JP4168624B2 - オリゴペプチド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、毛成長促進作用を有するオリゴペプチド、及び該オリゴペプチドを有効成分として含む医薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上皮組織の正常な形態形成は上皮組織の周りに存在する間充織細胞由来の因子による制御を受けていることが示唆されており、また、上皮組織の形態形成異常に起因する疾患の多くが間充織細胞の異常を原因としていることから、間充織細胞が上皮組織の形態形成を制御するメカニズムの解明に興味がもたれている。しかしながら、上皮組織の形態形成の制御に関与する物質群は複雑な系の中で時間的及び空間的な制御を受けて発現されており、それらの物質を単離して機能を解析することは極めて困難であること、また、上皮組織の形態形成を単純化したモデル実験系の構築も難しいことなどの理由から、この分野の研究には今日まで大きな進展が見られていない。上皮組織の形態形成に起因する疾患の発症機序の解明やそれらの疾患の治療方法の確立などのために、上皮組織における形態形成の制御メカニズムの解析が切望されていた。
【0003】
このような状況下にあって、上皮組織の形態形成の制御に関与するエピモルフィン (epimorphin) が分離・精製された(特開平6-25295 号公報)。この物質は277 ないし 289個のアミノ酸からなる蛋白質をコア・蛋白質とする生理活性物質であり、主として間充織細胞により生合成されていることが明らかにされた。また、エピモルフィンは、上皮細胞に作用して上皮組織の形態形成を促進する作用を有していること、並びにエピモルフィンが機能しない場合には正常な組織形成が行われないことも明らかにされた。
【0004】
エピモルフィンの構造については、エピモルフィン分子が構造上大きく4個のフラグメントに分けられることが見いだされている(欧州特許公開第0698666号)。すなわち、エピモルフィンの全長を構成するポリペプチドは、N末端側より、コイルドコイル領域(1)、機能ドメイン(2)、コイルドコイル領域(3)、及びC末端の疎水性領域に分けることができる。これらのフラグメントのうち、機能ドメイン(ヒト・エピモルフィンではN末端より104 番目から187 番目のアミノ酸により特定される領域)については、この領域が細胞接着に関与しており、エピモルフィンの生理活性の発現に密接にかかわっていることが示唆されている(欧州特許公開第0698666 号)。
【0005】
エピモルフィンが正常な形態形成を促進する作用を有することから、この物質は、形態形成の異常に起因する疾患などの予防や治療のための医薬や、又は育毛剤などの医薬の有効成分として有用であることが期待される。しかしながら、哺乳類動物から得られた天然型エピモルフィンは生理食塩水などの水性媒体に難溶であり、医薬として実用に供することが困難であった。このため、天然型エピモルフィンの形態形成促進作用を実質的に保持しつつ、溶解性に優れたエピモルフィン誘導体を創製する試みがなされている。例えば、C末端部の疎水性領域を除去した改変体(フラグメント123)などが知られている(特開平6-25295 号公報)。
【0006】
また、エピモルフィンの部分構造を有するポリペプチドが上皮細胞に作用して上皮組織の形態形成を促進することが知られている(国際公開WO98/22505号)。このポリペプチドは生理食塩水などの水性媒体に溶解可能なポリペプチドであり、上記刊行物には、該ポリペプチドが毛成長促進作用を有することが教示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決すべき課題は、毛成長促進作用を有するオリゴペプチドを提供することにある。本発明が解決すべき別の課題は、上記のオリゴペプチドを有効成分として含む医薬を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決すべく、先ずエピモルフィンの部分構造であるオリゴペプチドのアミノ酸残基を改変したオリゴペプチドを合成し、毛成長促進作用を検討した。その結果、合成したオリゴペプチドの中に優れた毛成長促進作用を有するオリゴペプチドが存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
ヒト及びマウスエピモルフィンのアミノ酸配列は、米国特許第5,726,298号に記載されている。ヒトエピモルフィンpep7アミノ酸領域は、米国特許第5,726,298号の配列番号3から5の94番目のアミノ酸から始まり、以下の配列:Ala-Ile-Glu-Gln-Ser-Phe-Asp-Gln-Asp-Gluを有する。マウスエピモルフィンpep7アミノ酸配列は、米国特許第5,726,298号の配列番号9から11の95番目のアミノ酸から始まり、以下の配列:Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Asp-Gln-Asp-Gluを有する。マウスpep7領域では、ヒトpep7の最初のAlaがSerに置換され、ヒトpep7の6番目のPheがCysに置換されている。
【0010】
ヒト及びマウスpep7アミノ酸領域は、各エピモルフィンのコイルドコイル(coiled-coil)ドメインに存在し、これにより、ヒトエピモルフィンpep7領域ではCysが存在しない場合でも、二量体の形成のために他のポリペプチド鎖に接近する。本発明は、ヒトエピモルフィンpep7領域Ala-Ile-Glu-Gln-Ser-Phe-Asp-Gln-Asp-Gluの変異体(一定のアミノ酸残基のCysへの置換を含む)が、本明細書の実施例7に示したマウスモデル系で新生毛包の形態形成を誘導できるという知見に基づくものである。本発明はさらに、6番目の位置にCysを含み、かつCysを有する他のpep7領域と好適な条件下で二量化することができるpep7領域の変異体がマウスモデル系で活性を有する一方で、CysをPheに置換し、Cysを有さないpep7変異体はマウスモデル系で活性を示さないという知見に基づくものである。
【0011】
ヒト及びマウスのpep7アミノ酸領域は高度に保存され、Cysを有するヒトpep7領域の変異体は本明細書の実施例7に示したマウスモデル系で活性を示したことから、本明細書に開示したオリゴペプチドはヒトにおいて発毛を促進し脱毛を予防することが示唆される。
【0012】
また、本発明は、形態形成異常を伴う疾患又は異常の症状を治療または緩和するのに有用なオリゴペプチドに関するものであり、本発明のオリゴペプチドは、血管再生作用の誘導、形態再生作用の誘導、心臓血管再生の誘導、上皮細胞増殖の誘導、発毛誘導または脱毛予防のため等に使用することができる。
【0013】
すなわち本発明によれば、Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、Glu-Gln-Ser-Cys-Aspで表されるアミノ酸配列において0から2個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を含む、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、置換されるアミノ酸残基はCys以外のアミノ酸残基であり、さらに好ましくは、置換されるアミノ酸残基は、第3〜6番目のアミノ酸残基であるGlu-Gln-Ser-Cys以外のアミノ酸残基である。
【0014】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて1番目のSerが疎水性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて1番目のSerがAla、Tyr、Thr、Pro、Phe、ValまたはGlyで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて2番目のIleが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて2番目のIleがGly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe又はLeuで置換されている。
【0015】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて5番目のSerが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて5番目のSerがTrp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro又はAlaで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて7番目のAspが親水性アミノ酸残基、Gly、Ala又はLeuで置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて7番目のAspがGlu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr又はLeuで置換されている。
