JP2004057934A - 有機塩素化合物の無害化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】懸濁物質やコロイド物質を含む原水中の有害な有機塩素化合物、例えばDXNやPCBを、経済的に効率よく分解する。
【解決手段】DXNやPCBを含む原水を、プレコートろ過器2でろ過し、ろ液を活性炭吸着塔を通過させた後放流するか、過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルで分解無害化(促進酸化処理)する。プレコートろ過器2の圧力損失が予め設定した値を超えたら、プレコート剤を剥離させて取りだす。取り出されたプレコート剤すなわち剥離プレコート剤は、吸着DXN・PCBを含んでいるので、過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルにより無害化する(促進酸化処理)。
【選択図】 図1
【解決手段】DXNやPCBを含む原水を、プレコートろ過器2でろ過し、ろ液を活性炭吸着塔を通過させた後放流するか、過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルで分解無害化(促進酸化処理)する。プレコートろ過器2の圧力損失が予め設定した値を超えたら、プレコート剤を剥離させて取りだす。取り出されたプレコート剤すなわち剥離プレコート剤は、吸着DXN・PCBを含んでいるので、過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルにより無害化する(促進酸化処理)。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機塩素系化合物の無害化方法に係り、特に、懸濁物質やコロイド物質を含む原水中のダイオキシンやPCBを無害化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本の水は一般にシリカの含有量が多く、中性または酸性域ではコロイド状である。ダイオキシン(以下DXN)やPCBは疎水性のものが多く、ごみ焼却炉解体工事に伴なう汚染排水中や、有害な有機塩素化合物に汚染された地下水中では、DXNやPCBに代表される有害な有機塩素化合物の大部分が懸濁物質やコロイドに吸着されて存在する。
【0003】
このため、前記汚染排水や地下水(以下、原水という)に含まれるDXNやPCBを促進酸化法(紫外線照射+オゾン、紫外線照射+過酸化水素)で分解して無害化する場合、懸濁物質やコロイドに吸着されたDXNやPCBは、水に溶解したDXNやPCBに比べ、分解しにくいという問題がある。
【0004】
この問題に対応して、特許文献1〜7などで、有機溶媒や界面活性剤を原水に添加して、懸濁物質やコロイドに吸着されたDXNやPCBを水側に移行させて分解を促進する方法や、懸濁物質やコロイドに吸着したDXNやPCBを超音波により脱着して水側に移行させて分解を促進する方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−309486号公報
【特許文献2】
特開平11−309499号公報
【特許文献3】
特開2000―102794号公報
【特許文献4】
特開2001−54795号公報
【特許文献5】
特開2001−96267号公報
【特許文献6】
特開2001−300564号公報
【特許文献7】
特開2002−35755号公報
【発明が解決しようとする課題】
上記有機溶媒や界面活性剤を原水に添加して、懸濁物質やコロイドに吸着されたDXNやPCBを水側に移行させて分解を促進する方法は、溶媒や界面活性剤の添加費が嵩むという問題がある。また、懸濁物質やコロイドに吸着したDXNやPCBを超音波により脱着して水側に移行させて分解を促進する方法は、高価な超音波発生装置を要するという問題がある。さらに、日本の水は一般にシリカの含有量が多く、中性または酸性域ではコロイド状であり、DXNやPCBのほとんどはコロイド状珪酸に吸着しているため、紫外線照射により分解する場合、紫外線が遮られ、長時間の紫外線照射を必要とし、所要電力が嵩み、実用的ではない。
【0006】
本発明の課題は、懸濁物質やコロイド物質を含む原水中の有害な有機塩素化合物、例えばDXNやPCBを、経済的に効率よく分解するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成する本発明は、有機塩素化合物を含む排水をプレコートろ過する手順と、剥離プレコート剤に対して紫外線照射装置を用いた促進酸化処理を行う手順と、を有してなる有機塩素化合物の無害化方法である。
【0008】
促進酸化処理により無害化された剥離プレコート剤は、プレコート剤として再利用することが望ましい。
【0009】
上記課題は、プレコートろ過に代えて、有機塩素化合物を含む排水を膜ろ過し、膜分離濃縮液に対して紫外線照射装置を用いた促進酸化処理を行うことによっても達成できる。
【0010】
具体的には、まず、▲1▼コロイド状物質、特にコロイド状シリカをプレコートろ過または精密ろ過膜または限外ろ過膜で除去し、この段階で規制水質以下になる場合はそのまま放流する。この段階で規制水質以下にならない場合は、ろ液(溶解性DXNや溶解性PCBを含む)に過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルで分解無害化(促進酸化処理)するか、活性炭吸着塔で吸着除去後放流する。プレコートろ過で生成した少量のろ滓すなわち剥離プレコート剤(処理水の数%)や精密ろ過膜または限外ろ過膜で生成された膜分離濃縮液は、吸着DXN・PCBを含んでいるので、過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルにより無害化する(促進酸化処理)。吸着DXN・PCBの分解は、その脱着速度に律速され、極めて遅いので長い照射時間を必要とするが紫外線強度は少なくてよい。この結果、紫外線照射量を低減できる効果がある。
