JP4178908B2 - 廃液処理方法およびこれを用いた廃液処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属部品洗浄装置で使用されているトリクロロエチレン、ドライクリーニング装置で使用されているテトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤を使用する過程において発生する排ガス中、もしくは廃液中に含まれる塩素系有機溶剤を、選択的に分離し、光触媒により分解し、無害化する廃液処理方法およびこれを用いた廃液処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塩素系有機溶剤は、優れた洗浄性、安定性、不燃性を有することから、優秀な洗浄剤として広く用いられてきた。
近年、大気汚染防止法において、塩素系有機物が有害大気汚染物質として、優先取得物質、自主管理物質に指定されて以来、ドライクリーニング装置などの洗浄装置から排出される廃液、排ガス中に含有される塩素系有機物の排出量を、水質汚濁防止法に定められている排出基準値(テトラクロロエチレン、0.1mg/リットル以下)以下に抑えるための方法として、活性炭での吸着処理方法や、加熱蒸発処理方法などの手法が用いられてきた。
【0003】
図6は、従来の廃液処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
図6において、符号1は、溶剤分離部を示し、矢印は塩素系有機溶剤の流通方向を示す。溶剤分離部1は、廃液供給管路2を介するかまたは直接に、気化処理部3に接続されている。さらに、気化処理部3には、曝気後の排水を排出する排水管路9が接続されている。
また、溶剤分離部1は、気化ガス供給管路4を介して、光酸化分解処理部5に接続されており、光酸化分解処理部5は、分解生成ガス供給管路6を介して、後処理部7に接続されている。さらに、後処理部7には、後処理後の水や二酸化炭素を含む無害な空気の排出管路10が接続されている。
この廃液処理装置は、これらの溶剤分離部1、気化処理部3、光酸化分解処理部5、後処理部7を制御する制御部8などを備えたものである。
【0004】
溶剤分離部1は、廃液中に微小な粒状態で分散している塩素系有機溶剤を選択的に吸着する。次いで、溶剤分離部1で吸着されない塩素系有機溶剤を含む廃液が、気化処理部3において、曝気方式によって気化処理され、ここで気化された塩素系有機ガスを含む気化ガスは、再び溶剤分離部1を通過する。この気化ガスは、溶剤分離部1を通過する時に、溶剤分離部1に吸着された塩素系有機溶剤を気化して、これら全ての気化ガスが、気化ガス供給管路4を通って光酸化分解処理部5に導入される。次いで、この気化ガスが、光酸化分解処理部5で光酸化分解され、光酸化分解反応によって生じた塩素系ガスなどを含む分解生成ガスが、分解生成ガス供給管路6を通って後処理部7に導入され、後処理部7において吸着、吸収、中和され、無害な塩類へと変換され、排水処理または排気処理がなされる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−113461号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ドライクリーニング装置から排出される廃液には、塩素系有機溶剤以外に、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質が含まれていることがある。これらの物質が、気化処理部3において塩素系有機溶剤と共に気化され、気化ガス供給管路4を通って光酸化分解処理部5に導入されると、光酸化分解処理部5における塩素系有機ガスの分解処理能力が低下し、塩素系有機ガスが分解されないまま大気中に放出されるという問題があった。また、光酸化分解処理部5における塩素系有機ガスの分解処理能力が低下するに伴なって、処理効率も低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、塩素系有機ガスの分解処理能力を維持し、処理効率に優れた廃液処理方法およびこれを用いた廃液処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、廃液を分離部材に接触し、廃液中の塩素系有機溶剤を分離部材に選択的に吸着させることにより吸着分離する溶剤分離過程と、溶剤分離処理後の廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第1の気化処理過程と、第1の気化処理において気化されなかった廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第2の気化処理過程と、第1の気化処理過程により気化された気化ガスを導入して、水道水中を通過させ、塩素系有機溶剤以外の物質を水中に捕集する捕集過程と、前記捕集過程により捕集されなかった塩素系有機ガスを光酸化分解する光酸化分解処理過程と、光酸化分解処理によって生成した分解生成ガスを、吸着、吸収、中和する後処理過程とを有する廃液処理方法によって解決できる。
前記第2の気化処理過程を、前記第1の気化処理過程の後段、かつ前記光酸化分解処理過程の前段に設けることが好ましい。
前記溶剤分離過程を、廃液を撥水性および親油性もしくは親油性の多孔質材からなる分離部材に接触し、廃液中の塩素系有機溶剤を吸着する過程とすることが好ましい。
前記第1の気化処理過程および前記第2の気化処理過程を、曝気方式とすることが好ましい。
前記第1の気化処理過程を、前記多孔質材からなる分離部材が吸着した塩素系有機溶剤を気化する過程を含むことが好ましい。
前記第1の気化処理過程における気化処理を、前記第2の気化処理過程において発生する塩素系有機ガスを含む空気によって行なうことが好ましい。
前記第2の気化処理過程において、常に新鮮な空気で気化処理を行なうことが好ましい。
【0009】
