JP4176086B2 - 木材成形品の製造方法 - Google Patents
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一般に木材は、細胞壁が木の伸長方向に延びた木質繊維の集合体であるため、繊維方向と繊維方向に直交する方向とでは、強度に著しい異方性が存在する。例えば木材を繊維方向と直交する軸回りに曲げると、木質繊維には主として引張力が作用するため比較的高強度となっているが、繊維方向に平行な軸回りに曲げると、木質繊維間が容易に引き裂かれるために割れが生じる。
そのため、成形時に木質繊維間に働く引張力により、木質繊維が引き裂かれないようにするために予め木質繊維間を1次圧縮したブランク板材を形成してから、さらに2次圧縮を行って成形することが知られている。
例えば、特許文献1には、角棒状の製材を繊維方向と直交する方向に圧縮してからスライスすることで板状の一次固定品を形成し、その外周を拘束した状態で成形金型に取り付けて、加熱・吸水処理、成形処理を行い、3次元形状を有する二次固定品を得る木材の加工方法が記載されている。
また特許文献2には、同じく繊維方向に直交する方向に圧縮してからスライスした板材を繊維方向と平行な軸回りに曲げて、その状態に仮固定し、曲げの凸方向をプレス型の凸方向に合わせて三次元成形を行う木質材の三次元加工方法が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、3次元形状に曲げられた外周側では、金型に沿って予め圧縮された木質繊維間が圧縮を解除されることにより延びることができるため、二次固定品を成形する2回目の圧縮成形で繊維間の引き裂きが起こらないものの、脱型後の製品の圧縮率が不均一となり、強度の異方性や圧縮率の相違による変色などが生じるという問題がある。
また、木材は、樹脂とは異なり収縮変形は比較的容易であるが、流動体でないため、引張り力に対する伸び変形が難しく、圧縮力と交差する方向への滑り変形も木質繊維の方向により著しい異方性を示す。つまり変形しやすい方向が制約されてしまう。そのため、3次元形状に成形する際、変形しにくい方向に圧縮される部位での圧縮抵抗が大きくなる。例えば、特許文献1の技術でも予め圧縮されていない方向であって、木質繊維を折り曲げる方向の成形では圧縮抵抗が大きくなってしまう。
また、例えば函状の圧縮成形では、函の側面部を金型のスライド方向と直交する方向に圧縮する必要があるが、一方向にスライドする金型ではそのような圧縮力成分は小さくなってしまうので、函の側面部からの圧縮抵抗が大きくなるという問題がある。そのため、大きなプレス力を必要としたり、そのような方向の圧縮面に激しい擦れが生じて外観を損なわれたりするといった問題がある。
この場合、函の底部だけでなく函の側面部の法線方向にもスライドする多方向のスライド金型を用いることも考えられるが、その場合、金型の製造コストが増大するとともに成形工程が複雑化するという問題がある。
特許文献2に記載の技術では、特許文献1と同様な作用を有するとともに、曲げた状態で仮固定してから3次元成形を行うことで、成形中の折り曲げに伴う形状変化を低減することができるため、成形時の歪み変化を比較的低減できるものの、脱型後の製品に強度の異方性が残存する点、2次圧縮において、スライド方向に略直交する方向に厚みを有する板面の圧縮抵抗が大きい点は、特許文献1の場合と同様である。
この発明によれば、1次圧縮工程において1次ブランク部材の一部に最終的な3次元形状と略同形状を転写して、その近傍に高圧縮部を形成した1次圧縮品を加工するので、比較的圧縮抵抗が少ない状態で1次圧縮品に3次元形状を転写することができる。そして、2次ブランク加工工程では、その3次元形状を表面に残しつつ、切削加工して2次ブランク部材を形成し、その2次ブランク部材を2次金型により圧縮して最終的な3次元形状を転写する。したがって、2次ブランク部材の形状を適宜調整することにより、2次圧縮工程で成形する3次元形状の圧縮抵抗、圧縮量を低減することができる。そのため、2次圧縮工程におけるプレス力を低減することができる。また木材に対する成形負荷が軽減され、割れなどを防止できる。
また、1次圧縮品に形成され2次ブランク部材に残された3次元形状は、1次圧縮工程において比較的圧縮抵抗が少ない状態で成形されるため表面の外観に優れており、2次圧縮工程において2次金型の3次元形状に略沿って圧縮されるために、例えば2次圧縮による金型との擦れなどにより外観が劣化することなく再圧縮することができる。
