JP4176830B2 - 炭化水素の流れを使用しての金属保護層の製造 - Google Patents
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Description
本発明は炭化水素を含有する流れを使用して、例えば不純な水素の流れを使用して鋼のような基体に金属の保護層を造る新規な方法である。この方法は、特に、既に保護されている反応器系の一部分が取り替えられるか、又は改変される予定の修整場所に適用することができる。本発明のこの新規な方法は炭化水素の転化に使用される反応器の一部分又は全部に適用することができる。
背景
侵炭(carburization)を受け易い表面、例えば超低硫黄リホーミング法(WO92/15653を参照されたい)、及び水添脱アルキル化(WO94/15898を参照されたい)のような他の炭化水素転化環境において使用される鋼の表面に金属保護層を形成することは公知である。これらの特許出願には、金属保護層を形成するためには、純粋な水素を使用する別個の硬化工程が必要であると教示される。
残念ながら、近くに水素のプラントがなければ炭化水素を含まない純粋な水素を得ることは困難なことが多く、またコストが非常に高くなる可能性がある。更に、純粋な水素を使用するときは、水素は一般に貫流方式(once-thru manner)で使用される。これは、ほとんどの再循環ガス用コンプレッサーは炭化水素を含まない水素のような低分子量のガスを取り扱うことはできないので、水素の再循環は一般に可能でないからである。この再循環問題を克服するために、純粋な水素を(窒素のような)不活性ガスで希釈することができる。そうすれば、圧縮と再循環が行えるようになる。しかし、窒素も入手が困難で、値段が高い。要するに、水素を貫流させる必要、或いは不活性ガスの添入は、硬化工程のコストを有意に増加させるのである。
金属保護層を造り、硬化させる技術は、今もなお、炭化水素を含まない水素の流れを使用することを教示している。例えば、ヘイズ(Heyse)等はWO92/15653において
“金属塗料、特にペイントは還元条件下で水素により処理されるのが好ましい。硬化は、好ましくは、炭化水素の不存在下で行われる。”(第25頁23〜25行、強調のアンダーラインは本発明者により加入された。)
と教示している。
ほとんど同じ教示がヘイズ等のWO94/15898、第23頁5〜7行にも見いだすことができる。これら両特許出願を、特に、有用な塗料材料と硬化のためのプロセス条件に関して本明細書で引用し、参照するものとする。
公知の硬化法によれば、その始動手順は、例えば、金属含有塗料を鋼の基体に塗装又は適用した後に、次の工程を含む:
1.反応器系を水素雰囲気中で硬化温度(一般に、600−1800°F)に加熱し;
2.その硬化温度において水素下で3日以下の期間保持し;
3.その反応器系を冷却し;次いで、ここで初めて、
4.標準法の始動手順を始める。
本発明の新規な方法では、これら工程の初めの3工程が不要となる。即ち、本発明の方法は“通常”若しくは“標準”の始動手順、又はほんの少し修正した始動手順−−即ち,供給原料の存在下での始動法−−を用いて金属保護層を現場形成するものである。この本発明の方法は、純粋な、即ち炭化水素を含まない水素を使用する、別個の時間のかかる硬化工程を必要としない。従って、この新規な方法では、始動期間が3日以下の期間少なくなり、稼働期間が増加する。
本発明の新規な方法は修整場所(touch-up situations)に特に有用である。例えば、取り替えが必要な炉管の一部分に金属保護層を形成するのに使用することができる。即ち、その炉管はオフライン状態にされ、次いで切り出され、そして新しい鋼の部分で置換される。この部分は金属含有塗料で被覆又は塗装され、次いで適所で溶接される。この管が稼働状態となり、炭化水素供給原料の存在下で熱くなると、それにつれて金属保護層がその場で形成される。
発明の概要
1つの態様において、本発明は、鋼製基体上に、炭化水素を実質的な量で含有するガスの流れを用いて連続、接着性の金属保護層を形成する方法である。本発明は、既に被覆され、保護されている反応器系の一部分が取り替えられ、又は切り開かれ、次いで再封止される修整場所で特に有用である。
