本発明の具体的な実施形態の説明に先立って、まず、従来技術による照明制御方法の妥当性を調べるために本願発明者らが行った評価実験の結果を説明する。
具体的には、
(1)画像表示装置の背面の壁面の色度及び輝度が、画面全体、或いは人の肌色を除く背景の平均色度及び平均輝度と同一になるように、照明を制御する方法、(2)天井の照明、左側の壁の照明、右側の壁の照明、及び床の照明の各々の色度が、それぞれに対応するように4つに分割された画像表示装置の各分割部の平均色相と同一になるように、照明を制御する方法、
(3)画像表示装置で放映する画像を、撮影する被写体が存在する空間の照明条件に忠実に、画像表示装置などの画像再生装置が存在する空間の照明条件を制御する方法、及び
(4)画像表示装置の画面の各画素のR・G・Bの各々の信号の大きさに応じて照明出力部に内蔵されたR・G・Bの単色蛍光ランプの各出力を調整し、画像表示装置の画面の画像の色純度を高める方法、
の4通りの照明制御方法を、評価の対象とした。
実験は、図1に示すような3m×4mの実験室で行った。実験室の内装は、天井、壁、床ともに無彩色とし、それぞれの反射率は、90%、50%、20%とした。実験室の一つの壁面を背にして画像表示装置(画像音響出力部)2を設置し、中央に鑑賞者4が座る椅子3を設置した。画像表示装置2の背後の壁際、左右の壁際の天井、天井の中央部、及び左右の壁際の床に、計7台の照明出力部(照明装置)1を埋め込んだ(図1では、天井の中央部、及び左右の壁際の床の照明出力部1は省略している)。各々の照明出力部1はRGB単色蛍光ランプを内蔵し、コンピュータ5により、それぞれの出力を任意に変えることができるようにした。
まず、上記(1)に対応する方法の評価として、この状態で、画像表示装置(画像音響出力部)2にビデオ画像、具体的には、環境ビデオ(森の風景)及び娯楽ビデオ(映画「ダイハード3」)を写し、それらのビデオ画像に合わせて、画像表示装置2の背後の壁面の輝度及び色度が、画像表示装置2の画面全体の平均色度及び平均輝度になるように、照明出力部1の各ランプの出力を制御した。制御信号は、照明出力部1に接続したコンピュータ5に記憶しておき、ビデオ画像の進行に合わせて制御信号を各々の照明出力部1に送信するようにした。
実験では、鑑賞者(被験者)4を一人ずつを部屋の中央の椅子3に着席させ、上記のような照明制御を行いながら、画像表示装置2の画面に映し出されたビデオ画像を鑑賞させた。15分間のビデオ画像の鑑賞の後、画面の臨場感について、「非常に臨場感がある」、「臨場感がある」、「どちらでもない」、「臨場感がない」、「非常に臨場感がない」の5段階の尺度を用いて、主観評価させた。被験者4は、男女6名ずつ(年齢25歳〜50歳)計12名とした。
上記の主観評価実験の結果、12名中、10名が「どちらでもない」と回答し、残りの2名が「臨場感がない」と回答した。
このことから、画像表示装置2の背後の壁面の輝度及び色度が、画像表示装置2の画面全体の平均色度及び平均輝度になるように照明を制御する方法は、臨場感を高める効果はほとんどないと考えられる。むしろ、実験後の被験者4からは、画像表示装置2の画面の色彩が、かえって色褪せて見えたという意見が聞かれた。
次に、上記(2)に対応する方法の評価として、天井の照明、左側の壁の照明、右側の壁の照明、及び床の照明の各々の色度が、それぞれに対応するように4つに分割された画像表示装置の各分割部の平均色相と同一になるように照明を制御して、その効果を評価した。
具体的には、画像表示装置2の画面を上部、中左部、中右部、及び下部の4つに分割し、上部は天井中央の照明出力部1、中左部は左の壁際の照明出力部1、中右部は右の壁際の照明出力部1、及び下部は左右の壁際の床の照明出力部1を対応させた。次に、画像表示装置2に表示されるビデオ映像に合わせて、分割した画面の各部分の平均色相を算出して、それらに一致するように、各分割部に対応する照明出力部1のランプの出力を制御した。制御信号は、照明出力部1に接続したコンピュータ5に記憶しておき、ビデオ画像の進行に合わせて制御信号を各々の照明出力部1に送信するようにした。
先の方法と同様に実施した主観評価実験の結果、大部分の被験者(鑑賞者)4が「臨場感が無い」と回答した。その理由として、実験後の被験者からは、天井中央に照明があるために鑑賞室の内部が明るくなり過ぎる、背景部に照明がないために壁照明との連続性に欠ける、色相だけではなく輝度によっても臨場感の程度が異なる、などの意見が聞かれた。
これより、天井の照明、左側の壁の照明、右側の壁の照明、及び床の照明の各々の色度が、それぞれに対応するように4つに分割された画像表示装置の各分割部の平均色相と同一になるように照明を制御する方法は、照明の配置に問題があり、また、平均色相だけではなく輝度に関する制御も行わなければ十分な効果が得られないなどの点で、実用的ではないことが確認された。
次に、上記(3)に対応する方法の評価として、画像表示装置2で放映する画像を撮影する被写体が存在する空間の照明条件に忠実に、画像表示装置2などの画像再生装置(画像音響出力部)が存在する空間の照明条件を制御する方法の妥当性を評価した。
このために、まず、職場近辺の公園の風景をビデオ撮影した。撮影の際には、昼光の照度レベル及び色温度を測定記録した。その後に、図1の実験室で撮影したビデオ画像を再生して被験者4に提示し、同時に、室内の照明を、撮影の際に記録した照度レベル及び色温度が得られるような設定を試みた。
しかし、昼光の測定値の平均色温度は約6000K、平均照度レベルは約10000lxであり、色温度約6000Kは容易に実現できたが、照度レベル約10000lxを実現することが不可能であった。図1の構成に更に2台の照明出力部1を追加設置しても、最終的に約3000lxまでしか得ることができなかった。
この条件で評価実験を試みようとしたが、画像表示装置2の画面の輝度が低く、約3000lxの照度の室内で見ると明らかに映像が色褪せて見えたため、実験をすることなく、この方法が妥当でないという結論を得た。また、今回の試みにより、この方法では撮影時に昼光の測定をしなければならないため、実用的ではないことがわかった。
最後に、上記(4)に対応する方法の評価として、照明によって画像表示装置2の画面の画像の色純度を高める方法を評価した。
評価に当たっては、赤いバラの花が撮影された静止画を用いた。バラの花の色度とほぼ同じになるように照明出力部1の各蛍光ランプの出力を調整し、画像表示装置2の画面に照明光が当たるように室内を照明した。その結果、多くの被験者4に評価させることなく、この方法による臨場感向上の効果はないことを明らかにした。なぜなら、照明出力部1からの光は、画像表示装置2の画面に映し出された画像のバラの花だけを照らすのではなく、画面全体を照らすため、バラの花の背景(使用した画像の場合、バラの花の背景は白い壁)が赤く色づくため、バラの赤色の純度を高める以上に背景の色が赤くなったことで、背景の壁とバラの赤色とのコントラストが低くなり、かえって色褪せて見えたからである。
以上のような評価実験により、先述した何れの従来技術においても、臨場感を高めるという効果が得られないことが確認された。
上記の検討結果に基づいて更なる検討を進めるにあたって、まず、「臨場感とは何を意味するのか」について検討した。
画像技術の分野では、臨場感に関する幾つかの研究成果が報告されている。中でも、広明敏彦らの報告(情報処理学会研究報告、Vol.94、No.29、pp.9-14、1994)は、臨場感について系統的に論述している。以下では、広明らの研究をベースとして、我々の考える臨場感の定義、及び照明による臨場感の向上技術の考え方を述べる。
広明らは、図2に示すように、画像表示装置に映し出される画像により表現される空間を「仮想空間」と呼び、「観察者の目前には物理的に実在していない空間(原型空間)を観察者が受容能な手段(刺激や物理現象など)を用いて表現した際に、表現結果が観察者に対して実効的な効果を与える場合には、その表現を仮想空間と定義する」と述べている。また、臨場感について広明らは、「仮想空間上で表現されている空間を、その空間があたかも観察者の目の前に実在しているかのように観察者が感じた場合に、その観察者の観じた感覚が臨場感である」と定義し、次のような解説を加えている:「観察者は仮想空間を知覚・認知し、知覚空間を内部に構築する。従って、臨場感技術の目的は、仮想空間をもとに、いかに存在感の高い知覚空間を作り出すかにある。言い換えれば、『いかにして脳を騙すか』といった問題とも言える。臨場感の有無の判別は知覚空間を基準に主観的に行われるので、知覚空間に対する存在感を高められるのならば、どのような手段であっても良いはずである。従って、忠実性の向上だけでなく、空間認知の特性をうまく利用した手法も、臨場感技術の範疇と考えられる。」
照明による臨場感技術は、まさしく、広明の言うところの「空間認知の特性をうまく利用した手法」の一つである。
以上に基づき、本発明における臨場感を、「画像表示装置に映し出される画像から予測される仮想画像空間が、あたかも鑑賞者の目前に実在しているかのように鑑賞者が感じた感覚を臨場感」と定義する。また、照明による臨場感向上技術を、「照明の空間認知に及ぼす効果を利用して、仮想画像空間が、あたかも鑑賞者の目前に実在しているかのように鑑賞者に感じさせる技術」と定義することにする。
照明が空間認知に及ぼす効果について、最近、池田光男(立命館大学教授、東京工業大学名誉教授)らは、照明認識視空間という概念を提唱している。池田らによる照明認識視空間とは、人がある部屋に入って、その部屋の光源や物体の見え方や陰影の状態などを手掛かりにして、その空間はどのような照明がなされているかということを瞬時に判断するときに、人間の頭の中で認知する照明が形成する空間を指す。一方、心理学の分野では、池田らも述べている「この空間はどのような照明がなされているか」という認知的に判断される照明の属性を、古くから、照明印象と呼んでいる。そこで以下では、上記の心理学的な定義に従って、池田らが照明認識視空間と呼んでいる上記の概念を、照明印象と呼ぶ。
更に、池田らは、照明認識視空間(本願明細書では照明印象)の考え方に基づき、窓や壁により仕切られる二つの空間において、両室の照明が種々異なる条件下で、両室の連続性に関する評価実験を行った。その結果、照明条件が異なることにより二つの空間の連続性が大きく異なること、並びに、両室の連続性が高まって見えるための特定の照明条件が存在すること、を明らかにした。
この実験結果を本発明に応用する場合、TVなどの画像表示装置に映し出された画像から仮想画像空間の照明印象が認知できるかどうか、ということが問題になる。もし、これができると仮定すれば、鑑賞室の照明条件を調整することで、鑑賞室の照明印象と仮想画像空間の照明印象とが連続し、或いは、一致しているように認知される特定の照明条件が存在すると考えられる。
