JP4174649B2 - 電池極板用格子体及びその製造方法 - Google Patents

電池極板用格子体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータリ式エキスパンダによって製造される電池極板用格子体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池の極板は、鉛又は鉛合金からなる格子体のマス目に活物質を充填したものである。この格子体は、鉛又は鉛合金の鋳造等によって直接格子状に形成する他に、鉛又は鉛合金からなる鉛シートにエキスパンダによってマス目を形成して製造する場合がある。また、このエキスパンダには、ダイスカッタの上下動作によって鉛シートに両端部から順に各マス目を形成するレシプロ方式と、円板カッタの回転によって鉛シートに千鳥状のスリットを形成し、この鉛シートを両側から引き広げることによりスリットをマス目に展開するロータリ方式とがある。
【0003】
上記ロータリ方式のエキスパンダで用いる円板カッタ1は、図15に示すように、金属製の円板の周側面に、凸部1aと平坦面1bとを周方向に沿って交互に等間隔で多数形成したものである。平坦面1bは、この円板カッタ1の円板の周側面を構成する円周面そのものからなる曲面である。なお、図15の楕円形の拡大図の中では、この円周面を平面に展開して示している。各凸部1aは、円板カッタ1の円周面から外周側に向けて山形に突出して形成されたものであり、この山形のアールが設けられた頂部が回転方向(図では矢印で示す)の前方側に偏って形成されている。
【0004】
上記円板カッタ1は、円板状の両面における1つおきの平坦面1bごとに結節部溝1cが形成されている。この結節部溝1cは、平坦面1bの長さ(隣り合う凸部1aの間の距離)と同じ幅を有すると共に、この平坦面1bの厚さ(円板カッタ1の板厚)の約半分の深さを有する円板カッタ1の円板面に半径方向に形成された溝であり、外周側には平坦面1bで開口すると共に、中心側に向けてある程度の長さを有するように形成されている。また、結節部溝1cを形成する1つおきの平坦面1bは、両面で互い違いとなるように配置されている。
【0005】
上記円板カッタ1は、多数枚をそれぞれこの円板カッタ1の厚さとほぼ同じ間隔ずつ離して共通の回転軸上に配置することにより円板カッタロールを形成する。そして、図16に示すように、これら多数枚の円板カッタ1からなる円板カッタロールを2本上下に配置して、この間に鉛シート2を通すことによりスリット2aを形成する。この際、図17に示すように、上下の円板カッタロールは、上下の円板カッタ1の平坦面1b同士がわずかに重なり合うような高さ位置に配置される。また、上方の円板カッタロールの各円板カッタ1の間に下方の円板カッタロールの各円板カッタ1が位置するように、軸方向に半ピッチだけずらして配置される。さらに、図17(a)に示すように、上方の円板カッタ1における一方の側の円板面に結節部溝1cが形成された平坦面1bが下端に達したときに、下方の円板カッタ1における他方の側の円板面に結節部溝1cが形成された平坦面1bが上端に達すると共に、、図17(b)に示すように、上方の円板カッタ1の凸部1aが下端に達したときに、下方の円板カッタ1の凸部1aが上端に達するように、回転の位相も調整される。
【0006】
上記円板カッタロールの間に鉛シート2を通すと、図16に示すように、上下の円板カッタ1の凸部1aによって鉛シート2にスリット2aが形成されると共に、この鉛シート2の幅方向に隣接して形成されたスリット2aの間の細長い桟2bが上下の凸部1aに押されて交互に上下に山形に突出する。また、上下の円板カッタ1の平坦面1bでは、図17(a)に示すように、結節部溝1c同士が背中合わせになった部分では、鉛シート2が切断されてスリット2aが連続的に形成されるが、結節部溝1c同士が向かい合わせになった部分では、鉛シート2が切断されずにスリット2aが途切れて結節部2cが形成されることになる。従って、鉛シート2に形成されるスリット2aは、凸部1aに押された山形の2山分の長さのものが、結節部2cの部分で途中途切れながら移送方向に連続的に形成される。また、隣接するスリット2aは、この結節部2cが半ピッチずれた位置で同様に連続的に形成されるので、これらのスリット2aは、図16の円内に平面図で示すように、千鳥状となる。
【0007】
上記のようにして多数のスリット2aが形成された鉛シート2は、後工程で幅方向の両側に引き広げられることにより、図18に示すように、これらのスリット2aがマス目状に広がり、各結節部2cが斜め方向に屈曲して引き出された4本の桟2bによって繋がった格子状の格子体が形成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の格子体は、鉛シート2にスリット2aを形成したときに、結節部2cに繋がる各桟2bが凸部1aに押されて基端部で屈曲するので、これらのスリット2aを格子状に展開する際に、桟2bに加わる引っ張り応力がこの結節部2cに繋がる基端部に集中することになる。そして、このように結節部2cの基端部に応力が集中すると、展開中にここに過大な負担がかかりクラックが発生することもあるため、この基端部から電解液の浸食が進行し易くなって、電池使用時に腐食による桟2bの破断を生じるおそれがある。
