JP3617438B2 - 廃液処理装置およびこれを用いた洗浄装置またはドライクリーニング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属部品洗浄装置で使用されているトリクロロエチレン、ドライクリーニング装置で使用されているテトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤を使用する過程において発生する排ガス中、もしくは廃液中に含まれる塩素系有機溶剤を、選択的に分離し、光触媒により分解し、無害化する廃液処理装置、およびこれを用いた洗浄装置またはドライクリーニング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塩素系有機溶剤は、優れた洗浄性、安定性、不燃性を有することから、優秀な洗浄剤として広く用いられてきた。
近年、大気汚染防止法において、塩素系有機物が有害大気汚染物質として、優先取組物質、自主管理物質に指定されて以来、ドライクリーニング装置などの洗浄装置から廃出される廃液、排ガス中に含有される塩素系有機物の排出量を、水質汚濁防止法に定められている排出基準値(テトラクロロエチレン、0.1mg/l以下)以下に抑えるための方法として、活性炭での吸着処理方法や、加熱蒸発処理方法などの手法が用いられてきた。
【0003】
活性炭を用いた吸着処理方法では、活性炭が吸着飽和に達した段階で、吸着機能を失うため、活性炭を取り替える必要がある。しかしながら、活性炭が吸着機能を失う時期を把握することは難しく、また、吸着飽和した活性炭は、指定廃棄物として専門処理業者へ処分を委託するか、水蒸気などで脱着再生してから再利用しなければならないなど、処理効率が低く、余分なコストがかかるといった問題があった。
【0004】
一方、加熱蒸発処理方法では、塩素系有機物を気化させることにより、廃液中の塩素系有機物含有濃度を、排出基準値内に下げることができる。
しかしながら、この方法では、廃液中の塩素系有機物濃度が低い場合には、処理効率に劣るといった問題があった。また、気化した塩素系有機物が未分解のまま大気中へ放出されることになるため、排ガス中に含まれる塩素系有機物の排出量を、年々規制が強化される水質汚濁防止法に定められている排出基準値内に抑えることができなくなる可能性があった。
また、塩素系有機物の排出規制が年々強化されているため、より優れた分解処理効率を発揮し得る廃液処理方法および廃液処理装置が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明における課題は、廃液中の塩素系有機溶剤を分解処理する一連の過程において、溶剤分離過程を導入し、処理効率に優れ、塩素系ガスなどの2次副産物の排出を抑制した廃液処理装置およびこれを用いた洗浄装置またはドライクリーニング装置を提供し、これら一連の過程を自動化することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明の請求項1記載の廃液処理装置は、廃液槽と、該廃液槽から供給される廃液中の塩素系有機溶剤を吸着する分離部材が充填された分離槽を有する溶剤分離部と、該溶剤分離部の下部に設けられた曝気処理部を有し、該曝気処理部には前記溶剤分離処理後の廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する曝気槽と、曝気後の気化ガスが前記分離部材を通過するように接続され、気化ガス中の塩素系有機物を光酸化分解させる光触媒顆粒体が充填された光触媒反応部と、これに対向するように配置された人口光照射部を有する光酸化分解処理部を備えたものである。
【0007】
また、本発明の請求項2記載の洗浄装置は、請求項1に記載の廃液処理装置を用いたものである。
【0008】
また、本発明の請求項3記載のドライクリーニング装置は、請求項1に記載の廃液処理装置を用いたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0010】
図1は、本発明の廃液処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
【0011】
図1において、符号1は、溶剤分離部を示し、矢印は塩素系有機溶剤の流通方向を示す。溶剤分離部1は、廃液供給管路2を介するかまたは直接に、気化処理部3に接続されている。さらに、気化処理部3には、曝気後の排水を排水する排水管路が接続されている。
【0012】
また、溶剤分離部1は、気化ガス供給管路4を介して、光酸化分解処理部5に接続されており、光酸化分解処理部5は、分解生成ガス供給管路6を介して、後処理部7に接続されている。さらに、後処理部7には、後処理後の水や二酸化炭素を含む無害な空気の排出管路が接続されている。