また、前記課題は、廃液を分離部材に接触し、廃液中の塩素系有機溶剤を分離部材に選択的に吸着させることにより吸着分離する溶剤分離部と、溶剤分離処理後の廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第1の気化処理部と、第1の気化処理部において気化されなかった廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第2の気化処理部と、第1の気化処理により気化された気化ガスを導入して、水道水中を通過させ、塩素系有機溶剤以外の物質を水中に捕集する捕集部と、前記捕集部中で捕集されなかった塩素系有機ガスを光酸化分解する光酸化分解処理部と、光酸化分解処理によって生成した分解生成ガスを、吸着、吸収、中和する後処理部と、これら各部の動作を制御するシーケンサーを有する制御部とを備えた廃液処理装置によって解決できる。
前記後処理部には、該後処理部内の処理剤の濃度を一定に保つための処理剤供給部が接続されていることが好ましい。
前記第2の気化処理部および前記後処理部には、処理済液排出部が接続されていることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の廃液処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
図1において、符号11は、溶剤分離部を示し、矢印は液体および気体の流通方向を示す。溶剤分離部11は直接、第1の気化処理部12に接続されている。溶剤分離部11は、第1の気化処理部12と別体としてもよいが、この例では第1の気化処理部12内の前段の廃液経路中に一体に設けられている。
第1の気化処理部12は、第1の廃液供給管路13および第1の気化ガス供給管路14を介して、第2の気化処理部15に接続されている。溶剤分離部11は、第2の気化ガス供給管路16を介して、捕集部17に接続されている。捕集部17は、第2の廃液供給管路18を介して、第2の気化処理部15に接続されている。捕集部17は、第3の気化ガス供給管路19を介して、光酸化分解処理部20に接続されている。捕集部17には、第2の気化ガス供給管路16および第2の圧縮空気供給管路35を介して、第2の圧縮空気供給部36が接続されている。捕集部17には、この内部に水道水を供給するための水道水供給管路37が接続されている。光酸化分解処理部20は、分解生成ガス供給管路21を介して、後処理部22に接続されている。
【0011】
また、第2の気化処理部15は、第3の廃液供給管路24を介して処理済液排出部26に接続されている。後処理部22は、二酸化炭素を含む無害な空気の排出管路25を介して処理済液排出部26に接続されている。処理済液排出部26には、無害な空気を大気中に排出する排気管路27および無害な排水を排出する排水管路28が接続されている。後処理部22には、処理剤供給管路29を介して、処理剤供給部30が接続されている。溶剤分離部11は、廃液供給管路31を介して、廃液供給部32に接続されている。第2の気化処理部15には、第1の圧縮空気供給管路33を介して、第1の圧縮空気供給部34が接続されている。
さらに、この例の廃液処理装置には、これら各部の動作を制御するシーケンサーを有する制御部(図示略)が設けられている。
【0012】
以下、本発明の廃液処理方法を説明する。
まず、ドライクリーニング装置などの洗浄装置から排出され、廃液供給部32内に集められた廃液が、廃液供給部32内に設けられた廃液供給ポンプ(図示略)などによって、廃液供給管路31を介して溶剤分離部11に供給され、溶剤分離部11において、廃液中に微小な粒状態で分散している塩素系有機溶剤が選択的に吸着される。
【0013】
次いで、溶剤分離部11で吸着されない塩素系有機溶剤を含む廃液が、第1の気化処理部12において、曝気方式によって気化処理される。次いで、第1の気化処理部12において気化されなかった塩素系有機溶剤を含む廃液が、第1の廃液供給管路13を介して第2の気化処理部15に供給され、第2の気化処理部15において、曝気方式によって気化処理される。第1の気化処理部12には、廃液供給管路31から溶剤分離部11を通って新たな廃液が供給される。
【0014】
溶剤分離部11の後段の第1の気化処理部12および第2の気化処理部15における廃液の気化処理は、第1の圧縮空気供給部34から第1の圧縮空気供給管路33を介して常に供給されている新鮮な空気によって行なわれる。
すなわち、まず、第1の圧縮空気供給部34から、第1の圧縮空気供給管路33を介して、第2の気化処理部15に常に供給されている新鮮な空気によって、第2の気化処理部15内の廃液に含まれる塩素系有機溶剤が気化される。次いで、第2の気化処理部15で気化した塩素系有機ガスを含む空気が、第1の気化ガス供給管路14を介して、第1の気化処理部12に供給され、この塩素系有機ガスを含む空気によって、第1の気化処理部12内の廃液に含まれる塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質が気化される。ここで気化された塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を含む気化ガスは、再び溶剤分離部11を通過する。この気化ガスは、溶剤分離部11を通過する時に、溶剤分離部11に吸着された塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を気化して、これら全ての気化ガスが、第2の気化ガス供給管路16を通って捕集部17に導入される。
【0015】
次いで、捕集部17において、塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質の気化ガスを、捕集部17内の水道水中を通過させて、水に溶解し易いイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を水道水に溶解する。これにより、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質が水道水で捕集され、これらの物質が、捕集部17の後段の光酸化分解処理部20内に供給されない。
また、捕集部17には、水道水供給管路37を介して水道水が供給される。捕集部17内への水道水の供給(交換)は、所定量のイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を捕集した後、あるいは所定の時間経過後に行なう。
