JP4175015B2 - 酸化物超電導線材の製造方法および製造装置 - Google Patents

酸化物超電導線材の製造方法および製造装置 Download PDF

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    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力、輸送、医療などの分野で用いられる酸化物超電導線材の製造方法に関し、より特定的には、MOD(Metalorganic Deposition)法による酸化物超電導線材の製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酸化物の焼結体が高い臨界温度で超電導特性を示すことが報告されている。イットリウム系の酸化物は温度90Kで超電導現象を示し、ビスマス系の酸化物は温度110Kで超電導現象を示すことが報告されている。これらの酸化物超電導体は、比較的安価で入手できる液体窒素中にて超電導特性を示すため、様々な分野での実用化が期待されている。
【0003】
この酸化物の焼結体である酸化物超電導膜の製造方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、蒸着法、イオンクラスタービーム法、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法等があり、これらは主に半導体用途として開発が進められている。これらの方法によれば高品位な薄膜が得られる半面、製造コストは増大する。
【0004】
より低コストかつ簡便な方法にて酸化物超電導膜を製造する方法として、MOD法あるいは塗布熱分解法と呼ばれる成膜法が注目を浴びている。この方法は、有機金属塩を適当な有機溶媒に溶解させ、その溶液をスピンコートまたはディップコートによって基材上に塗布し、その後熱分解させることによって酸化物超電導膜を得る方法である。この方法によれば、原料溶液の組成制御が容易に行なえ、形状付与性も高く、非真空プロセスにて成膜できるという利点が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
小片基材上に酸化物超電導膜を形成する場合には、スピンコートを用いることによって高い精度で膜厚を均一に制御することが可能である。しかしながら、長尺の基材にスピンコートを適用しようとしても、そもそも長尺の基材を高速回転させることが物理的に不可能であるため、適用できない。このため、MOD法によって、長尺の基材に酸化物超電導膜を形成する場合には、溶液の塗布方法としてディップコートが用いられる。ところが、ディップコートによって溶液を基材上に塗布した場合には、余剰の原料溶液が基材上に残留し、均一な膜厚の酸化物超電導膜を得られない。したがって、MOD法では、長尺の基材上に均一な膜厚の酸化物超電導膜を形成することが困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、MOD法によって酸化物超電導線材を製造する場合に、酸化物超電導体の原料溶液を長尺の基材に均一に塗布することが可能な酸化物超電導線材の製造方法および製造装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法は、長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造方法であって、以下の工程を備える。
(a) 金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、長尺の基材の表面に原料溶液を付着させる工程。
(b) 長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する工程。
上記本発明の第1の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法にあっては、長尺の基材の表面に付着した原料溶液に気体を吹き付けることにより、余剰の原料溶液を除去する。
【0008】
このように、長尺の基材にディップコートによって原料溶液を付着させる場合にも、長尺の基材表面に付着した余剰の原料溶液を除去することにより、基材上に原料溶液を均一な厚さで塗布することが可能になる。これにより、均一な膜厚の酸化物超電導膜を備えた酸化物超電導線材を製造することが可能になる。上述の余剰溶液の除去工程は、長尺の基材の表面に付着した原料溶液に気体を吹き付けることで行なわれる。長尺の基材の表面に付着した原料溶液に気体を吹き付けることにより、原料溶液の余剰分が吹き飛ばされ、所定量の原料溶液のみを基材表面に残存させることが可能になる。これにより、基材表面に付着した原料溶液を均一な厚さとすることが可能である。また、気体を吹き付ける速度や角度などを調節することにより、任意の厚さに制御することが可能である。
本発明の第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法は、長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造方法であって、以下の工程を備える。