【0011】
なお、紫外線を照射して生成するOHラジカルにより無害化する促進酸化処理においては、紫外線の照射を受ける被照射体、すなわち、剥離プレコート剤や膜分離濃縮液は、紫外線照射方向の厚みが0.4mm〜10mmとなる薄液層紫外線照射装置による紫外線照射を受けるのが望ましい。
▲2▼さらに、精密ろ過膜や限外ろ過膜は、コロイドシリカが多いと目詰まりしやすいが、適量の珪藻土等で膜面にプレコート層を形成すると、膜の目詰まりを抑制する効果がある。
▲3▼精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた場合は、珪藻土添加量を低減することができる。シリカの含有量によってはゼロにできる。
▲4▼剥離プレコート剤は、薄液層紫外線照射装置により液中のDXNやPCBが目標水質以下になるまでバッチ循環照射し、無害化されたプレコート剤を再使用するので、廃棄物発生量が少なくなる。
▲5▼また、余剰スラリーは、珪藻土等のプレコート剤が添加されているので、機械式脱水機で脱水しやすく、熱処理等で無害化処理する費用が低減できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1に、本発明が適用される水処理装置の系統構成の例を示す。図1に示す水処理装置は、図示されていない原水槽から弁25を介して原水を吸引して加圧送水する原水ポンプ1と、原水ポンプ1の吐出側に接続されたプレコートろ過器2と、このプレコートろ過器2の上部に接続されプレコートろ過器2内部と大気を連通する吸気弁3と、前記プレコートろ過器2の下方に配置され、プレコートろ過器2の底部に弁8を介装した剥離プレコート剤管路18で接続されたプレコート剤クリーニング装置9と、前記弁8上流側の剥離プレコート剤管路18と前記原水槽を弁7を介して接続するブロー水管路19と、前記プレコートろ過器2の処理水出側に弁4を介装した処理水管路16で接続された活性炭吸着塔(または促進酸化装置)5と、前記弁4上流側の処理水管路16に弁6を介装したプレコート剤調整水管路17で接続されたプレコート剤調整槽11と、前記プレコート剤クリーニング装置9に管路24を介して吸入側を接続し吐出側を前記プレコート剤調整槽11に接続して設けられた移送ポンプ10と、前記プレコート剤調整槽11に弁13を介装した余剰スラリー排出管路22で接続された脱水機14と、前記プレコート剤調整槽11と前記原水槽を接続する洗浄オーバフロー管路21と、前記プレコート剤調整槽11底部と前記原水ポンプ1入り側を弁12を介して接続する循環管路20と、弁12下流側の前記循環管路20に弁15を介して接続されたプレコート層洗浄水管路23と、を含んで構成されている。
【0013】
前記剥離プレコート剤管路18は上下方向に配設され、前記ブロー水管路19は、剥離プレコート剤管路18から水平方向に分岐した後、下方に曲がっている。
【0014】
図2に、前記プレコート剤クリーニング装置9の側面図を示す。プレコート剤クリーニング装置9は、図示のように、車輪を備えた車台9rと、この車台9r上に設置された剥離プレコート剤受槽9a、循環ポンプ9b、過酸化水素供給ユニットと、車台9rの上に支持台9sを介して据え付けられた薄液層紫外線照射装置(以下、紫外線照射ユニットという)と、を含んで構成されている。本実施の形態では、設備の移設、改造、変更への対応を考慮してプレコート剤クリーニング装置9を移動可能にしてあるが、そのような考慮が不要な場合、車輪を備える必要はない。
【0015】
剥離プレコート剤受槽9aは、前記剥離プレコート剤管路18に接続され(図2では図示を省略してある)ているとともに、循環ポンプ9b吸入側にプレコート剤循環配管9nで、紫外線照射ユニット出口弁9fにプレコート剤循環配管9pで、それぞれ接続されている。剥離プレコート剤受槽9aはまた、前記管路24(図2では図示を省略してある)を介して前記移送ポンプ10の吸入側に接続されている。
【0016】
循環ポンプ9bは、吸入側をプレコート剤循環配管9nを介して前記剥離プレコート剤受槽9aに、吐出側をプレコート剤循環配管9oを介して紫外線照射ユニットのプレコート剤流入弁9eに、それぞれ接続されている
過酸化水素供給ユニットは、車台9r上に設置された過酸化水素タンク9cと、この過酸化水素タンク9c上に設置され吸入側を過酸化水素タンク9c内に配置した過酸化水素注入ポンプ9dと、過酸化水素注入ポンプ9dの吐出側を前記プレコート剤循環配管9oに接続する過酸化水素注入管と、を含んで構成されている。
【0017】
紫外線照射ユニットは、水平に配置され、両端をシールナット9tでシールされるとともにフランジ9y1が固着された中空の内側透明チューブ9gと、フランジ9y1の互いに対向する側それぞれに結合されるとともに、フランジ9y1との結合面の反対側それぞれに前記内側透明チューブ9g外側になる二重管状に形成された短管部を備えたフランジ9y2と、フランジ9y2の前記短管部内側(かつ透明チューブ9g外側)にそれぞれ挿入結合された一対の直管継ぎ手9zと、この一対の直管継ぎ手9zの互いに対向する側の端部外側に内周を接して嵌め込まれ、前記内側透明チューブ9gと2重管を形成する外側透明チューブ9hと、一方のフランジ9y2の短管部に形成された開口に取り付けられた流入弁9eと、他方のフランジ9y2の短管部に形成された開口に取り付けられた出口弁9fと、内側透明チューブ9g内に配置された内側UVランプ9jと、外側透明チューブ9hの外側に配置された外側UVランプ9iと、外側UVランプ9iの外周側に外側透明チューブ9hと同心状に形成された円筒状または角筒状のケーシング9xと、を含んで構成され、前記支持台9sは前記ケーシング9x下面を支持している。
【0018】