【0016】
次いで、捕集部17において、捕集されたイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質および気化処理によって気化されなかった塩素系有機溶剤を含む水溶液を、第2の廃液供給管路18を介して、第2の気化処理部15に供給する。
【0017】
次いで、第2の気化処理部15において、第2の気化処理部15内の廃液に含まれる塩素系有機溶剤が新鮮な空気により気化され、塩素系有機ガスのみが、第1の気化ガス供給管路14を介して第1の気化処理部12に供給され、第1の気化処理部12内の廃液、溶剤分離部11に吸着されている溶剤を気化し、第2の気化ガス供給管路16を介して捕集部17に供給される。
次いで、第2の気化処理部15内のイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を含む廃液を、第3の廃液供給管路24を介して、処理済液排出部26に導入する。
【0018】
捕集部17において塩素系有機溶剤以外の物質が捕集された気化ガスは、第3の気化ガス供給管路19を介して光酸化分解処理部20に供給された塩素系有機ガスが、光酸化分解処理部20において光酸化分解される。
【0019】
次いで、光酸化分解処理部20における光酸化分解反応によって生じた塩素系ガスなどを含む分解生成ガスが、分解生成ガス供給管路21を通って後処理部22に導入され、後処理部22において吸着、吸収、中和され、無害な塩類へと変換される。
また、後処理部22には、光酸化分解処理部20から供給される塩素系ガスなどを含む分解生成ガスを、吸収、吸着、中和するための所定量のアルカリ性イオン水などからなる処理剤が、処理剤供給管路29を介して、処理剤供給部30から供給される。
【0020】
次いで、処理済液排出部26において、第2の気化処理部15から第3の廃液供給管路24を介して導入されたイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を含む廃液は、後処理部22から排出管路25を介して導入された塩素系有機溶剤を含まない無害なガスで再度曝気され、無害なガスは排気管路27から排気処理され、無害な排水が排水管路28から排水処理される。
ここで、廃液とは、無害化するために本発明の廃液処理装置に投入される被処理溶液を示し、排水とは、該廃液処理装置によって無害化処理が施され、装置外に排出される処理済溶液を示す。
【0021】
以下、図2〜図5を用いて、本発明の廃液処理装置の一例について説明する。図2は、本発明の廃液処理装置の一部を透視図とした概略正面図である。図3は、本発明の廃液処理装置の一部を透視図とし、該透視図の一部を断面図とした概略側面図である。図4は、本発明の廃液処理装置の一部を透視図とした概略平面図である。図5は、光酸化分解処理部の構造を簡略化して示した概略断面図である。
【0022】
図2〜図4において、溶剤分離部11には、多孔質材からなる分離部材42が収められている。
図2に示すように、この溶剤分離部11は、曝気槽40内の上部に設けられた分離槽41の内部に、顆粒状の多孔質材からなる分離部材42を充填した構造となっている。
【0023】
分離槽41は、直径3〜15cm程度、高さ3〜10cm程度であり、その外径が曝気槽40上部の内径にほぼ等しい円筒状でかつ、上部と底部は網状の容器であり、耐食性、耐薬品性、撥水性などに優れたフッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質またはステンレスなどを素材としたもの、あるいはこれらの素材を槽内壁にコーティングしたステンレス製のものなどが用いられる。
【0024】
分離槽41内に充填される分離部材42としては、廃液中の塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を選択的に吸着することができる活性炭、ゼオライトあるいは、撥水性および/または親油性の樹脂の焼結体などからなる多孔質材が挙げられる。なかでも、好ましくは、撥水性および/または親油性の樹脂の焼結体からなる多孔質材が用いられる。
分離部材42は連続気孔を有しており、その孔径が10〜300μm、好ましくは20〜100μmとなっており、空孔率が5〜50%、好ましくは10〜30%となっている。
また、分離部材42の形状は、1〜1000mm3の容積に相当する球形、円柱形、樽形、棒状となっている。
分離部材42は、その自重に相当する量の塩素系有機溶剤を吸着することが可能である。したがって、想定される塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質の一回分の処理量に応じて、適宜、多孔質材の使用量を決定すればよい。
本発明の廃液処理装置で処理される廃液は、曝気槽40上部の中央より廃液が溶剤分離部11に供給される。廃液が分離部材42内を通過する時に、廃液に含まれる微小な粒状態の塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質が選択的に吸着される。
【0025】
なお、溶剤分離部11は、上記のように分離槽41に顆粒状の分離部材42を充填したものに限らず、膜状、板状、格子状などの分離部材42のみからなるものであってもよい。
このような膜状、板状、格子状の分離部材42の大きさは、曝気槽40の大きさに応じて適宜決定されるが、その厚みは0.5〜10mm、好ましくは1〜3mmとなっている。
【0026】
分離部材42に用いられる撥水性および/または親油性の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)などが挙げられる。また、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。本発明で用いられる撥水性および/または親油性の樹脂としては、平均分子量10万〜500万のUHPEが好ましい。
【0027】