(a) 金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、長尺の基材の表面に原料溶液を付着させる工程。
(b) 長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する工程。
上記本発明の第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法にあっては、外周面に溝を有する一対の部材にて、原料溶液が付着した長尺の基材を挟み込むことにより、余剰の原料溶液を除去する。
このように、長尺の基材にディップコートによって原料溶液を付着させる場合にも、長尺の基材表面に付着した余剰の原料溶液を除去することにより、基材上に原料溶液を均一な厚さで塗布することが可能になる。これにより、均一な膜厚の酸化物超電導膜を備えた酸化物超電導線材を製造することが可能になる。上述の余剰溶液の除去工程は、外周面に溝を有する一対の部材によって原料溶液が付着した長尺の基材を挟み込むことにより、余剰分の原料溶液を削ぎ取ることで行なわれる。この場合には、溝の大きさを調節することにより、所定量の原料溶液のみを基材表面に残存させることが可能となる。
【0009】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法は、好ましくは、さらに、以下の工程を備える。
(c) 長尺の基材の表面に付着した原料溶液に熱処理を施す工程。
【0010】
このように、長尺の基材の表面に付着した原料溶液に熱処理を施すことによって原料溶液が熱分解し、酸化物超電導膜を形成することが可能になる。
【0015】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法にあっては、二軸配向の酸化物薄膜が予め長尺の基材の表面に形成されていることが望ましい。
【0016】
このように、予め基材の表面に二軸配向の酸化物薄膜を形成しておくことにより、この膜の上に超電導特性に優れた二軸配向の酸化物超電導膜を形成することが可能になる。これにより、超電導特性に優れた酸化物超電導線材を製造することが可能になる。
【0017】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法においては、たとえば、金属有機化合物がイットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)およびサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる金属の有機化合物であることが望ましい。
【0018】
このように、溶媒に溶かす金属有機化合物をイットリウム系の金属有機化合物とすることにより、長尺の基材表面にイットリウム系の酸化物超電導膜を形成することが可能になる。イットリウム系の酸化物超電導膜は超電導特性に優れているため、高性能の酸化物超電導線材を提供することが可能になる。
【0019】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法においては、たとえば、長尺の基材がニッケル(Ni)、ニッケル合金、ステンレス鋼および銀(Ag)からなる群から選ばれる金属材料からなることが好ましい。
【0020】
このように、上記の金属材料に代表される二軸配向の金属材料を使用することにより、長尺の基材表面に結晶性に優れた二軸配向の酸化物超電導膜を形成することが可能になる。これにより、この結晶性に優れた二軸配向の酸化物超電導膜上に超電導特性に優れた酸化物超電導膜を形成することが可能になる。
【0021】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法にあっては、基材がテープ形状であることが好ましい。
【0022】
酸化物超電導体の結晶構造は板状であることから、基材をテープ形状とすることにより、結晶をより配向させ易くすることができるようになる。酸化物超電導線材の性能は結晶配向に依存するため、基材をテープ形状とすることによって高性能の酸化物超電導線材を提供することが可能になる。
【0023】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造方法においては、たとえば、二軸配向の酸化物薄膜がイットリア安定化ジルコニア(YSZ)膜または酸化セリウム(CeO2)膜であることが好ましい。
【0024】
イットリア安定化ジルコニア(YSZ)または酸化セリウム(CeO2)は酸化物超電導体との界面における反応性が乏しく、化学的に安定である。また、結晶の陽イオン間隔が酸化物超電導体のそれと近いことから、酸化物超電導体をエピタキシャル成長させることができる。このため、上記の膜を予め長尺の基材表面に形成しておくことにより、高性能の酸化物超電導線材を提供することが可能になる。
【0025】