1つの態様において、本発明は、金属を含有するメッキ、クラッド、ペイント又は他の塗料を反応器系の少なくとも1つの表面に適用する、金属保護層の製造方法である。被覆された表面は、次いで、炭化水素を含有するガスの流れと接触せしめられ、それによって金属保護層が生成される。炭化水素との接触工程は、この接着性金属保護層が形成されるか、又は完全に硬化される前に行われる。
もう1つの態様において、本発明は、炭化水素を転化するのに用いられる反応器系の一部分に適用される。ここで、供給原料の炭化水素は、浸炭及び金属のダスチングに対して改良された抵抗性を有する反応器系中で、所望とされる生成物に転化される。この場合、金属の浸炭抵抗性保護層は反応器系の少なくとも一部分上に生成されており、ここでこの方法の改良点は、金属を含有するメッキ、クラッド、ペイント又は他の塗料を炭化水素を含有するガスの流れと接触させることにより、その金属保護層を生成させることから成る。
炭化水素を含有する流れは、また、水素を含有しているのが好ましい。即ち、前記の接触は還元性の環境で行われるのである。1つの好ましい炭化水素含有流れは炭化水素の転化プロセスのための、供給原料としての水素を含む供給原料である。もう1つの流れは不純な水素である。
本発明は、とりわけ、従来技術の教示に反して、硬化工程中に炭化水素が存在しても、途切れのない保護層の形成が妨げられないと言う発見に基づく。本発明以前は、炭化水素の存在、及びこれら炭化水素と被覆された金属即ち鋼表面との相互作用は連続、接着性の金属保護層の形成を妨害するか、又はその形成に悪影響を及ぼすだろうと考えられていた。
本発明は他の方法より顕著な利点を有する。即ち、本発明は、炭化水素を含まない水素を使用する別個の硬化工程の必要をなくするので、反応器系又はその一部分についてより単純で、消費時間のより短い始動法を可能にする。本発明は、また、金属保護層を生成させるのに、安価な不純な水素の流れ又は容易に入手可能な供給原料の流れを使用できるようにする。加えて、不純な水素の流れは、コスト上著しい不利益を被ることなく、貫流方式で使用することができる。しかして、硬化工程に対する炭化水素含有供給原料の使用は、保護層の製造コストを低下させる。更に、この新規な方法は、特に修整場所において、保護層を形成する方法を著しく単純化する。
発明の詳細な説明
本発明は、1つの広い面から見ると、有意量の炭化水素の存在下で鋼のような基材としての基体に金属保護層を形成することから成る方法である。1つの好ましい態様では、その保護層は金属含有ペイント、好ましくは(錫ペイントのような)還元性(reducible)ペイントを、金属保護層に転化させるのに有効な温度と流量でそのペイントを炭化水素含有流れと接触させることにより形成される。
本明細書全体を通じて“から成る(comprise)”又は“から成っている(comprising)”なる用語が使用されているけれども、これらの用語は本発明の色々な好ましい面及び態様において“より本質的に成る(consisting essentially of)”及び“より成る(consisting of)”なる2つの用語を包含するものとする。
本明細書で使用されている“反応器系”なる用語は、1つ又はそれ以上の炭化水素の転化用反応器、それらの関連配管、熱交換器、炉管等を有する炭化水素の転化装置を包含するものとする。本発明が有用である炭化水素の好ましい転化法のあるものは硫黄感受性の触媒を使用する。ここで、(有機硫黄化合物をH2Sに転化するための)硫黄転化反応器及び(H2Sを吸収するための)硫黄収着反応器が存在していてもよい。これらの反応器は、それらが存在する場合、反応器系の一部として含められる。
本明細書で使用されている“金属含有塗料”又は“塗料”なる用語は、元素金属、金属酸化物、有機金属化合物、金属合金、これら成分の混合物等々のいずれかを含有するクラッド、メッキ、ペイント及びその他の塗料を包含するものとする。この金属(1種又は複数種)又は金属化合物は、好ましくは塗料の鍵となる成分(1種又は複数種)である。噴霧塗被又は刷毛塗りが可能な流動性のペイントが1つの好ましい塗料のタイプである。
メッキ、クラッド、ペイント及びその他の塗料