【0013】
さらに、本発明の廃液処理装置は、これらの溶剤分離部1、気化処理部3、光酸化分解処理部5、後処理部7を制御する制御部8からなるものである。
【0014】
溶剤分離部1は、気化処理部と別に設けてもよいが、ここでは気化処理部内の前段の経路中に設けられており、廃液中に微小な粒状態で分散している塩素系有機溶剤を選択的に吸着する。
【0015】
次いで、溶剤分離部1で吸着されない塩素系有機溶剤を含む廃液が、気化処理部3において、曝気方式によって気化処理され、ここで気化された塩素系有機ガスを含む気化ガスは、再び溶剤分離部1を通過する。次いで、この気化ガスは、溶剤分離部1を通過する時に、溶剤分離部1に吸着された塩素系有機溶剤を気化して、これら全ての気化ガスが、気化ガス供給管路4を通って光酸化分解処理部5に導入される。次いで、この気化ガスが、光酸化分解処理部5で光酸化分解され、光酸化分解反応によって生じた塩素系ガスなどを含む分解生成ガスが、分解生成ガス供給管路6を通って後処理部7に導入され、後処理部7において吸着、吸収、中和され、無害な塩類へと変換され、排水処理または排気処理がなされる。
【0016】
以下、図2〜図5を用いて、本発明の廃液処理装置について説明する。
図2は、本発明の廃液処理装置の一例を示す概略斜視図であり、図3は図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とした概略正面図であり、図4は図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とし、該透視図の一部を断面図とした概略側面図であり、図5は図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とした概略平面図である。
【0017】
図2〜図5において、溶剤分離部1には、多孔質材からなる分離部材12が収められている。
図2に示すように、この溶剤分離部1は、曝気槽10内の上部に設けられた分離槽11の内部に、顆粒状の多孔質材からなる分離部材12を充填した構造となっている。
【0018】
分離槽11は、直径3〜15cm程度、高さ3〜10cm程度であり、その外径が曝気槽10上部の内径にほぼ等しい円筒状かつ、上部と底部は網状の容器であり、耐食性、耐薬品性、撥水性などに優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質またはステンレスなどを素材としたもの、あるいはこれらを槽内壁にコーティングしたステンレス製のものなどが用いられる。
【0019】
分離槽11内に充填される分離部材12としては、廃液中の塩素系有機溶剤を選択的に吸着することができる活性炭、ゼオライトあるいは、撥水性および/または親油性樹脂の焼結体などの多孔質材が挙げられる。なかでも、好ましくは、撥水性および/または親油性樹脂の焼結体の多孔質材が用いられる。
分離部材12は連続気孔を有しており、その孔径が10〜300μm、好ましくは20〜100μmとなっており、空孔率が5〜50%、好ましくは10〜30%となっている。
また、分離部材12の形状は、1〜1000mm3の容積に相当する球形、円柱形、樽形、棒状となっている。
また、本発明で用いられる分離部材12は、その自重に相当する量の塩素系有機溶剤を吸着することが可能である。したがって、想定される塩素系有機溶剤の一回分の処理量に応じて、適宜、多孔質材の使用量を決定すればよい。
本発明の廃液処理装置で処理される廃液は、曝気槽10上部の中央より廃液が溶剤分離部1に供給される。廃液が分離部材12内を通過する時に、廃液に含まれる微小な粒状態の塩素系有機溶剤が選択的に吸着される。
【0020】
なお、溶剤分離部1は、上記のように分離槽11に顆粒状の分離部材12を充填したものに限らず、分離部材12のみからなる膜状、板状、格子状のものであってもよい。
このような膜状、板状、格子状の分離部材12の大きさは、曝気槽10の大きさに応じて適宜決定されるが、その厚みは0.5〜10mm、好ましくは1〜3mmとなっている。
【0021】
分離部材12に用いられる撥水性および/または親油性の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(以下、「PE」と略す。)、ポリプロピレン(以下、「PP」と略す。)、超高分子量ポリエチレン(以下、「UHPE」と略す。)などが挙げられる。また、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と略す。)などが挙げられる。本発明で用いられる撥水性および/または親油性の樹脂としては、平均分子量10万〜500万のUHPEが好ましい。
【0022】
