JP4171057B2 - ニッケル溶出防止機能付給水装置 - Google Patents

ニッケル溶出防止機能付給水装置 Download PDF

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Description

本発明は、水栓金具・継手・配管部品等の水道用品等、水源からの水を通水する通水路を有する給水装置に関する。特に、本発明は、外部表面へのニッケル等の特定金属のめっきに伴い通水路に沿った内部表面にニッケル付着層等の特定金属層が形成された給水装置において、通水に伴うニッケル等の特定金属の浸出や溶出を防止することができるニッケル溶出防止機能付給水装置及び金属溶出防止機能付給水装置に関する。
従来から、混合水栓の水栓金具、水栓金具用の継手や配管部品、浄水器用配管部品等の水道用品乃至給水装置は、一般に、青銅、黄銅の銅合金を鋳造又は鍛造し、切削加工、研磨加工等で所望形状に整形し、整形後の鋳造品若しくは鍛造品、または、整形後の鋳造品若しくは鍛造品にニッケルめっきやクロムめっきを施した鋳造品若しくは鍛造品として提供される。
また、水道用品乃至給水装置の銅合金としては、製造過程中の切削加工の際に銅合金の切削製を向上させるために、銅合金(特に黄銅)中に鉛を添加した鉛含有銅合金(特に快削黄銅)が使用されている。しかし、昨今の環境規制の動向から、製品化後の水道用品乃至給水装置からの鉛の溶出が問題視されるようになり、水道用品乃至給水装置から鉛を除去する鉛除去乃至鉛フリー(NPb)表面処理技術が開発されている。
かかるNPb表面処理に関する文献としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
特開2000−96269
特許文献1には、鉛含有銅合金素材の表面にクロメート処理を行い、クロメート皮膜を形成することによって鉛溶出を防止する処理方法が開示されている。この処理方法によれば、鉛含有銅合金を、リン酸を添加したクロメート液に浸漬している。この処理方法によれば、クロメート液に含まれるクロム酸とリン酸の相乗効果により、鉛含有銅合金が溶解する化学反応と、クロメート被膜を形成する化学反応が生じて鉛含有銅合金素材表面に僅かに残った鉛も溶解除去され、しかも鉛を除去した鉛含有銅合金材表面がクロメート被膜で保護されて、鉛除去後の鉛含有銅合金材表面が長期間の通水による腐食で内部の鉛が溶け出したりせず、長期間にわたって鉛の溶出を低減することができるとされている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、NPb処理により銅合金表面の鉛を除去し、製品化からの鉛の溶出を低減することは可能になる一方、銅合金表面にニッケルめっきを施しためっき品の場合、銅合金からなる製品素地表面へのニッケルめっきは、電解めっきにより行われるため、めっき時のめっき浴内での通電により、製品素地表面のみならず、製品素地の開口部から内部にニッケルが侵入して、その内部表面の一部(特に、開口部近傍の内部表面部分)にもニッケル付着層が形成される。このニッケル付着層は製品素地表面のニッケルめっき層のように意図して形成したものではないが、ニッケルめっき層と同様の組成である。よって、給水装置に具体化される製品の場合、給水装置の通水に伴い(特に、非通水時において給水装置内部の前記ニッケル付着層部分に水が滞留する場合)、製品素地の内部表面に形成されたニッケルめっき層から、ニッケルが微量ではあるが通水中に浸出または溶出することになる。給水装置におけるニッケルの浸出については、未だ規制の対象となってはいないが、将来的に規制対象となることも予想され、給水装置におけるニッケル浸出防止技術については潜在的に多大な要請がある。しかし、上記のように、給水装置におけるニッケルの浸出については未だ規制の対象となってはいないことからも、従来、給水装置におけるニッケルの浸出防止技術について具体的技術の提案はない。
また、給水装置には、上記のように、通水路の素地が鉛含有金属材から構成される場合、通水路の内部表面から鉛が通水中に浸出・溶出する可能性があるため、例えば、特許文献1のような鉛溶出防止技術を採用する必要がある。しかし、給水装置の銅合金からの鉛の溶出防止技術として、特許文献1のようにクロメート被膜処理を使用する場合、クロメート処理の結果発生する六価クロムについて、所定の規制値以下となるよう処理する必要があり、特許文献1のクロメート処理以外の技術により鉛の溶出を抑制できれば好都合である。更に、鉛以外の有害金属成分、例えば、カドミウム等が給水装置の通水路を構成する素地等に含有される場合、これらの有害金属成分が、通水路の内部表面から通水中に浸出・溶出する可能性がある。よって、この場合も、やはり、何らかの浸出・溶出防止技術を採用する必要がある。
更に、水栓等の給水装置において、快削黄銅等の銅合金からなる素地表面(外部表面及び内部表面)にニッケルめっき層を形成した場合、銅及びニッケルという2つの異種金属が、ニッケルめっき層と素地表面との境界面(界面)で接触することになり、クラックやピンホール等の原因により、通水に伴ってその境界面に水が浸入すると、水を媒介として腐食電池作用が発生する。この場合、銅の方がニッケルよりイオン化傾向が小さく、銅が貴な金属、ニッケルが卑な金属となるため、境界面部分のニッケルが腐食(湿食)して溶解し、ニッケルめっき層が損傷する可能性がある。また、浄水器における金属製給水口と配管ホースの金属製接続口との接続部分や、水栓における(本来の)吐水口と自在吐水口等の延長用吐水口との接続部分等、2つの管の接続部では、それらの接続部の一方をめっき作業時にマスキングし、めっき層を形成しないようにすることから、接続部の一方では素地金属(銅合金)が内部表面として露出し、他方ではめっき金属であるニッケル等が内部表面として露出する。よって、この場合も、接続部の接続境界面で、銅及びニッケルという2つの異種金属が接触することになり、特に接続部に隙間がある場合等に、通水に伴ってその隙間等に水が浸入すると、腐食電池作用により境界面部分のニッケルが腐食する可能性がある。
更に、水栓や浄水器の配管ホースの吐水口において、先端部内部表面がめっき時にマスキングされて素地金属(銅合金)が露出する素地表面とされた場合、その素地表面部分で腐食が発生する可能性がある。即ち、通常、水栓等の素地表面である銅表面には保護被膜が形成され、通水路の内部表面として素地表面が存在する場合にその素地表面を腐食から保護している。しかし、この素地表面の保護皮膜は、通水路内の水流による腐食磨耗(エロージョン・コロージョン)により破壊されて素地表面から物理的に取り除かれ、素地表面(銅表面)で腐食電池作用により腐食が増大する可能性がある。或いは、通水路内の屈曲部や幅狭部等で素地表面が露出する場合、比較的流れの速い配管内等、流速が急激に変化する箇所で発生するキャビテーション腐食により、通水路内の屈曲部や幅狭部等で保護皮膜が破壊され、同様に、素地表面(銅表面)やめっき表面で腐食電池作用により腐食が増大する可能性もある。特に、上記のように、2つの管の接続部の接続境界面で小さな隙間が発生すると、その隙間で強い渦巻状の水流が発生し、水中の気泡が破裂する際の衝撃や腐食電池作用等により、キャビテーション腐食が一層進行する可能性があり、めっき層が存在する場合でも、めっき層が大きく破壊されて、素地部分まで損傷が及ぶ可能性もある。更に、浄水器の場合、活性炭等からなる浄水カートリッジにより炭酸カルシウム等の不純物を除去された浄水が通水路を流れるため、炭酸カルシウム等による保護膜形成作用がなく上記腐食が一層早期に進行する可能性がある。更にまた、サーモスタット式湯水混合栓においても、同様にして、局部腐食が発生する可能性があり、ニッケルめっき等が腐食により通水中に浸出・溶出する可能性がある。
なお、水栓、水栓部品、浄水器等の給水装置以外にも、通水環境下で使用され、通水(吐水)が最終的に人的に摂取されるような器具または部品等においては、各種金属またはプラスチック材の表面にニッケル(Ni)めっき、ニッケルクロム(NiCr)めっき、クロメート処理等、装飾または耐食皮膜が内部表面を含む表面に施されることがある。この場合も、これらの器具または部品等の内部表面のニッケル等が通水中に浸出または溶出し、最終的に人体に摂取される可能性がある。よって、給水装置以外のこれらの器具や部品についても、ニッケル等の浸出防止技術に対する潜在的な要請があると思われる。
なお、かかるニッケル溶出防止技術としては、特許文献2乃至4に記載の技術がある。
特開2002−155391 特開2004−156136 特開2005−8900
しかし、これらの技術は、いずれも、給水器具の内部のニッケルめっきを除去する特殊な除去工程を必要としたり(特許文献2及び3)、ニッケル析出面を覆ったり不動態化したり他の金属で置換(被覆)したりする工程を必要としたり(特許文献4)、そのめっき工程と一連の製造工程においてニッケル溶出防止処理を行っている。よって、そのための特殊な製造設備や製造技術が必要となる。
そこで、本発明は、通水環境下に置かれる通水路の内部表面に、ニッケル等の特定金属からなるめっき層等の付着層が存在する場合でも、通水中へのニッケル等の特定金属の浸出や溶出を大幅に抑制することができ、また、必要に応じて、通水路中においてキャビテーション腐食が発生しやすい部位における当該キャビテーション腐食の発生を抑制乃至防止することができるニッケル溶出防止機能付給水装置及び金属溶出防止機能付給水装置の提供を課題とする。また、本発明は、水道水または浄水中に溶出するニッケル等の量を抑制するための卑金属部を当該ニッケル等の溶出抑制以外の目的でも活用すべく、卑金属部が水道水または浄水中に微量だけ(確実に規制値の範囲内で)溶出することを利用して、必須ミネラル(鉄、亜鉛、コバルト、マグネシウム等)を飲用水から補給させることができるニッケル溶出防止機能付給水装置及び金属溶出防止機能付給水装置を別の課題とする。
請求項1に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、開口部を有する銅系金属材製の素地の外部表面にニッケルめっきを施してなり、同ニッケルめっきに伴って前記素地のめっき対象でない開口部から通水路に沿った内部表面に不純物を含む粗雑なめっき層としてのニッケル付着層が形成された給水具からなる水道用品としての給水装置である。このニッケル溶出防止機能付給水装置は、給水具の通水路における内部表面において、前記ニッケル付着層が存在する部位であって、かつ、給水を停止したときでも水が付着または滞留する部位の範囲内に亜鉛または亜鉛合金からなる水道用品の交換部品としての卑金属部を設けると共に、前記卑金属部の全面に前記通水路内の水が流通して、前記卑金属部の全面が常に通水または通水停止時の前記通水路内の水と接触するようにして、前記通水路の内部表面で水を媒体として前記卑金属部の全面と前記ニッケル付着層との間で電池を形成し、前記卑金属部の全面により、前記給水具の通水停止時に前記通水路内の残留水が付着する前記ニッケル付着層からのニッケル溶出を基準値以下に抑制するようにし、かつ、前記卑金属部から必須ミネラルとしての亜鉛をその基準値の範囲内で溶出させるようにしている。
請求項2に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1の構成において、前記ニッケル付着層の総表面積に対する前記卑金属部の卑金属層の総表面積の比を1:3〜1:4の範囲としている。
請求項3に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1の構成において、前記ニッケル付着層の総表面積に対する前記卑金属部の卑金属層の総表面積の比を1:4としている。
請求項4に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、更に、前記給水具の管部の下面側において止水用の弁座の弁孔と対向する位置に一体形成されて下方に突出する円筒状をなし、上端を前記弁座の弁孔に対向して前記通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の下端に水密に装着される蓋部とを備え、前記卑金属部は、前記突出部の内径より若干小さい径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛塊は、前記突出部内に同軸状に配置されてその円形の上端面が前記弁座の弁孔と対向し、前記弁座より上流側の通水路で常に通水及び通水停止時の水と接触するようにしている。
請求項5に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、更に、前記給水具の吐水パイプの基端部の下面側に一体形成されて下方に突出する円筒状をなし、上端を前記吐水パイプ内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の下端に水密に装着される蓋部とからなる卑金属部提供部を備え、前記卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で通水路の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊へと流通するようにしている。
請求項6に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、更に、上端の円形開口にネット部を装着すると共に下端に整流板を一体的に設けた円筒状の収容通水部と、前記収容通水部を収容するケース部とを有し、前記給水具の吐水パイプの円筒状の吐水口に着脱自在に取付けられる泡沫金具からなる卑金属部提供部を備え、前記卑金属部は、少なくとも、前記収容通水部の内径より若干小さい径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒からなり、前記亜鉛筒は前記収容通水部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの先端側の吐水部で内部の水が前記収容通水部内の前記亜鉛筒へと流通するようにしている。
請求項7に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、更に、前記給水具の吐水パイプの基端部の下面側に一体形成されて下方に突出する円筒状をなし、上端を前記吐水パイプ内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の下端に水密に装着される蓋部とからなる第1の卑金属部提供部と、上端の円形開口にネット部を装着すると共に下端に整流板を一体的に設けた円筒状の収容通水部と、前記収容通水部を収容するケース部とを有し、前記給水具の吐水パイプの円筒状の吐水口に着脱自在に取付けられる泡沫金具からなる第2の卑金属部提供部とを備え、前記第1の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で通水路の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊へと流通するようにし、前記第2の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記収容通水部の内径より若干小さい径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒からなり、前記亜鉛筒は前記収容通水部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの先端側の吐水部で内部の水が前記収容通水部内の前記亜鉛筒へと流通するようにしている。
請求項8に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、更に、前記給水具の回動部の後面側において吐水パイプと反対側に一体形成されて後方に突出する円筒状をなし、基端を前記回動部内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の先端に水密に装着される蓋部とを備え、前記卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で前記回動部内の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と接触するようにしている。
請求項9に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、更に、前記給水具の回動部の後面側において吐水パイプと反対側に一体形成されて後方に突出する円筒状をなし、基端を前記回動部内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の先端に水密に装着される蓋部とからなる第1の卑金属部提供部と、上端の円形開口にネット部を装着すると共に下端に整流板を一体的に設けた円筒状の収容通水部と、前記収容通水部を収容するケース部とを有し、前記給水具の吐水パイプの円筒状の吐水口に着脱自在に取付けられる泡沫金具からなる第2の卑金属部提供部とを備え、前記第1の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で前記回動部内の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と接触するようにし、前記第2の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記収容通水部の内径より若干小さい径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒からなり、前記亜鉛筒は前記収容通水部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの先端側の吐水部で内部の水が前記収容通水部内の前記亜鉛筒へと流通するようにしている。
請求項10に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項5乃至9のいずれかの構成において、前記卑金属部は、更に、前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周側に間隔を置いて同軸状に配置された状態で前記卑金属部提供部に収容される円筒状の鉄筒を有し、前記卑金属部提供部内の水が前記鉄筒の外周面側、前記鉄筒の内周面と前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周面との間を流通するようにしている。
請求項11に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記給水具は、浄水カートリッジ及び浄水カートリッジを内装した収容部を有する浄水器本体を備える浄水器であり、更に、前記浄水器の収容部に着脱自在に固定されて前記収容部の浄水通路に同軸状に接続される略円筒ケース状をなす卑金属部収容部を備え、前記卑金属部は、少なくとも、前記卑金属部収容部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記卑金属部収容部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記卑金属部収容部内に同軸状に配置され、前記浄水器本体内の水が前記卑金属部収容部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と常に接触するようにしている。
請求項12に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記給水具は、浄水カートリッジ及び浄水カートリッジを内装した収容部を有する浄水器本体を備える浄水器であり、更に、前記浄水器の収容部の浄水側に着脱自在に固定され、前記収容部の浄水通路の先端に同軸状に接続されて前記収容部の浄水通路からの浄水をパイプに供給する略円筒ケース状をなす第1の卑金属部収容部(本体側取付部)と、前記浄水器の収容部の原水側に設けられ、原水を前記収容部内の原水通路から前記浄水カートリッジに供給する円筒状の第2の卑金属部収容部(接続部)とを備え、前記第1の卑金属部収容部の卑金属部は、少なくとも、前記第1の卑金属部収容部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記卑金属部収容部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記第1の卑金属部収容部内に同軸状に配置され、前記浄水器本体内の浄水側の水が前記卑金属部収容部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と常に接触するようにし、前記第2の卑金属部収容部の卑金属部は、少なくとも、前記第2の卑金属部収容部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記卑金属部収容部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記第2の卑金属部収容部内に同軸状に配置され、前記浄水器本体内の原水側の水が前記卑金属部収容部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と常に接触するようにしている。
請求項13に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項11または12の構成において、前記卑金属部は、更に、前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周側に間隔を置いて同軸状に配置された状態で前記卑金属部収容部に収容される円筒状の鉄筒を有し、前記卑金属部収容部内の水が前記鉄筒の外周面側、前記鉄筒の内周面と前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周面との間を流通するようにしている。
請求項14に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項11または12の構成において、前記卑金属部は、更に、前記鉄筒の外周側に間隔を置いて同軸状に配置された状態で前記卑金属部収容部に収容される円筒状のニッケル筒を有し、前記卑金属部収容部内の水が前記ニッケル筒の外周面側、前記ニッケル筒の内周面と前記鉄筒の内周面との間、前記鉄筒と前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周面との間を流通するようにしている。
請求項15に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記卑金属部は、前記給水具としての給水栓の給水栓こまからなり、前記給水栓こまは、亜鉛に対するすずの割合を5%以下とした亜鉛すず合金めっきを溶融めっき法により黄銅製の素地上に500μm〜1000μmの膜厚範囲で形成した後、前記亜鉛すず合金めっきを180℃〜350℃の熱処理温度で加熱して熱融合処理し、めっき被膜の亜鉛及びすずの粒子を加熱により液状化して融合化させ、その融合化を進行させて完全に合金化すると共に、めっき被膜の亜鉛及びすずの各成分を黄銅製の素地の素材に拡散して、その拡散層によりめっき被膜を前記黄銅製の素地と一体化したものである。
請求項16に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記卑金属部は、前記給水具としての給水栓の通水路に嵌合される亜鉛リングからなり、前記亜鉛リングは、亜鉛に対するすずの割合を5%以下とした亜鉛すず合金めっきを溶融めっき法により黄銅製の素地上に500μm〜1000μmの膜厚範囲で形成した後、前記亜鉛すず合金めっきを180℃〜350℃の熱処理温度で加熱して熱融合処理し、めっき被膜の亜鉛及びすずの粒子を加熱により液状化して融合化させ、その融合化を進行させて完全に合金化すると共に、めっき被膜の亜鉛及びすずの各成分を黄銅製の素地の素材に拡散して、その拡散層によりめっき被膜を前記黄銅製の素地と一体化したものである。
請求項17に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項16の構成において、前記亜鉛リングは、厚さ方向に貫通形成された複数の小孔を有し、亜鉛リングの表面上に存在する水が、前記小孔を介して前記亜鉛リングの厚さ方向一側面から他側面へと流通し、前記亜鉛リングにおいて前記給水具の通水路に面する一側面のみならず前記通水路に面しない他側面の全面に拡散して行き渡るようにしている。
請求項18に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項16の構成において、前記亜鉛リングは、内周面から外周面へと向かう方向に貫通形成された複数の小孔を有し、亜鉛リングの表面上に存在する水が、前記小孔を介して前記亜鉛リングの内周面から外周面に流通し、前記亜鉛リングにおいて前記給水具の通水路に面する内周面のみならず前記通水路に面しない外周面の全面に拡散して行き渡るようにしている。
請求項19に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、請求項17または18の構成において、前記亜鉛リングの厚さ方向両側面並びに外周面及び内周面に、ローレット加工により祖表面部としてのローレット部を形成している。
本発明に係るニッケル溶出防止機能付給水装置及び金属溶出防止機能付給水装置は、通水環境下に置かれる通水路の内部表面に、ニッケル等の特定金属からなるめっき層等の付着層が存在する場合でも、通水中へのニッケル等の特定金属の浸出や溶出を大幅に抑制することができ、また、必要に応じて、通水路中においてキャビテーション腐食が発生しやすい部位における当該キャビテーション腐食の発生を抑制乃至防止することができる。また、本発明に係るニッケル溶出防止機能付給水装置及び金属溶出防止機能付給水装置は、水道水または浄水中に溶出するニッケル等の量を抑制するための卑金属部を当該ニッケル等の溶出抑制以外の目的でも活用すべく、卑金属部が水道水または浄水中に微量だけ(確実に規制値の範囲内で)溶出することを利用して、必須ミネラル(鉄、亜鉛、コバルト、マグネシウム等)を飲用水から補給させることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その重複する説明は省略する。
実施の形態1
以下、本発明の実施の形態1に係るニッケル溶出防止機能付給水装置としてのニッケルフリー給水装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓を示す一部断面図である。
図1に示すように、実施の形態1に係るニッケルフリー給水装置は、単水栓10に自在吐水パイプ20を接続した壁付けタイプの自在単水栓(蛇口)10,20に具体化される。単水栓10は、管部11内部に弁孔12aを有する弁座12を一体形成している。管部11の内部には、前記弁座12を境にして第1の通水路11aと第2の通水路11bとが形成され、弁座12の弁孔12aを介して第1及び第2の通水路11a,11bが互いに連通されている。管部11の基端側には、壁側で給水管の先端に螺合して連続される給水口13が設けられ、給水口13の開口を介して、第1の通水路11aが給水管の通水路に接続して連通するようになっている。また、管部11の先端側には吐水口14が設けられている。更に、管部11は、快削黄銅等の鉛含有銅合金(銅系金属材)製の素地からなると共に、その素地表面(外部表面)には、ニッケルめっき層またはニッケルクロムめっき層からなるめっき層が形成されている。更に、ニッケルまたはニッケルクロムを主体とするニッケル付着層が、管部11の素地の外部表面のみならず、管部11の開口部(上部取付孔11c、給水口13、吐水口14)から内部表面にも、外部表面のめっきに付随して形成されている。詳細には、管部11の外部表面のめっき層形成に伴い、管部11の上部取付孔11cから内部にわたる所定範囲、給水口13から内部にわたる所定範囲及び吐水口14から内部にわたる所定範囲のそれぞれの内部表面に、ニッケル付着層が形成されている。また、管部11の素地の内部表面において前記上部取付孔11cと対向する部位である弁座12の周辺にもニッケル付着層が形成されている。即ち、管部11の第1及び第2の通水路11a,11bに沿った内部表面の一部及び弁座12の表面付近には、ニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきに伴い、ニッケルまたはニッケルクロムを主体とするニッケル付着層が形成されている。この内部表面のニッケル付着層は、後述するように、意図して形成されるものではなく、めっき時に開口部を閉塞する処理(マスク処理)等の特殊な処理を行わない限り、外部表面へのめっきに伴って必然的に形成されるものである。
一方、管部11の上部取付孔11cにはスピンドル15がカバーナット16を介して挿着されている。スピンドル15の上端にはハンドル17が螺着されると共に、スピンドル15の下端にはこま18が固着されている。また、スピンドル15は快削黄銅等の鉛含有銅合金からなる素地表面に、ニッケルめっき層またはニッケルクロムめっき層からなるめっき層を形成している。或いは、スピンドル15は、めっき層を形成することなく、素地表面を露出したものとすることもできる。更に、こま18は、ケレップ18aと、ケレップ18aの下端に固着したこまパッキン18bとからなる。ハンドル17を正逆回転することにより、スピンドル15を介して、こま18が弁座12に接近してこまパッキン18bが弁座12に着座したり弁座12から離間したりして、こまパッキン18bにより弁孔12aを閉塞したり開放したりすることにより、第1及び第2の通水路11a,11bを連通遮断したり連通したりするようになっている。
ここで、実施の形態1では、前記こま18のケレップ18aは、快削黄銅等の鉛含有銅合金製の素地の表面に、亜鉛めっきからなる卑金属めっき層を形成している。即ち、単水栓10の内部部品としてのこま18のケレップ18aの表面は、ニッケルよりイオン化傾向の大きな金属(卑な金属)である亜鉛からなる卑金属表面とされている。ここで、亜鉛めっきによる卑金属めっき層の膜厚、即ち、ケレップ18aの表面全体に形成する亜鉛めっき層の膜厚は、電解メッキ法による場合、約50〜100μmの範囲内とすることが好ましく、更に、約80〜100μmの範囲内とすることが一層好ましい。また、こま18のケレップ18aの亜鉛メッキ層の膜厚は、溶融亜鉛めっき法(どぶづけ法または浸漬処理法とも呼ばれる)による場合、より大きなものとすることができる。この場合、ケレップ18aの表面全体に形成する亜鉛めっき層の膜厚は、約100〜300μmの範囲内とすることが好ましい。一方、めっき層を形成する亜鉛は、亜鉛単体であってもよく、または、亜鉛とコバルトや鉄等のニッケルよりも卑な金属(イオン化傾向の大きな金属)との亜鉛合金としてもよい。例えば、亜鉛合金として、亜鉛コバルト(ZnCo)合金めっき、亜鉛コバルト鉄(ZnCoFe)合金めっきを使用することができる。或いは、亜鉛とニッケルとの亜鉛合金であるニッケル亜鉛(NiZn)合金を使用することもできる。更に、クロム代替品としても使用される錫コバルト(SnCo)合金の使用も場合によっては可能となる。
これらの亜鉛合金のうち、ニッケルの溶出防止の点では、亜鉛コバルト(ZnCo)合金めっきや亜鉛コバルト鉄(ZnCoFe)合金めっきの使用が好ましい。いずれにせよ、亜鉛合金の場合、亜鉛の割合を90%超とし、残り(数%)を鉄やコバルト等のニッケルより卑な金属とすることが好ましい。特に、亜鉛コバルト鉄(ZnCoFe)合金の場合、鉄(Fe)により錆の発生等の問題に留意する必要があるが、鉄の混合量を少量とすれば問題ない。亜鉛コバルト鉄(ZnCoFe)合金の場合、めっきが容易であるという利点がある。なお、ニッケルに対する卑な金属として、亜鉛または亜鉛合金以外に、アルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)の使用も可能であるが、アルミニウムについては食品規制があるため、やはり上記のような亜鉛または亜鉛合金の使用が好ましい。また、マグネシウムは、水が加わる(接触する)と発熱し、また、溶解するため、やはり上記のような亜鉛または亜鉛合金の使用が好ましい。なお、本発明者らが行なった耐久テスト(経年変化試験)の結果、亜鉛合金における亜鉛の割合を90%超とする限り、亜鉛と亜鉛合金との間でニッケル溶出抑制効果に差はないことが確認された。また、卑金属層としての亜鉛めっき層の耐久性の点では、亜鉛合金のほうが耐久性が向上する。本発明者らがトイレ蛇口にケレップ18aを取付けて耐久テスト(経年変化試験)を行なった結果、ケレップ18aに亜鉛単体からなる亜鉛めっき層を100μmの膜厚で形成した場合、約10μm/月の割合で亜鉛めっき層が溶出して膜厚を減少した。よって、この場合、約半年でケレップ18aの交換が必要となる。これに対して、ケレップ18aに亜鉛合金からなる亜鉛めっき層を同一の膜厚で形成した場合、より長期間、膜厚が持続した。なお、ケレップ18aの素地自体を亜鉛または亜鉛合金により形成して卑金属部とすることも可能であるが、この場合、ある程度の期間使用すると、通水により素地が腐食して形状を維持できなくなるため、卑金属部としては、亜鉛めっき層を使用することが好ましい。また、亜鉛メッキ層は、こま18のケレップ18a表面の全体に形成されるが、内部表面のニッケル付着層の面積に対する卑金属表面の面積比との関係で、ケレップ18aの表面の一部にのみ形成してもよい。加えて、実施の形態1の単水栓10では、管部11の止水部(弁座12部分)より上流側の管壁には、卑金属部としてのブッシュ19Aが着脱自在に取付けられている。詳細には、ブッシュ19Aは、その外周面に雄ねじを螺刻した六角ナット状の部材であり、そのねじ表面を含む外表面全体に、上記のような卑金属めっき層を形成している。また、管部11の管壁において止水部(弁座12部分)より上流側の所定位置には、ブッシュ19Aの雄ねじに対応する雌ねじを有する螺入孔を有する本体19Bが一体形成されている。そして、ブッシュ19Aを本体19Bに水密に螺入して取付けることにより、ブッシュ19Aが管部11の通水路11a内部に突出し、通水路11a中でニッケル溶出防止作用を発揮するようになっている。なお、ブッシュ19Aと本体19Bとの間での水密を維持するため、本体19Bまたはブッシュ19A間にシール部材等の水密維持部材を介装する。また、ブッシュ19Aは、使用経過により表面の卑金属めっき層が減少して初期の効果を発揮しなくなった場合、本体19Bから螺退して取外し、新しいブッシュ19Aと容易に交換自在となっている。なお、前記ブッシュ19A及び本体19Bにより、卑金属部としてのブッシュ19Aを通水路11a内に配置して提供する卑金属部提供部19が構成されている。