【0016】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて3番目のGluがLys、Gly、Gln、Arg、Ala、Val、Asp又はTrpで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて4番目のGlnがPro、Glu、Thr、Arg、Ser、His又はLysで置換されている。
【0017】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspにおいて1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、3番目のGluがAla、AspまたはTrpで置換され、5番目のSerがCysまたはTyrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0018】
より好ましくは、Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Aspで表されるアミノ酸配列において第3〜6番目のアミノ酸残基であるGlu-Gln-Ser-Cys以外の1から3個のアミノ酸残基が置換されており、1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0019】
特に好ましくは、Thr-Ser-Glu-Gln-Ser-Cys-Ala、Thr-Asn-Glu-Gln-Ser-Cys-Ala、Tyr-Ser-Glu-Gln-Ser-Cys-AlaまたはTyr-Asn-Glu-Gln-Ser-Cys-Alaで表されるアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、Glu-Gln-Cys-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において0から2個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を含む、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、置換されるアミノ酸残基はCys以外のアミノ酸残基であり、さらに好ましくは、置換されるアミノ酸残基は、第3〜6番目のアミノ酸残基であるGlu-Gln-Cys-Ser以外のアミノ酸残基である。
【0021】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて1番目のSerが疎水性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて1番目のSerがAla、Tyr、Thr、Pro、Phe、ValまたはGlyで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて2番目のIleが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて2番目のIleがGly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe又はLeuで置換されている。
【0022】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて6番目のSerが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて6番目のSerがTrp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro又はAlaで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて7番目のAspが親水性アミノ酸残基、Gly、Ala又はLeuで置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて7番目のAspがGlu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr又はLeuで置換されている。
【0023】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて3番目のGluがLys、Gly、Gln、Arg、Ala、Val、Asp又はTrpで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて4番目のGlnがPro、Glu、Thr、Arg、Ser、His又はLysで置換されている。
【0024】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspにおいて1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、3番目のGluがAla、AspまたはTrpで置換され、6番目のSerがCysまたはTyrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0025】
より好ましくは、Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において第3〜6番目のアミノ酸残基であるGlu-Gln-Cys-Ser以外の1から3個のアミノ酸残基が置換されており、1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0026】
特に好ましくは、Thr-Ser-Glu-Gln-Cys-Ser-Ala、Thr-Asn-Glu-Gln-Cys-Ser-Ala、Tyr-Ser-Glu-Gln-Cys-Ser-AlaまたはTyr-Asn-Glu-Gln-Cys-Ser-Alaで表されるアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、Glu-Cys-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において0から2個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を含む、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、置換されるアミノ酸残基はCys以外のアミノ酸残基であり、さらに好ましくは、置換されるアミノ酸残基は、第3〜6番目のアミノ酸残基であるGlu-Cys-Gln-Ser以外のアミノ酸残基である。
【0028】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて1番目のSerが疎水性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて1番目のSerがAla、Tyr、Thr、Pro、Phe、ValまたはGlyで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて2番目のIleが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて2番目のIleがGly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe又はLeuで置換されている。
【0029】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて6番目のSerが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて6番目のSerがTrp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro又はAlaで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて7番目のAspが親水性アミノ酸残基、Gly、Ala又はLeuで置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて7番目のAspがGlu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr又はLeuで置換されている。
【0030】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて3番目のGluがLys、Gly、Gln、Arg、Ala、Val、Asp又はTrpで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて5番目のGlnがPro、Glu、Thr、Arg、Ser、His又はLysで置換されている。
【0031】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspにおいて1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、3番目のGluがAla、AspまたはTrpで置換され、6番目のSerがCysまたはTyrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0032】