そこで、今回、本願発明者らは、まず、画像表示装置に映し出された画像からその仮想画像空間の照明印象が判断できるか否かを確認するために、様々な種類の画像について観察評価した。その結果、画像から仮想空間の照明印象を判断することは可能であり、鑑賞室の照明条件を適切に調整することにより、仮想画像空間と鑑賞空間との両空間の照明印象を一致させる、或いは、連続性を持たせることが可能であることが明らかになった。
次に、照明印象は、どのような照明の要因によって決定されるかを検討する。
本願発明者の一人である明石の学位論文(「オフィス照明における明るさ感と省エネルギーの両立」、1997年9月、武蔵工業大学)によると、照明印象の要因として、視野内で最も反射率が高い部分の輝度、光沢やハイライトの高輝度部分の輝度、それらがない時には視野の平均輝度、被照射面と光源の位置及び照射方向との空間的位置関係が重要であると報告されている。これらに加えて、尹らは、照度及び光色が重要であると述べている(尹恵林、石田泰一郎、池田光男:「2つの室内空間に連続感を与える照明光の照度及び色の許容範囲」、照明学会誌、Vol.82、No.8A、pp.523-529、1998)。
以上の要因のうち、輝度は、物体の反射特性と照明の特性との両特性によって決定されることから除外し、照明の要因だけに限定すると、照明印象を決定する要因として、照度、光色、光源の位置及び照射方向の3つの要因が重要であると結論づけられる。
次に、鑑賞空間の照明を制御する上で、TVなどの画像表示装置に映し出される画像を鑑賞しているときに、それを中心とする視野のうち、どの範囲を照明する光源を対象として考えればよいのかを検討した。
人間の視野は、畑田(東京工芸大学)によると、図3のように視機能の働きにより、弁別視野、有効視野、誘導視野、補助視野に大別される(畑田豊彦:「広視野動画像による臨場感の客観的測定」、テレビジョン学会技術報告、VVI47-3、pp.55-60、1981)。弁別視野は、視力などの視機能の優れている範囲であり、有効視野は、眼球運動だけで注視して瞬時に情報受容可能な範囲であり、誘導視野は、呈示情報の存在がわかる程度の識別能力しかないが、空間座標系の判定には影響を与える範囲、つまり、動きを感じやすい範囲である。また、補助視野は、暗黒内で光覚閾が見られる範囲、つまり、形は認識できないが光の存在はわかる範囲である。従って、これらの視野ごとに少なくとも一つ以上の光源を設け、それらを独立して制御することにより、各視野の視覚特性の違いを適切に利用して臨場感を有効に高めることができると考えられる。また、複数の光源を個別に制御することによって、照明印象の要因である、光源の位置の印象や照明の方向を表現することができる。
次に、画像表示装置に映し出された画像の臨場感を高めるためには、照明印象の各要因がどのような要件を満たせば良いのかを明らかにするために、臨場感に関する評価実験を行った。
実験には、図4の実験装置を用いた。具体的には、図4に示したように、画像表示装置(画像音響出力部)2の背後及び左右、並びに鑑賞者(被験者)4の左右に計5個の照明出力部(照明装置)1を配置する。各照明出力部1が照明する範囲は、それぞれ、有効視野、誘導視野、補助視野に対応している。各照明出力部1は、独立してコンピュータで制御されることが可能である。また、各照明出力部1にはRGBの単色蛍光ランプが内蔵されており、各ランプをそれぞれ独立してレベル調整することが可能である。
評価対象とした画像は、「バットマン&ロビン−ドクターフリーズの逆襲」や「バーチャルトリップ−バリ編−」などのDVDデータから選定した約60シーンの画像、「ダイハード3」や「ロビンフット」などのVHSビデオ映像から選定した約50シーンの画像、並びに「ファイナルファンタジー7」、「電車でGO」、「ドライビングシミュレーション」などのゲームソフトから選定した約50シーンの画像である。上記の画像中から予備実験により代表的な16画像を厳選し、実際の評価実験に用いた。
実験では、計15人の被験者4を一人ずつ所定の観察位置に着席させて、画像表示装置1の画面を観察させながら、その画面に表示されている各画像に対してその画像の臨場感が最も高まるように、鑑賞室の各光源の調整を各被験者4に依頼した。但し、具体的な調整手順としては、被験者4が直接にコンピュータを操作するのではなく、「背後の輝度をもう少し高くし、手前の光色をもう少し赤くして下さい」などと被験者4が実験者(機器操作者)に口頭で指示して、その指示を聞いた実験者が、コンピュータを操作して照明を制御した。実験終了後、各被験者に、どのような考え方を基準として照明を調整したのかを回答させた。
実験の結果、次の結果を得た。
(1)仮想画像空間にも照明印象は存在する。
このことは、全被験者が、実験後の内省申告で、「画像から仮想画像空間の照明印象を認知することができた」と回答したことから裏付けられた。
(2)照明の光色、レベル、位置、光の方向が、臨場感向上に係わる照明要因であり、それらの条件を適切に制御することにより、画像の臨場感が向上できる。
(3)照明のレベルに関しては、鑑賞空間の照明のレベルが仮想画像空間の照明のレベルにほぼ等しくなるように調整することにより、臨場感が高められる。 臨場感を最も良く高めるためには、仮想画像空間の照明レベルと鑑賞空間の照明のレベルとを、色度座標上で一致させることが望ましい。前述した尹らの論文では、隣接した2室(対象空間と観察空間)の連続性を高めるためには観察空間の照度Ekと対象空間の照度Etとの関係を0.67・Et<Ek<1.25・Etの範囲になるように設定にするとよいことが報告されているので、この値を目安にして照明を制御してもよい。
一方、一般に、照明のレベルとは照度レベルのことを指すが、鑑賞空間の内装の反射特性は、必ずしも仮想画像空間のそれに等しいとは限らないので、輝度を基準にしたほうが、より正確な制御ができると考えられる。今回の実験結果からは、画像の最高輝度L(cd/m2)に対して、周辺視野の輝度L’(cd/m2)を0<L’<1.25・Lの範囲に設定すると良いことが明らかになった。そこで、この関係を満たすように制御しても良い。
(4)照明の光色に関しては、鑑賞空間の照明の光色が仮想画像空間の照明の光色にほぼ等しくなるように調整することにより、臨場感が高められる。
臨場感を最も良く高めるためには、仮想画像空間及び鑑賞空間の両者の光色を、色度座標上で一致させることが望ましい。また、前述の尹らは、隣接した2室の連続性を高めるためには、両室の光色の差を色度図のx座標で±0.04の範囲に入れなければならないと報告しているので、そのデータを目安にして照明を制御してもよい。但し、今回の実験からは、両室の照明の光色のカテゴリーがほぼ一致すれば、ある程度まで臨場感が高められることが明らかになった。例えば、仮想画像空間の照明が赤色の光であれば、鑑賞空間の照明は、ほぼ赤色とみなせる範囲の色度を満足していればよい。この方法に従うと、より簡便な制御ができることになる。
(5)臨場感は、連続感、広がり感、迫力感などと密接に関係している。
連続感とは、仮想画像空間と鑑賞空間とがつながっていると感じる感覚であり、広がり感は、両者のつながりが感じられる上に、空間がまだ続くと感じられる感覚であり、迫力感は、両者のつながりが感じられる上に、空間が鑑賞者の方向に迫ってくると感じられる感覚を意味する。また、これらの連続感、広がり感、迫力感は、臨場感の下位概念である。
(6)画像表示装置の周辺視野に配置した光源のレベル、光色、位置を変化させることにより、仮想画像空間の光源の特性、光の流れ、照射方向、地明かり(ベース照明)の状態が表現できる。
(7)有効視野、誘導視野、補助視野の照明のウエイト(レベル)を調整することにより、様々な照明の状態が作り出せるとともに、広がり感や迫力感を演出することができる。
例えば、補助視野の照明の照度を他視野の照度より高くすることで、鑑賞者の手前から画面方向に向って光が照射されている状態を表現できる。或いは、有効視野の照明の照度を他視野のそれより高くすることで、画面から強い光が照射されている状態を表現できる。
(8)光源が鑑賞者から見えなくすることで、臨場感が高められる。
図4に示したように、鑑賞者4と光源(照明出力部1)との間に遮光板51を設置して、鑑賞者4から光源1が見えないようにした場合と、このような遮光板51を設置せずに光源1が鑑賞者4から見えるようにした場合とで、臨場感を比較した結果、光源1が見えると、臨場感の向上効果は半減することが明らかになった。このことは、先に述べた照明印象や照明認識視空間の考え方に基づくと、適切に説明できる。つまり、それらの考え方によると、臨場感は、鑑賞空間の照明印象が仮想画像空間のそれに一致するときに、向上すると考えられる。もし、鑑賞空間の光源が鑑賞者から見えてしまうと、それぞれの空間が別々の光源で照明されているように見える、つまり、鑑賞空間の照明と仮想画像空間の照明との連続性がなくなってしまうために、臨場感が向上しないと考えられる。従って、光源或いは発光部(照明出力部)は、鑑賞者から見えないように、遮蔽板などで遮光することが望ましい。
(第1の実施形態)
以上のような本願発明者らによる検討結果に基づいて、本発明の第1の実施形態として、まず、照明制御方法の具体的な実施形態を、以下に説明する。
図5Aは、本発明の照明制御方法が適用され得るTV鑑賞室を模式的に描いた図であり、ここでは、一つの壁面を背にして、比較的大型(例えば36インチ)のTVが設置されている。鑑賞者は、TVの画面の縦の寸法をHとしたときにTV画面から7Hの距離だけ離れて座り、TVを鑑賞していることを想定している。鑑賞者とTV画面とを結ぶ直線を基準に、±15度以内が有効視野、±50度以内が誘導視野、±100度以内が補助視野に相当し、それぞれに対応して有効視野部、誘導視野部、及び補助視野部が形成されている。
まず、このTV画面に、図6A(a)の画面が映し出された場合を想定する。図6A(a)の画面は、列柱がある大きな博物館の空間である。その空間全体は、青色の光で照明されている。一方、窓からは、赤い光が館内に射し込んできている状態を映し出している。
このとき、鑑賞空間の照明を、補助視野部及び誘導視野部の照明が画像内の青色光とほぼ同じ光色に調整することで、あたかも仮想画像空間の照明が鑑賞室の照明につながっているような印象を与える。これが、両空間の照明の連続性を高めることになり、臨場感が向上する。また、有効視野部の照明を赤色にして、画面の中の窓からこちらに向けて赤い光が照射されていることを表現することで、空間的なつながりを高めることにより、臨場感が向上する。