気化処理部3として、曝気処理部が用いられている。図2〜図4に示すように、この曝気処理部は、曝気槽10の上部に、廃液を注入するための廃液入口部13と、曝気後のガスを排出するための気化ガス出口部15と、逆止弁を備えた吸気口部16(図示せず。)を設け、曝気槽10の下部に、曝気処理後の排液を排出するための排液出口部17と、圧縮空気を送入するための圧縮空気入口部18とを設けたものである。
ここで、廃液とは、無害化するために本発明の廃液処理装置に投入される被処理溶液を示し、排液とは、該廃液処理装置によって無害化処理が施され、装置外に排出される処理済溶液を示す。
【0023】
曝気槽10は、直径3〜15cm程度、高さ10〜30cm程度の略円柱状の圧力容器であり、耐食性、耐薬品性、撥水性などに優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質を素材としたもの、あるいはこれらを槽内壁にコーティングしたものなどが用いられる。
また、曝気槽10の内部には、曝気効率を向上させるために、噴流式、プロペラ式などの攪拌装置が設けられている。
【0024】
廃液入口部13は、廃液供給管路14を介して、別途設けられた廃液供給部(図示せず。)に接続している。
廃液供給部の廃液槽は、容積が20l以下の耐食性、耐薬品性、撥水性などに優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質またはステンレスなどの素材を用いた容器、あるいはこれらを槽内壁にコーティングしたステンレス製容器などからなっている。また、該廃液槽には、ドライクリーニング装置などの洗浄装置の水分離器から導入された排水管路が、直接あるいはごみ除去用フィルターを介して接続されている。さらに、該廃液槽には、廃液の上下限を検出するための液面センサーが設けられている。
また、上記廃液槽内には、廃液供給ポンプが設けられており、後述する制御部からの信号を受けて、廃液槽から廃液供給管路14および廃液入口部13を介して、溶剤分離部1に廃液を供給するようになっている。また、廃液供給ポンプの出口には、曝気処理中の空気圧により、曝気ガスが廃液槽内に逆流しないように逆止弁が設けられている。なお、逆止弁の替わりに電磁バルブを使用してもよい。また、廃液供給ポンプとして、家庭用の風呂水汲み上げ用ポンプなどが用いられる。
【0025】
排液出口部17は、圧縮空気入口部18を兼ねており、ここに排液チューブと圧縮空気導入チューブを兼ねる中間チューブ19が接続されている。
また、曝気時に用いられる圧縮空気の供給源としては、家庭用水槽などに使用される散気用ポンプを用いることができる。
また、圧縮空気入口部18には、曝気効率を向上させるために、曝気槽10内の底部に、散気管または散気板からなる散気部材20が設けられている。
【0026】
また、曝気槽10の上部には、曝気用空気源としてのエアーポンプ21が設けられている。エアーポンプ21と、曝気槽10下部の圧縮空気入口部18が、圧縮空気供給チューブ22、電磁バルブ23のIN側に接続された分枝継手19aおよび中間チューブ19を介して接続されている。
また、エアーポンプ21としては、家庭用水槽などに使用される散気用ポンプなどが用いられる。
また、曝気槽10の上部には、逆止弁を備えた吸気口部16が、処理済液の排出時に、曝気槽10内が負圧になって、処理済液を排出することができなくなることを防ぐために設けられている。
【0027】
気化ガス出口部15は、気化ガス供給管路4を介して、光酸化分解処理部5に接続しており、曝気処理後の気化ガスを、光酸化分解処理部5に排出できるようになっている。また、気化ガス供給管路4は、耐食性に優れたフッ素系樹脂やポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂などの高分子物質で形成されている。
【0028】
また、気化処理部3は、曝気処理後の気化ガスが分離部材12を通過する時に、分離部材12に吸着した塩素系有機溶剤を気化して、塩素系有機ガスを含む空気を、光酸化分解処理部5に供給できるようになっている。
さらに、気化処理部3は、曝気槽10からの処理済液排出後に、空気のみをエアーポンプ21によって供給して、分離部材12に吸着され、曝気中に完全に気化されなかった塩素系有機溶剤の気化を、効率良く行うことができる。
【0029】
図4に示すように、光酸化分解処理部5は、気化ガス供給管路4から供給された気化ガスが流通するガス流通管路24内に、ガス中の塩素系有機物を光酸化分解させる光触媒顆粒体25が充填された光触媒反応部26と、光触媒顆粒体25に紫外線光を照射する紫外線光源28を有する人工光照射部29と、反射板30とを備え、図5に示すように、人工光照射部29が、光触媒反応部26に対向するように配置されたものである。