第1の気化処理部12として、曝気処理部が用いられている。この曝気処理部は、曝気槽40の上部に、廃液を注入するための廃液入口部43と、曝気後のガスを排出するための気化ガス出口部(図示略)と、曝気槽40の下部に、曝気処理後の廃液を第2の気化処理部15に排出するための第1の廃液供給管路13と、第2の気化処理部15から送入される圧縮空気、および第2の気化処理部15で気化された塩素系有機ガスを送入するための第1の気化ガス供給管路14とを設けたものである。
【0028】
曝気槽40は、直径3〜15cm程度、高さ10〜30cm程度の略円柱状の圧力容器であり、耐食性、耐薬品性、撥水性などに優れたフッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質を素材としたもの、あるいはこれらの素材を槽内壁にコーティングしたものなどが用いられる。
また、曝気槽40の内部には、曝気効率を向上させるために、図示略の噴流式、プロペラ式などの攪拌装置が設けられている。
また、曝気槽40内の液量は、曝気槽40の外側面の中間部に設けられた液面センサ44によって、検出できるようになっている。これにより、曝気槽40内の液量は、一定に保たれるようになっている。
【0029】
廃液入口部43は、廃液供給管路(図示略)を介して、別途設けられた廃液供給部(図示略)に接続されている。
廃液供給部の廃液槽は、容積が20リットル以下の耐食性、耐薬品性、撥水性などに優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質またはステンレスなどの素材を用いた容器、あるいはこれらの素材を槽内壁にコーティングしたステンレス製容器などからなっている。また、この廃液槽には、ドライクリーニング装置などの洗浄装置の水分離器から導入された排水管路が、直接、あるいは、ごみ除去用フィルターを介して接続されている。さらに、この廃液槽には、廃液の上下限を検出するための液面センサが設けられている。
また、この廃液槽内または槽外には、廃液供給ポンプが設けられており、後述する制御部からの信号を受けて、廃液槽から廃液供給管路および廃液入口部43を介して、溶剤分離部11に廃液を供給するようになっている。また、廃液供給ポンプの出口には、曝気処理中の空気圧により、曝気ガスが廃液槽内に逆流しないように逆止弁が設けられている。なお、逆止弁の替わりに電磁バルブを使用してもよい。また、廃液供給ポンプとして、家庭用の風呂水汲み上げ用ポンプなどを用いてもよい。
【0030】
第1の廃液供給管路13は、第1の気化ガス供給管路14を兼ねており、これは、廃液チューブと圧縮空気導入チューブを兼ねる中間チューブとなっている。また、第1の気化ガス供給管路14には、曝気効率を向上させるために、曝気槽40内の底部に設けられた、散気管または散気板からなる散気部45が接続されている。さらに、曝気槽40の外面底部の、第1の廃液供給管路13が接続されている部分には、曝気の流量を検出するエア流量検出センサ46が設けられている。
また、第1の廃液供給管路13および第1の気化ガス供給管路14を兼ねる中間チューブには、電磁バルブ(図示略)が接続されており、曝気槽40における廃液の排出と曝気槽53からの圧縮空気の送入を切り換えられるようになっている。
【0031】
上記の気化ガス出口部は、第2の気化ガス供給管路(図示略)を介して、捕集部17に接続されており、曝気処理後の気化ガスを、捕集部17に排出できるようになっている。また、第2の気化ガス供給管路は、耐食性に優れたフッ素系樹脂やポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂などの高分子物質で形成されている。
【0032】
また、第1の気化処理部12は、曝気処理後の気化ガスが分離部材42を通過する時に、分離部材42に吸着した塩素系有機溶剤およびイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を気化して、これらの物質を含む空気を、捕集部17に供給できるようになっている。
【0033】
捕集部17は、捕集槽47内に気化ガス供給管48、49が設けられた構造となっている。
捕集槽47は、直径3〜15cm程度、高さ3〜10cm程度であり、曝気槽40と同様な材料で形成されている。
【0034】
捕集槽47内には、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの水に溶解し易い物質を溶解して、捕集するために水道水が充填されている。
また、捕集槽47内への水道水の供給は、水道水供給管路(図示略)を介して行なわれる。捕集槽47内の液量は、捕集槽47の外側面の中間部に設けられた液面センサ50によって、検出できるようになっている。これにより、捕集槽47内の液量は、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質の一回の捕集に必要な量が一定に保たれるようになっている。
また、捕集槽47内への水道水の供給(交換)は、所定量のイソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を捕集した後、あるいは所定の時間経過後に行なう。このとき、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質および微量の塩素系有機溶剤を含む廃液が、捕集液出口部51から、第2の廃液供給管路18を介して、第2の気化処理部15に導入される。
【0035】
また、気化ガス供給管48、49は、気化ガス入口52に接続されている。気化ガス入口52には、溶剤分離部11から導出されている第2の気化ガス供給管路(図示略)が接続されている。
また、第2の気化ガス供給管路には、第2の圧縮空気供給管路35を介して、第2の圧縮空気供給部36が接続されている。第2の圧縮空気供給部36としては、家庭用水槽などに使用される散気用ポンプを用いることができる。第2の圧縮空気供給部36から気化ガス供給管48、49を介して、捕集槽47内に送入された圧縮空気により、槽内の水を排出し易くしている。
【0036】
第2の気化処理部15として、第1の気化処理部12と同様に曝気処理部が用いられている。この曝気処理部は、曝気槽53内に圧縮空気供給管54、55が設けられた構造となっている。