或いは、図6A(a)の画面のように、光の輝度分布が均一で指向性の強い光が存在しない場合には、各紙屋に配置された光源の明るさを均一にするよりも、図6Bに明るさをハッチング範囲の大きさで模式的に示すように、有効視野に配置された光源の明るさを、誘導視野及び補助視野に配置された光源の明るさよりも高くすることで、やすらいだ鑑賞を可能にする。これより、上記の制御方法は、臨場感を向上させつつ、ゆったりとした気持ちで鑑賞する場合の照明制御手法として、効果的である。
次に、図6A(b)の画面が映し出されている場合を想定する。図6A(b)の画面は、大きな天体望遠鏡に上方から赤色の指向性の高いスポット光が照射されている場面である。一方、ベース照明の光色は青色である。
このとき、鑑賞空間の照明は、誘導視野部の照明をベース照明の青色光とする。一方、仮想画像空間の指向性の高い赤色のスポット光が鑑賞者まで届いている様子を表現するため、有効視野部の照明と補助視野部の照明とを赤色光とする。
以上により、有効視野部の迫力感が高まり、鑑賞者は、あたかも仮想画像空間の中にいるかのような気分になる。また、この画像に関しては、誘導視野部を赤色光として、補助視野部を青色光としてもよい、こうすることにより、赤色のスポット光が鑑賞者の足元にまで届いている様子を表現できる。このように、各視野部を適切に使い分けることにより、光の広がり具合をさまざまに表現できる。
或いは、図6Cに明るさをハッチング範囲の大きさで模式的に示すように、有効視野部の明るさよりも補助視野部の明るさを高くすることで、鑑賞者は、あたかも赤色のスポット光が鑑賞者の近傍まで届いているかのように感じる。
なお、図6A(b)に描かれている状態では、赤色のスポット光が上から下に向かって照射されているが、図5Aのように各視野の照明が下から上に向かって照射していても上述した通りの照明を行えば臨場感が向上するように、図5Bのように、各視野の照明が上から下に向かって照射していても、何ら問題は生じない。但し、図5Aのように、各視野の照明が下から上に向かって照射している方が、鑑賞者は、現象的な雰囲気を感じやすい。
更に、図5Cのように、下から上に向かって照射する照明と上から下に向かって照射する照明とを組み合わせて使用することによって、臨場感を更に向上させることができる。例えば、有効視野部では上から下に向かって照射する照明を使用し、補助視野部では下から上に向かって照射する照明を使用すれば、鑑賞者は、赤色のスポット光があたかも照射されているかのように、より感じやすくなる。
このように、画面の輝度分布状態に応じて各光源の出力及び光色を制御することで、臨場感の向上を達成することができる。
次に、図6A(c)の画面が映し出されている場合を想定する。図6A(c)は、白熱電球により照らされた少女の顔のアップの画像である。少女の顔の背景は、暗黒に映っている。
このとき、仮想画像空間の照明の位置は、少女より手前にある、つまり、仮想画像空間と鑑賞空間とがつながっていると仮定したときの、少女と鑑賞者との間にあると考えるのが自然である。従って、この画像に対しては、誘導視野部の照明を電球色にすることにより、上で述べた照明の状態を表現することができ、画像仮想空間と鑑賞空間との連続性を極めて自然に且つ効果的に高めることができて、臨場感が向上する。
次に、図6A(d)の画像が映し出されている場合を想定する。図6A(d)は、熱帯雨林地方の棚田の画像である。快晴のため、この棚田は、青空光と太陽の直射光とで照明され、美しい緑色に輝いている。画像の手前には影があり、直射光は、こちら(鑑賞者側)から奥側に向かって照射されている。
このような画像に対しては、補助視野部及び有効視野部の照明を太陽光に近い光色にすると、手前から奥向きの光の方向が表現できる。また、このとき、補助視野部の照明を緑色にすると、視野の広がりが表現できる。これは、補助視野部のような人間の視野の周辺部は、視機能が低く、物の形や色もはっきり識別できないため、緑色にすることにより、棚田の緑が広がっているように錯覚するためである。つまり、照明の色(光源色)ではなく物体の色(物体色)であっても、視野ごとの視機能の違いを適切に利用することによって、表現できる。以上の何れかの方法によって、臨場感は向上する。
次に、図6A(e)の画像が映し出されている場合を想定する。図6A(e)は、美しい夕日の画像である。太陽は赤く、太陽周辺の空も赤く染まっている。画像の右下半分の空には薄曇がかかっており、濃い緑色に光っている。海は、紺青色である。
この画像に対しては、有効視野部の照明を太陽の赤色とし、誘導視野部の照明を雲の濃い緑色とし、補助視野部の照明を海の紺青色とする。このように、画面上の光の位置に応じて各視野の照明を使い分けることにより、仮想画像空間と鑑賞空間との連続感が増す。つまり、画像の上方に存在する光は有効視野で表現し、下方に存在する光は補助視野で表現し、その中間の光は誘導視野で表現すると、効果的である。この規則性を、本願発明者らは「上中下の法則」と呼んでいる。
以上のようなきめ細かな照明制御をすることにより、驚くほどの効果が得られる。但し、これらの照明制御を自動的に、しかもリアルタイムで行うには、画像データから光源の位置や光色などを推測する必要がある。その手段の多くは、「上中下の法則」に代表されるように既に述べたものもあるが、ここで、いくつかの手段を補足する。
本願発明者らが多くの画像を調べた結果、光源は、画像の中で最も高輝度である場合が多い。そのため、画像の各画素の輝度を分析し、最も輝度の高い部分を光源と見なして、問題はない。もしそれが光源でない場合でも、最も輝度の高い部分が発する、或いは、そこで反射される光は、仮想画像空間の光として支配的である場合が多い。そのため、最高輝度の部分を検出する画像処理フィルターを予め作成しておけば、処理時間が短縮される。
また、前述のように、照明による臨場感向上技術は、認知的な効果を利用したものであるため、感性が豊かで熟練した人間が画像の意味を吟味しながら照明条件を決める方法が、最も効果的に臨場感が高められると考えられる。そのため、予め照明データをDVDやビデオテープなどの記憶媒体に記憶しておき、画像と一緒に再生する方法が最もよい方法であることは言うまでもない。次善の方法としては、多数の代表的な画像とその適性照明条件とをデータベースとしてファイルに記憶しておき、画像の再生時に、映し出される画像のデータと先に記憶されたファイルの画像データとを照合させながら、最適照明条件を抽出する方法が考えられる。このようなデータベースとの照合に要する時間は、メモリなどのコンピュータ技術の進展により、今後、ますます短縮されることが期待できる。
ここで、図6D(a)及び(b)は、鑑賞者の好みに応じた照明制御方法の選択を可能にするスイッチ機能を模式的に示す図である。
テレビで画像を鑑賞する場合には、あたかもその場面の中に存在するかのように感じられる臨場感の向上が重要であるとともに、リラックスした状態でゆったりと鑑賞できることも重要である。このために、図6D(a)の構成では、臨場感の向上とリラックス感の向上とをともに兼ね備えた照明制御方法を例えば「標準モード」として設定し、更に、最適な臨場感向上を追求した照明制御方法を「ダイナミックモード」、最適なリラックス感向上を追求した照明制御方法を「リラックスモード」、鑑賞者の好みに応じて照明制御方法を自由に設定できるモードを「お好みモード」として、それぞれ設定している。一方、図6D(b)の構成では、更に多モードの中からの選択を可能にするスイッチ機能の構成を模式的に示している。各モードとしては、例えば上記のような「標準モード」や「ダイナミックモード」などを含めて、任意に設定することが可能である。
なお、上記の例では、特に臨場感及びリラックス感に言及しているが、他の心理的効果を追加しても何ら問題は存在せず、本発明の範囲内である。また、モードの名称やスイッチの配置順及び構成などは、図示されている例を含めて特定のものに限られるわけではなく、モードの名称、或いはスイッチの配置順や構成が本発明に含まれる。
一方、図6E(a)及び(b)は、有効視野を照明する光源として使用され得る多機能光源の構成及び機能を説明する図である。上記の目的で使用され得る多機能光源は、図6E(a)に模式的に示すように複数の光源(光源1〜光源x:xは2以上の任意の自然数)から構成されており、個々の光源は、点灯制御、R・G・B光色可変制御、配光可変制御、及び、光の方向の可変制御を実施できる。図6E(b)には、上記の各制御を模式的に示しており、点灯制御とは、光の出力を瞬時に点灯或いは消灯できる機能、R・G・B光色可変制御とは、光出力の色を自由に変化できる制御、配光可変制御とは、光出力の配光(図中では同心の楕円で示している)、すなわち光の広がる角度を制御できる機能、光の方向の可変制御とは、回転動作などによって光源の向きをあらゆる方向に変化できる機能である。
一方、図6F(a)及び(b)は、誘導視野を照明する光源として使用され得る多機能光源の構成及び機能を説明する図である。上記の目的で使用され得る多機能光源は、図6F(a)に模式的に示すように複数の光源(光源1〜光源x:xは2以上の任意の自然数)から構成されており、個々の光源は、点灯制御、R・G・B光色可変制御、配光可変制御、及び、光の方向の可変制御を実施できる。これらの各機能は、上記で説明した通りである。本発明の光源の特徴は、図6F(b)に示すように、特に高密度に各光源を配置して、細かい点灯制御が実施できる点である。図6F(b)は、各光源から光が出射している様子を模式的に示す図であって、このように複数の光源を高密度に配置することによって、人間の誘導視野の特性を十分に生かした照明を実現することができる。
以上で述べた照明制御方法は、どのような照明器具或いは光源で実現してもよい。光源とそれを制御する回路の数が多い程、細かな制御が可能であり、それらを適切に使うことにより、臨場感はますます向上する。
以上は、光源が複数存在する場合についての実験の成果であるが、実用場面を考えると、制御はなるべくシンプルなほうが良い。従って、次に、一回路の光源を制御して臨場感を高める場合について実験を行った。
実験は、前述の図1の実験室で行った。コンピュータを用いた簡単な操作で、図1の各照明出力部1の照度及び光色を個別に調整できるようにした。評価用に、種々の環境ビデオ或いは映画ビデオから、特徴的な20種類の評価用シーンを抽出した。各評価用シーンは、それぞれ長さ3分間であり、映し出される場面に、照明の変化が少ないものを選定した。
実験では、被験者(鑑賞者)4を一人ずつ実験室の中央の椅子3に座らせて、手元に照明制御用のノート型コンピュータを持たせた。被験者4に「画像表示装置2の画面の臨場感が高まるように室内の照明条件を調整してください」と教示して、室内の照明条件を、各評価シーンについて3分間かけて調整させた。被験者4は、前実験と同じく男女6名ずつ(年齢25歳〜50歳)の計12名とした。
