JP4175766B2 - 透明基板検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、透明基板、例えば液晶ディスプレイの製造工程においてガラス基板に傷がないか異物が付着していないかなどを検査する透明基板検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は、CRT(Cathode Ray Tube)に比べて薄型化、軽量化が可能であるため、CTV(Color Television)やOA機器等のディスプレイ装置として採用され、画面サイズも10型以上の大形化が図られ、より一層の高精細化が押し進められている。液晶ディスプレイには、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、及びTFT(Thin Film Transistor)型などの種類がある。
【0003】
透明基板検査装置は、このような液晶ディスプレイに使用されるガラス基板に微小な傷や異物などが存在しないか否かを検出するものであり、ガラス基板に斜下方からレーザビームを照射し、傷や異物によって発生した散乱光や反射光を上方より観察し、傷や異物の存在を検出するものである。このような透明基板検査装置は、照明光源として、半導体レーザ光源(LD)を用いている。半導体レーザ光源は、近視野パターンと遠視野パターンの両方で光量のバラツキを有する。
【0004】
近視野パターンは、半導体レーザ光源の共振器から比較的近い点のレーザビームの振幅強度分布であり、図1(A)に示すような特性を示す。図1(A)において、横軸はレーザ発光点位置[μm]を、縦軸は光量の相対強度を現す。図1(A)から明らかなように、半導体レーザ光源の発光点間距離が160〜180[μm]の場合、その全域に渡って光量の強度分布がばらついていることが理解できる。
【0005】
遠視野パターンは、半導体レーザ光源の共振器から相当遠い点で見られるレーザビームの振幅強度分布であり、図1(B)に示すような特性を示す。図1(B)において、横軸はレーザ発光点からの放射角度(θ平行方向)を、縦軸は光量の相対強度を現す。図1(B)から明らかなように、半導体レーザ光源の放射角度が約0度付近で谷の形状の極小値を示し、その両側、角度数度の付近で極大値を示すような光量の相対強度分布のばらつきを示すことが理解できる。
【0006】
従来は、このような半導体レーザ光源を照明光源として用い、一般的な照明部構成であるクリティカル照明やケラー照明を構成していた。図2は、一般的なクリティカル照明構成の一例を示すものである。このクリティカル照明構成は、半導体レーザ光源21から出射したレーザビームを補助集光レンズ22で平行光束とし、絞り24を通過させてコンデンサレンズ23に送り込む。コンデンサレンズ23は、平行光束をコンデンサレンズ23の後側焦点付近すなわち検出点25付近に半導体レーザ光源21の発光点の像を結像する。従って、検出点25では、図1(A)に示すような近視野パターンによる光量の強度分布のばらつきが現れていた。
【0007】
図3は、一般的なケラー照明構成の一例を示すものである。このケラー照明構成は、半導体レーザ光源31の発光点a1,b1,c1の像a2,b2,c2がコンデンサレンズ33の前側焦点位置に作成され、補助集光レンズ32に近接して設けられた視野絞り34の像が検出点35に一致させられ、検出点35にて照明ビームが平行光となるように構成されたものである。このケラー照明構成によれば、検出点35で図1(B)に示すような遠視野パターンによる光量の強度分布のばらつきが現れていた。
【0008】
ガラス基板検査装置は、これらの照明部構成を用いて、レーザビームをθ平行方向にレンズで拡大し、欠陥検査に必要な検出点視野として長さ(長径)が50〜60[mm]、幅(短径)が約200[μm]の細長い楕円形状の照明ビームを形成し、ガラス基板の下側から約10度の傾斜角で照射していた。図4は、クリティカル照明を用いて構成されたガラス基板検査装置の概略を示す図であり、光学系の構成を検出用照明ビームの長径方向から見た図である。図において光学系は照明光学部と検出光学部とからなる。照明光学部は半導体レーザ光源21、補助集光レンズ22、コンデンサレンズ23及び全反射ミラー8から構成される。検出光学部は遮光板9、検出レンズ10及びCCD受光素子30から構成される。
【0009】