【0030】
ガス流通管路接続固定部31の上部側には1本目のガラス管に連結された曝気ガス供給口31aが、下部側には3本目のガラス管に連結された分解生成ガス排出口31bが設けられている。
また、ガス流通管路24は、直線管路接続固定部31の上部に入口部24b(図示せず。)を、下部に出口部24cを有し、鉛直方向上下に走行し、連結された長い一つの流路を形成するように、3本の直管状の直線管路24aが、8〜35mmのピッチ間隔で同一鉛直面上に並列され、相隣接する直線管路24a同士が、接続部材32によって接続されている。
【0031】
直線管路24aの素材としては、紫外線光などの人工光や自然光が透過可能なのものが用いられ、ホウケイ酸ガラス、合成樹脂などの透明材料が使用可能である。
この直線管路24aの内径は、5〜30mm、好ましくは8〜16mm程度とされる。内径が5mm未満であると、ガス流通管路24内に充填される光触媒顆粒体25の充填量が少なくなるため、光酸化分解処理効率が低下し、また、内径が小さいことによるガス流量の減少のために、処理量が低下する。また、内径が30mmを超えると、紫外線光源28から照射された光が直線管路24aの中心付近まで届き難くなり、光触媒顆粒体25の受光効率が低下するため、光酸化分解処理効率が低下する。
【0032】
また、直線管路24aの長さは、200mm〜800mmの範囲となるように構成され、紫外線光源28の長さと等しくなるように設定されるのが好ましい。これにより、光触媒顆粒体25に、紫外線光源28からの紫外線光を、光触媒反応部26の全長にわたって均一に照射することができ、光酸化分解処理効率を向上させることができる。
【0033】
また、上記直線管路24aの両端には、直線管路24a内に、光触媒顆粒体25を保持するための保持材33(図示せず。)が設けられている。この保持材33としては、通気可能な形状を有し、耐食性に優れたフッ素系樹脂やエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂などの高分子物質を素材とするものであって、直線管路24aの内径と略同一の径で、5〜30mm程度の厚みのものが用いられる。
【0034】
光触媒顆粒体25としては、塩素系有機ガスや塩素系ガスなどを吸着する無機物粉体と、光触媒粒子とを、混合してなるものが用いられる。
光触媒粒子としては、光、例えば、近紫外線の照射などにより活性化され、これに接触する有機物の光酸化分解反応を促進することができるものが用いられ、具体的には、TiO2、CdS、SrTiO3、Fe2O3などが挙げられる。これらの中でも、性能に優れ、安価なコストのTiO2が最も好適に用いられる。
【0035】
無機物粉体の具体例としては、例えば、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石灰、カオリンクレー、ワラストナイト、タルク、ネフェリンシナイト、ゼオライト、活性炭などが挙げられ、これらの中の1種または2種以上が混合して用いられる。
【0036】
光触媒顆粒体25における光触媒粒子の含有量は、10〜95重量%、好ましくは30〜70重量%程度、さらに好ましくは40〜60重量%程度とされる。含有量が10重量%未満であると、光酸化分解処理能力が低下し、塩素系有機ガスが未分解のまま排出される可能性がある。含有量が95重量%を超えると、光触媒顆粒体25の塩素系有機ガス吸着保持力が低下し、高濃度の塩素系有機ガスが短時間で投入された場合に、塩素系有機ガスが捕捉されずに、未分解のまま排出される恐れがある。
【0037】
また、光触媒顆粒体25は、粒状に圧縮成形したものが好適に用いられる。光触媒顆粒体25の具体的な形状としては、球状、樽状、短棒状、楕円球状、タブレット状(略円柱状)などが挙げられる。また、光触媒顆粒体21には、穴を形成してもよいし、表面突起を形成してもよい。
【0038】
光触媒顆粒体25の粒径は、1〜20mm、好ましくは2〜10mm程度であり、その平均粒径は、4〜8mm程度、好ましくは5〜7mm程度であるのが望ましい。粒径が1mm未満であると、目詰まりを生じ易くなり、光触媒反応部26におけるガス流通量が減少するため、光酸化分解処理効率が低下する傾向にあり、20mmを超えると光触媒顆粒体25の比表面積(単位重量当たりの表面積)が小さくなり、また、紫外線光源28から照射された光がガス流通管路24の中心まで届き難くなり、光触媒顆粒体25の受光効率が低下するため、光酸化分解処理効率が低下する傾向にある。
【0039】
接続部材32は、直線管路24aの端部同士を連結する本体部34(図示せず。)と、本体部34に取付可能な蓋部35(図示せず。)と、環状シール材であるOリング36(図示せず。)とを備えている。
