃至Ｃ₁₂のアルキルフェノールと多価金属塩との発泡を抑制する組み合わせが存在し、更に可溶化したグリコール類及びアルコールが存在する場合もある。しかしながら、この参考文献は、望ましい結果を達成するには３．５未満のｐＨが必要であり、クエン酸などの弱酸を使用できるが、所望のｐＨを得るには一般に弱酸と組み合わせて強酸が使用されることを示している。

ラマンチャンドラン(Ramanchandran)は、米国特許第3,915,633号において、織物の汚れのしみ(stain)形成金属イオンを錯化することのできる有機酸を主要活性成分として用いた予洗液の組み合わせを教示している。有機錯化酸は、濃度１乃至２０％のクエン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの混合物から選択される。

ベイカーら(Baker et al.)は、米国特許第4,690,779号において、すじ状の痕を実質的に生じない(substantially non-streaking)硬質表面用水性洗浄組成物を教示しており、この組成物は、界面活性剤約０．０５％乃至２５．０％、分子量５０００未満分岐なしの直鎖ポリマー約０．０５％乃至２５．０％、水性溶媒約０．０５％乃至２５．０％、ビルダー約０．０５％乃至２５．０％、及び水（残りの量）を含有する。よって、この参考文献の洗浄剤は、水の他に界面活性剤、ポリマー、溶媒及びビルダーを含む。

酸性ｐＨでマツ油及び有機油溶性酸を含有する、殺菌性をもつ液状の硬質表面洗浄剤が、スポールディングら(Spaulding, et al)により米国特許第4,867,898号において教示されている。この参考文献は、ベンゼンカルボン酸やヒドロキシカルボン酸のような有機油溶性酸をマツ油及び任意の洗浄剤と組み合わせて使用することを教示している。

ブラウン−スクロボットら(Brown-Skrobot, et al)は、米国特許第4,975,217号において、人間の皮膚に直接塗布する殺菌組成物を教示しており、この組成物は活性剤として有機酸及び界面活性剤を含み、必要に応じてアルコールも使用する。この組成物は、ローション、スプレー、及びクレンザーで使用するように意図されている。

エッゲンスパーガーら(Eggensperger, et al)は、米国特許第5,112,541号において水性の表面殺菌組成物を教示しており、この組成物は、必須成分としてエチルアルコール及びイソプロピルアルコールの混合物、アニオン界面活性剤の混合物、並びに約２乃至６又は約８乃至１２のｐＨを与えるｐＨ調節剤を含有する。

米国特許第5,436,008号において、リヒターら(Richter et al.)は抗菌組成物を教示しており、この組成物は、キャリヤを大部分と、有効消毒量のオクタン酸又はオクタン酸誘導体、及び硫黄含有化合物を含有し、酪農場、食品及び飲料加工プラント、台所、給食施設、並びに家庭の汎用ユーティリティ用にこの組成物を使用することができる。

前述に加えて、カミングズ(Cummings)の米国特許第5,750,482号はすじ状の痕を生じないガラス洗浄組成物を教示している。この組成物は、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、界面活性剤、低沸点有機共溶媒及び高沸点有機共溶媒の混合物を含有する有機共溶媒、ビルダー、並びに水を含む。この組成物は、ガラス洗浄組成物として約３．５乃至約１１．５のｐＨ範囲で有効である。

費用と、処理すべき表面に及ぼしうる抗菌組成物の目に見える好ましくない影響を最小にするために、洗浄後に表面に残る抗菌剤の量を最小にしながらも、黄色ブドウ球菌及び肺炎桿菌などの病原性微生物に対する効力を保つことが望ましい。消費者によって用いられる酸ベースの殺生化学反応では、使用者に有害なほど強い酸性にすることなく、有効な酸性ｐＨ範囲（約ｐＨ４又はそれ未満）を保つことも望ましい。下記により詳細に説明するように、弱酸性有機カルボン酸と選択された揮発性低分子量一価アルコール溶媒の組み合わせにより、広範囲の微生物に対して有効な殺生組成物がもたらされることがわかった。本発明の好適な実施の形態では、汚れた表面の湿潤及び洗浄を改善し、組成物の殺生特性を更に高めるために、低レベルの硫酸化又はスルホン化アニオン界面活性剤も用いられる。本発明の洗浄特性及び蒸発特性を更に改善するために、共溶媒も本発明の好適な実施の形態に含まれる。このような組成物は、洗浄された表面に見苦しい残留物を実質的に残さず、使用後の真水によるすすぎを不要にすることがわかった。