半導体レーザ光源21は、波長が約800[nm]、発光点サイズが約200[μm]、θ平行方向の放射角が約6度、θ直角方向の放射角が約40度のレーザビームを出射する。補助集光レンズ22は、半導体レーザ光源21から出射された光束を平行光束とし、コンデンサレンズ23に送り込む。コンデンサレンズ23は、平行光束をコンデンサレンズ23の後側焦点付近すなわち検出点25であるガラス基板40付近に全反射ミラー8を介して半導体レーザ光源21の発光点の像を結像する。遮光板9は、検出レンズ10の光の入射する位置に、ガラス基板40の表面で散乱又は反射しなかった光(直接光)を遮光するものである。従って、ガラス基板40の表面で散乱又は反射しなかった光(直接光)は、その遮光板9によって遮られ、CCD受光素子30に結像することはなく、ガラス基板40の表面で散乱又は反射した光のみが、検出レンズ10を通過してCCD受光素子30に結像する。なお、クリティカル照明に代えて、前述のケラー照明を用いた場合も同じである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ガラス基板検査装置は、ガラス基板に斜下方からレーザビームを照射し、傷や異物によって発生した散乱光や反射光を上方より観察し、傷や異物の存在を検出することができる。ところが、欠陥検査に必要な検出点視野として長さ(長径)が50〜60[mm]、幅(短径)が約200[μm]の細長い楕円形状の照明ビームを形成し、ガラス基板の下側から約10度の傾斜角で照射している関係上、細長い傷いわゆるヘアライン傷と呼ばれるものに対して、方向性を持つという問題があった。図5は、図4のガラス基板40上に方向性を持ったヘアライン傷55〜58が存在する場合における細長い楕円形状の照明ビーム50とヘアライン傷55〜58との関係を示す図である。照明ビーム50は図4に示されるように右下斜め方向から左上斜め方向に向かって照射されているものとする。従って、図5においては照明ビームの照射方向は、右方向から左方向に向かう水平方向となる。このような照明ビーム50が照射されているガラス基板上に図5(A)〜(D)のようにそれぞれ方向性を持ったヘアライン傷55〜58が存在する場合、その傷によるCCD受光素子30の信号出力は、図6に示すようになる。図6は、照明ビーム50とヘアライン傷の長手方向の交差角を横軸に示した場合におけるCCD受光素子30の信号出力レベルを示す図である。
【0011】
図5(A)は、照明ビームとヘアライン傷55の長手方向が平行(0度)の場合すなわち交差角0度の場合を示し、図5(B)は照明ビーム50とヘアライン傷56の長手方向が約10度で交差し、図5(C)は照明ビーム50とヘアライン傷57の長手方向が約20度で交差し、図5(D)は照明ビーム50とヘアライン傷58の長手方向が約30度で交差している場合を示している。図6から明らかなように、照明ビーム50とヘアライン傷の長手方向の交差角が小さい場合は、CCD受光素子30の信号出力レベルは大きく、ヘアライン傷を確実に検出することが可能であるが、その交差角が±25度よりも大きくなると、CCD受光素子30の信号出力レベルが急激に低下し、もはやヘアライン傷を検出することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、ヘアライン傷などのように照明ビームの照射方向に対して方向性を有するような傷であってもその存在を確実に検出することのできる透明基板検査装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る透明基板検査装置の第1の特徴は、光源から出射された光ビームを複数のレンズ手段を用いて傷検出用の細長い楕円形状の照明ビームとして被検査試料に照射する照明手段と、前記被検査試料に照射された前記照明ビームの散乱光又は反射光を検出レンズを用いて結像し、その像を受光素子手段で検出する結像手段とを備えた透明基板検査装置において、前記照明手段は、前記被検査試料上の前記照射ビームの長手方向に対してそれぞれ異なる角度で交差する少なくとも4方向から前記照明ビームを照射するように構成されたことにある。ヘアライン傷のように照明ビームに対して方向性を有する傷の場合、照明ビームとヘアライン傷の長手方向の交差角が約±25度以内であれば、受光素子手段から出力される信号出力レベルによってその傷の存在を確認することができる。従って、4方向から照明ビームを照射することによって、照明ビームとヘアライン傷の長手方向の交差角を±25度以内の45度とすることができるので、ヘアライン傷などのように照明ビームの照射方向に対して方向性を有するような傷であってもその存在を確実に検出することができるようになる。
【0014】
この発明に係る透明基板検査装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の透明基板検査装置において、前記照明手段が、前記被検査試料上の前記照射ビームの長手方向に対して、α度、α+45度、α+90度、α+135度の角度で交差するような4方向から前記照明ビームを照射するように構成されていることにある。これは、被検査試料上の照射ビームの長手方向に対して交差する4方向の照明ビームの交差角度を具体的に限定したものであり、或る1つの照明ビームが被検査試料上の照射ビームの長手方向に対して約22.5度の角度で交差するように照射されると、残りの3つの照明ビームは約67.5度、約112.5度、約155.5度の角度で交差するように照射されることになる。