本体部34は、直線管路24aの端部が挿入される開口部が設けられた直方体状の部材であり、この開口部に挿入された直線管路24a、24aの一方から他方に、本体部34内に設けられた流路34a(図示せず。)を介して通気できるように構成されている。
ここで、流路34aの内壁面は、耐食性、耐薬品性などに優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの高分子物質によってコーティングされているか、あるいは、本体部32そのものが、耐食性、耐薬品性に優れたハステロイなどの金属もしくはフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、PPSなどの高分子物質によって形成されていることが望ましい。
【0040】
上記開口部の周縁には、開口端に向かって徐々に拡径するOリング設置用テーパ部が形成されており、このテーパ部と直線管路24aとの間に、Oリング36が設置されるようになっている。
蓋部35には、直線管路24a、24aが挿通する挿通孔が設けられており、本体部34の開口端に当接した状態で、本体部34に止め付けられている。
Oリング36は、テーパ部と直線管路24aの隙間において、本体部34、蓋部35、および直線管路24a外面のいずれにも当接した状態で設置されている。Oリング36は、本体部34と蓋部35とによって圧縮され、弾性変形した状態となっていることが好ましく、ゴムなどの弾性材料からなるものが用いられる。
【0041】
また、本体部34は、直線管路24aが長手方向に移動可能となるように、上端側の開口部の開口径と挿通孔の開口径とが、直線管路24aの外径よりも大きくなるように構成されている。
また、直線管路24aの交換を、蓋部35を外すことなく容易に行うことができるように、直線管路24aを上端方向に移動させると、下端側が蓋部35の上面から離れ、直線管路24aを傾斜できるように構成されており、直線管路24aの下端側が蓋部35と本体部34とに長さaだけ挿入され、かつ、直線管路24aの上端部と本体部32内流路の最奥部とが距離bだけ離れているとすると、b>aとなるように構成されている。
また、直線管路24aが挿入される長さaが上端側と下端側とで均等となるように、下端側の本体部34の直線管路24aの挿通孔には、直線管路24aが長さa以上挿入されないように、直線管路24aの外径よりも小さい段部が設けられている。
【0042】
図4、図5に示すように、人工光照射部29は、光触媒反応部26の正面側および背面側に設けられており、光触媒反応部26と対向するように配列された2本の直管状の紫外線光源28と、紫外線光源を固定する矩形板状のホルダ28aとを備えたものである。
紫外線光源28は、光触媒反応部26全体に均一に紫外線光を照射できるように鉛直方向に配置されている。
このような紫外線光源28としては、汎用のエキシマランプやブラックライトなどが用いられる。
【0043】
光触媒反応部26と人工光照射部29とを取り囲むように、反射板30が設けられている。この反射板30は、紫外線光源28が点灯した時に、紫外線光源28から反射板30に照射された光を高い効率で反射し、光触媒顆粒体25に照射することができるように、かつ、光が外部に漏れないように構成されており、図5に示すように水平面での断面形状が六角形となるように設置されていることが好ましい。
反射板30としては、アルミニウム、ステンレス、銅などを素材とし、表面が滑らかで、かつ、放熱性に優れたものが用いられる。
【0044】
光酸化分解処理部5で分解処理された分解生成ガスは、出口部24c、分解生成ガス排出口部31bから分解生成ガス供給管路6を通って、後処理部7に導かれる。
また、光酸化分解処理部5の外側側面には、曝気槽10の中間部に位置し、曝気槽10内の液面を検出するための液面センサー37が設けられている。
【0045】
また、制御する制御部8が、カバー39に覆われて、紫外線光源28による発熱の影響を受けないように、光触媒反応部26に隣接して設けられている。
溶制御部8は、漏電ブレーカー40、シーケンサー41、ポンプ用コンセント42、紫外線光源点灯用インバーター回路43およびカバー39で構成されている。制御部8は、溶剤分離部1、気化処理部3、光酸化分解処理部5、後処理部7などの廃液処理装置全体を制御する機能を有しており、シーケンサー41により、自動運転が可能となっている。
【0046】
また、処理済液排出部が別途設けられており、処理済液排出部は、曝気槽10下部に接続された中間チューブ19、電磁バルブ23、廃液チューブ44、処理済液貯留槽からなっており、電磁バルブ23を開くと処理済液が、自重により処理済液貯留槽に排出されるようになっている。電磁バルブ23のIN側には中間チューブ19と、エアーポンプ21から曝気用の空気を供給するために、圧縮空気供給チューブ22が接続された分枝継手19aが備えられており、中間チューブ19は処理済液排出と空気供給を兼ねるようになっている。