従って、本発明の目的は、残留抗菌活性剤を低濃度で用いる新規の抗菌洗浄液を提供することである。

本発明の更なる目的は、高レベルの見苦しい残留物を洗浄表面に残すことなく有効な抗菌特性を提供する、新規の硬質表面用洗浄組成物を提供することである。

本発明の第３の目的は、消費者の家庭における使用で一般に安全とされるｐＨ範囲で有効な酸ベースの抗菌化学作用を提供する、新規の硬質表面用洗浄組成物を提供することである。

更なる目的は、はっきりと見える付着物を表面に残さずに表面を洗浄しながら、微生物病原菌を表面から減少させる方法を提供することである。

選択された有機カルボン酸及び特定の揮発性一価アルコール溶媒を低レベルで使用した場合、同レベルの有機カルボン酸のみを含有する配合物にくらべて優れた抗菌特性をもつ洗浄組成物がもたらされることがわかった。汚れた表面上の配合物の湿潤特性及び洗浄特性を改善し、殺生活性を更に高めるために、好適な組成物は非常に低レベルの硫酸化又はスルホン化アニオン界面活性剤も含有する。本発明の洗浄特性及び蒸発特性を更に改善するために、共溶媒も本発明の好適な実施の形態に含まれる。更に、これらの組成物が洗浄剤として硬質表面上で使用された場合、拭き取り及び乾燥による見苦しい残留物を実質的に残さない。

本発明は抗菌洗浄組成物に関し、この組成物は、２５℃で水中で約１×１０^-2乃至約１×１０^-5のイオン化定数を有するものから選択される少なくとも１つの有機カルボン酸を約０．０１乃至約０．４重量％含み、組成物のｐＨが２５℃で約２乃至約４である。更に、本発明の組成物は、脂肪族アルコール類又はグリコールエーテルからなる群から選択される少なくとも１つの水に難溶性の揮発性一価アルコール溶媒を約０．２５重量％乃至約５重量％含有する。

また、好適な態様において、本発明の組成物は、アルキル置換基又はアリール置換基を有するアルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも１つの硫酸化又はスルホン化アニオン界面活性剤を約０．０１乃至約０．３重量％含有する。

また、本発明の他の好適な態様において、組成物は、２５℃で水と完全に混和する少なくとも１つの低分子量一価アルコール共溶媒を約０．５重量％乃至約１０重量％含有する。本発明の更に他の好適な態様において、組成物は１，２−アルカンジオール、１，３−アルカンジオール、２，３−アルカンジオール、又は２，４−アルカンジオールを約０．０５乃至１重量％含有し、このようなジオールは２００原子質量単位未満の分子量を有する。

本発明の他の目的、利点及び特徴は、明細書及び特許請求の範囲を検討した上で当業者には明らかになるであろう。

本発明は、少なくとも１つの有機カルボン酸を水溶液の約０．０１乃至約０．４重量％含有する低残留性抗菌洗浄組成物に関する。有機カルボン酸は、２５℃で水中で約１×１０^-2乃至約１×１０^-5のイオン化定数を有する群から選択され、組成物のｐＨは２５℃で約２乃至約４である。このｐＨ範囲は、低乃至中程度の硬水のしみ（鉱物の汚れ）に対して多少の洗浄効力をもたらすとも考えられている。

有機カルボン酸類の例としては、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロパン酸、安息香酸、フタル酸、及びこれらの混合物が挙げられる。他の好適な有機カルボン酸類としては、ポリ（アクリル酸）及びポリ（マレイン）酸のホモポリマー及びコポリマーなどの低分子量高分子有機カルボン酸（平均分子量Ｍ_Wが約６００００原子質量単位未満）が挙げられる。例として、ＢＦグッドリッチスペシャリティケミカルズ(BF Goodrich Speciality Chemicals)社から入手可能なGoodrite K-7058（登録商標）、及びＦＭＣ社(FMC Corporation)から入手可能なBelclene 901（登録商標）が挙げられる。