曝気槽53は、直径3〜15cm程度、高さ3〜10cm程度であり、曝気槽40と同様な材料で形成されている。
【0037】
また、曝気槽53の上部には、圧縮空気供給口56が設けられ、この圧縮空気供給口56には、第1の圧縮空気供給管路33を介して第1の圧縮空気供給部34が接続されている。廃液入口(図示略)には、曝気槽40から導出されている第1の廃液供給管路13および第1の気化ガス供給管路14を兼ねる中間チューブ、および捕集槽47から導出されている第2の廃液供給管路18が接続されている。第1の廃液供給管路13から曝気槽53内に廃液が供給され、第1の気化ガス供給管14(第1の廃液供給管路13と同一)から曝気槽53で気化された気化ガスが排出される。
【0038】
第1の圧縮空気供給部34としては、家庭用水槽などに使用される散気用ポンプを用いることができる。第1の圧縮空気供給部34から圧縮空気供給口56を介して、曝気槽53内に常に送入される新鮮な圧縮空気により、曝気槽53内の廃液に含まれる塩素系有機溶剤を曝気して、気化し、気化した塩素系有機溶剤を、第1の気化ガス供給管路14を介して第1の気化処理部12に送入し、その後、溶剤分離部11、捕集部17を通じて、光酸化分解処理部20に排出する。
【0039】
第2の気化処理部15から第1の気化処理部12に導入された気化ガスおよび圧縮空気により、曝気槽40内の塩素系有機溶剤、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質が曝気処理され、気化される。
また、第1の気化処理部12によって曝気処理された気化ガスが、溶剤分離部11を通過する時に、分離部材42に吸着した塩素系有機溶剤、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を気化して、塩素系有機溶剤、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を含む空気を、捕集部17に供給できるようになっている。
【0040】
さらに、曝気槽53の外面底部には、処理済液排出口57および第3の廃液供給管路(図示略)が接続され、気化処理後の廃液を処理済液排出部26に排出できるようになっている。
【0041】
図3に示すように、光酸化分解処理部20は、第3の気化ガス供給管路19から供給された気化ガスが流通し、その上部および下部がガス流通管路接続固定部64に固定されたガス流通管路58内に、ガス中の塩素系有機物を光酸化分解させる光触媒顆粒体59が充填された光触媒反応部60と、光触媒顆粒体59に紫外線光を照射する紫外線光源61を有する人工光照射部62と、反射板63とを備え、図4に示すように、人工光照射部62が、光触媒反応部60に対向するように配置されたものである。
【0042】
上部側のガス流通管路接続固定部64には、1本目の直線管路58aに連結された曝気ガス供給口65が設けられ、4本目の直線管路58aに連結された分解生成ガス排出口66が設けられている。
また、ガス流通管路58は、鉛直方向上下に走行し、図5に示すように、4本の直管状の直線管路58aが、8〜35mmのピッチ間隔で同一鉛直面上に並列され、相隣接する直線管路58a同士が、上部側および下部側のガス流通管路接続固定部64内部で接続部材58bを介して連結されている。このように、ガス流通管路58は、4本の直線管路58aが直列に連結されて、長い一つの流路を形成している。なお、図5中の矢印は、ガス流通管路58内を流通する塩素系有機物の流通経路を示している。
【0043】
直線管路58aの素材としては、紫外線光などの人工光や自然光の透過可能なのものが用いられ、ホウケイ酸ガラス、合成樹脂などの透明材料が使用可能である。
この直線管路58aの内径は、5〜30mm、好ましくは8〜16mm程度とされる。内径が5mm未満であると、ガス流通管路58内に充填される光触媒顆粒体59の充填量が少なくなるため、光酸化分解処理効率が低下し、また、内径が小さいことによるガス流量の減少のために、処理量が低下する。また、内径が30mmを超えると、紫外線光源61から照射された光が直線管路58aの中心付近まで届き難くなり、光触媒顆粒体59の受光効率が低下するため、光酸化分解処理効率が低下する。
【0044】
また、直線管路58aの長さは、200mm〜800mmの範囲となるように構成され、紫外線光源61の長さと等しくなるように設定されるのが好ましい。これにより、光触媒顆粒体59に、紫外線光源61からの紫外線光を、光触媒反応部60の全長にわたって均一に照射することができ、光酸化分解処理効率を向上させることができる。
【0045】
光触媒顆粒体59としては、塩素系有機ガスや塩素系ガスなどを吸着する無機物粉体と、光触媒粒子とを、混合してなるものが用いられる。
光触媒粒子としては、光、例えば、近紫外線の照射により活性化され、これに接触する有機物の光酸化分解反応を促進することができるものが用いられ、具体的には、TiO2、CdS、SrTiO3、Fe2O3などが挙げられる。これらの中でも、性能に優れ、安価なコストのTiO2が最も好適に用いられる。
【0046】
無機物粉体の具体例としては、例えば、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石灰、カオリンクレー、ワラストナイト、タルク、ネフェリンシナイト、ゼオライト、活性炭などが挙げられ、これらの中の1種または2種以上が混合して用いられる。
【0047】
光触媒顆粒体59における光触媒粒子の含有量は、10〜95重量%、好ましくは30〜70重量%程度、さらに好ましくは40〜60重量%程度とされる。含有量が10重量%未満であると、光酸化分解処理能力が低下し、塩素系有機ガスが未分解のまま排出される可能性がある。含有量が95重量%を超えると、光触媒顆粒体59の塩素系有機ガス吸着保持力が低下し、高濃度の塩素系有機ガスが短時間で投入された場合に、塩素系有機ガスが捕捉されずに、未分解のまま排出されるおそれがある。
【0048】
また、光触媒顆粒体59は、粒状に圧縮成形したものが好適に用いられる。光触媒顆粒体59の具体的な形状としては、球状、樽状、短棒状、楕円球状、タブレット状(略円柱状)などが挙げられる。また、光触媒顆粒体59には、穴を形成してもよいし、表面突起を形成してもよい。