一方、前記自在吐水パイプ20は、単水栓10の管部11の本来の吐水口14に、パイプナット(袋ナット)21を介して自在吐水パイプ22を連通したものである。自在吐水パイプ22の内部には通水路22aが形成されている。また、自在吐水パイプ22の基端側には単水栓10の吐水口14に接続される給水口23が設けられ、給水口23の開口を介して、単水栓10の吐水口14が自在吐水パイプ22の通水路22aに接続して連通するようになっている。自在吐水パイプ22の先端側には吐水口24が設けられている。更に、自在吐水パイプ22は、快削黄銅等の鉛含有銅合金(銅系金属材)製の素地からなると共に、その素地表面には、ニッケルめっき層またはニッケルクロムめっき層からなるめっき層が形成されている。更に、ニッケルまたはニッケルクロムを主体とするニッケル付着層が、自在吐水パイプ22の素地の外部表面のみならず、自在吐水パイプ22の開口部(給水口23、吐水口24)から内部表面にも、外部表面のめっきに付随して形成されている。詳細には、自在吐水パイプ22の外部表面のめっき層形成に伴い、自在吐水パイプ22の給水口23から内部にわたる所定範囲及び吐水口24から内部にわたる所定範囲のそれぞれの内部表面に、ニッケル付着層が形成されている。即ち、自在吐水パイプ22の通水路22aに沿った内部表面の一部に、ニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきに伴い、ニッケルまたはニッケルクロムを主体とするニッケル付着層が形成されている。この内部表面のニッケル付着層は、下記のように、意図して形成されるものではなく、めっき時に開口部を閉塞する処理(マスク処理)等の特殊な処理を行わない限り、外部表面へのめっきに伴って必然的に形成されるものである。なお、自在吐水パイプ22の吐水口24の内部には、整流板25Bが収容固定されている。ここで、この整流板25Bを卑金属部としてもよい。即ち、整流板25Bの真鍮等の素地に上記のような亜鉛めっきまたは亜鉛合金面を施し、卑金属めっき面を設けて、吐水口24でのニッケル溶出防止及び(後述する)キャビテーション腐食の防止を行うようにしてもよい。
ここで、ニッケル付着層について、図2を参照し、開口部としての自在吐水パイプ22の吐水口(水切り)24に形成される場合を例にとって説明する。図2は本発明の実施の形態1に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓の自在吐水パイプの吐水口部分を示す拡大断面図である。なお、その他の開口部(管部11の上部取付孔11c等)の場合も同様であるので、重複する説明は省略する。まず、ニッケル(Ni)は、管部11や自在吐水パイプ22のような水栓部品等のニッケルめっき工程において、素地の外部表面のみならず、本来はニッケルの被覆対象(めっき対象)ではない素地の内部表面にも付着して、意図しないニッケル付着層を形成する。具体的には、粗雑な(意図しない)めっき層としてのニッケル付着層PIが、管部11や自在吐水パイプ22におけるめっき時の弱電部分(即ち、外部表面の強電部分のように積極的に電流を流さない内面部分、特に、開口部から内部に入る内部表面部分)に付着する。このニッケル付着層PIは、外部表面に形成されるニッケルめっき層POと同様にニッケルを主体とする皮膜状のものであるが、電気めっき浴において大きな電流が流れる場所(強電部)に多く付着する。例えば、電解めっき浴において、管部11や自在吐水パイプ22の素地の外部には約10Aの電流が流れる一方、その内部には約0.1Aの電流が流れる。即ち、めっき時の電流は、めっき品の素地の外部表面では通常強電部となり、内部表面では弱電部となる。よって、ニッケルめっき工程において、素地の内部(弱電部)は低電流で処理されることになり、かつ、素地の内部で不純物が混合するため、結果として、素地の内部表面に形成されるニッケル付着層PIは、粗雑なめっき層となる。このように、素地乃至自在吐水パイプ22の外部表面から開口部としての吐水口24を経て内部表面にわたり、本来の(意図した)Niめっき層POに加えて、(意図しない)粗雑なめっき層とも呼ぶべきニッケル付着層PIが形成される。この粗雑なめっき層(ニッケル付着層)PIは、弱電処理された不純物を含む層であるため、内部表面への通水または水の付着に伴い、特にニッケル(Ni)が溶出しやすくなる。なお、真鍮(CuZn)等の銅合金に対するニッケルめっき処理では、金属不純物の量によってニッケルの溶出量が変わることになる。また、ニッケル液の性状もニッケル溶出に影響を与える要因(ファクター)となる。このようにして形成された粗雑なめっき層であるニッケル付着層PIの膜厚は、図2に示すように、素地乃至自在吐水パイプ22の吐水口24から内部に向かうにつれて徐々に薄くなる。なお、図2では、説明の便宜上、外部表面のニッケルめっき層POの膜厚や内部表面のニッケル付着層PIの膜厚を実際より大きく描画している。
次に、上記のように構成した実施の形態1に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓の作用及び効果について説明する。まず、単水栓10のハンドル17を回転してこまパッキン18bを弁座12から離間し、第1及び第2の通水路11a,11bを連通すると、給水管からの給水が、管部11の給水口13から第1及び第2の通水路22aを経て吐水口24へと流れ、最終的に、整流板25Bから吐出される。このとき、弁座12の表面を含む管部11の内部表面において、弁座12の周辺の所定範囲、給水口13の開口から内部にわたる所定範囲及び吐水口14の開口から内部にわたる所定範囲には、それぞれ、ニッケル付着層が形成されている。また、スピンドル15の表面にもニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるめっき層が設けられている。更に、自在吐水パイプ22の内部表面において、給水口23の開口から内部にわたる所定範囲及び吐水口24の開口から内部にわたる所定範囲には、それぞれ、ニッケル付着層が形成されている。したがって、管部11の第1及び第2の通水路11a,11bへの通水及び自在吐水パイプ22の通水路22aへの通水に伴い、特に、管部11及び自在吐水パイプ22の内部表面の粗雑なめっき層であるニッケル付着層に含有されるニッケルが、通水中に浸出または溶出することが考えられる。ただし、この場合のニッケルの溶出は、後述する通水停止時に比べると、通水量に対して非常に微量なものになると考えられ、場合によっては、通水中のニッケル濃度は無視しうる程度のものになると考えられる。なお、スピンドル15の表面のめっき層に含有されるニッケルも、通水中に浸出または溶出することも考えられる。ただし、この場合のニッケルの溶出は、やはり、通水量に対して更に非常に微量なものになると考えられ、場合によっては、通水中のニッケル濃度は無視しうる程度のものになると考えられる。一方、特に、通水停止時に、弁座12、給水口13,23、吐水口14,24等のニッケル付着層に残留水が付着した場合に、当該残留水中にニッケル付着層からニッケルが溶出してその濃度が高まり、次回の通水時に、残留水中の溶存ニッケルが通水中に混合して吐水口24から吐出されると、飲料水等にニッケルが存在するという事態になる。即ち、ハンドル17を閉栓方向(時計周り方向)に回転してこま18を弁座12に着座させ、第1及び第2の通水路11a,11b間の連通を遮断して通水停止した状態では、弁座12より手前(上流側)の第1の通水路11a中には、弁座12部分により進行を遮断された水道水が滞留することになる。よって、従来例であれば、通水停止時には、給水口13と弁座12との間の第1の通水路11a内の滞留水に対し、給水口13の近傍の内部表面に形成されたニッケル付着層PI(及び、弁座12の下側表面にニッケル付着層PIが形成されている場合は当該ニッケル付着層PI)からニッケルが溶出し、時間と共に滞留水中における溶出ニッケル濃度が高くなってしまう。そして、再度の通水時には、このようにニッケルが溶出した水道水が吐水自在パイプ20から吐出されることになる。同様に、通水停止時には、弁座12の下流側では、第2の通水路11b及び自在吐水パイプ22の内部に水道水が滞留(少なくとも内部表面に付着して滞留)している。よって、従来例であれば、通水停止時には、第2の通水路11b及び自在吐水パイプ22内の滞留水に対し、弁座12の上面側に形成されたニッケル付着層PI、管部11の上部取付孔11cの内部表面に形成されたニッケル付着層PI、吐水口14の内部表面に形成されたニッケル付着層PI、自在吐水パイプ21の給水口23及び吐水口24の各内部表面に形成されたニッケル付着層PIからニッケルが溶出し、時間と共に滞留水中における溶出ニッケル濃度が高くなってしまう。そして、再度の通水時には、このようにニッケルが溶出した水道水が吐水自在パイプ20から吐出されることになる。
しかし、実施の形態1では、単水栓10の管部11の内部に配置される内部部品としてのこま18のケレップ18aの素地表面に亜鉛または亜鉛合金からなる卑金属めっき層が設けられている。よって、この卑金属めっき層が、前記滞留水中への前記ニッケル付着層PI等からのニッケルの溶出を抑制及び防止する。即ち、ニッケルよりイオン化傾向の大きい卑な金属である亜鉛または亜鉛合金からなる卑金属めっき層をケレップ18aに設けた為、ニッケルと亜鉛とのイオン化傾向の差により前記卑金属めっき層の亜鉛が先に通水中(通水停止時には滞留水中)に浸出して、管部11の内部表面のめっき層からのニッケルの浸出を抑制乃至防止する。即ち、卑金属めっき層の亜鉛は、ニッケルよりイオン化傾向の大きい卑な金属であるため、犠牲陽極的に管部11の内部表面のニッケル付着層の溶出を抑制する作用(犠牲陽極作用)を発揮すると考えることができる。更に、ケレップ18aの素地表面の卑金属めっき層は、その膜厚が、電解めっきの場合は約50〜100μmの範囲、或いは、約80〜100μmの範囲となる。一方、溶融亜鉛めっきの場合、膜厚は約500〜1000μm程度まで厚く形成することができる。よって、ケレップ18aの卑金属めっき層が、相当の長期間にわたって耐久性を発揮する。そして、比較的長期間にわたって、ケレップ18aの卑金属めっき層が、ニッケル付着層等からのニッケルの溶出を抑制乃至防止する。その結果、自在吐水パイプ22の吐水口24からの吐水中のニッケル含有量を大幅に低減することができ、通水環境下に置かれる管部11の通水路11a,11bの内部表面としてニッケルからなる特定金属表面が存在する場合でも、通水中へのニッケルの浸出や溶出を大幅に抑制することができる。特に、実施の形態1では、弁座12に近接して配置されるこま18のケレップ18aに卑金属めっき層を設けたため、弁座12の周辺のニッケル付着層からのニッケル溶出を非常に効果的に抑制することができる。より詳細には、第1の通水路11a内では、卑金属めっき層を有するブッシュ19Aが内部の滞留水中に突出(少なくとも、その先端面を露出)して存在するため、第1の通水路11a内のニッケル付着層PIからのニッケル溶出を、当該ブッシュ19Aの卑金属めっき層により確実に抑制乃至防止することができる。また、第2の通水路11b内では、卑金属めっき層を有するケレップ18aが滞留水中に存在するため、第2の通水路11b内のニッケル付着層PIからのニッケル溶出を、当該ケレップ18aの卑金属めっき層により確実に抑制乃至防止することができる。同様に、吐水自在パイプ20内の滞留水中への給水口23及び吐水口24の内部表面のニッケル付着層PIからのニッケル溶出も、当該ケレップ18aの卑金属めっき層により確実に抑制乃至防止することができる。なお、ケレップ18aと吐水自在パイプ20の吐水口24とは距離的に離れているため、上記のように、同吐水口24内の整流板25Bの表面を卑金属めっき面として、吐水口24の内部表面のニッケル付着層PIからのニッケル溶出を防止するようにすることが好ましい。
更に、管部11やスピンドル15や自在吐水パイプ22の素地を黄銅とした場合、素地には錫や鉛が含有されることになるため、内部表面の一部に非めっき部が存在する。そして、素地表面が内部表面として通水路11a,11bに露出する場合、管部11の第1及び第2の通水路11a,11b等への通水に伴い、素地に含有される錫や鉛が、通水中に浸出または溶出することが考えられる。しかし、この場合も、こま18のケレップ18aの素地表面に、錫や鉛よりイオン化傾向の大きい卑な金属である亜鉛からなる卑金属めっき層が形成されている。よって、管部11の内部表面の非めっき部等が通水にさらされる場合でも、クロメート処理等による錫や鉛の浸出防止処理を施さなくとも、ケレップ18aの卑金属めっき層の犠牲陽極作用により、管部11の通水路11a,11b等の通水中への錫や鉛の浸出・溶出を抑制乃至防止することができる。更に、管部11の素地等にカドミウム等のその他の(亜鉛より貴な)有害金属が含有される場合において、素地表面が通水路に露出する場合でも、こま18のケレップ18aの卑金属めっき層の亜鉛により、カドミウム等の(亜鉛より貴な)有害金属の浸出・溶出をも抑制することができる。同様に、上記したブッシュ19Aの卑金属めっき層(及び、整流板25Bに卑金属めっき面を設けた場合は当該卑金属めっき表面)によっても、同様の作用及び効果を発揮することができる。
また、図1中一点鎖線で囲んだ部分(接続部)Aでは、管部11の吐水口14の内部表面と、自在吐水パイプ22の給水口23の外部表面とが接触することになる。このとき、吐水パイプ22の外部表面にはニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるめっき層が形成されるが、管部11の吐水口14の内部表面は、めっき時にマスキングされて素地表面とされることがある。この場合、接続部Aで、素地表面(黄銅)とめっき表面(ニッケルまたはニッケルクロム)とが接触(異種金属接触)することになる。よって、接続部Aの接続境界面(素地表面とめっき表面との境界面)に水が浸入すると、腐食電池作用やキャビテーション腐食により、その接続境界面で、黄銅に対して卑な金属であるニッケルやクロムが腐食してめっきが剥離する可能性がある。更に、図1中一点鎖線で囲んだ部分(吐水口部)Bでは、自在吐水パイプ22の吐水口24の内部表面と、整流板25Bの外周面とが接触することになる。このとき、自在吐水パイプ22の吐水口24の内部表面は、めっき時にマスキングされて素地表面とされることがある。この場合、整流板25Bの外周面がニッケルめっきやニッケルクロムめっきからなるめっき表面になると、上記と同様、吐水口24と整流板25Bとの境界面で、ニッケルやクロムに腐食やめっき剥離が発生する可能性がある。しかし、これらの場合も、実施の形態1では、こま18のケレップ18aに亜鉛めっき層を設けたため、ニッケルやクロムに対してイオン化傾向の大きな卑金属である亜鉛により、接続部Aや吐水口部Bにおけるニッケルやクロムの腐食やめっき剥離を防止することができる。
このように、実施の形態1では、特定金属(貴な金属)であるニッケルと、ニッケルよりイオン化傾向の大きい金属(卑な金属)からなる卑金属部としての亜鉛めっき層との間で、腐食電池の原理により電位差が発生し、卑な金属としての亜鉛が溶解して、貴な金属としてのニッケルの溶解を防止する。即ち、上記のように、ニッケル(Ni)と亜鉛(Zn)とでは、ニッケルが貴な金属となり、亜鉛が卑な金属となるため、亜鉛が先に溶解し、ニッケルの溶解を防止する。また、管部11等の素地が銅合金からなり、素地表面が内部表面となる場合に、クロメート処理等の特別な処理を施さなくても、亜鉛めっき層の亜鉛により鉛等の浸出をも抑制することができる。特に、実施の形態1では、こま18のケレップ18aに亜鉛めっき層を設けて、ニッケル等の浸出を防止する構成としたため、外接の単水栓においても、従来のこまを実施の形態1のこま18に変更するだけで、ニッケル等の浸出または溶出を防止することができる。また、こま18は、カバーナット16を取り外してスピンドル15を管部11の上部取付孔11cから抜き取ることにより、スピンドル15の先端(下端)から容易に取り外すことができる。よって、ケレップ18aの亜鉛めっき層が経年使用により膜厚減少して所期のニッケル溶出抑制効果(腐食作用)を発揮できなくなった場合、ケレップ18aを新しいものと容易に交換することができる。同様に、ブッシュ19Aも管部11への着脱が非常に簡単であり、使用による亜鉛めっき層の減少に応じて容易に交換することができる。また、同様に、整流板25Bに亜鉛めっき層を設ける場合も、当該整流板25Bは自在吐水パイプ20の吐水口24への着脱が非常に簡単であり、使用による亜鉛めっき層の減少に応じて容易に交換することができる。
実施の形態2
以下、本発明の実施の形態2に係るニッケル溶出防止機能付給水装置としてのニッケルフリー給水装置について説明する。図3は本発明の実施の形態2に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓を示す側面図であり、その主要部を断面にて示すと共に、一部を拡大断面図にて示す。図4は本発明の実施の形態2に係る自在単水栓の通水路に設けられるリング状部材としての亜鉛リングを示す正面図であり、その右側半部を断面にて示す。図5は本発明の実施の形態2に係る自在単水栓の自在吐水パイプの吐水口に設けられる泡沫金具及び亜鉛リングを示し、(a)は泡沫金具を示す平面図、(b)は泡沫金具の右側半部を断面で示す正面図、(c)は亜鉛リングを示す平面図、(d)は亜鉛リングの右側半部を断面で示す正面図である。
図3に示すように、実施の形態2に係る単水栓10は、実施の形態1に係る単水栓10と同様の全体構成とされ、こま18のケレップ18aに卑金属部としての亜鉛めっき層を形成している。一方、実施の形態2に係る単水栓10は、管部11と自在吐水パイプ22との接続部(パイプナット21部分)の内部に、環状部材乃至リング状部材としての亜鉛リング25を着脱自在に配設している。詳細には、自在吐水パイプ22の給水口23の開口乃至管部11の吐水口14の開口には、段付円筒リング状乃至フランジ付円筒リング状をなす亜鉛リング25が装着されている。具体的には、亜鉛リング25は、図4に示すように、自在吐水パイプ22の給水口23の内径と略同一の外径を有する円筒状の基部25aと、基部25aの上端外周に張り出して一体形成した段部(フランジ部)25bとを有する段付リング状をなす。そして、亜鉛リング25は、自在吐水パイプ22の給水口23の開口に上方から嵌合(密嵌等)して、その段部25bを給水口23の上端に係止することにより、給水口23に着脱自在に挿着されている。亜鉛リング25は、真鍮(銅亜鉛合金)の素地表面に、亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層(亜鉛めっき層)を形成したものである。なお、亜鉛めっき層の亜鉛または亜鉛合金としては、実施の形態1のケレップ18aの場合と同様のものを使用することができる。また、亜鉛めっき層の膜厚も、実施の形態1のケレップ18aの場合と同様とすることができる。このように、実施の形態2では、亜鉛リング25が配置されることにより、管部11と自在吐水パイプ22との接続部(パイプナット21部分)の内部表面には、ニッケルよりイオン化傾向の大きな金属(卑な金属)である亜鉛からなる卑金属表面が設けられる。即ち、管部11の通水路11bと自在吐水パイプ22の通水路22aとの境界部に、亜鉛リング25の卑金属表面層を有する円形断面の通水路25cが存在する構成となる。なお、亜鉛リング25からなるリング状部材の形状は、図4に示す段付円筒リング状に限らず、単純円筒状または単純リング状であってもよく、或いは、切欠部を有するようなC字状またはコイル状等の形状であってもよい。また、リング状部材としての亜鉛リング25は、亜鉛めっきからなる卑金属めっき層を表面全体に形成しているが、卑金属めっき層を部分的に形成してもよく、例えば、内部表面または外部表面だけに卑金属めっき層を形成してもよい。
また、実施の形態2に係る単水栓10は、自在吐水パイプ22の吐水口24に、整流板乃至整流器25Aを内装した泡沫金具26をアダプタ27を介して着脱自在に取付けている。アダプタ27の内部には、環状部材乃至リング状部材としての亜鉛リング28が着脱自在に配設されている。詳細には、泡沫金具26の上端開口にはアダプタ27の下端が密嵌され、アダプタ27の内部には、平リング状をなす亜鉛リング28が装着されている。具体的には、泡沫金具26は、図5の(a)及び(b)に示すように、整流板25Aの外周面に対応する(同一径の)円形孔からなり当該整流板25Aを収容装着する円形収容凹部26aと、アダプタ27の下端外周面に対応する(同一径の)円形孔からなりアダプタ27の下端部を挿着する上端内周面26bとを有する。また、亜鉛リング28は、図5の(c)及び(d)に示すように、アダプタ27の収容凹部に対応して嵌合(密嵌等)自在な円形外周面を有する平リング状をなす。そして、亜鉛リング28は、泡沫金具27とアダプタ27との接合前に、アダプタ27の収容凹部内に着脱自在に装着されている。なお、泡沫金具26とアダプタ27も互いに着脱自在となっている。更に、泡沫金具26を接合したアダプタ27も、自在吐水パイプ22の吐水口24に対して着脱自在となっている。亜鉛リング28は、亜鉛リング25と同様、真鍮(銅亜鉛合金)の素地表面に、亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層(亜鉛めっき層)を形成したものである。なお、亜鉛めっき層の亜鉛または亜鉛合金としては、実施の形態1のケレップ18aの場合と同様のものを使用することができる。また、亜鉛めっき層の膜厚も、実施の形態1のケレップ18aの場合と同様とすることができる。このように、実施の形態2では、亜鉛リング28が配置されることにより、自在吐水パイプ22の先端の吐水口24の内部表面には、ニッケルよりイオン化傾向の大きな金属(卑な金属)である亜鉛からなる卑金属表面が設けられる。即ち、自在吐水パイプ22の通水路22aの終端としての吐水口24近傍に、亜鉛リング28の卑金属表面層を有する円形断面の通水路28aが存在する構成となる。なお、亜鉛リング28からなるリング状部材の形状は、図5に示し円形の平リング状に限らず、単純円筒状または段付リング状であってもよく、或いは、切欠部を有するようなC字状またはコイル状等の形状であってもよい。また、リング状部材としての亜鉛リング28は、亜鉛めっきからなる卑金属めっき層を表面全体に形成しているが、卑金属めっき層を部分的に形成してもよく、例えば、内部表面または外部表面だけに卑金属めっき層を形成してもよい。
なお、リング状部材としての亜鉛リング25は、管部11と自在吐水パイプ20との接続部に着脱自在に設置されればよく、例えば、リング状部材の外部表面に雄ねじを螺刻すると共に、リング状部材の雄ねじに対応する雌ねじを管部11の吐水口14または自在吐水パイプ20の給水口23の内部表面に螺刻することにより、リング状部材を吐水口14または給水口23に螺合するようにしてもよい。また、リング状部材をより可撓性を有するような形状、例えば、C字状またはコイル状に形成すると共に、リング状部材の外部表面に周方向に延びる溝を形成し、一方、管部11の吐水口14または自在吐水パイプ20の給水口23の内部表面にリング状部材の溝に対応する突条を形成することにより、リング状部材の溝をリング状部材の可撓性を利用して吐水口14または給水口23の突条に嵌め込んで係止するようにしてもよい。更に、管部11の吐水口14にリング状部材の形状に対応する収容凹部を形成してリング状部材を収容し、自在吐水パイプ20の給水口23を吐水口14に接続すると共に給水口23の開口部の端部でリング状部材を支持することにより、自在吐水パイプ20の給水口23の開口と管部11の吐水口14の内部表面との間でリング状部材を挟持するように構成してもよい。或いは、自在吐水パイプ20の給水口23の開口部にリング状部材に対応する形状をなす段差状の支持部を給水口23の開口に沿って形成し、その支持部にリング状部材を載置して、自在吐水パイプ20を管部11の吐水口14に接続することにより自在吐水パイプ20の支持部と管部11の吐水口14の内部表面との間でリング状部材を挟持するように構成してもよい。一方、泡沫金具26或いはアダプタ27自体の内部表面全体または一部に、亜鉛めっきからなる卑金属めっき層を形成することにより、リング状部材と同様な作用効果を備えるよう構成してもよい。なお、実施の形態2に係る単水栓10は、実施の形態1と同様、管部11の止水部(弁座12部分)より上流側の管壁に、卑金属部としてのブッシュ19Aを着脱自在に取付けるよう構成してもよい。
このように、実施の形態2に係る単水栓10では、ニッケル付着層が形成される各部位のうち、弁座12の周辺のニッケル付着層に近接して卑金属部としてのこま18のケレップ18aを配置し、管部11の吐水口14の内部表面周辺のニッケル付着層及び自在吐水パイプ22の給水口23の内部表面周辺のニッケル付着層に近接して卑金属部としての亜鉛リング25を配置し、自在吐水パイプ22の吐水口24の内部表面周辺のニッケル付着層に近接して卑金属部としての亜鉛リング28を配置し、各部位のニッケル付着層からのニッケルの溶出をそれぞれ抑制及び防止するようにしている。ここで、通水に伴い、通水路中に配置したケレップ18aの亜鉛めっき層及び亜鉛リング25,28の亜鉛めっき層から、亜鉛または亜鉛合金が溶出することが考えられる。よって、こま18のケレップ18aの亜鉛めっき層、亜鉛リング25の亜鉛めっき層及び亜鉛リング28の亜鉛めっき層の総表面積は、管部11及び自在吐水パイプ20の内部表面に形成されているニッケル付着層の総表面積の約1/2〜1/20の範囲内となるよう、ケレップ18a及び亜鉛リング25,28の寸法乃至各亜鉛めっき層の表面積(特に、通水路中における表面積)をそれぞれ設定することが好ましい。こうすると、ニッケル付着層からのニッケルの溶出を十分に抑制しつつ、通水に伴う亜鉛めっき層からの亜鉛の溶出を基準値以下に抑制することができる。なお、亜鉛や亜鉛合金中の他の金属(鉄やコバルト)等の溶出は、基準値以下であれば問題なく、逆に、鉄やコバルト等の溶出は、人体に必要なミネラル分の補給に貢献するという副次的な効果を発揮する。更に、上記亜鉛等の溶出抑制の点からは、各亜鉛めっき層の総表面積が、内部表面のニッケル付着層の総評面積の約1/3〜1/20の範囲内となるよう、ケレップ18a及び亜鉛リング25,28の寸法乃至各亜鉛めっき層の表面積(特に、通水路中における表面積)をそれぞれ設定することがより好ましい。更にまた、上記亜鉛等の溶出抑制の点からは、各亜鉛めっき層の総表面積が、内部表面のニッケル付着層の総表面積の約1/20の範囲内となるよう、ケレップ18a及び亜鉛リング25,28の寸法乃至各亜鉛めっき層の表面積(特に、通水路中における表面積)をそれぞれ設定することが最も好ましい。このように、ニッケル付着層の面積に対して亜鉛めっき層の被覆面積比が大きくなるほど、ニッケルの溶出を抑制することができる一方、亜鉛が基準値を超える可能性があるため、亜鉛・ニッケル比は、Zn/Ni=1/2〜1/20程度とすることが好ましい。よって、実施の形態2でも、単水栓10全体の通水路11a,11b,22a内において、亜鉛めっきからなる卑金属めっき層の総表面積を、ニッケル付着層の総表面積に対して上記比率の範囲内とすることが好ましい。
なお、内部表面のニッケル付着層の面積に対する亜鉛めっき層の面積比は、上記のように、総表面積での比率で設定する以外にも、個別の面積比として設定してもよい。即ち、弁座12の周辺のニッケル付着層の表面積に対して、卑金属部としてのこま18のケレップ18aの亜鉛めっき層の表面積を上記範囲内(約1/2〜1/20または約1/3〜1/20または約1/20)に設定し、管部11の吐水口14の内部表面周辺のニッケル付着層の表面積に対して、卑金属部としての亜鉛リング25の亜鉛めっき層の表面積を上記範囲内(約1/2〜1/20または約1/3〜1/20または約1/20)に設定し、自在吐水パイプ22の給水口23の内部表面周辺のニッケル付着層の表面積に対して、卑金属部としての亜鉛リング28の亜鉛めっき層の表面積を上記範囲内(約1/2〜1/20または約1/3〜1/20または約1/20)に設定してもよい。この場合でも、実施の形態2では、各部位のニッケル付着層の近傍位置に卑金属部の卑金属層が配置されるため、十分なニッケル溶出抑制効果と共に必要な亜鉛溶出抑制効果を発揮することができる。更に、この場合でも、全体として、ニッケル付着層の総表面積に対する亜鉛めっき層の総表面積の比率は、上記設定範囲内に近いものとなると考えられる。また、この場合、管部11の給水口13にも前記リング状部材と同様の卑金属部を配置してその卑金属層(亜鉛めっき層)の面積比を上記のような値に設定すればより好ましい結果となる。
次に、実施の形態2に係る給水装置による作用及び効果、特に、キャビテーション腐食に対する抑制作用及び効果について、図2及び図6を参照して説明する。図6は本発明の実施の形態2に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓における管部の吐水口と自在吐水パイプの給水口との接続部分を示す拡大断面図である。
図2の場合と同様に、図6に示すように、管部11の吐水口14の外部表面(強電部)にはニッケルめっき層POが形成される一方、吐水口14から内部表面に向かう所定範囲(弱電部)にも、ニッケル付着層PIが形成されている。なお、ニッケル付着層PIは、素地乃至管部11の吐水口14から内部に向かうにつれて徐々に薄くなる。また、自在吐水パイプ22の給水口23の外部表面(強電部)にはニッケルめっき層POが形成される一方、給水口23から内部表面に向かう所定範囲(弱電部)にも、ニッケル付着層PIが形成されている。なお、ニッケル付着層PIは、素地乃至自在吐水パイプ22の給水口23から内部に向かうにつれて徐々に薄くなる。なお、図6では、説明の便宜上、外部表面のニッケルめっき層POの膜厚や内部表面のニッケル付着層PIの膜厚を実際より大きく描画している。ここで、金属の腐食現象は、電位の異なる二極の存在のもとで発生するイオン溶出及び電子の移動を伴う電気化学反応(電池作用)である。そして、金属腐食のうち、キャビテーション腐食(キャビテーション・エロージョンとも呼ばれる)は、比較的流れの速い配管内など流速が急激に変化する箇所で発生する。このキャビテーション腐食は、急激な圧力低下により流体中に溶存するガスが気胞(キャビティ)となって発生し、これが崩壊するときに生じる高圧が金属表面の保護皮膜を破壊することに起因すると考えられている。また、キャビテーション腐食は、水栓や水栓部品等において部分的に水圧が低下するところに発生するが、これは通水路乃至流水路の形状(凹凸、隙間、隅角等)に起因するところが大きい。即ち、水栓等の通水路中において、狭い部分から水が噴出する部位、流水路が急激に方向を変える部位、流水方向が急に方向を変える部位、流水路中に障害物が存在する部位、流水が旋回流となる部位等では、渦や気泡等が発生してキャビテーション腐食が発生しやすい。また、温度が高く、腐食電位も大きい場所では、キャビテーション腐食がより一層発生しやすくなる。特に、これらの部位では、少量の水の存在下であっても、素地としての銅乃至銅合金とニッケルめっき層やニッケル付着層のニッケルとの間で腐食電池が形成されて大きな腐食電流が流れるため、それに伴って、同部位でキャビテーション腐食がより一層発生しやすくなる。例えば、水栓においては、水滴が付着する吐水口(水切り)や継手部等には、キャビテーション腐食が発生しやすく、また、ニッケル付着層のニッケルが大きく溶出する。同様に、ニッケル以外でも、銅とステンレス(クロム含有合金鋼、または、ニッケルクロム含有合金鋼)等の銅に対する卑金属が存在する部位では、キャビテーション作用に加えて腐食電池の作用により、キャビテーション腐食が発生しやすい。
そこで、実施の形態2では、キャビテーション腐食の発生しやすい部位の近傍に、キャビテーション腐食の抑制・防止も兼ねる卑金属部として、こま18のケレップ18a、亜鉛リング25及び亜鉛リング28を配置している。即ち、実施の形態2に係るニッケルフリー給水装置は、各卑金属部としてのこま18のケレップ18a、亜鉛リング25及び亜鉛リング28を、弁座12、吐水口14及び給水口23並びに吐水口24の近傍にそれぞれ対応して配置して、当該部位の内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出をより効果的に抑制及び防止すると同時に、これらのこま18のケレップ18a、亜鉛リング25及び亜鉛リング28を、キャビテーション腐食の発生しやすい部位でもある弁座12の周辺内部表面の凹凸等の部位、吐水口14や給水口23の周辺内部表面の凹凸等の部位、吐水口24の周辺内部表面の凹凸等の部位の近傍に配置することにより、当該部位におけるキャビテーション腐食をも抑制及び防止するようにしている。具体的には、ケレップ18a、亜鉛リング25及び亜鉛リング28が、キャビテーション腐食の発生しやすい各対向部位における腐食電池作用をそれぞれ大幅に抑制して防止し、その結果、当該各部位におけるキャビテーション腐食を非常に効果的に抑制及び防止する。
実施の形態3
以下、本発明の実施の形態3に係るニッケル溶出防止機能付給水装置としてのニッケルフリー給水装置について説明する。図7は本発明の実施の形態3に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す断面図である。