より好ましくは、Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において第3〜6番目のアミノ酸残基であるGlu-Cys-Gln-Ser以外の1から3個のアミノ酸残基が置換されており、1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0033】
特に好ましくは、Thr-Ser-Glu-Cys-Gln-Ser-Ala、Thr-Asn-Glu-Cys-Gln-Ser-Ala、Tyr-Ser-Glu-Cys-Gln-Ser-AlaまたはTyr-Asn-Glu-Cys-Gln-Ser-Alaで表されるアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0034】
本発明のさらに別の態様によれば、Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、Cys-Glu-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において0から2個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を含む、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
好ましくは、置換されるアミノ酸残基はCys以外のアミノ酸残基であり、さらに好ましくは、置換されるアミノ酸残基は、第3〜6番目のアミノ酸残基であるCys-Glu-Gln-Ser以外のアミノ酸残基である。
【0035】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて1番目のSerが疎水性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて1番目のSerがAla、Tyr、Thr、Pro、Phe、ValまたはGlyで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて2番目のIleが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて2番目のIleがGly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe又はLeuで置換されている。
【0036】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて6番目のSerが中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて6番目のSerがTrp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro又はAlaで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて7番目のAspが親水性アミノ酸残基、Gly、Ala又はLeuで置換されており、さらに好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて7番目のAspがGlu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr又はLeuで置換されている。
【0037】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて4番目のGluがLys、Gly、Gln、Arg、Ala、Val、Asp又はTrpで置換されている。
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて5番目のGlnがPro、Glu、Thr、Arg、Ser、His又はLysで置換されている。
【0038】
好ましくは、アミノ酸配列Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspにおいて1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、4番目のGluがAla、AspまたはTrpで置換され、6番目のSerがCysまたはTyrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0039】
より好ましくは、Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において第3〜6番目のアミノ酸残基であるCys-Glu-Gln-Ser以外の1から3個のアミノ酸残基が置換されており、1番目のSerがThrまたはTyrで置換され、2番目のIleがSer、AsnまたはThrで置換され、及び/または7番目のAspがGly、AlaまたはLeuで置換されている、オリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0040】
特に好ましくは、Thr-Ser-Cys-Glu-Gln-Ser-Ala、Thr-Asn-Cys-Glu-Gln-Ser-Ala、Tyr-Ser-Cys-Glu-Gln-Ser-AlaまたはTyr-Asn-Cys-Glu-Gln-Ser-Alaで表されるアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0041】
本発明の別に態様によれば、以下のアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7;
X1−X2−X3−X4−X6−X5−X7;
X1−X2−X3−X6−X4−X5−X7;または
X1−X2−X6−X3−X4−X5−X7;
(式中、X1はSer、Ala、Tyr、Thr、Pro、Phe、Val、Gly、Ala、Leu、Ile、またはMetのアミノ酸残基を示すか、該オリゴペプチドから欠失しており;
X2はIle、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe、Leu、Ala、Pro、Cys、または、Metのアミノ酸残基を示すか、該オリゴペプチドから欠失しており;
X3はGlu、Lys、Gly、Gln、Arg、Ala、Val、Trp、Cys、またはAspのアミノ酸残基を示し;
X4はGln、Pro、Glu、Thr、Arg、Ssr、His、Cys、またはLysのアミノ酸残基を示し;
X5はSer、Trp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、またはMetのアミノ酸残基を示し;
X6はCysのアミノ酸残基を示し;
X7はAsp、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr、またはLeuのアミノ酸残基を示すか、該オリゴペプチドから欠失している。但し、上記アミノ酸配列は、Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-AspまたはSer-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys以外である。)
上記オリゴペプチドは、生理食塩水又は水などの水性媒体に可溶であり、生物学的活性を有し、適当な条件下で二量化することができる。
【0042】
好ましい態様によれば、上記式中、X1はSer、Tyr、Thr、またはProのアミノ酸残基を示すか、該オリゴペプチドから欠失しており;X2はIle、Asn、Thr、またはSerのアミノ酸残基を示すか、該オリゴペプチドから欠失しており;X3はGlu、Ala、Trp、またはAspのアミノ酸残基を示し;X4はGlnのアミノ酸残基を示し;X5はSer、Cys、またはTyrのアミノ酸残基を示し;X6はCysのアミノ酸残基を示し;X7はAsp、Ala、Gly、またはLeuのアミノ酸残基を示すか、該オリゴペプチドから欠失している。但し、上記アミノ酸配列は、Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-AspまたはSer-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys以外である。
【0043】
本発明の一態様によれば、Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Asp、Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-AspまたはSer-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Aspを少なくとも含むオリゴペプチド提供され、別の態様によれば、Tyr-Asn-Glu-Gln-Ser-Cys-Asp、Thr-Ser-Asp-Gln-Cys-Cys-Asp、Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Gly、Ser-Ser-Ala-Gln-Ser-Cys-Leu、Tyr-Ile-Glu-Gln-Tyr-Cys-Asp、Thr-Ile-Trp-Gln-Ser-Cys-Asp、Thr-Thr-Glu-Gln-Ser-Cys-Ala、Pro-Ser-Glu-Gln-Ser-Cys-Ala、またはSer-Asn-Glu-Gln-Ser-Cys-Alaを少なくとも含むオリゴペプチドが提供される。