金属を含有するメッキ、クラッド、ペイント及びその他の塗料が全て本発明で有用であるとは限らない。好ましい金属は、反応器系の基材材料と、意図された炭化水素の転化条件より低い温度またはその転化条件で相互作用して、好ましくは反応して接着性の金属保護層を生成させるものである。その好ましい金属は関心のある炭化水素転化プロセス、その温度、反応体等に依存する。プロセス条件で、又はそれより低い条件で移動性であるか、又は溶融する金属が特に好ましい。これらの金属に、錫、アンチモン、ゲルマニウム、ヒ素、ビスマス、アルミニウム、ガリウム、インジウム、銅、鉛並びにそれらの混合物、金属間化合物及び合金の中から選ばれるものがある。好ましい金属含有塗料は、錫、アンチモン、ゲルマニウム、ヒ素、ビスマス、アルミニウム並びにそれらの混合物、金属間化合物及び合金より成る群から選ばれる。特に好ましい塗料に、錫−、アンチモン−及びゲルマニウム−含有塗料がある。これらの塗料は、全て、連続、接着性の保護層を形成する。錫塗料が特に好ましい。即ち、それらは鋼に対する適用が容易であり、安価であり、しかも環境に優しいのである。
有用性が低い金属含有塗料に、酸化モリブデン、酸化タングステン及び酸化クロムのようなある種特定の金属酸化物がある。これは、一部は、炭化水素のほとんどの処理条件で、水素と炭化水素から成る流れを用いてこれら酸化物から接着性の金属保護層を形成するのが困難であるからである。
塗料は十分に厚く、それらが基材金属材料を完全に被覆し、かつ得られる保護層が何年もの運転期間にわたりそのまま残っているのが好ましい。この厚さは意図される使用条件と被覆用金属に依存する。例えば、錫ペイントは1乃至6ミル、好ましくは約2乃至4ミルの(湿潤)厚さまで塗布することができる。一般に、硬化後の厚さは、好ましくは約0.1乃至50ミル、更に好ましくは約0.5乃至10ミルである。
金属含有塗料は、ほんの2、3の名称を挙げると、電気メッキ法、化学蒸着法及びスパッタリング法のようなこの技術分野で周知の各種方法で適用することができる。好ましい塗料適用法に塗装法及びメッキ法がある。塗料は、実際に用いる場合、ペイント様配合物(以後、“ペイント”と称する)として適用するのが好ましい。このようなペイントは反応器系の表面に噴霧塗被法、刷毛塗り法、ピッグ法(pig)等で適用可能である。
1つの好ましい保護層は金属含有ペイントから造られる。そのペイントは、鋼と相互作用する反応性金属を生成させる分解性かつ反応性の金属含有ペイントであるのが好ましい。錫が好ましい金属で、本明細書で例証される。錫についての本明細書の開示は、一般に、ゲルマニウムのような他の還元性金属にも適用可能である。好ましいペイントは、有機金属化合物のような水素分解性の金属化合物、微粉砕金属及び金属酸化物、好ましくは還元性の金属酸化物より成る群から選ばれる金属成分を含む。
若干の好ましい塗料がヘイズ等に付与されたWO92/15653に記載されている。この出願には、また、好ましいペイント配合物も記載される。1つの特に好ましい錫ペイントは、少なくとも4つの成分又はそれらの機能上均等なもの、即ち(i)水素分解性の錫化合物、(ii)溶媒系、(iii)微粉砕された錫金属及び(iv)錫酸化物を含有する。水素分解性の錫化合物として、オクタン酸錫又はネオデカン酸錫のような有機金属化合物が特に有用である。成分(iv)の錫酸化物はその有機金属錫化合物を吸収することができ、かつ金属錫に還元され得る多孔質の錫含有化合物である。これらのペイントは、沈降を最少限に抑えるために、微粉砕された固体を含有しているのが好ましい。金属錫を、できるだけ低い温度で被覆すべく、当該表面との反応に確実に利用できるようにするために、上記成分(iii)の微粉砕錫金属も加えられる。この錫の粒径は小さい、例えば1乃至5ミクロンであるのが好ましい。錫は、水素及び炭化水素を含有する流れの中で加熱されると、金属スタニド(stannide)類(例えば、鉄スタニド類及びニッケル/鉄スタニド類)を形成する。
1つの態様において、酸化第二錫、錫金属の粉末、イソプロピルアルコール及び20%チン・テン−セム(Tin Ten-Cem)[オハイオ州(Ohio)、クリーブランド(Cleveland)のムーニー ケミカル社(Mooney Chemical Inc.)製]を含有する錫ペイントが用い得る。20%チン・テン−セムは、オクタン酸中にオクタン酸第一錫として、又はネオデカン酸中にネオデカン酸第一錫として錫を20%含有するものである。錫ペイントを適切な厚さで適用するとき、典型的な反応器の始動条件で錫はマイグレートして塗装されなかった小さい領域(例えば、溶接部)を被覆するようになる。これにより基材金属は完全に被覆される。好ましい錫ペイントは始動過程中の早い時期に強い接着性の保護層を形成する。