図7に示すように、実施の形態3に係る単水栓10は、自在吐水パイプ22を備えず、管部11の吐水口14から直接吐水する構成とした点を除き、実施の形態1に係る単水栓10と同様の全体構成とされ、こま18のケレップ18aに卑金属部としての亜鉛めっき層を形成している。更に、実施の形態3に係る単水栓10は、卑金属部としての整流器25Bを吐水口14の内部に収容して着脱自在に装着している。詳細には、整流器25Bは、真鍮等の所定材料の素地で所定の形状に形成され、当該素地の表面に亜鉛または亜鉛合金からなる卑金属めっき層としての亜鉛めっき層または亜鉛合金鍍金層を所定膜厚で形成している。整流器25Bの卑金属めっき層の亜鉛または亜鉛合金は、上記実施の形態のものと同様とすることができる。また、整流器25Bの卑金属めっき層の膜厚も、上記実施の形態のものと同様とすることができる。なお、実施の形態3に係る単水栓10は、実施の形態1と同様、管部11の止水部(弁座12部分)より上流側の管壁に、卑金属部としてのブッシュ19Aを着脱自在に取付けるよう構成してもよい。
このように構成した実施の形態3に係るニッケルフリー給水装置は、上記各実施の形態と同様の作用及び効果により、ケレップ18aの卑金属めっき層及び整流器25Bの卑金属めっき層の組合せにより、通水路11a,11bに沿った内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を非常に効果的に抑制及び防止することができる。同時に、実施の形態3に係るニッケルフリー給水装置は、キャビテーション腐食の発生しやすい部位(弁座12の周辺内部表面や吐水口14の周辺内部表面)の近傍にケレップ18a及び整流器25Bを配置したため、それらの卑金属めっき層により当該部位におけるキャビテーション腐食を非常に効果的に抑制及び防止することができる。
実施の形態4
以下、本発明の実施の形態4に係るニッケル溶出防止機能付給水装置としてのニッケルフリー給水装置について説明する。図8は本発明の実施の形態4に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を示す一部断面図である。
実施の形態4に係るニッケルフリー給水装置は、クランク付混合水栓、即ち、クランク40を介して壁付けされる2ハンドル式の混合栓30に具体化される。混合栓30は、基部31の内部に弁座を設けている。基部31の内部には、通水路31aが形成されている。また、基部31の一側(壁側)には給水口32が設けられ、基部31の下側には吐水口が設けられている。更に、基部31は、快削黄銅等の鉛含有合金(銅系金属材)製の素地からなると共に、その素地表面には、ニッケルめっき層またはニッケルクロムめっき層からなるめっき層が形成されている。また、基部31の素地の外部表面のめっきに伴い、基部31の開口部(上部取付孔、給水口32、吐水口)から所定範囲にわたる内部表面(弁座周辺も含む)に、ニッケル付着層が形成されている。即ち、基部31の通水路31aに沿った内部表面等には、粗雑なニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるニッケル付着層が形成されている。一方、基部31の上部取付孔にはスピンドルが前後に2つ挿着され、各スピンドルの上端にはハンドル33が螺着されると共に、スピンドルの下端にはこまが固着されている(手前側のハンドル33のみ図示)。なお、スピンドルは、実施の形態1のスピンドル15と同様の材質により形成されている。一方、実施の形態4のこまは、従来のこまと同様の構成であり、ケレップと、ケレップの下端に固着したこまパッキンとからなる。なお、ケレップは、快削黄銅等の素地金属から形成される。加えて、基部31の前側には、吐水切替ハンドル34が取付けられている。また、基部31の吐水口(接続口)には袋ナット35を介してパイプ36が接続されている。
一方、クランク40は、内部に通水路40aを形成している。クランク40の基端側には、壁側で給水管の先端に螺合して接続される給水口41が形成されている。クランク40の給水口41の開口を介して、通水路40aが給水管の通水路に接続して連通するようになっている。また、クランク40の先端側には、接続口42が形成されている。接続口42は、クランクナット43を介して、混合栓30の基部31の通水路31aの入口としての給水口32に接続される。これにより、接続口42及び給水口32を介して、クランク40の通水路40aが混合栓30の基部31の通水路31aと連通するようになっている。そして、給水管から供給される水源からの水を、クランク40を介して混合栓30の基部31の通水路31aへと供給するようになっている。更に、クランク40の内部には、内部部品としての逆止こま44が収容配置されている。逆止こま44は黄銅等から形成されている。
ここで、実施の形態4では、クランク40は、快削黄銅等の鉛含有銅合金(銅系金属材)製の素地40xからなると共に、図8中の一点鎖線の拡大視にて示すように、その素地40x表面には、亜鉛めっき層からなる卑金属めっき層40yが形成されている。卑金属めっき層40yは、クランク40の素地40xの外部表面のみならず、素地40x内部表面にも形成されている。即ち、クランク40の通水路40aに沿った内部表面は、卑金属めっき層40yにより、ニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属である亜鉛めっきからなる卑金属表面となっている。なお、クランク40の卑金属めっき層40yは、通常、内部表面の全体に形成されるが、内部表面の一部に形成してもよい。また、実施の形態4のクランク40の内部表面を構成する卑金属表面は、黄銅等の素地表面に亜鉛めっきを施しためっき表面とすることが好ましいが、素地自体を亜鉛または亜鉛合金により形成し、素地表面をニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属表面とすることも可能である。更に、逆止こま44のケレップを、上記各実施の形態と同様の卑金属めっき層を設けたものとして、クランク40に着脱自在に内装してもよい。また、パイプ36の吐水口の内部に、上記実施の形態3と同様の卑金属めっき層を有する整流器25Bを着脱自在に内装してもよい。更にまた、実施の形態4に係るクランク付混合栓30,40は、実施の形態1と同様、止水部より上流側にあるクランク40の管壁に、卑金属部としてのブッシュ19Aを着脱自在に取付けるよう構成してもよい。
次に、上記のように構成した実施の形態4に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓30,40の作用及び効果について説明する。まず、混合栓30のハンドル33を回転してこまを弁座から離間し、基部31の通水路31aからパイプ36に通水すると、給水管からの給水が、クランク40の給水口41から通水路40aを経て接続口42へと流れ、更に、混合栓30の基部31の通水路31aを経て吐水口へと流れ、最終的に、パイプ36先端の吐水口から吐水される。このとき、実施の形態1と同様、基部31の内部表面、パイプ36の内部表面等には、粗雑なニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるニッケル付着層が形成されている。したがって、混合栓30の基部31の通水路31aへの通水及びパイプ36の通水路への通水に伴い、基部31及びパイプ36等の内部表面のニッケル付着層に含有されるニッケルが、通水中に浸出または溶出することが考えられる。しかし、実施の形態4では、クランク40の素地40xの内部表面に、ニッケルよりイオン化傾向の大きい卑な金属である亜鉛からなる卑金属めっき層40yを設けたため、実施の形態1と同様にして、混合栓30の基部31の内部表面及びパイプ36の内部表面のニッケル付着層からのニッケルの浸出を抑制乃至防止することができる。
実施の形態5
以下、本発明の実施の形態5に係るニッケル溶出防止機能付給水装置としてのニッケルフリー給水装置について説明する。図9は本発明の実施の形態5に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を壁に固定した状態を示す一部断面図である。
図9に示すように、実施の形態5に係るクランク付混合栓30,40は、実施の形態4に係るクランク付混合栓30,40と同様の全体構成とされる一方、クランク40を壁Wに固定する持出金具(持出ソケット)45の内部に、卑金属部としての亜鉛リング46を着脱自在に収容して装着している。詳細には、クランク40の基端側(上流側)の給水口41(図9では図示略)は、持出金具45を介して壁Wに固定されている。持出金具45は、エルボ47を介して給水管48に接続されている。持出金具45は、フランジ付の略円筒状をなしている。そして、クランク40内の通水路40aが、給水口41、持出金具45及びエルボ47を介して、給水管48の通水路に連通するようになっている。持出金具45は、その軸方向に延びる通水路の内部の上流側端部に設けた収容凹部内に亜鉛リング46を着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着している。一方、亜鉛リング46は、持出金具45の基端部(エルボ47側端部)に設けた収容凹部に対応して嵌合(密嵌等)自在な円形外周面を有する平リング状をなす。そして、亜鉛リング46は、クランク40を持出金具45に取付ける前に、持出金具45の収容凹部内に着脱自在に装着されている。また、持出金具45とクランク40も互いに着脱自在となっている。更に、上記実施の形態2のように、泡沫金具26を接合したアダプタ27がパイプ36の吐水口に対して着脱自在となっている。なお、持出金具45は、壁W内で、エルボ47を介して配管48に接続される。亜鉛リング46の卑金属めっき層の亜鉛または亜鉛合金は、上記実施の形態のものと同様とすることができる。また、亜鉛リング46の卑金属めっき層の膜厚も、上記実施の形態のものと同様とすることができる。なお、実施の形態5に係るクランク付混合栓30,40は、実施の形態4に係るクランク付混合栓30,40のように通水路40aの素地40xの内部表面に卑金属めっき層40yを形成することなく、単なる素地表面とすることも可能である。また、逆止こま44のケレップを、上記各実施の形態と同様の卑金属めっき層を設けたものとして、クランク40に着脱自在に内装してもよい。更に、パイプ36の吐水口の内部に、上記実施の形態3と同様の卑金属めっき層を有する整流器25Bを着脱自在に内装してもよい。更にまた、実施の形態5に係るクランク付混合栓30,40は、実施の形態1と同様、止水部より上流側にあるクランク40の管壁に、卑金属部としてのブッシュ19Aを着脱自在に取付けるよう構成してもよい。上記のように構成した実施の形態5に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓30,40は、実施の形態4のクランク付混合栓30,40と同様の作用及び効果を発揮する。
図10は本発明の実施の形態5に係るニッケルフリー給水装置のクランク付混合栓で使用可能な持出金具の別例を示す断面図である。
図10に示すように、本別例に係る持出金具45Aは、実施の形態5の持出金具45と形状が若干異なるが、ほぼ同様のフランジ付の略円筒状をなしている。また、持出金具45Aは、下流側(図10上側)の大径の円筒部の断面円形の内周面46aと、当該台形の円筒部と同軸状に一体形成した小径の円筒部の断面円形の内周面46bとを連通し、通水路を形成している。持出金具45Aの内周面46aには、前記クランク40の給水口41の外周面の雄ねじと螺合する雌ねじが螺刻されている。また、持出金具45Aの内周面46bには、前記エルボ47の上流側端部の小径部の外周面の雄ねじと螺合する雌ねじが螺刻されている。なお、持出金具45Aの内周面46aと内周面46bとの間の段差部に亜鉛リング46Aが着脱自在に嵌合(密嵌等)して収容配置されている。即ち、亜鉛リング46は、持出金具45Aの段差部により構成される収容凹部に対応して嵌合(密嵌等)自在な円形外周面を有する平リング状をなす。そして、亜鉛リング46Aは、持出金具45Aの軸方向に延びる通水路の中央付近に設けた収容凹部(前記段差部)内に着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。なお、亜鉛リング46Aは、クランク40を持出金具45Aに取付ける前に、持出金具45Aの収容凹部内に着脱自在に装着されている。当然、持出金具45Aは、クランク40及びエルボ47に対してそれぞれ着脱自在となっている。本別例の持出金具45A及び亜鉛リング46Aを使用しても、上記実施の形態5のクランク付混合栓30,40と同様の作用及び効果を発揮する。
実施の形態6
以下、本発明の実施の形態6に係るニッケル溶出防止機能付給水装置としてのニッケルフリー給水装置について説明する。図11は本発明の実施の形態6に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓のクランク部分を示す拡大断面図である。
図11に示すように、実施の形態6に係るクランク付混合栓30,40は、実施の形態4に係るクランク付混合栓30,40と同様の全体構成とされる一方、クランク40の下流端の接続口42と混合栓30の給水口32との間を、卑金属部としての六角ナット止43Aにより着脱自在に連結している。詳細には、六角ナット止43Aは、前記クランクナット(六角ナット)43の内部に係止されるフランジを下流端に有すると共に、上流端にクランク40の接続口42に螺入自在なねじ部を形成した略円筒状をなす。また、六角ナット止43Aは、その通水路を構成する内部表面の全体に、上記実施の形態のような亜鉛めっき層または亜鉛合金鍍金層からなる卑金属めっき層を形成している。これにより、実施の形態6に係るクランク付混合栓30,40は、混合栓30とクランク40との連結部分においても、六角ナット止43Aによりニッケル溶出防止効果を発揮することができる。更に、実施の形態6に係るクランク付混合栓30,40は、キャビテーション腐食が発生しやすい混合栓30とクランク40との連結部分においても、六角ナット止43Aによりキャビテーション腐食防止効果を発揮することができる。
実施の形態7
以下、実施の形態7に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図12は本発明の実施の形態7に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を示す一部断面図である。
実施の形態7に係るニッケルフリー給水装置は、クランク付混合栓、即ち、クランク60を介して壁付けされる2ハンドル式の混合栓50に具体化される。混合栓50は、切替ハンドル34を備えない点を除き、実施の形態5の混合栓30とほぼ同様の構成である。即ち、混合栓50の基部51の内部には通水路51aが形成されている。また、基部51の一側(壁側)には給水口52が設けられている。更に、基部51には、快削黄銅等の鉛含有銅合金(銅系金属材)製の素地からなると共に、その素地表面には、ニッケルめっき層またはニッケルクロムめっき層からなるめっき層が形成されている。また、実施の形態4と同様、基部51の素地の外部表面のめっきに伴い、基部51の開口部(上部取付孔、給水口52、吐水口)から所定範囲にわたる内部表面(弁座周辺も含む)に、ニッケル付着層が形成されている。即ち、基部51の通水路51aに沿った内部表面等には、粗雑なニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるニッケル付着層が形成されている。
一方、クランク60は、内部に通水路60aを形成している。クランク60の基端側には、壁側で給水管の先端に螺合して接続される給水口61が形成されている。クランク60の給水口61の開口を介して、通水路60aが給水管の通水路に接続して連通するようになっている。また、クランク60の先端側には接続口62が形成されている。接続口62は、クランクナット43を介して、混合栓50の基部51の通水路51aの入口としての給水口52に接続される。これにより、接続口62及び給水口52を介して、クランク60の通水路60aが混合栓50の基部51の通水路51aと連通するようになっている。そして、給水管から供給される水源からの水を、クランク60を介して混合栓50の基部51の通水路51aへと供給するようになっている。
ここで、実施の形態7では、クランク60は、快削黄銅等の鉛含有銅合金(銅系金属材)製の素地60xからなると共に、図12中の一点鎖線の拡大視にて示すように、その素地60x表面には、亜鉛めっき層からなる卑金属めっき層60yが形成されている。卑金属めっき層60yは、クランク60の素地60xの外部表面のみならず、素地60xの内部表面にも形成されている。即ち、クランク60の通水路60aに沿った内部表面は、卑金属めっき層60yにより、ニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属である亜鉛めっきからなる卑金属表面となっている。なお、クランク60の卑金属めっき層60yは、通常、内部表面の全体に形成されるが、内部表面の一部に形成してもよい。また、実施の形態7のクランク60の内部表面を構成する卑金属表面は、黄銅等の素地表面に亜鉛めっきを施しためっき表面とすることが好ましいが、素地自体を亜鉛または亜鉛合金により形成し、素地表面をニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属表面とすることも可能である。更に、混合栓50の止水こま(図示略)のケレップを、上記実施の形態1等と同様の卑金属めっき層を設けたものとして着脱自在に設けてもよい。更にまた、実施の形態1と同様、止水部より上流側にあるクランク60の管壁に、卑金属部としてのブッシュ19Aを着脱自在に取付けるよう構成してもよい。
実施の形態7においては、更に、混合栓50の基部51の通水路51aの入口としての給水口52に接続口62及び通水路60aを介して接続するクランク60の入口としての給水口61の内部に、ニッケルよりイオン化傾向の大きな金属からなる卑金属製の環状物である亜鉛リング(リング状部材)71が、打ち込み等により挿着して固定されている。また、混合栓50の基部51の通水路51aの出口としての吐水口に通水路を介して接続するパイプ36の出口としての吐水口の内部にも、ニッケルよりイオン化傾向の大きな金属からなる卑金属製の環状物である亜鉛リング(リング状部材)72が、打ち込み等により挿着して固定されている。亜鉛リング71はクランク60の給水口61の内径と同一の外形を有する円筒状であり、内部の断面円形の連通孔71aを介して、給水管の通水路とクランク60の通水路60aとを連通している。これにより、給水管からの給水は、亜鉛リング71の連通孔71aを通ってクランク60の通水路60aに流入する。また、亜鉛リング72はパイプ36の吐水口の内径と同一の外形を有する円筒状である。内部の断面円形の連通孔を介して、パイプ36の通水路と外部とを連通している。これにより、混合栓50の基部51の通水路51a及びパイプ36の通水路からの吐水は、亜鉛リング72の連通孔72aを通って外部に吐出される。
次に、上記のように構成した実施の形態7に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓50,60の作用及び効果について説明する。実施の形態4と同様、混合栓50のハンドル33を回転してこまを弁座から離間し、基部51の通水路51aからパイプ36に通水すると、給水管からの給水が、クランク60の給水口61から通水路60aを経て接続口62へと流れ、更に、混合栓50の基部51の通水路51aを経て吐水口へと流れ、最終的に、パイプ36先端の吐水口から吐出される。このとき、実施の形態4と同様、基部51の内部表面、パイプ36の内部表面等には、粗雑なニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるニッケル付着層が設けられている。したがって、混合栓50の基部51の通水路51aへの通水及びパイプ36の通水路への通水に伴い、基部51及びパイプ36等の内部表面のニッケル付着層に含有されるニッケルが、通水中に浸出または溶出することが考えられる。しかし、実施の形態7では、クランク60の素地60xの内部表面に、ニッケルよりイオン化傾向の大きい卑な金属である亜鉛からなる卑金属めっき層60yを設けたため、実施の形態2と同様にして、混合栓50の基部51の内部表面及びパイプ36の内部表面のニッケル付着層からのニッケルの浸出を抑制乃至防止することができる。また、混合栓50の基部51やパイプ36等の素地に錫、鉛、カドミウム等が含有されると共に、内部表面の一部に非めっき部としての素地表面が存在する場合でも、実施の形態4と同様、クランク60の素地60xの内部表面の卑金属めっき層60yが、素地に含有される錫、鉛、カドミウム等の浸出または溶出を防止する。更に、実施の形態4と同様、クランク60の卑金属めっき層60yにより、クランク60の給水部61と給水管先端との接続部、クランク60の接続部62と混合栓50の基部51の給水口52との接続部、混合栓50の基部51の吐水口とパイプ36基端との接続部、パイプ36の吐水口の内部表面等において、キャビテーション腐食等の各種の腐食を防止することができる。特に、実施の形態7では、混合栓50に接続されるクランク60の内部表面に卑金属めっき層60yを設けて、ニッケル等の浸出を防止する構成としたため、既設の混合栓においても、従来のクランクに代えて実施の形態7のクランク60を接続するだけで、ニッケル等の浸出を防止することができる。
加えて、実施の形態7では、混合栓50、パイプ36及びクランク60からなるニッケルフリー給水装置の通水路全体51a,60aの入口(クランク60の給水口61)及び出口(パイプ36の吐水口)に、それぞれ、ニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属である亜鉛リング71,72を挿着したため、ニッケルフリー給水装置の通水路の入口または出口のいずれかに水が滞留する場合でも、入口または出口部分でのニッケル付着層からのニッケルの溶出・浸出やキャビテーション腐食をより効果的に防止することができると共に、通水路内に滞留する水による通水路におけるニッケル等の浸出や腐食をより効果的に防止することができる。なお、亜鉛リング71,72等のニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属からなるリング状部材は、ニッケルフリー給水装置の通水路全体51a,60aの入口または出口の一方にのみ設けることも可能である。しかし、かかるリング状部材を設けない入口または出口の内表面に滞留する水により、同部分でのニッケル等の浸出や腐食が発生することを確実に防止するため、好ましくは、入口及び出口の双方に前記リング状部材を設ける。
実施の形態8
以下、本発明の実施の形態8に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図13は本発明の実施の形態8に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を示し、その正面を一部断面にて示す図(左側の図)とその側面を一部断面にして示す図(右側の図)とを並べて図示している。
図13に示すように、実施の形態8に係るクランク付混合栓50,60は、実施の形態7に係るクランク付混合栓50,60と同様の全体構成とされる一方、卑金属部の構成を異なるものとしている。詳細には、混合栓50は、湯側の水栓部と水側の水栓部とを左右に並設して配置したものであり、混合栓50の各水栓部は、基部51の内部の弁座54の弁孔54aに対向して、こま55を着脱自在に配設している。こま55は、ケレップ55aとパッキン55bとを有している。実施の形態1のケレップ18a等と同様、卑金属部としてのケレップ55aの表面には、同様の亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層が形成されている。なお、実施の形態7と同様、基部51の上流側の通水路51aは、弁座54の弁孔54aを介して、下流側の通水路51bと連通している。また、混合栓50の左右の水栓部の基部51を連結する連結管の管壁の中央下面には、接続口53が突出形成されている。当該接続口53には、実施の形態4と同様にして、袋ナット35を介してパイプ36が接続されている。パイプ36の上端の開口(給水口)乃至前記接続口53の開口内部には、段付円筒リング状乃至フランジ付円筒リング状をなす亜鉛リング56が装着されている。リング状部材としての亜鉛リング56は、実施の形態2の亜鉛リング25とほぼ同様の構成でありパイプ36の上端開口(給水口)の内径と略同一の外径を有する円筒状の基部と、基部の上端外周に張り出して一体形成した段部(フランジ部)とを有する段付リング状をなす。そして、亜鉛リング56は、パイプ36の上端開口(給水口)に上方から嵌合(密嵌等)して、その段部を当該パイプ36の上端開口(給水口)に係止することにより、当該上端開口に着脱自在に挿着されている。亜鉛リング56の卑金属めっき層は、亜鉛リング25の卑金属めっき層と同様の構成とすることができる。また、実施の形態8に係る混合栓50は、実施の形態2に係る単水栓10と同様、パイプ36の先端の吐水口に、整流板乃至整流器25Aを内装した泡沫金具26をアダプタ27を介して着脱自在に取付けている。アダプタ27の内部には前記亜鉛リング28が着脱自在に配設されている。一方、クランク60Aは、実施の形態7のクランク60と同様の構成であるが、実施の形態7のクランク60とは異なり、その通水路60Aaに沿った内部表面には卑金属めっき層は形成していない。また、クランク60Aの給水口の開口には、実施の形態7のような亜鉛リング71は装着されていないが、無論、同様の亜鉛リング71を着脱自在に装着してもよい。なお、実施の形態1と同様、止水部より上流側にあるクランク60Aの管壁に、卑金属部としてのブッシュ19Aを着脱自在に取付けるよう構成してもよい。上記のように構成した実施の形態8に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓50,60は、実施の形態7のクランク付混合栓50,60と同様の作用及び効果を発揮する。
実施の形態9
以下、本発明の実施の形態9に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図14は本発明の実施の形態9に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器具部品の吐水パイプ接続部分を示す一部断面図である。
図14に示すように、実施の形態9に係るニッケルフリー給水装置は、浄水器の給水経路や吐水経路を構成する浄水器具部品80に具体化される。浄水器具部品80は、基部81の先端に、ナット部82を介して吐水パイプ91を水密に接続している。基部81は内部に通水路81aを有し、通水路81aは吐水パイプ91の通水路91aと連通している。また、基部81は、快削黄銅等の鉛含有銅合金(銅系金属材)製の素地からなると共に、その素地表面には、ニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるめっき層が形成されている。めっき層は、実施の形態1等と同様、基部81の素地の外部表面のみならず、基部81の素地の内部表面にも形成されている。即ち、基部81の通水路81aに沿った内部表面等には、ニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるめっき層(意図しない粗雑なめっき層としての付着層)が形成されている。一方、吐水パイプ91は、快削黄銅等の鉛含有銅合金(銅系金属材)製の素地91xからなると共に、図14中の一点鎖線の拡大視にて示すように、その素地91x表面には、亜鉛めっき層からなる卑金属めっき層91yが形成されている。卑金属めっき層91yは、吐水パイプ91の素地91xの外部表面のみならず、素地91xの内部表面にも形成されている。即ち、吐水パイプ91の通水路91aに沿った内部表面は、卑金属めっき層91yにより、ニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属である亜鉛めっきからなる卑金属表面となっている。なお、吐水パイプ91の卑金属めっき層91yは、通常、内部表面の全体に形成されるが、内部表面の一部に形成してもよい。更に、実施の形態9の吐水パイプ91の内部表面を構成する卑金属表面は、黄銅等の素地表面に亜鉛めっきを施しためっき表面とすることが好ましいが、素地自体を亜鉛または亜鉛合金により形成し、素地表面をニッケルよりイオン化傾向の大きな卑金属表面とすることも可能である。
次に、上記のように構成した実施の形態9に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器具部品80,91の作用及び効果について説明する。まず、水源からの水(水道水等)を浄水器に通水すると、浄水器からの浄水が、浄水器具部品80の基部81の通水路81aを経て吐水パイプ91の通水路91aへと流れ、吐水パイプ91先端の吐水口から吐出される。このとき、基部81の内部表面等には、外部表面へのニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきに伴い、上記実施の形態で述べたように、ニッケル付着層が形成されている。したがって、浄水器具部品80の基部81の通水路81aへの通水に伴い、基部81等の内部表面のニッケル付着層に含有されるニッケルが、通水中に浸出または溶出することが考えられる。しかし、実施の形態9では、吐水パイプ91の素地91xの内部表面に、ニッケルよりイオン化傾向の大きい卑な金属である亜鉛からなる卑金属めっき層91yを設けたため、上記各実施の形態と同様にして、基部81の内部表面等のニッケル付着層からのニッケルの浸出を抑制乃至防止することができる。また、基部81等の素地に錫、鉛、カドミウム等が含有されると共に、内部表面の一部に非めっき部としての素地表面が存在する場合でも、上記各実施の形態と同様、吐水パイプ91の素地91xの内部表面の卑金属めっき層91yが、素地に含有される錫、鉛、カドミウム等の浸出または溶出を防止する。更に、上記各実施の形態と同様、吐水パイプ91の卑金属めっき層91yにより、浄水器具部品80の基部81またはナット部82と吐水パイプ91の基端部との接続部Cの内部表面等において、キャビテーション腐食等の各種の腐食を防止することができる。特に、実施の形態9では、浄水器具部品80に接続される吐水パイプ91の内部表面に卑金属めっき層91yを設けて、ニッケル等の浸出を防止する構成としたため、既設の浄水器においても、従来の吐水パイプに代えて実施の形態9の吐水パイプ91を接続するだけで、ニッケル等の浸出を防止することができる。なお、吐水パイプ91の吐水口にカーボン等の非金属からなる非金属キャップを設置することもできる。この場合、吐水口付近にニッケルめっきまたはニッケルクロムめっきからなるめっき層を施さなくともよくなるため、吐水口においてめっき層のニッケルが腐食電池作用により溶出する等の不具合を防止することができる。また、これにより、キャビテーション腐食に対する耐久性を向上することができる。なお、非金属キャップは吐水口に着脱自在に設置することができるため容易に交換することができる。
実施の形態10
以下、実施の形態10に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図15は本発明の実施の形態10に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器専用水栓を示す一部断面図である。
実施の形態10に係るニッケルフリー給水装置は、キッチンシンク下等に内装されるタイプの浄水器(図示略)に使用される浄水器専用水栓80Aに具体化される。浄水器専用水栓80Aは、実施の形態9の浄水器具部品80と同様の構成であり、基部81の側面に原水・浄水切替用のハンドル83を装着している。また、吐水パイプ91Aは、実施の形態9の吐水パイプ91と同様の構成であるが、吐水パイプ91のように外部表面及び内部表面に卑金属めっき層91yを形成したものではない。吐水パイプ91Aの先端の吐水口には、樹脂材料等からなる吐水口キャップ92が着脱自在に装着されている。吐水口キャップ92の内部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング93が着脱自在に装着されている。即ち、亜鉛リング93は、吐水口キャップ92の通水路内に設けた収容凹部(肩部)内に着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング93は、上記各実施の形態の亜鉛リング28等と同様の平リング状の構成とされ、同様の構成の卑金属めっき層を表面に形成している。一方、浄水器からの浄水を浄水器専用水栓80Aに給水する給水パイプ94の下端(上流端)には、外周面に雄ねじを形成した円筒状の雄ねじ部材95が外嵌され、雄ねじ部材95の下端部には連結部材96の上端部が螺合して取付けられている。連結部材96は、浄水器からの給水管を給水パイプ94に連結して通水するためのものであり、連結部材96の内部には、卑金属部としてのリング状部材である亜鉛リング97が着脱自在に装着されている。即ち、亜鉛リング97は、連結部材96の通水路内に設けた収容凹部(肩部)内に着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング97は、上記各実施の形態の亜鉛リング28等と同様の平リング状の構成とされ、同様の構成の卑金属めっき層を表面に形成している。このように構成した実施の形態10に係るニッケルフリー給水装置は、浄水器専用水栓80A全体の通水路の始端となる連結部材96の通水路内に亜鉛リング97を着脱自在に収容する一方、浄水器専用水栓80A全体の通水路の終端となる吐水パイプ91Aの吐水口キャップ92内に亜鉛リング93を着脱自在に収容している。よって、浄水器専用水栓80Aの通水路に沿った内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を抑制及び防止することができると共に、特に、キャビテーション腐食の発生しやすい部位(給水パイプ94の始端部付近や吐水パイプ91Aの吐水口付近)に位置する亜鉛リング97,93が、当該部位でのキャビテーション腐食を大幅に抑制及び防止する。
