JP4178244B2 - 粒子位置制御システム、及び、粒子位置制御方法 - Google Patents
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Description
従来の光ピンセット技術においては、1本の光線で1個の粒子の位置を制御することは可能であった。すなわち、水や空気等の媒質空間中に存在する粒子に1本の光線を照射することにより1個の粒子を捕捉した後、光線の照射位置を移動させることにより粒子を追随して移動させることは可能であった。また、複数の粒子が光線の動きに追随して集団で移動する性質を利用して、複数の粒子が散在する空間を光線でスキャンすることにより、粒子を集団で移動させることは可能であった。
また、物理的なピンセットを用いることにより、粒子を1つずつ動かして配列する技術も存在している。しかしながら、このような方法では粒子の配列が完了するまでに日単位の時間がかかってしまう。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、1本の光線を用いて、複数の粒子を独立に位置制御するための粒子位置制御システム、及び、粒子位置制御方法を提供することを目的とする。
粒子を捕捉するために必要な光量により1本の光線を照射するため、トラップ位置で粒子を確実に捕捉することができる。また、粒子位置制御システムは、トラップ照射位置以外においては、トラップ位置で捕捉された粒子が光線の照射位置の移動に追随して移動しないように光線を制御するため、トラップ位置で捕捉された粒子を動かないように固定しておくことができる。このため、1本の光線を用いながらも、複数の粒子を同時かつ独立に位置制御することができ、高速に複数の粒子各々を所望の位置に配列することができる。
[1.1.全体構成]
図1は、粒子位置制御システム1を側面から見た図である。同図に示すように、粒子位置制御システム1は、レーザビームを発光するレーザ発光器10と、レーザビームのZ軸方向の焦点位置を調整するZ軸レンズ20と、レーザビームのXY軸方向の焦点位置を調整するガルバノミラー30と、波長によって光を透過・屈折させるダイクロイックミラー40と、対物レンズ50と、空気や水等の媒質空間中に複数粒子が散在する試料60と、レーザカットフィルタ70と、カメラ80と、図示せぬステッピングモータと、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)とを含んで構成されている。
、アルゴンレーザやYAGレーザを用いる。なお、光源から出力する光はレーザに限定されず、フォトンを放射して放射圧を発生させる光であればどのようなものでもよい。
レーザ発光器10からレーザビームが出力される方向にはZ軸レンズ20が設けられている。Z軸レンズ20は2つのレンズより構成される。2つのレンズのうち、レーザ発光器10寄りに設置されているレンズは、レーザビームの光軸方向に移動自在に設けられている。このレンズを光軸方向に移動させることにより、Z軸方向の焦点距離を変化させる。
図示せぬPCのハードディスク等のメモリには、レーザビームの照射位置を制御するためのプログラムが記憶されている。
光ピンセット技術によって粒子を捕捉する方法には種々の態様がある。例えば、粒子が透明である場合には、粒子に光が照射されると粒子中を通過した光は屈折する。この光の屈折によって粒子に力が及ぼされて粒子が移動する。一方、粒子が不透明で光を透過させない場合には、粒子の周囲に光が照射されると、光の一部が粒子の裏側に回り込む回折現象を生じる。これにより粒子が光に引き寄せられる力を受けて移動する。そして、粒子に及ぼされる力が釣り合う安定点において粒子は停止する。すなわち、粒子は捕捉されることとなる。
めには、粒子の性質に応じて、レーザ発光器10から出力されるレーザビームのパワーと試料60におけるトラップ照射位置とを調整する必要がある。
1本のレーザビームで複数の粒子の位置制御を行うためには、(1)レーザビームの照射位置を、特定のトラップ位置で捕捉するためのトラップ照射位置から、他の粒子を他のトラップ位置で捕捉するための他のトラップ照射位置まで移動させる時の制御と、(2)トラップ照射位置に対してレーザビームを照射する時の制御とを考慮する必要がある。
なお、上記速度vは、粒子の重さをゼロと仮定した場合の理論値である。実際には、粒子には粒子の重さに依存する慣性力が働いて、vより遅い速度でレーザビームを移動させたとしても粒子は動かない。また、粒子の速度は、温度、圧力、媒質の粘性、及び、粒子の質量等の様々な要因に影響されるため、これらの要因を考慮した上で、粒子が追随して移動しないためのレーザビームの移動速度を決定する必要がある。
なお、以上説明したレーザビームを高速で移動させる方法以外に、レーザビームがトラップ照射位置間を移動する間に粒子が動くのを防ぐ方法としては、レーザビームがトラップ照射位置間を移動している間は、レーザ発光器10からのレーザビームの出力を一旦止めるという方法も考えられる。