鉄を保有する反応性のペイントも本発明で有用である。1つの好ましい鉄保有反応性ペイントは、重量で3分の1までのFe/Snの量で加えられている色々な錫化合物を含有する。鉄の添加は、例えば、Fe2O3の形で行うことができる。鉄の錫含有ペイントへの添加で顕著な利点が得られるだろう。即ち、特に(i)鉄はペイントの鉄スタニドを形成する反応を促進し、それによってフラックスとして作用するだろう;(ii)鉄はそのスタニド層中のニッケル濃度を薄め、それによってコークスの形成に対してより良好な保護を与えるだろう;及び(iii)鉄は下にある表面がたとえ十分に反応しなくても鉄スタニドのコークスの形成に抗する保護を生むペイントをもたらすだろう。
炭化水素を含有する流れ
炭化水素を含有する流れが、反応器系の金属表面に保護層を形成するために使用される。1つの有用な流れは不純な水素(例えば、メタンを含有する水素)である。不純な水素の流れは製油所や化学プラントで入手できることが多い。それらは、一般に、少なくとも1容量%、しばしば10%又はそれ以上の炭化水素を含有している。不純な水素は燃料として使用されることが多い価値の低い流れである。本発明者はこれらの不純な流れが接着性の連続金属保護層を造るのに使用できることをここに発見した。2つのそのような流れの例を次の表に示す:
流れ1は典型的な流体接触分解装置(FCC)の燃料ガス組成物である。流れ2は接触リホーマーから出る典型的な燃料ガスである。1つの好ましい態様では、必要とはされないけれども、そのガスの流れの中の不純物としての非炭化水素は最少限に抑えられる。例えば、H2S、水、並びに有機の硫黄−、酸素−及び窒素−含有化合物が除去される。
保護層の形成に使用できるもう1つの流れは、例えば再循環水素を含めて、保護層が必要とされるプロセスで使われるもののような、炭化水素供給原料である。この流れの中の炭化水素は、ナフテン、パラフィン、芳香族化合物、アルキル芳香族化合物、オレフィン、及びメタンを初めとする軽質のガス類を含めて、炭化水素類の中から選ばれるのが好ましい。パラフィンの流れが好ましい。炭化水素を含有する流れは、一酸化炭素及び窒素のような他のガスと組み合わされるか、又は混合されてもよい。この硬化用の流れは、それが保護層を損傷させたり、或いは攻撃したりしないように選ばれることが重要である。従って、好ましい流れは使用される金属含有塗料の個々のタイプにより変わる。例えば、ハロゲンを含有する流れはある種の金属塗料に有害である。1つの特に好ましい流れは、水素と組み合わされた乾燥炭化水素の供給原料又は製品から成る。
1つの特に好ましい流れは、水素中に約1乃至90容量%、好ましくは少なくとも10容量%、更に好ましくは約15乃至40容量%の炭化水素を含有する炭化水素と水素との混合物である。例えば、固定床接触リホーマーの供給原料流れが有用である。その流れは、一般に、約3:1乃至10:1の水素対炭化水素のモル比を有する。必要とはされないけれども、その水素の流れを再循環させるのが好ましい。このような再循環はコストを有意に低下させるからである。水素中に存在する炭化水素により、再循環ガス用コンプレッサーは設計パラメーター内で作動する。
現在良く分かっていないけれども、炭化水素を含有する流れ及び/又は硫黄化合物を使用して調製した塗料は、純粋な水素中で造られたものよりも約50%厚い保護層を生成させる。これらのより厚い層は、基材としての基体にもたらされる保護を向上させると予想される。
硬化のプロセス条件
本発明の硬化工程は、被覆された鋼を供給原料、製品又は不純な水素のようなガス状の炭化水素含有流れと昇温下で接触させるものである。硬化条件は被覆用金属に依存し、それは鋼製基体に接着する連続で途切れのない保護層を生成させるように選ばれる。ガス状炭化水素含有流れとの接触は保護層を形成させながら行われる。純粋な水素を用いる従来の硬化工程は不要である。得られる保護層は反復温度サイクルに耐えることができ、しかも反応環境で分解しない。好ましい保護層はコークスの焼尽と関連した環境のような酸化性環境でも有用である。1つの好ましい態様において、この硬化工程は、1つの中間結合層、例えば炭化物に富む結合層を介して鋼に結合した金属保護層を生成させる。