【0044】
本発明の別の態様によれば、
Glu-Gln-Ser-Cys-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチド;
Glu-Gln-Cys-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチド;
Glu-Cys-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチド;並びに、
Cys-Glu-Gln-Ser-Aspで表されるアミノ酸配列において1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、5から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチド、又はその修飾オリゴペプチドが提供される。
【0045】
本発明においては、アミノ酸残基が天然型アミノ酸残基、非天然型アミノ酸残基、又はそれらの誘導体の何れでもよい。
本発明の好ましい態様によれば、架橋剤が修飾した修飾オリゴペプチドが提供される。本発明の別の好ましい態様によれば、上記した何れかのオリゴペプチド又はその修飾オリゴペプチドを架橋することにより得られる、ホモ二量体又はヘテロ二量体オリゴペプチドが提供される。
【0046】
本発明のさらに別の態様によれば、上記した何れかのオリゴペプチド若しくはその修飾オリゴペプチド、又は生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む医薬が提供される。好ましくは、本発明の医薬は、毛成長促進剤として使用される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記の医薬(例えば、毛成長促進剤)の製造のための上記のオリゴペプチド又は生理学的に許容されるその塩の使用;毛の成長促進方法であって、上記のオリゴペプチド又は生理学的に許容されるその塩の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のオリゴペプチドは、以下のアミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV);
Figure 0004168624
の何れかにおいて1から3個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を少なくとも含み、毛成長促進作用を有する、7から100アミノ酸残基から成るオリゴペプチドである。
【0048】
アミノ酸残基の数は毛成長促進作用を示す限り特に限定はされず、また1番目のSerまたはIleは欠失されていてもよく、5から100の範囲内の任意の数とすることができる。例えば、アミノ酸残基の数の下限値は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の何れでもよく、上限値は15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90または100の何れでもよい。アミノ酸残基の数は好ましくは5から40、より好ましくは6から30、さらに好ましくは7から20、さらに好ましくは7から15、さらに好ましくは7から12であり、特に好ましくは7から10の範囲内である。アミノ酸残基の数は、オリゴペプチドが生理食塩水又は水などの水性媒体に可溶であり、生物学的活性を有し、適当な条件下で二量化することができるように選択することが望ましい。
【0049】
置換されるアミノ酸の個数は1から4個の範囲内であれば特に限定されず、1個、2個、3個又は4個の何れでもよい。
本発明の好ましい態様によれば、上記のアミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV)のそれぞれにおいて3番目から7番目までのアミノ酸配列に相当する、下記のアミノ酸配列(Ia)、(IIa)、(IIIa)又は(IVa)で表されるアミノ酸配列において0から2個のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を含むオリゴペプチドが提供される。
Figure 0004168624
【0050】
上記のアミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV)において置換されるアミノ酸の位置は特には限定されないが、システイン残基は置換されないことが好ましい。
好ましくは、アミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV)における1番目のアミノ酸残基であるSerは、疎水性アミノ酸残基又は中性アミノ酸残基で置換されている。ここで言う疎水性アミノ酸残基とは、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、メチオニン(Met)、システイン(Cys)、及びグリシン(Gly)などのアミノ酸残基を意味し、また、中性アミノ酸残基とは、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、及びチロシン(Tyr)などのアミノ酸残基を意味する。
特に好ましくは、上記した1番目のSerは、Tyr、Thr、Pro、Phe、ValまたはGlyで置換されている。
【0051】
好ましくは、アミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV)におけるIleは中性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)または疎水性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)で置換されている。中性溶液中で電荷を持つアミノ酸はペプチドの立体構造や反応性を大きく変えるので、中性アミノ酸残基または疎水性アミノ酸残基で置換されるのがよい。特に好ましくは、上記Ileは、Gly、Asn、Thr、Val、Ser、Phe又はLeuで置換されている。
【0052】
好ましくは、アミノ酸配列(I)における5番目のアミノ酸残基であるSer及びアミノ酸配列(II)、(III)又は(IV)における6番目のアミノ酸残基であるSerは、中性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)または疎水性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)で置換されている。特に好ましくは、上記Serは、Trp、Phe、Thr、Cys、Tyr、Pro又はAlaで置換されている。
【0053】
好ましくは、アミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV)におけるAspは、親水性アミノ酸残基、Gly、Ala又はLeuで置換されている。ここで言う親水性アミノ酸残基とは、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)又はヒスチジン(His)などの塩基性アミノ酸;アスパラギン酸(Asp)又はグルタミン酸(Glu)などの酸性アミノ酸;並びにアスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、及びチロシン(Tyr)などの中性アミノ酸の何れかのアミノ酸残基を意味する。特に好ましくは、上記Aspは、Glu、His、Ser、Ala、Gly、Asn、Tyr又はLeuで置換されている。
【0054】
好ましくは、アミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV)におけるGluは、酸性アミノ酸残基(具体例としては、アスパラギン酸(Asp)又はグルタミン酸(Glu)など)、塩基性アミノ酸残基(具体例としては、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)又はヒスチジン(His)など)または中性アミノ酸残基(具体例としては、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、及びチロシン(Tyr)など)などの親水性アミノ酸残基で置換されていてもよく、あるいは疎水性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)で置換されていてもよい。特に好ましくは、上記Gluは、Lys、Gly、Gln、Arg、Ala、Val又はTrpで置換されている。
【0055】
好ましくは、アミノ酸配列(I)、(II)、(III)又は(IV)におけるGlnは、酸性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)、塩基性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)または中性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)などの親水性アミノ酸残基で置換されていてもよく、あるいは疎水性アミノ酸残基(具体例は本明細書中上記の通り)で置換されていてもよい。特に好ましくは、上記Glnは、Pro、Glu、Thr、Arg、Ser、His又はLysで置換されている。