前記円筒状または角筒状のケーシング9xの軸方向両端は、一対の直管継ぎ手9zの外周面に軸線に直交して固定された端板で塞がれ、ケーシング9xはこの端板を介して前記外側透明チューブ9h、内側透明チューブ9g、外側UVランプ9i、内側UVランプ9jなどを支持している。前記外側UVランプ9iは、外側透明チューブ9hの軸線にランプ軸線を平行させて配置され、外側UVランプ9iの軸線方向両端部の軸方向外側には、前記端板に平行してケーシング9x内面と外側透明チューブ9hの外面の間に一対の環状の仕切板が設けられている。また、ケーシング9xの前記一対の仕切板の間の内周面及び前記一対の仕切板の互いに対向する面には、反射板が装着されている。
【0019】
外側透明チューブ9h内周面と内側透明チューブ9gの外周面の間の間隙は数mmのオーダー(本実施の形態では最小液層厚は5mmである)で、この間隙からなる円筒状部分には、内周側と外周側の双方から紫外線が照射されるようになっている。すなわち、スラリーのように紫外線透過率が小さい液の紫外線照射に適した構成になっている。
【0020】
SSやコロイドを含む液の促進酸化では、SSやコロイドに紫外線が吸収され、SSやコロイド濃度が高いと紫外線がSSやコロイドに吸収・散乱され、紫外線が届く距離は、極端な場合、0.5mmになる。このような場合、流れの撹乱により透明チューブの表面に達した過酸化水素分子のみが紫外線を吸収し、透明チューブから離れたところを流れる過酸化水素分子は紫外線を吸収することなく装置を流出してしまい、OHラジカル生成速度が小さくなる。この弊害をなくすため、液層厚を薄くし、過酸化水素分子が紫外線を吸収する確率を高めるとともに、流体混合を促進する。発明者等の実験によれば、液層厚を10mm以下にした状態で紫外線を照射すると、紫外線照射量を低減できることが確認できた。
【0021】
なお、後述するぬれ壁式紫外線照射装置によれば、液層厚を0.4mm程度に薄くすることが可能であり、処理量によっては、そのような紫外線照射装置を用いることも可能である。
【0022】
上述のように、過酸化水素を含む液層の両側から紫外線を照射してOHラジカルを生成させる場合の液層厚は、0.4mm〜10mmに維持することが望ましい。
【0023】
図3に、本実施の形態のプレコートろ過器2の概略構成を示す。プレコートろ過器のろ過エレメントは、ろ布、断面が楔形をしたSUS製針金を螺旋状に巻いたもの、多孔質ろ過筒、精密ろ過膜、限外ろ過膜のいずれでもよい。
【0024】
次に上記構成の装置の動作を、図5を参照して説明する。
【0025】
まず、プレコート工程で、プレコートろ過器2のプレコートを行う。そのために、プレコート剤調整槽11で、処理水または水道水または原水を用いてプレコート剤のスラリーを生成する(手順a)。本実施の形態では、吸気弁3、弁4、弁7,弁8、弁12を閉じ、弁6を開いて、プレコートろ過器2を通して原水ポンプ1によりプレコート剤調整槽11に原水を供給する。プレコート剤としては、例えば珪藻土等の紫外線照射により変質することのないものを用い、プレコート剤調整槽11に設けられたプレコート剤補充手段で供給するか、移送ポンプ10でプレコート剤クリーニング装置9から供給する。スラリー濃度は1%程度とする。
【0026】
プレコート剤のスラリーができたら、手順bに進み、弁12を開いて原水ポンプ1―プレコートろ過器2―弁6―プレコート剤調整槽11―弁12―原水ポンプ1の循環ルートを形成し、原水ポンプにより、プレコート剤のスラリーを、前記循環ルートに循環させる。この循環をプレコート剤調整槽11が清澄になるまで(5〜15分)、継続する。この循環により、1―プレコートろ過器2のろ過エレメントに、プレコート剤がプレコートされる。
【0027】
プレコートが終了すると、処理水または水道水または原水を用いて数分間、プレコート層の洗浄を行う(手順c)。プレコート層の洗浄は、プレコート層に含まれている水中の微細な粒子を洗い出すために行われる。洗浄に使用した水は洗浄オーバーフロー管路21をへて原水槽へ導かれる。プレコート層の洗浄が終了したら、弁6を閉じ、弁4を開いて原水のろ過処理を開始する。
【0028】
原水のろ過処理(手順d)は、原水ポンプ1で原水槽の原水をプレコートろ過器2に送り込んで行う。プレコートろ過器2を出たろ過水は活性炭吸着塔5に導入され、溶解性DXNや溶解性PCBを吸着除去して規制水質以下としたのち、放流される。活性炭吸着塔5に代えて前記プレコート剤クリーニング装置9のような促進酸化装置を設け、ろ過水に過酸化水素もしくはオゾンを注入して紫外線を照射し、生成するOHラジカルで溶存するDXNやPCBを分解無害化するようにしてもよい。
【0029】
ろ過処理作業実施中は、プレコートろ過器2の圧力損失を測定し、圧力損失が予め設定された制限値に比較される(手順e)。プレコートろ過器2の圧力損失が予め設定されている制限値(通常、1〜1.5kg/cm2の範囲内に設定される)に達したら、原水ポンプ1を停止してプレコート層の剥離排出工程(手順f,g,h)に移る。
【0030】
プレコート層の剥離排出工程では、まず、弁4を閉じ、吸気弁3、弁7を開いてプレコートろ過器2内の原水を全量、ブロー水管路19を通じて原水槽にブローする(手順f)。続いて吸気弁3、弁7を閉じ、原水ポンプ1を駆動してプレコートろ過器2内に原水を打ち込んでプレコートろ過器2内の空気を圧縮する(手順g)。プレコートろ過器2内の空気を圧縮したのち、瞬間的に弁8を開くとプレコート層が剥離される。剥離されたプレコート層(プレコート剤)を含む液(以下、剥離プレコート液という)を、弁8を開いてプレコート剤クリーニング装置9の剥離プレコート剤受槽9aに排出する(手順h)。この圧縮、ブロー、プレコート層排出の操作手順を所定の回数(2〜3回)繰り返し(手順i)、プレコート層の剥離・排出を終了する。プレコート層の剥離・排出を終了したら、プレコート剤クリーニング装置9で、排出されたプレコート剤の無害化を開始する(手順j)。
【0031】