硬化条件は個々の金属塗料、更には本発明が適用される炭化水素の転化プロセスに依存する。例えば、ガスの流量と接触時間は硬化温度、被覆用金属及び塗料組成物の成分に依存する。硬化条件は接着性の保護層を生成させるように選ばれる。一般に、本発明の方法は、金属を含有する塗料、メッキ、クラッド、ペイント又は他の塗料が反応器系の一部分に炭化水素含有ガスを用いて金属保護層を生成させるのに十分な温度で十分な時間適用されているその反応器系に関係する。これらの条件は容易に決定することができる。例えば、被覆されたクーポンを簡単な試験装置の中で炭化水素含有ガスの存在下において加熱することができ、ここでその保護層の形成は岩石学的分析法を用いて確認することができる。
硬化条件は鋼にしっかり結合した保護層をもたらすものであるのが好ましい。これは、例えば適用された塗料を昇温下で硬化させることにより達成することができる。ペイント、メッキ、クラッド又は他の塗料に含まれている金属又は金属化合物は、溶融した又は移動性の金属及び/又は化合物を生成させるのに有効な条件下で硬化されるのが好ましい。しかして、ゲルマニウム及びアンチモンのペイントは1000乃至1400°Fで硬化させるのが好ましい。錫ペイントは900乃至1100°Fで硬化させるのが好ましい。硬化はある時間(a period of hours)にわたって行うのが好ましく、その場合温度はその硬化時間中に上昇することが多い。ペイントから誘導されるもののような好ましい金属保護層は、好ましくは還元条件下で生成される。還元/硬化は、水素を含有する炭化水素の流れの存在下で昇温下において行われるのが好ましい。水素の存在は、ペイントが還元性の酸化物及び/又は酸素含有有機金属化合物を含有する場合に特に有利である。
錫ペイントに適したペイント硬化の1例として、塗装された部分を含む反応器系を流動している窒素で加圧し、続いて1:1の水素/ナフサのような炭化水素含有流れを加えることができる。その反応器の入口温度は50−100°F/時の速度で800°Fまで上昇させることができる。その後、その温度を50°F/時の速度で950−975°Fの水準まで上昇させ、その範囲内に約48時間保持することができる。
本発明の1つの態様では、金属保護層はプラントの始動中に生成せしめられる。しかし、触媒が存在するときは、その硬化操作で触媒が被毒したり、或いは触媒の気孔が目詰まりを起こしたりしないようにすることが重要である。この方法の利用は、従って、一部は、触媒の反応器系における位置又は触媒の存在、及び被覆用金属に対する触媒の感受性に依存する。本発明の方法は、触媒床に隣接していないか、又は触媒床の直前にはない炉管、熱交換器、配管等に適用するのが好ましい。
触媒の被毒が関心事である場合、ストレイ金属(stray metal)を触媒と接触させないような対策を立てて置くべきである。例えば、硬化は触媒の装填前に行ってもよいし、或いは硬化工程のために触媒を取り出してもよい。別法として、触媒を存在させる一方、高表面積を持つアルミナ又はシリカより成る防護床のようなストレイ金属の収着装置又はコレクターを触媒床の上流で使用することができる。1つの態様において、硬化工程後に、新しい炭化水素の転化触媒又は反応器から取り出された触媒が反応器系に導入される。
基材構成材料
本発明の方法が適用され得る基材構成材料には広範囲の材料がある。特に、広範囲の鋼が反応器系で使用できる。一般に、鋼は、それらが意図された炭化水素転化プロセスに必要とされる最低の強度と可撓性の要件を満足するように選ばれる。これらの要件は、また順に、操作温度と操作圧力のようなプロセス条件に依存する。
有用な鋼に、炭素鋼;1.22、2.5、5、7及び9系クロム鋼のような低合金鋼;316SS、及び346ステンレス鋼のような340系ステンレス鋼を含めてステンレス鋼類;HK−40及びHP−50を含む耐熱性鋼類;並びにアルミナイズ鋼又はクロマイズ鋼のような処理された鋼がある。鋼はゼロ酸化状態の鉄及びクロムを含有しているのが好ましい。
金属含有塗料の成分に依存して、反応器系の金属材料と塗料との反応が起こる可能性がある。この反応の結果として、鋼に係止され、容易には剥離又は薄片となって剥落しない、炭化物に富む中間結合層、即ち接着層がもたらされるのが好ましい。例えば、金属の錫、ゲルマニウム及びアンチモン(クラッドとして直接適用されるか、それとも現場で生成されるか否かにかかわらず)は、共にヘイズ等に付与されたWO94/15898又はWO94/15896に記載されるように、昇温下で鋼と容易に反応して結合層を形成する。
好ましい用途