本発明の第1の局面に基づく酸化物超電導線材の製造装置は、長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造装置であって、溶液塗布手段と、余剰溶液除去手段とを備える。溶液塗布手段は、金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、長尺の基材の表面に原料溶液を付着させる。余剰溶液除去手段は、長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する。余剰溶液除去手段は、気体を噴出する噴出ノズルを含み、長尺の基材の表面に付着した原料溶液に向かって噴出ノズルから噴出した気体が吹き付けられるように噴出ノズルが配置されている。
【0026】
このように、余剰溶液除去手段を備えた酸化物超電導線材の製造装置を用いることにより、長尺の基材にディップコートによって原料溶液を付着させる場合にも、長尺の基材表面に付着した余剰の原料溶液が除去され、基材上に原料溶液を均一な厚さで塗布することが可能になる。これにより、均一な厚さの酸化物超電導膜を備えた酸化物超電導線材を製造することが可能になる。上述の余剰溶液除去手段としては、長尺の基材表面に付着した原料溶液に向かって気体を吹き付ける噴出ノズルを使用する。この噴出ノズルによって気体を吹き付けることにより、余剰の原料溶液を吹き飛ばすことが可能になる。また、気体を吹き付ける速度や角度などを調節することにより、任意の厚さに膜厚を制御することが可能である。
本発明の第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造装置は、長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造装置であって、溶液塗布手段と、余剰溶液除去手段とを備える。溶液塗布手段は、金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、長尺の基材の表面に原料溶液を付着させる。余剰溶液除去手段は、長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する。余剰溶液除去手段は、外周面に溝を有する一対の挟持部材を含み、長尺の基材の表面を挟み込むように一対の挟持部材が配置されている。
このように、余剰溶液除去手段を備えた酸化物超電導線材の製造装置を用いることにより、長尺の基材にディップコートによって原料溶液を付着させる場合にも、長尺の基材表面に付着した余剰の原料溶液が除去され、基材上に原料溶液を均一な厚さで塗布することが可能になる。これにより、均一な厚さの酸化物超電導膜を備えた酸化物超電導線材を製造することが可能になる。上述の余剰溶液除去手段としては、長尺の基材を挟み込む一対の挟持部材を使用する。この一対の挟持部材の各々の外周面に溝を形成しておくことにより、必要量の原料溶液だけを基材表面に残存させ、余剰の原料溶液を削ぎ落とすことが可能になる。この場合には、溝の大きさを調節することにより、所定量の原料溶液のみを基材表面に残存させることが可能である。
【0027】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造装置は、好ましくは、さらに、長尺の基材を送出する供給手段と、酸化物超電導膜が表面上に形成された長尺の基材を回収する回収手段とを備える。
【0028】
このように、長尺の基材を供給する手段と回収する手段とを備えていることにより、長尺の基材表面を酸化物超電導膜にて被覆する一連の工程が連続して行なえるようになる。
【0029】
上記本発明の第1および第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造装置は、好ましくは、さらに、長尺の基材の表面に付着した原料溶液に熱処理を施す加熱手段をさらに備える。
【0030】
このように、長尺の基材の表面に付着した原料溶液に熱処理を施す加熱手段を用いて原料溶液を熱分解させることにより、酸化物超電導膜形成することが可能になる。
【0035】
上記本発明の第2の局面に基づく酸化物超電導線材の製造装置においては、好ましくは、一対の挟持部材は、長尺の基材との当接部分において、長尺の基材の搬送方向と同じ方向に長尺の基材の搬送速度よりも遅い速度にて回転する一対のローラである。
【0036】
このように、挟持部材を長尺の基材の搬送方向と同じ方向に長尺の基材よりも遅い速度にて回転する一対のローラとすることにより、スムーズな余剰溶液の除去が可能となり、また、長尺の基材が弛むこともなくなる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における酸化物超電導線材の製造方法および製造装置を説明するための模式図である。
【0039】
本実施の形態における酸化物超電導線材の製造装置1は、供給ローラ2と、搬送ローラ3と、回収ローラ4とを備え、これらローラによって長尺の基材9が順次搬送される構成となっている。さらに、本製造装置1では、長尺の基材9の搬送経路上に上流から順に、酸化物超電導体の原料溶液10が満たされた容器5、気体が噴出される噴出ノズル6、内部にヒータ8を有する高温炉7が配設されている。