手順jでは、まず、流入弁9e、出口弁9fを開き、循環ポンプ9bを起動する。循環ポンプ9bの起動により、剥離プレコート剤受槽9a内の剥離プレコート液は、剥離プレコート剤受槽9aから、プレコート剤循環配管9n,循環ポンプ9b,プレコート剤循環配管9o,流入弁9e,外側透明チューブ9h内周面と内側透明チューブ9gの外周面の間の円筒状部分,出口弁9f,プレコート剤循環配管9pを経て剥離プレコート剤受槽9aに戻るルートを循環する。循環ポンプ9bの起動に合わせて、前記外側UVランプ9i,内側UVランプ9jが点灯されるとともに過酸化水素注入ポンプ9dが起動され、過酸化水素タンク9cの過酸化水素がプレコート剤循環配管9oを流れる剥離プレコート液に注入される。
【0032】
過酸化水素が注入された剥離プレコート液は、前記円筒状部分を通過しつつ紫外線照射を受け、DXN、PCB等の有機塩素化合物が脱塩素分解される。同時に、紫外線照射を受けた過酸化水素はOHラジカルを生成し、このOHラジカルにより、DXN、PCB等の有機塩素化合物の酸化分解される。
【0033】
剥離プレコート液は、上述のように、紫外線照射ユニットへ循環送水されて無害化されるが、循環送水の時間は、予め、循環送水の経過時間によって有害塩素化合物の含有量がどのように変化するかを調べておき、その結果に基いて、所定の濃度以下になるように設定する必要がある。循環送水の継続時間は、処理対象水の水質に依存する。すなわち、PCB,DXN濃度並びにその他の有機物濃度、鉄分濃度、炭酸イオン濃度などによって異なるから、原水の条件が一定でない場合は、剥離プレコート液に残留するPCB,DXN濃度をモニターし、法律や規則で定められた規制値以下になるまで循環送水を継続し、紫外線照射を行うのが望ましい。
【0034】
前記操作により無害化された剥離プレコート液、つまりプレコート剤は次のプレコート工程において、移送ポンプ10によりプレコート剤調整槽11に送られ、プレコート剤のスラリー生成に再利用される。プレコート剤の再生使用を繰り返しによって、原水中のSS(浮遊物質)が蓄積してスラリー濃度が所定値を上回った場合、スラリーの一部を排出し、新しいプレコート剤をプレコート剤調整槽11に補充してプレコート用のスラリーを生成する。
【0035】
薄液層紫外線照射装置には、図6、図7に示すぬれ壁式薄液層紫外線照射装置を用いてもよい。図6は廃水の促進酸化装置であり、図7に示すぬれ壁式薄液層紫外線照射装置を用いて廃水中にOHラジカルを形成するようになっている。
【0036】
上記実施の形態では、プレコート剤クリーニング装置9において、過酸化水素供給ユニットにより剥離プレコート液に過酸化水素を注入し、紫外線照射により過酸化水素から発生するOHラジカルを利用したが、過酸化水素供給ユニットに代えてオゾン供給ユニットを設け、紫外線照射によりオゾンから発生するOHラジカルを利用するようにしてもよい。
【0037】
吸着DXN・PCBの分解は、その脱着速度に律速され、極めて遅いので長い照射時間を必要とするが紫外線強度は少なくてよい。この結果、紫外線照射量を低減できる効果がある。
【0038】
剥離プレコート剤は、薄液層紫外線照射装置により液中のDXNやPCBが目標水質以下になるまでバッチ循環照射し、無害化されたプレコート剤を再使用するので、廃棄物発生量が少なくなる。
【0039】
また、余剰スラリーは、珪藻土等のプレコート剤が添加されているので、機械式脱水機で脱水しやすく、熱処理等で無害化処理する費用が低減できる。
【0040】
上述のように、本実施の形態によれば、有機溶媒や超音波発生装置を用いることなく、懸濁物質やコロイド物質を含む原水中の有害な有機塩素化合物、例えばDXNやPCBを、経済的に効率よく分解することができる。
【0041】
原水水質によっては、プレコートろ過器2に代えて、プレコート剤を添加しない、精密ろ過膜や限外ろ過膜を備えた膜ろ過器を用いてもよい。図4に膜ろ過器の例を示す。プレコートろ過器2に代えて膜ろ過器を用いた場合は、ろ過水は前記図1に示す実施の形態と同様に、活性炭吸着塔もしくは促進酸化装置に導入するように構成し、膜分離濃縮液は図2または図6、図7に示す薄液層紫外線照射装置を用いた促進酸化装置に導入するように構成する。そして、ろ過水は活性炭吸着塔もしくは促進酸化装置に導入して残存する溶解性DXNや溶解性PCBを吸着除去もしくは分解して無害化したのち放流し、膜分離濃縮液は、薄液層紫外線照射装置に導入して残存する吸着性DXNや吸着性PCBをOHラジカルにより分解し無害化する。
【0042】
さらに、精密ろ過膜や限外ろ過膜は、コロイドシリカが多いと目詰まりしやすいが、適量の珪藻土等で膜面にプレコート層を形成すると、膜の目詰まりを抑制する効果がある。
【0043】
精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた場合は、珪藻土添加量を低減することができる。シリカの含有量によってはゼロにできる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、原水中の懸濁成分やコロイドに吸着した有害塩素化合物を、超音波発生装置や有機溶媒を用いることなく、経済的に効率よく分解して無害化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る水処理装置を示す系統図である。
【図2】図1に示す水処理装置のプレコート剤クリーニング装置を示す一部断面側面図である。
【図3】図1に示す水処理装置のプレコートろ過器の例を示す断面図である。
【図4】図1に示す水処理装置のプレコートろ過器に代えて用いる膜ろ過器の例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る有害塩素化合物の無害化手順を示すフローチャートである。
【図6】廃水の促進酸化装置の例を示す系統図である。
【図7】図6に示すぬれ壁式薄液層紫外線照射装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 原水ポンプ
2 プレコートろ過器
3 吸気弁
4 弁
5 活性炭吸着塔(もしくは促進酸化装置)
6 弁
7 弁
8 弁