【0009】
このため、ロータリ方式のエキスパンダを用いて製造された従来の格子体は、結節部と繋がる基端部の腐食によって桟が破断し電池寿命が短縮されることがあるという問題が発生していた。
【0010】
本発明は、かかる事情に対処するためになされたものであり、桟が結節部から引き出された真っ直ぐな引出部を介して屈曲するように構成することにより、腐食によって破断するようなことのない電池極板用格子体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、長手方向に沿った切り込みからなるスリットが金属シートに多数千鳥状に形成され、この金属シートを幅方向に引き広げてこれらのスリットを展開することにより、長手方向に隣接する各スリット間で構成される結節部を、幅方向に隣接する各スリット間で構成される、斜め方向に屈曲して引き出された4本の桟によって繋げ格子状とした電池極板用格子体において、各結節部に繋がる4本の桟のうちの少なくとも1本が、この結節部からほぼ長手方向に引き出された引出部を介して所定斜め方向に屈曲していることを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明によれば、少なくとも1本の桟が結節部から引き出されたほぼ真っ直ぐな引出部の先で屈曲しているので、この桟の展開時の引っ張り応力が結節部の基端部だけでなく引出部全体に分散されて加わることになり、少なくともこの桟が腐食し易くなるのを防止することができる。
【0013】
請求項2の発明は、円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、金属シートの両側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部を、双方の間で位相をずらして配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明によれば、円板カッタの平坦面の位相がずれるので、1本以上の桟が、このずれた平坦部の端部に押されて結節部からほぼ真っ直ぐに引き出された引出部の先で凸部に押され山形に屈曲することになる。このため、引出部を介して屈曲した桟では、展開時の引っ張り応力が分散されるので、腐食し易くなるのを防止することができるようになる。
【0015】
請求項3の発明は、円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、金属シートの一方の側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部の周方向の長さを、金属シートの他方の側に配置した円板カッタロールのものよりも長く形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明によれば、円板カッタの平坦面の周方向の長さが異なるので、1本以上の桟が、この長い方の平坦面に押されて結節部からほぼ真っ直ぐに引き出された引出部の先で凸部に押され山形に屈曲することになる。このため、引出部を介して屈曲した桟では、展開時の引っ張り応力が分散されるので、腐食し易くなるのを防止することができるようになる。
【0017】
請求項4の発明は、円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、金属シートの両側又は片側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの結節部溝を平坦部における周方向の全長の一部にのみ開口させたことを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明によれば、円板カッタの結節部溝が平坦面の全長の一部だけに開口するので、この開口部以外の平坦面でもスリットが形成され、1本以上の桟が結節部からほぼ真っ直ぐに引き出された引出部の先で凸部に押され山形に屈曲することになる。このため、引出部を介して屈曲した桟では、展開時の引っ張り応力が分散されるので、腐食し易くなるのを防止することができるようになる。
【0019】
請求項5の発明は、円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、金属シートの両側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部を、双方の間で位相をずらして配置する設定と、金属シートの一方の側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部の周方向の長さを、金属シートの他方の側に配置した円板カッタロールのものよりも長く形成する設定と、金属シートの両側又は片側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの結節部溝を平坦部における周方向の全長の一部にのみ開口させる設定のうちのいずれか2種類以上の設定を行ったことを特徴とする。