この発明によれば、2次ブランク加工工程において、1次圧縮品に形成された高圧縮部が相対的に厚い(薄い)部位では、2次ブランク部材の板厚が薄く(厚く)なるように切削加工するので、2次ブランク部材を2次圧縮工程で圧縮する際、予め形成された高圧縮部近傍の2次圧縮工程での圧縮率が相対的に小さくなり、全体として、圧縮率の均一性が良好な木材成形品を製造することができる。
この発明によれば、2次ブランク部材を、2次金型のスライド方向に厚みを有する部分で肉厚が厚く、スライド方向に交差する方向に厚みを有する部分で肉厚が薄くなるように切削加工するので、2次圧縮時に、スライド方向に交差する方向に厚みを有する部分の圧縮力の成分が低減され、圧縮抵抗を低減することができる。そのため、一方向にスライドする金型でも形3次元形状の成が容易となる。
この発明によれば、スライド方向に略直交する方向の底部の周辺からスライド方向に向かって屈曲された側面部の形状と略同形状を、1次圧縮工程において高圧縮部として転写するので、一方向へのスライドにより圧縮成形を行う金型構造の場合に木材の成形性が悪化しやすい側面部の形状が1次圧縮工程で精度よく形成され、2次圧縮工程で劣化されることなく再圧縮される。
本発明の実施形態に係る木材成形品の製造方法について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る木材成形品の製造方法で製造された木材成形品について説明するための斜視説明図である。図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。図2(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る木材成形品の製造方法の1次圧縮工程について説明するための断面説明図である。図3(c)は、同じく2次ブランク加工工程について説明するための断面説明図である。図3(d)、図4は、同じく2次圧縮工程が完了した状態について説明するための断面説明図である。図2〜4の各断面説明図の断面方向は、いずれも図1のA−A線に沿う断面である。
以下、図1(a)、(b)に示すような木材成形品1を例にとって説明する。
このような木材成形品1の形状を以下では、最終的な3次元形状と称する。
底部1a、側面部1b、1c、1d、1eは、それぞれの板厚が異なっていてもよいが、本実施形態では、一定厚さtであるとして説明する。また、木材成形品1の底部1aから上側開口部1fまでの高さはHである。ここで、H>tである。具体的な寸法の例としては、例えば、t=1.6mm、H=8mmといった寸法などが好適である。この場合には、高さHは厚さtの5倍であり、函形状の深さとしては厚さtの4倍となる。
なお、木材は、空孔を有する木質繊維からなり、またそれらの粗密により木目、節などが形成されており、微視的に不均一な構成を有する。したがって、密度とは、巨視的な意味で用いており、乾燥時における見かけ上の平均的な密度のことを意味する(以下も同様)。
木材の種類としては特に限定されない。例えば檜、檜葉、桐、チーク、マホガニー、杉、松、桜、竹などを好適に採用することができる。
なお、以下の説明では、図1のA−A線に沿う断面説明図で説明するため、断面図に現われない側面部1b、1dなどには言及しないが、特に断らない限り、例えば側面部1c、1eについて成り立つことは側面部1b、1dについても成立する。これらの間には、幅形状の違いと、木材からの切り出し方向による繊維方向に対する向きの違いがあるだけである。
すなわち、1次ブランク部材2を、最終的な3次元形状の一部に略沿う形状の金型面が少なくともいずれかに形成された1次金型10A、10Bに対してセットし、1次金型10A、10Bを図示上下方向にスライドし、1次ブランク部材2を上下方向に圧縮する(図2(a)参照)。
このとき、1次ブランク部材2を軟化させるために、例えば120℃〜200℃程度の高温高圧水蒸気を噴射しつつ圧縮を行う。または、40℃以上の熱湯で所定時間煮沸した後、120℃〜200℃程度の高温高圧環境下で圧縮を行ってもよい。また、1次金型10A、10Bも同等の温度に加温することが好ましい。
また、1次金型10Bは、金型ベースから平面視矩形状の突起部10cが突出され、その中央に最終的な3次元形状の外面側に略沿う3次元形状が形成された金型面10bを備えている。
つまり、1次ブランク部材2は、金型面10bおよび突起部10cの形状に応じて、部位により不均一な圧縮力を受ける。