実施の形態11
以下、本発明の実施の形態11に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図16は本発明の実施の形態11に係るニッケルフリー給水装置としてのアングル止水栓を示す一部断面図である。
図16に示すように、実施の形態6に係るニッケルフリー給水装置は、アングル止水栓100に具体化される。アングル止水栓100は、配管経路途中に設けられ、略90度交差する配管を接続する止水栓である。アングル止水栓100は、基部101の内部にアングル状の第1及び第2の通水路101a,101bを有している。また、基部101の下端側(上流端側)には給水口102が設けられ、基部101の側端側(下流端側)には接続口103が設けられている。基部101の内部に配設したこま104は、ケレップ104a及びパッキン104bを有している。また、こま104は、スピンドル15を介して接続されたハンドル17を正逆回転することにより、基部101の内部の弁座105に対し着座及び離脱して弁孔105aを閉塞及び開放するようになっている。なお、弁座105を境にして第1の通水路101aと第2の通水路101bとが区画され、弁座105の弁孔105aを介して第1及び第2の通水路101a,101bが互いに連通されている。また、基部101は、快削黄銅等の鉛含有合金(銅系金属材)製の素地からなると共に、その素地表面には、ニッケルめっき層またはニッケルクロムめっき層からなるめっき層が形成されている。更に、基部101の外部表面のめっき処理に伴い、実施の形態1等と同様、基部101の開口部から内部にわたる所定範囲の部位(上部取付孔に対向する弁座105の周辺部位、給水口102の内部周辺部位、接続口103の内部周辺部位)に前記ニッケル付着層が形成されている。また、前記接続口103には袋ナット106を介して側部配管107が接続され、給水口102には下部配管108がねじ込みにより接続されている。ここで、実施の形態1等と同様、こま104のケレップ104aは、卑金属部を構成し、真鍮等の素地の表面に亜鉛めっきまたは亜鉛合金鍍金からなる卑金属めっき層を形成している。このように構成した実施の形態11に係るニッケルフリー給水装置は、ケレップ104aの卑金属めっき層が弁座105に対向して近接配置されると共に、給水口102及び接続口103にもそれぞれ比較的近接して配置される。したがって、ケレップ104aの卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止すると同時に、キャビテーション腐食が発生しやすい部位(弁座105の周辺部位、給水口102の内部周辺部位及び接続口103の内部周辺部位)におけるキャビテーション腐食を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態12
以下、実施の形態12に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図17は本発明の実施の形態12に係るニッケルフリー給水装置としての分岐栓を示す一部断面図である。
図17に示すように、実施の形態12に係るニッケルフリー給水装置は、分岐栓110に具体化される。分岐栓110は、基部111の内部に第1及び第2の通水路111a,111bを有している。また、基部111の一端側(下流端側)には接続口112が設けられ、基部111の他端側(上流端側)には給水口113が設けられている。基部111の内部に配設したこま114は、ケレップ114a及びパッキン114bを有している。また、こま114は、スピンドル15を介して接続されたハンドル17を正逆回転することにより、基部111の内部の弁座115に対し着座及び離脱して弁孔115aを閉塞及び開放するようになっている。なお、弁座115を境にして第1の通水路111aと第2の通水路111bとが区画され、弁座115の弁孔115aを介して第1及び第2の通水路111a,111bが互いに連通されている。また、基部111は、快削黄銅等の鉛含有合金(銅系金属材)製の素地からなると共に、その素地表面には、ニッケルめっき層またはニッケルクロムめっき層からなるめっき層が形成されている。更に、基部111の外部表面のめっき処理に伴い、実施の形態1等と同様、基部111の開口部から内部にわたる所定範囲の部位(上部取付孔に対向する弁座115の周辺部位、給水口113の内部周辺部位、接続口12の内部周辺部位)に前記ニッケル付着層が形成されている。また、前記接続口112には袋ナット116を介して分岐配管117が接続されている。ここで、実施の形態1等と同様、こま114のケレップ114aは、卑金属部を構成し、真鍮等の素地の表面に亜鉛めっきまたは亜鉛合金鍍金からなる卑金属めっき層を形成している。このように構成した実施の形態12に係るニッケルフリー給水装置は、ケレップ114aの卑金属めっき層が弁座115に対向して近接配置されると共に、給水口113及び接続口112にもそれぞれ比較的近接して配置される。したがって、ケレップ114aの卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止すると同時に、キャビテーション腐食が発生しやすい部位(弁座115の周辺部位、給水口113の内部周辺部位及び接続口112の内部周辺部位)におけるキャビテーション腐食を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態13
以下、実施の形態13に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図18は本発明の実施の形態13に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。
図18に示すように、実施の形態13に係るニッケルフリー給水装置は、シングルレバー混合栓120に具体化される。シングルレバー混合栓120は、基部121のハンドル122を操作することにより湯または水を吐水パイプ123の先端の吐水部124から選択的に吐出するものである。吐水部124には、実施の形態2の泡沫金具26と同様、整流板126を内装した泡沫金具125が着脱自在に取付けられている。また、泡沫金具125の内部の通水路において吐水部124との境界部乃至接合部(吐水パイプ123の先端開口付近)には、実施の形態2の亜鉛リング28と同様の卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング127が着脱自在に装着されている。即ち、亜鉛リング127は、吐水パイプ123に近接して位置する泡沫金具125の通水路内に設けた収容凹部(肩部)内に着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング127は、上記各実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状とされ、同様の構成の卑金属めっき層を表面に形成している。このように構成した実施の形態13に係るニッケルフリー給水装置は、泡沫金具125内の亜鉛リング127の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止すると同時に、キャビテーション腐食が発生しやすい部位(給水口パイプ123の内部周辺部位)におけるキャビテーション腐食を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態14
以下、実施の形態14に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図19は本発明の実施の形態14に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付シングルレバー混合栓を示す断面図である。
図19に示すように、実施の形態14に係るニッケルフリー給水装置は、クランク付シングルレバー混合栓130,150に具体化される。このうち、シングルレバー混合栓130は、基部131の上端にハンドル132を操作自在に取付けている。基部131の下端には接続口133が設けられている。また、接続口133には、袋ナット135を介して吐水パイプ137が接続されている。ここで、接続口133の内部の通水路の収容凹部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング133Aが着脱自在に装着されている。亜鉛リング133Aは、実施の形態2の亜鉛リング25等と同様の構成の段付リング状とされ、同様の構成の卑金属めっき層を表面に形成している。即ち、亜鉛リング133Aは、吐水パイプ137の上端開口(給水口)の内径と略同一の外径を有する円筒状の基部と、基部の上端外周に張り出して一体形成した段部(フランジ部)とを有する段付リング状をなす。そして、亜鉛リング133Aは、吐水パイプ137の上端開口(給水口)に上方から嵌合(密嵌等)して、その段部を当該吐水パイプ137の上端開口(給水口)に係止することにより、当該上端開口に着脱自在に挿着されている。吐水口137の先端の吐水部138には、実施の形態2の泡沫金具26と同様、整流板140を内装した泡沫金具139が着脱自在に取付けられている。また、泡沫金具139の内部の通水路において吐水部138との境界部乃至接合部(吐水パイプ137の先端開口付近)には、実施の形態2の亜鉛リング28と同様の卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング141が着脱自在に装着されている。即ち、亜鉛リング141は、吐水パイプ137に近接して位置する泡沫金具139の通水路内に設けた収容凹部(肩部)内に着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング141は、上記各実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状とされ、同様の構成の卑金属めっき層を表面に形成している。
一方、基部131の後面には給水口134が設けられている。給水口134には、クランクナット(六角ナット)136及び六角ナット止(クランク止)152を介して、クランク150の先端(下流側端)が接続されている。詳細には、クランク150の基端側には給水口151が形成され、クランク150の給水口151の開口を介して、通水路150aが給水管の通水路に接続して連通するようになっている。一方、クランク150の下流端の接続口とシングルレバー混合栓130の給水口134との間は、卑金属部としての六角ナット止152により着脱自在に連結されている。詳細には、六角ナット止152は、実施の形態6の六角ナット止43Aと同様、クランクナット(六角ナット)136の内部に係止されるフランジを下流端に有すると共に、上流端にクランク150の接続口に螺入自在なねじ部を形成した略円筒状をなす。また、六角ナット止152は、その通水路を構成する内部表面の全体に、上記実施の形態のような亜鉛めっき層または亜鉛合金鍍金層からなる卑金属めっき層を形成している。これにより、クランク150の接続口、六角ナット止152及びシングルレバー混合栓130の給水口134を介して、クランク150の通水路150aがシングルレバー混合栓130の基部131の通水路131aと連通するようになっている。そして、給水管から供給される水源からの水を、クランク150を介してシングルレバー混合栓130の基部131の通水路131aへと供給するようになっている。更に、クランク150の内部には、内部部品としての逆止こま154が収容配置されている。逆止こま154は、ケレップ154a及びパッキン154bを有し、クランク150内の通水路150aを区画する弁座155に対して着座及び離脱して、通水遮断及び通水を制御するようになっている。ケレップ154aは、実施の形態1のケレップ18aと同様、卑金属部を構成し、真鍮等の素地の表面に亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっき等の卑金属めっき層を形成したものである。なお、ケレップ154aの卑金属めっき層の構成は、実施の形態1のケレップ18a等と同様とすることができる。
このように構成した実施の形態14に係るニッケルフリー給水装置は、シングルレバー混合栓130の接続口133内(吐水パイプ137基端付近)の亜鉛リング133A、泡沫金具139内の亜鉛リング141、シングルレバー混合栓130の給水口134とクランク150の給水口との連結部の六角ナット止152及びクランク150内のケレップ154aのそれぞれの卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止する。同時に、亜鉛リング141、亜鉛リング133A、六角ナット止152及びケレップ154aが、キャビテーション腐食が発生しやすい各部位(吐水パイプ137の先端の吐水口の内部周辺部位、吐水パイプの基端開口とシングルレバー混合栓130の接続口133との連結部分の内部周辺部位、シングルレバー混合栓130の給水口134とクランク150の給水口との連結部の内部周辺部位、クランク150の弁座155の周辺部位)におけるキャビテーション腐食を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態15
以下、実施の形態15に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図20は本発明の実施の形態15に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。
図20に示すように、実施の形態15に係るニッケルフリー給水装置は、シングルレバー混合栓160に具体化される。シングルレバー混合栓160は、基部161のハンドル162を操作することにより湯または水を吐水パイプ163の先端の吐水部164から選択的に吐出するものである。吐水部164には、実施の形態2の泡沫金具26と同様、整流板166を内装した泡沫金具165がアダプタ167を介して着脱自在に取付けられている。また、泡沫金具165の内部の通水路において吐水部164との境界部乃至接合部(吐水パイプ163の先端開口付近)には、実施の形態2の亜鉛リング28と同様の卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング168が着脱自在に装着されている。即ち、亜鉛リング168は、吐水パイプ163に近接して位置する泡沫金具165の通水路内に設けた収容凹部(肩部)内に着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング168は、上記各実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状とされ、同様の構成の卑金属めっき層を表面に形成している。一方、基部161の下端から突出する水側の給水管171の下端には、実施の形態10の雄ねじ部材95及び連結部材96と同様の構成の雄ねじ部材173及び連結部材174が取付けられ、原水(冷水)用配管の先端を接続するようになっている。同様に、基部161の下端から突出する湯側の給水管172の下端にも、同様の構成の雄ねじ部材175及び連結部材176が取付けられ、温水用配管の先端を接続するようになっている。更に、連結部材176の内部には、卑金属部としてのリング状部材である亜鉛リング178が着脱自在に装着されている。即ち、亜鉛リング178は、連結部材176の通水路内に設けた収容凹部(肩部)内に着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング178は、上記各実施の形態の亜鉛リング28等と同様の平リング状の構成とされ、同様の構成の卑金属めっき層を表面に形成している。なお、連結部材174の内部にも、同様に、卑金属部としてのリング状部材である亜鉛リング178が着脱自在に装着されている。
このように構成した実施の形態15に係るニッケルフリー給水装置は、泡沫金具165内の亜鉛リング168の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止すると同時に、キャビテーション腐食が発生しやすい部位(給水口パイプ163の内部周辺部位)におけるキャビテーション腐食を効果的に抑制及び防止する。また、シングルレバー混合栓160全体の通水路の始端となる連結部材174,176の通水路内に亜鉛リング178を着脱自在に収容する一方、シングルレバー混合栓160全体の通水路の終端となる吐水パイプ163の吐水部164に取付けた泡沫金具165またはアダプタ167内に亜鉛リング168を着脱自在に収容している。よって、シングルレバー混合栓160の通水路に沿った内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を抑制及び防止することができると共に、特に、キャビテーション腐食の発生しやすい部位(吐水パイプ163の吐水口の内部周辺部位、原水または温水用給水管171,172と配管との連結部分の内部周辺部位)に位置する亜鉛リング168,178が、当該部位でのキャビテーション腐食を大幅に抑制及び防止する。
実施の形態16
以下、実施の形態16に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図21は本発明の実施の形態16に係るニッケルフリー給水装置としてのボールバルブを示す断面図である。
図21に示すように、実施の形態16に係るニッケルフリー給水装置は、ボールバルブ180に具体化される。ボールバルブ180は、ハンドル181を一端開口部182及び他端開口部183間の上面中央に着脱自在に取付けている。一端開口部182の内周面及び他端開口部183の内周面により通水路182a,183aが構成される。また、ハンドル181には、ねじ部材184を介して弁棒185が同軸状に取付けられている。弁棒185は、ねじ部材184によりハンドル181から着脱自在となっている。また、弁棒185は、通水路182a,183aを連通及び連通遮断する弁体186を開閉操作自在となっている。ここで、弁棒185は、本実施の形態の卑金属部を構成し、真鍮等の素地表面に亜鉛めっきや亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層を形成したものである。なお、卑金属めっき層の構成は上記実施の形態と同様とすることができる。更に、他端開口部183の通水路183aの基端には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング187が着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング187は、上記実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状をなし、表面に上記実施の形態と同様の亜鉛めっきや亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層を形成したものである。このように構成した実施の形態16に係るニッケルフリー給水装置としてのボールバルブ180は、配管経路上に取付けられると、通水路182a,183a全体の略中央付近で、かつ、弁体186の直近に位置する弁棒185及び通水路183aの基端で、かつ、弁体186の直近に位置する亜鉛リング187の各卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止すると同時に、キャビテーション腐食が発生しやすい部位(弁体186の周辺部位)におけるキャビテーション腐食を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態17
以下、実施の形態17に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図22は本発明の実施の形態17に係るニッケルフリー給水装置としての六角ニップルを示す断面図である。
図22に示すように、実施の形態17に係るニッケルフリー給水装置は、配管部品としての六角ニップル190に具体化される。六角ニップル190は、略円筒状の基部191の長さ方向中央の外面に突起部192を一体形成している。基部191の内周面により構成される通水路191aの長さ方向中央に設けた円形溝状の収容凹部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング193が着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング193は、上記実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状または円形断面のリング状をなし、表面に上記実施の形態と同様の亜鉛めっきや亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層を形成したものである。このように構成した実施の形態17に係るニッケルフリー給水装置としての六角ニップル190は、配管経路上に取付けられると、通水路191a全体の略中央付近に位置する亜鉛リング193の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態18
以下、実施の形態18に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図23は本発明の実施の形態18に係るニッケルフリー給水装置としてのエルボを示す断面図である。
図23に示すように、実施の形態18に係るニッケルフリー給水装置は、配管部品としてのエルボ200に具体化される。エルボ200は、略L字筒状をなし、基部201の内周面により通水路201aを構成し、基部201の一端開口部202の内周面により構成される通水路202aと、基部201の他端開口部203の内周面により構成される通水路203aとを連通している。基部201の通水路201aと一端開口部202の通水路202aとの間の段差部に設けた溝状の収容凹部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング204が着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング204は、上記実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状または円形断面のリング状をなし、表面に上記実施の形態と同様の亜鉛めっきや亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層を形成したものである。このように構成した実施の形態18に係るニッケルフリー給水装置としてのエルボ200は、配管経路上に取付けられると、通水路201aと通水路202aとの間に位置する亜鉛リング204の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態19
以下、実施の形態19に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図24は本発明の実施の形態19に係るニッケルフリー給水装置としてのチーズを示す断面図である。 図24に示すように、実施の形態19に係るニッケルフリー給水装置は、配管部品としてのチーズ210に具体化される。チーズ210は、上側開口部211と、右側開口部212と、左側開口部213とを三又状に連結してなるものであり、上側開口部211の内周面により通水路211aを構成し、右側開口部212の内周面により通水路212aを構成し、左側開口部213の内周面により通水路213aを構成して、それらで中央で連結する中央部分の通水路210aと通水路211a,212a,213aを連通している。上側開口部211の通水路211aの基端に設けた溝状の収容凹部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング214が着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング214は、上記実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状または円形断面のリング状をなし、表面に上記実施の形態と同様の亜鉛めっきや亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層を形成したものである。このように構成した実施の形態19に係るニッケルフリー給水装置としてのチーズ210は、配管経路上に取付けられると、通水路211aの基端に位置する亜鉛リング214の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態20
以下、実施の形態20に係るニッケルフリー給水装置について説明する。図25は本発明の実施の形態20に係るニッケルフリー給水装置としてのユニオンを示す断面図である。
図25に示すように、実施の形態20に係るニッケルフリー給水装置は、配管部品としてのユニオン220に具体化される。ユニオン220は、一端開口部221と他端開口部222とをナット状の連結部材223により連結したもので、一端開口部221の内周面により構成される通水路221aと、他端開口部222の内周面により構成される通水路222aとを連通している。一端開口部221の通水路211aに設けた溝状の収容凹部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング224が着脱自在に嵌合(密嵌等)して装着されている。亜鉛リング224は、上記実施の形態の亜鉛リング28等と同様の構成の平リング状または円形断面のリング状をなし、表面に上記実施の形態と同様の亜鉛めっきや亜鉛合金めっきからなる卑金属めっき層を形成したものである。このように構成した実施の形態20に係るニッケルフリー給水装置としてのユニオン220は、配管経路上に取付けられると、通水路221aに配置した亜鉛リング224の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止する。
ところで、本発明のニッケルフリー給水装置は、上記のように、特定金属として、ニッケル以外にも、カドミウム、鉛、錫等の浸出を防止することができる。即ち、特定金属としては、ニッケル以外にも、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、錫、鉛、銅等、上記卑金属よりイオン化傾向の小さい金属を挙げることができる。また、特定金属よりイオン化傾向の小さな卑金属としては、イオン化傾向の大きさによるニッケル等の浸出防止作用、コスト、安全性等の点で、亜鉛が最も好ましいが、特定金属よりイオン化傾向が大きい限りにおいて、亜鉛以外の金属を使用することができる。例えば、ニッケルの浸出防止の場合、コバルト、鉄、アルミニウム、マグネシウム等の金属を使用することができる。即ち、特定金属よりイオン化傾向が大きい限りにおいて、亜鉛以外の任意の金属から上記卑金属めっき層や環状物を形成してもよい。しかし、このうち、鉄については、赤錆が発生して通水中に混入したり沈殿したりする可能性があるため、この点を考慮して使用する必要がある。また、鉄の場合、そのイオン化傾向により、亜鉛よりもニッケル等の溶出防止作用は小さくなる。更に、コバルトは、赤錆の発生等を考慮する必要は無いが、鉄よりも更にイオン化傾向が小さく、ニッケルの溶出防止作用は小さいと思われる。但し、亜鉛コバルト合金等、イオン化傾向の大きな金属との合金として具体化することにより、ニッケルの溶出防止作用を増大することができる。一方、亜鉛やマグネシウムは、人体にとって必須のミネラル分であり、この点からも、前記卑金属として好ましい。即ち、この場合、本発明のニッケルフリー給水装置は、亜鉛やマグネシウム等の必須ミネラル分をも飲用水と共に自動的に摂取可能なニッケルフリー・必須ミネラル摂取給水装置として具体化することができる。しかし、この場合、亜鉛やマグネシウム自体が過剰に浸出しないよう考慮する必要はある。なお、厚生労働省による現在の水道施設の技術的基準による亜鉛の規制値は、0.1mg/L以下(水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具の浸出液に係る基準にあっては、0.97mg/L以下)であり(水道施設の技術的水準を定める省令(厚生労働省令)第六号別表第一及びその備考参照)、非通水時に滞留する水中の亜鉛浸出量程度は問題ない。このように、卑な金属としては、ニッケルよりイオン化傾向の大きなものであれば、任意の金属を使用することができる。
また、本発明のニッケルフリー給水装置は、上記のように、こま18の全部または一部に卑金属表面(素地表面またはめっき表面)を設けたり、クランク40,60の内部表面の全部または一部に卑金属表面(素地表面またはめっき表面)を設けたり、吐水パイプ91の内部表面の全部または一部に卑金属表面(素地表面またはめっき表面)を設けたり、通水路の入口や出口に卑金属表面(素地表面またはめっき表面)を有する部材を設けたりする以外にも、吐水キャップ、混合栓のクランクの調整弁等、その他の内部部品や通水路の経路上に配置される部品等に卑金属表面(素地表面またはめっき表面)を設けて実現することができる。例えば、水道金具の側壁等に穿孔し、その孔に亜鉛(Zn)棒や、鉄(Fe)丸棒等を取付ければ、亜鉛(Zn)や鉄(Fe)が適量に溶出した水道水となり、亜鉛等が不足する人には亜鉛棒を設けることで亜鉛を摂取させることができ、また、鉄分が不足する人には、鉄棒を設けることで鉄分を補充することができるという効果も発揮する。
更に、本発明に係るニッケルフリー給水装置は、通水路の内部に特定金属からなる内部表面を有し、前記通水路に通水した水が内部表面に接触する任意のニッケルフリー給水装置に具体化することができる。この場合、通水路の内部表面の少なくとも一部、または、通水経路において前記内部表面に接続する部分に、前記特定金属よりイオン化傾向の大きな金属からなる卑金属部を一体的に設ければよい。また、この場合、「通水路の内部に特定金属からなる特定金属表面を有する」とは、どのような形態であれ、通水経路上に特定金属表面が存在し、通水がその特定金属表面に接触して、通水に伴い特定金属が水中に浸出・溶出・溶解し、吐水に含有されることになるような場合を言い、例えば、素地上に形成しためっき表面からなる内部表面が特定金属製(特定金属めっき)、めっきを施さない装置(鋳放品等)の場合において素地自体が特定金属製、内部部品(ケレップ等)の表面が特定金属の場合、めっきを施さない内部部品の場合において内部部品自体が特定金属の場合が考えられる。これらの場合、通水経路の卑金属部を設けることで、特定金属の溶出を防止できる。
本発明のニッケルフリー給水装置は、更に、前記通水路の内部に設けられる内部部品を備え、前記卑金属部は、前記内部部品の表面(素地表面またはめっき表面)を前記特定金属よりイオン化傾向の大きな金属からなる卑金属表面としたものとすることもできる。或いは、ニッケルフリー給水装置は、更に、前記通水路の入口に接続されて水源からの水を前記通水路へ供給する筒状の連結部材を備え、前記卑金属部は、前記特定金属よりイオン化傾向の大きな金属からなり、前記連結部材の内部表面に形成されためっき層を有するものとすることもできる。或いは、ニッケルフリー給水装置の前記卑金属部は、前記特定金属よりイオン化傾向の大きな金属からなり、前記通水路の入口または出口の少なくとも一方に装着された環状部材を有するよう構成することもできる。或いは、ニッケルフリー給水装置の前記卑金属部は、前記特定金属よりイオン化傾向の大きな金属からなり、前記通水路の内部表面の少なくとも一部に形成されためっき層を有するよう構成することもできる。また、本発明のニッケルフリー給水装置は、化粧バルブ等の任意の給水装置に具体化することもできる。更に、本発明のニッケルフリー給水装置は、上記各水道用品以外にも、通水環境下で使用され、通水(吐水)が最終的に人体に摂取されるような器具または部品等にも適用可能である。
本発明は、上記のように、給水施設の給水装置として使用される蛇口、浄水装置として使用される浄水器、給水施設の給水タンク、湯沸し機等、給水配管途中に使用される各種装置や、継手類等の部品等、全ての給水装置に機能・装飾目的で被覆されているニッケルクロム(NiCr)めっき、または、ニッケル(Ni)めっきから給水中の水に溶出されるニッケル(Ni)を、イオン化傾向を応用して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)等のニッケル(Ni)よりも卑な金属を、給水施設や、各種配管継手等にメッキ層、環状体、棒状体、塊状体等として設けることで、人間がミネラルとして必要とするMgやZn等の金属を使用して、給水装置から溶出するNiを抑制する一方、MgやZnをイオン化傾向の違いにより溶出させることができる画期的な技術である。即ち、本発明は、給水施設からのNiの溶出を軽減させるため、電気化学的作用であるイオン化傾向の応用により、蛇口等の給水施設(給水装置)に施してあるNiメッキ、または、NiCrめっきのNiよりイオン化傾向の大きな卑な金属からなるめっき層、または、卑な金属を含む合金めっき層等を、給水施設や給水装置の配管途中、または、給水装置の末端吐水部や給水装置の装置内等に設置・装着する。例えば、鉄、亜鉛、コバルト等、Niよりイオン化傾向の大きな卑な金属を単体で使用したり、鉄、亜鉛、コバルト等を他の金属と混合した合金等のイオン化傾向の大きな卑な金属を利用したりすることにより、Niの溶出を軽減させることができる。しかしながら、卑な金属からなる金属めっき層または合金めっき層等を、給水施設、給水装置の配管途中、給水装置の末端吐水部、給水装置内等に設置・装着する場合、その給水施設や蛇口等の給水装置に施してあるNiめっきやNiCrめっきの被覆量、被覆面積、給水装置の蛇口などから吐水される湯の温度に応じて、使用する卑な金属を適宜選定し、使用量の設定も行うことが好ましい。なお、Zn棒、Zn塊、Znメッキ品や、Fe塊等の使用量は、対象とするNi皮膜(Niめっき)の量(面積)に比例する。