【0020】
請求項5の発明によれば、桟が結節部からほぼ真っ直ぐに引き出された引出部の先で凸部に押され山形に屈曲する設定を2種類以上組み合わせるので、この引出部を介して屈曲した桟で、展開時の引っ張り応力が分散され、腐食し易くなるのを防止することができるようになる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜図2は本発明の第1実施形態を示すものであって、図1は格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図、図2は上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。なお、図15〜図18に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0023】
本実施形態は、従来例と同様に、鉛蓄電池の極板に用いる格子体について説明すると共に、ロータリ方式のエキスパンダによって鉛シート2からこの格子体を製造する方法について説明する。本実施形態は、図2に示すように、上下に対向させた円板カッタ1,1の位相を変化させた場合について示す。上下の円板カッタ1,1は、それぞれ複数枚ずつを組み合わせて円板カッタロールとして使用する。また、これらの円板カッタ1,1は、平坦面1bや凸部1aの円周方向の長さが等しいものを使用する。従来は、このような円板カッタ1,1を平坦面1b,1b同士が上下でずれなく重なり合うように位相を一致させて配置し回転させていた。しかし、本実施形態では、上方に配置した円板カッタ1の位相を位相角αだけ進めている。即ち、この上方の円板カッタ1を回転方向(図2の矢印方向)の前方側に少しずらして配置している。なお、図2に示す上下の円板カッタ1,1は、位相のずれが分かり易いように上下に離して示しているが、実際には、平坦面1b同士がわずかに重なり合う程度に互いに近づけて配置されている。また、この図2では、円板カッタ1,1の円周面を水平な平面に展開して示している。
【0024】
従来の位相にずれのない上下の円板カッタ1,1の間を鉛シート2が通過すると、上下の凸部1a,1aが重なり合った部分と、結節部溝1c,1cが背中合わせに開口する上下の平坦面1b,1bが重なり合った部分とでスリット2aが形成され、結節部溝1c,1cが向かい合わせに開口する上下の平坦面1b,1bが重なり合った部分で結節部2cが形成される。そして、この結節部2cにおける鉛シート2の長手方向(図1の矢印で示す進行方向)の長さは、平坦面1bの円周方向の長さ、即ち結節部溝1cの幅と一致する。
【0025】
しかし、本実施形態の円板カッタ1,1の間を鉛シート2が通過すると、上下の結節部溝1c,1cの開口部がずれるので、これらが互いに重なり合う部分でしか結節部2cが形成されず、この結節部2cの長手方向の長さは、平坦面1bの長さや結節部溝1cの幅よりも短くなる。しかも、図1に示すように、結節部2cにおける鉛シート2の長手方向の後方側では、位相が進んだ上方の円板カッタ1の凸部1aによって下方に押される桟2b(図示左手前側)が結節部2cの基端部から直ちに下方に向けて屈曲するのに対して、位相が遅れた下方の円板カッタ1の凸部1aによって上方に押される桟2b(図示左奥側)は、結節部2cから鉛シート2の長手方向に沿って後方に引き出された引出部2dの先端で上方に向けて屈曲することになる。また、結節部2cにおける鉛シート2の長手方向の前方側では、位相が遅れた下方の円板カッタ1の凸部1aによって上方に押される桟2b(図示右奥側)が結節部2cの基端部から直ちに上方に向けて屈曲するのに対して、位相が進んだ上方の円板カッタ1の凸部1aによって下方に押される桟2b(図示右手前側)は、結節部2cから鉛シート2の長手方向に沿って前方に引き出された引出部2dの先端で下方に向けて屈曲することになる。これらの引出部2dは、一方の円板カッタ1の平坦面1bによって押圧されることにより結節部2cと同様に平坦なままとなるが、他方の円板カッタ1の結節部溝1cが存在しない凸部1aによって押圧されて鉛シート2が切断されるので、完全な結節部2cには成り得なかった部分である。
【0026】