【0056】
本発明のオリゴペプチドの特に好ましい具体例としては、配列番号16〜90の何れかに記載のアミノ酸配列を有するオリゴペプチドが挙げられる。
【0057】
本発明のオリゴペプチドにおけるアミノ酸残基の種類は特に限定されず、天然型アミノ酸残基、非天然型アミノ酸残基、又はそれらの誘導体の何れでもよい。即ち、アミノ酸としてはL−アミノ酸であってもよいし、D−アミノ酸であってもよいし、これらの混合物でもよい。また、アミノ酸の種類としては、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸の何れでもよいが、天然型アミノ酸であるα−アミノ酸が好ましい。
【0058】
本明細書で言う非天然型アミノ酸とは、天然型蛋白質を構成する天然型アミノ酸20種類(グリシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−セリン、L−トレオニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−リシン、L−アルギニン、L−シスチン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−トリプトファン、L−ヒスチジン、L−プロリン)以外の全てのアミノ酸を意味し、具体的には、(1)天然型アミノ酸中の原子を他の物質で置換した非天然型アミノ酸、(2)天然型アミノ酸の側鎖の光学異性体、(3)天然型アミノ酸の側鎖に置換基を導入した非天然型アミノ酸、並びに(4)天然型アミノ酸の側鎖を置換して疎水性、反応性、荷電状態、分子の大きさ、水素結合能などを変化させた非天然型アミノ酸などが挙げられる。
【0059】
本発明のオリゴペプチド又は修飾オリゴペプチドが毛成長促進作用を有することは、本明細書の実施例に詳細かつ具体的に記載した試験方法によって、又は上記試験方法に適宜の改変や修飾を加えることにより、当業者が容易に確認可能である。 このような方法の具体例としては、以下の方法が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0060】
(1)C3HやC57BL/6マウスは生後45日から95日前後まで約50日間休止期が続くことが知られている。また、休止期ではピンク、成長期ではグレー又はクロと皮膚の色が変化するため、毛周期の判定が容易である。このマウスを使用し、被験物質の投与により、成長期への移行が促進されるか否か評価することにより、育毛活性を評価することが可能である。
【0061】
(2)上皮性の新生毛包に存在する抗原(例えば、約220kDaの抗原が挙げられる)を特異的に認識するモノクローナル抗体(例えば、受託番号FERMP−18578を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体)またはその断片を用いて育毛活性を評価することができる。より具体的には、生体由来の皮膚組織を被験物質の存在下で培養し、該皮膚組織片を回収し、上記のモノクローナル抗体またはその断片と反応させ、皮膚組織片と反応した該モノクローナル抗体またはその断片を検出または測定することにより、上皮性の新生毛包に存在する抗原の発現量を測定し、育毛活性を評価することができる。あるいは、皮膚を切断して被験物質の存在下で培養し、その培養物中の蛋白質と前記モノクローナル抗体を反応させた結果により、育毛活性を評価することができる。
【0062】
上記した本発明のオリゴペプチドから誘導される修飾オリゴペプチドも本発明の範囲内である。本発明において、「修飾」という用語は、化学的修飾及び生物学的修飾を含めて最も広義に解釈しなければならない。修飾の例としては、例えば、アルキル化、エステル化、ハロゲン化、又はアミノ化などの官能基導入、酸化、還元、付加、又は脱離などによる官能基変換、糖化合物(単糖、二糖、オリゴ糖、若しくは多糖)又は脂質化合物などの導入、リン酸化、あるいはビオチン化などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0063】
好ましい修飾オリゴペプチドとしては、ビオチン化されたオリゴペプチドを挙げることができ、より好ましくは修飾オリゴペプチドとして、スペーサを介して又はスペーサーを介さずにビオチンがN-末端に結合したオリゴペプチドを挙げることができる。上記の修飾オリゴペプチドにおいて、ビオチンには所望の生理活性を損なわない限りにおいて適宜の化学的修飾が施されていてもよい。ビオチン化されたオリゴペプチドの製造方法は、本明細書の実施例に具体的に示されている。適宜の長さのスペーサーを介してビオチンをオリゴペプチドのN-末端に導入するためには、例えば、NHS-Biotin又はNHS-LC-Biotin(いずれもピアース社から入手できる)などを用いることができる。
【0064】
また、別の好ましい修飾オリゴペプチドとしては、オリゴペプチド中のシステイン残基のスルフヒドリル基により二量化したオリゴペプチドを挙げることができる。大気雰囲気下では、自然と二量化反応が進み二量体となる。しかし、全量が二量体となるわけではない。二量化したオリゴペプチドとしては、同一のオリゴペプチドを架橋することにより得られるホモ二量体オリゴペプチドでもよいし、異なる2種類のオリゴペプチドを架橋することにより得られるヘテロ二量体オリゴペプチドでもよい。
本発明のホモ二量体又はヘテロ二量体オリゴペプチドは、上記した本発明の何れかのオリゴペプチド(改変オリゴペプチドや修飾オリゴペプチドを含む)を架橋剤を用いて架橋することにより得ることができる。
【0065】
本発明で用いる架橋剤として好ましくは、オリゴペプチド中のシステイン残基のスルフヒドリル基を活性化して、他のオリゴペプチド中のシステイン残基のスルフヒドリル基と共有結合を形成することができる、二官能性架橋剤を挙げることができる。
【0066】
本発明で用いることができる二官能性架橋剤の具体例としては、ビスマレイミド化合物が挙げられ、例えば、水酸基などの置換基を有していてもよい低級アルキル基(例えば、炭素数1から10、より好ましくは炭素数1から8のアルキル基)の両末端にマレイミド基のN原子が結合している化合物を挙げることができる。ビスマレイミド化合物の具体例としては、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、ビスマレイミドエタン、及び1,4−ビスマレイミドブタンなどが挙げられる。
【0067】
さらに、上記した本発明の何れかのオリゴペプチド(改変オリゴペプチドや修飾オリゴペプチドを含む)中のシステイン残基に架橋剤が結合している、単量体オリゴペプチドも本発明の範囲内である。
【0068】
さらに、上記オリゴペプチドの二量体のみならず、三量体以上の多量体も本発明の範囲に包含される。例えば、3種以上のペプチドを架橋できる架橋剤を用いて形成した三量体以上の多量体も本発明の範囲に包含される。
【0069】
上記した各種のオリゴペプチド(修飾オリゴペプチドも含む)は遊離形態であってもよいが、酸付加塩又は塩基付加塩として提供されてもよい。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの鉱酸塩;又は、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;メチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などの有機アンモニウム塩を挙げることができる。グリシンなどのアミノ酸と塩を形成する場合もあり、また、分子内で対イオンを形成することもある。
【0070】
さらに、これらのオリゴペプチド又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合がある。上記オリゴペプチドは複数の不斉炭素を有している。各不斉炭素の立体は特に限定されないが、アミノ酸残基はL-アミノ酸であることが望ましい。これらの不斉炭素に基づく光学活性体、ジアステレオ異性体などの立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
【0071】
本発明のオリゴペプチドは、ペプチド合成に通常用いられる固相法および液相法などの化学的手法により合成することができる。ペプチド合成におけるアミノ基等の保護基および縮合反応の縮合剤については種々の成書があり、それらを参照することができる。固相法では市販の各種ペプチド合成装置を利用することができる。必要に応じて、官能基の保護及び脱保護を行うことにより効率的に合成を行うことができる。保護基の導入及び脱離方法については、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons, Inc.)(1981年)などを参照することができる。
【0072】