9 プレコート剤クリーニング装置
10 移送ポンプ
11 プレコート剤調整槽
12、13 弁
14 脱水機
15 弁
16 処理水管路
17 プレコート剤調整水管路
18 剥離プレコート剤管路
19 ブロー水管路
20 循環管路
21 洗浄オーバフロー管路
22 余剰スラリー排出管路
23 プレコート層洗浄水管路
24 管路
25 弁
【発明の属する技術分野】
本発明は有機塩素系化合物の無害化方法に係り、特に、懸濁物質やコロイド物質を含む原水中のダイオキシンやPCBを無害化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本の水は一般にシリカの含有量が多く、中性または酸性域ではコロイド状である。ダイオキシン(以下DXN)やPCBは疎水性のものが多く、ごみ焼却炉解体工事に伴なう汚染排水中や、有害な有機塩素化合物に汚染された地下水中では、DXNやPCBに代表される有害な有機塩素化合物の大部分が懸濁物質やコロイドに吸着されて存在する。
【0003】
このため、前記汚染排水や地下水(以下、原水という)に含まれるDXNやPCBを促進酸化法(紫外線照射+オゾン、紫外線照射+過酸化水素)で分解して無害化する場合、懸濁物質やコロイドに吸着されたDXNやPCBは、水に溶解したDXNやPCBに比べ、分解しにくいという問題がある。
【0004】
この問題に対応して、特許文献1〜7などで、有機溶媒や界面活性剤を原水に添加して、懸濁物質やコロイドに吸着されたDXNやPCBを水側に移行させて分解を促進する方法や、懸濁物質やコロイドに吸着したDXNやPCBを超音波により脱着して水側に移行させて分解を促進する方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−309486号公報
【特許文献2】
特開平11−309499号公報
【特許文献3】
特開2000―102794号公報
【特許文献4】
特開2001−54795号公報
【特許文献5】
特開2001−96267号公報
【特許文献6】
特開2001−300564号公報
【特許文献7】
特開2002−35755号公報
【発明が解決しようとする課題】
上記有機溶媒や界面活性剤を原水に添加して、懸濁物質やコロイドに吸着されたDXNやPCBを水側に移行させて分解を促進する方法は、溶媒や界面活性剤の添加費が嵩むという問題がある。また、懸濁物質やコロイドに吸着したDXNやPCBを超音波により脱着して水側に移行させて分解を促進する方法は、高価な超音波発生装置を要するという問題がある。さらに、日本の水は一般にシリカの含有量が多く、中性または酸性域ではコロイド状であり、DXNやPCBのほとんどはコロイド状珪酸に吸着しているため、紫外線照射により分解する場合、紫外線が遮られ、長時間の紫外線照射を必要とし、所要電力が嵩み、実用的ではない。
【0006】
本発明の課題は、懸濁物質やコロイド物質を含む原水中の有害な有機塩素化合物、例えばDXNやPCBを、経済的に効率よく分解するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成する本発明は、有機塩素化合物を含む排水をプレコートろ過する手順と、剥離プレコート剤に対して紫外線照射装置を用いた促進酸化処理を行う手順と、を有してなる有機塩素化合物の無害化方法である。
【0008】
促進酸化処理により無害化された剥離プレコート剤は、プレコート剤として再利用することが望ましい。
【0009】
上記課題は、プレコートろ過に代えて、有機塩素化合物を含む排水を膜ろ過し、膜分離濃縮液に対して紫外線照射装置を用いた促進酸化処理を行うことによっても達成できる。
【0010】
具体的には、まず、▲1▼コロイド状物質、特にコロイド状シリカをプレコートろ過または精密ろ過膜または限外ろ過膜で除去し、この段階で規制水質以下になる場合はそのまま放流する。この段階で規制水質以下にならない場合は、ろ液(溶解性DXNや溶解性PCBを含む)に過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルで分解無害化(促進酸化処理)するか、活性炭吸着塔で吸着除去後放流する。プレコートろ過で生成した少量のろ滓すなわち剥離プレコート剤(処理水の数%)や精密ろ過膜または限外ろ過膜で生成された膜分離濃縮液は、吸着DXN・PCBを含んでいるので、過酸化水素またはオゾンを注入し紫外線を照射して生成するOHラジカルにより無害化する(促進酸化処理)。吸着DXN・PCBの分解は、その脱着速度に律速され、極めて遅いので長い照射時間を必要とするが紫外線強度は少なくてよい。この結果、紫外線照射量を低減できる効果がある。
【0011】
なお、紫外線を照射して生成するOHラジカルにより無害化する促進酸化処理においては、紫外線の照射を受ける被照射体、すなわち、剥離プレコート剤や膜分離濃縮液は、紫外線照射方向の厚みが0.4mm〜10mmとなる薄液層紫外線照射装置による紫外線照射を受けるのが望ましい。
▲2▼さらに、精密ろ過膜や限外ろ過膜は、コロイドシリカが多いと目詰まりしやすいが、適量の珪藻土等で膜面にプレコート層を形成すると、膜の目詰まりを抑制する効果がある。
▲3▼精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた場合は、珪藻土添加量を低減することができる。シリカの含有量によってはゼロにできる。
▲4▼剥離プレコート剤は、薄液層紫外線照射装置により液中のDXNやPCBが目標水質以下になるまでバッチ循環照射し、無害化されたプレコート剤を再使用するので、廃棄物発生量が少なくなる。