組成物は、クエン酸、乳酸、グリコール酸、マロン酸、酢酸、プロパン酸、平均分子量が約１０００乃至約１００００原子質量単位である高分子酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される酸を約０．０５乃至０．３重量％含有することが好ましい。

また、本発明の組成物は、脂肪族アルコール類又はグリコールエーテルからなる群から選択される少なくとも１つの水に難溶性の揮発性一価アルコール溶媒を約０．２５乃至約５重量％含有する。「水に難溶性である」という用語は、２５℃で約１０重量％未満の水溶性を有する、と定義される。溶媒の例としては、ｎ−ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、及び下記からなる群から選択されるグリコールエーテル類が挙げられる。
（１）Ｒ−Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ₂−ＯＨ（式中、Ｒはｎ−ペンチル、ｎ−ヘキシル、フェニル 又はベンジル）
（２）Ｒ'−Ｏ−（ＣＨ₂ＣＨ₂−Ｏ）₂ＯＨ（式中、Ｒ'はｎ−ヘキシル、フェニル又 はベンジル）
（３）Ｒ''−Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）ＯＨ（式中、Ｒ''はｎ−ブチル、ｎ−ペンチル 、ｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）
（４）Ｒ''−Ｏ（ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）Ｏ）₂Ｈ（式中、Ｒ''はｎ−ブチル、ｎ−ペン チル、ｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）
従って、前述の説明によると、好適な溶媒は、Ｒがｎ−ペンチル、ｎ−ヘキシル、フェニルもしくはベンジルであり、Ｒ'がｎ−ヘキシル、フェニルもしくはベンジルであるエチレングリコールエーテル又はジエチレングリコールエーテル、又はＲ''がｎ−ブチル、ｎ−ペンチル、ｎ−ヘキシル、フェニルもしくはベンジルを含むプロピレングリコールエーテル又はジプロピレングリコールエーテルである。本発明の組成物は、２５℃で水中への最大の溶解度を得るために必要な、約５０乃至９５重量％の溶媒を含有することが好ましい。

本発明の好適な態様は、下記からなる群から選択される少なくとも１つのアニオン界面活性剤を約０．０１乃至約０．３重量％含有する抗菌組成物に関する。
(i) Ｃ₈乃至Ｃ₁₆の直鎖アルキル硫酸塩
(ii) Ｃ₈乃至Ｃ₁₆のアルキルスルホン酸塩
(iii) Ｃ₈乃至Ｃ₁₆のアルキルベンゼンスルホン酸塩
(iv) Ｃ₈乃至Ｃ₁₆のアルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩
(v) Ｃ₄乃至Ｃ₁₆のアルキル化ナフタレンスルホン酸塩
アニオン界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム（以下「ＳＬＳ」とする）などのアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム（以下「ＳＤＢＳ」とする）などのアルキルベンゼンスルホン酸塩、又はこれらの混合物が好ましい。他の好適なアニオン界面活性剤としては、ダウケミカル社(The Dow Chemical Company)からDowfax 2A1（登録商標）という商品名で販売されているようなドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸二ナトリウム、又はステパン社(Stepan Company)のBioterge PAS-8（登録商標）などのｎ−オクチルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。

アニオン界面活性剤は、コストが比較的低いという理由で、アルカリ金属又はアンモニアカチオンを用いたものから選択されることが最も好ましい。最も好適なアルカリ金属はナトリウムである。何故ならば、これらのアニオン界面活性剤のナトリウム塩は市販品を広く入手し易く、低コストだからである。アリールスルホン酸塩アニオン界面活性剤の酸の形を用いてもよい。好適な例としては、ステパン社の商品名Biosoft（登録商標）S-100又はダウケミカル社のDowfax 2A0（登録商標）で販売されているような、ドデシルベンゼンスルホン酸及びドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸が挙げられる。