金属保護層を造る本発明は、反応器系の1つ又はそれ以上の大きな部分を、又は反応器系の小さな区域だけを保護するのに利用することができる。1つの好ましい態様では、本発明は既に金属保護層が施されている反応器系の比較的小さい領域を修整するために使用される。例えば、破損又は工程配置の変更に因り反応器系の一部分を取り替えることが必要であろう。例えば、炉管の一部分又は反応器のスクリーンは取り替えが必要であろう。この場合、炉管又はその一部分が分離されるか、又はオフライン状態にされる。取り替え用の管又は部分は、次に、金属を含有する塗料、メッキ、クラッド又はペイントで被覆される。被覆された管は、次に、供給原料の存在下で、別個の硬化工程を用いることなしに稼働状態に置かれる。その塗料は現場で硬化して保護層を生成させる。
本発明は、また、取り替えを要するだろう反応器の内部構成部材(例えば、スクリーン、ディストリビューター、関連配管、中央パイプ及びそのスクリーン)のための新しい置換部品に保護層を提供するのに、また新しく造られた又は再溶接された移送用配管、フランジ類及びノズル類に保護層を形成するのに特に有用であると考えられる。
炭化水素の転化プロセスへの適用
本発明の新規な方法により造られた金属保護層を有する反応器系は、各種炭化水素転化プロセスにおいてコークスの形成及び/又は侵炭を低下させる際に有効である。しかして、保護層を生成させるための本発明の新規な方法は、炭化水素の転化に使用される反応器系の一部又は全部に適用可能である。
好ましい炭化水素転化プロセスに次のものがある:C6及び/又はC8パラフィンの芳香族化合物への脱水素環化;接触リホーミング;炭化水素のオレフィン及びジエンへの非酸化及び酸化脱水素;エチルベンゼンのスチレンへの脱水素及び/又はイソブタンのイソブチレンへの脱水素;軽質炭化水素の芳香族化合物への転化;トルエンのベンゼン及びキシレン類へのトランスアルキル化;アルキル芳香族化合物の芳香族化合物への水添脱アルキル化;芳香族化合物のアルキル芳香族化合物へのアルキル化;合成ガス(H2及びCO)からの燃料及び化成品の製造;炭化水素のH2及びCOへのスチーム・リホーミング;アニリンからのフェニルアミンの製造;トルエンのキシレン類へのメタノール・アルキル化;並びにイソプロピルアルコールのアセトンへの脱水素。好ましい炭化水素転化プロセスに、脱水素環化、接触リホーミング、脱水素、異性化、水添脱アルキル化及び軽質炭化水素の芳香族化合物への転化、例えばサイクラー(Cyclar)タイプの処理の各プロセスがある。好ましい態様に、触媒、好ましくは白金触媒を使用してパラフィンをオレフィンに脱水素するか、又は(例えば、ベンゼン、トルエン及び/又はキシレン類を製造するプロセスにおいて)C6及び/又はC8炭化水素を含有するパラフィン系の供給原料を芳香族化合物に脱水素環化する態様がある。
本発明は、触媒、特にPt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osを含有する貴金属触媒、特にPt含有触媒を必要とする炭化水素の転化プロセスに適用可能である。これらの金属は、通常、担体、例えば炭素担体、シリカ、アルミナ、塩素化アルミナのような耐火性酸化物担体又は分子篩若しくはゼオライトに与えられる。好ましい接触プロセスは、アルミナ担持白金、アルミナ担持Pt/Sn及び塩素化アルミナ担持Pt/Re;Lタイプゼオライト、ZSM−5、SSZ−25、SAPO類、シリカライト及びベーターゼオライトを含めて各種ゼオライトに担持されたPt、Pt/Sn及びPt/Reのような、ゼオライトに担持された第VIII族貴金属触媒を利用するプロセスである。
1つの好ましい態様において、本発明は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有し、そして1種又はそれ以上の第VIII族金属が装填された中細孔サイズ又は大細孔サイズのゼオライト触媒を使用する。本発明での使用に特に好ましい触媒は、Ptを含有するLゼオライト触媒、好ましくは非酸性Lゼオライト担持Ptのような大細孔ゼオライトに担持された第VIII族金属である。有用なLゼオライト担持Pt触媒に、バス(Buss)及びヒューズ(Hughes)に付与された米国特許第4,634,518号、ムラカワ(Murakawa)等に付与された米国特許第5,196,631号、ウォーテル(Wortel)に付与された米国特許第4,593,133号及びポエッペルメイアー(Poeppelmeir)等に付与された米国特許第4,648,960号明細書に記載されるものがある。