【0049】
光触媒顆粒体59の粒径は、1〜20mm、好ましくは2〜10mm程度であり、その平均粒径は、4〜8mm程度、好ましくは5〜7mm程度である。粒径が1mm未満であると、目詰まりを生じ易くなり、光触媒反応部60におけるガス流通量が減少するため、光酸化分解処理効率が低下する傾向にあり、20mmを超えると光触媒顆粒体59の比表面積(単位重量当たりの表面積)が小さくなり、また、紫外線光源61から照射された光がガス流通管路58の中心まで届き難くなり、光触媒顆粒体59の受光効率が低下するため、光酸化分解処理効率が低下する傾向にある。
【0050】
直線管路58aを連結する接続部材58bは、直線管路58aの端部同士を連結する本体部と、本体部に取り付け可能な蓋部と、環状シール材であるOリングとから概略構成されている。
接続部材58bの本体部は、直線管路58aの端部が挿入される開口部が設けられた直方体状の部材であり、この開口部に挿入された直線管路58a、58aの一方から他方に、本体部内に設けられた流路(図示略)を介して通気できるように構成されている。
上記の流路の内壁面は、耐食性、耐薬品性などに優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質によってコーティングされているか、あるいは、本体部そのものが、耐食性、耐薬品性に優れたハステロイなどの金属もしくはフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、PPSなどの高分子物質によって形成されていることが望ましい。
【0051】
接続部材58bの本体部の開口部の周縁には、開口端に向かって徐々に拡径するOリング設置用テーパ部が形成されており、このテーパ部と直線管路58aとの間に、Oリングが設置されるようになっている。
接続部材58bの蓋部には、直線管路58a、58aが挿通する挿通孔が設けられており、蓋部は、本体部の開口端に当接した状態で、本体部に止め付けられている。
Oリングは、テーパ部と直線管路58aの隙間において、本体部、蓋部および直線管路58a外面のいずれにも当接した状態で設置されている。Oリングは、本体部と蓋部とによって圧縮され、弾性変形した状態となっていることが好ましく、ゴムなどの弾性材料からなるものが用いられる。
【0052】
また、本体部は、直線管路58aが長手方向に移動可能となるように、上端側の開口部の開口径と挿通孔の開口径とが、直線管路58aの外径よりも大きくなるように構成されている。
また、直線管路58aの交換を、蓋部を外すことなく容易に行なうことができるように、直線管路58aを上端方向に移動させると、下端側が蓋部の上面から離れ、直線管路58aを傾斜できるように構成されており、直線管路58aの下端側が蓋部と本体部とに長さAだけ挿入され、かつ、直線管路58aの上端部と本体部内流路の最奥部とが距離Bだけ離れているとすると、B>Aとなるように構成されている。
また、直線管路58aが挿入される長さAが上端側と下端側とで均等となるように、下端側の本体部の直線管路58aの挿通孔には、直線管路58aが長さA以上挿入されないように、直線管路58aの外径よりも小さい段部が設けられている。
【0053】
人工光照射部62は、光触媒反応部60の正面側および背面側に設けられており、光触媒反応部60と対向するように配列された2本の直管状の紫外線光源61と、紫外線光源を固定する矩形板状の矩形ホルダ67とを備えたものである。紫外線光源61は、光触媒反応部60全体に均一に紫外線光を照射できるように鉛直方向に配置されている。
このような紫外線光源61としては、汎用のエキシマランプやブラックライトなどが用いられる。
【0054】
また、光触媒反応部60と人工光照射部62とを取り囲むように、反射板63が設けられている。この反射板63は、紫外線光源61が点灯した時に、紫外線光源61から反射板63に照射された光を高い効率で反射し、光触媒顆粒体59に照射することができるように、かつ、光が外部に漏れないように構成されており、図4に示すように水平面での断面形状が六角形となるように設置されていることが好ましい。
反射板63としては、アルミニウム、ステンレス、銅などを素材とし、表面が滑らかで、かつ、放熱性に優れたものが用いられる。
捕集部17から第3の気化ガス供給管路19および曝気ガス供給口65を介して光酸化分解処理部20に導入された塩素系有機物が、光酸化分解処理部20で分解処理されて生じた分解生成ガスは、分解生成ガス排出口66および分解生成ガス供給管路21を介して、後処理部22に導入される。
【0055】
後処理部22は、後処理槽68に、処理剤供給口69と、分解生成ガス入口部70と、処理ガス排出口71とが設けられた構造となっている。
処理剤供給口69は、処理剤供給管路(図示略)を介して、処理剤供給部(図示略)に接続されている。また、分解生成ガス入口部70は、分解生成ガス供給管路21に接続されている。さらに、分解生成ガス入口部70には、後処理槽68内に設けられた分解生成ガス供給管72、73が接続されている。また、後処理後のガスを排出するための処理ガス排出口71には、排出管路25が接続されている。
【0056】
後処理槽68は、容量が10〜30リットル程度の容器であり、耐食性に優れたポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂などを素材とする容器、またはこれらの素材を内壁面に被覆した容器などが用いられる。
後処理槽68には、分解生成ガス入口部70より供給される分解生成ガスを、吸収、吸着、中和するための処理剤が注入されている。
処理剤としては、例えば、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、石灰、アンモニア、苛性ソーダ、アルカリイオン水、水などの中から選択される1種または2種以上を含むアルカリ性イオン水などが用いられる。
これらの処理剤の形態は、液相に限らず、粉体状の流動床であっても良く、また、それらの複合形であっても構わない。
【0057】