また、処理済液貯留槽は、常に満タンの状態を保ち、オーバーフローした廃液が自然に排出されるようになっており、かつ処理済液の濃度確認を常時できるようになっている。
【0047】
図1に示すように、分解生成ガス供給管路6が、後処理部7に接続されている。
後処理部7(図示せず。)は、処理槽に、分解生成ガス入口部と、排ガス出口部が設けられたものである。
また、分解生成ガス供給管路6、処理槽、分解生成ガス入口部は、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂などの耐食性、耐薬品性などに優れた高分子物質によって形成されていることが望ましい。
【0048】
処理槽は、底面積が100〜300cm2程度、高さが100〜500cm程度、容量が10〜30l程度である略四角柱状の容器であり、耐食性に優れたポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂などを素材とする、またはこれらを内壁面に被覆した容器などが用いられる。
また、処理槽には、分解生成ガス入口部より供給される分解生成ガスを、吸収、吸着、中和するための処理剤が注入されている。
処理剤としては、例えば、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、石灰、アンモニア、苛性ソーダ、アルカリイオン水、水などの中から選択される1種または2種以上を含むアルカリ性イオン水などが用いられる。
これらの処理剤の形態は、液相に限らず、粉体状の流動床であっても良く、また、それらの複合形であっても構わない。
また、後処理効率を高めるために、分解生成ガス入口部の処理槽内側には、散気管または散気板からなる散気部材が設けられていることが好ましい。
【0049】
廃液処理装置の構成要素である溶剤分離部1、気化処理部3、光酸化分解処理部5、および後処理部7は、いずれか一つが不良状態に陥った場合に、不良状態に陥った構成要素のみを良好状態であるものに取り替えることができるように、着脱可能に構成されている。また、廃液処理装置の大きさは、幅5〜15cm程度、奥行12〜25cm程度、高さ40〜90cm程度で、底部はベース部45からなっている。
【0050】
このような構造の廃液処理装置にあっては、廃液中に微小に分散した塩素系有機溶剤を溶剤分離部1によって分離し、気化処理部3によって廃液中の塩素系有機溶剤を気化し、この気化した塩素系有機溶剤のガスを光酸化分解処理部5によって光酸化分解し、これによって生じた塩素系ガスを含む分解生成ガスを後処理部7によって無害な塩類に変換することができるように構成されているため、処理後の排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、水質汚濁防止法に定められている排出基準値内に抑制することができ、環境汚染の抑制に貢献し得るものである。
また、ドライクリーニング装置などからの廃液中に含まれる塩素系有機物を、溶剤分離部1で吸着し、気化処理部3において気化してから、光酸化分解処理部5において光酸化分解するように構成されているため、廃液をそのまま光酸化分解させる場合よりも、光酸化分解処理効率を向上させることができ、処理に要する時間やコストを削減できるものである。
【0051】
溶剤分離部1を構成する分離部材12は、主に、撥水性および/または親油性の樹脂を焼結した多孔質材からなるものであるから、従来、分離困難であった廃液中に微小に分散した塩素系有機溶剤を効率良く吸着することができる。
また、曝気処理により気化した気化ガスにより、分離部材12に吸着している塩素系有機溶剤を気化し、さらに、曝気槽10内の圧力によって、気化ガスを気化ガス供給管路4へ排出することができ、エネルギーを有効に利用することができるものである。このような作用により、分離部材12は塩素系有機溶剤で飽和することなく再生され、繰り返し溶剤分離を行うことができるものである。
また、曝気時に用いられる圧縮空気の供給源としては、家庭用水槽などに使用される散気用ポンプを用いることができるため、新技術導入に際してのコストを低減することができるものである。
【0052】
また、曝気槽10内部側の圧縮空気入口部18には、散気管または散気板からなる散気部材20が設けられているので、廃液中に生じる曝気泡の径を微小化することができ、廃液と気泡との接触面積、接触時間を増加させることができ、優れた曝気効率を発揮し得るものである。
【0053】
また、曝気槽10として、鉛直方向に長い構造の容器を用いているため、廃液と空気との接触面積、接触時間を増加させることができ、曝気効率を向上させ、処理に要する時間を短縮することができるものである。