トラップ位置に粒子を捕捉しておくためには、トラップ照射位置に対して、粒子を捕捉しておくために必要な光量を照射する必要がある。ところが、(1)の制御によりレーザビームの移動速度を速くした場合には、トラップ照射位置に対して粒子を安定して捕捉しておくために必要な光量を照射することができなくなる。このため、レーザビームの速度を変化させずにトラップ照射位置において必要な光量を確保するための制御方法として、例えば、図3に示すように、1本のレーザビームの照射位置を、トラップ照射位置と当該トラップ照射位置の近傍とを重畳して移動させる制御を行う。これにより、レーザビームを一定速度で安定してスキャンさせながら、トラップ照射位置に対して、所定時間内に照
射される光量を多くすることができる。
以上のような1本のレーザビームの移動制御を行いながら、複数のトラップ照射位置各々に対して順に、例えば、1秒間当たり5回程度レーザビームを照射する。
次に、本発明に係る粒子位置制御システム1の機能構成について説明する。図5に示すように、粒子位置制御システム1は、光線発生部11と粒子位置制御部12とを含んで構成される。
光線発生部11は、レーザ発光器10とレーザ発光器10の光源から出力される1本のレーザビームとを含んで構成される。
また、粒子位置制御部12は、Z軸レンズ20と、ガルバノミラー30と、図示せぬステッピングモータと、図示せぬPCのCPUがプログラムを実行することにより実現する機能と、PCのメモリに記憶されたデータとを含んで構成される。
粒子位置制御部12を構成するステッピングモータは、粒子がレーザビームの照射位置の移動に追随して移動する速度よりも速い速度でレーザビームの照射位置が移動するように、ガルバノミラー30を回動させる。このレーザビームの照射位置の移動速度は、上述した様々な要因を考慮して予め定められている。
長さを表す設定時間データと、PCのキーボート等から入力される文字や記号に対応するトラップ照射位置の座標を表す図形データとが含まれている。また、PCに記憶されるデータとしては、レーザビームのトラップ照射位置を表すデータが含まれる。ここで、位置を二次元座標として考えた場合、試料60に対するレーザビームの照射位置(XY座標)は、X軸ミラー31とY軸ミラー32との回転角によって一意に定められる。また、X軸ミラー31とY軸ミラー32との回転角は、各ミラーに接続されたステッピングモータによって一意に定められる。よって、試料60に対するレーザビームの照射位置を制御するためには、ステッピングモータを制御すればよいこととなる。
また、PCに記憶されるプログラムとして、複数の粒子の配列で形成される図形を開始図形から終了図形に配列し直すために、時間経過に応じたレーザビームの照射位置を算出するためのプログラムが含まれている。
次に、上記構成を備える粒子位置制御システム1が行う粒子位置制御処理の動作例を説明する。
本動作例においては、トラップ位置及びトラップ照射位置を二次元座標とし、トラップ照射位置を「トラップ座標点」という。
まず、例えば、ユーザがPCのキーボードのキーを1つ押下することにより文字を入力する。これにより、PCのCPUは、入力された文字に対応する図形データをメモリより読み込む(ステップS101)。
粒子位置制御部12は、ステッピングモータを駆動することにより、ガルバノミラー30を所定の角度回転させて、光線発生部11からのレーザビームの照射位置を試料60における開始座標点に移動させる(ステップS104)。このときに、粒子位置制御部12は、予め定められたレーザ移動速度データに基づいて、粒子が追随できない程度の高速でレーザビームの照射位置を移動させる。
粒子位置制御部12は、n番目のトラップ座標点及びその近辺(近傍)において、レーザビームの照射位置を設定時間分重畳移動させる(ステップS107)。
ここでは、ステップS103からステップS108までの、図形の開始座標点から最終座標点までレーザがスキャンするサイクルは、例えば0.2秒毎に繰り返される。このように、トラップ座標点に対して繰り返しレーザビームの照射を行うことで、1本のレーザビームであっても、トラップ座標点に粒子を安定して留めておくことができる。
次に、1本のレーザビームを用いて、トラップされている複数の粒子を独立に別の位置に移動させるモーフィング制御処理の動作例について説明する。
図7に示すグラフにおいては、X軸がX軸ミラー31に接続されているステッピングモータの位置を表す軸であり、Y軸がY軸ミラー32に接続されているステッピングモータの位置を表す軸である。
図7(a)には、8個の粒子が“A”という形状に配列されている様子を示す。番号1番の粒子の座標を(x1、y1)とする。図7(b)には、図7(a)の“A”の形状に配列されている粒子が並べ替えられて、“I”という形状に配列された様子を示す。ここでの番号1番の粒子の座標を(x2、y2)とする。