また、通常の遺伝子発現操作等の生物学的手法に従って、上記オリゴペプチドをコードするDNA 配列を含む組み換えベクターを製造した後、該ベクターにより形質転換された微生物(形質転換体)を調製し、該形質転換体を培養した培養物から所望のオリゴペプチドを分離・精製することができる。もっとも、上記オリゴペプチドの製造方法はこれらの化学的方法及び生物学的方法に限定されることはない。また、化学的修飾又は生物学的修飾などを含めて修飾オリゴペプチドの製造方法は当業者に周知されており、いかなる方法を用いてもよい。
【0073】
本発明はさらに、上記した本発明のオリゴペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞(形質転換体)を提供する。適当な複製起点等、宿主での維持に必要な配列が存在する限り、原核及び真核の宿主細胞を使用することができる。適当な選択マーカーの使用も好ましい。宿主系は当分野で公知である。原核細胞の宿主細胞としては、E.coli、B.subtilis、及びマイコバクテリア等の細菌細胞が挙げられる。真核細胞の宿主細胞としては、酵母、昆虫、鳥類、植物、C.elegans、及び哺乳動物の宿主細胞が挙げられる。真菌(酵母を含む)の宿主細胞の具体例としては、S.cerevisiae、Kluyveromyces lactis(K.lactis)、C.albicans及びC.glabrataなどのCandida種、Aspergillus nidulans、Schizosaccharomyces pombe(S.pombe)、Pichia pastoris 及びYarrowia lipolyticaなどが挙げられる。哺乳動物細胞の具体例としては、培養したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカグリーンモンキー細胞、Xenopus laevis卵細胞、または両性類器官の他の細胞などを使用することができる。
【0074】
本発明のオリゴペプチドは、医薬の有効成分として有用である。本明細書における医薬という用語は、ヒトを含む哺乳類の病気の予防又は治療のほか、医薬部外品や化粧品として分類される場合がある毛成長促進剤などを含めて最も広義に用いる。
【0075】
本発明の医薬の投与対象、薬効、並びに本発明の医薬による治療の対象疾患の具体例を以下に列挙する。
(1)本発明のオリゴペプチドは、血管再生作用、再生促進作用、心臓血管再生作用、血管内皮細胞誘導作用などを示し、慢性閉塞性動脈硬化症、バージャー病、重症狭心症、動脈硬化症などの治療及び予防に有用である(Exp Cell Res 1996 Jan 10, 222(1):189-98)
(2)本発明のオリゴペプチドは、膵臓上皮の形態形成に関与し、糖尿病などの治療および予防に有用である(J Cell Biol 2001, Mar 5;152(5):911-22)。
【0076】
(3)本発明のオリゴペプチドは、肝臓の形成(再生)に関与し、肝代謝障害の治療および予防に有用である(Biochem Biophys Res Commun 1998 Sep 18; 250(2):486-90)。
(4)本発明のオリゴペプチドは、骨や歯の形成に関与し、歯周病、骨折、骨腫瘍、骨欠損、骨粗しょう症の治療および予防に有用である(Arch Oral Biol 1995 Feb;40(2):161-4)。
【0077】
(5)本発明のオリゴペプチドは、肺分岐の形態形成や肺線維症に関与し、肺疾患の治療および予防に有用である(Biochem Biophys Res Commun 1997 May 19; 234(2):522-5;及びAm J Respir Cell Mol Biol 2000 Aug;23(2):168-74)。
(6)本発明のオリゴペプチドは、腸ひだの形成に関与し、腸疾患の治療および予防に有用である(Am J Physiol 1998 Jul; 275(1 Pt1):G114-24)。
【0078】
(7)本発明のオリゴペプチドは、筋肉の構造の維持に関与し、例えば、筋ジストロフィー症の治療および予防に有用である(Histochem J 1998 Dec;30(12):903-8)。
(8)本発明のオリゴペプチドは、胆嚢上皮の形成に関与し、胆嚢疾患の治療および予防に有用である(Cell Tissue Res 2000 May; 300(2):331-44)
(9)本発明のオリゴペプチドは、乳上皮の形態形成に関与し、乳疾患の治療および予防に有用である(J Cell Biol 2001 May 14; 153(4):785-94)
【0079】
これらの中でも最も好ましくは、毛成長促進剤として使用することができる。
本明細書において用いられる「毛成長促進剤」という用語は、育毛促進、発毛促進、及び脱毛予防などを含めて最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【0080】
本発明の医薬としては、上記のオリゴペプチド又は生理学的に許容されるその塩から選ばれる1又は2種以上の物質をそのまま用いてもよいが、通常は、製剤学的に許容しうる1又は2種以上の製剤用添加物を用いて上記物質の1又は2種以上を有効成分として含む医薬組成物を製造して投与することが好ましい。上記のオリゴペプチドの1種又は2種以上を有効成分として含む毛成長促進剤は、クリーム剤、噴霧剤、塗布用の溶液剤、又は貼付剤などとして外用剤として適用できるが、注射剤として患部に直接投与してもよく、毛成長促進剤としての使用目的に好適な形態の製剤として提供することが可能である。
【0081】
例えば、シャンプーやリンスに有効成分である上記のオリゴペプチドを配合してもよく、上記のオリゴペプチドをリポソームなどに封入して製剤を調製してもよい。このような形態の組成物も本発明の医薬に包含される。皮膚のケラチン層を通して有効成分であるオリゴペプチドを効率的に経皮吸収させるために、適宜の界面活性剤や脂溶性物質などをクリーム剤などに配合することも好適である。
【0082】
哺乳動物への局所投与のためには、本発明の組成物は、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、スティック剤、スプレー剤、軟膏、ペースト剤などを含む(但し、これらに限定されない)多様な剤形として提供することができる。これらの剤形は、溶液、乳濁液、ゲル、固体及びリポソームなどを含む多様な調合形態を含む。
【0083】
溶液として調剤した本発明の組成物の局所投与に有用な組成としては、一般的には、薬学的に許容可能な水性又は有機溶媒が挙げられる。「薬学的に許容可能な有機溶媒」とは、本発明のオリゴペプチドを分散または溶解することができ、許容可能な安全性(例えば、刺激性及び感受性など)を有する溶媒のことを言う。好適な有機溶媒の具体例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(200〜600)、ポリプロピレングリコール(425〜2025)、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ブタンジオール、及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0084】
pep7はPBSに1mg/ml程度溶解させることができる。架橋剤により二量体としたpep7は0.9mg/ml程度溶解させることができる。溶解度は、ペプチド溶液の吸光度を測定して求めることができる。単量体の場合には、(A215−A225)×144(μg/ml)の計算式(Waddell, 1956)で求まる。二量体の場合は、この式で得られた値を1.3で除するとよい。
局所用組成物をエアロゾルとして調剤し、スプレーオンとして皮膚に投与する場合、推進剤を溶液組成物に添加する。推進剤の具体例としては、塩素化、フッ素化または塩フッ素化した低分子量の炭化水素が挙げられるが、これに限定されるものではない。
局所用組成物は、緩和剤を含む溶液として調剤してもよい。緩和剤とは、乾燥の防止または緩和、並びに皮膚の保護のために使用される物質を言う。多様な好適な緩和剤が公知であり、本発明において使用することができる。
【0085】
本発明のオリゴペプチドを含む組成物から調剤することができる別の剤形としては、クリーム剤及びローション剤がある。
本発明のオリゴペプチドを含む組成物から調剤することができる別の剤形としては、軟膏がある。軟膏は、動物又は植物の油あるいは半固体炭化水素(油性)の基剤を含むことができる。軟膏はまた、水を吸収して乳濁物を形成する吸収軟膏基剤を含むことができる。軟膏は水溶性でもよい。
【0086】
別の剤形は、乳濁剤である。乳化剤は、非イオン性、アニオン性又はカチオン性の何れでもよく、乳化剤の例としては、例えば、米国特許第3,755,560号及び4,421,769号に記載されている。
ローション剤及びクリーム剤は、乳濁剤及び溶液として調剤することができる。水中油型及び油中水型のローション剤及びクリーム剤等の局所調製物のための単一乳濁剤は周知である。水中油中水型などの多相乳濁組成物も公知であり、例えば、米国特許第4,254,105号に記載されている。3重乳濁剤も本発明の局所投与のためには有用であり、シリコン中水中油型の液体乳濁物などが挙げられ、例えば、米国特許第4,960,764号に記載されている。
【0087】
局所組成物に有用な他の乳濁剤は、マイクロエマルジョン系である。例えば、約9〜約15%のスクアレン、約25〜約40%のシリコン油、約8〜約20%の脂肪アルコール、約15〜約30%のポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸(商品名TWEENSで市販)または他の非イオン性剤、及び約7〜約20%の水を含む系が挙げられる。