更に、上記各実施の形態のニッケルフリー給水装置をはじめ、本発明の給水装置では、卑金属めっき層の膜厚や、卑金属層のニッケル付着層に対する面積比は、実施の形態1で詳述した範囲内のものとして無論実施することができる。また、上記各実施の形態の卑金属部、例えば、亜鉛リングは、その表面(少なくとも通水経路に面する表面)にローレット加工等により細かな凹凸を形成すれば、その表面積が増大して、より一層高いニッケル溶出防止効果やキャビテーョン腐食防止効果を発揮する。また、亜鉛リング等の卑金属表面を有するリング状部材の場合、通水経路に面する卑金属表面により上記のニッケル溶出防止効果やキャビテーション腐食防止効果を発揮するが、通水経路に面しない卑金属表面(給水装置のパイプ等の取付部位の内部表面に対向して近接乃至接触する卑金属面)と給水装置の内部表面との隙間にも水が進入するため、当該通水経路に面しない卑金属表面も同様に上記のニッケル溶出防止効果やキャビテーション腐食防止効果を発揮する。よって、リング状部材の通水経路に面する卑金属表面のみならず通水経路に面しない卑金属表面にもローレット加工等の細かな凹凸を形成して粗表面部とすることにより、その表面積を相対的に増大してもよく、この場合、上記効果を一層良好に発揮することができる。
以下、本発明のニッケルフリー給水装置について実施したニッケルの浸出実験結果を実施例1として説明する。表1は、本発明に係る各種給水装置(本発明品)におけるニッケル浸出量と、本発明の比較対象としての従来の給水装置(比較対照品)におけるニッケル浸出量とをそれぞれ示す。本発明品及び比較対照品のいずれも、内部表面にニッケル付着層を有するものである。また、本発明の化粧バルブ4〜5(止水栓)はいずれも同一型番の別ロット品で、通水路入口及び出口に亜鉛リングを挿着したものであり、本発明品の胴長水栓1〜2はいずれも同一型番の別ロット品で、通水路入口及び出口に亜鉛リングを挿着したものである。一方、比較対照品の化粧バルブ1〜3(止水栓)は、本発明品の化粧バルブ4〜5と同一型番の別ロット品であるが、通水路入口及び出口に亜鉛リングを挿着しない従来品である。なお、試験は、JIS S 3200−7(2004)にしたがって行った。また、評価対象器具は配管途中に設置した。更に、コンディショニングは無しで、浸出温度は23℃にて試験を行った。なお、表1中に示すニッケルの浸出量は、いずれも補正値(ρ)である。補正値(ρ)とは、公式具の分析結果(C´)に所定の補正係数(NF)を乗じて算出した値である。補正係数(C´)は、供試器具における浸出液が接触する部分の内容積(VL(L))を、評価対象器具における飲料水が接触する部分の内容積(VL(L))により除した値である。また、評価対象器具が化粧バルブの場合、配管途中に設置されるため、VF値は、評価対象器具における水が接触する部分の内容積の25倍とした。一方、評価対象器具が胴長水栓の場合、末端に設置されるため、VF値が1L以下の場合、VF=1Lとした。
Figure 0004171057
上記のように、本発明品1〜4は、いずれも、比較対照品1〜3に比べ、明らかにニッケル浸出抑制効果に優れていることが判明した。
次に、本発明のニッケルフリー給水装置について実施したニッケル及びその化合物の浸出実験結果を実施例2として説明する。表2は、本発明に係るニッケルフリー給水装置(本発明品)におけるニッケル及びその化合物の浸出量を示す。本発明品は、内部表面にニッケルクロム付着層を有するものである。また、本発明品の胴長水栓3〜4は同一型番の別ロット品であるが、胴長水栓3については、通水路入口及び出口に亜鉛リングを挿着し、胴長水栓4については、通水路入口及び出口に鉄リングを挿着した。なお、試験は、JIS S 3200−7(2004)にしたがって行った。また、評価対象器具は末端給水用具として設置した。更に、分析方法はICP法によった。なお、表2中に示すニッケル及びその化合物の浸出量は、いずれも補正値(ρ)である。また、評価対象器具が胴長水栓の場合、末端に設置されるため、VF値が1L以下の場合、VF=1Lとした。
Figure 0004171057
上記のように、本発明品5は、明らかにニッケル浸出抑制効果に優れていることが判明した。また、本発明品6は、本発明品5よりは劣るものの、やはり、ニッケル浸出抑制効果に優れていることが判明した。
次に、使用中の従来の水栓で経年推移した給水栓からのニッケル溶出量について測定した。即ち、未処理水栓(新品の水栓)と、経年現状水栓(通水により経年推移した水栓)とについて、ニッケル溶出量を測定した。その実験結果を実施例3として表3に示す。水栓は、内部表面にニッケル付着層を有するものである。なお、試験は、JIS S 3200−7(2004)「水道用器具浸出性能試験方法」に準拠して行った。
Figure 0004171057
上記のように、従来の水栓でも、約4〜5年程度使用した経年推移品については、ニッケル溶出量が基準値(WHO飲料水ガイドラインでは0.02mg/L、水質基準管理目標設定値では0.01mg/L)をクリアすることが判明した。即ち、本発明のニッケルフリー給水装置において、卑金属部の卑金属めっき層は、約4〜5年程度その膜厚を維持するものとすればよいことが確認された。よって、上記のように、例えば、溶融亜鉛めっき法によれば、亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層の膜厚は、0.5mm(500μm)〜1mm(1000μm)程度確保できることから、この場合の本発明品は、その膜厚減少が通常の通水条件で予想される0.01mm(10μm)/年程度であったとしても、約50〜100ヶ月(4年強〜8年強)程度は膜厚を維持し、十分なニッケル溶出防止効果を発揮することが確認された。そして、その後の使用により、亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層が完全に消失しても、この時点(4〜8年経過時点)では、ニッケル付着層からのニッケルの溶出はないため、卑金属部を交換する必要がなくなる。
次に、本発明のニッケルフリー給水装置としての末端給水器具について実施したニッケルの浸出実験結果を実施例4として説明する。表4は、本発明に係る末端給水器具(本発明品)におけるニッケル浸出量・溶出量と、本発明の比較対象としての従来の末端給水器具(比較対照品)におけるニッケル浸出量・溶出量とをそれぞれ示す。本発明品及び比較対照品のいずれも、内部表面にニッケル付着層を有するものである。なお、試験は、JIS S 3200−7(2004)「水道用器具浸出性能試験方法」に準拠して行った。
Figure 0004171057
上記のように、本発明品は、いずれも、同種の比較対照品に比べ、明らかにニッケル浸出抑制効果に優れていることが判明した。
次に、本発明のニッケルフリー給水装置としての配管途中器具について実施したニッケルの浸出実験結果を実施例5として説明する。表5は、本発明に係る配管途中器具(本発明品)におけるニッケル浸出量・溶出量と、本発明の比較対象としての従来の配管途中器具(比較対照品)におけるニッケル浸出量・溶出量とをそれぞれ示す。本発明品及び比較対照品のいずれも、内部表面にニッケル付着層を有するものである。なお、試験は、JIS S 3200−7(2004)「水道用器具浸出性能試験方法」に準拠して行った。
Figure 0004171057
上記のように、本発明品は、いずれも、同種の比較対照品に比べ、明らかにニッケル浸出抑制効果に優れていることが判明した。
実施の形態21
図26は本発明の実施の形態21に係るニッケルフリー給水装置としての持出金具(持出ソケット)を示す正面図であり、その右半部のみを断面視にて示す。
図26に示すように、実施の形態21に係るニッケルフリー給水装置は、配管部品としての持出金具(持出ソケット)230に具体化される。持出金具230は、円筒状の基部231と、基部231より小径をなし当該基部231の軸方向一端(図26中の下端)に同軸状に一体形成された円筒状の雄螺子部232と、基部231の軸方向他端に一体形成されたリング板状のフランジ部233とからなる。基部231及び雄螺子部232の内面には、それぞれ、互いに連通する通水路231a及び通水路232aが形成されている。基部231の内面と雄螺子部232の内面の境界部に形成された段差部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング234が着脱自在に載置嵌合して装着されている。亜鉛リング234は、基部231の内面に対応して当該基部231の内面と略同一の外径の円形平リング状に形成されている。亜鉛リング234の表面の全体には、上記実施の形態と同様、例えば、真鍮等の金属素地に所定膜厚(例えば、約500μ)の卑金属めっき(亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっき等)が施されている。このように構成した実施の形態21に係るニッケルフリー給水装置としての持出金具230は、配管経路上に取付けられると、通水路231aの基端に位置する亜鉛リング234の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止する。
実施の形態22
図27は本発明の実施の形態22に係るニッケルフリー給水装置で使用可能なリング状部材としての亜鉛リングを示し、図27(a)はその平面図、図27(b)は図27(a)のA−A線断面図である。
図27に示すように、実施の形態22に係るニッケルフリー給水装置で使用可能なリング状部材としての亜鉛リング240は、例えば、上記実施の形態16のボールバルブ180の亜鉛リング187、実施の形態17の六角ニップル190の亜鉛リング193、実施の形態18のエルボ200の亜鉛リング204、実施の形態19のチーズ210の亜鉛リング214、実施の形態20のユニオン220の亜鉛リング224、実施の形態21の持出金具230の亜鉛リング234の代わりに使用可能なものである。亜鉛リング240は、円形リングの円周方向一部を切り欠いて開口部241とした略C字状の平面形状を有する。また、亜鉛リング240の両端部(開口部241の両側)には、それぞれ、円形の小孔242が厚さ方向に貫通形成されている。亜鉛リング240は、上記実施の形態と同様、例えば、真鍮等の金属素地に所定膜厚(例えば、約500μ)の卑金属めっき(亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっき等)を施したものである。したがって、亜鉛リング240は、上記各実施の形態のニッケルフリー給水装置に使用されて、上記各実施の形態の亜鉛リングと同様の作用及び効果を発揮する。また、亜鉛リング240は略C字状をなすため、開口部241の両側から内方に圧力を加えて開口部241を狭めることにより、ニッケルフリー給水装置の取付部位に設けた嵌合溝乃至円形凹部等に容易に装着することができ、かつ、自身の弾性による形状復帰により当該嵌合溝乃至円形凹部等からの離脱を防止することができる。また、亜鉛リング240は一対の貫通孔としての小孔242を有するため、亜鉛リング240の表面上に存在する水が、一対の小孔242を介して亜鉛リング240の厚さ方向一側面から他側面へと流通する。したがって、亜鉛リング240の厚さ方向一側面がニッケルフリー給水装置の通水路に面する一方で他側面が通水路に面しない(取付部位の内面に対向する)場合でも、亜鉛リング240の厚さ方向一側面から他側面へと通水路の水が進行し、当該他側面の小孔242部分から当該他側面の全体に拡散する(他側面と取付部位の内面との隙間が微小であっても、毛細管効果により当該他側面の全面に行き渡る)。その結果、亜鉛リング240の他側面においても卑金属表面による上記効果(ニッケル溶出防止効果やキャビティ腐食防止効果等)を十分に発揮することができる。なお、前記開口部241も、亜鉛リング240の表面のうちの隠れた面(取付部位の内面に対向する面)へと通水路の水を流通すべく機能して、やはり、亜鉛リング240全体による上記作用効果を促進する。
実施の形態23
図28は本発明の実施の形態23に係るニッケルフリー給水装置としてのジョイントニップルを示す正面図であり、その右半部のみを断面視にて示す。図29は本発明の実施の形態23に係るニッケルフリー給水装置としてのジョイントニップルで使用可能な亜鉛リングを示し、図29(a)はその平面図、図29(b)はその正面図、図29(c)は図29(a)のB−B線断面図である。
図28に示すように、実施の形態23に係るニッケルフリー給水装置は、配管部品としてのジョイントニップル250に具体化される。ジョイントニップル250は、六角ボルト状のボルト部251と、ボルト部251より小径をなし当該ボルト部251の下端に同軸状に一体形成された円筒状のジョイント部252とからなる。ボルト部251及びジョイント部252の内面には、それぞれ、互いに連通する通水路251a及び通水路252aが形成されている。ボルト部251の内面とジョイント部252の内面の境界部に形成された段差部には、卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング253が着脱自在に載置嵌合して装着されている。ボルト部251内において亜鉛リング253上には、亜鉛リング253と略同一径(略同一の内径及び外径)のパッキン254が載置嵌合して装着されている。亜鉛リング253は、ボルト部251の内面に対応して当該ボルト部251の内面と略同一の外径の円形平リング状に形成されている。図29に示すように、亜鉛リング253の円周方向4箇所には、一定角度間隔(90度間隔)で離間する4個の小孔253aが放射方向(亜鉛リング253の内周面から外周面へと向かう方向)に貫通形成されている。また、亜鉛リング253の外周面の全体には、ローレット加工により粗表面部としてのローレット部253bが形成されている。なお、ローレット部253bは亜鉛リング253の厚さ方向両側面や内周面にも形成することができる。更に、亜鉛リング253の表面の全体には、上記実施の形態と同様、例えば、真鍮等の金属素地に所定膜厚(例えば、約500μ)の卑金属めっき(亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっき等)が施されている。即ち、亜鉛リング253のローレット部253bを含む全面に卑金属めっき層が均一に形成されている。したがって、亜鉛リング253は、上記各実施の形態の亜鉛リングと同様の作用及び効果を発揮する。即ち、このように構成した実施の形態23に係るニッケルフリー給水装置としてのジョイントニップル250は、配管経路上に取付けられると、通水路251aの基端に位置する亜鉛リング253の卑金属めっき層が、上記実施の形態の場合と同様にして、内部表面のニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制及び防止する。また、このとき、亜鉛リング253は合計4個の貫通孔としての小孔253aを有するため、亜鉛リング253の表面上に存在する水が、等間隔で並ぶ各小孔253aを介して亜鉛リング253の放射方向、即ち、その内周面から外周面へと流通する。したがって、亜鉛リング253の内周面がジョイントニップル250の通水路251aに面する一方で外周面が通水路251aに面しない(取付部位である段差部の内面に対向する)場合でも、亜鉛リング253の内周面から外周面へと通水路の水が進行し、当該外周面の小孔251a部分(4箇所)から当該外周面の全体に満遍なく拡散する(外周面と段差部の内面との隙間が微小であっても、毛細管効果により当該外周面の全面に行き渡る)。その結果、亜鉛リング253の外周面においても卑金属表面による上記効果(ニッケル溶出防止効果やキャビティ腐食防止効果等)を十分に発揮することができる。更に、亜鉛リング253のローレット部253bにより表面積が増大しているため、上記効果(ニッケル溶出防止効果やキャビティ腐食防止効果等)を一層効率よく発揮することができる。
実施の形態24
図30は本発明の実施の形態24に係るニッケルフリー給水装置で使用可能な亜鉛リングを示し、図30(a)はその平面図、図30(b)はその正面図であり右半部のみを断面視にて示す。
図30に示すように、実施の形態24に係るニッケルフリー給水装置で使用可能な卑金属部を構成するリング状部材としての亜鉛リング263は、例えば、上記実施の形態23のジョイントニップル250の亜鉛リング253の代わりに使用可能なものである。亜鉛リング263は、円形リングの円周方向一部を切り欠いて開口部263aとした略C字状の平面形状を有する。亜鉛リング263は、上記実施の形態と同様、例えば、真鍮等の金属素地に所定膜厚(例えば、約500μ)の卑金属めっき(亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっき等)を施したものである。したがって、亜鉛リング263は、上記各実施の形態のニッケルフリー給水装置に使用されて、上記各実施の形態の亜鉛リングと同様の作用及び効果を発揮する。また、実施の形態22と同様、亜鉛リング263は略C字状をなすため、開口部263aの両側から内方に圧力を加えて開口部263aを狭めることにより、ニッケルフリー給水装置の取付部位に設けた嵌合溝乃至円形凹部等に容易に装着することができ、かつ、自身の弾性による形状復帰により当該嵌合溝乃至円形凹部等からの離脱を防止することができる。また、前記開口部263aは、亜鉛リング263の表面のうちの隠れた面(取付部位の内面に対向する面)へと通水路の水を流通すべく機能して、亜鉛リング263全体による上記作用効果を促進する。更に、亜鉛リング263のローレット部263bにより表面積が増大しているため、上記効果(ニッケル溶出防止効果やキャビティ腐食防止効果等)を一層効率よく発揮することができる。
実施の形態25
図31は本発明の実施の形態25に係るニッケルフリー給水装置の適用対象としての従来の単水栓のこま部分の取付構造を示す斜視図である。図32は本発明の実施の形態25に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓のこま部分の取付構造を卑金属部としてのこまと共に示す分解斜視図である。
図31に示すように、一般的な単水栓のこまは、上記実施の形態1または実施の形態3の単水栓10のように、カバーナット271、ハンドル272及びスピンドル(栓棒)273を備える。スピンドル273の基端にはハンドル272が固着され、先端側はカバーナット271を貫通して挿入されている。また、スピンドル273の先端部には、例えば、実施の形態1の管部11の上部取付孔11cの雌螺子に螺合する雄螺子部274が一体形成されている。更に、スピンドル273には、図32に示すように、こま275,276の軸部275を挿着して取付けるための挿着孔274aが形成され、雄螺子部274にこま275,276を着脱自在に取付けるようになっている。よって、スピンドル273にこま275,276を取付けた状態では、スピンドル273の先端面274bはこまのケレップ276の対向面(上面)と当接することになる。
前記こまのケレップ276は本実施の形態のニッケルフリー給水装置の卑金属部を構成する。詳細には、こま275,276は、前記スピンドル273に一端側(上端側)が挿着される軸部275と、軸部275の他端側(下端側)の途中に一体的に張り出し形成された略円盤状乃至円形フランジ状のケレップ276とからなる。なお、こまの軸部275の他端部にはナット277が螺合とされ、ケレップ276とナット277との間にこまパッキン(図示略)を挟持するようになっている。こま275,276は、上記実施の形態1等のこま18等と同様、軸部275及びケレップ276を黄銅等の素地金属から一体形成し、更に、少なくともケレップ276の全表面に卑金属部乃至卑金属めっき層としての亜鉛合金めっきを所定膜厚で被覆形成したものである。無論、ケレップ276のみならず、軸部275の全表面にも卑金属部乃至卑金属めっき層としての亜鉛合金めっきを所定膜厚で被覆形成してもよい。ここで、通常のこまは全体が黄銅等の素地金属により一体形成され、めっき処理されることなく素地表面を露出するのに対し、スピンドル273には、少なくとも上端部(雄螺子部274より上側の部分となる露出部)には、装飾性を付与するためにニッケルめっきやニッケルクロムめっきが施される。したがって、スピンドル273へのめっき時に、雄螺子部274の全部または一部、先端面274b、挿着孔274aの内部等にも、ニッケルめっき乃至ニッケル付着層が形成される。その結果、上記したように、そのままでは、単水栓の通水時または通水停止時の水滞留時に、スピンドル273のうち単水栓内の通水路中に位置する部分のニッケルめっき乃至ニッケル付着層からニッケルが溶出する。更に、単水栓の組付状態では、スピンドル273の先端面(下端面)274bとこまのケレップ276の上端面とが当接してそれらの境界に微小な隙間が形成されると共に、異種金属(ニッケルと黄銅)からなるスピンドル273とケレップ276とが当接することになる。すると、上記したように、スピンドル273上のニッケルの溶出による腐食に加え、単水栓の通水時の流水がスピンドル273の先端面274bとケレップ276との間の微小な隙間でキャビテーション現象を発生し、キャビテーション腐食CE(図31参照)を発生することになる。
しかし、本実施の形態では、給水装置において2つの部材乃至部分が当接する場合において、一方の部材乃至部分にニッケルめっきやニッケルクロムめっき等のニッケル含有金属のめっきが施される場合に、他方の部材乃至部分に卑金属表面(亜鉛表面や亜鉛合金表面)を設けることで、当該一方の部材乃至部分のニッケル含有層(ニッケル付着層等)からのニッケル溶出を抑制すると共に、2つの部材乃至部分間の境界部分におけるキャビテーション腐食をも防止している。具体的には、本実施の形態のニッケルフリー給水装置は、2つの部材であるニッケル付着層が形成されたスピンドル273とこまのケレップ276とが当接する単水栓において、ケレップ276に所定膜厚(好ましくは100〜1000μm)の卑金属表面(好ましくは、亜鉛表面または亜鉛合金表面)を設けることで、スピンドル273のニッケル付着層からのニッケル溶出を大幅に抑制すると共に、それらの境界部分(スピンドル273の先端面274b)におけるキャビテーション腐食をも防止することができる。このとき、スピンドル273のニッケル付着層が、単水栓の通水路内に露出して水と接触してニッケル溶出の可能性がある場合のみならず、挿着孔274aの内面にニッケル付着層が形成され、当該ニッケル付着層が挿着孔274aの内面に侵入した水に接触してニッケルを溶出する可能性がある場合においても、ケレップ276の卑金属表面によりそれらの箇所からのニッケル溶出を大幅に抑制できる。特に、こまのケレップ276のみならず、軸部275の全表面にも卑金属表面を所定膜厚で被覆形成した場合、スピンドル273のニッケル付着層の総面積に対するこま275,276全体の卑金属表面の総面積の比率が増大し、より高いニッケル溶出抑制効果を得ることができ、かつ、軸部275の卑金属表面がスピンドル273の挿着孔274a内面と略接触状態(微小隙間で対向する状態)で配置されるため、同内面からのニッケル溶出をより効果的に抑制することができる。
実施の形態26
図33は本発明の実施の形態26に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す側面図である。
図33に示すように、実施の形態26に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態3と同様の単水栓10に具体化される。実施の形態26に係る単水栓10は、実施の形態3に係る単水栓10と同様の全体構成とされ、卑金属部としての整流器(水切り)281を吐水口14の内部に収容して着脱自在に装着している。詳細には、整流器281は、真鍮等の所定材料の素地で図に示す略星形乃至ジグザグ形状の環状に形成され、当該素地の表面に亜鉛または亜鉛合金からなる卑金属表面としての卑金属めっき層(上記と同様の亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層)を上記の所定膜厚で形成している。整流器281は、略星形乃至ジグザグ形状の環状に形成されているため、表面積を大きく確保することができ、ニッケル溶出防止効果やキャビテーション腐食防止効果を一層効果的に発揮することができる。
実施の形態27
図34は本発明の実施の形態27に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す側面図である。
図34に示すように、実施の形態27に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態1と同様の自在吐水パイプ20付の単水栓10に具体化される。実施の形態27に係る単水栓10は、ブッシュ19A及び本体19Bの構成を除き、実施の形態1に係る単水栓10と同様の全体構成とされ、卑金属部としての整流器(水切り)291を自在吐水パイプ20の吐水口24の内部に収容して着脱自在に装着している。整流器291は、実施の形態26の整流器281と同様の構成であるが、自在吐水パイプ20の吐水口24に挿着されるため、同吐水口24の内面形状(取付部位の形状)に応じた形状及び寸法となっている。整流器291も、略星形乃至ジグザグ形状の環状に形成されているため、表面積を大きく確保することができ、ニッケル溶出防止効果やキャビテーション腐食防止効果を一層効果的に発揮することができる。
実施の形態28
図35は本発明の実施の形態28に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す側面図である。
図35に示すように、実施の形態28に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態27と同様の自在吐水パイプ20付の単水栓10に具体化される。実施の形態28に係る単水栓10は、実施の形態27に係る単水栓10と同様の全体構成とされる一方、管部11の下面側に卑金属部提供部310を一体的に設けている。卑金属部提供部310は、突出部311、蓋部312及び卑金属部としての亜鉛ダイキャストからなる亜鉛塊313(例えば、直径φ=10mmで長さ15〜20mm程度)からなる。突出部311は、管部11の下面側において弁座12の弁孔12aと対向する位置に一体形成されて下方に突出する円筒状をなす。突出部311の上端は円形開口となり、弁座12の弁孔12aに対向して、突出部311内部空間と管部11内の通水路11aとを互いに連通している。また、突出部311の下端部外周面には雄螺子が螺刻されている。蓋部312は突出部311の雄螺子に螺合される円形の蓋状をなし、パッキン等を介して突出部311の下端部に水密に装着されている。亜鉛塊313は、上記実施の形態の亜鉛等と同様の亜鉛または亜鉛合金からなる円柱状をなす。亜鉛塊313の外径は、突出部311の内径と略同一或いは若干小さい径とされている。また、亜鉛塊313は、突出部311の長さと略同一或いは若干短い長さを有し、その円形の上端面が突出部311内に配置されて弁座12の弁孔12aと対向する。したがって、実施の形態28に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態1に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部提供部19と同様、卑金属部提供部310の亜鉛塊313が上流側の通水路11aで常に通水及び通水停止時の水と接触する。その結果、亜鉛塊313は、通水路11a及び通水路11bを含む単水栓10及び自在吐水パイプ20からのニッケル溶出を抑制すると共に、近接する位置で対向する弁座12の弁孔12a周辺(特に弁座12の下面側)の部分におけるキャビテーション腐食を効果的に防止する。特に、亜鉛塊313は、通水停止時には、弁座12より上流側のニッケル付着層からのニッケル溶出を大幅に抑制する。また、亜鉛塊313は、こま18のケレップ18aにゴムパッキン18bを固定するためのナットにニッケルめっきが施される場合も、当該ナットからのニッケル溶出を効果的に抑制する。なお、亜鉛塊313は、管部11の通水路11a内の通水等を妨げない限りにおいて、突出部311より大きい長さとして通水路11a内に一部(上端部)が突出するようにし、より近接した位置で弁座12の弁孔12aと対向するようにしてもよい。こうすると、亜鉛塊313の先端が弁座12により近接した位置で対向することになり、一層効果的に弁座12周辺でのキャビテーション腐食を防止することができる。なお、卑金属部提供部310は、突出部311及び蓋部312の組み合わせで、(寒冷地等で夜間凍結防止用に水抜きを行うための)水抜き部としても機能するものであり、かかる水抜き部に亜鉛塊313を収容することにより、水抜き部及び卑金属部提供部として兼用することができる。
実施の形態29
図36は本発明の実施の形態29に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓の吐水パイプ部を示す分解斜視図である。
図36に示すように、実施の形態29に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態13と同様のシングルレバー混合栓用の吐水パイプ部320に具体化される。実施の形態28に係る吐水パイプ部320は、回動部321、吐水パイプ322及び吐水部323を有している。回動部321は、例えば、実施の形態1のシングルレバー混合栓120の基部121の下端部に組み付けられて左右に回動自在となる円筒状をなしている。吐水パイプ322及び吐水部323は実施の形態13の吐水パイプ123及び吐水部124と同様の構成である。一方、吐水パイプ322の基端部の下面側には、卑金属部提供部330が一体的に設けられている。卑金属部提供部330は、突出部331、パッキン332、蓋部333、並びに、卑金属部としての鉄筒334及び卑金属部としての亜鉛筒335からなる。突出部331は、吐水パイプ322の基端部の下面側に一体形成されて下方に突出する円筒状をなす。突出部331の上端は円形開口となり、突出部331の内部空間と吐水パイプ322内の通水路とを互いに連通している。また、突出部331の下端部外周面には雄螺子が螺刻されている。蓋部333は突出部331の雄螺子に螺合される円形の蓋状をなし、パッキン332を介して突出部331の下端部に水密に装着され、突出部331の下端開口を水密に閉塞する。
鉄筒334は、純鉄または所定の鉄合金からなる円筒状(厚み1mm程度)をなす。なお、鉄筒334を鉄合金とする場合、鉄に添加する金属としてはコバルト等のニッケルより卑な金属とすることが好ましい。鉄筒334の外径は、突出部331の内径と略同一或いは若干小さい径とされている。また、鉄筒334は、突出部331の長さと略同一或いは若干短い長さを有している。亜鉛筒335は、上記実施の形態の亜鉛等と同様の亜鉛または亜鉛合金からなる円筒状をなす。亜鉛筒335の外径は、鉄筒334の内径より所定寸法小さい(多少小径の)径とされている。また、亜鉛筒335は、鉄筒334の長さと略同一長さを有している。そして、鉄筒334内に亜鉛筒335を同軸状に収容した状態で、鉄筒334及び亜鉛筒335の両者を突出部331に同軸状に収容配置し、パッキン332を介して蓋部333により突出部331の下端を水密に閉塞して、吐水パイプ322の基端側で内部通水路の水が突出部331内の鉄筒334及び亜鉛筒335へと流通するようになっている。このとき、鉄筒334と亜鉛筒335との間には所定厚み(鉄筒334の内径と亜鉛筒335の外径との差に応じた厚み)の円筒状の水流通空間が形成される。
他方、吐水部323の下面に一体形成した円筒状の吐水口324には、卑金属部提供部としての泡沫金具340が一体的に着脱自在に取り付けられている。泡沫金具340は、パッキン341、ネット部342、収容通水部343、ケース部344、並びに、卑金属部としての鉄筒345及び卑金属部としての亜鉛筒346からなる。パッキン341は、吐水口324の基端外周に装着されるリング状をなす通常のパッキンである。また、ネット部342は、中心に向かって若干傾斜する略円盤網状(非常に高さの小さい円錐状)をなし、円筒状をなす収容通水部343の上端の円形開口に装着されて当該開口の全体を覆う。収容通水部343の下端には整流板が一体形成されている。また、収容通水部343は、鉄筒345及び亜鉛筒346を同軸状に収容した状態で、上端開口を前記ネット部342により覆うようになっている。なお、ケース部344は、鉄筒345及び亜鉛筒346を収容した状態で上端をネット342により覆った収容通水部343を内部に収容するようになっている。なお、内部に前記鉄筒345及び亜鉛筒346を収容するために前記収容通水部343及びケース部344の長さ等を変更した以外は、パッキン341、ネット部342、収容通水部343及びケース部344の構成は一般的なパッキン等と同様である。
鉄筒345は、上記鉄筒334と同様の純鉄または所定の鉄合金からなる円筒状をなす。鉄筒345の外径は、収容通水部343の内径と略同一或いは若干小さい径とされている。また、鉄筒345は、収容通水部343の長さと略同一或いは若干短い長さを有している。亜鉛筒346は、上記実施の形態の亜鉛等と同様の亜鉛または亜鉛合金からなる円筒状をなす。亜鉛筒346の外径は、鉄筒345の内径より所定寸法小さい(多少小径の)径とされている。また、亜鉛筒346は、鉄筒345の長さと略同一長さを有している。そして、鉄筒345内に亜鉛筒346を同軸状に収容した状態で、鉄筒345及び亜鉛筒346の両者を収容通水部343に同軸状に収容配置し、収容通水部343の上端開口をネット部342により覆った状態で、当該収容通水部343をケース部344内に収容し、その後、パッキン341を介してケース部344を吐水口342に水密に装着することにより、吐水パイプ322の先端側の吐水部323で内部の水が収容通水部343内の鉄筒345及び亜鉛筒346へと流通するようになっている。このとき、鉄筒345と亜鉛筒346との間には所定厚み(鉄筒345の内径と亜鉛筒346の外径との差に応じた厚み)の円筒状の水流通空間が形成される。