▲5▼また、余剰スラリーは、珪藻土等のプレコート剤が添加されているので、機械式脱水機で脱水しやすく、熱処理等で無害化処理する費用が低減できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1に、本発明が適用される水処理装置の系統構成の例を示す。図1に示す水処理装置は、図示されていない原水槽から弁25を介して原水を吸引して加圧送水する原水ポンプ1と、原水ポンプ1の吐出側に接続されたプレコートろ過器2と、このプレコートろ過器2の上部に接続されプレコートろ過器2内部と大気を連通する吸気弁3と、前記プレコートろ過器2の下方に配置され、プレコートろ過器2の底部に弁8を介装した剥離プレコート剤管路18で接続されたプレコート剤クリーニング装置9と、前記弁8上流側の剥離プレコート剤管路18と前記原水槽を弁7を介して接続するブロー水管路19と、前記プレコートろ過器2の処理水出側に弁4を介装した処理水管路16で接続された活性炭吸着塔(または促進酸化装置)5と、前記弁4上流側の処理水管路16に弁6を介装したプレコート剤調整水管路17で接続されたプレコート剤調整槽11と、前記プレコート剤クリーニング装置9に管路24を介して吸入側を接続し吐出側を前記プレコート剤調整槽11に接続して設けられた移送ポンプ10と、前記プレコート剤調整槽11に弁13を介装した余剰スラリー排出管路22で接続された脱水機14と、前記プレコート剤調整槽11と前記原水槽を接続する洗浄オーバフロー管路21と、前記プレコート剤調整槽11底部と前記原水ポンプ1入り側を弁12を介して接続する循環管路20と、弁12下流側の前記循環管路20に弁15を介して接続されたプレコート層洗浄水管路23と、を含んで構成されている。
【0013】
前記剥離プレコート剤管路18は上下方向に配設され、前記ブロー水管路19は、剥離プレコート剤管路18から水平方向に分岐した後、下方に曲がっている。
【0014】
図2に、前記プレコート剤クリーニング装置9の側面図を示す。プレコート剤クリーニング装置9は、図示のように、車輪を備えた車台9rと、この車台9r上に設置された剥離プレコート剤受槽9a、循環ポンプ9b、過酸化水素供給ユニットと、車台9rの上に支持台9sを介して据え付けられた薄液層紫外線照射装置(以下、紫外線照射ユニットという)と、を含んで構成されている。本実施の形態では、設備の移設、改造、変更への対応を考慮してプレコート剤クリーニング装置9を移動可能にしてあるが、そのような考慮が不要な場合、車輪を備える必要はない。
【0015】
剥離プレコート剤受槽9aは、前記剥離プレコート剤管路18に接続され(図2では図示を省略してある)ているとともに、循環ポンプ9b吸入側にプレコート剤循環配管9nで、紫外線照射ユニット出口弁9fにプレコート剤循環配管9pで、それぞれ接続されている。剥離プレコート剤受槽9aはまた、前記管路24(図2では図示を省略してある)を介して前記移送ポンプ10の吸入側に接続されている。
【0016】
循環ポンプ9bは、吸入側をプレコート剤循環配管9nを介して前記剥離プレコート剤受槽9aに、吐出側をプレコート剤循環配管9oを介して紫外線照射ユニットのプレコート剤流入弁9eに、それぞれ接続されている
過酸化水素供給ユニットは、車台9r上に設置された過酸化水素タンク9cと、この過酸化水素タンク9c上に設置され吸入側を過酸化水素タンク9c内に配置した過酸化水素注入ポンプ9dと、過酸化水素注入ポンプ9dの吐出側を前記プレコート剤循環配管9oに接続する過酸化水素注入管と、を含んで構成されている。
【0017】
紫外線照射ユニットは、水平に配置され、両端をシールナット9tでシールされるとともにフランジ9y1が固着された中空の内側透明チューブ9gと、フランジ9y1の互いに対向する側それぞれに結合されるとともに、フランジ9y1との結合面の反対側それぞれに前記内側透明チューブ9g外側になる二重管状に形成された短管部を備えたフランジ9y2と、フランジ9y2の前記短管部内側(かつ透明チューブ9g外側)にそれぞれ挿入結合された一対の直管継ぎ手9zと、この一対の直管継ぎ手9zの互いに対向する側の端部外側に内周を接して嵌め込まれ、前記内側透明チューブ9gと2重管を形成する外側透明チューブ9hと、一方のフランジ9y2の短管部に形成された開口に取り付けられた流入弁9eと、他方のフランジ9y2の短管部に形成された開口に取り付けられた出口弁9fと、内側透明チューブ9g内に配置された内側UVランプ9jと、外側透明チューブ9hの外側に配置された外側UVランプ9iと、外側UVランプ9iの外周側に外側透明チューブ9hと同心状に形成された円筒状または角筒状のケーシング9xと、を含んで構成され、前記支持台9sは前記ケーシング9x下面を支持している。
【0018】
前記円筒状または角筒状のケーシング9xの軸方向両端は、一対の直管継ぎ手9zの外周面に軸線に直交して固定された端板で塞がれ、ケーシング9xはこの端板を介して前記外側透明チューブ9h、内側透明チューブ9g、外側UVランプ9i、内側UVランプ9jなどを支持している。前記外側UVランプ9iは、外側透明チューブ9hの軸線にランプ軸線を平行させて配置され、外側UVランプ9iの軸線方向両端部の軸方向外側には、前記端板に平行してケーシング9x内面と外側透明チューブ9hの外面の間に一対の環状の仕切板が設けられている。また、ケーシング9xの前記一対の仕切板の間の内周面及び前記一対の仕切板の互いに対向する面には、反射板が装着されている。
【0019】
外側透明チューブ9h内周面と内側透明チューブ9gの外周面の間の間隙は数mmのオーダー(本実施の形態では最小液層厚は5mmである)で、この間隙からなる円筒状部分には、内周側と外周側の双方から紫外線が照射されるようになっている。すなわち、スラリーのように紫外線透過率が小さい液の紫外線照射に適した構成になっている。
【0020】
SSやコロイドを含む液の促進酸化では、SSやコロイドに紫外線が吸収され、SSやコロイド濃度が高いと紫外線がSSやコロイドに吸収・散乱され、紫外線が届く距離は、極端な場合、0.5mmになる。このような場合、流れの撹乱により透明チューブの表面に達した過酸化水素分子のみが紫外線を吸収し、透明チューブから離れたところを流れる過酸化水素分子は紫外線を吸収することなく装置を流出してしまい、OHラジカル生成速度が小さくなる。この弊害をなくすため、液層厚を薄くし、過酸化水素分子が紫外線を吸収する確率を高めるとともに、流体混合を促進する。発明者等の実験によれば、液層厚を10mm以下にした状態で紫外線を照射すると、紫外線照射量を低減できることが確認できた。