そして、突起部10cから離れた部位では、図2(b)に示すように、厚さH0の1次ブランク部材2が略厚さH1(ただし、H1<H0)となる略一定の圧縮率での圧縮が進行する。ここで、厚さH1は、厚さH0の2/3程度であることが好ましい。つまり相対的な低圧縮率の一例としては、33%程度とすることが好ましい。
木材成形品1に必要とされる密度を超えそうな場合には、例えばそのような部位に対応する金型面10aに適宜の逃げ形状を設けておくとよい。
また、突起部10cの近傍に高圧縮部20aが形成されるものの、隣接する大部分の領域には低圧縮部20bが形成されるので、高圧縮部20aのみが1次金型10A、10Bに挟持されて形成される場合に比べて、高圧縮部20aに対する変形負荷が低減され、木質繊維の割れや金型面に対する擦れの発生を防止できる。
1次金型10A、10Bは、スライド方向が一方向のもっとも簡素な金型であり、高精度で複雑な形状を有する金型面も一部に限られるため、簡素な金型となっている。
2次ブランク部材21は、1次圧縮品20から、図示側方の部分を切除し、金型面10aに当接した(図示上面)側から底部1次成形面21aから高さHまで平面切削して開口側端面21gを形成し、その内側に凹穴状の切削加工面21fを形成したものである。図3(c)において、切除部などは二点鎖線により示している。
すなわち、木材成形品1と同様なタイプの開口を有する函状の構造体であり、その外面が木材成形品1の最終的な3次元形状と略同一とされ、内面が切削加工面21fにより形成されている。
例えば、図3(c)に示すように、2次ブランク部材21の底部では、高圧縮部20aが形成されないので、底部1次成形面21aからの厚さを、例えば最も厚い厚さt3(ただし、t3>t)とする。
このとき2次ブランク部材21の側面部では、高圧縮部20aの厚さが、底部1次成形面21a側から開口側端面21g側に向けて漸増しているので、例えば、開口側端面21gで厚さt1(ただし、t3>t1≧t)、切削加工面21fの底部近傍では、厚さt2(ただし、t3≧t2>t1)となるように切削加工する。本実施形態では、開口側端面21g近傍でほとんど高圧縮部20aとされているので、厚さt1は、t1=tとするか、またはt1>tとする場合でも2次圧縮時に木材の空孔が完全につぶれて圧縮不可能となるいわゆる限界圧縮率を超えない程度の値とする。
このように、切削加工面21fの側部は、開口側端面21gから底部に向かって側面部1次成形面21c、21eなどよりも緩やかに傾斜した傾斜面とされている。
そして、2次ブランク部材21の側面部では、高圧縮部20aは開口側端面21gに向けて漸増するのに対して、低圧縮部20bは同方向に向けて漸減する形状となっている。
厚さt1、t2、t3などの寸法、すなわち切削加工面21fを形成するための加工形状は、1次圧縮工程で形成される高圧縮部20aと低圧縮部20bとの密度分布を、例えば実験、数値シミュレーションなどにより調べておき、2次圧縮工程後に木材成形品1に必要とされる密度が得られるように設定することができる。
つまり、必要な板厚tおよび密度ρに対して、高圧縮部20aの厚さおよび密度が不足する量を調べ、それらを補う低圧縮部20bが残されるように切削加工面21fの形状を設定する。
したがって、切削加工面21fの形状設定により、木材成形品1の密度を一定にしたり、可変したりすることができる。木材の圧縮後の密度分布は、表面の着色分布となって現われるので、外観を重視する用途では、密度のバラツキが少ないようにすることが好ましい。
このとき、2次ブランク部材21を軟化させるために、例えば120℃〜200℃程度の高温高圧水蒸気を噴射しつつ圧縮を行う。または、40℃以上の熱湯で所定時間煮沸した後、120℃〜200℃程度の高温高圧環境下で圧縮を行ってもよい。また、コア金型30A、キャビティ金型30Bも同等の温度に加温することが好ましい。
図5は、本発明の実施形態に係る2次圧縮工程の作用について説明するための図1(a)のA−A断面視の模式的な動作説明図である。図6(a)、(b)は、従来の木材成形品の製造方法に係る圧縮工程の作用について説明するための図1(a)のA−A断面に相当する断面視の模式的な動作説明図である。
そして、さらにスライドされるにつれ、切削加工面21fの側部では、金型面30aの側面が金型面30aの先端側、すなわち切削加工面21fの側部の底部側から徐々に2次ブランク部材21を圧縮していき、最後に開口側端面21g近傍が圧縮される。
また、切削加工面21fの底部では、金型面30bから高さt3以下となってから底部全体で圧縮が進行する。