【0015】
この発明に係る透明基板検査装置の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載の透明基板検査装置において、前記照明手段が、2個の光源から出射される光ビームをそれぞれ補助的に集光する第1及び第2の補助集光レンズ手段と、 前記第1及び第2の補助集光レンズ手段によって結像された前記2個の光源の光ビームをそれぞれ前記楕円形状の長径方向に引き伸ばし、短径方向に集光するように構成された第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段と、前記第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段を通過した光ビームをそれぞれ分割する第1及び第2の分割手段と、前記第1及び第2の分割手段によって分割された4本の光ビームを前記被検査試料上で前記楕円形状の照明ビームとし、前記検出レンズの瞳に向かう収束光となるように集光する第1及び第2の集光レンズ手段と、前記第1及び第2の集光レンズ手段を通過した前記4本の光ビームを前記被検査試料上の所定位置にそれぞれ照射させる第1から第4までの反射鏡手段とを含んで構成されていることにある。2個の光源の各点から出射した光ビームは、ケラー照明構成と同じように第1及び第2の補助集光レンズ手段によって一旦結像される。そして、この結像されたそれぞれの光源の像の短径方向の光は、第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段によってケラー照明構成の場合と同様にほぼ平行光束に集束される。一方、結像された光源の像の長径方向の光は、第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段によって発散する方向に引き伸ばされる。第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段によって引き伸ばされた光は、第1及び第2の分割手段によってそれぞれ分割され、4本の光ビームとなる。この4本の光ビームは、第1及び第2の集光レンズによって検出レンズの瞳に向かう収束光となるように集光され、被検査試料上に傷検出用の細長い楕円形状の照明ビームとして照射される。このとき、第1から第4までの反射鏡手段が4本の光ビームを反射してそれぞれの所定位置に照射させる。これによって、レーザ光源の各点から出射したレーザ光は、被検査試料上のそれぞれ異なる部分に照射されるようになるため、遠視野パターンの影響を打ち消すことができ、照明強度をほぼ一様にすることができる。また、レーザ光源の像は、無限遠ではないが、かなり遠方にできるため、クリティカル照明で問題となっていた照明むらも生じることはない。
【0016】
この発明に係る透明基板検査装置の第4の特徴は、前記第3の特徴に記載の透明基板検査装置において、前記第1及び第2の分割手段が、前記第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段を通過した光ビームをハーフミラー及び反射鏡を用いて分割するように構成されていることにある。これは、第1及び第2の分割手段の構成を具体的に限定したものである。
【0017】
この発明に係る透明基板検査装置の第5の特徴は、前記第3の特徴に記載の透明基板検査装置において、前記第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段が、前記レーザ光の短径方向に集光する凸シリンドリカルレンズと、前記レーザ光の長径方向に対して作用し、長径方向の長さを前記第1及び第2の集光レンズ手段の口径に合わせて引き伸ばす凹シリンドリカルレンズとから構成されていることにある。これは、第1及び第2の引き伸ばしレンズの構成を具体的に限定したものである。長径方向と短径方向のそれぞれに対して作用するシリンドリカルレンズを用いることによって、集光と拡散を実現したものである。
【0018】
この発明に係る透明基板検査装置の第6の特徴は、前記第1から第5までのいずれか1の特徴に記載の透明基板検査装置において、前記照明手段が、前記光ビームの前記被検査試料上における短径方向の幅を約200[μm]、長径方向の長さを約50〜60[mm]にすることにある。これは、照明手段によって形成される傷検出用の細長い楕円形状の照明ビームの具体的大きさを規定したものである。
【0019】