【0040】
長尺の基材9としては、基材自体の表面における結晶が二軸配向している材料が用いられる。たとえば、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、ステンレス鋼、銀(Ag)などを使用することが望ましい。長尺の基材9の形状としては、断面形状が方形のテープ形状が好ましい。特に基材の寸法は限定されないが、厚さ50μm〜200μm、幅2mm〜30mm程度が好ましい。
【0041】
また、予め長尺の基材9の表面には、二軸配向の酸化物薄膜が形成されている。この二軸配向の酸化物薄膜としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)や酸化セリウム(CeO2)などが好ましい。また、長尺の基材の搬送速度としては、一般的には毎時10m〜100m程度である。
【0042】
供給ローラ2から送出された長尺の基材9は、搬送ローラ3によって容器5内に誘導される。容器5内は、酸化物超電導体の原料溶液10で満たされているため、容器5内を長尺の基材9が通過することにより、長尺の基材9の表面に酸化物超電導体の原料溶液10が付着する。
【0043】
この酸化物超電導体の原料溶液10としては、溶媒に金属有機化合物を溶かすことにより、溶液中に含まれるイオンが、RE3+:Ba2+:Cu2+=1:2:3となるように調製されたものを使用する。ここで、REは、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)からなる群から選ばれる金属を示す。使用する金属有機化合物としては、特にナフテン酸塩やアセチルアセトナト錯体などが望ましい。なお、溶媒としては、金属有機化合物が可溶のものであれば、どのようなものでも使用可能であるが、通常はトルエンやメタノールなどの有機溶媒が用いられる。
【0044】
酸化物超電導体の原料溶液10内を通過した長尺の基材9は、噴出ノズル6へと搬送される。この噴出ノズル6は、長尺の基材9の表面に付着した原料溶液10に向かってガスを一定速度で吹き付ける。この噴出ノズル6によって長尺の基材9表面に付着した余剰の原料溶液が吹き飛ばされる。これにより、長尺の基材9表面には、均一な厚さに調整された原料溶液が残存することになる。なお、使用するガスとしては不活性ガスを使用することがより好ましいが、大気であっても良い。
【0045】
また、ガスを吹き付ける速度は試行により最適値を求めることが必要であるが、毎秒0.6mm〜24mm程度となるように設定することが好ましいと思われる。これは、スピンコートを行なう場合の小片基材の最適回転数から推定したものである。半径10mm〜40mm程度の単結晶基板を用いてスピンコートを行なう場合における最適の回転数は、毎分600回転〜6000回転程度であり、この回転速度は、角速度にして毎秒20πrad〜200πrad程度に相当する。このときの基板の最外周部分における速度が毎秒0.6mm〜24mm程度であることから上述の最適範囲が推定される。なお、ガスの吹き付け方向は、より好ましくは長尺の基材9の搬送方向と逆方向であることが好ましい。
【0046】
表面に付着した原料溶液10の厚みが最適化された長尺の基材9は、その後高温炉7に搬送される。この高温炉7内では、長尺の基材9の表面に付着した原料溶液10が内部のヒータ8によって加熱され、酸化物超電導体の原料溶液10の仮焼成が行なわれる。このときの仮焼成の条件は、たとえば大気中において、500℃、10分程度である。これにより得られた仮焼膜にさらに本焼成を施すことにより、長尺の基材9上に酸化物超電導膜が形成される。なお、本焼成は、たとえば、Ar/O2(100ppm)混合ガス雰囲気中にて770℃、120分の焼成を行ない、その後770℃を維持したままAr/O2ガスを100%のO2ガスに置換し、この100%のO2ガス中にてさらに30分焼成し、そのまま炉内にて冷却することによって行なわれる。これによって、長尺の基材の表面が酸化物超電導膜によって被覆された酸化物超電導線材が製造される。この後、この長尺の基材9が回収ローラ4によって回収される。
【0047】
以上において説明した製造方法および製造装置を用いて酸化物超電導線材を製造することによって、基材表面を覆う酸化物超電導膜の膜厚が均一に制御された酸化物超電導線材を製造することが可能になる。本実施の形態においては、ディップコートにより長尺の基材表面に付着した酸化物超電導体の原料溶液のうちの余剰溶液を、ガスによって吹き飛ばすという簡単な手法にて原料溶液の残存量を調節することができるため、既存の装置への応用も非常に簡便に行なえる。
【0048】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における酸化物超電導線材の製造方法および製造装置を説明するための模式図であり、図3は、挟持部材である一対の回転ローラの構造を説明するための図2のIII−III線における断面図である。なお、上述の実施の形態と同一の部分に付いては図中同じ符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0049】