この結果、本実施形態の格子体は、各結節部2cに繋がる4本の桟2bのうち、対角方向の2本の桟2b(図示左手前側と右奥側)は、従来例と同様に、結節部2cの基端部で直ぐに屈曲して斜め方向に伸びているが、残りの2本の桟2b(図示左奥側と右手前側)は、結節部2cの基端部から一旦鉛シート2の長手方向に引き出された引出部2dの先で屈曲して斜め方向に伸びている。従って、この格子体を鉛シート2の幅方向に引き広げて展開すると、結節部2cから引出部2dを介して引き出され屈曲する2本の桟2bに加わる引っ張り応力がこの引出部2d全体に分散されるので、展開後も引出部2dはほぼ長手方向に引き出された状態を保つことができるようになる。実際、図1は、展開後の格子体を示すものであるが、円板カッタ1,1によるスリット2aの形成直後の格子体も、各桟2bの引出し角度が緩やかになる程度で、引出部2dについては展開の前後でほとんど相違がない。このため、引出部2dのない2本の桟2bについては、展開時の引っ張り応力が結節部2cの基端部に集中するので、ここに大きな歪みが生じたりクラックが発生するおそれがあるために、従来例と同様に、鉛蓄電池の使用時に電解液によって腐食し易くなるが、引出部2dのある2本の桟2bは、大きな歪みやクラックが生じないので、この電解液による腐食が起こり難くなり、このような腐食による桟2bの破断の可能性を低減することができるようになる。
【0027】
なお、本実施形態は、従来例で示した円板カッタ1をそのまま利用し、円板カッタロールを設置する際に上下に配置するものの位相をずらすだけで実施可能となる。
【0028】
図3〜図6は本発明の第2実施形態を示すものであって、図3は上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図、図4は格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図、図5は位相をずらした上下の円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図、図6は位相をずらした円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。なお、図1〜図2に示した第1実施形態と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。また、図3と図5は、図2と同様に、円板カッタの上下位置を離して示すと共に、円周面を水平な平面に展開して示し、図4と図6は、図1と同様に、実際には展開後の格子体を示すものである。
【0029】
本実施形態も、第1実施形態と同様に、鉛蓄電池の極板に用いる格子体について説明すると共に、ロータリ方式のエキスパンダの上下の円板カッタ1,1によって鉛シート2からこの格子体を製造する方法について説明する。本実施形態は、図3に示すように、上下に対向させた円板カッタ1,1の平坦面1bの長さを相違させた場合について示す。即ち、本実施形態では、下方に配置した円板カッタ1の平坦面1bの円周方向の長さLdを、上方に配置した円板カッタ1の平坦面1bの長さLuよりも長く形成している。また、これに伴い、結節部溝1cが平坦面1bに開口する幅も、下方の円板カッタ1の方が長くなる。ただし、この下方の円板カッタ1は、凸部1aの円周方向の長さを短くすることにより、平坦面1bの円周上での形成ピッチを上方の円板カッタ1と等しくなるようにしている。また、下方の円板カッタ1の平坦面1bの全長の丁度中央で上方の円板カッタ1の平坦面1bが重なり合うように、位相も一致させて配置している。
【0030】
上記上下の円板カッタ1,1の間を鉛シート2が通過すると、上下の結節部溝1c,1cの幅に差があるので、上方の円板カッタ1の結節部溝1cの短い幅と同じ長さの結節部2cしか形成されない。しかも、図4に示すように、結節部2cにおける鉛シート2の幅方向の一方側では、平坦面1bが短い上方の円板カッタ1の凸部1aによって下方に押される2本の桟2b(図示手前側)が結節部2cの基端部から直ちに下方に向けて屈曲するのに対して、平坦面1bが長い下方の円板カッタ1の凸部1aによって上方に押される2本の桟2b(図示奥側)は、結節部2cから鉛シート2の長手方向に沿って前後方向に引き出された引出部2dの先端で上方に向けて屈曲することになる。
【0031】
上記格子体を鉛シート2の幅方向に引き広げて展開すると、結節部2cから引出部2dを介して引き出され屈曲する2本の桟2bに加わる引っ張り応力がこの引出部2d全体に分散されるので、展開後も引出部2dはほぼ長手方向に引き出された状態を保つことができるようになる。このため、引出部2dの先で屈曲する2本の桟2bは、展開時に大きな歪みやクラックが生じないので、電解液による腐食が起こり難くなり、鉛蓄電池の使用時に桟2bが破断する可能性を低減することができるようになる。
【0032】
なお、上記実施形態では、上下の円板カッタ1,1の位相を一致させる場合について説明したが、この位相をずらすこともできる。例えば図5に示すように、下方の円板カッタ1の位相を進めて、結節部溝1c,1cの後方側の端が上下で一致するように配置すれば、図6に示すように、結節部2cにおける鉛シート2の長手方向の前方側で、平坦面1bが長い下方の円板カッタ1の凸部1aによって上方に押される桟2b(図示右奥側)が、結節部2cから長手方向に沿って前方に引き出された引出部2dの先端で上方に向けて屈曲することになる。そして、この桟2bに展開時に加わる引っ張り応力が引出部2d全体に分散されることにより、各結節部2cごとに1本ずつではあるが、電解液による腐食によって鉛蓄電池の使用時に桟2bが破断する可能性を低減することができるようになる。
【0033】