まず、図6(a)に示すように、木材を圧縮成形後の形状よりもやや大きい3次元形状に切削加工した3次元ブランク6を用いる場合について説明する。3次元ブランク6は、1次圧縮されていない場合でも、均一に1次圧縮された部材から切削する場合でも、本実施形態と比べて、3次元ブランク6の肉厚が厚くなる。例えば、底部の厚さT0はT0≧t3であり、側面部の厚さt6〜t7は、それぞれt6>t1、t7≧t2である。
また、3次元ブランク6を、コア金型30A、キャビティ金型30Bで圧縮する圧縮率が、本実施形態より大きくなり、それだけ大きなプレス力が必要となってしまう。
その結果、側面部での金型との擦れが大きくなるとともに、底部の圧縮率が不均一になり、いずれも木材成形品の外観を劣化させる原因となる。
図6(b)に示すように、ブランク平板5をコア金型30A、キャビティ金型30Bで圧縮成形する場合、まず金型面30aの先端でブランク平板5に当接しながら屈曲させる。このとき、屈曲部で割れなどが発生しやすい。
さらにスライドすると、略均一肉厚の成形を行う金型では、スライド方向に対して傾斜する金型面間では、スライド方向に直交する場合に比べてより急速に距離が狭まるから、底部に比べて側面部での圧縮が先行する。例えば、図6(a)において側面部の厚さt5、底面部の厚さT0とすると、圧縮過程でt5<T0である。
このため、底面部が十分圧縮される前に側面部で大きな圧縮抵抗が発生し、側面部が先行して圧縮される。そして、周辺部が拘束された状態で、底部が圧縮され、側面部および底部が著しく引っ張られながら圧縮される。
その結果、側面部での金型との擦れが大きくなるとともに、底部の圧縮率が不均一になり、いずれも木材成形品の外観を劣化させる原因となる。
また、1次圧縮工程で、未圧縮の状態から圧縮抵抗が少ない状態で木材を圧縮して一部の3次元形状を略形成しておくので、2次ブランク部材に高品質の圧縮面を形成することができるとともに、2次ブランク部材の切削量を低減できるので、2次ブランク部材の製造が容易となるという利点がある。
また上記の説明では、1次圧縮工程に用いる1次金型10Bと2次圧縮工程に用いるキャビティ金型30Bとを別部材としたが、1次金型10Bの金型面10bの形状が木材成形品1の最終的な3次元形状と全く同形状である場合は、2次圧縮工程に用いるキャビティ金型として1次金型10Bを流用してもよい。
1a 底部
1b、1c、1d、1e 側面部
1f 上側開口部
2 1次ブランク部材
10A、10B 1次金型
10a、10b 金型面
10c 突起部
20 1次圧縮品
20a 高圧縮部
20b 低圧縮部
21 2次ブランク部材
21a 底部1次成形面
21c、21e 側面部1次成形面
21f 切削加工面
21g 開口側端面
30A コア金型(2次金型)
30B キャビティ金型(2次金型)
30a、30b 金型面
Claims (4)
- 木材を切り出して1次ブランク部材を形成し、少なくとも2回の圧縮成形を行うことにより、前記1次ブランク部材を、最終的に略一定肉厚を有する3次元形状に成形する木材成形品の製造方法であって、
前記1次ブランク部材を、一部に前記最終的な3次元形状と略同形状の金型面を有する1次金型により圧縮成形して、前記金型面近傍に相対的な高圧縮部を形成した1次圧縮品に加工する1次圧縮工程と、
前記1次圧縮品を切削加工して、前記高圧縮部に転写された3次元形状を表面に残した2次ブランク部材を形成する2次ブランク加工工程と、
前記2次ブランク部材を、前記最終的な3次元形状を転写するための2次金型により圧縮成形する2次圧縮工程とを設けたことを特徴とする木材成形品の製造方法。 - 前記2次ブランク部材は、その肉厚が、前記高圧縮部が相対的に厚く形成された部位では薄く、相対的に薄く形成された部位では厚くなるように切削加工されることを特徴とする請求項1に記載の木材成形品の製造方法。
- 前記2次ブランク部材は、その肉厚が、前記2次金型のスライド方向に厚みを有する部分に比べて、前記2次金型のスライド方向に交差する方向に厚みを有する部分で相対的に薄くなるように切削加工されることを特徴とする請求項1または2に記載の木材成形品の製造方法。
- 前記略一定肉厚を有する3次元形状が、前記2次金型のスライド方向に略直交する方向に延びる底部と、該底部の周辺から前記2次金型のスライド方向に向かって屈曲する側面部とを有する形状であって、
前記1次圧縮工程において前記側面部の形状と略同形状が転写された高圧縮部が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の木材成形品の製造方法。
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