この発明に係る透明基板検査装置の第7の特徴は、前記第3から第6までのいずれか1の特徴に記載の透明基板検査装置において、前記照明手段は、前記光源の各点から出射した光が前記被検査試料上の全照射範囲の約10分の1程度を照射することにある。これは、最も遠視野パターンの影響を少なくし、照明強度を全照射範囲でほぼ一様にすることができる場合を具体的に規定したものである。
【0020】
この発明に係る透明基板検査装置の第8の特徴は、前記第4の特徴に記載の透明基板検査装置において、前記第1及び第2の集光レンズ手段は、半円形状のレンズで構成され、前記第1及び第2の分割手段によって分割された前記光ビームを光軸中心から上下方向に外れた位置を通過させて前記被検査試料上で前記楕円形状の照明ビームとし、前記検出レンズの瞳に向かう収束光となるように集光することにある。これは、集光レンズ手段の構成を具体的に限定したものであり、4本の照明ビームのうち2本を第1の集光レンズ手段で集光し、残りの2本を第2の集光レンズ手段で集光する。このとき、それぞれの照明ビームは集光レンズの光軸中心から上下方向に外れた位置を通過するので、集光レンズの形状を円形にすると、両者が干渉してしまうので、ここでは、半円形状のレンズで集光レンズを構成することにした。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を添付図面に従って説明する。図7は、長さ(長径)が約50〜60[mm]、幅(短径)が約200[μm]の細長い楕円形状の検出用照明ビームをガラス基板40に照射し、その散乱光や反射光に基づいて、ガラス基板40上の傷や異物の存在を検出するガラス基板検査装置を立体的に示した斜視図である。図8及び図9は、このガラス基板検査装置の概略構成を示す図であり、図8はこのガラス基板検査装置の光学系の構成を検出用照明ビームの長径方向から見た図であり、図9はこの光学系の構成を検出用照明ビームの短径方向から見た図である。このガラス基板検査装置の光学系は、照明光学部と検出光学部とからなるが、図7及び図9では検出光学系については図示を省略してある。この実施の形態に係るガラス基板検査装置の特徴は、検出用照明ビームをそれぞれ45度ずつ方向の異なる4方向から別々にガラス基板に照射するようにした点である。
【0022】
照明光学部は、半導体レーザ光源100,200、非球面コリメートレンズ101,201、平凸レンズ102,202、凸シリンドリカルレンズ103,203、凹シリンドリカルレンズ104,204、ハーフミラー105,205、反射鏡106〜108,206〜208、平凸レンズ110,111,210,211及び台形型全反射ミラー120,121,220,221から構成される。検出光学部は遮光板9、検出レンズ10及びCCD受光素子30から構成される。
【0023】
半導体レーザ光源100,200は、波長が約800[nm]、発光点サイズが約200[μm]、θ平行方向の放射角が約6度、θ直角方向の放射角が約40度のレーザビームを出射する。非球面コリメートレンズ101,201及び平凸レンズ102,202は、半導体レーザ光源100,200から出射された光束を凸シリンドリカルレンズ103,203の前側で集光させ、ケラー照明のように一旦半導体レーザ光源100,200の像を形成させる補助集光レンズとしての役割をする。凸シリンドリカルレンズ103,203は、照明ビームの短径方向に対して作用し、検出点における短径方向の幅を200[μm]にするものであり、補助集光レンズ(非球面コリメートレンズ101,201及び平凸レンズ102,202)を通過した光をさらに集光させる。なお、凸シリンドリカルレンズ103,203は、照明ビームの長径方向に対しては作用しないようになっている。凹シリンドリカルレンズ104,204は、照明ビーム長径方向に対して作用し、長径方向の長さを平凸レンズ110,111,210,211からなる大口径集光レンズの口径に合わせて引き伸ばす。なお、凹シリンドリカルレンズ104,204は、照明ビームの短径方向に対して作用しないようになっている。ここでは、凸シリンドリカルレンズ103,203及び凹シリンドリカルレンズ104,204のことを引き伸ばしレンズと呼ぶ。
【0024】
ハーフミラー105,205、反射鏡106〜108,206〜208は、半導体レーザ光源100,200から出射されたレーザ光の光軸に対してそれぞれ45度の傾斜を持って配置され、引き伸ばしレンズ(凸シリンドリカルレンズ103,203及び凹シリンドリカルレンズ104,204)を通過した照明ビームをそれぞれ分割して2系統の照射ビームを作成するものである。すなわち、ハーフミラー105,205は、引き伸ばしレンズ(凸シリンドリカルレンズ103,203及び凹シリンドリカルレンズ104,204)を通過した照明ビームの半分を反射鏡107,207側に通過させ、残りの半分を照明ビームの長径方向に配置された反射鏡106,206側に反射する。反射鏡106,206は、ハーフミラー105,205で反射された照射ビームを半導体レーザ光源100,200から出射されたレーザ光の光軸と同じ方向に全反射する。