例えばエチルアルコール、プロピルアルコール又は完全に水溶性のグリコールエーテル類を添加することによって、完全に水混和性の揮発性一価共溶媒がこれらの水溶液中に含有される。これらの溶媒は、組成物の洗浄特性及び蒸発特性を強化するために用いられる。揮発性溶媒の例としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、及び下記の式からなる群から選択されるグリコールエーテル類が挙げられる。
（ａ）Ｒ−Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ₂−ＯＨ（式中、Ｒはエチル、プロピル又はブチル）
（ｂ）Ｒ'−Ｏ−（ＣＨ₂ＣＨ₂−Ｏ）₂ＯＨ（式中、Ｒ'はエチル、プロピル、ブチル又はペンチル）
（ｃ）Ｒ''−Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）ＯＨ（式中、Ｒ''はメチル、エチル又はプロピル）
（ｄ）Ｒ''−Ｏ（ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）Ｏ）₂Ｈ（式中、Ｒ''はメチル又はエチル）
グリコールエーテルの例としては、ユニオンカーバイド社(Union Carbide Corp.)からCarbitol（登録商標）という商品名で入手可能なジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びダウケミカル社からDowanol DPM（登録商標）という商品名で入手可能なジプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。使用の際には、１つ以上の共溶媒が一般に溶液の約０．５乃至約１０重量％、好ましくは約１乃至約５重量％の総量で存在する。

本発明の好適な形態は、１，２−アルカンジオール、１，３−アルカンジオール又は２，４−アルカンジオールを低レベルで含有してもよく、このようなジオールの分子量は２００原子質量単位未満である。ジオールの例としては、１，２−プロパンジオール、２−メチル−２，４−ペンタンジオール、及び１，２−オクタンジオールが挙げられる。使用の際、これらのジオールは一般に溶液の約０．０５乃至約１重量％、好ましくは約０．１乃至約０．５重量％の量で存在する。前述のアルカンジオールを含有することで、本発明の洗浄特性及び蒸発特性が改善される。

本発明の溶液は水性でも非水性でもよい。水溶液が最も好ましい。本発明の水溶液は一般に、約８５乃至約９９重量％、好ましくは約９０乃至約９８重量％の量の水を含有する。

洗浄技術及び消毒技術において公知の他の添加剤を本発明の溶液に含ませてもよい。このような添加剤は、例えば湿潤剤（即ち、フッ素界面活性剤）、着色剤、芳香剤、保存剤、及び安定剤を含む。

更に、本発明は、拭き取り、モップかけ、スプレー、霧吹き、滴下などによって組成物を基体に適用することにより、表面に存在する微生物の汚染を洗浄し、同時に汚染を減少させる方法に関する。この方法は、直接物理的に除去することなく溶液を基体に適用する単一の工程を含んでもよいし、スプレーの後に布で拭き取るなど、適用工程及び除去工程の双方を含んでもよい。この方法は、本発明の抗菌溶液で予め湿らせた布製の拭き取り基体の使用を含んでもよい。

下記の実施例は、本発明のいくつかの好適な実施の形態を説明するものとして意図される。組成物中の成分の量は、特に指定がない限り、水溶液中の重量％で表される。下記の実施例では、用いられる種々の物質は以下のように省略される。
ＬＡ 乳酸
ＣＡ クエン酸
ＧＡ グリコール酸
ＥＧＰＥ エチレングリコールｎ−ペンチルエーテル
ＤＥＧＨＥ ジエチレングリコールｎ−ヘキシルエーテル
ＥＰｈ エチレングリコールフェニルエーテル
ＢＡ ベンジルアルコール
Carbitol ジエチレングリコールエチルエーテル
ＤＰＭ ジプロピレングリコールメチルエーテル
ＩＰＡ イソプロパノール

実施例１：選択された溶媒の水に対する溶解度の値
本発明での使用に適した種々の溶媒の溶解度を、難溶性の溶媒又は完全に可溶性の共溶媒として表１に示す。

参考文献：
１．ユニオンカーバイド社の製品安全性データシート−ペンチルセロソルブ
２．ユニオンカーバイド社のグリコールエーテルのパンフレット
３．ダウケミカル社のグリコールエーテルのハンドブック
４．メルクインデックス、第１１版

実施例２：有機カルボン酸及び／又は難溶性の脂肪族アルコールもしくはグリコールエーテルを含有する組成物の消毒効力
本発明の低残留性硬質表面用洗浄剤配合物の消毒効力を、米国環境保護局の非食品接触消毒剤テストＤＩＳ／ＴＳＳ−１０（１９８２年１月７日）に基づいて評価した。具体例に示すように、ガラスのスライドのテスト表面を使用して３０秒又は１分の接触時間を用いた。これらの処方はワンステップの抗菌洗浄剤として使用されるため、ウシ胎仔血清を５．０重量％の濃度で接種剤に添加し、洗浄前の一般的な非食品接触表面上に見られることが予測されるような有機の汚れの負荷量をシミュレートした。