上記のように構成した実施の形態29に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態28に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部提供部310と同様にして、まず、吐水パイプ322の基端側で、卑金属部提供部330の鉄筒334及び亜鉛筒335(鉄筒334の全面と亜鉛筒335の全面、特に、鉄筒334の外面及び内面と亜鉛筒335の外面及び内面)が、吐水パイプ322の通水路内の水(及び吐水パイプ322より上流側の水)と常に接触する。また、吐水パイプ322の先端側の吐水口324部分で、卑金属部提供部としての泡沫金具340の鉄筒345及び亜鉛筒346(鉄筒345の全面と亜鉛筒346の全面、特に、鉄筒345の外面及び内面と亜鉛筒346の外面及び内面)が、吐水パイプ322の通水路内の水(特に吐水口324から吐水される水や吐水口に滞留する水)と常に接触する。このとき、鉄筒334及び鉄筒345のみならず亜鉛筒335及び亜鉛筒346もニッケルより卑な金属である。その結果、鉄筒334及び鉄筒345並びに亜鉛筒335及び亜鉛筒346は、吐水パイプ322の両端側で協働して、吐水パイプ322の内面、吐水パイプ322の基端(回動部321との接続部)の開口周辺、回動部321の内面、及び、吐水部323の吐水口324の各ニッケル付着層からのニッケル溶出を抑制する。また、基端側の鉄筒334及び亜鉛筒335は、吐水パイプ322の基端(回動部321との接続部)の開口周辺に近接する位置にあるため、当該吐水パイプ322の開口周辺(キャビテーション腐食が発生しやすい部分)におけるキャビテーション腐食を効果的に防止する。一方、先端側の鉄筒345及び亜鉛筒346は、吐水パイプ322の先端の吐水口324の先端に近接する位置にあるため、当該吐水口324の下端開口周辺や泡沫金具340自体の吐水端面となる下端面(即ち、キャビテーション腐食が発生しやすい部分)におけるキャビテーション腐食を効果的に防止する。加えて、鉄筒334及び鉄筒345並びに亜鉛筒335及び亜鉛筒346は、ニッケル溶出を抑制する際に自らが微量ながら水中に溶出して、上記のように、必須ミネラルである亜鉛や鉄分の飲用水からの補給を可能にする。なお、卑金属部提供部330は、突出部331及び蓋部333の組み合わせで、(寒冷地等で夜間凍結防止用に水抜きを行うための)水抜き部としても機能するものであり、かかる水抜き部に鉄筒334及び亜鉛筒335(或いは亜鉛塊単体)を収容することにより、水抜き部及び卑金属部提供部として兼用することができる。
ここで、鉄筒334,345の内側に亜鉛筒335,346を収容すると、鉄筒334,345からの赤錆の発生を非常に効果的に抑制することができることを本発明者等は鋭意実験研究の結果見出した。即ち、本発明者等による実験結果によれば、ビーカー内の水にFeパイプ442のみを浸漬して一晩放置したところ、鉄筒334,345から水中への赤錆の溶出が明らかに視認されたが、ビーカー内の水に鉄筒334,345及び亜鉛筒335,346を並設して(鉄筒334,345内に亜鉛筒335,346を収容して)浸漬して一晩放置したところ、鉄筒334,345から水中への赤錆の溶出は殆ど確認できなかった。かかる赤錆防止作用のメカニズムはまだ明らかでないが、このことから、本実施の形態でも、卑金属部330,340の鉄筒334,345からの赤錆の発生を亜鉛筒335,346により効果的に抑制できるものと推測できる。なお、亜鉛筒335,346を鉄筒334,345の外側に配置すると、亜鉛筒335,346は、鉄よりも卑な金属となるため、亜鉛筒335,346の外周面はニッケル付着層に対して犠牲的に溶出し、内周面は鉄筒334,345に対して犠牲的に溶出することになり、亜鉛溶出量が過大となる可能性があるが、亜鉛筒335,346を内側にすると、かかる事態を防止することができ、亜鉛溶出量を適正範囲にコントロールすることが容易である。また、上記卑金属部330,340において、鉄筒334,345の更に外側にニッケルまたはステンレス製の円筒体を配置すると、更に、鉄筒334,345の外周面から鉄分を犠牲的に溶出さえることができ、必須ミネラルとしての鉄分を増加したいときには有効である。
実施の形態30
図37は本発明の実施の形態30に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。
図37に示すように、実施の形態30に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態13と同様のシングルレバー混合栓350に具体化される。シングルレバー混合栓350は、実施の形態29の吐水パイプ部320と同様の構成を採用している。詳細には、本実施の形態の吐水パイプ部320は、吐水パイプ322の基端側に上記卑金属部提供部330を一体的に設けている。卑金属部提供部330は、上記のように、突出部331内に卑金属部としての鉄筒334及び亜鉛筒335を収容配置したものであるが、鉄筒334及び亜鉛筒335の組み合わせに代えて、実施の形態28の亜鉛塊313と同様の円柱状の亜鉛塊(例えば、直径φ=10mmで長さ15〜20mm程度)を卑金属部として突出部331内に収容配置してもよい。一方、吐水パイプ322の吐水口324に着脱自在に取付けられる本実施の形態卑金属部提供部としての泡沫金具360は、上記泡沫金具340とは異なる構成を有している。即ち、泡沫金具360は、通常の泡沫金具のケース部と同様のケース部361内に、卑金属部としての整流器362を収容している。整流器362は、実施の形態26または27の整流器281,291と同様、所定の素地(黄銅等)の表面に亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきを施したものである。本実施の形態に係るシングルレバー混合栓350も、吐水パイプ322の基端側及び先端側で、卑金属部としての鉄筒334及び亜鉛筒335(または亜鉛塊)並びに卑金属部としての整流器362が、上記ニッケル溶出防止効果及びキャビテーション腐食防止効果を発揮し、更に、必須ミネラル補給効果をも発揮する。
実施の形態31
図38は本発明の実施の形態31に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。
図38に示すように、実施の形態31に係るニッケルフリー給水装置は、実施の形態13と同様のシングルレバー混合栓370に具体化される。シングルレバー混合栓370は、実施の形態29の吐水パイプ部320と若干異なる構成を採用している。詳細には、本実施の形態の吐水パイプ部320は、吐水パイプ123の基端側に上記卑金属部提供部330を設けるのではなく、これに代えて、基部121の下端部に組み付けられた回動部371に卑金属部提供部380を一体的に設けている。卑金属部提供部380は、突出部381、図示しないパッキン、蓋部382、並びに、卑金属部としての亜鉛塊383(例えば、直径φ=10mmで長さ15〜20mm程度)からなる。突出部381は、回動部371の中央部の後面側(吐水パイプ123と反対側)に一体形成されて後方(吐水パイプ123と反対方向)に突出する円筒状をなす。突出部381の基端は円形開口となり、突出部381の内部空間と回動部371内の通水路とを互いに連通している。また、突出部381の先端部外周面には雄螺子が螺刻されている。蓋部382は突出部381の雄螺子に螺合される円形の蓋状をなし、パッキンを介して突出部381の下端部に水密に装着され、突出部381の先端開口を水密に閉塞する。更に、突出部381には、実施の形態28の亜鉛塊313と同様の卑金属部としての円柱状の亜鉛塊383が収容配置されている。なお、亜鉛塊383の代わりに、実施の形態30のような鉄筒334及び亜鉛筒335の組み合わせを卑金属部として突出部381内に収容配置してもよい。一方、吐水パイプ322の吐水口324には、実施の形態30の泡沫金具360が卑金属部提供部として着脱自在に装着されている。本実施の形態に係るシングルレバー混合栓370も、吐水パイプ322の基端側(回動部371内)及び先端側で、卑金属部としての亜鉛塊383(または鉄筒334及び亜鉛筒335の組み合わせ)並びに卑金属部としての整流器362が、上記ニッケル溶出防止効果及びキャビテーション腐食防止効果を発揮し、更に、必須ミネラル補給効果をも発揮する。特に、卑金属部提供部380の亜鉛塊383が、通水時及び通水停止時に、給水管171及び/または給水管172内の水と接触して、実施の形態15の卑金属部と同様の効果を通水路の水源側で発揮することができる。また、卑金属部提供部380の亜鉛塊383が、回動部371の周辺の通水路または水流通箇所でキャビテーション腐食が発生しやすい部位のキャビテーション腐食を効果的に防止する。なお、卑金属部提供部380は、突出部381及び蓋部382の組み合わせで、(寒冷地等で夜間凍結防止用に水抜きを行うための)水抜き部としても機能するものであり、かかる水抜き部に鉄筒及び亜鉛筒の組み合わせ(或いは亜鉛塊383単体)を収容することにより、水抜き部及び卑金属部提供部として兼用することができる。
実施の形態32
図39は本発明の実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器を示す側面図であり、主要部(卑金属部収容部)を拡大して示す。図40は本発明の実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器の卑金属部をし、(a)はNiパイプの断面図、(b)はFeパイプの断面図、(c)はZn塊の断面図、(d)はNiパイプの平面図、(d)はFeパイプの平面図、(e)はZn塊の平面図、(f)はNiパイプ内にFeパイプを、Feパイプ内にZn塊をそれぞれ同軸状に収容した状態の卑金属部を示す平面図である。
図39に示すように、実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置は、家庭用の水道水栓に接続される載置型(据置型)の浄水器400に具体化される。浄水器400は、図示はしないが、一般的な据置型の浄水器と同様、浄水器本体410を備えている。浄水器本体410は、浄水カートリッジ等(図示略)を内装する収容部411を備えている。浄水器本体410は、収容部411の下端部外周面から突出する円筒状の接続部412に、雄螺子部413を介して給水管414を着脱自在に接続するようになっている。浄水器本体410は、接続部412を介して給水管414と収容部411内の通水路(浄水カートリッジより上流側にある原水通路)とを連通し、水道水(原水)を収容部411内の原水通路(図示略)から浄水カートリッジ等に供給して、浄水カートリッジ等からの浄水を浄水カートリッジより下流側にある浄水通路(図示略)へと供給するものである。また、浄水器400は、浄水器本体410の収容部411の頂部に連結部420を配設し、連結部420を介して収容部411の浄水通路からの浄水を自在パイプ430に供給して、自在パイプ430先端の吐水口から浄水を吐出するようになっている。連結部420は、本体側取付部421及びパイプ側取付部423を有している。本体側取付部421は、浄水器本体410の収容部411の頂部中央に螺着して着脱自在に固定され、収容部411の浄水通路の先端(下流端)に同軸状に接続される略円筒ケース状をなしている。詳細には、図39のA部詳細断面図(拡大断面図)に示すように、本体側取付部421は、下端部の内周面に雌螺子421bを形成し、その雌螺子421bを浄水器本体410の収容部411の頂部中央の雄螺子(図示略)に螺合することにより、収容部411に取付けられる。また、本体側取付部421の上端部には若干小径の雄螺子部422が形成され、パイプ側接続部423の下側の雌螺子部423aを雄螺子部422に螺合することにより、パイプ側接続部423を本体側接続部421に取付けるようになっている。
ここで、本体側取付部421は、卑金属部収容部を構成し、内部の通水路421aに卑金属部440を着脱自在に収容している。卑金属部440は、所定直径(内径及び外径)の円筒状をなすニッケル(Ni)パイプ441、Niパイプ441より小径の円筒状をなす鉄(Fe)パイプ442及びFeパイプ442より小径の円柱状をなす亜鉛(Zn)塊443からなり、Niパイプ441内にFeパイプ442を同軸状に収容配置すると共に、Feパイプ442内にZn塊443を同軸状に収容配置した状態で(三重装着状態で)、本体側取付部421の通水路421a内に同軸状に収容配置されている。なお、Niパイプ441、Feパイプ442及びZn塊443は、例えば、約30mmの高さとすることができる。Niパイプ441は本体側取付部421の通水路421aより多少小径の外径を有し、Niパイプ441の外周面と通水路421の内周面との間に所定の隙間(円筒状の通水空間)が形成されるようになっている。また、Feパイプ442はNiパイプ441の内径より多少小径の外径を有し、Feパイプ442の外周面とNiパイプ441の内周面との間に所定の隙間(円筒状の通水空間)が形成されるようになっている。更に、Zn塊443はFeパイプ442の内径より多少小径の外径を有し、Zn塊443の外周面とFeパイプ442の内周面との間に所定の隙間(円筒状の通水空間)が形成されるようになっている。なお、Feパイプ442及びZn塊443は、実施の形態29の鉄筒334及び亜鉛筒335と同様の金属(単一金属または合金)からなる。
上記のように構成した実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置は、原水を給水管414から接続部412を介して浄水器本体410の収容部411内の原水通路に供給し、浄水カートリッジからの浄水を本体側取付部421からパイプ側取付部423を介して自在パイプ430へと供給し、最終的に、自在パイプ430の吐水口から吐出する。かかる際に、本体側取付部421の通水路421a内で、卑金属部440のFeパイプ442及びZnパイプ443(鉄パイプ442の全面とZnパイプ443の全面、特に、Feパイプ442の外面及び内面とZnパイプ443の外面及び内面)が、浄水器本体410内の通水路(浄水通路、浄水カートリッジ部分の通水路及び原水通路)の水(及び自在パイプ430内の水、並びに、連結部420の通水路421a,422a内の水)と常に接触する。このとき、Feパイプ442及びZnパイプ443がニッケルより卑な金属である。その結果、Feパイプ442及びZnパイプ443は、浄水器本体410内の通水路のニッケル付着層(特に、浄水通路の下流側部分、原水通路の上流側部分等のニッケル付着層が形成されやすい箇所)、及び、自在パイプ430内のニッケル付着層(パイプ側接続部423との接続箇所となる開口部位の近傍部分、吐水口の近傍部分等のニッケル付着層が形成されやすい箇所)からのニッケルの溶出を効果的に抑制してニッケル浸出量を規制値以下に制御することができると共に、連結部420自体の通水路421a,422a内にニッケル付着層が形成される場合も、当該ニッケル付着層からのニッケルの溶出を効果的に抑制してニッケル浸出量を規制値以下に制御することができる。更に、本体側取付部421の通水路421a内の卑金属部440のFeパイプ442及びZnパイプ443により、上記実施の形態と同様、キャビテーション腐食が発生しやすい箇所(特に、卑金属部430の近傍に位置する本体側取付部421と収容部411との接続箇所、本体取付部421とパイプ側取付部423との接続箇所、パイプ側取付部423と自在パイプ430との接続箇所等)におけるキャビテーション腐食を効果的に抑制することができる。
加えて、実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置は、Feパイプ442及びZnパイプ443は、ニッケル溶出を抑制する際に自らが微量ながら水中に溶出して、上記のように、必須ミネラルである鉄分や亜鉛分の飲用水からの補給を可能にする。ここで、卑金属部440では、Zn塊443(その外面全面)は、ニッケル付着層に対する犠牲防食により溶出することに加え、(特にその外周面が)Feパイプ442に対向するため、当該(Znに対して貴な金属となる)Feパイプ442に対しても犠牲的に溶出することから、亜鉛の浸出量の制御は、上記ニッケル付着層の総面積に対するZn塊443の総表面積の比(好ましくは、Ni:Zn=3:1〜5:1の範囲)に応じた亜鉛の浸出量に加え、Feパイプ442の内面の面積とZn塊443の外面の面積の比とに応じたFeパイプ442によるZn塊443から亜鉛の浸出量をも考慮して行う必要がある。しかし、鉄に対する亜鉛の腐食電位差は、ニッケルに対する亜鉛の腐食電位差より小さいため、基本的には、上記実施の形態(及び後述の説明)におけると同様の条件でZn塊443の寸法(即ち、表面積を規定する高さ及び直径)を設定すればよいと考えられる。即ち、後述するように、ニッケル付着層の総面積に対するZn塊443の総表面積の比が、好ましくは、Ni:Zn=3:1〜5:1の範囲となるよう、更に好ましくは、Ni:Zn=4:1程度の値となるよう、亜鉛の寸法を設定することが望ましい。一方、ニッケルに対する鉄の腐食電位差は、ニッケルに対する亜鉛の腐食電位差より小さいため、必須ミネラルとしての鉄分補給の観点からは、Feパイプ442のニッケル付着層に対する犠牲防食による鉄分の溶出は微量であると考えられえる。よって、本実施の形態では、卑金属部440のFeパイプ442の外側に更にNiパイプ441を配置して、Feパイプ442(特にその外周面)がNiパイプ441(特にその内周面)に対しても犠牲的に溶出し、全体としての鉄分の溶出量を増加するようにしている。なお、Niパイプ441の代わりにステンレスパイプを使用してもよく、この場合、ステンレスパイプ(特に、その含有ニッケル成分)に対して卑な金属となるFeパイプ442から鉄分が溶出する。
いずれにしても、Feパイプ442及びZnパイプ443から鉄及び亜鉛がそれぞれの規制値の範囲内で溶出し、かつ、Feパイプ442及びZn塊443の並設によるニッケル付着層からのニッケル浸出量を規制値以下に抑制できるよう、Niパイプ441、Feパイプ442及びZn塊443の寸法(特に表面積を規定する高さ並びに直径)を設定することが好ましい。なお、本実施の形態では、Niパイプ441、Feパイプ442及びZn塊443三重に配置して卑金属部440を構成しているため、例えば、Niパイプ441、Feパイプ442及びZn塊443の寸法をそれぞれ異なる寸法とすることにより、それらの間の面積比を容易に設定して、鉄の浸出量や亜鉛の浸出量を容易に増減制御することが可能となる。また、本実施の形態では、Niパイプ441、Feパイプ442及びZn塊443三重に配置して卑金属部440を構成しているため、Feパイプ442からの赤錆の発生を効果的に抑制することができる。即ち、本発明者等による実験結果によれば、ビーカー内の水にFeパイプ442のみを浸漬して一晩放置したところ、Feパイプ442から水中への赤錆の溶出が明らかに視認されたが、ビーカー内の水にFeパイプ442及びZn塊443を並設して(Feパイプ442内にZn塊443を収容して)浸漬して一晩放置したところ、Feパイプ442から水中への赤錆の溶出は殆ど確認できなかった。かかる赤錆防止作用のメカニズムはまだ明らかでないが、このことから、本実施の形態でも、卑金属部440のFeパイプ442からの赤錆の発生をZn塊443により効果的に抑制できるものと推測できる。
ところで、実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置は、浄水器400の収容部411に対し、前記卑金属部440を自在パイプ430側(浄水側乃至吐水側)の連結部420に設けているが、同様の構成の卑金属部(Niパイプ、Feパイプ及びZn塊の三重構成)を、収容部411の給水管414側(原水側乃至給水側)に設けてもよい。この場合も、卑金属部が、原水側乃至給水側において上記と同様のニッケル溶出防止効果、キャビテーション腐食防止効果及び必須ミネラル補給効果を発揮する。また、実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置は、卑金属部440(Niパイプ441、Feパイプ442及びZn塊443の三重構成)を、浄水器400の収容部411の自在パイプ430側(浄水側乃至吐水側)の連結部420及び給水管414側(原水側乃至給水側)の両者に設けてもよい。いずれの場合も、浄水器本体410内ではなく、浄水器本体410に着脱自在に後付される部品である本体側取付側421及び接続部412内に卑金属部440を着脱自在に収容配置するため、その装着及び交換を非常に簡単に行うことができ、極めて高い実用性及び実現性を有することになる。
Ni/Zn表面積比
次に、上記各実施の形態に係るニッケルフリー給水装置において通水路の内部表面に付着したニッケル付着層と卑金属部による卑金属表面(代表的には、亜鉛めっき表面または亜鉛合金表面)との間の好適面積比範囲について説明する。
まず、給水装置の通水路内部表面に付着したニッケル付着層総面積(被覆面積)に対する犠牲アノード面積比(卑金属表面層の面積比)を増大するほど、ニッケル付着層のからのニッケル溶出を抑制度合いを大きくすることができるが、同面積比をあまり大きくすると、ニッケル溶出の抑制度合いを大きくできる半面、犠牲アノードとなる金属の溶出が大きくなる。例えば、犠牲アノードとして亜鉛めっきを使用し、卑金属表面を亜鉛めっき表面とする場合、ニッケル被覆面積と亜鉛めっき面積との比(Ni:Zn)が大きくなりすぎると、ニッケル浸出量は水質基準管理目標設定値(0.001mg/L)を大幅に下回ることになるが、亜鉛自体の浸出量が水質基準管理設定値(0.97mg/L)を超えることとなる。そこで、本発明者等は、ニッケル被膜面積に対する犠牲アノードの面積比の重要性に着目し、ニッケル・亜鉛面積比(Ni;Zn)について鋭意実験と研究を重ねた結果、試行錯誤の末、最適な面積比の範囲を見出した。即ち、図39に示すように、まず、犠牲アノードとして使用する金属によって最適な面積比は異なり、また、その金属を合金化した場合やその合金比率によっても最適な面積比は異なる。更に、給水装置の種類や内容積によっても最適な面積比は異なる。即ち、シングルレバー水栓等の内容積が大きい製品(大容量製品)は、大容量のために開口の数及び口径も相対的に小さくなり、結果として容積に対するニッケル被覆面積比が相対的に小さくなるため、ニッケル浸出量は相対的に小さくなる。一方、パイプ付自在水栓やアングル給水栓や化粧バルブ等の内容積が小さい製品(小容量製品)は、小容量であるために開口の数及び口径が相対的に大きくなり、結果として容積に対するニッケル被覆面積比が相対的に大きくなるため、ニッケル浸出量は相対的に大きくなる。
図41は本発明に係るニッケルフリー給水装置の内部通水面のNi被膜面積に対する犠牲アノード面積比と浸出試験結果とを示す表である。図41では、ニッケル浸出量が相対的に大きくなるいわゆる小容量製品として、同一内容積(22ml)で同一ニッケル被覆面積(0.22dm2)の化粧バルブを2品(供試体1及び2)、同一内容積(22ml)で同一ニッケル被覆面積(0.22dm2)の胴長水栓を2品(供試体3及び4)、それぞれ用意すると共に、当該化粧バルブ及び胴長水栓の犠牲アノードとして、それぞれ、亜鉛めっきを施した給水栓こまを通水路内に組み付けることにより、本発明に係る評価対象器具としての供試体1〜4を作成し、各供試体1〜4について浸出試験を行い、その結果を測定した(本発明の器具例1〜4)。このときのニッケル・亜鉛面積比(図41の中欄の「Ni被覆面積」と「犠牲アノード」との比)は、供試体1〜4について、それぞれ、4.4:1、4.4:1、4:1、4:1であった(図41の左欄の「面積比(Ni:Zn)」のデータ参照)。一方、比較例として、同一タイプ(同一内容積で同一ニッケル被覆面積)の化粧バルブ及び胴長水栓をそれぞれ2品ずつ(供試体5,6,7,8)用意すると共に、当該化粧バルブ及び胴長水栓については通常の(亜鉛めっきを施さない)給水栓こまを通水路内に組み付けると共に、ニッケル溶出対策は何ら施すことのない供試体5〜8を作成し、各供試体5〜8について浸出試験を行い、その結果を測定した(本発明の器具例1〜4の比較対象品としての比較例1〜4)。その結果、図41に示すように、比較例1〜4の化粧バルブ及び胴長水栓(供試体5〜8)によれば、ニッケル浸出量は、それぞれ、0.24mg/L、0.12mg/L、0.06mg/L、0.07mg/Lとなり(図41の右欄の「浸出試験結果(mg/L)」の「Ni(通常品)」のデータ参照)、水質基準管理目標設定値(0.001mg/L)を大幅に上回っているのに対し、本発明の器具例1〜4の化粧バルブ及び胴長水栓によれば、4供試体中3供試体(供試体2〜4)のニッケル浸出量は、それぞれ、0.0003mg/L、0.0002mg/L、0.0004mg/Lとなっており(図41の中欄の「浸出試験結果(mg/L)」の「Ni」のデータ参照)、水質基準管理目標設定値(0.001mg/L)を大幅に下回っている。なお、残りの1供試体(供試体1)についても、ニッケル浸出量(0.0012mg/L)は水質基準管理目標設定値(0.001mg/L)を若干上回るだけであり、誤差の範囲とも考えられる。一方、本発明の器具例の化粧バルブ及び胴長水栓によれば、全ての供試体1〜4の亜鉛浸出量は、それぞれ、0.3mg/L、0.52mg/L、0.17mg/L、0.29mg/Lとなっており(図41の中欄の「浸出試験結果(mg/L)」の「Zn」のデータ参照)、水質基準管理設定値(0.97mg/L)を確実に下回っている。
本発明者等は、上記以外にも、各種実験及び研究を行い、その知見にしたがって、ニッケル浸出量が相対的に大きくなる小容量製品(化粧バルブ、胴長水栓等の製品)については、犠牲アノードを亜鉛表面とした場合、ニッケル・亜鉛面積比(Ni;Zn)の範囲を、Ni:Zn=3:1〜5:1の範囲(即ち、ニッケル被覆面積に対する亜鉛表面積の割合が約20〜33%の範囲)とすると、ニッケル浸出量を水質基準管理目標設定値以下とし、かつ、亜鉛浸出量を水質基準管理設定値以下とすることができ、好ましい結果を得られることを確認した。また、ニッケル・亜鉛面積比(Ni;Zn)を、Ni:Zn=4:1(即ち、ニッケル被覆面積に対する亜鉛表面積の割合が約25%)とすると、ニッケル浸出量を確実に水質基準管理目標設定値以下とし、かつ、亜鉛浸出量も確実に水質基準管理設定値以下とすることができ、より好ましい結果を得られることも確認した。即ち、上記供試体1についても、ニッケル・亜鉛面積比(Ni;Zn)を、Ni:Zn=4:1とすれば、ニッケル浸出量は確実に水質基準管理目標設定値(0.001mg/L)を下回る。
なお、小容量より内容積の大きい、いわゆる中容量製品や大容量製品については、上記のようにニッケル浸出量は内容積が大きくなるほど相対的に小さくなるため、小容量製品の場合(Ni:Zn=3:1〜5:1)よりニッケル被覆面積に対する亜鉛面積比を更に小さくすることができると考えられる。例えば、小容量製品の内容積は、約20ml前後であり、中容量製品の内容積は、約60ml前後であるため、中容量製品については、ニッケル・亜鉛面積比(Ni;Zn)を、例えば、小容量製品の2倍〜3倍程度のNi:Zn=6:1〜9:1またはNi:Zn=8:1〜12:1またはNi:Zn=10:1〜15:1とすることができると考えられる。また、大容量製品の内容積は、約90ml、100ml(クランク付混合栓等)、110ml(シングルレバー混合栓等)、150ml等、小容量製品の4〜5倍以上となるため、ニッケル・亜鉛面積比(Ni;Zn)を、例えば、小容量製品の4倍〜7倍程度のNi:Zn=12:1〜21:1、Ni:Zn=16:1〜28:1等とすることができると考えられる。しかし、本発明の別の課題(必須ミネラル補給)の観点からは、亜鉛等からなる卑金属部が水中へのニッケルの溶出を抑制する一方で、自ら犠牲的に水中(水道水や浄水)に所定範囲の微量だけ(確実に規制値の範囲内で人体等(動物にミネラル補給する場合も含む)に必要な必須ミネラルを補給できるような量だけ)溶出できるようにするには、使用する製品の内容積にかかわらず(小容量製品、中容量製品、大容量製品ともに)、ニッケルと卑金属部(特に、ニッケルと亜鉛)の面積比を約3:1〜5:1の範囲内とすることが好ましく、約3:1〜4:1の範囲とすることが更に好ましいことを本発明者等は各種実験により確認した。なお、ニッケル浸出抑制効果と必須ミネラル補給効果の両効果を満足するためには、ニッケルと卑金属部(特に、ニッケルと亜鉛)の面積比を約4:1とすることが好ましいと考えられる。
熱融合処理
次に、上記各実施の形態の卑金属部としての卑金属めっき層を厚付けする場合に好適に使用することができる本発明の熱融合処理について説明する。図42は本発明のニッケルフリー給水装置の卑金属部としての卑金属めっき層を形成するための熱融合処理を概略的に示す工程図である。
本発明で使用する熱融合処理法は、素地金属上に形成しためっき層(合金めっき層を含む)に対して所定時間・所定温度の熱処理を施すことにより、そのめっき層を完全に合金化すると共に、めっき層中の元素を素地金属内に拡散して素地金属とめっき層との間に中間層となるめっき拡散層を形成し、当該めっき拡散層により素地金属に対するめっき層の接合性を大幅に向上するものである。詳細には、図42に示すように、まず、STEP1で、元素A(亜鉛)と元素B(すず)からなるめっき液(亜鉛めっき液)を電解槽内に作成する(建浴工程)。なお、ニッケル溶出抑制効率等の観点から、亜鉛に対するすずの割合は5%以下(Zn割合が95%以上)とすることが好ましい。次に、STEP2で、その亜鉛めっき液を素材金属(銅亜鉛合金)上に電解めっきしてめっき被膜を形成する(めっき工程)。このめっき被膜は、CnZn素材上に亜鉛(Zn)及びすず(Sn)の粒子(図42)が非常に粗い状態で存在するめっき被膜となっている。次に、STEP3で、めっき形成したCnZn素材を所定温度(例えば、約110℃〜約300℃の範囲の温度)で加熱する。すると、めっき被膜の亜鉛(Zn)及びすず(Sn)の粒子が加熱により液状化して融合化し始める(加熱液状化工程)。そして、このまま加熱を所定時間(例えば、約1時間〜約4時間)継続すると、時間の経過と共に、めっき被膜の亜鉛(Zn)及びすず(Sn)は、その融合化が進行して完全に合金化する。同時に、めっき被膜の亜鉛(Zn)及びすず(Sn)の各成分がCnZn素材に拡散し(特に、めっき被膜の亜鉛成分が素材中の亜鉛(Zn)中に拡散融合)して拡散層となり、その拡散層によりめっき被膜が素材と一体化されて、素材に対するめき被膜の密着性が非常に高くなる。なお、加熱保持温度を増加すると、拡散層の厚みが次第に大きくなる。
なお、熱融合のための条件設定(加熱温度及び加熱時間)としては、例えば、めっき被膜が亜鉛すず合金からなる場合、加熱温度110℃で加熱時間1時間、加熱温度200℃で加熱時間1時間、加熱温度250℃で加熱時間1時間、加熱温度300℃で加熱時間1時間のように、加熱時間を固定して加熱温度(恒温)を変化させる場合や、加熱時間120度で加熱時間1時間、加熱温度120℃で加熱時間3時間、加熱温度120℃で加熱時間5時間、加熱時間140度で加熱時間1時間、加熱温度140℃で加熱時間3時間、加熱温度140℃で加熱時間5時間のように、加熱時間を固定して加熱温度(恒温)を変化させる場合があるが、条件範囲としては、めっきした素材を加熱炉内において180℃〜350℃の範囲内の所定温度に10分から2時間恒温保持し、その後、加熱炉外に取り出して50℃・minの速度で冷却することが好ましい。なお、このときの雰囲気制御は特に行うことなく、通常の大気環境下で熱融合処理すればよい。また、熱融合処理の熱処理温度は、めっき被膜を構成する合金の成分元素及び成分比にもよるが、亜鉛すず合金めっきの場合、すずの融点(約230℃)近傍に設定することが好ましく、上記のように、180℃〜350℃の範囲内とすることが好ましい。熱処理温度が180℃より低いと、めっき層の熱融合に時間がかる。逆に、熱処理温度が350℃より高くなり、亜鉛の融点(約430℃)付近になると、めっき被膜の表面性状が荒れ、更には亜鉛が蒸発する可能性もある。なお、熱処理温度がすずの融点以上であると、熱処理によりすずが液相となり、めき被膜の合金化及び素材への融合化がより容易に行われる。
図43は本発明のニッケルフリー給水装置の卑金属部としての卑金属めっき層を形成するための熱融合処理を概略的に示す説明図である。
上記熱融合法により卑金属めっき層を素材上に熱融合する具体例を図43に基づいて説明する。図43に示すように、例えば、卑金属部として給水栓こま(実施の形態1のこま18等)を使用する場合、こまの素地金属を銅(Cu)約64%、亜鉛(Zn)約35%の黄銅(真鍮)とし、その素地上に亜鉛すず(Zn:Sn=90:10)合金めっきを通常の厚付けめっき法(溶融めっき法乃至どぶ付け法等)により所定膜厚(例えば、100μm〜500μmの範囲)で形成する。このとき、犠牲アノード(卑金属部)として使用する給水栓こま上のめっき層の膜厚、例えば、ケレップの亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきの膜厚は、特に限定するものではないが、100μm〜1000μmの範囲とすることが好ましい。めっき膜厚が100μm未満の場合、亜鉛または亜鉛合金のめっき被膜が早期に消耗してしまい、消耗後はニッケルの溶出を抑制できなくなる。一方、めっき膜厚が1000μmを超えると、亜鉛または亜鉛合金のめっきが割れやすくなったり、給水栓への装着が困難になったりする。亜鉛または亜鉛合金めっきの場合、適用する給水装置の使用量にもよるが、通常の使用頻度であれば、卑金属部(例えば、給水栓こま)からの亜鉛または亜鉛合金の溶出による卑金属部の膜厚低下は、毎月約10μm程度であると予想されるため、卑金属部を長期間(少なくとも3〜4年間)使用できるよう、亜鉛または亜鉛合金めっきの膜厚は、片側250μm〜500μm(両側で500μm〜1000μm)の範囲とすることが更に好ましい。例えば、こまのケレップの場合、上下両側面にそれぞれ250μm〜500μmの膜厚を形成し、250μm*2=500μmから500μm*2=1000μmまでの範囲とし、円柱状または円筒状の素地の場合、直径方向両側の膜厚をそれぞれ250μm〜500μmとし、250μm*2=500μmから500μm*2=1000μmまでの範囲とすることが好ましい。なお、円筒状の素地の場合、内面にも卑金属めっき層が形成されるが、内面はめっきが付きにくいため、外面側のめっきの膜厚より小さな膜厚(約1/3の膜厚であり、外面の膜厚(片面)が約250μmの場合、内面の膜厚(片面)は約50〜100μmの範囲)となる。また、このとき、素地上の亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきは、膜厚が20μmを超えると組織が粗くなって物性が悪くなる。比較的厚付けが可能な溶融めっき法(どぶ付け法)の場合でも、膜厚は50〜300μmが限界であり、特に、膜厚が厚付けの500μm〜1000μmになると、使用に伴って、表面が黒く変色したり、めっき層が割れやすくなったり、水中で粒状・粉状に溶解したりするおそれがある。この場合、卑金属部を長期間犠牲アノードとして維持することができなくなるため、めっき層の割れや粒状・粉状溶解を防止して、犠牲アノードとして長期間使用に耐えうる物性を確保するためには、上記熱融合処理が必須の処理となる。