実験で得られた室内の照度、輝度分布、色度のデータを全被験者で平均した結果、設定された室内の照明の色度と画像の色度との間には、図7Aの関係があることが明らかになった。
図7Aは、XYZ表色系で表した色度図であり、その色度図の上に、標準の光D65((0.3127,0.3290)、今回用いた画像表示装置2の平均白色点をD65に設定した)と、画像表示装置2の画面全体の平均色度S(x、y)、画像表示装置2の画面全体から主対象物を除いた背景部の平均色度S’(x’、y’)を示している。更に、実験で得られた室内照明の平均色度を、点P(Xp、Yp)に示す。
図7Aから、実験から得られた室内照明の平均色度pは、画像表示装置画像全体の平均色度S(x、y)と標準の光D65(0.3127,0.3290)とを結ぶ線上に、ほぼあることが明らかになった。
一方、実験で得られた照度レベルは約50lxであったが、この照度条件のときには、画像表示装置2の本体の背後の壁面輝度が、画像表示装置2の画面全体の平均輝度の約80%であった。また、実験から得られた室内照明の平均色度pを、画像表示装置2の画面全体から主対象物を除いた背景部の平均色度S’(x’、y’)と比較すると、S点の場合と同じ傾向であるが、室内照明の平均色度pは、画像表示装置2の画像全体の平均色度S(x、y)と標準の光D65(0.3127,0.3290)とを結ぶ線上に確実に載っていること、並びにS’座標はS座標よりP座標の近傍にあることが、明らかになった。
以上から、画像表示装置画像の臨場感を得るためには、画像表示装置本体背後の壁面が、画像の中の人間などの主対象物を除いた背景部の平均色度に比べて、色相はほぼ同じで彩度及び輝度がやや低い条件になるように照明されるように、室内照明を制御する必要があることがわかった。また、主対象物を除いた背景部の平均色度に代えて、画像全体の平均色度に関して同様の制御を行っても、ほぼ同等の効果が得られることが明らかになった。
更に、上記の実験より、臨場感を高めるためには、画面の主対象物の色彩が鮮やかに見えることも重要であることが明らかになった。つまり、12名中7名の被験者は、画像表示装置の画面の臨場感を高める室内の照明条件は、2通りあると回答した。
もう一つの回答の平均が、図7Aの点Q(Xq、Yq)である。このQ点は、D65の白色点に対して点S(x、y)や点S’(x’、y’)の反対側にある。但し、P点とQ点との両条件を同時に満たすことはできないので、例えば「モード選択」のような形で、複数の選択肢から何れかの方法を選択する方法が適切である。
更に、被験者の意見などをもとに詳細に解析した結果、被験者は、室内の照明を画面の背景の平均色度に合わせるよう調整したのではなく、画像表示装置の画面に映された場面の照明と室内の照明とが連続するように、室内の照明を調整していることが明らかになった。照明の連続性に関しては、池田光男らが、ガラス窓で隔てられた室内の照明と屋外の照明との連続性に関して、評価実験を行っている。
池田らは、室内にいる人が「屋内外の照明が連続している」と感じるように、屋外の照明条件(照度レベル、色温度)に対して室内の照明条件を特定することが可能であること、このときの室内の照度条件は屋外と同じ高照度ではなく、屋外の1/100程度という屋内照明の照度条件に見合った条件であること、室内の照明に対して連続性があると感じる屋内の照明条件には個人差が少ないこと、を明らかにした。この池田らの照明の連続性に関する理論は、今回の実験結果を裏付けており、今回の実験結果は、画像表示装置画像の場面と鑑賞室の照明とが連続していると感じるように鑑賞室内の照明を設定することで、画像表示装置の画像の臨場感が向上するように感じたと解釈することができる。
室内の照明が、どのような光源により、どの程度の照度レベルで照明されているかという照明の印象(照明印象)は、特に、紙片などの白い表面の見え方や金属のドアノブのような光沢のある表面の見え方を手がかりにして判断されると考えられている。これについて調べるために、先の実験データを画像表示装置画像と照らし合わせながら解析をした結果、やはり、画面に映し出されたもののなかで最も白いものの色度にほぼ一致するように、被験者は照明条件を調整したことが確認できた。また、室内の照度については、得られた照度値と画像の主対象物を除く背景部の最も高輝度部との対応関係を解析した結果、両者の間に正の相関があり、両者の間に以下の(1)式の関係:
Y=1.04・L+20 (1)
が存在した。なお、Yは室内の照度(lx)であり、Lは画面の平均輝度(cd/m2)である。
(1)式を使うとき、ディスプレイの輝度特性に応じて補正する必要がある。補正の方法は複雑ではなく、(1)式により得られた照度値に、実際に使用したテレビの最大輝度120cd/m2に対するディスプレイの最大輝度の比をかけ合わせるだけでよい。但し、回帰式の相関係数は、0.59とあまり高くはなかった。
このため、次に、被験者に実験に用いた各シーンを見せて、画面の照明印象を照度値で申告させた。その申告値と先ほどキーボードで調整した照度データとを比較した結果、両者の間に一定の対応関係があり、画面の照明印象の照度に対する実験室内の照度値は、次の(2)式:
Y=0.098・E+10.2 (2)
で回帰できることが明らかになった。なお、Yは先述の室内の照度(lx)であり、Eは画面の中の照明印象について申告された照度(lx)である。
式(2)の回帰式の相関係数が0.78と高いことから、室内が画面に連続していると感じられるときの室内照度は、画面の照明印象として申告された照度の約1/100と考えられる。このことから、画面に対して連続していると感じられる室内照度を精度よく求める場合、画面輝度などの物理的なデータから単純に予測算出するよりも、一旦、画面の照明印象を照度値で評価し、その照度値を1/100倍して求めた方がよいと考えられる。但し、この方法では、予め画像表示装置画像に合わせて照明制御条件を設定しておく必要があるため、リアルタイムで解析できないだけでなく、作成者の労力がかかるというデメリットがある。従って、実用的には、前述の画面の平均色度に比べて、色相はほぼ同じで、彩度及び輝度はやや低い条件に設定する照明制御方法を採用することが、望ましいと考える。
以上、静止画像に対する適正照明条件の決め方について説明した。
一般的な画像は、静止画ではなく、動画である場合が多い。そこで、次に、動画に照明を連動させるときに問題が生じないかどうかを検討した。その結果、次の問題点を見出した。
(1)画像の変化が激しい動画の場合、フレームごとの画像信号に照明を同期させて制御すると、ちらつきや不快感を感じる場合がある。
(2)画像処理をした結果に応じて照明をリアルタイムに変化させる方法をとると、画像処理に時間を要するために、画像に対して照明制御が遅れることがあり、それが不自然で不快に感じる場合がある。
(3)画像の輝度が低いときに、照明制御が誤動作しているように見える場合がある。
上記(1)に関しては、画像解析の結果、制御する照明の変化の周波数が、約60Hz以下の人間がちらつきを感じる周波数になる可能性が高いときに、照明の変化のレベルを圧縮させる方法、ある一定期間の画像の平均値を処理の対象とする方法、フレームを省略する方法、画像の変化がある閾値を越えたときだけ照明を制御(変化)する方法などにより、人間に対するちらつき周波数の範囲を避けることで解決できる。このときの「ある閾値」とは、最大輝度の1/4程度の閾値である。
また、図7B(a)及び(b)には、変化の激しい画像に照明が同期して変化するときに感じるちらつきや不快感を防止するため、画像の変化があったときに、その変化分のある一定期間の平均値に対して照明を変化させたときの、画像のある部分の平均出力信号値(図7B(a)参照)及びそれに連動させた照明の出力値(信号値、図7B(b)参照)と経過時間との相関図を示す。図7B(a)に示すように、画像の信号値は、画像間の画面切り替え時に瞬時に変化することが多いが、照明の信号値を同様に瞬時に変化させると、ちらつきや不快感を与えることが多い。そのため、画像信号値に同期させる照明の信号値として、図7B(b)では、画像の前後5つずつのデータを平均した値に設定している。平均値を算出する期間は、視野の特性に一致した期間にすることが望ましく、各視野に対応した光源の緩和型制御方法は、同一の場合だけではなく異なる場合も本発明に含まれる。また、平均値データは、同期させる画像データよりも以前の画像データのみを使用する場合、同期させる画像データよりも後の画像データのみを使用する場合、或いは離散的にデータを選択して使用する場合なども、本発明に含まれる。更に、平均する画像データの数は、2個であってもそれ以上であっても良い。
上記(2)に関しては、人間の目は、わずかな時間のずれも認識できる。このため、画像と照明との間に時間的なずれが生じてはいけない。この許容値は、約1秒間と考えられるため、それ以上の時間差が生じないように工夫する必要がある。例えば、画像データを一旦メモリに保存し画像の解析が終了して照明条件が明らかになった後に、画像と照明とを同時に出力する方法、データの転送を早くするためディバイス・ディペンデントなデータ形式で信号を送る方法、全てのフレームの画像を解析するのではなく、数個毎に解析することにより時間を稼ぐ方法、などを用いると解決する。
上記(3)の問題は、画像表示装置に映し出された画像の輝度が低輝度で色度が低彩度の場合に、照明が予想外の光色になる場合があることを意味している。これは、次のような原因で生じる。つまり、低輝度で低彩度の色彩は、何れの色相であっても、全て黒のように見える。しかし、色度を分析すると、何らかの色相を有している。高臨場感照明制御方法により、この色度に一致するように照明を制御すると、光源色であるために、見た目は鮮やかな光色に見える場合がある。
この問題を避けるために、ある一定輝度や彩度以下になったときには、照明は、消灯するか、或いは、低輝度の白色にするなどの方法を採用すると良い。
以上、本実施形態で述べた照明制御方法を、高臨場感照明制御技術、或いは、高臨場感照明制御アルゴリズムと呼ぶことにする。
人物などの主対象物を背景と分離するためには、現在、マルチメディア分野で盛んに研究開発が行われている画像圧縮技術が応用できる。
例えば、既に規格化されている画像圧縮方式のMPEG2方式では、動画像の冗長性を無くすために、動きの多いものを主対象物として抽出し、残りの動きの少ないものを背景と判断して、動きの多い主対象物の情報のみを伝達し、動きの少ない背景の情報は、低い頻度で伝達している。従って、ある意味では、既に背景と主対象物とが分離されていることになり、両者をDVDビデオデッキ等のデコーダーで合成する前に独立して取り出し、背景部のみの画像処理を行って、その平均色度や平均輝度を求めることは容易である。