また、気化ガスおよび/または分解生成ガスが流通する経路の内壁面が、耐食性、耐薬品性などに優れたフッ素系樹脂やポリエチレン系樹脂などの高分子物質でコーティングされているかもしくは、経路がこれらの物質で形成されているため、塩素系ガスなどによって腐食され難いものである。
【0054】
また、光酸化分解処理部5における直線管路24aとして、内径が5〜30mm、長さが200〜800mmのものを用いることによって、紫外線光源28からの紫外線光を光触媒反応部26の全長にわたって均一に中心付近まで照射し、かつ、ガス流通管路24内に光触媒顆粒体25を十分に充填することができるため、光酸化分解処理効率に優れている。
また、光触媒顆粒体25として、粒径が1〜20mmのものを用い、光触媒顆粒体25の比表面積を大きくすることによって、光触媒顆粒体25と気化ガスとの接触効率を高め、かつ、光触媒顆粒体25の受光効率を高めることができるため、光酸化分解処理効率に優れたものである。
また、光触媒顆粒体25として、塩素系有機ガスや塩素系ガスなどを吸着する無機物粉体と光触媒粒子との混合物を用いることによって、塩素系有機ガスなどが光触媒顆粒体に吸着保持された状態で光酸化分解されることになるため、光酸化分解処理効率に優れ、未分解の塩素系有機物が光酸化分解処理部5の外部に排出されることがないものである。
また、直線管路24aおよび紫外線光源28を鉛直方向に配置しているため、光酸化分解処理部5が鉛直方向に長い構造となっており、装置の設置面積を小さくすることができるものである。
【0055】
以下、本発明の廃液処理装置の動作を図6に基いて説明する。
廃液処理装置の電源を入れる(S101)と、廃液処理装置が起動して、制御部8内のシーケンサー41が動作して、以下の一連の操作が徐動的に行われる。先ず、紫外線光源28が待機状態となる(S102)。
次に、ドライクリーニング装置の水分離器から、塩素系有機溶剤を含む廃液が廃液供給部に供給され、この廃液の量が、廃液槽内に設けられた上限液面センサーの位置に達すると(S103)、紫外線光源28が点灯し(S104)、廃液供給ポンプが作動して(S105)、廃液が曝気槽10内の上部に設けられた溶剤分離部1に供給される。次いで、廃液中に微小な粒状に分散している塩素系有機溶剤が、溶剤分離部1の分離部材12に吸着され、塩素系有機溶剤が溶解している残りの廃液は、曝気槽10内の下部に設けられた曝気処理部に供給される。
【0056】
次に、曝気処理部内の廃液量が、曝気槽10の外側面に設けられた液面センサー37の位置に達すると(S106)、廃液の供給は停止し(S106´)、エアーポンプ21が作動して(S107)、廃液の曝気が開始する。
【0057】
この時、廃液中に含まれる塩素系有機溶剤が気化されると同時に、気化した塩素系有機ガスを含む空気により、分離部材12に吸着された塩素系有機溶剤も気化して、光酸化分解処理部5に送られる。
次いで、光酸化分解処理部5に送られた塩素系有機ガスが、紫外線により励起された光触媒反応部26内の光触媒顆粒体25により分解処理され、水、二酸化炭素、塩素系ガスとなって後処理部7に送られる。
次いで、後処理部7では、、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどを含むアルカリ性イオン水によって中和・還元が行われ、塩素系有機ガス、塩素系ガスが塩素イオンとなって水溶液中に取り込まれる。
【0058】
次に、曝気処理が、廃液中の塩素系有機溶剤の濃度が、排出基準値を十分に下回るまでに要する時間(20分間)行われると、エアーポンプ21が停止して(S108)曝気が停止する。次いで、電磁バルブ23が開いて(S109)、曝気槽10内の排液が、別途設けられた処理済液排出部の処理済液貯留槽に排出される。
次いで、排液の排出が終了すると電磁バルブ23が閉じ(S110)、エアーポンプ21が5分間作動して(S111)、空気を曝気槽10内に供給し、分離部材12を再生する。
次に、分離部材12の再生が終了した時点で、廃液槽内の廃液量が、下限液面センサーの位置に達しない場合(S112)、S105〜S111のサイクルが繰り返される。または、分離部材12の再生が終了した時点で、廃液槽内の廃液量が、下限液面センサーの位置に達すると(S112)、エアーポンプ21が1時間作動して(S113)、空気を曝気槽10内に供給し、分離部材12を完全に再生する。
次に、分離部材12の再生を行った後、ドライクリーニング装置の水分離器からの廃液が、再び廃液槽内の上限液面センサーの位置に達すると(S114)、S105〜S111のサイクルが繰り返される。または、廃液が廃液槽内の上限液面センサーの位置に達しない場合(S114)、紫外線光源28は消灯し、廃液が廃液槽内の上限液面センサーの位置に達するまで待機状態となる。