本発明は、特に、硫黄除去プロセスと共に、又は硫黄が減少された、即ち低硫黄の条件下で各種の硫黄感受性触媒を用いて運転される炭化水素の転化プロセスに適用可能である。これらのプロセスはこの技術分野で周知である。これらのプロセスは、一般に、水素化処理及び/又は硫黄の収着のようなある種の供給原料の浄化処理を必要とする。それらには、バス等に付与された米国特許第4,456,527号及びクルクスダール(Kluksdahl)に付与された米国特許第3,415,737号明細書に記載されるもののような接触リホーミング及び/又は脱水素環化プロセス;ホルターマン(Holtermann)に付与された米国特許第5,166,112号明細書に記載されるもののような接触炭化水素異性化プロセス;及び接触水素化/脱水素プロセスがある。
1つの特に好ましい態様において、その炭化水素転化プロセスは“低硫黄”の条件下で行われる。これらの低硫黄系では、供給原料は、好ましくは50ppm以下の硫黄、更に好ましくは20ppm以下の硫黄、最も好ましくは10ppm以下の硫黄を含有する。
硫黄で被毒する触媒を使用する系については、炭化水素の硫黄水準は、それが触媒性能を有意に低下させないような水準であるのが好ましい。この硫黄水準は特定の触媒に依存する。一般的に言えば、硫黄水準は非常に低い、即ち約5ppm以下、好ましくは1ppm以下、更に好ましくは500ppb以下であるのが好ましい。高硫黄感受性触媒については、硫黄水準を超低水準、即ち100ppb以下、好ましくは50ppb以下、更に好ましくは10ppb以下とすべきである。これらの硫黄を実質的に含まないガスは、NH3又は水のような酸素含有及び窒素含有汚染物質も含んでいないのが好ましい。
硫黄化合物及び他の汚染物質を含有するガスは、これらの汚染物質を除去するように処理することができる。当業者であれば認められるだろうように、2、3の名前を挙げると、水素化処理、緩和なリホーミング及び収着の各プロセスを含めて各種の処理がこの目的に対して周知である。
本発明について更に完全な理解を得るために、本発明のある種特定の面を例証している次の実施例を説明する。しかし、本発明はいかなる意味でもこれら実施例の特定の細部に限定されるものではないことを理解すべきである。
実施例1
この実験は、316ステンレス鋼から製造した1/4”O.D.の反応器を使用しているパイロットプラントで行われた。反応器は錫含有ペイントで被覆されていた。ペイントは、WO92/15653に記載されるように、粉末状の酸化錫2部、微粉砕された粉末状の錫(1−5ミクロン)2部及びイソプロパノールと混合されたネオデカン酸中のネオデカン酸第一錫(20%チン・テム−セム)1部の混合物より成るものであった。この塗料は、管にペイントを満たし、そのペイントを排出させることによってその管の内面に適用された。
乾燥後、H2S100ppmv及び50容量%n−ヘキサンを含有し、残りが水素である炭化水素含有流れを、大気圧及び室温において1分当たり50標準立法センチメートルの流量で与えた。反応器を、次に、約1100°Fまで30分かけて加熱し、そしてガスを流しながらこの温度で更に60時間保持した。プロセスガスは貫流方式で用いられた。
この操作が完了した後、反応器を切り開き、得られた層を目視検査した。鋼の表面にはコークスは実質的に存在しなかった。その鋼をエポキシ樹脂の中に埋め込み、その断面を研磨した。それら断面を、次に、岩石学的走査電子顕微鏡試験法を用いて調べた。その顕微鏡写真は、錫ペイントはこれらの条件下で金属錫に還元されていたことを示した。鋼の表面には厚さ約30ミクロンの連続、接着性の金属(鉄/ニッケルスタニド)保護層が観察された。
実施例2
n−ヘキサンを35容量%含有し、残りが水素であるガスを用いて実施例1の手順を繰り返した。硫黄は加えなかった。鋼の表面には、実施例1におけるように、連続、接着性の金属保護層が生成していた。
以上、好ましい諸態様に関して本発明を説明したが、当業者であれば認められるだろうように、本発明では色々な変更及び修正態様も用い得ることを理解されるべきである。実際、前記の諸態様には当業者には容易に明らかな多くの変更及び修正態様があるが、これらも以下の請求の範囲により定義される本発明の範囲に入ると考えるべきものである。
Claims (20)
- 反応器系の取り替え用部分の上に金属保護層を製造する方法であって、以下の工程:
反応器系の既存部分を取り替え用部分に取り替え;
金属を含有する塗料を、前記の取り替え用部分に適用し;次いで