また、分解生成ガス供給管路21、排出管路25、分解生成ガス入口部70、処理ガス排出口71、処理液排出口79、分解生成ガス供給管72、73は、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂などの耐食性、耐薬品性などに優れた高分子物質によって形成されていることが望ましい。
【0058】
後処理槽68内の液量は、後処理槽68の外側面の中間部に設けられた液面センサ76によって、検出できるようになっている。これにより、後処理槽68内の液量が、一定に保たれるようになっている。
また、後処理槽68内の処理剤は、処理剤供給管路を介して、処理剤供給部から供給される。
また、所定量の分解生成ガスを、吸収、吸着、中和した後、あるいは所定の時間経過後に、処理剤を処理液排出口79および排出管路を介して処理済液排出部26に排出し、その後、所定量の処理剤を後処理槽68内へ供給するようになっている。
【0059】
また、廃液処理装置の本体には、処理済液排出部26が設けられており、この処理済液排出部26は、処理液曝気槽88、排気管路89、排水管路81、後処理ガス供給管82、83からなっている。排水管路28に設けられた電磁バルブを開くと処理済液が、自重により処理済液貯留槽(図示略)に排出されるようになっている。
また、処理済液貯留槽は、常に満タンの状態を保ち、オーバーフローした廃液が自然に排出されるようになっており、かつ処理済液の濃度確認を常時できるようになっている。
【0060】
また、廃液処理装置を構成する各部を制御する制御部77が、カバー78に覆われて、紫外線光源61による発熱の影響を受けないように、光触媒反応部60に隣接して設けられている。
制御部77は、漏電ブレーカー、シーケンサー、ポンプ用コンセント、紫外線光源点灯用インバーター回路から概略構成されている。制御部77は、溶剤分離部11、第1の気化処理部12、第2の気化処理部15、捕集部17、光酸化分解処理部20、後処理部22、処理済液排出部26、処理剤供給部30などの廃液処理装置全体を制御する機能を有しており、シーケンサーにより、自動運転が可能となっている。
【0061】
このような構造の廃液処理装置にあっては、廃液中に微小に分散した塩素系有機溶剤を溶剤分離部11によって分離し、第1の気化処理部12および第2の気化処理部15によって廃液中の塩素系有機溶剤を気化し、この気化した塩素系有機溶剤のガスを光酸化分解処理部20によって光酸化分解し、これによって生じた塩素系ガスを含む分解生成ガスを後処理部22によって無害な塩類に変換することができるように構成されている。したがって、処理後の排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、水質汚濁防止法に定められている排出基準値内に抑制することができ、最終的に排水中に含まれる塩素系有機溶剤の濃度が0ppmに限りなく近付き、無害化された排水が排出されるから、環境汚染の抑制に貢献し得るものである。
【0062】
また、ドライクリーニング装置などからの廃液中に含まれる塩素系有機物を、溶剤分離部11で吸着し、第1の気化処理部12および第2の気化処理部15において気化してから、光酸化分解処理部20において光酸化分解するように構成されているため、廃液をそのまま光酸化分解させる場合よりも、光酸化分解処理効率を向上させることができ、処理に要する時間やコストを削減できるものである。
【0063】
また、捕集部17において、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を完全に捕集し、廃液中から除去することができるから、これらの物質が光酸化分解処理部20に導入されることがなくなり、光酸化分解処理部20における塩素系有機ガスの光酸化分解処理能力が低下することがない。
さらに、この例の廃水処理装置では、第2の気化処理部15における気化処理に用いられる空気、および第2の気化処理部15で気化された塩素系有機ガスによって、第1の気化処理部12における気化処理を行うから、気化処理効率に優れている上に、装置を簡略化することができる。
また、塩素系有機溶剤の気化処理を2段階で行なうから、廃液中に含まれる塩素系有機溶剤を完全に気化して塩素系有機ガスとし、光酸化分解処理部20に導入することができる。したがって、廃液を完全に無害化して、排水処理または排気処理することができる。
【0064】
また、曝気処理により気化した気化ガスにより、分離部材42に吸着している塩素系有機溶剤を気化し、さらに、曝気槽40内の圧力によって、気化ガスを第2の気化ガス供給管路16へ排出することができ、エネルギーを有効に利用することができるものである。このような作用により、分離部材42は塩素系有機溶剤で飽和することなく再生され、繰り返し溶剤分離を行うことができるものである。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の廃液処理方法によれば、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、界面活性剤などの物質を完全に捕集し、廃液中から除去することができるから、塩素系有機ガスの光酸化分解処理能力が低下することがない。また、塩素系有機溶剤の気化処理を2段階で行なうから、廃液中に含まれる塩素系有機溶剤を完全に気化して塩素系有機ガスとし、光酸化分解処理過程に導入することができる。したがって、廃液を完全に無害化して、排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、容易に排出基準値内に抑制することができる。さらに、第2の気化処理過程における気化処理に用いられる空気、および第2の気化処理過程で気化された塩素系有機ガスによって、第1の気化処理過程における気化処理を行うから、気化処理効率に優れている上に、装置を簡略化することができる。
【0066】