一方、反射鏡107,207は、ハーフミラー105,205を通過して来た照射ビームを反射鏡108,208側に全反射し、反射鏡108,208は、その照射ビームを半導体レーザ光源100,200から出射されたレーザ光の光軸と同じ方向に全反射する。これによって、引き伸ばしレンズ(凸シリンドリカルレンズ103,203及び凹シリンドリカルレンズ104,204)を通過した照明ビームは別々の2系統の照明ビームに分割される。なお、図9では、反射鏡106,206,108,208が同じ位置に配置されているように示してあるが、実際は、反射鏡106と反射鏡108との間の距離の方が反射鏡206と反射鏡208との間の距離よりも大きくなっている。
【0025】
大口径集光レンズは、4枚の平凸レンズ110,111,210,211で構成されている。平凸レンズ110と平凸レンズ111とで一つの大口径集光レンズが構成され、平凸レンズ210と平凸レンズ211とでもう一つの大口径集光レンズが構成されている。以下、集光レンズ110と表すときは、平凸レンズ110と平凸レンズ111とで構成される大口径集光レンズのことを意味し、集光レンズ210と表すときは、平凸レンズ210と平凸レンズ211とで構成される大口径集光レンズのことを意味するものとする。
【0026】
図10は、大口径集光レンズをガラス基板40側から見た図である。図において、右側が集光レンズ110であり、左側が集光レンズ210である。集光レンズ110,210は、その中心O1,O2を含む半円形状をしている。反射鏡106,108で反射された照明ビームは、右側の集光レンズ110の中心O1の上下方向の所定位置に照射され、反射鏡206,208で反射された照明ビームは、左側の集光レンズ210の中心O2の上下方向の所定位置に照射され、それぞれの集光レンズ110,210によって集束される。
【0027】
集光レンズ110,210は、それぞれの照明ビームを検出レンズ10の瞳付近に集光する。このとき、検出点であるガラス基板40における照明ビームは、検出レンズ10の瞳へ向かう集束光となるように構成される。すなわち、検出光学部では、検出レンズ10の欠陥検出効率を確保するために、照明ビームの集光が瞳中心となるように構成される。検出点45すなわちガラス基板40は、検出レンズ10の瞳と集光レンズ110,210との中間位置であって、その集光光路中に設置される。なお、検出レンズ10の瞳に向かう集束光となるのは、長径方向の照明ビームだけであり、短径方向の照明ビームはガラス基板40上に集束するように構成される。このようにしてガラス基板40上には、長さ(長径)が約50〜60[mm]、幅(短径)が約200[μm]の細長い楕円形状の検出用照明ビームが照射される。
【0028】
なお、集光途中の照明ビームは、図10に示した点線の正八角錐の底面のそれぞれの頂点81〜84付近で正八角錐の頂点80に向かうように、台形型全反射ミラー120,121,220,221によって反射させられる。正八角錐の頂点80が検出点45を含むガラス基板40表面に対応する。従って、ガラス基板40表面すなわち検出点45には、正八角錐の底面のそれぞれの頂点81〜84の4方向からそれぞれ照明ビームが同時に照射されることになる。各照明ビームの照射角度は、それぞれ45度の整数倍の角度で交差するように構成されている。
【0029】
すなわち、頂点81から頂点80に向かう照明ビームに対して、頂点82から頂点80に向かう照明ビームは45度の角度で、頂点83から頂点80に向かう照明ビームは90度(45度×2)の角度で、頂点84から頂点80に向かう照明ビームは135度(45度×3)の角度で、それぞれ交差している。従って、ガラス基板40の表面に対しては、45度ずつ方向の異なる4本の照明ビームが照射されることになる。従って、ガラス基板40上のヘアライン傷は、いずれかの照明ビームによって容易に検出することができるようになる。
【0030】
図11は、この実施の形態のガラス基板検査装置によってできるガラス基板40上の細長い楕円形状の照明ビーム60とガラス基板40上に存在するヘアライン傷61〜68との関係を示す図である。図12は、この実施の形態に係る照明ビーム60とヘアライン傷61〜68の長手方向の交差角を横軸に示した場合におけるCCD受光素子30の信号出力レベルの特性を示す図である。この実施の形態に係るガラス基板検査装置では、図10に示すように、45度ずつ方向の異なる4本の照明ビーム810〜840がガラス基板40に照射されている。従って、図11(A)〜(H)に示すようにそれぞれ角度の異なるヘアライン傷61〜68がガラス基板40上に存在する場合、その傷によるCCD受光素子30の信号出力は、図12に示すようになる。
【0031】