【0088】
本発明のオリゴペプチドを含む組成物にはリポソーム製剤も有用である。リポソーム組成物は、本発明のオリゴペプチドを含む組成物を、ジパルミトイルホスファチジルコリン等のリン脂質、コレステロール及び水と定法に従って混合することによって調製できる。リポソーム形成用の好適な組成物の表皮脂質をリン脂質の代わりに使用してもよい。リポソーム調製物を上記局所調剤の一つ(例えば、ゲル剤又は水中油型乳濁剤)に取り込んで、リポソーム製剤とすることができる。局所投与されるィポソームの他の組成及び薬学的用途については、例えば、Mezei (1985) Topics in Pharmaceutical Sciences, Bremer et al. eds., Elsevier Science, New York, N.Y., pp345-358に記載されている。
【0089】
上記の毛成長促進剤の投与量は使用目的、製剤形態、有効成分の種類などに応じて適宜選択可能であるが、例えば、本明細書の実施例に具体的に示した投与量を参考にして選択することが可能である。例えば、例えば、成人一日当たり有効成分の投与量としては、1μg/kg/日〜10mg/kg/日、好ましくは10μg/kg/日〜1mg/kg/日程度の範囲内である。
【0090】
なお、本発明の実施に当っては、分子生物学(遺伝子組み換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及び免疫学の慣用技術を使用することができ、これらは当業者の知識の範囲内である。このような技術は、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (Sambrook et al., 1989); Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait, ed., 1984); Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed., 1987); Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology (D,M. Wei & C.C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalial Cells (J.M. Miller & M.P. Calos, eds., 1987); Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel et al., eds., 1987 and annual updates); PCR : The Polymerase Chain Reaction (Mullis et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991 and annual updates)等に記載されている。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されることはない。
【0091】
【実施例】
実施例1:ライブラリーベクターの調製
大腸菌表面にアミノ酸10個程度のペプチドを表面蛋白インベイシンと融合した形で呈示させるベクター(Nakajima et al,Gene,260,121-131(2000))を用い、BstXIサイトをmutanegenis kit(宝酒造)を用いて全てなくし、プロモーター部分をPLプロモーターに変更し、インベイシンcDNAのC末端側にチオレドキシンcDNAのアミノ酸2〜36を連結した。さらに、連結した部分チオレドキシンのcDNAのうち33番目システイン〜36番目のシステインをTCCGGTCCGCCATCACGTTGGCTCGAGCCAGGATATTGGGGTCCGTGA(配列番号9)の構造に置き換えたものを調製した(pALinvThio4と命名)。
【0092】
このベクターのBstXIサイトに、HAエピトープをコードする2本鎖cDNAをフレームが合うよう組み込み、大腸菌GI724に導入した。これを後述する実施例3の「一次・二次スクリーニング」と同様の手法で調べたところ、抗HA抗体に結合することが判明し、モデルとして挿入したHAエピトーフのペプチドが菌表面に呈示されていることが実証された。
【0093】
実施例2:大腸菌表面呈示型ライブラリーの作製
以下の配列のオリゴヌクレオチドを合成した。
Figure 0004168624
【0094】
ただし、T,G,a,t,g,cは、以下の割合で合成した。
T: T:G=17:3
G: T:G=3:17
a: A:T:G:C=7:1:1:1
t: A:T:G:C=1:7:1:1
g: A:T:G:C=1:1:7:1
c: A:T:G:C=1:1:1:7
【0095】
オリゴヌクレオチド▲1▼と▲2▼を等量まぜ、プライマー(5' ATG CAT CCA ATA TCC TGG 3')(配列番号12)とアニーリングさせた。Klenow fragment で伸長させたあと、制限酵素BstXIで切断し、ポリアクリルアミドゲルによって、目的のバンドを回収した。このDNAはSIEQSCDQDE(配列番号13)の一部アミノ酸変異したペプチド群をコードするものである。
【0096】
ベクター(pALinvThio4)をBstXIで切断し、BAP処理したのち、上記のライブラリー断片とライゲーションした。
それで大腸菌GI724のエレクトロコンピーテントセル(150μL)を形質転換し、それをEPMpep7類似ペプチドライブラリー(3.6×106種類)と命名した。
【0097】
EPMpep7類似ペプチドライブラリーの一部をLBアガープレートに展開し、ランダムに100個のコロニーを拾って、別々にプラスミドを回収し、解析した結果、約30%のコロニーは、アミノ酸配列SIEQSCDQDE(pep7と呼ぶ)(配列番号92)の1〜3個のアミノ酸が置換されたペプチドを呈示することがわかった(図1)。また、その作製したライブラリーの内訳を調べた結果、置換されたアミノ酸の位置と種類は、十分にばらついていることが判明した(図2)。図2は、100クローンについて配列を調べた結果を示す。図3は、ライブラリーに存在する理論値を示す。
【0098】
実施例3:一次及び二次スクリーニング
EPMpep7類似ペプチドライブラリー(ライブラリーサイズ;3.6×106種類)を100μg/mlのトリプトファンを加えて30℃で6時間発現誘導し、ラビット抗エピモルフィン抗体(エピモルフィンの活性を中和するポリクローナル抗体;Hirai et al 1998 J.Cell.Biol., 140,159-169)10μgを予めコートし、blocking solution (1% skim milk, 150mM NaCl, 1% α-methyl mannoside in IMC medium)でブロッキングしておいた35mmディッシュに添加して1時間静置した。Wash solution(1% α-methyl mannoside in IMC medium)を添加して100rpmで5分の洗浄を5回行った後、結合クローンを回収した。結合クローンは、回収率測定のため一部プレーティングし、残りはIMC medium を添加して30℃にて一晩培養した。
【0099】
一晩培養した一次スクリーニング後のクローンを、上記と同様にトリプトファン添加により発現誘導した。二次スクリーニング用のディッシュには、EPMpep7でアフィニティー精製したラットH12抗体10μgをコートし、発毛誘導活性のない組み換え体HI-72、HI-73△、HI-78、HI-79(下記の化1を参照、またH1−6のアミノ酸配列は配列表の配列番号91を参照)それぞれ25μg(計100μg)、あるいはそれらの可変部のペプチド(合成したもの)それぞれ4μg(計16μg)を添加したblocking solutionでブロッキングした。一次スクリーニングと同様に、発現誘導したクローンをディッュに添加し、洗浄後、結合クローンを回収した。結合クローンは、回収率測定のため一部プレーティングし、残りはIMC medium を添加して30℃にて一晩培養した。
【0100】
なお、1次、2次スクリーニングともにpALinvThio4のベクター(インサートを含まない)を導入した菌をコントロールに用いたが、上記条件でのパニングでの回収はライブラリーのそれと比べ1次スクリーニングで1/100以下、2次スクリーニングで1/50以下であることがプレーティングしたものから明らかになった。またこうして得られたライブラリーのサイズは2.5×105であった。
【0101】
【化1】
Figure 0004168624
【0102】
実施例4:調製用ベクターに組み換え
▲1▼ 高活性の組換えエピモルフィンの調製用ベクターSRαEPM(Hirai et al,(1994)Eur.J.Biochem., 225, 1133-1139)をHindIIIで切断し、T4ポリメラーゼで末端を平滑化し、セルフライゲーション処理することによって、HindIII制限サイトをなくした。