黄色ブドウ球菌(S. aureus)、肺炎桿菌(K. pneumoniae)、及び豚コレラ菌(S. choleraesius)に対するテスト溶液の効力を評価した。対照試料として、テスト溶液と同一の方法でTriton X-100（オキシエチレン９−１０モルを有するイソオクチルフェノキシル−ポリエトキシエタノール）の０．０１％溶液を用いて並行テストを行った。テスト溶液の結果を対照試料と比較し、テスト微生物対対照試料の計数の「Log Kill」として表２に示す。５の「Log Kill」とは、微生物の９９．９９９％が死滅したことを意味する。

米国環境保護局によって設けられた消毒剤に対する効力の要件を満たすには、並行対照試料の計数と比較して５分以内で少なくとも９９．９％（≧３ log）の細菌の減少を示す必要がある。表２に示されたデータは、本発明の配合物が、ＥＰＡの基準を満たすのに必要な時間よりも大幅に短い時間（１分対５分）で細菌のより大幅な減少を達成できることを示している。表２に示すように、いくつかのアルコール溶媒及びグリコールエーテル溶媒と低レベルの有機カルボン酸の組み合わせにより、S. aureus及びK. pneumoniaeに対する殺生効力の増大にみられるように、かなりの抗菌効力をもつ組成物が生成される。このことは、ＥＧＰＥ、ＤＥＧＨＥ、ＥＰｈ、及びＢＡに関して示されており、これらは全て水に対する溶解度が限られている（２５℃で１０重量％未満の水溶性）ことを示している。これに対し、carbitol、ＤＰＭ及びＩＰＡは完全に水混和性であり、S. aureus及びK. pneumoniae細菌に対する結果にみられるように、これらの溶媒が水性の酸性溶液中で希釈された濃度で使用された場合、有機カルボン酸類が低レベルでは顕著な抗菌相乗作用はみられない。

実施例３：有機カルボン酸、難溶性のグリコールエーテル、スルホン化アニオン界面活性剤、並びに更なるアルコール及びグリコールエーテル溶媒を含有する組成物の消毒効力
米国環境保護局によって設けられた消毒剤に対する効力の要件を満たすには、並行対照試料の計数と比較して５分以内で少なくとも９９．９％（≧３ log）の細菌の減少を示す必要がある。

表３Ｂに示されたデータは、本発明の配合物が、ＥＰＡの基準を満たすのに必要な時間よりも大幅に短い時間（３０秒対５分）で細菌のより大幅な減少を達成できることを示している。

実施例４：有機カルボン酸、難溶性のグリコールエーテル、スルホン化アニオン界面活性剤、並びに更なるアルコール及びグリコールエーテル溶媒を含有する組成物の消毒効力の評価
黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、及び豚コレラ菌をテスト微生物として使用する標準のＡＯＡＣ殺菌消毒剤スプレーテスト(Germicidal Disinfectant Spray Test)プロトコルによって配合物の消毒効力を評価した。ガラスのスライドのテスト表面を使用して３０秒の接触時間を用いた。これらの処方はワンステップの抗菌洗浄剤としての使用が意図されているため、ウシ胎仔血清５．０％を接種剤に添加した。消毒の結果を、配合物毎に評価されるキャリヤの数（反復試験(replicates)と呼ばれる）にみられる（陽性の菌の存在及び増殖を示す）失敗の数として列挙した。

表４Ｂに示されたデータは、本発明の配合物が、米国ＥＰＡの基準を満たすのに必要な時間よりも大幅に短い接触時間（３０秒対１０分）で、標準ＡＯＡＣ殺菌消毒剤スプレーテストによって測定されたような消毒性能を達成できることを示している。