すなわち、図11(A)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷61の長手方向が平行(0度)の場合、ヘアライン傷61によって頂点81から頂点80に向かう照明ビーム810及び頂点82から頂点80に向かう照明ビーム820に対応した散乱光が発生するので、CCD受光素子30からは両方の照明ビーム810,820の散乱光に対応した信号出力が現れる。ここで照明ビーム60は、それぞれの照明ビーム810〜840の合成ビームのことである。図11(B)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷62の長手方向が約22.5度で交差している場合、ヘアライン傷62によって頂点82から頂点80に向かう照明ビーム820に対応した散乱光のみが発生するので、CCD受光素子30からはその照明ビーム820の散乱光に対応した信号出力が現れる。
【0032】
図11(C)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷63の長手方向が約45度で交差している場合、ヘアライン傷63によって頂点82から頂点80に向かう照明ビーム820及び頂点83から頂点80に向かう照明ビーム830に対応した散乱光が発生するので、CCD受光素子30からはその照明ビーム820,830の散乱光に対応した信号出力が現れる。図11(D)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷64の長手方向が約67.5度で交差している場合、ヘアライン傷64によって頂点83から頂点80に向かう照明ビーム830に対応した散乱光のみが発生するので、CCD受光素子30からはその照明ビーム830の散乱光に対応した信号出力が現れる。
【0033】
図11(E)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷65の長手方向が約90度で交差している場合、ヘアライン傷65によって頂点83から頂点80に向かう照明ビーム830及び頂点84から頂点80に向かう照明ビーム840に対応した散乱光が発生するので、CCD受光素子30からはその照明ビーム830,840の散乱光に対応した信号出力が現れる。図11(F)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷66の長手方向が約112.5度で交差している場合、ヘアライン傷66によって頂点84から頂点80に向かう照明ビーム840に対応した散乱光のみが発生するので、CCD受光素子30からはその照明ビーム840の散乱光に対応した信号出力が現れる。
【0034】
図11(G)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷67の長手方向が約135度で交差している場合、ヘアライン傷67によって頂点84から頂点80に向かう照明ビーム840及び頂点81から頂点80に向かう照明ビーム810に対応した散乱光が発生するので、CCD受光素子30からはその照明ビーム840,810の散乱光に対応した信号出力が現れる。図11(H)に示すように照明ビーム60とヘアライン傷68の長手方向が約155.5度で交差している場合、ヘアライン傷68によって頂点81から頂点80に向かう照明ビーム810に対応した散乱光のみが発生するので、CCD受光素子30からはその照明ビーム810の散乱光に対応した信号出力が現れる。すなわち、CCD受光素子30からは図12に示すような各照明ビーム810〜840を合成した信号波形800が出力されるので、方向性を持った細長い傷(ヘアライン傷)61〜68であっても、その存在を確実に検出することができる。
【0035】
この実施の形態では、検出レンズ10の光の入射する位置に、ガラス基板40の表面で散乱又は反射しなかった光(直接光)を遮光するための遮光板9が設けられている。従って、ガラス基板40の表面で散乱又は反射しなかった光(直接光)は、その遮光板9によって遮られ、CCD受光素子30に結像することはなく、ガラス基板40の表面で散乱又は反射した光のみが、検出レンズ10を通過してCCD受光素子30に結像する。なお、検出レンズ10は、複数のレンズ群の組み合わせで構成される。
【0036】
本発明に係るガラス基板検査装置の照明光学部の構成が従来のケラー照明構成とどのように異なるのか、その詳細について説明する。まず、ケラー照明構成の場合には、図3に示すように、半導体レーザ光源31の各点a1,b1,c1から出射したレーザ光は、補助集光レンズ32によって各点a2,b2,c2で一旦結像される。そして、この結像された各点a2,b2,c2の像の光をコンデンサレンズ33によって、平行光束として検出点35(ガラス基板)に照射している。従って、コンデンサレンズ33によって、半導体レーザ光源31の像は無限遠にできるためクリティカル照明で問題となっていた照明むらが生じることはない。