即ち、本発明に係るニッケル溶出防止技術では、黄銅素地上に形成した亜鉛合金めっき層に対して、蒸気の要因、所定温度で所定時間加熱する熱融合処理を施し、亜鉛合金めっき層を共晶合金化して緻密な層とすると共に、亜鉛合金めっき層中の亜鉛を黄銅素地中の亜鉛と融合化し、亜鉛合金めっき層の割れや粒状・粉状溶解を確実に防止している。具体的な熱融合処理としては、詳細には、例えば、上記給水栓こまを電気炉(例えば、ヤマト製マッフル炉 FP31)内に収容し、200℃の温度で1時間恒温保持する。その後、給水栓こまを電気炉から取出し、50℃/mmの速度で冷却する。このときの冷却処理では、雰囲気の制御は特に行わず、通常の大気環境下で冷却を行う。これにより、図43中の左側の熱融合処理前の給水栓こまの断面(略図)では、素地及び亜鉛合金めっき層の二層構造であるのに対し、図43中の右側の熱融合処理後の給水栓こまの断面(略図)では、素地及び亜鉛合金めっき層の二層間に、亜鉛合金めっき被膜中の亜鉛(Zn)と給水栓こまの黄銅素地中の亜鉛(Zn)とが融合化した中間層が形成されている。ここで、上記のような亜鉛すず合金めっきの場合、好ましくは、熱融合温度は、すず(Sn)の融点(230℃)近傍に設定する。熱融合温度をすずの融点を大きく超える温度とすると、熱融合に時間がかかり、また、熱融合温度が亜鉛(Zn)の融点近く(430℃)になると、亜鉛合金めっき層中の亜鉛(Zn)が蒸発して、その表面性状が荒れる可能性が大きくなる。一方、熱融合時の処理温度を亜鉛(Zn)の融点及びすず(Sn)の融点の中間附近とする場合、それらの合金化が一層進むものと推定される。よって、亜鉛合金めっきに限らず、二つの構成元素を使用した合金めっき層を卑金属部として使用する場合、合金に使用する二つの構成元素の融点間(更に、2つの融点間で、かつ、高い方の融点の約1/2程度の融点付近、亜鉛すず合金の場合、亜鉛の融点である約430℃の半分の約215℃付近)に熱処理温度を設定する加熱処理が好ましいと考えられる。亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきを200℃で熱融合すると、1時間当たり約50μmの膜厚が融合し、3〜4時間その熱融合温度を維持することにより、素地金属である黄銅の亜鉛と亜鉛合金めっき中の亜鉛とが融合して、物性が飛躍的に向上する。
本発明者等は、上記熱融合処理による(特に厚付けの場合の)卑金属めっき層の物性向上について実際に確認結果を得ている。以下、銅合金からなる素地上の亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を熱融合処理した場合の処理結果について説明する。
熱融合処理による拡散層の形成
図44は本発明のニッケルフリー給水装置の卑金属部(給水栓こま)を熱融合処理した場合と無処理の場合とを比較するための断面写真であり、(a)は熱融合処理を施していない亜鉛リッチ品を示し、(b)は200℃で1時間熱融合処理した亜鉛リッチ品を示し、(c)は250℃で1時間熱融合処理した亜鉛リッチ品を示し、(d)は300℃で1時間熱融合処理した亜鉛リッチ品を示す。
図44(a)〜(d)に示す亜鉛リッチ品(試料1〜試料4)は、全て、素地(素材)としての黄銅上に亜鉛リッチめっき(亜鉛すず合金めっき)を形成したものであり、例えば、上記給水栓こま(黄銅素地上に亜鉛すず合金めっきを所定膜厚で形成したもの)を試料1〜4として使用することができる。図44(a)の試料1は、本実施例の比較例として、上記のような熱融合処理を全く施さないものの断面を示す。図44(a)に示すように、熱融合処理を施さない試料1では、亜鉛合金めっき層がそのまま(めっき時のまま)の状態で素地上に存在する。一方、図44(b)に示すように、200℃で1時間の熱融合処理を施した試料2では、亜鉛合金めっき層と素地との間に所定厚のめっき拡散層が形成されている。このめっき拡散層は、図43の中間層、即ち、素地と及び亜鉛合金めっき層の二層間に形成された、亜鉛合金めっき被膜中の亜鉛(Zn)と給水栓こまの黄銅素地中の亜鉛(Zn)とが融合化した中間層に対応する。このめっき拡散層の膜厚は、約20μmとなっている。次に、図44(c)に示すように、250℃で1時間の熱融合処理を施した試料3では、亜鉛合金めっき層と素地との間のめっき拡散層の膜厚が更に増大している。このめっき拡散層の膜厚は、約40μmとなっている。次に、図44(d)に示すように、300℃で1時間の熱融合処理を施した試料4では、亜鉛合金めっき層と素地との間のめっき拡散層の膜厚が一層更に増大している。このめっき拡散層の膜厚は、約70μmとなっている。このように、素地とめっきの密着性に関与するめっき拡散層の生成が、比較例としての試料1(無熱処理品)の場合は当然ながら全く存在しないが、それ以外の本実施例に係る試料2〜4(熱融合処理品)では、図44(b)〜(d)に示すように確認された。したがって、熱融合処理前の試料は、表面の亜鉛合金めっき層(亜鉛とすずとの固溶体)が素地(基板)表面に形成されており、素地とめっき層との間にめっき拡散層は形成されていないことが確認できる。しかし、この試料を加熱すると、表面の亜鉛合金めっき層(亜鉛とすずとの固溶体)と素地の銅・亜鉛合金との間に拡散層が形成されていくことが確認された。これは、加熱により表面の亜鉛合金めっき層のすず成分及び亜鉛成分が素地材料内部に向かって拡散するためであると考えられる。また、この拡散層の膜厚は、図44に示すように、加熱保持温度の増加と共に次第に大きくなることが確認された。この拡散層の存在により、素地表面の亜鉛合金めっき層と素地の銅合金との密着性が高くなっている。
熱融合処理によるめっき層の成分変化
図45は図44の試料1〜4の成分(亜鉛及びすず)の含有率を比較するグラフであり、(1)は図44(d)の試料4の成分を、(2)は図44(c)の試料3の成分を、(3)は図44(b)の試料2の成分を、(4)は図44(a)の試料1の成分を示す。
図45に示すように、同一加熱時間(1時間)の場合、熱処理温度が高くなると、亜鉛とすずの比率がほぼ2:1となり、300℃の場合、すずが約1/2程度の量に達することが確認できる。また、熱処理温度を高くしていくと、すずと亜鉛との合金化が進み、すずの相対比が高くなることが判明した。この理由は、素地表面の亜鉛が試料内部(素地内部)へ拡散し、及び/または、試料内部のすずが表面に拡散するためと考えられる。このように、亜鉛合金めっき層の成分が、亜鉛リッチからすずリッチへと移行すると、めっき層の全体としての平衡電位が、ニッケルよりも卑の範囲で亜鉛の−0.9Vから貴に変化し、ニッケルの平衡電位以上で亜鉛よりも低い電位となる。したがって、亜鉛合金めっき層によるニッケル溶出効果を維持したまま、亜鉛合金めっき層からの亜鉛の溶出量を抑制することができる。
熱融合処理によるめっき層の成分変化
図46〜図48に示すSEM(走査式電子顕微鏡)像及びEDA(エネルギー密度解析)分析結果、並びに、図49〜図51に示すSEM(走査式電子顕微鏡)像及びEDA(エネルギー密度解析)分析結果は、いずれも、素地(素材)としての黄銅上に亜鉛リッチめっき(亜鉛すず合金めっき)を形成したものであり、例えば、上記給水栓こま(黄銅素地上に亜鉛すず合金めっきを所定膜厚で形成したもの)を試料として使用することができる。このうち、図46〜図48は、いずれも、熱融合処理を施していない試料(熱融合未処理品)についてのSEM(走査式電子顕微鏡)像及びEDA(エネルギー密度解析)分析結果を示し、図46は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合未処理品)の断面写真(SEM像)を当該断面写真の十字位置(表面位置)の定量分析結果(EDA)と共に示し、図47は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合未処理品)の断面写真(SEM像)を当該断面写真の十字位置(内部位置)の定量分析結果(EDA)と共に示し、図48は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合未処理品)の断面写真(SEM像)を当該断面写真の十字位置(表面位置と内部位置との間の中央位置)の定量分析結果(EDA)と共に示す。一方、図49〜図51は、いずれも、熱融合処理(300℃、1時間)を施した試料(熱融合処理品)についてのSEM(走査式電子顕微鏡)像及びEDA(エネルギー密度解析)分析結果を示し、図49は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合処理品)の断面写真を当該断面写真の十字位置(表面位置)の定量分析結果と共に示し、図50は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合処理品)の断面写真を当該断面写真の十字位置(内部位置)の定量分析結果と共に示し、図51は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合処理品)の断面写真を当該断面写真の十字位置(表面位置と内部一度の間の中央位置)の定量分析結果と共に示す。いずれの場合も、図中の亜鉛と銅との濃淡によって表面層の状態の推定が可能となる。即ち、図49〜図51の熱融合処理品の場合、いずれも、熱融合処理により、素材(CnZn)の銅とめっき被膜の亜鉛とが融合して、表面層が拡大している様子が把握できる。特に、亜鉛合金めっき層中のすずは、熱融合未処理品の場合は表面に固まっているが、熱融合処理品の場合、素地(材料)内部へと拡散していることが確認できる。また、熱融合処理品の場合、すずが最も拡散して、表面付近に比較的多く存在することが確認できる。
図52は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛合金塊(Zn95%・Sn5%の円柱状)の表面の蛍光X線分析結果を示す表であり、図53は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛合金塊(Zn95%・Sn5%の円柱状)の切断面の蛍光X線分析結果を示す表である。また、図54は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛合金塊(Zn90%・Sn10%の円柱状)の表面の蛍光X線分析結果を示す表であり、図55は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛合金塊(Zn90%・Sn10%の円柱状)の切断面の蛍光X線分析結果を示す表である。なお、図52及び図53の亜鉛合金塊の注湯度は703℃であり、図52及び図53の亜鉛合金塊の注湯度は806℃である。各分析結果に示すように、卑金属部として亜鉛めっきまたは亜鉛合金めっきを使用する代わりに、亜鉛素地または亜鉛合金素地をそのまま亜鉛塊(亜鉛ダイキャスト)または亜鉛合金塊(亜鉛合金ダイキャスト)として使用する場合、表面よりも内部の方が亜鉛リッチとなることが確認される。
ところで、本発明において、吐水口(水切り)に水滴が付着する場合等、少量の水がニッケル付着層に滞留するような給水装置の部位では、給水装置の素地を構成する一般的な金属材である銅または銅合金(黄銅、青銅等)とニッケル付着層のニッケルとの間(異種金属間)での腐食電池作用が大きくなり、ニッケル付着層からのニッケルの溶出量(濃度)が高くなる。また、上記のように、吐水口、弁座付近や水栓こまと栓棒との接合箇所、流水部の狭い隙間等、乱流が発生しやすい部分では、キャビテーション現象(空洞現象、即ち、水流変化と空気が混入することにより気泡が発生する現象)が発生しやすいが、これらの箇所にニッケル付着層が存在すると、腐食電池によるニッケル付着層の腐食に加えてキャビテーション腐食が発生し、ニッケル付着層が剥離したり、ニッケル付着層の腐食に加えてキャビテーション腐食により局部的に著しく腐食が進行し、素地まで侵食される可能性がある。特に、温水を通水する場合等、ニッケル付着層部分の温度(水温)が高くなると、腐食電位も高くなり、ニッケル溶出及びキャビテーション腐食の発生が促進される。したがって、従来の給水装置では、当該給水装置の部位におけるキャビテーション腐食を防止する目的で、給水装置の素地金属へのニッケルめっき時に給水装置の開口部(吐水口等)をマスキング材によりマスキングして閉塞し、めっき浴中のニッケルが給水装置内部に侵入しないようにして、給水装置の内部表面へのニッケル付着層の形成を防止している。しかし、マスキング材の使用によるコストアップに加え、かかるマスキング処理は非常に煩雑は作業であり、作業性及び生産性を低下する要因となる。これに対し、上記各実施の形態の卑金属部としての亜鉛リング25,28等は、上述したように、非常に単純な形状を有し、単水栓や混合水栓(シングルレバー水栓を含む)等の各種給水栓、ボールバルブ、六角ニップル、エルボ、チーズ、持出ソケット、ジョイントニップル、化粧バルブ、アングル、給水栓ソケット、その他のソケット等の各種水道配管部品に極めて容易に装着して実施することができるため、ニッケル溶出防止機能付給水装置を具体化(特に、量産)する場合の作業性、生産性、経済性(コスト性)の点で大変優れており、実現可能性等の点でも顕著な効果を発揮する。
上記のように、本発明者等は、従来の給水装置乃至給水器具(水栓金具、継手、バルブ、浄水器、配管部品等)におけるニッケル溶出の問題点に着目して、鋭意研究開発を進めた結果、本発明に想到した。即ち、給水装置では、装飾、防錆、耐摩耗性付与等の目的でニッケルクロム(Ni・Cr)めっきやニッケル(Ni)めっきが施されている。ここで、通常、ニッケルクロムめっきは、電気めっきの特性(電流効率)として、めっき作業工程におけるめっき浴中、ニッケルめっきの電流効率は95%〜98%と高いため、例えば、給水栓の通水路内の弱電部分にもニッケル付着層(粗雑なめっき層)が付き廻る。しかし、このとき、クロムめっきの電流効率は15%〜17%と低いため、ニッケルめっきと比較した場合、クロムめっきの付き廻りが非常に劣り、クロムめっき乃至クロム付着層が弱電部のニッケル付着層を被覆することができない。したがって、上記のように、給水装置の通水路内部ではニッケル付着層が露出することになり、そのニッケルが水中に溶出することになる。即ち、ニッケル付着層が、素地としての銅及び銅合金やプラスチック材からなる給水装置の通水路内部表面にある場合において、通水時や給水装置内で水が滞留している場合等、水を媒体として(水道水の場合、水に加えて塩素(Cl)も媒体となる)、銅とニッケルという2種類の異種金属間で腐食電池が形成される。この場合、銅とニッケルとでは、銅のほうがニッケルよりイオン化傾向が小さく貴な金属となるため、ニッケルが水に溶解して通水中または滞留水中に溶出する。また、給水栓や浄水器等の給水装置以外でも、通水環境下、或いは、浴槽等の水が滞留している環境下で使用される装置、器具、部品が、銅合金上にニッケルめっきやステンレスめっき(すず−ニッケル合金めっき)を施したものである場合、当該器具、装置、部品についても同様の原理により同様の問題(ニッケルの溶出)が発生する。したがって、これらの器具、装置、部品等では、通水路内部表面のニッケルが通水中に浸出又は溶出して、最終的に人体に摂取される可能性がある。
そこで、本発明者等は、上記問題点について鋭意実験及び研究を重ねた結果、通水中のニッケルの浸出や溶出を大幅に抑制することができるニッケル溶出低減技術を確立し、上記実施の形態のように、本発明に係るニッケル溶出防止機能付給水装置を開発した。即ち、本発明に係るニッケル溶出防止機能付給水装置の特徴は、給水装置の内部通水面から溶出するニッケルを、金属同士の持っている特性としてのイオン化傾向と極性とを最大限に活用し、溶出するニッケルを抑制することにあり、給水装置の内面通水部にニッケル付着層が形成されている場合は、そのニッケルが正極側の貴な金属となるよう、同ニッケルよりもイオン化傾向の大きい卑な金属を負極として使用している。例えば、上記のように、卑金属部として、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)若しくはマグネシウム(Mg)を単体で若しくは合金化して使用している。これにより、給水装置内部の通水面では、水(水道水のように塩素(Cl)含有の場合は、水及び塩素)を媒体として正極(ニッケル付着層)と負極(亜鉛等の卑金属部)との間で電池が形成され、イオン化傾向の大きい卑な金属である亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)若しくはマグネシウム(Mg)がイオン化されて水中に溶出し、イオン化傾向の小さい貴な金属であるニッケルの溶出が抑制される。
このニッケル溶出防止機能付給水装置を使用したニッケル溶出低減処理技術は、現在多くの水栓バルブ等で行われている鉛(Pb)処理技術等の規制物質抑制・除去技術とは異なり、特別な処理施設、複雑な処理工程及び処理薬品を一切必要としない。したがって、環境負荷物質等を含む劇物である強酸、強アルカリを主体とした処理薬品を使用することがないため、処理工程中等に処理施設から発生する上記強酸や強アルカリのガスの排出処理を行う必要がなく、また、鉛等の重金属を多量に含有した処理水の排水処理を行う必要もない。更に、上記処理工程により発生する廃スラッジ、処理液更新時に発生する廃液の問題等を考慮する必要は全くなく、これらの点で、人と環境に優しい処理技術であるといえる。そして、本発明に係るニッケル溶出低減技術としてのニッケル溶出防止機能付給水装置によれば、その特性を活用することにより、特に、以下に示す大きな2つの利点を得ることができる。まず、一つ目の利点として、本発明に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、給水装置の内部表面に付着したニッケル付着層に対し、負極(犠牲アノード)として、イオン化傾向が大きい卑な金属である亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)若しくはマグネシウム(Mg)等の金属(単体若しくは合金)からなる卑金属部を通水経路上(水が流通する箇所)に配置することにより、当該卑金属部の作用によって給水装置からのニッケルの溶出を抑制する。一方、本発明に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、上記亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)若しくはマグネシウム(Mg)等、人間が必要とする必須ミネラルを給水中に微量ではあるが(基準値の範囲内で)溶出させるため、その水を摂取する飲用者に対して必須ミネラルの摂取補助を行うことを可能にする。また、給水装置の通水路内で2つの部材乃至部分が互いに接合される場合において、特にそれらが異種金属からなる場合(上記のように銅合金とニッケル付着層からなる場合等)、それらの接合箇所乃至境界面のような小さな隙間部分や局部で強い渦巻状の水流が発生し、水中の気泡が破裂する際の衝撃や異種金属管の腐食電池等の作用によってキャビテーション腐食が発生し、ニッケルが浸出・溶出する可能性がある。しかし、本発明に係るニッケル溶出防止機能付給水装置は、二つ目の利点として、そのような箇所や局部の近傍に上記卑金属部を配置することで、当該卑金属部の犠牲アノード作用によりキャビテーション腐食を抑制し、キャビテーション腐食によるニッケルの溶出を大幅に抑制することができる。なお、マグネシウムについては、単独で使用するよりも、亜鉛等の金属に添加して合金(亜鉛マグネシウム合金等)として使用することが好ましい。
また、上記実施の形態において、亜鉛リング等の卑金属部は、給水栓の内部通水面(通水路の内表面)のニッケル付着層(Ni被膜)に対する犠牲アノードとして機能するが、かかる卑金属部としては、ニッケルよりイオン化傾向の大きい低電位の金属であれば、任意の金属を使用することができる。ただし、犠牲防食により通水中に溶出する適正なイオン化量の観点や、電極電位値の有効性や長期使用(交換不要)等の観点からは、亜鉛を使用することが望ましく、更に、上記のように、従来品であっても容易に装着でき、かつ、簡単に交換できる亜鉛リング(亜鉛めっきのものを含む)のようなリング状部材の形態とすることが一層好ましい。また、亜鉛単体以外にも亜鉛合金を使用することができるが、亜鉛合金とする場合、亜鉛にニッケルよりも高電位の物質を微量加えることにより、ニッケルに対する犠牲防食の際の亜鉛自体の溶出が抑制され、亜鉛製の卑金属部(亜鉛リング等)をより長時間使用できることになる。例えば、亜鉛に対して、ニッケルよりも高電位(貴な金属)となるすず(Sn)を添加した亜鉛合金、例えば、Zn90%・Sn10%合金、Zn95%・Sn5%合金を使用した卑金属部を使用することも好ましい。また、亜鉛すず合金の場合、ニッケル溶出防止効果の点からは、亜鉛の成分比を95%以上とすることが好ましい。
一方、卑金属として鉄(Fe)を使用する場合、二価の鉄を使用すると、赤錆が出にくいため、好適である。例えば、実施の形態29の鉄筒334を二価の鉄により形成すると共に、所定温度で所定時間熱処理することにより、確実に防錆処理を行い、錆の発生を防止することができる。このときの加熱温度は、鉄の融点(1400℃〜1500℃)の半分程度の温度として熱処理すると、鉄の表面が硬化して黒化する。また、上記実施の形態の給水栓こまは、素地を黄銅とし、めっきを亜鉛または亜鉛合金製としたが、素地を鉄としてもよい(非めっき)。この場合、鉄はニッケルより卑な金属であり、上記のニッケル溶出防止効果及びキャビテーション腐食防止効果を確実に発揮する。また、本発明のニッケルフリー給水装置は、Ni・Zn面積比(ニッケル付着層の総面積に対する亜鉛めっき層の面積比)の下限値を、好ましくは1/20としたことを特徴とするが、その上限値は亜鉛の浸出量の規制値に応じて決定され、現在の規制値(0.97mg/L)では上限値を約1/2とすることが好ましい。更に、卑金属としては、上記のもの以外に、亜鉛合金として、亜鉛にニッケルを微量含有した亜鉛ニッケル合金(ZnNi合金)も利用可能であり、この場合、含有ニッケルにより亜鉛の犠牲防食による侵食を遅らせて、卑金属部の長期間の使用が可能となる。本発明者等の実験結果によれば、かかる亜鉛ニッケル合金による卑金属部が、最も顕著なニッケル溶出低減効果を発揮した。
図1は、本発明の実施の形態1に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓を示す一部断面図である。 図2は本発明の実施の形態1に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓の自在吐水パイプの吐水口部分を示す拡大断面図である。 図3は本発明の実施の形態2に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓を示す側面図であり、その主要部を断面にて示すと共に、一部を拡大断面図にて示す。 図4は本発明の実施の形態2に係る自在単水栓の通水路に設けられるリング状部材としての亜鉛リングを示す正面図であり、その右側半部を断面にて示す。 図5は本発明の実施の形態2に係る自在単水栓の自在吐水パイプの吐水口に設けられる泡沫金具及び亜鉛リングを示し、(a)は泡沫金具を示す平面図、(b)は泡沫金具の右側半部を断面で示す正面図、(c)は亜鉛リングを示す平面図、(d)は亜鉛リングの右側半部を断面で示す正面図である。 図6は本発明の実施の形態2に係るニッケルフリー給水装置としての自在単水栓における管部の吐水口と自在吐水パイプの給水口との接続部分を示す拡大断面図である。 図7は本発明の実施の形態3に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す断面図である。 図8は本発明の実施の形態4に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を示す一部断面図である。 図9は本発明の実施の形態5に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を壁に固定した状態を示す一部断面図である。 図10は本発明の実施の形態5に係るニッケルフリー給水装置のクランク付混合栓で使用可能な持出金具の別例を示す断面図である。 図11は本発明の実施の形態6に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓のクランク部分を示す拡大断面図である。 図12は本発明の実施の形態7に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を示す一部断面図である。 図13は本発明の実施の形態8に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付混合栓を示し、その正面を一部断面にて示す図(左側の図)とその側面を一部断面にして示す図(右側の図)とを並べて図示している。 図14は本発明の実施の形態9に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器具部品の吐水パイプ接続部分を示す一部断面図である。 図15は本発明の実施の形態10に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器専用水栓を示す一部断面図である。 図16は本発明の実施の形態11に係るニッケルフリー給水装置としてのアングル止水栓を示す一部断面図である。 図17は本発明の実施の形態12に係るニッケルフリー給水装置としての分岐栓を示す一部断面図である。 図18は本発明の実施の形態13に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。 図19は本発明の実施の形態14に係るニッケルフリー給水装置としてのクランク付シングルレバー混合栓を示す断面図である。 図20は本発明の実施の形態15に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。 図21は本発明の実施の形態16に係るニッケルフリー給水装置としてのボールバルブを示す断面図である。 図22は本発明の実施の形態17に係るニッケルフリー給水装置としての六角ニップルを示す断面図である。 図23は本発明の実施の形態18に係るニッケルフリー給水装置としてのエルボを示す断面図である。 図24は本発明の実施の形態19に係るニッケルフリー給水装置としてのチーズを示す断面図である。 図25は本発明の実施の形態20に係るニッケルフリー給水装置としてのユニオンを示す断面図である。 図26は本発明の実施の形態21に係るニッケルフリー給水装置としての持出金具(持出ソケット)を示す正面図であり、その右半部のみを断面視にて示す。 図27は本発明の実施の形態22に係るニッケルフリー給水装置で使用可能なリング状部材としての亜鉛リングを示し、図27(a)はその平面図、図27(b)は図27(a)のA−A線断面図である。 図28は本発明の実施の形態23に係るニッケルフリー給水装置としてのジョイントニップルを示す正面図であり、その右半部のみを断面視にて示す。 。図29は本発明の実施の形態23に係るニッケルフリー給水装置としてのジョイントニップルで使用可能な亜鉛リングを示し、図29(a)はその平面図、図29(b)はその正面図、図29(c)は図29(a)のB−B線断面図である。 図30は本発明の実施の形態24に係るニッケルフリー給水装置で使用可能な亜鉛リングを示し、図30(a)はその平面図、図30(b)はその正面図であり右半部のみを断面視にて示す。 図31は本発明の実施の形態25に係るニッケルフリー給水装置の適用対象としての従来の単水栓のこま部分の取付構造を示す斜視図である。 図32は本発明の実施の形態25に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓のこま部分の取付構造を卑金属部としてのこまと共に示す分解斜視図である。 図33は本発明の実施の形態26に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す側面図である。 図34は本発明の実施の形態27に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す側面図である。 図35は本発明の実施の形態28に係るニッケルフリー給水装置としての単水栓を示す側面図である。 図36は本発明の実施の形態29に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓の吐水パイプ部を示す分解斜視図である。 図37は本発明の実施の形態30に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。 図38は本発明の実施の形態31に係るニッケルフリー給水装置としてのシングルレバー混合栓を示す断面図である。 図39は本発明の実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器を示す側面図であり、主要部(卑金属部収容部)を拡大して示す。 図40は本発明の実施の形態32に係るニッケルフリー給水装置としての浄水器の卑金属部をし、(a)はNiパイプの断面図、(b)はFeパイプの断面図、(c)はZn塊の断面図、(d)はNiパイプの平面図、(d)はFeパイプの平面図、(e)はZn塊の平面図、(f)はNiパイプ内にFeパイプを、Feパイプ内にZn塊をそれぞれ同軸状に収容した状態の卑金属部を示す平面図である。 図41は本発明に係るニッケルフリー給水装置の内部通水面のNi被膜面積に対する犠牲アノード面積比と浸出試験結果とを示す表である。 図42は熱融合処理法の各工程を概略的に示す工程図である。 図43は本発明のニッケルフリー給水装置の卑金属部としての卑金属めっき層を形成するための熱融合処理を概略的に示す説明図である。 図44は本発明のニッケルフリー給水装置の卑金属部(給水栓こま)を熱融合処理した場合と無処理の場合とを比較するための断面写真であり、(a)は熱融合処理を施していない亜鉛リッチ品を示し、(b)は200℃で1時間熱融合処理した亜鉛リッチ品を示し、(c)は250℃で1時間熱融合処理した亜鉛リッチ品を示し、(d)は300℃で1時間熱融合処理した亜鉛リッチ品を示す。 図45は図44の試料1〜4の成分(亜鉛及びすず)の含有率を比較するグラフであり、(1)は図44(d)の試料4の成分を、(2)は図44(c)の試料3の成分を、(3)は図44(b)の試料2の成分を、(4)は図44(a)の試料1の成分を示す。 図46は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合未処理品)の断面写真(SEM像)を当該断面写真の十字位置(表面位置)の定量分析結果(EDA)と共に示す説明図である。 図47は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合未処理品)の断面写真(SEM像)を当該断面写真の十字位置(内部位置)の定量分析結果(EDA)と共に示す説明図である。 図48は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合未処理品)の断面写真(SEM像)を当該断面写真の十字位置(表面位置と内部位置との間の中央位置)の定量分析結果(EDA)と共に示す説明図である。 図49は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合処理品)の断面写真を当該断面写真の十字位置(表面位置)の定量分析結果と共に示す説明図である。 図50は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合処理品)の断面写真を当該断面写真の十字位置(内部位置)の定量分析結果と共に示す説明図である。 図51は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての給水栓こま(熱融合処理品)の断面写真を当該断面写真の十字位置(表面位置と内部一度の間の中央位置)の定量分析結果と共に示す説明図である。 図52は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛塊(Zn95%・Sn5%の円柱状)の表面の蛍光X線分析結果を示す表である。 図53は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛塊(Zn95%・Sn5%の円柱状)の切断面の蛍光X線分析結果を示す表である。 図54は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛塊(Zn90%・Sn10%の円柱状)の表面の蛍光X線分析結果を示す表である。 図55は本発明に係るニッケルフリー給水装置の卑金属部としての亜鉛塊(Zn90%・Sn10%の円柱状)の切断面の蛍光X線分析結果を示す表である。
符号の説明