実施例５：可視の表面残留物の評価（すすぎ又は拭き取りなし）
テスト配合物を種々の表面にスプレーし、拭き取りやすすぎを行わずに液切り乾燥させた。次いで、これらの表面を可視の残留物の外観に基づいて評価した。試験片(coupon)として用いた表面は下記の通りであった。
透明ガラスプレート（５×７インチ）
施釉した黒のセラミックタイル（４×４インチ）
クロム化スチール(chromed steel)（５×４．５インチ）
全ての試験片をAlconox（登録商標）粉末状精密洗浄剤(Powdered Precision Cleaner)で予め洗浄し、次いで水道水でよくすすぎ、最後に脱イオン水ですすいだ。水平位置から７０乃至８０°傾斜したラックで試験片の水気をきって自然乾燥させ、室温及び周囲湿度で少なくとも２４時間自然乾燥させ、次に処理及び評価手順で使用した。

試験片を水平位置から７０乃至８０°傾斜させ、トリガー式噴霧器を備えたボトルからスプレーすることによって表面を液状洗浄処理剤で完全に覆った。湿潤処理した試験片を、水平位置から７０乃至８０°傾斜したラックに置いて水気をきり、室温及び周囲湿度で約１６乃至２０時間自然乾燥させ、次に表面の残留物を目視で評価した。市販の製品を、販売時の容器に入ったまま使用した。ガラスの試験片は両面に処理を行い、黒のセラミックタイル及びクロム化スチールの試験片は黒／クロム化表面を有する側のみに処理を行った。用いた処理液は以下の通りであった。
Comet（登録商標）消毒剤を含む家庭及び浴室用強力洗浄剤
Formula 409（登録商標）多目的洗浄剤
Lysol（登録商標）殺菌性の洗面器、浴槽、及びタイル用洗浄剤
Windex（登録商標）抗菌性のガラス及び表面洗浄剤
本発明の処方、実施例５
脱イオン水

評価の手順及び結果
処理された試験片を、処理液を特定する表示を示さずにコード化した。５人のパネリストが、処理された試験片の可視残留物の外観を、０乃至５の尺度（０．５きざみ）を用いて評価した。０＝可視残留物なし、５＝可視残留物が多い、である。

結論
本発明の処方である実施例５は、ガラス、セラミック又はクロムの表面に可視残留物を本質的に全く残さず、外観は脱イオン水と同等であり、テストした全ての市販の消毒剤／殺菌剤よりも優れている。

実施例６：本発明の溶液で予め湿潤させた抗菌タオル(wipes)

本発明の溶液を、Dexter Hydraspun（登録商標）10234不織布基体（デクスター社(Dexter Corporation)、米国コネチカット州ウィンザーロックス(Windsor Locks)）に２５０重量％の液体含浸量（液体対布基体）で均一に含浸した。得られた湿潤布は、抗菌特性及び低残留特性が望まれる種々の硬質表面の洗浄に有用である。このような布基体は、綿、ナイロン、ポリエステル、セルロースのような一般に使用される材料からなる紙、織物、及び不織布、並びに拭き取り布の製造に用いられる他の従来の繊維材料からできていてもよい。このような布は、液体含浸量が布の単位重量当り約１００乃至５００重量％の液状洗浄剤を有することができる。

本発明の組成物は、病原性細菌の減少と、浴室部分や台所部分に一般にみられるガラス、セラミックタイル、クロム、ステンレススチール、フォーマイカのような多数の表面や可視残留物が外観に致命的となる他の同様の表面の洗浄に非常に効果的である。この組成物を従来の製造方法や製造設備によって調製し、液状洗浄剤用に一般に用いられる包装で分配されてもよい。また、この組成物を用いて、強力な抗菌特性をもつ湿潤布タオルを製造することもできる。本発明の他の変形例及び変更例は、当業者には明らかであろう。

Claims (4)