水素と少なくとも10容量%の炭化水素を含有するガスの流れを用いて前記反応器系を操作して前記の金属を含有する塗料を硬化させ、それによって金属保護層を前記取り替え用部分上に生成させる;
ことを包含する、金属保護層の製造方法。 - 前記の金属含有塗料が錫、アンチモン、ゲルマニウム、ヒ素、ビスマス、アルミニウム、ガリウム、インジウム、銅、鉛並びにそれらの混合物、金属間化合物及び合金より成る群から選ばれる金属を含有する、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記の金属含有塗料が錫、アンチモン及びゲルマニウムより成る群から選ばれる金属を含有する、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記の金属含有塗料が錫塗料を含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記のガスの流れが、少なくとも1容量%の炭化水素を含有する燃料ガス又は水素である、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記のガスの流れが、水素と少なくとも10容量%の炭化水素とを含有する前記反応器系への炭化水素供給原料である、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記の炭化水素供給原料が、パラフィンを含む、請求の範囲第6項に記載の方法。
- 前記の炭化水素供給原料が、一酸化炭素を更に含む、請求の範囲第6項に記載の方法。
- 前記の炭化水素供給原料が、窒素を更に含む、請求の範囲第6項に記載の方法。
- 前記のガスの流れが、15〜40容量%の炭化水素を含有する、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記のガスの流れがメタンを含有している、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記の金属保護層が、鉄スタニドを含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記の操作工程が、始動条件下で前記反応器を操作して金属を含有する塗料を硬化させる工程を更に包含する、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記の操作工程が、操作条件下で前記反応器を操作して金属を含有する塗料を硬化させる工程を更に包含する、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 前記の取り替え用部分が、炉管の少なくとも一部分を含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 反応器系の取り替え用部分の上に金属保護層を製造する方法であって、以下の工程:
反応器系の第1の既存部分を取り替え用部分に取り替え、しかも、該反応器系は、前記第1の既存部分と隣接した先に形成された金属保護層を有する第2の既存部分を有し;
金属を含有する塗料を、前記の取り替え用部分に適用し;次いで
水素と少なくとも10容量%の炭化水素を含有するガスの流れを用いて前記反応器系を操作して前記の金属を含有する塗料を硬化させ、それによって前記の先に形成された金属保護層と隣接する金属保護層を前記取り替え用部分上に生成させる;
ことを包含する、金属保護層の製造方法。 - 反応器系の取り替え用部分の上に金属保護層を製造する方法であって、以下の工程:
反応器系に触媒を装填し;
該反応器系の既存部分を取り替え用部分に取り替え;
金属を含有する塗料を、前記の取り替え用部分に適用し;次いで
水素と少なくとも10容量%の炭化水素を含有するガスの流れを用いて前記反応器系を操作して前記の金属を含有する塗料を硬化させ、それによって、金属保護層を前記取り替え用部分上に生成させ、その一方で、前記反応器系中に前記触媒を保持する;
ことを包含する、金属保護層の製造方法。 - 前記触媒が硫黄感受性の触媒である、請求項17に記載の方法。
- 前記ガスの流れが、5ppm未満の硫黄を有する、請求項17に記載の方法。
- 前記ガスの流れが、10ppb未満の硫黄を有する、請求項17に記載の方法。
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