図7〜図14は本発明の第3実施形態を示すものであって、図7は上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図、図8は格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図、図9は結節部溝を片寄せて上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図、図10は結節部溝を片寄せた円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図、図11は結節部溝を片寄せる方向を逆にして上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図、図12は結節部溝を片寄せる方向を逆にした円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図、図13は位相をずらした上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図、図14は位相をずらした円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。なお、図1〜図6に示した第1と第2の実施形態と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。また、図7と図9と図11と図13は、図2等と同様に、円板カッタの上下位置を離して示すと共に、円周面を水平な平面に展開して示し、図8と図10と図12と図14は、図1等と同様に、実際には展開後の格子体を示すものである。
【0034】
本実施形態も、第1と第2の実施形態と同様に、鉛蓄電池の極板に用いる格子体について説明すると共に、ロータリ方式のエキスパンダの上下の円板カッタ1,1によって鉛シート2からこの格子体を製造する方法について説明する。本実施形態は、図7に示すように、平坦面1bの長さLwを結節部溝1cの幅Lnよりも長くした場合について示す。特に図7では、結節部溝1cが平坦面1bの全長Lwの中央部分にのみ幅Ln(Ln<Lw)で開口する円板カッタ1を用いている。また、この図7では、上下の円板カッタ1,1は、位相を一致させて配置される。
【0035】
上記上下の円板カッタ1,1の間を鉛シート2が通過すると、従来と同様に、上下の結節部溝1c,1cが一致して重なることにより、この結節部溝1cの幅Lnと同じ長さの結節部2cが形成されるが、この結節部2cに繋がる4本の桟2bは、それぞれの端部が結節部溝1cの開口していない平坦面1bに押されるので、図8に示すように、結節部2cから鉛シート2の長手方向に沿って前後方向に引き出された引出部2dの先端でそれぞれ上下方向に向けて屈曲することになる。
【0036】
上記格子体を鉛シート2の幅方向に引き広げて展開すると、結節部2cから引出部2dを介して引き出され屈曲する4本の桟2bに加わる引っ張り応力がこの引出部2d全体に分散されるので、展開後も引出部2dはほぼ長手方向に引き出された状態を保つことができるようになる。このため、4本の桟2bが結節部2cに繋がる全ての基端部で展開時に大きな歪みやクラックが生じないので、電解液による腐食が起こり難くなり、鉛蓄電池の使用時に桟2bが破断する可能性を著しく低減することができるようになる。
【0037】
なお、上記実施形態では、結節部溝1cを平坦面1bの中央で開口させた場合について説明したが、図9に示すように、結節部溝1cを平坦面1bの一方の端に寄せて開口させることもできる。この場合も、上下の結節部溝1c,1cが一致して重なることにより、この結節部溝1cの幅Lnと同じ長さの結節部2cが形成されるが、図10に示すように、結節部2cにおける鉛シート2の長手方向の一方側では、結節部溝1cが開口する平坦面1bの端から直ぐに突設される凸部1aによって上下方向に押される2本の桟2b(図示右側)が結節部2cの基端部から直ちに上下方向に向けて屈曲するのに対して、結節部溝1cが開口しない平坦面1bの端によって上下方向に押される2本の桟2b(図示左側)は、結節部2cから鉛シート2の長手方向に沿って後方に引き出された引出部2dの先端で上下方向に向けて屈曲することになる。そして、この2本の桟2bに展開時に加わる引っ張り応力が引出部2d全体に分散されることにより、電解液による腐食によって鉛蓄電池の使用時に桟2bが破断する可能性を低減することができるようになる。
【0038】
また、図11に示すように、平坦面1bの端に寄せて開口される結節部溝1cを上下の円板カッタ1で前後逆の端に形成することもできる。ただし、上下の円板カッタ1は、逆向きに回転するので、図9に示した円板カッタ1は、上下で異なる形状のものを使用することになるが、この図11の場合は、上下で同じ形状の円板カッタ1を使用することができ、部品の共通化を図ることができる。この場合は、上下の結節部溝1c,1cがずれるので、これらが重なり合う部分だけで結節部2cが形成される。また、図12に示すように、結節部2cに繋がる4本の桟2bが全て、結節部溝1cが開口する平坦面1bと結節部溝1cが開口しない平坦面1bとによって上下方向から押されるので、それぞれ結節部2cから鉛シート2の長手方向に沿って前後方向に引き出された引出部2dの先端で上下方向に向けて屈曲することになる。そして、これら4本の桟2bに展開時に加わる引っ張り応力が引出部2d全体に分散されることにより、電解液による腐食によって鉛蓄電池の使用時に桟2bが破断する可能性を著しく低減することができるようになる。