10:単水栓(ニッケルフリー給水装置)、11a:通水路、18:こま(内部部品)


20:自在吐水パイプ(ニッケルフリー給水装置)、31:基部、31a:通水路


30:混合栓(ニッケルフリー給水装置)


40:クランク(ニッケルフリー給水装置、連結部材)、40a:通水路


40x:素地、40y:卑金属めっき層(卑金属部)


50:混合栓(ニッケルフリー給水装置)


60:クランク(ニッケルフリー給水装置、連結部材)


60x:素地,60y:卑金属めっき層(卑金属部)


71:亜鉛リング(卑金属部、環状部材)、72:亜鉛リング(卑金属部、環状部材)


80:浄水器具部品(ニッケルフリー給水装置)、81a:通水路


80A:浄水器専用水栓(ニッケルフリー給水装置)


91:吐水パイプ(ニッケルフリー給水装置)、91a:通水路、91x:素地


91y:卑金属めっき層(卑金属部)


100:アングル止水栓(ニッケルフリー給水装置)


110:分岐栓(ニッケルフリー給水装置)


120:シングルレバー混合栓(ニッケルフリー給水装置)


130,150:クランク付シングルレバー混合栓(ニッケルフリー給水装置)


160:シングルレバー混合栓(ニッケルフリー給水装置)


180:ボールバルブ(ニッケルフリー給水装置)


190:六角ニップル(ニッケルフリー給水装置)


200:エルボ(ニッケルフリー給水装置)


210:チーズ(ニッケルフリー給水装置)


220:ユニオン(ニッケルフリー給水装置)

Claims (19)

  1. 開口部を有する銅系金属材製の素地の外部表面にニッケルめっきを施してなり、同ニッケルめっきに伴って前記素地のめっき対象でない開口部から通水路に沿った内部表面に不純物を含む粗雑なめっき層としてのニッケル付着層が形成された給水具からなる水道用品としての給水装置であって、
    給水具の通水路における内部表面において、前記ニッケル付着層が存在する部位であって、かつ、給水を停止したときでも水が付着または滞留する部位の範囲内に亜鉛または亜鉛合金からなる水道用品の交換部品としての卑金属部を設けると共に、前記卑金属部の全面に前記通水路内の水が流通して、前記卑金属部の全面が常に通水または通水停止時の前記通水路内の水と接触するようにして、前記通水路の内部表面で水を媒体として前記卑金属部の全面と前記ニッケル付着層との間で電池を形成し、前記卑金属部の全面により、前記給水具の通水停止時に前記通水路内の残留水が付着する前記ニッケル付着層からのニッケル溶出を基準値以下に抑制するようにし、かつ、前記卑金属部から必須ミネラルとしての亜鉛をその基準値の範囲内で溶出させるようにしたことを特徴とするニッケル溶出防止機能付給水装置。
  2. 前記ニッケル付着層の総表面積に対する前記卑金属部の卑金属層の総表面積の比を1:3〜1:4の範囲としたことを特徴とする請求項1記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  3. 前記ニッケル付着層の総表面積に対する前記卑金属部の卑金属層の総表面積の比を1:4としたことを特徴とする請求項1記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  4. 更に、前記給水具の管部の下面側において止水用の弁座の弁孔と対向する位置に一体形成されて下方に突出する円筒状をなし、上端を前記弁座の弁孔に対向して前記通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の下端に水密に装着される蓋部とを備え、
    前記卑金属部は、前記突出部の内径より若干小さい径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛塊は、前記突出部内に同軸状に配置されてその円形の上端面が前記弁座の弁孔と対向し、前記弁座より上流側の通水路で常に通水及び通水停止時の水と接触するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  5. 更に、前記給水具の吐水パイプの基端部の下面側に一体形成されて下方に突出する円筒状をなし、上端を前記吐水パイプ内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の下端に水密に装着される蓋部とからなる卑金属部提供部を備え、
    前記卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で通水路の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊へと流通するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  6. 更に、上端の円形開口にネット部を装着すると共に下端に整流板を一体的に設けた円筒状の収容通水部と、前記収容通水部を収容するケース部とを有し、前記給水具の吐水パイプの円筒状の吐水口に着脱自在に取付けられる泡沫金具からなる卑金属部提供部を備え、 前記卑金属部は、少なくとも、前記収容通水部の内径より若干小さい径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒からなり、前記亜鉛筒は前記収容通水部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの先端側の吐水部で内部の水が前記収容通水部内の前記亜鉛筒へと流通するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  7. 更に、前記給水具の吐水パイプの基端部の下面側に一体形成されて下方に突出する円筒状をなし、上端を前記吐水パイプ内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の下端に水密に装着される蓋部とからなる第1の卑金属部提供部と、上端の円形開口にネット部を装着すると共に下端に整流板を一体的に設けた円筒状の収容通水部と、前記収容通水部を収容するケース部とを有し、前記給水具の吐水パイプの円筒状の吐水口に着脱自在に取付けられる泡沫金具からなる第2の卑金属部提供部とを備え、
    前記第1の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で通水路の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊へと流通するようにし、
    前記第2の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記収容通水部の内径より若干小さい径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒からなり、前記亜鉛筒は前記収容通水部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの先端側の吐水部で内部の水が前記収容通水部内の前記亜鉛筒へと流通するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  8. 更に、前記給水具の回動部の後面側において吐水パイプと反対側に一体形成されて後方に突出する円筒状をなし、基端を前記回動部内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の先端に水密に装着される蓋部とを備え、
    前記卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で前記回動部内の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と接触するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  9. 更に、前記給水具の回動部の後面側において吐水パイプと反対側に一体形成されて後方に突出する円筒状をなし、基端を前記回動部内の通水路に連通する円形開口とする突出部と、前記突出部の先端に水密に装着される蓋部とからなる第1の卑金属部提供部と、上端の円形開口にネット部を装着すると共に下端に整流板を一体的に設けた円筒状の収容通水部と、前記収容通水部を収容するケース部とを有し、前記給水具の吐水パイプの円筒状の吐水口に着脱自在に取付けられる泡沫金具からなる第2の卑金属部提供部とを備え、
    前記第1の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記突出部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記突出部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記突出部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの基端側で前記回動部内の水が前記突出部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と接触するようにし、
    前記第2の卑金属部提供部の卑金属部は、少なくとも、前記収容通水部の内径より若干小さい径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒からなり、前記亜鉛筒は前記収容通水部内に同軸状に配置され、前記吐水パイプの先端側の吐水部で内部の水が前記収容通水部内の前記亜鉛筒へと流通するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  10. 前記卑金属部は、更に、前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周側に間隔を置いて同軸状に配置された状態で前記卑金属部提供部に収容される円筒状の鉄筒を有し、前記卑金属部提供部内の水が前記鉄筒の外周面側、前記鉄筒の内周面と前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周面との間を流通するようにしたことを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  11. 前記給水具は、浄水カートリッジ及び浄水カートリッジを内装した収容部を有する浄水器本体を備える浄水器であり、
    更に、前記浄水器の収容部に着脱自在に固定されて前記収容部の浄水通路に同軸状に接続される略円筒ケース状をなす卑金属部収容部を備え、
    前記卑金属部は、少なくとも、前記卑金属部収容部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記卑金属部収容部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記卑金属部収容部内に同軸状に配置され、前記浄水器本体内の水が前記卑金属部収容部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と常に接触するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  12. 前記給水具は、浄水カートリッジ及び浄水カートリッジを内装した収容部を有する浄水器本体を備える浄水器であり、
    更に、前記浄水器の収容部の浄水側に着脱自在に固定され、前記収容部の浄水通路の先端に同軸状に接続されて前記収容部の浄水通路からの浄水をパイプに供給する略円筒ケース状をなす第1の卑金属部収容部(本体側取付部)と、前記浄水器の収容部の原水側に設けられ、原水を前記収容部内の原水通路から前記浄水カートリッジに供給する円筒状の第2の卑金属部収容部(接続部)とを備え、
    前記第1の卑金属部収容部の卑金属部は、少なくとも、前記第1の卑金属部収容部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記卑金属部収容部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記第1の卑金属部収容部内に同軸状に配置され、前記浄水器本体内の浄水側の水が前記卑金属部収容部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と常に接触するようにし、
    前記第2の卑金属部収容部の卑金属部は、少なくとも、前記第2の卑金属部収容部の内径より小径の円筒状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛筒または前記卑金属部収容部の内径より小径の円柱状をなす亜鉛又は亜鉛合金製の亜鉛塊からなり、前記亜鉛筒または亜鉛塊は前記第2の卑金属部収容部内に同軸状に配置され、前記浄水器本体内の原水側の水が前記卑金属部収容部内の前記亜鉛筒または亜鉛塊と常に接触するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  13. 前記卑金属部は、更に、前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周側に間隔を置いて同軸状に配置された状態で前記卑金属部収容部に収容される円筒状の鉄筒を有し、前記卑金属部収容部内の水が前記鉄筒の外周面側、前記鉄筒の内周面と前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周面との間を流通するようにしたことを特徴とする請求項11または12項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  14. 前記卑金属部は、更に、前記鉄筒の外周側に間隔を置いて同軸状に配置された状態で前記卑金属部収容部に収容される円筒状のニッケル筒を有し、前記卑金属部収容部内の水が前記ニッケル筒の外周面側、前記ニッケル筒の内周面と前記鉄筒の内周面との間、前記鉄筒と前記亜鉛塊または亜鉛筒の外周面との間を流通するようにしたことを特徴とする請求項11または12項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  15. 前記卑金属部は、前記給水具としての給水栓の給水栓こまからなり、前記給水栓こまは、亜鉛に対するすずの割合を5%以下とした亜鉛すず合金めっきを溶融めっき法により黄銅製の素地上に500μm〜1000μmの膜厚範囲で形成した後、前記亜鉛すず合金めっきを180℃〜350℃の熱処理温度で加熱して熱融合処理し、めっき被膜の亜鉛及びすずの粒子を加熱により液状化して融合化させ、その融合化を進行させて完全に合金化すると共に、めっき被膜の亜鉛及びすずの各成分を黄銅製の素地の素材に拡散して、その拡散層によりめっき被膜を前記黄銅製の素地と一体化したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  16. 前記卑金属部は、前記給水具としての給水栓の通水路に嵌合される亜鉛リングからなり、前記亜鉛リングは、亜鉛に対するすずの割合を5%以下とした亜鉛すず合金めっきを溶融めっき法により黄銅製の素地上に500μm〜1000μmの膜厚範囲で形成した後、前記亜鉛すず合金めっきを180℃〜350℃の熱処理温度で加熱して熱融合処理し、めっき被膜の亜鉛及びすずの粒子を加熱により液状化して融合化させ、その融合化を進行させて完全に合金化すると共に、めっき被膜の亜鉛及びすずの各成分を黄銅製の素地の素材に拡散して、その拡散層によりめっき被膜を前記黄銅製の素地と一体化したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  17. 前記亜鉛リングは、厚さ方向に貫通形成された複数の小孔を有し、亜鉛リングの表面上に存在する水が、前記小孔を介して前記亜鉛リングの厚さ方向一側面から他側面へと流通し、前記亜鉛リングにおいて前記給水具の通水路に面する一側面のみならず前記通水路に面しない他側面の全面に拡散して行き渡るようにしたことを特徴とする請求項16記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  18. 前記亜鉛リングは、内周面から外周面へと向かう方向に貫通形成された複数の小孔を有し、亜鉛リングの表面上に存在する水が、前記小孔を介して前記亜鉛リングの内周面から外周面に流通し、前記亜鉛リングにおいて前記給水具の通水路に面する内周面のみならず前記通水路に面しない外周面の全面に拡散して行き渡るようにしたことを特徴とする請求項16記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
  19. 前記亜鉛リングの厚さ方向両側面並びに外周面及び内周面に、ローレット加工により祖表面部としてのローレット部を形成したことを特徴とする請求項17または18記載のニッケル溶出防止機能付給水装置。
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