【0037】
ところが、半導体レーザ光源31の光点a1から出射したレーザ光は、検出点35上の部分a3−a4を一様に照射し、光点b1から出射したレーザ光は、検出点35上の部分a3−a4と同じ部分b3−b4を一様に照射する。同様に、光点c1から出射したレーザ光も、検出点35上の部分a3−a4,b3−b4と同じ部分c3−c4を一様に照射する。従って、前述したように、図1(B)に示すような半導体レーザ光源31の有する遠視野パターンの影響が顕著に現れる。
【0038】
これに対して、本発明に係るガラス基板検査装置の照明光学部においては、図9に示すように半導体レーザ光源100,200の各点A1,B1,C1から出射したレーザ光は、ケラー照明構成と同じように補助集光レンズ(非球面コリメートレンズ101,201及び平凸レンズ102,202)によって各点A2,B2,C2で一旦結像される。そして、この結像された像の短径方向の照明ビームは凸シリンドリカルレンズ103,203によってケラー照明構成の場合と同様にほぼ平行光束に集束される。一方、結像された像の長径方向の照明ビームは凸シリンドリカルレンズ103,203をそのまま通過し、凹シリンドリカルレンズ104,204によって発散する方向に引き伸ばされる。凹シリンドリカルレンズ104,204によって引き伸ばされた照明ビームは、集光レンズ110,210によって集光され、ガラス基板40上の検出点45に照射される。
【0039】
従って、半導体レーザ光源100,200の各点A1,B1,C1から出射したレーザ光は、一旦各点A2,B2,C2で結像し、ガラス基板40上の検出点45のそれぞれ異なる部分A3−A4,B3−B4,C3−C4に照射されるようになっている。このような構成によって、半導体レーザ光源100,200の像は、無限遠ではないが、かなり遠方にできるため、クリティカル照明で問題となっていた照明むらが生じることはない。また、この照明構成だと、前述したように、図1(B)に示すような半導体レーザ光源100,200の有する遠視野パターンの影響を打ち消すことができ、照明強度をほぼ一様にすることができる。なお、図では、半導体レーザ光源100,200の各点から出射した光が検出点45上の全照射範囲の約8分の1を照射する場合を示しているが、実際は検出点45上の全照射範囲の約10分の1程度を照射するように構成することによって、最も遠視野パターンの影響を少なくし、照明強度を全照射範囲でほぼ一様にすることができるという効果がある。
【0040】
なお、上述の実施の形態では、補助集光レンズを非球面コリメートレンズ101,201及び平凸レンズ102,202で構成し、引き伸ばしレンズを凸シリンドリカルレンズ103,203及び凹シリンドリカルレンズ104,204で構成し、集光レンズを2枚の平凸レンズ110,111,210,211でそれぞれ構成する場合について説明したが、これは一例であり、本発明の目的とする照明を行うことができるのであれば、これ以外の組合せで構成してもよいことは言うまでもない。また、上述の実施の形態では、ガラス基板について説明したが、プラスチック基板等の透明なものであってもよい。さらに、上述の実施の形態では、4方向から照明ビームを照射する場合について説明したが、これ以上の方向から照射してもよいことはいうまでもない。上述の実施の形態では、2個の光源から4方向の照明ビームを作成する場合について説明したが、4個の光源を用いて4方向の照明ビームを作成してもよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘアライン傷などのように照明ビームの照射方向に対して方向性を有するような傷であってもその存在を確実に検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 半導体レーザ光源が示す近視野パターン及び遠視野パターンの特性を示す図である。
【図2】 一般的なクリティカル照明構成の一例を示す図である。
【図3】 一般的なケラー照明構成の一例を示す図である。
【図4】 クリティカル照明を用いて構成された従来のガラス基板検査装置の概略を示す図である。
【図5】 図4のガラス基板上に方向性を持ったヘアライン傷が存在する場合における細長い楕円形状の照明ビームとヘアライン傷との関係を示す図である。
【図6】 従来のガラス基板検査装置において、照明ビームとヘアライン傷の長手方向の交差角を横軸に示した場合のCCD受光素子の信号出力レベルを示す図である。
【図7】 この発明に係るガラス基板検査装置を立体的に示した斜視図である。
【図8】 図7のガラス基板検査装置の光学系の構成を検出用照明ビームの長径方向から見た図である。
【図9】 図7のガラス基板検査装置の光学系の構成を検出用照明ビームの短径方向から見た図である。