この原理を利用したモーフィング制御の一例を、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、ユーザは、例えば、PCのキーボードを操作して、開始文字と終了文字と移動時間とを入力する。上述した図7に示す例の場合には、開始文字が“A”、終了文字が“I”、移動時間が“10秒”となる。
PCのCPUは、メモリより、開始文字に対応する図形1(開始図形)データと終了文字に対応する図形2(終了図形)データとを読み込む(ステップS202,S203)。
PCのCPUは、tに単位時間(ここでは“1”)を加算する(ステップS204)。
ステップS206からステップS209においては、粒子位置制御部12は、算出された図形3の座標に粒子を捕捉するためのトラップ座標点に対して、順次レーザビームを照射する。ステップS206からステップS209までの処理は、図6に示すステップS104からステップS108までの処理と同様であるため、重複した説明を省略する。
かを判定する。達している場合には(ステップS210;Yes)、処理を終了する。達していない場合には(ステップS210;No)、ステップS204に戻り、粒子位置制御部12は、次の単位時間後の図形3の座標を算出して、当該座標に粒子を捕捉するためのトラップ座標点にレーザビームの照射を行う。
このように、1本のレーザビームを用いながらも、粒子を独立に制御して同時に移動させることができるため、リアルタイム制御が可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で様々な変形が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
(1)上述した実施形態においては、粒子位置制御部12は、粒子が追随しない一定の高速でレーザビームの照射位置を移動させ、トラップ照射位置においては、図3に示す方法で粒子のトラップ位置を指定するとして説明したが、これに限定されることはない。
10 レーザ発光器
11 光線発生部
12 粒子位置制御部
20 Z軸レンズ
30 ガルバノミラー
31 X軸ミラー
32 Y軸ミラー
40 ダイクロイックミラー
50 対物レンズ
60 試料
70 レーザカットフィルタ
80 カメラ
Claims (4)
- 多数の粒子が散在する空間への1本の光線の照射位置を制御することにより、多数の粒子をそれぞれ独立に捕捉すべきトラップ位置での粒子の捕捉を制御する粒子位置制御システムにおいて、
前記空間に対して照射される前記1本の光線を出力する光線発生手段と、
前記1本の光線の照射位置を、前記空間内の一の粒子を特定のトラップ位置で捕捉するための特定のトラップ照射位置から、他の粒子を他のトラップ位置で捕捉するための他のトラップ照射位置まで移動させる、前記1本の光線を制御する粒子位置制御手段とを備え、
前記粒子位置制御手段は、前記1本の光線の照射位置を、前記空間内の一の粒子を特定のトラップ位置で捕捉するための特定のトラップ照射位置から、他の粒子を他のトラップ位置で捕捉するための他のトラップ照射位置まで移動させる時に、該移動させる時の速度を、前記一の粒子が前記光線の照射位置の移動に追随して移動する速度よりも速くすることを特徴とする粒子位置制御システム。 - 前記粒子位置制御手段は、
前記1本の光線の照射位置を、前記トラップ照射位置と該トラップ照射位置の近傍とを重畳して移動させる制御を行うことにより、前記トラップ照射位置に対して照射される光量を多くすることを特徴とする請求項1に記載の粒子位置制御システム。 - 前記粒子位置制御手段は、
前記1本の光線の照射位置が前記トラップ照射位置を移動する時の速度を、前記トラップ照射位置以外の位置を移動する時の速度よりも遅くする制御を行うことにより、前記トラップ照射位置に対して照射される光量を多くすることを特徴とする請求項1又は2記載の粒子位置制御システム。 - 多数の粒子が散在する空間に対して1本の光線を照射することにより、多数の粒子をそれぞれ独立に捕捉し、前記多数の粒子の位置制御を行う粒子位置制御方法において、
前記粒子の配列により形成すべき形状を表す図形データを読み込む図形データ読込ステップと、
前記図形データ読込ステップにおいて読み込まれた図形データに基づいて、前記粒子が存在すべき前記空間内の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップにおいて取得された位置情報に基づいて、1本の光線の前記空間に対する照射位置を、時間経過に応じて制御する照射位置制御ステップと
を有し、
前記照射位置制御ステップにおける前記1本の光線の照射位置制御によって、前記空間内の粒子を前記図形データで表される形状に配列し、
前記1本の光線の照射位置制御では、前記1本の光線の照射位置を、前記空間内の一の粒子を捕捉するための照射位置から、他の粒子を捕捉するための他の照射位置まで移動させる時に、該移動させる時の速度を、前記一の粒子が前記光線の照射位置の移動に追随して移動する速度よりも速くすることを特徴とする粒子位置制御方法。
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