また、現在実用化されつつあるMPEG4方式では、撮影時に主対象物と背景部とを分離して撮影し、両者の画像情報を分離したまま送信する方式が取られている。この場合、背景部の画像情報を得ることは更に容易であり、送られてきた背景画像情報の信号をそのまま使用するとよい。
また、将来、光源の位置や光源の特性(光源の種類、分光分布、配光、光色など)の情報も画像圧縮データに組み込まれるようになれば、光源の抽出についてもより容易にできるようになる。
図7Cは、鑑賞者の好みに応じたデータ変換が容易になるように、色彩・明るさ信号の形態でデータを送信する構成を、模式的に示す図である。色彩・明るさ信号としては、例えば(Y、x、y)のようなデバイス・インディペンデントな信号が、どのデバイスに変換しても同じであること、及びどのような色に変換したかが容易に把握できるために、最も有効である。
一方、図7Dは、データの転送速度を高めるために、ランプ出力電圧値などのデバイス・ディペンデントな形態で、調光信号などのデータを送信する構成を、模式的に示す図である。ランプ出力電圧などの値をそのまま送信するために、信号が転送されてから照明が出力されるまでが早い。しかし、データ変換時に、目標とした色彩・明るさに変換することは、非常に難しくなる。従って、速度を必要とするが、目標の色彩・明るさに正確に変換する必要がないときは、ランプ出力電圧値などのデバイス・ディペンデントな形態でデータを送信することが望ましい。
(第2の実施形態)
図8及び図9に、本発明の第2の実施形態における照明装置の構成を示す。図8及び図9の照明装置は、画像音響再生部6、データ記録デバイス7、照明制御部8、照明出力部9、及び画像音響出力部10を含む。
データ記録デバイス7は新規なものであってもよいが、ビデオテープ、CD、DVDなど現状普及している記録デバイス、或いは本発明専用の記録デバイスの何れでもよい。また、それには、画像、音響の何れか、或いは両方のデータに加え、それらに対応した照明制御データが記録されている。データの記録方法や書式(アナログ/デジタルを含む)は問わない。
画像音響再生部6は、データ記録デバイス7に予め記録された画像、音響の何れか、或いは両方のデータと照明制御データとを再生する機能と、テレビなどの画像音響出力部(画像表示装置)10や照明制御部8などに制御信号を送る機能を持っている。このときの照明制御データとは、照明出力部9に内蔵された各ランプの調光レベルに関するデータである。
照明制御部8は、画像音響再生部6から送られてきた照明制御データに基づいて照明制御を行う機能を持ち、照明出力部9に内蔵された各ランプの調光レベルのデータを、照明出力部9の点灯方式に応じた信号形態で照明出力部9に送る。
照明出力部9は、一つ或いは複数のランプ及び点灯回路が内蔵され、光度及び配光と色温度とを自在に変えられる機能を有する。例えば、RGBの単色の蛍光ランプが内蔵され、それぞれの調光比を変えて白色光から単色光の範囲まで色温度を変化させる構成であっても良く、或いは、約3000K〜約6700Kの間で市販されているランプを内蔵し、それぞれの調光比を変えて色温度を変化させてもよい。更に、これらの蛍光ランプにハロゲンランプのような指向性の高いランプを組み合わせて、両者を切り換えることにより配光を変化させてもよい。また、液晶やLED、CRT、PDP、ELなどのディスプレイデバイスを組み合わせて、光色や配光を変化させてもよい。
データ記録デバイス7に記録されたデータのうちで画像音響に関するデータは、画像音響出力部10に送られる。画像音響出力部10に含まれるディスプレイには画像が映し出され、スピーカーからは音声が流れる。同時に、データ記録デバイス7に記録された照明制御データは、照明制御部8に送られる。照明制御部8では、受信したデータを基に、照明出力部9に内蔵された各ランプの調光信号への変換を行った上で、受領した信号を照明出力部9に送る。照明出力部9では、それに内蔵された各ランプが、調光信号に応じたレベルで点灯される。これにより、臨場感あふれた室内環境が実現できる。
ここで最も重要なのは、画像や音響を視聴している鑑賞者4の臨場感を高める照明制御の方法であるが、これには、幾つかの方法がある。
最も効果的であるのは、十分に感性の高い照明デザイナーが、画像や音響のデータに応じて、最も効果的な照明演出を行う方法である。なぜならば、先述の実験で、画面の臨場感を高めるためには、熟練者が画面の中の照明印象に連続性が得られる室内照度の条件を求めることが、最も効果的であることが明らかになった。また、照明デザイナーは、一般に、舞台照明演出家などとして、演劇などの照明演出の仕事を通じて高い感性を持っているため、このような照明条件の判断を適切に行うことができる。また、照明演出を行う照明デザイナーが著名であるほど、データ記録デバイス7の形で売買される画像・音響・照明ソフトの価値が高まる。一方、低コストにしたいときは、画像音響に対して、先述の高臨場感照明制御技術を用いて機械的に照明制御データを作ることもできる。
また、音響に連動した照明制御方法としては、例えば、大音量のときには照度レベルを高くし、小音量のときには照度レベルを低くするなどの方法が、効果的である。
照明制御部8は、図示するような1回路だけでなく複数の回路を用いて、複数の照明出力部9を制御しても良い。更に、照明出力部9は、鑑賞者4から見えないように隠すとなおよい。
(第3の実施形態)
図10に、本発明の第3の実施形態における照明装置の構成を示す。図10の照明装置は、画像音響受信部11、画像音響再生部6、画像音響記憶部12、画像解析部13、画像音響照明制御部14、画像音響出力部(画像表示装置)10、及び照明出力部(照明器具)9を含む。
画像解析部13は、画像信号を入力し、その信号を解析し、その解析結果から演算処理して各種信号を生成し、その各種信号を出力する機能を有する。画像音響照明制御部14は、画像信号、音響信号、照明信号を入力し、画像信号が画像されるタイミングに同期して音響信号、照明信号を出力する機能を有する。照明出力部9は、ひとつ以上のランプ及び点灯回路が内蔵され、照明信号を入力し、その信号に基づいて照明光の光度及び配光と色温度が自在に変化できる機能を有する。画像信号は、少なくとも、各画像の各画素の色信号と輝度信号とを示す。信号の方式や信号の順序は、どんな形態でもかまわない。
画像音響受信部11或いは画像音響再生部6から供給される画像信号及び音響信号は、画像音響記憶部12に一端記憶される。画像音響記憶部12に記憶された画像信号は、画像解析部13で画像解析され、画像の臨場感を高められる照明条件が算出されて、照明器具を制御するために必要な照明信号が生成される。
画像信号、音響信号、照明信号は、画像音響照明制御部14に入力され、画像が映し出されるタイミングと同期するように、画像信号及び音響信号が画像音響出力部10に送信され、一方、照明信号が照明出力部9に送信される。これにより、画像を鑑賞している在室者は、画像音響出力部(例えばテレビ)10及び照明出力部(照明器具)9から同期して出力された画像、音響、照明によって、高い臨場感を感じながら、画像音響出力部10に映し出される画像を楽しむことができる。
なお、本発明の照明装置は、画像信号が画像音響記憶部12に入力されれば、その画像と画像の臨場感を高める照明光とを生成できるため、画像音響受信部11及び画像音響再生部6の両方を必ず備える必要はなく、両者のうちの少なくともどちらか一方があればよいことはいうまでもない。
また、音響を必要としないときは、図10の構成における画像音響受信部11、画像音響再生部6、画像音響記憶部12、画像音響照明制御部14、及び画像音響出力部10の各々が、音響の処理する機能を有する必要がないことは言うまでもない。
更に、図10の照明装置は、画像音響受信部11、画像音響再生部6、画像音響記憶部12、画像解析部13、画像音響照明制御部14、画像音響出力部10、及び照明出力部9の各々が別個の装置として構成されていてもよく、或いは、例えば画像音響受信部11と画像音響再生部6とが画像音響受信再生部となるように、2つ以上の構成部分が一体的に構成されている形態であってもよい。
照明制御部8は、図示するような1回路だけでなく複数の回路を用いて、複数の照明出力部9を制御しても良い。更に、照明出力部9は、鑑賞者4から見えないように隠すとなおよい。
(第4の実施形態)
図11に、本発明の第4の実施形態における照明装置の構成を示す。図11の照明装置は、センサ部15、データ解析部16、照明制御部8、及び照明出力部(照明器具)9を含む。
センサ部15は、画像音響出力部(画像表示装置)10の画面に映し出された画像の輝度及び色温度を測定して、そのデータをデータ解析部16に送る機能を持つ。データ解析部16は、センサ部15で測定された画像の輝度及び色温度の情報をもとに、画面の臨場感が高まる照明条件を判断し、照明出力部9の各ランプの出力レベルの信号を照明制御部8に送る機能を持つ。照明制御部8及び照明出力部9の機能は、第3の実施形態においてと同様である。
図11の構成では、画像音響出力部(画像表示装置)10は、照明装置とは別個の装置として設けられているが、これを含める構成であっても良い。
なお、以上では、画像を中心にして、臨場感を高める手段を説明したが、音階や音色などの音声に対する臨場感を高める照明要件を見い出すことができれば、音声にあわせた照明制御を行うことにより、臨場感を高めることができる。更に、画像、音響、照明との3者を組み合わせることにより、臨場感を最も効果的に高めることができる。
(第5の実施形態)
図12(a)及び(b)に、本発明の第5の実施形態における照明装置の、特に照明出力部の一例の構成を示す。
図12(a)は、画像音響出力部10と、照明出力部9a及び9bと、照明出力部9を画像音響出力部10に固定する照明固定部17a及び17bと、を示す。照明固定部17a及び17bは、照明出力部9a及び9bによる照明効果を使用せずにテレビやビデオの画像を鑑賞するとき、或いは画像鑑賞をしないときに、不必要な照明出力部9a及び9bを画像音響出力部10に収納するための機能を有する。従って、照明固定部17aのように照明出力部9aをひっかけるタイプや、照明固定部17bのように照明出力部9bを収納するタイプ、更には、図示しないが画像音響出力部10の内部に収納できるタイプであってもよい。