【0021】
なお、後述するぬれ壁式紫外線照射装置によれば、液層厚を0.4mm程度に薄くすることが可能であり、処理量によっては、そのような紫外線照射装置を用いることも可能である。
【0022】
上述のように、過酸化水素を含む液層の両側から紫外線を照射してOHラジカルを生成させる場合の液層厚は、0.4mm〜10mmに維持することが望ましい。
【0023】
図3に、本実施の形態のプレコートろ過器2の概略構成を示す。プレコートろ過器のろ過エレメントは、ろ布、断面が楔形をしたSUS製針金を螺旋状に巻いたもの、多孔質ろ過筒、精密ろ過膜、限外ろ過膜のいずれでもよい。
【0024】
次に上記構成の装置の動作を、図5を参照して説明する。
【0025】
まず、プレコート工程で、プレコートろ過器2のプレコートを行う。そのために、プレコート剤調整槽11で、処理水または水道水または原水を用いてプレコート剤のスラリーを生成する(手順a)。本実施の形態では、吸気弁3、弁4、弁7,弁8、弁12を閉じ、弁6を開いて、プレコートろ過器2を通して原水ポンプ1によりプレコート剤調整槽11に原水を供給する。プレコート剤としては、例えば珪藻土等の紫外線照射により変質することのないものを用い、プレコート剤調整槽11に設けられたプレコート剤補充手段で供給するか、移送ポンプ10でプレコート剤クリーニング装置9から供給する。スラリー濃度は1%程度とする。
【0026】
プレコート剤のスラリーができたら、手順bに進み、弁12を開いて原水ポンプ1―プレコートろ過器2―弁6―プレコート剤調整槽11―弁12―原水ポンプ1の循環ルートを形成し、原水ポンプにより、プレコート剤のスラリーを、前記循環ルートに循環させる。この循環をプレコート剤調整槽11が清澄になるまで(5〜15分)、継続する。この循環により、1―プレコートろ過器2のろ過エレメントに、プレコート剤がプレコートされる。
【0027】
プレコートが終了すると、処理水または水道水または原水を用いて数分間、プレコート層の洗浄を行う(手順c)。プレコート層の洗浄は、プレコート層に含まれている水中の微細な粒子を洗い出すために行われる。洗浄に使用した水は洗浄オーバーフロー管路21をへて原水槽へ導かれる。プレコート層の洗浄が終了したら、弁6を閉じ、弁4を開いて原水のろ過処理を開始する。
【0028】
原水のろ過処理(手順d)は、原水ポンプ1で原水槽の原水をプレコートろ過器2に送り込んで行う。プレコートろ過器2を出たろ過水は活性炭吸着塔5に導入され、溶解性DXNや溶解性PCBを吸着除去して規制水質以下としたのち、放流される。活性炭吸着塔5に代えて前記プレコート剤クリーニング装置9のような促進酸化装置を設け、ろ過水に過酸化水素もしくはオゾンを注入して紫外線を照射し、生成するOHラジカルで溶存するDXNやPCBを分解無害化するようにしてもよい。
【0029】
ろ過処理作業実施中は、プレコートろ過器2の圧力損失を測定し、圧力損失が予め設定された制限値に比較される(手順e)。プレコートろ過器2の圧力損失が予め設定されている制限値(通常、1〜1.5kg/cm2の範囲内に設定される)に達したら、原水ポンプ1を停止してプレコート層の剥離排出工程(手順f,g,h)に移る。
【0030】
プレコート層の剥離排出工程では、まず、弁4を閉じ、吸気弁3、弁7を開いてプレコートろ過器2内の原水を全量、ブロー水管路19を通じて原水槽にブローする(手順f)。続いて吸気弁3、弁7を閉じ、原水ポンプ1を駆動してプレコートろ過器2内に原水を打ち込んでプレコートろ過器2内の空気を圧縮する(手順g)。プレコートろ過器2内の空気を圧縮したのち、瞬間的に弁8を開くとプレコート層が剥離される。剥離されたプレコート層(プレコート剤)を含む液(以下、剥離プレコート液という)を、弁8を開いてプレコート剤クリーニング装置9の剥離プレコート剤受槽9aに排出する(手順h)。この圧縮、ブロー、プレコート層排出の操作手順を所定の回数(2〜3回)繰り返し(手順i)、プレコート層の剥離・排出を終了する。プレコート層の剥離・排出を終了したら、プレコート剤クリーニング装置9で、排出されたプレコート剤の無害化を開始する(手順j)。
【0031】
手順jでは、まず、流入弁9e、出口弁9fを開き、循環ポンプ9bを起動する。循環ポンプ9bの起動により、剥離プレコート剤受槽9a内の剥離プレコート液は、剥離プレコート剤受槽9aから、プレコート剤循環配管9n,循環ポンプ9b,プレコート剤循環配管9o,流入弁9e,外側透明チューブ9h内周面と内側透明チューブ9gの外周面の間の円筒状部分,出口弁9f,プレコート剤循環配管9pを経て剥離プレコート剤受槽9aに戻るルートを循環する。循環ポンプ9bの起動に合わせて、前記外側UVランプ9i,内側UVランプ9jが点灯されるとともに過酸化水素注入ポンプ9dが起動され、過酸化水素タンク9cの過酸化水素がプレコート剤循環配管9oを流れる剥離プレコート液に注入される。
【0032】
過酸化水素が注入された剥離プレコート液は、前記円筒状部分を通過しつつ紫外線照射を受け、DXN、PCB等の有機塩素化合物が脱塩素分解される。同時に、紫外線照射を受けた過酸化水素はOHラジカルを生成し、このOHラジカルにより、DXN、PCB等の有機塩素化合物の酸化分解される。
【0033】
剥離プレコート液は、上述のように、紫外線照射ユニットへ循環送水されて無害化されるが、循環送水の時間は、予め、循環送水の経過時間によって有害塩素化合物の含有量がどのように変化するかを調べておき、その結果に基いて、所定の濃度以下になるように設定する必要がある。循環送水の継続時間は、処理対象水の水質に依存する。すなわち、PCB,DXN濃度並びにその他の有機物濃度、鉄分濃度、炭酸イオン濃度などによって異なるから、原水の条件が一定でない場合は、剥離プレコート液に残留するPCB,DXN濃度をモニターし、法律や規則で定められた規制値以下になるまで循環送水を継続し、紫外線照射を行うのが望ましい。