図2に示すように、本実施の形態における酸化物超電導線材の製造装置1も上述の実施の形態1と同様に、供給ローラ2と、搬送ローラ3と、回収ローラ4とを備えている。本製造装置1では、長尺の基材9の搬送経路上に上流から順に、酸化物超電導体の原料溶液10が満たされた容器5、長尺の基板9表面に接するように配置された一対の回転ローラ11、内部にヒータ8を有する高温炉7が配設されている。なお、長尺の基板9としては上述の実施の形態1と同様のものが使用される。
【0050】
供給ローラ2から送出された長尺の基材9は、容器5内を通過することによってその表面に酸化物超電導体の原料溶液10が付着した状態にて一対の回転ローラ11へと搬送される。図3に示すように、この一対の回転ローラ11は、長尺の基材9表面に接触するように基材主表面を双方向から挟み込む。一対の回転ローラ11の各々の周面には複数の溝部11aが形成されている。この溝部11aの間に位置する挟持部11bが、長尺の基材9の表面に当接することにより、長尺の基材9が挟み付けられている。
【0051】
この一対の回転ローラ11は、長尺の基材9の表面においてその搬送方向と同じ方向に向かって長尺の基材9よりも遅い速度にて回転している。これにより、長尺の基材9表面に付着した余剰の原料溶液が削ぎ取られる。なお、回転ローラ11の溝部11aの大きさを調節することにより、所定の量の原料溶液10が長尺の基材9表面に残存するように調節することが可能になる。
【0052】
一対の回転ローラ11によって表面に付着した原料溶液10の厚みの最適化が行なわれた長尺の基材9は、上述の実施の形態1と同様に高温炉7を経て、回収ローラ4によって回収される。
【0053】
以上において説明した製造方法および製造装置を用いて酸化物超電導線材を製造することによって、基材表面を覆う酸化物超電導膜の膜厚が均一に制御された酸化物超電導線材を製造することが可能になる。本実施の形態においては、ディップコートにより長尺の基材表面に付着した酸化物超電導体の原料溶液のうちの余剰溶液を、一対の回転ローラによって削ぎ落とすという簡単な手法にて原料溶液の残存量を調節することができるため、既存の装置への応用も非常に簡便に行なえる。
【0054】
上述の実施の形態1および2においては、いずれも長尺の基材としてテープ形状の基材を使用した場合を例示して説明を行なったが、特にこれに限定されるものではなく、筒状のものなどを使用しても構わない。
【0055】
また、上述の実施の形態1および2においては、いずれも長尺の基材の表面を被覆する酸化物超電導膜としてイットリウム系の酸化物超電導膜を形成する場合を例示して説明を行なったが、特にこれに限定されるものではなく、たとえばビスマス系の酸化物超電導膜を形成する場合にも適用可能である。本発明は、MOD法にて長尺の酸化物超電導線材を製造する場合のディップコートに関するものであり、同様の手法にて形成される酸化物超電導膜であれば、その原料はどのようなものであっても良い。
【0056】
また、上記実施の形態1および2においては、いずれも長尺の基材として二軸配向の金属材料を用いた場合を例示したが、特にこれに限定されるものではなく、無配向の金属材料を用いることも可能である。さらには、いずれの実施の形態においても長尺の基材表面に予め二軸配向の酸化物薄膜が形成されている場合を例示して説明したが、二軸配向の金属材料の上に本発明の製造方法を用いて直接酸化物超電導膜を形成することも可能である。
【0057】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0058】
【発明の効果】
本発明により、酸化物超電導体の原料溶液を長尺の基材にディップコートによって塗布した場合にも、長尺の基材表面に酸化物超電導膜を均一な厚みにて形成することが可能になる。これにより超電導特性に優れた酸化物超電導線材の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1における酸化物超電導線材の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図2】 本発明の実施の形態2における酸化物超電導線材の製造装置を概略的に示す模式図である。
【図3】 図2のIII−III線における断面にて一対の回転ローラの構造を示す図である。
【符号の説明】
1 酸化物超電導線材の製造装置、2 供給ローラ、3 搬送ローラ、4 回収ローラ、5 容器、6 噴出ノズル、7 高温炉、8 ヒータ、9 長尺の基材、10 酸化物超電導体の原料溶液、11 回転ローラ、11a 溝部、11b 挟持部。

Claims (13)

  1. 長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造方法であって、
    金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、前記長尺の基材の表面に前記原料溶液を付着させる工程と、