図12(b)は、画像音響出力部10から照明出力部9a及び9bを離した状態を描いている。画像音響出力部10と照明出力部9aとを結ぶコード20は、少なくとも、照明信号を照明出力部9aに送信するための伝送線として機能する。このような構成にすると、照明出力部9aの位置を自由に設定することができる。コード20は、照明信号以外に、照明出力部9aに電気エネルギーを供給する伝送線として使用してもよいことは、言うまでもない。
或いは、画像音響出力部10に設けられた照明信号出力部18と照明出力部9bに設けられた照明信号入力部19とを使用することで、コード20を省略することができる。具体的には、照明信号出力部18は、照明信号を出力する機能を有し、照明信号入力部19は、出力された照明信号を受信する機能を有する。このような構成にすると、コードレスであるために、照明出力部9bの位置を更に自由に設定できる。照明出力部9bに必要な電気エネルギーは、照明出力部9bに電気エネルギー源を設けて供給しても、他の場所に設けられた不図示の電源から照明出力部9bに供給されてもかまわない。
なお、照明固定部17a及び17b、並びに照明出力部9a及び9bは、図示されるように左右が異なるタイプであっても、或いは同じタイプであっても良く、また、一カ所のみにあるタイプであってもよい。また、図示される例では、コード20を有する照明出力部9aが引っかけタイプの照明固定部17aで固定され、コードレスタイプの照明出力部9bが、収納タイプの照明固定部17bで固定されているが、組合せは、上記に限られるわけではない。
図13は、引っかけタイプの照明固定部9aの一構成例を示す図であり、画像音響出力部10の一部と、照明出力部9aと、照明固定部17aと、を描いている。照明出力部9aは、中央付近に、照明固定部17による固定のための凹部21が設けられており、その両側には、発光部23が設けられている。また、照明固定部17は、つがい部22を介して画像音響出力部10に取り付けられている。
照明出力部9aの凹部21を照明固定部17aのリング部分(一部が欠けている)にはめ込むことにより、画像音響出力部10に照明出力部9aを取り付けたままで、矢印20aで示す回転機能が実現される。一方、つがい部22は、照明出力部9aに対して更に、図中の矢印20bの方向の回転や矢印20cの方向の位置変化の機能を与えるためのものである。このような構成により、画像音響出力部10に照明出力部9aを取り付けたままで、照明出力部9aの光の方向を変化させることができる。
なお、凹部21やつがい部22は、図13に記載されている形状に関わらず、図中の矢印20a、20b、或いは20cの方向での回転や位置変化を可能とする限りは、他の任意の構成であってもよいことは言うまでもない。
照明出力部9a及び9bの制御にあたっては、それぞれを別個の制御回路で制御しても、1回路で両方を制御しても良い。更に、照明出力部9a或いは9bは、鑑賞者から見えない位置に配置されることが好ましい。また、発光部23を隠す遮光板を設けても良い。
(第6の実施形態)
図14及び図15を参照して、本発明の第6の実施形態における照明装置を説明する。
図14の照明装置は、テレビ額縁用照明器具24を構成する。この照明器具24は、テレビ画面周辺の額縁部に取り付けるタイプの照明器具であり、RGBのLEDや冷陰極蛍光ランプなどの光源と導光板とで、構成されている。光源としては、現時点で市場にあるか、或いはこれから実用化されていく何れのタイプの光源であっても使用可能であって、例えば、照明出力部の前面にELパネル(有機ELを含む)などの面発光体などを光源として設けても良く、或いは、光色が任意に変えられる液晶パネルなどディスプレイ自身を光源として用いてもよい。更に、画像表示装置のCRTなどからの漏れ光を導光する方法でもよい。
何れの手段をとった場合でも、この照明器具24は、臨場感を向上する本発明の照明制御方法に従って、画像表示装置の画像に連動して発光面の光色や輝度などが制御される。
また、このとき、発光色モードの照明器具24を疑似発光色モードの画像表示装置の画面の周辺に取り付けることにより、疑似発光色モードの画像表示装置の画面に映し出された画像が発光色モードの額縁で閉じ込められて、物体色モードになる。そのため、茶色などの物体色モードにのみ存在する色が、従来の画像表示装置の画面で見るより、より本来の茶色らしく見える効果が得られる。
一方、図15の照明装置は、テレビ側面用照明出力部25を構成し、RGBのLEDや冷陰極蛍光ランプなどの光源をテレビ本体の側面に取り付ける構造である。この照明器具25も、臨場感を向上する本発明の照明制御方法で制御されて、画像表示装置の周辺視野を照明する。
なお、図14のテレビ額縁用照明器具24、及び図15のテレビ側面用照明器具25の何れも、画像表示装置の本体に埋め込むなどして画像表示装置と一体化にした形態であってもよく、或いは、画像表示装置の本体に別個の装置として取り付ける形態でもよい。
(第7の実施形態)
図16に、本発明の第7の実施形態における照明装置として、プロジェクタ型照明出力部26、すなわちプロジェクタの形態をした照明装置を示す。
従来のプロジェクタは、液晶パネルなどを透過した光をレンズで集光し、スクリーン面などに投影する。このような従来のプロジェクタでは、光の利用効率を高めるとともに、画像28の周辺には光を漏らさないようにするために、レンズの光学設計に困難を伴う。しかし、実際には、レンズでは完全に集光できずに、プロジェクタ内で無駄に漏れたり、浪費されたりしている光が多いのが、現状である。
これに対して、本実施形態のプロジェクタ型照明出力部(プロジェクタ型照明装置)26では、そのような光を無駄にせず、臨場感向上照明画像29としてスクリーン面に適切に放出することにより、その画像の臨場感を高めることができる。また、室内にも、室内照明用発光面27のような乳白板を貼った窓を介して放出する。これらの放出する光は、本発明による高臨場感照明制御アルゴリズムに従って、制御される。
(第8の実施形態)
図17(a)及び(b)を参照して、本発明の第8の実施形態における照明装置の照明出力部の構成を説明する。
図17(a)の各照明出力部30〜32は、それぞれ、図5Aに示した各視野部を照明するために設置されている。すなわち、有効視野部用照明出力部30は有効視野部を照明し、誘導視野部用照明出力部31は誘導視野部を照明し、補助視野部用照明出力部32は補助視野部を照明する。
これらの各照明出力部30〜32と従来の壁面用照明器具とが異なる点は、従来の壁面用照明器具が壁面をなるべく均一に効率的に照明するような配光を有しているのに対して、本実施形態の照明出力部30〜32では、鑑賞者の有効視野中心にあたるTVなど画像音響出力部10の背後の壁面を、鑑賞者の視線高さ(=TV画面の中心付近)で最大照度になるように照明する配光を持つ点である。このため、本実施形態の各照明出力部30〜32は、図17(b)に断面図を示すように、略放物線形状の集光反射板34を備えている。
また、前述の照明印象の理論に基づき、鑑賞者から鑑賞空間の光源及び発光部の位置が分からないように隠した方が効果があると考えられるため、遮光ルーバー35を設置している。光源部33から放射された光は、直接、或いは集光反射板34で反射集光され、遮光ルーバー35で光の方向を制御されて、各視野部に向かって照射される。鑑賞者からは、全ての照明出力部30〜32の発光部33が見えないため、照明出力部30〜32の存在は確認できても、それが発光しているかどうかはわからない。
各照明出力部30〜32への信号は、天井裏の配線を介して送られるが、TVの配置が変更されても、つまり、各視野部の位置関係が変更されても、配線を物理的に変更することなく、制御装置のアドレスを変更するだけで、簡便に仕様変更が可能である。但し、このためには、予め各照明出力部30〜32をなるべく均一な間隔で壁際の天井に設置しておくことが望ましい。また、制御信号の送信は、赤外線や電波を用いてコードレスにすることで、設置や配置変更に簡便に対応できる。
なお、各照明出力部としては、従来の壁面照明器具を用いることもできる。但し、従来の壁面照明器具の中から選定する場合、照明制御が可能であること、鑑賞者から発光部が見えないように十分遮光された配光を持つこと、を条件にして選定することが望ましい。
また、図中には詳細を記述していないが、人間の有効視野は、高い視機能を有するため、特に、有効視野部の照明をより充実させると更に効果が上がる。具体的には、画像音響出力部10の周辺部にLEDやその他のディスプレイ用素子を多数取り付けて、画像が、その外の壁面にまで延長しているかのように見えるように制御するとよい。
また、鑑賞者に向かって指向性の高い光が照射されているような状態を実現するためには、有効視野部用照明器具30の付近にスポット照明器具を取り付けて、画像の様子に応じて点滅すれば、迫力が高まる。このスポットが光色可変機能を有していれば、更に効果は高まる。
(第9の実施形態)
図18及び図19(a)〜(c)を参照して、本発明の第9の実施形態における照明装置として照明器具を説明する。
図18の照明器具は、光色が任意に変化できる発光部23を有する光色可変照明器具36である。大掛かりな照明装置がなくても手軽に家庭で楽しめるように、個々の照明器具36が、電気スタンドのように任意の位置に立てて置くことができる形態をしている。図18では、例として、図5Aの有効視野、誘導視野、及び補助視野の各々に対応する位置に、照明器具36を一つずつ配置した状態を示している。
この照明器具36には電源線がなく、充電式の電池が内蔵されている。また、信号線もなく、照明制御部8から、赤外線などによってコードレスにて信号が送られる。但し、電源線及び信号線をそれぞれ有線で設けても良いことは言うまでもない。
また、照明印象の考え方に従って、照明器具36の発光部23が鑑賞者から見えないようにするために、光色可変照明器具36を、画像音響出力部10や室内の家具などの背後に設置したり、遮光板37を光色可変照明器具36の前に置いて遮光するなどすることにより、更に臨場感向上効果が増す。遮光版37は、乳白アクリル板などの拡散透過性の板でもよい。
上記のような特徴を有する個々の光色可変照明器具36を、本発明による高臨場感照明制御方法に従って制御することにより、鑑賞者は、家庭で手軽に高臨場感の画像を楽しむことができる。
更に、図19(a)〜(c)は、発光部23の具体的形態を示したものである。図示されるランプ状の発光部23の構成は、一例として電球代替の形態を示したもので、エジソンベースの口金42を有している。口金42に設けられた拡散板41の中には、赤色発光部38、緑色発光部39、青色発光部40が内蔵されている。これらの各色の発光部38〜40は、照明制御部から送られてきた制御信号を受けて発光強度レベルが調整されて、各色の発光部38〜40から照射された色光が拡散板41で混色されて、室内に照射される。