【図10】 図7の大口径集光レンズをガラス基板側から見た図である。
【図11】 図7のガラス基板検査装置によってできるガラス基板上の細長い楕円形状の照明ビームとガラス基板上に存在するヘアライン傷との関係を示す図である。
【図12】 図7のガラス基板検査装置において、照明ビームとヘアライン傷の長手方向の交差角を横軸に示した場合のCCD受光素子の信号出力レベルの特性を示す図である。
【符号の説明】
100,200 半導体レーザ光源
101,201 非球面コリメートレンズ
102,202 平凸レンズ
103,203 凸シリンドリカルレンズ
104,204 凹シリンドリカルレンズ
105,205 ハーフミラー
106〜107,206〜207 反射鏡
110,111,210,211 平凸レンズ
120,121,220,221 台形型全反射ミラー
9 遮光板
10 検出レンズ
30 CCD受光素子
45 検出点
40 ガラス基板
Claims (8)
- 光源から出射された光ビームを複数のレンズ手段を用いて傷検出用の細長い楕円形状の照明ビームとして被検査試料に照射する照明手段と、
前記被検査試料に照射された前記照明ビームの散乱光又は反射光を検出レンズを用いて結像し、その像を受光素子手段で検出する結像手段とを備えた透明基板検査装置において、
前記照明手段は、2個の光源から出射される光ビームをそれぞれ前記楕円形状の長径方向に引き伸ばし、短径方向に集光するように構成された第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段と、
前記第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段を通過した光ビームをそれぞれ分割する第1及び第2の分割手段と、
前記第1及び第2の分割手段によって分割された4本の光ビームを前記被検査試料上で前記楕円形状の照明ビームとし、前記検出レンズの瞳に向かう収束光となるように集光する第1及び第2の集光レンズ手段と、
前記第1及び第2の集光レンズ手段を通過した前記4本の光ビームを前記被検査試料上の所定位置にそれぞれ照射させる第1から第4までの反射鏡手段とを含み、前記被検査試料上の前記照射ビームの長手方向に対して、前記被検査試料上の前記照射ビームの中央付近を中心として前記被検査試料上でそれぞれ異なる角度で交差する少なくとも4方向から前記照明ビームを照射するように構成されていることを特徴とする透明基板検査装置。 - 請求項1において、
前記照明手段は、前記被検査試料上の前記照射ビームの長手方向に対して、前記被検査試料上の前記照射ビームの中央付近を中心として前記被検査試料上でα度、α+45度、α+90度、α+135度の角度で交差するような4方向から前記照明ビームを照射するように構成されていることを特徴とする透明基板検査装置。 - 請求項1又は2において、
前記照明手段は更に、前記2個の光源から出射される光ビームをそれぞれ補助的に集光して前記第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段に導入する第1及び第2の補助集光レンズ手段を備えたことを特徴とする透明基板検査装置。 - 請求項1、2又は3において、
前記第1及び第2の分割手段が、前記第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段を通過した光ビームをハーフミラー及び反射鏡を用いて分割するように構成されていることを特徴とする透明基板検査装置。 - 請求項1、2、3又は4において、
前記第1及び第2の引き伸ばしレンズ手段は、
前記レーザ光の短径方向に集光する凸シリンドリカルレンズと、
前記レーザ光の長径方向に対して作用し、長径方向の長さを前記第1及び第2の集光レンズ手段の口径に合わせて引き伸ばす凹シリンドリカルレンズと
から構成されていることを特徴とする透明基板検査装置。 - 請求項1、2、3、4又は5において、
前記照明手段は、前記光ビームの前記被検査試料上における短径方向の幅を約200[μm]、長径方向の長さを約50〜60[mm]にすることを特徴とする透明基板検査装置。 - 請求項1、2、3、4、5又は6において、
前記照明手段は、前記光源の各点から出射した光が前記被検査試料上の全照射範囲の約10分の1程度を照射することを特徴とする透明基板検査装置。 - 請求項1、2、3、4、5、6又は7において、
前記第1及び第2の集光レンズ手段は、半円形状のレンズで構成され、前記第1及び第2の分割手段によって分割された前記光ビームを光軸中心から上下方向に外れた位置を通過させて前記被検査試料上で前記楕円形状の照明ビームとし、前記検出レンズの瞳に向かう収束光となるように集光することを特徴とする透明基板検査装置。
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