【0039】
また、図13に示すように、平坦面1bの端に寄せて開口される結節部溝1cを上下の円板カッタ1で前後逆の端に形成するとともに、これら上下の結節部溝1c,1cが一致して重なるように位相をずらすこともできる。この場合も、上下の平坦面1b,1bはずれるが、結節部溝1c,1cは一致して重なり、この結節部溝1cの幅Lnと同じ長さの結節部2cが形成される。また、図14に示すように、結節部2cに繋がる4本の桟2bのうち、対角方向の2本の桟2b(図示左手奥側と右手前側)は、上下の凸部1aに押されて結節部2cの基端部から直ちに上下方向に向けて屈曲するのに対して、結節部溝1cが開口しない平坦面1bの端によって上下方向に押される残り2本の桟2b(図示左手前側と右奥側)は、結節部2cから鉛シート2の長手方向に沿って前後方向に引き出された引出部2dの先端で上下方向に向けて屈曲することになる。そして、これらら2本の桟2bに展開時に加わる引っ張り応力が引出部2d全体に分散されることにより、電解液による腐食によって鉛蓄電池の使用時に桟2bが破断する可能性を低減することができるようになる。
【0040】
また、上記第1〜第3実施形態では、上下の円板カッタ1,1の位相をずらしたり、上下の平坦面1b,1bの長さを相違させたり、この円板カッタ1の平坦面1bの長さを結節部溝1cの幅よりも長くする組み合わせを種々示したが、結節部2cに繋がる少なくとも1本の桟2bが引出部2dを介して屈曲するような形状となるものであれば、これ以外の他の組み合せの円板カッタ1,1を用いることもできる。例えば上下の平坦面1b,1bの長さを相違させると共に、上下双方又はいずれか一方の結節部溝1cの幅をこの平坦面1bの長さより短くすることもでき、これに加えて上下の円板カッタ1,1の位相をずらすこともできる。
【0041】
また、上記第1〜第3実施形態では、説明を簡単にするために、上下の円板カッタ1,1の間に鉛シート2を通すことにより格子体を製造する場合について説明したが、このような円板カッタ1を組み合わせた円板カッタロールの配置は任意であり、2本の円板カッタロールを対向させた間に鉛シート2を通す場合に限らず、3本以上の円板カッタロールを鉛シート2の搬送経路上に配置することにより格子体を製造することもできる。
【0042】
また、上記第1〜第3実施形態では、鉛シート2を加工して鉛蓄電池の極板に用いる格子体を製造する場合について説明したが、鉛シート2以外の金属シートを加工して、他の電池の極板用の格子体を製造する場合にも、本発明を同様に実施することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の電池極板用格子体によれば、桟が結節部から引き出されたほぼ真っ直ぐな引出部の先で屈曲するので、この桟が腐食し易くなって破断するのを防止することができるようになる。
【0044】
また、本発明の電池極板用格子体の製造方法によれば、桟を結節部からほぼ真っ直ぐに引き出された引出部の先で屈曲させることにより、製造した格子体の桟が腐食し易くなるのを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示すものであって、格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示すものであって、上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示すものであって、上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示すものであって、格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示すものであって、位相をずらした上下の円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示すものであって、位相をずらした円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示すものであって、上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【図8】本発明の第3実施形態を示すものであって、格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示すものであって、結節部溝を片寄せて上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示すものであって、結節部溝を片