赤色発光部38、緑色発光部39、青色発光部40は、図19(a)のように現在、表示装置に使用されているような発光素子の形態に類似した構成を有していても良く、或いは、図19(b)のように、各発光部38〜40が発光管の形態を有している電球代替型蛍光ランプの形態に類似した構成を有していても良い。
なお、赤、緑、青の各発光部38〜40の大きさ及び形状はお互いに同じである必要はなく、ランプの外形を小型化するために、適宜、それらの大きさや形状を変えてもよい。例えば、一般に緑色の蛍光体は発光効率が良いのに対して青色の蛍光体の発光効率が悪いため、図19(c)に示したように(口金は省略している)、青色発光部40を他の発光部38及び39より大きしてもよい。これによって、各発光部38〜40が、拡散板41の内部に効率的に収納される。
なお、発光部23に含まれる口金は、図示されるような電球代替型の形状に限られるものではなく、どのような形態の口金であっても良い。
(第10の実施形態)
図20を参照して、本発明の第10の実施形態における照明装置を説明する。
本実施形態の照明装置として天井に設置された照明器具45は、複数の指向性の高い発光部から構成されている。各発光部は、任意の光色に変化できる。各発光部は指向性が高いため、天井から各壁面に向けて(図中の矢印の方向に)、まるで画像を投影するように、様々な光の変化を演出できる。発光部としては、プロジェクタ状の構成やLEDなどの発光素子を使用した構成など、任意の形態を使用することができる。現在のLEDは出力レベルが低いため、このような照明器具45に応用するには、非常に多数のLEDを用いなければならないが、今後の技術革新によりLEDの大幅な出力向上が期待できるため、将来の適用の可能性が高い。
この照明器具45を、本発明による高臨場感照明制御技術に基づいて制御することにより、鑑賞者49は、あたかも仮想画像空間の中に存在するかのような錯覚を感じる。我々の実験により、画像の臨場感を高めるためには、光だけでなく陰影のあり方も重要であることが明らかになったため、この図では、仮想画像空間における影46と鑑賞空間の影47とが連続しているように、また、鑑賞者49の影48が仮想画像空間の照明印象に矛盾が生じないように、影47及び48を生じさせている。このような演出により、鑑賞者49は、画像音響出力部(画像表示装置、図示される例では壁掛けTV)50の画像に映し出された南の海で今にもサーフィンを始めようと思うほど、高い臨場感を味わうことが可能である。
(第11の実施形態)
本発明による照明装置は、例えば図21に示すように、電話やインターフォン、更には移動体通信機器や家電製品に連動して制御される構成を有していても良い。この場合には、照明装置を制御する信号は、電話、インターフォン、移動体通信機器、或いは家電製品から、直接に或いはコンピュータを介して、照明装置に伝送され、伝送された信号に応じて、照明装置が制御され、照明が変化する。例えば、電話がかかってきたときや来客がインターフォンから連絡してきたときなどに、照明光を変化して知らせることが可能である。
図22(a)及び(b)には、有線回路や無線回路によるデータ回線を用いて構成される本発明の構成を模式的に示している。
図22(a)の構成では、インターネットや移動体通信機器から、データ回線を通して、映像音響データや映像音響照明データがコンピュータに伝送される。伝送されたデータは画像音響照明再生装置で再生され、照明データは、照明制御部を介して照明出力部(照明器具)から出力される。インターネットや移動体通信機器から送られたデータが映像音響データである場合には、コンピュータに伝送された後に、コンピュータに設置された処理ボードやソフトウエアなどによって画像音響データを解析し、その結果に基づいて照明データを生成することも可能である。或いは、画像音響照明データをデータ記録デバイスに記録しておいて、所望のときに再生する構成としても良い。
図22(b)では、コンピュータ(例えばノート型パソコン)に対して、インターネットや移動体通信機器から有線回路や無線回路によるデータ回線を介して、或いはCD−ROMやDVD−ROMなどの記録媒体を用いて、必要なデータを提供するように構成された本発明の構成を模式的に示している。特に、図22(b)の構成では、照明制御部や照明出力部を含む照明器具がコンピュータに組み込まれている点である。これによって、図中に同心の楕円で描いているような状態で、照明の配光が提供される。
(第12の実施形態)
図23(a)には、本発明の第12の実施形態における照明装置の構成のブロック図を示す。本実施形態の照明装置は、画像音響照明受信部111、画像音響照明再生部106、画像音響照明記憶部112、画像音響照明制御部114、及び画像音響照明出力部110を含む。また、図23(b)には、上記のブロック図に基づいて構成される照明装置の中の、特に画像音響照明出力部110の構成を模式的に示す図である。
画像音響照明制御部114は、画像信号、音響信号、照明信号を入力し、画像信号が画像されるタイミングに同期して音響信号、照明信号を出力する機能を有する。画像音響照明出力部110の中の照明出力部109は、ひとつ以上のランプ及び点灯回路が内蔵され、照明信号を入力し、その信号に基づいて照明光の光度及び配光と色温度が自在に変化できる機能を有する。画像信号は、少なくとも、各画像の各画素の色信号と輝度信号とを示す。信号の方式や信号の順序は、どんな形態でもかまわない。
画像音響照明受信部111で受信されるか、或いは画像音響照明再生部106で再生されて供給される画像信号、音響信号、及び照明信号は、画像音響照明記憶部112に一端記憶されるた後に、或いは記憶されずにそのまま、画像音響照明制御部114に入力され、画像が映し出されるタイミングと同期するように、画像信号及び音響信号が画像出力部107及び音響出力部108にそれぞれ送信され、一方、照明信号が照明出力部109に送信される。これにより、画像を鑑賞している在室者は、画像出力部(例えばテレビ)107、音響出力部108、及び照明出力部(照明器具)109から同期して出力された画像、音響、照明によって、高い臨場感を感じながら、画像出力部107に映し出される画像を楽しむことができる。
なお、本発明の照明装置は、画像音響照明信号が画像音響照明制御部114に入力されれば、その画像と画像の臨場感を高める照明光とを制御できるため、画像音響照明受信部111及び画像音響照明再生部106の両方を必ず備える必要はなく、両者のうちの少なくともどちらか一方があればよいことはいうまでもない。
また、音響を必要としないときは、図23(a)及び(b)に示される各構成要素が音響の処理する機能を有する必要がないことは、言うまでもない。
更に、画像音響照明受信部111、画像音響照明再生部106、画像音響照明記憶部112、画像音響照明制御部114、及び画像音響照明出力部110の各々が別個の装置として構成されていてもよく、或いは、例えば画像音響照明受信部111と画像音響照明再生部106とが画像音響照明受信再生部となるように、2つ以上の構成部分が一体的に構成されている形態であってもよい。
画像音響照明照明制御部114は、1回路だけでなく複数の回路を用いて複数の出力部を制御しても良い。更に、画像音響照明出力部110のうちの照明出力部109は、鑑賞者から見えないように隠すとなおよい。
図24には、上記の画像音響照明受信部、画像音響照明再生部、画像音響照明記憶部、画像音響照明制御部、及び画像音響照明出力部を全て一体化して構成される照明装置120の構成を、模式的に示している。なお、図中では、画像音響照明出力部に含まれる画像出力部107、音響出力部108、及び照明出力部109、更に再生部106の配置を模式的に示すために、照明装置120の正面図、側面図、及び上面図を描いている。
このように各部が一体化された装置120は、テレビ・ビデオ一体型装置として既に製品化されて、広く使用されている。このような一体化された装置120は、使用時の配線作業が不要になるために有用である。但し、本実施形態における一体化装置120は、従来の構成に更に照明出力部109を一体化した構成を有していて、画像に対する向上した臨場感を提供することができる。なお、鑑賞者からみて照明出力部109を画像出力部107や音響出力部108の背後に配置すれば、照明出力部109が鑑賞者から見えなくなって効果的であるとともに、画像の背景部や周辺部にも照明光を出力できるので、効果的である。
図25(a)及び(b)には、画像出力部の出力を照明光の出力として使用することができる構成を、模式的に示している。図25(a)は、この構成の側面図であって、画像表示部107に加えて、更に導光部121及び画像制御部122が順に設けられている。画像制御部122によって、入力された画像信号はRGB出力に変換され、画像表示部107で画像が表示される。
画像からの光のうちで鑑賞者の眼に実際に届く部分は、画像出力部107のデバイスによって異なるが、RGB出力全体の数%に過ぎない。そこで、図25の構成では、これらのRGB出力のうちで画像表示に実際に使用されていない光を効率的に取り出して、画像周辺部の照明に使用している。具体的には、RGB出力の一部が導光部121によって画像周辺部に導かれて、画像出力部107の周辺を照射する光123として使用される。
図26は、他の一体化構成の例として、ゴーグルタイプの画像出力部132の左右端及び上下端に光源131が配置されている構成を、模式的に描いている。光源131としては、例えばLED光源を使用することができる。ゴーグルタイプの画像出力部132に組み合わされた図示される構成では、鑑賞室内の照明が不要になるために、低い光出力で、これまでに説明した効果を得ることができる。
なお、光源131としては、上述したLED光源の他に、冷陰極蛍光ランプなどの他の小型光源を使用可能である。
更に、図27(a)及び(b)には、音響出力部(スピーカ)108と照明出力部(光源)109とが一体化された構成の側面図及び正面図を、模式的に描いている。鑑賞者からみて、音響出力部108の背後に照明出力部109が配置されており、鑑賞者からは、図27(b)に模式的に描かれるように、照明出力部109が音響出力部108で隠された状態で、その出射光143のみが見えて、向上された臨場感効果が得られる。
(第13の実施形態)
本発明の照明装置に含まれ得る光源、或いは照明器具は、照明に使用される光の状態を制御するために、図28(d)に示すような光色可変制御部、配光可変制御部、及び方向可変制御部の中の1つ、或いは2つ以上を組み合わせて有することができる。