【0034】
前記操作により無害化された剥離プレコート液、つまりプレコート剤は次のプレコート工程において、移送ポンプ10によりプレコート剤調整槽11に送られ、プレコート剤のスラリー生成に再利用される。プレコート剤の再生使用を繰り返しによって、原水中のSS(浮遊物質)が蓄積してスラリー濃度が所定値を上回った場合、スラリーの一部を排出し、新しいプレコート剤をプレコート剤調整槽11に補充してプレコート用のスラリーを生成する。
【0035】
薄液層紫外線照射装置には、図6、図7に示すぬれ壁式薄液層紫外線照射装置を用いてもよい。図6は廃水の促進酸化装置であり、図7に示すぬれ壁式薄液層紫外線照射装置を用いて廃水中にOHラジカルを形成するようになっている。
【0036】
上記実施の形態では、プレコート剤クリーニング装置9において、過酸化水素供給ユニットにより剥離プレコート液に過酸化水素を注入し、紫外線照射により過酸化水素から発生するOHラジカルを利用したが、過酸化水素供給ユニットに代えてオゾン供給ユニットを設け、紫外線照射によりオゾンから発生するOHラジカルを利用するようにしてもよい。
【0037】
吸着DXN・PCBの分解は、その脱着速度に律速され、極めて遅いので長い照射時間を必要とするが紫外線強度は少なくてよい。この結果、紫外線照射量を低減できる効果がある。
【0038】
剥離プレコート剤は、薄液層紫外線照射装置により液中のDXNやPCBが目標水質以下になるまでバッチ循環照射し、無害化されたプレコート剤を再使用するので、廃棄物発生量が少なくなる。
【0039】
また、余剰スラリーは、珪藻土等のプレコート剤が添加されているので、機械式脱水機で脱水しやすく、熱処理等で無害化処理する費用が低減できる。
【0040】
上述のように、本実施の形態によれば、有機溶媒や超音波発生装置を用いることなく、懸濁物質やコロイド物質を含む原水中の有害な有機塩素化合物、例えばDXNやPCBを、経済的に効率よく分解することができる。
【0041】
原水水質によっては、プレコートろ過器2に代えて、プレコート剤を添加しない、精密ろ過膜や限外ろ過膜を備えた膜ろ過器を用いてもよい。図4に膜ろ過器の例を示す。プレコートろ過器2に代えて膜ろ過器を用いた場合は、ろ過水は前記図1に示す実施の形態と同様に、活性炭吸着塔もしくは促進酸化装置に導入するように構成し、膜分離濃縮液は図2または図6、図7に示す薄液層紫外線照射装置を用いた促進酸化装置に導入するように構成する。そして、ろ過水は活性炭吸着塔もしくは促進酸化装置に導入して残存する溶解性DXNや溶解性PCBを吸着除去もしくは分解して無害化したのち放流し、膜分離濃縮液は、薄液層紫外線照射装置に導入して残存する吸着性DXNや吸着性PCBをOHラジカルにより分解し無害化する。
【0042】
さらに、精密ろ過膜や限外ろ過膜は、コロイドシリカが多いと目詰まりしやすいが、適量の珪藻土等で膜面にプレコート層を形成すると、膜の目詰まりを抑制する効果がある。
【0043】
精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた場合は、珪藻土添加量を低減することができる。シリカの含有量によってはゼロにできる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、原水中の懸濁成分やコロイドに吸着した有害塩素化合物を、超音波発生装置や有機溶媒を用いることなく、経済的に効率よく分解して無害化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る水処理装置を示す系統図である。
【図2】図1に示す水処理装置のプレコート剤クリーニング装置を示す一部断面側面図である。
【図3】図1に示す水処理装置のプレコートろ過器の例を示す断面図である。
【図4】図1に示す水処理装置のプレコートろ過器に代えて用いる膜ろ過器の例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る有害塩素化合物の無害化手順を示すフローチャートである。
【図6】廃水の促進酸化装置の例を示す系統図である。
【図7】図6に示すぬれ壁式薄液層紫外線照射装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 原水ポンプ
2 プレコートろ過器
3 吸気弁
4 弁
5 活性炭吸着塔(もしくは促進酸化装置)
6 弁
7 弁
8 弁
9 プレコート剤クリーニング装置
10 移送ポンプ
11 プレコート剤調整槽
12、13 弁
14 脱水機
15 弁
16 処理水管路
17 プレコート剤調整水管路
18 剥離プレコート剤管路
19 ブロー水管路
20 循環管路
21 洗浄オーバフロー管路
22 余剰スラリー排出管路
23 プレコート層洗浄水管路
24 管路
25 弁
Claims (4)
- 有機塩素化合物を含む排水をプレコートろ過する手順と、剥離プレコート剤に対して紫外線照射装置を用いた促進酸化処理を行う手順と、を有してなる有機塩素化合物の無害化方法。
- 請求項1に記載の有機塩素化合物の無害化方法において、剥離プレコート剤を促進酸化処理により無害化後、プレコート剤として再利用する有機塩素化合物の無害化方法。
- 有機塩素化合物を含む排水を膜ろ過する手順と、膜分離濃縮液に対して紫外線照射装置を用いた促進酸化処理を行う手順と、を有してなる有機塩素化合物の無害化方法。
- 請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の有機塩素化合物の無害化方法において、促進酸化処理で紫外線照射を受ける被照射体は、紫外線照射方向の厚みが、0.4mm〜10mmであることを特徴とする有機塩素化合物の無害化方法。
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