寄せた円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態を示すものであって、結節部溝を片寄せる方向を逆にして上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【図12】本発明の第3実施形態を示すものであって、結節部溝を片寄せる方向を逆にした円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図13】本発明の第3実施形態を示すものであって、位相をずらした上下に配置した円板カッタの重なり合う部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【図14】本発明の第3実施形態を示すものであって、位相をずらした円板カッタにより製造された格子体の結節部付近を拡大して示した部分拡大斜視図である。
【図15】従来例を示すものであって、円板カッタとこの円板カッタの周縁部の構成を示す正面図である。
【図16】従来例を示すものであって、ロータリ方式のエキスパンダにおける円板カッタによる鉛シートへのスリットの形成工程を示す正面図である。
【図17】従来例を示すものであって、ロータリ方式のエキスパンダにおける円板カッタの配置を示す部分拡大縦断面側面図である。
【図18】従来例を示すものであって、鉛シートにスリットを形成し展開した格子体の部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
1 円板カッタ
1a 凸部
1b 平坦面
1c 結節部溝
2 鉛シート
2a スリット
2b 桟
2c 結節部
2d 引出部

Claims (5)

  1. 長手方向に沿った切り込みからなるスリットが金属シートに多数千鳥状に形成され、この金属シートを幅方向に引き広げてこれらのスリットを展開することにより、長手方向に隣接する各スリット間で構成される結節部を、幅方向に隣接する各スリット間で構成される、斜め方向に屈曲して引き出された4本の桟によって繋げ格子状とした電池極板用格子体において、
    各結節部に繋がる4本の桟のうちの少なくとも1本が、この結節部からほぼ長手方向に引き出された引出部を介して所定斜め方向に屈曲していることを特徴とする電池極板用格子体。
  2. 円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、
    金属シートの両側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部を、双方の間で位相をずらして配置したことを特徴とする電池極板用格子体の製造方法。
  3. 円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、
    金属シートの一方の側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部の周方向の長さを、金属シートの他方の側に配置した円板カッタロールのものよりも長く形成したことを特徴とする電池極板用格子体の製造方法。
  4. 円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、
    金属シートの両側又は片側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの結節部溝を平坦部における周方向の全長の一部にのみ開口させたことを特徴とする電池極板用格子体の製造方法。
  5. 円板の周側面に、外周側に向けて山形に突出する凸部と円周面乃至平面からなる平坦面とが、周方向に沿って交互に形成されると共に、円板の両面で互い違いとなる1つおきの平坦面に外周端が開口する結節部溝が、この円板の両面の周縁部にそれぞれ形成された円板カッタを複数枚同軸上に間隔を開けて配置して回転させ、これら円板カッタを複数枚配置回転させた2本の円板カッタロールを、各円板カッタの凸部がこれら円板カッタの間隙に嵌まるように対向させた間に金属シートを通すことにより、この金属シートに長手方向に沿った切り込みからなるスリットを形成する電池極板用格子体の製造方法において、
    金属シートの両側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部を、双方の間で位相をずらして配置する設定と、
    金属シートの一方の側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの平坦部の周方向の長さを、金属シートの他方の側に配置した円板カッタロールのものよりも長く形成する設定と、
    金属シートの両側又は片側に配置した円板カッタロールの各円板カッタの結節部溝を平坦部における周方向の全長の一部にのみ開口させる設定のうちのいずれか2種類以上の設定を行ったことを特徴とする電池極板用格子体の製造方法。
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