図28(a)は、上記の3つの制御部の中の何れか一つ(「A制御部」と表記)を有する光源の構成、図28(b)は、上記の3つの制御部の中の何れか2つ(「A制御部」及び「B制御部」と表記)を有する光源の構成、図28(c)は、上記の3つの全ての制御部(「A制御部」、「B制御部」、及び「C制御部」と表記)を有する光源の構成を、模式的に描いている。これらにおける「A制御部」、「B制御部」、及び「C制御部」とは、図28(d)に示す光色可変制御部、配光可変制御部、及び方向可変制御部の中の何れかに対応する。
更に、図28(e)〜(k)には、光源に更に付加され得る機能を別個に描いている。図28(e)の受信部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を受信する機能を有する。図28(f)のデータ解析部は、受信した画像信号及び/或いは音声信号を解析して、所定の照明信号を生成する機能を有する。図28(g)のデータマッピング部は、受信した画像信号及び/或いは音声信号を、あらかじめ記憶されている照明信号と対応させて(マッピングして)、所定の照明信号を選定する機能を有する。図28(h)のセンサ部は、照明制御に有用な各種の出力値を測定する機能を有する。図28(i)の再生部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を再生する機能を有する。図28(j)の記憶部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を記憶する機能を有する。図28(k)の送信部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を、離れて位置する他の装置(例えば、離れて位置する各出力部など)に送信する機能を有する。
これらの中の一つ或いはそれ以上を適切に光源に組み込むことによって、それらの機能が光源に付加される。
なお、上記のような光源を照明器具として構成する場合には、例えば図29(a)〜(c)に模式的に示すように、上記で説明した構成を適切な外囲器の中に収納すればよい。このとき、光源の発光部及び制御部を、図29(a)〜(c)に描かれているようにそれぞれ別個の外囲器151及び152に収納しても良く、或いは、一体化された外囲器の中に全体を収納しても良い。
(第14の実施形態)
本実施形態では、テレビなどの画像表示装置(画像音響出力部)に映し出されている映像に対して連動すると共に、その映像を鑑賞している鑑賞者の感情や気分にも連動させて照明を制御することができる照明装置の構成を説明する。
図30は、この照明装置の構成を模式的に示すブロック図である。具体的には、この照明装置は、画像音響受信部161、画像音響再生部166、鑑賞者の生体・感情情報の測定部165、画像音響及び生体・感情情報記録部162、画像音響及び生体・感情情報解析部163、及び画像音響照明制御部164を含む。
画像音響受信部161及び画像音響再生部166の機能は、それぞれ、これまでの実施形態の中で説明した対応する構成要素の機能と同様であり、ここではそれらの説明は省略する。
画像音響受信部161或いは画像音響再生部166から供給される画像信号及び音響信号、並びに生体・感情情報測定部165から供給される情報信号は、画像音響及び生体・感情情報記録部162に一旦記録された後で、或いは記録されずにそのまま、画像音響及び生体・感情情報解析部163に送られる。画像音響及び生体・感情情報解析部163では、受け取った信号の一部或いは全部を解析して、画像の臨場感を高められる照明条件が算出されて、照明器具を制御するために必要な照明信号が生成される。
画像信号、音響信号、照明信号は、画像音響照明制御部164に入力され、画像が映し出されるタイミングと同期するように、画像信号及び音響信号が画像音響出力部170に送信され、一方、照明信号が照明制御部178を経て照明出力部169に送信される(図31A〜図31Cを参照)。これにより、画像を鑑賞している在室者は、画像音響出力部(例えばテレビ)170及び照明出力部(照明器具)169から同期して出力された画像、音響、照明によって、高い臨場感を感じながら、画像音響出力部10に映し出される画像を楽しむことができる。
鑑賞者の生体・感情情報の測定部165としては、例えば図31A、図31B、及び図31Cに示すように、鑑賞者の脳電位や各種の生体リズムを測定する脳電位・生体測定部175を設けることができる。これらの測定によって、鑑賞者の感情をモニタすることができる。具体的には、図31Aには、脳電位・生体測定部175が鑑賞者に対する必要な測定を有線で行う構成が描かれており、一方、図31Bには、脳電位・生体測定部175が鑑賞者に対する必要な測定をワイヤレスで行う構成が描かれている。更に、図31Cの構成では、鑑賞者の脳電位や各種の生体リズムをワイヤレスで測定した上で、測定データを受信する受信部171を、画像音響出力部170((1)の場合)、鑑賞室の内部の適切な箇所((2)の場合)、或いは照明出力部(照明器具)169((3)の場合)などに設置して、これを介して脳電位・生体測定部175が必要な測定データを獲得する。但し、図31Cの構成における受信部171の設置個所は、図中に(1)〜(3)として描いたような位置に限られるわけではなく、任意の位置に配置できる。
測定対象となり得る脳電位としては、例えば、α波、β波、γ波、θ波などの波長分析されたデータの出現率、或いは測定されたままの状態での脳波データ、更にはλ波といった事象関連電位など、全ての脳電位が含まれる。また、測定対象となり得る各種の生体リズムとしては、心拍数、血圧値、呼吸数、筋電位値、眼球の運動、サーカディアンリズムなど、全ての生体リズムが含まれ得る。これらに対する測定方法及び測定装置としては、関連する技術分野で公知の任意の技術を用いることができる。
更に、図32には、上記に加えて音声情報に応じた照明の制御も可能にする照明装置の構成のブロック図を、模式的に示す。具体的には、図32の照明装置の構成は、図30に示した構成に更に音声情報測定部185が付加されている。これに伴って、図30の構成における画像音響及び生体・感情情報記録部162、並びに画像音響及び生体・感情情報解析部163は、それぞれ、音声測定部で測定された音声情報の処理もできる記録部182及び解析部183となる。但し、これらの記録部182及び解析部183を含めて、図32の構成に含まれる各構成要素の機能や特徴は、図30の構成に含まれる対応する構成要素と実質的に同様であって、ここではそれらに関する説明を省略する。
音声情報とは、鑑賞者が発する言語などを示す。従って、画像信号や音響信号とは別個に、音声情報のみに対応するように、独立して照明が制御されることが多い。例えば、先に説明したような鑑賞者の好みに応じて照明制御方法が選択できるスイッチ機能において、音声情報を認識して照明を制御することが、この構成で可能になる。
なお、本実施形態の照明装置においても、画像信号が入力されれば、その画像と画像の臨場感を高める照明光とを生成できるため、画像音響受信部及び画像音響再生部の両方を必ず備える必要はなく、両者のうちの少なくともどちらか一方があればよいことはいうまでもない。
また、音響を必要としないときは、上記で説明した構成における画像音響受信部や画像音響再生部などの各々が、音響の処理する機能を有する必要がないことは言うまでもない。
更に、図示した構成に含まれる各構成要素が別個の装置として構成されていてもよく、或いは、例えば画像音響受信部と画像音響再生部とが画像音響受信再生部となるように、2つ以上の構成部分が一体的に構成されている形態であってもよい。
照明制御部は、複数の回路を用いて複数の照明出力部を制御しても良い。更に、照明出力部は、鑑賞者から見えないように隠すとなおよい。
(第15の実施形態)
図33は、本実施形態の照明装置の構成を模式的に示すブロック図である。具体的には、この照明装置は、画像音響照明受信部261、画像音響照明再生部266、鑑賞者の生体・感情情報の測定部165、音声情報測定部165、センサ部191、データ記録部192、データ解析部193、及び画像音響照明制御部164を含む。
画像音響照明受信部261及び画像音響照明再生部266の機能は、それぞれ、先の実施形態の中で説明した画像音響受信部161及び画像音響再生部166の機能とほぼ同様であるが、更に照明信号の受信や再生処理ができるように構成されている。センサ部191は、照明信号の生成に必要となり得る任意の情報信号を測定する機能を有する。生体・感情情報測定部165及び音声情報測定部185の機能は、先の実施形態における対応する構成要素の機能とそれぞれ同様であり、ここではそれらの説明は省略する。
図33の構成では、画像音響照明受信部261、画像音響照明再生部266、鑑賞者の生体・感情情報の測定部165、音声情報測定部165、及びセンサ部191のうちの何れか一つ、或いは複数から転送されたデータが、データ記録部192に一旦記録された後で、或いは記録されずにそのまま、データ解析部193に送られる。データ解析部193では、受け取った信号の一部或いは全部を解析して、画像の臨場感を高められる照明条件が算出されて、照明器具を制御するために必要な照明信号が生成される。或いは、解析部193による解析の結果として照明信号を生成する代わりに、受信部261或いは再生部266で受信或いは再生された照明信号を、そのまま使用しても良い。
画像信号、音響信号、照明信号は、画像音響照明制御部164に入力されて、これまでの各実施形態で説明してきたものと同様の手法によって、照明装置が制御される。
一方、図34には、図33の構成におけるデータ解析部193をデータマッピング部194で置き換えた構成を示している。データマッピング部194は、受け取った各種のデータを、あらかじめ記憶されている照明信号と対応させて(マッピングして)、所定の照明信号を選定する。
このような構成によっても、本発明の照明制御方法に従った照明制御の実行によって、これまでに説明したような臨場感効果の向上という効果を得ることができる。
なお、本実施形態の照明装置においても、画像信号が入力されれば、その画像と画像の臨場感を高める照明光とを生成できるため、画像音響受信部及び画像音響再生部の両方を必ず備える必要はなく、両者のうちの少なくともどちらか一方があればよいことはいうまでもない。
また、音響を必要としないときは、上記で説明した構成における画像音響受信部や画像音響再生部などの各々が、音響の処理する機能を有する必要がないことは言うまでもない。
更に、図示した構成に含まれる各構成要素が別個の装置として構成されていてもよく、或いは、例えば画像音響受信部と画像音響再生部とが画像音響受信再生部となるように、2つ以上の構成部分が一体的に構成されている形態であってもよい。
照明制御部は、複数の回路を用いて複数の照明出力部を制御しても良い。更に、照明出力部は、鑑賞者から見えないように隠すとなおよい。