また、本発明の廃液処理装置によれば、第2の気化処理部における気化処理に用いられる空気、および第2の気化処理部で気化された塩素系有機ガスによって、第1の気化処理部における気化処理を行うから、装置を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の廃液処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】 本発明の廃液処理装置の一例を示し、一部を透視図とした概略正面図である。
【図3】 本発明の廃液処理装置の一例を示し、一部を透視図とし、該透視図の一部を断面図とした概略側面図である。
【図4】 本発明の廃液処理装置の一例を示し、一部を透視図とした概略平面図である。
【図5】 光酸化分解処理部の構造を簡略化して示した概略断面図である。
【図6】 従来の廃液処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
11・・・溶剤分離部、12・・・第1の気化処理部、13・・・第1の廃液供給管路、14・・・第1の気化ガス供給管路、15・・・第2の気化処理部、16・・・第2の気化ガス供給管路、17・・・捕集部、18・・・第2の廃液供給管路、19・・・第3の気化ガス供給管路、20・・・光酸化分解処理部、21・・・分解生成ガス供給管路、22・・・後処理部、24・・・第3の廃液供給管路、25・・・排出管路、26・・・処理済液排出部、27・・・排気管路、28・・・排水管路、29・・・処理剤供給管路、30・・・処理剤供給部、31・・・廃液供給管路、32・・・廃液供給部、33・・・第1の圧縮空気供給管路、34・・・第1の圧縮空気供給部、35・・・第2の圧縮空気供給管路、36・・・第2の圧縮空気供給部、37・・・水道水供給管路、40・・・曝気槽、41・・・分離槽、42・・・分離部材、43・・・廃液入口部、44・・・液面センサ、45・・・散気部、46・・・エア流量検出センサ、47・・・捕集槽、48,49・・・気化ガス供給管、50・・・液面センサ、51・・・捕集液出口部、52・・・気化ガス入口、53・・・曝気槽、54,55・・・圧縮空気供給管、56・・・圧縮空気供給口、57・・・処理液排出口、58・・・ガス流通管路、58a・・・直線管路、58b・・・接続部材、59・・・光触媒顆粒体、60・・・光触媒反応部、61・・・紫外線光源、62・・・人口光照射部、63・・・反射板、64・・・ガス流通管路接続部、65・・・曝気ガス供給口、66・・・分解生成ガス排出口、67・・・矩形ホルダ、68・・・後処理槽、69・・・処理剤供給口、70・・・分解生成ガス入口部、71・・・処理ガス排出口、72,73・・・分解生成ガス供給管、76・・・液面センサ、77・・・制御部、78・・・カバー、79・・・処理液排出口、81・・・排水管路、82,83・・・後処理ガス供給管路、88・・・処理液曝気槽、89・・・排気管路
Claims (10)
- 廃液を分離部材に接触し、廃液中の塩素系有機溶剤を分離部材に選択的に吸着させることにより吸着分離する溶剤分離過程と、溶剤分離処理後の廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第1の気化処理過程と、第1の気化処理において気化されなかった廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第2の気化処理過程と、第1の気化処理過程により気化された気化ガスを導入して、水道水中を通過させ、塩素系有機溶剤以外の物質を水中に捕集する捕集過程と、前記捕集過程により捕集されなかった塩素系有機ガスを光酸化分解する光酸化分解処理過程と、光酸化分解処理によって生成した分解生成ガスを、吸着、吸収、中和する後処理過程とを有することを特徴とする廃液処理方法。
- 前記第2の気化処理過程を、前記第1の気化処理過程の後段、かつ前記光酸化分解処理過程の前段に設けることを特徴とする請求項1記載の廃液処理方法。
- 前記溶剤分離過程を、廃液を撥水性および親油性もしくは親油性の多孔質材からなる分離部材に接触し、廃液中の塩素系有機溶剤を吸着する過程とすることを特徴とする請求項1または2記載の廃液処理方法。
- 前記第1の気化処理過程および前記第2の気化処理過程を、曝気方式とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の廃液処理方法。
- 前記第1の気化処理過程を、前記多孔質材からなる分離部材が吸着した塩素系有機溶剤を気化する過程を含むことを特徴とする請求項3または4記載の廃液処理方法。
- 前記第1の気化処理過程における気化処理を、前記第2の気化処理過程において発生する塩素系有機ガスを含む空気によって行なうことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の廃液処理方法。
- 前記第2の気化処理過程において、常に新鮮な空気で気化処理を行なうことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の廃液処理方法。
- 廃液を分離部材に接触し、廃液中の塩素系有機溶剤を分離部材に選択的に吸着させることにより吸着分離する溶剤分離部と、溶剤分離処理後の廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第1の気化処理部と、第1の気化処理部において気化されなかった廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する第2の気化処理部と、第1の気化処理により気化された気化ガスを導入して、水道水中を通過させ、塩素系有機溶剤以外の物質を水中に捕集する捕集部と、前記捕集部中で捕集されなかった塩素系有機ガスを光酸化分解する光酸化分解処理部と、光酸化分解処理によって生成した分解生成ガスを、吸着、吸収、中和する後処理部と、これら各部の動作を制御するシーケンサーを有する制御部とを備えたことを特徴とする廃液処理装置。
- 前記後処理部には、該後処理部内の処理剤の濃度を一定に保つための処理剤供給部が接続されていることを特徴とする請求項8記載の廃液処理装置。
- 前記第2の気化処理部および前記後処理部には、処理済液排出部が接続されていることを特徴とする請求項8または9記載の廃液処理装置。
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