    前記長尺の基材の表面に付着した前記原料溶液に気体を吹き付けることにより、前記長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する工程とを備えた、酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造方法であって、
    金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、前記長尺の基材の表面に前記原料溶液を付着させる工程と、
    外周面に溝を有する一対の部材にて、前記原料溶液が付着した前記長尺の基材を挟み込むことにより、前記長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する工程とを備えた、酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記長尺の基材の表面に付着した前記原料溶液に熱処理を施す工程をさらに備えた、請求項1または2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 前記金属有機化合物が、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)およびサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる金属の有機化合物である、請求項1からのいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記長尺の基材が、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、ステンレス鋼および銀(Ag)からなる群から選ばれる金属材料からなる、請求項1からのいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記長尺の基材がテープ形状である、請求項1からのいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 二軸配向の酸化物薄膜が、予め前記長尺の基材の表面に形成されている、請求項1からのいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 前記二軸配向の酸化物薄膜が、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)膜または酸化セリウム(CeO2)膜である、請求項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  9. 長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造装置であって、
    金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、前記長尺の基材の表面に前記原料溶液を付着させる溶液塗布手段と、
    前記長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する余剰溶液除去手段とを備え、
    前記余剰溶液除去手段は、気体を噴出する噴出ノズルを含み、前記長尺の基材の表面に付着した前記原料溶液に向かって前記噴出ノズルから噴出した気体が吹き付けられるように前記噴出ノズルが配置されている、酸化物超電導線材の製造装置。
  10. 長尺の基材上に酸化物超電導膜を形成することによる酸化物超電導線材の製造装置であって、
    金属有機化合物を溶媒に溶かした酸化物超電導体の原料溶液に長尺の基材を浸すことにより、前記長尺の基材の表面に前記原料溶液を付着させる溶液塗布手段と、
    前記長尺の基材の表面に付着した余剰の原料溶液を除去する余剰溶液除去手段とを備え、
    前記余剰溶液除去手段は、外周面に溝を有する一対の挟持部材を含み、前記長尺の基材の表面を挟み込むように前記一対の挟持部材が配置されている、酸化物超電導線材の製造装置。
  11. 前記一対の挟持部材は、前記長尺の基材との当接部分において、前記長尺の基材の搬送方向と同じ方向に前記長尺の基材の搬送速度よりも遅い速度にて回転する一対のローラである、請求項10に記載の酸化物超電導線材の製造装置。
  12. 前記長尺の基材を送出する供給手段と、前記酸化物超電導膜が表面上に形成された前記長尺の基材を回収する回収手段とをさらに備えた、請求項9から11のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造装置。
  13. 前記長尺の基材の表面に付着した前記原料溶液に熱処理を施す加熱手段をさらに備えた、請求項9から12のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造装置。
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