1. 酸化剤を本質的に含まない消毒液の形態である低残留性及び水性の抗菌洗浄組成物であって、
   ２５℃で水中で１×１０^-2乃至１×１０^-5のイオン定数を有し、乳酸及びグリコール酸からなる群から選択される少なくとも１つの有機カルボン酸を０．０１乃至０．４重量％含有し、
   ｐＨが２５℃で２乃至４であり、更に、アニオン界面活性剤を０.０１重量％以上０．３重量％未満含有し、
   並びに、ｎ−ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、Ｒ′−Ｏ−（ＣＨ₂ＣＨ₂−Ｏ）₂ＯＨ（式中、Ｒ′はｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）、及びＲ′′
   −Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）ＯＨ（式中、Ｒ′′はｎ−ブチル、ｎ−ペンチル、ｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）からなる群から選択される難溶性の一価溶媒を０．２５乃至５重量％含有し、前記溶媒の水に対する溶解度が２５℃で１０重量％未満である、低残留性及び水性の抗菌洗浄組成物。
2. ２５℃で水中で１×１０^-2乃至１×１０^-5のイオン定数を有する少なくとも１つの有機カルボン酸０．０１乃至０．４重量％、
   脂肪族アルコール及びグリコールエーテル類からなる群から選択され、２５℃で１０重量％未満の水に対する溶解度を有する難溶性の一価溶媒を０．２５乃至５重量％、及び
   分子量が２００原子質量単位未満であり、１，２−アルカンジオール類、１，３−アルカンジオール類、２，３−アルカンジオール類、及び２，４−アルカンジオール類からなる群から選択されるアルカンジオール０．０５乃至１重量％、
   を含有し、
   前記少なくとも1つの有機カルボン酸が、クエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酢酸、プロパン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記一価溶媒が、Ｒ′−Ｏ−（ＣＨ₂ＣＨ₂−Ｏ）₂ＯＨ（式中、Ｒ′はｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）、及びＲ′′−Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）ＯＨ（式中、Ｒ′′はｎ−ブチル、ｎ−ペンチル、ｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）からなる群から選択されるグリコールエーテルであり、
   ｐＨが２５℃で２乃至４である、
   低残留性及び水性の抗菌洗浄組成物。
3. 硬質表面の消毒方法であって、
   酸化剤を本質的に含まない水性洗浄組成物に前記表面を接触させるステップであって、前記水性洗浄組成物が、２５℃で水中で１×１０^-2乃至１×１０^-5のイオン定数を有する少なくとも１つの有機カルボン酸を０．０５乃至０．３重量％含有し、前記酸が乳酸及びグリコール酸からなる群から選択され、前記組成物のｐＨが２５℃で２乃至４であり、さらに、アニオン界面活性剤を０.０１重量％以上０．３重量％未満含有し、並びにｎ−ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、及びグリコールエーテル類からなる群から選択され、ここでグリコールエーテル類は、Ｒ′−Ｏ−（ＣＨ₂ＣＨ₂−Ｏ）₂ＯＨ（式中、Ｒ′はｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）、及びＲ′′−Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）ＯＨ（式中、Ｒ′′はｎ−ブチル、ｎ−ペンチル、ｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル）からなる群から選択される、難溶性の一価溶媒０．２５乃至５重量％を更に含有し、前記溶媒の水に対する溶解度が２５℃で１０重量％未満である、
   前記ステップと、
   前記表面を乾燥させるステップと、
   を含み、
   前記接触ステップと前記乾燥ステップとの間にすすぎステップを設けず、
   これにより前記表面が消毒される、
   前記方法。
4. ２５℃で水中で１×１０^-2乃至１×１０^-5のイオン定数を有する少なくとも１つの有機カルボン酸を０．０５乃至０．３重量％含有し、
   前記少なくとも1つの有機カルボン酸が、クエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酢酸、プロパン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
   ｎ−ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、及びグリコールエーテル類からなる群から選択される難溶性の一価溶媒０．２５乃至５重量％含有し、前記グリコールエーテル類が、Ｒ′−Ｏ−（ＣＨ₂ＣＨ₂−Ｏ）₂ＯＨ、及びＲ′′−Ｏ−ＣＨ₂ＣＨ−（ＣＨ₃）ＯＨからなる群から選択されるグリコールエーテルであり、式中、Ｒ′はｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジル、Ｒ′′がｎ−ブチル、ｎ−ペンチル、ｎ−ヘキシル、フェニル又はベンジルであり、
   前記溶媒の水に対する溶解度が２５℃で１０重量％未満であり、
   分子量が２００原子質量単位未満であり、１，2−アルカンジオール類、1，3−アルカンジオール類、2，3−アルカンジオール類、及び2，4−アルカンジオール類からなる群から選択されるアルカンジオールを０．０５乃至１重量％更に含有し、
   前記組成物のｐＨが２５℃で２乃至４である、
   水性洗浄液。