このように、廃液処理の工程を自動化し、待機状態を設けることにより、無駄な電力消費を抑え、紫外線光源28の寿命を延ばし、処理コストを最小限に抑えることができる。
【0059】
また、このような廃液処理装置を用いた洗浄装置やドライクリーニング装置にあっては、洗浄から廃液処理までの一連の工程を自動化することが可能となるため、コストを削減することが可能となる。また、該装置において、廃液中の塩素系有機溶剤を分解処理する一連の過程は、処理効率に優れ、塩素系ガスなどの2次副産物の排出を抑制することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の廃液処理装置にあっては、溶剤分離過程を設けることにより、廃液中に微小な粒状態で分散している塩素系有機溶剤を、容易に吸着、除去することができるため、廃液処理に要するコストや時間を削減することができ、排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、容易に排出基準値内に抑制することができるものである。
【0061】
また、本発明の廃液処理装置にあっては、溶剤分離過程が、気化処理過程において気化した塩素系有機溶剤を含む空気、あるいは外部から供給された新鮮な空気により再生するので、分離部材を構成する多孔質材が、塩素系有機溶剤で飽和することなく処理能力を維持するから、コストを低減することができるものである。
【0062】
また、本発明の廃液処理装置にあっては、制御部を設けたことにより、一連の廃液処理過程を自動運転することが可能となるため、この廃液処理装置がクリーニング装置などの洗浄装置に用いられた場合、稼動状況に応じて、自動で運転・停止をすることができる。したがって、紫外線光源の寿命を延ばすことができる上に、無駄な電力消費もなく、コストを低減することができるものである。
【0063】
そして、本発明の廃液処理装置にあっては、装置を小型化して、安価な家庭用の風呂水汲み上げポンプやエアーポンプなどを使用したものであるから、製造コスト、ランニングコストを低減することができる上に、メンテナンスも容易にすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の廃液処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の廃液処理装置の一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の廃液処理装置の一例を示す概略図で、一部を透視図とした概略正面図である。
【図4】本発明の廃液処理装置の一例を示す概略図で、一部を透視図とし、該透視図の一部を断面図とした概略側面図である。
【図5】本発明の廃液処理装置の一例を示す概略図で、一部を透視図とした概略平面図である。
【図6】本発明の廃液処理装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…溶剤分離部、2…廃液供給管路、3…気化処理部、4…気化ガス供給管路、5…光酸化分解処理部、6…分解生成ガス供給管路、7…後処理部、8…制御部10…曝気槽、11…分離槽、12…分離部材、13…廃液入口部、14…廃液供給管路、15…気化ガス出口部、17…廃液出口部、18…圧縮空気入口部、19…中間チューブ、19a…分枝継手、20…散気部材、21…エアーポンプ、22…圧縮空気供給チューブ、23…電磁バルブ、24…ガス流通管路、24a…直線管路、24c…出口部、25…光触媒顆粒体、26…光触媒反応部、28…紫外線光源、29…人工光照射部、30…反射板、31…ガス流通管路固定部材、31a…曝気ガス供給口、31b…分解生成ガス排出口、37…液面センサー、39…カバー、40…漏電ブレーカー、41…シーケンサー、42…コンセント、43…インバーター回路、44…廃液チューブ、45…ベース部
Claims (3)
- 廃液槽と、該廃液槽から供給される廃液中の塩素系有機溶剤を吸着する分離部材が充填された分離槽を有する溶剤分離部と、該溶剤分離部の下部に設けられた曝気処理部を有し、該曝気処理部には前記溶剤分離処理後の廃液中に残存する塩素系有機溶剤を気化する曝気槽と、曝気後の気化ガスが前記分離部材を通過するように接続され、気化ガス中の塩素系有機物を光酸化分解させる光触媒顆粒体が充填された光触媒反応部と、これに対向するように配置された人口光照射部を有する光酸化分解処理部を備えたことを特徴とする廃液処理装置。
- 請求項1に記載の廃液処理装置を用いた洗浄装置。
- 請求項1に記載の廃液処理装置を用いたドライクリーニング装置。
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