▲2▼ 変異導入キット(タカラ)を用い、▲1▼で得たベクター中に挿入されているエピモルフィンSIEQSCDQDEをコードする配列の直前のAAGCTGをAAGCTT(HindIIIの制限サイト)に変異させた。
【0103】
▲3▼ PCRでマウスエピモルフィンのSIEQSCDQDEの直後の「NGN〜12フラグメント(Eur.J.Biochem,225,1133-1139)のC末まで」(配列番号93)をコードするcDNAをHind IIIの制限サイトを付加した形で作成し、これを▲2▼で作製したベクターのHind IIIサイトに挿入した。ベクターに挿入されたエピモルフィンは12フラグメントでペプチド7が欠損し、ここにHindIII制限サイトが入ったものである。
Figure 0004168624
を調製し(各鎖を化学合成した後、70℃〜50℃でアニールさせた)、上記▲3▼で作製したHind IIIサイトに導入し、Hind III制限サイトをHind III−BstXI−XbaI−BstXI−Hind IIIに変換した。
【0104】
▲5▼ 2次スクリーニングで得られた大腸菌群(30℃で一晩培養)からプラスミド群を回収し、BstXIサイトで切り出したpep7の類似ペプチド群をコードするcDNAを▲4▼で作製したベクターのBstXI−XbaI−BstXIの部分に挿入した。
▲6▼ 得られたプラスミド群の一部を大腸菌HB101でクローン化して15個について内部を調べたところ全てのクローンで「pep7部分の一部アミノ酸が異なるアミノ酸で置換されている」エピモルフィン12フラグメントをコードする配列を持つことがわかった。
【0105】
▲7▼ 上記の▲5▼で得られたプラスミド群をNspV/PvuIIで処理し、変異のpep7を含むエピモルフィンフラグメント群遺伝子を得た。これを、6個のHisがN末端に付加されたエピモルフィン12フラグメントの大量調製用ベクターpet12(Hirai et al.J.Cell Biol 2001, 153, 785-794)のNspV−SmaI部分に挿入した(これを、大量調製用ライブラリーと呼ぶ)
▲8▼ 得られたプラスミド群の一部を大腸菌BL21でクローン化して、それぞれの蛋白発現ならびに内部配列を調べたところ、全てのクローンでIPTGによる蛋白発現誘導ならびに「pep7部分が類似の異なるペプチドで置換されている」エピモルフィンフラグメント(H12のC末からPvuIIサイトまで欠損)が確認できた。これにより、大量発現型の2.5×105種のライブラリーが構築された。
【0106】
実施例5:pep7類似ペプチドの調製
▲1▼ 大量調製用ライブラリーを大腸菌BL-21に導入し、LB−アガロース(Amp入り)プレートに展開した。翌日プレートからLBを入れた96穴プレートの各ウエルにクローン化し(同時にマスタープレートを作製)、32℃で一晩インキュベートした後、最終濃度1mMのIPTGで2時間処理した。そして、キアゲンのマニュアルに従い、各ウエルのHisタグ蛋白をNi-NTA(キアゲン)に結合した形で回収した。具体的には、以下の通りである。
【0107】
プレートを遠心(2000rpmで15分)し、培地を廃棄後、各ウエルに50μlの2mg/mlリゾチームを入れ、1時間インキュベートした。液体窒素蒸気を用いて凍結した後に室温にて融解するという操作を2回繰り返した。DNAseで処理した後、150μlの8Mウレア(PH8.0)で全蛋白質を溶解した。8Mウレアで平衡化したNi-NTAゲル(キアゲン)を添加し、30分間インキュベートした。2000rpmで1分間遠心した後、上清を廃棄し、PBSで2回、水で1回洗浄した。
【0108】
▲2▼ 各ウエルにシーケンスグレードのトリプシン(プロメガ)を最終濃度1μg/ml加え、37℃で一晩インキュベートした。
【0109】
▲3▼ 95℃で5分間処理した後、溶液を回収し、同量の2×濃度DH10(DMEMとHam12の混合培地(Gibco)に10%FCSを添加した培地)を加え、これをサンプルとした。なお、液体クロマトグラフィーを用いた解析により、サンプル間の違いはpep7部分の変異差だけであることを確認した。また、マスタープレートを用いて、各クローンの遺伝子配列を解析した。
【0110】
実施例6:新生毛包に特異的なモノクローナル抗体の作製
B57BLマウスの成長期(48から50日目)の皮膚から毛を切り取り、8M尿素、2%SDS、100mMのDTTを含むPBS中で37℃で一晩インキュベートし、タンパク質を抽出した。また、B57BLマウスのヒゲの毛包(毛球部に色素がついているもの;成長期)を実体顕微鏡で採取し、PBS中にホモジナイズした。上記2種類の試料(タンパク質量として0.5mg)を混合し、等量のコンプリートアジュバンドと混合してミセルを作製した。
上記で得たミセル(0.2mg)をラット(Wister)の皮下(3箇所)に分けて投与して免疫した。初回免疫の1ヵ月後に上記と同様に追加免疫を行なった。さらに2週間後に上記と同様に2回目の追加免疫を行なった。2回目の追加免疫の3日後に、免疫ラットから脾臓を取り出し、メッシュにて血球成分を回収した。この血球成分の中には抗体産生細胞が含まれている。上記で回収した血球成分(全量)とマウスミエローマP3U1とをポリエチレングリコール1500を用いて混合し、ダルベッコ/ハムF12混合培地中に懸濁し、96ウエルプレートに各ウエル100μlずつ播いた。翌日、等量(100μl)のHAT培地(シグマ社)を各ウエルに添加した。2日後に各ウエルから150μlずつを吸引廃棄し、150μlの新培地を各ウエルに添加した。96ウエルプレートを37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
【0111】
成長期のB57BLマウスのヒゲの毛包を8M尿素中に超音波粉砕機を用いて溶解した。この溶液にニトロセルロースメンブレンを5分間浸し、PBSで十分に洗浄したものをBioradドットブロッターに装着したものを用いて、上記の96ウエルプレートの各ウエルから回収したハイブリドーマ上清を一次スクリーニングした。先ず、上記で作製したニトロセルロースメンブレンを5%スキムミルクを溶解したトリスバッファー(TBST)でブロッキングした後、当該ニトロセルロースメンブレンを底とする各ウエルにハイブリドーマ上清100μlを添加した。1時間インキュベートした後、トリスバッファーで洗浄し、二次抗体であるホースラディッシュパーオキシダーゼ標識抗ラットIgG(1μg/mlTBST)を添加した。発色基質であるECL試薬(アマシャムファルマシア社製)を添加して、発色の有無により成長期のヒゲの毛包と反応する抗体(全部で50種類)を選出した(一次スクリーニング)。
【0112】
上記の一次スクリーニングで選出した抗体(50種類)について、成長期ヒゲ毛包の凍結切片(10μm)を用いて特異的に反応にするものを選出した(二次スクリーニング)。具体的には、スライドガラス上に成長期ヒゲ毛包の凍結切片を置き、一次スクリーニングで選出されたハイブリドーマ上清を添加し、二次抗体で発色させた。具体的には、クライオスダト(ブライト社)で作成した成長期ヒゲ毛包の凍結切片を−20℃メタノールで処理し、TBSTで1時間ブロッキングを行った後、ハイブリドーマ上清を1時間反応させた。トリスバッファーで洗浄後、FITC標識抗ラットIgG(TBSTに100μg/mlで溶解したもの)を反応させた。トリスバッファーで洗浄後、カバーガラスをかけて、蛍光顕微鏡にて観察を行った。
【0113】
二次スクリーニングの結果、全部で8種類の抗体を選出した。これらの抗体は表皮とは反応せず、毛包に特異的に反応するものであった。これら8種類の抗体を限界希釈法でクローニングした。
【0114】
これら8種類の抗体について、成長期ヒゲ毛包又は休止期ヒゲ毛包をサンプルとしたウエスタンブロットで反応性を調べ、さらに毛包が形成されている14日齢マウス胎児皮膚の切片試料を用いて反応性を調べた。その結果、成長期ヒゲ毛包及び形成途中毛包(新生毛包)と特異的に反応し、休止期ヒゲ毛包とは反応しないモノクローナル抗体としてmAb27を取得した。モノクローナル抗体mAb27を産生するハイブリドーマは、受託番号FERM P−18578として平成13年11月2日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
【0115】
実施例7:発毛活性評価
ICRマウス(妊娠14日令)の背中の皮膚をピンセットではぎ、HCMF中に取り集めた。採取した皮膚をプレート上に移し、柄付きナイフ2本を使用して細かく切断した。切断した皮膚を15ml遠心管に移し、1000rpmで1秒間遠心した。沈殿物にDNase(2mg/ml)50μlを加え、単一にした後、DH10培地10mlを加えて遠心した。沈殿物にDH10培地10mlを加え、懸濁した。先太チップを使用して均等になるように懸濁した後、懸濁物を100μlずつ96wellプレートに注ぎ込んだ。
【0116】
96wellプレート中の懸濁物の上に、実施例5の▲3▼で取得した各サンプル50μlずつを加え、CO2インキュベーター内で37℃で二晩インキュベートした。この間、乾燥を防ぐためにwell間のすき間にPBSを入れ、周りはシールしておいた。インキュベート後、8Mウレア100μlを加えた。
【0117】
バイオラド製のDot blotter(96well)に、TBSに浸しておいたろ紙とニトロセルロースメンブレンをセットし、3組用意した。メンブレン2枚(1枚(パネルA)はモノクローナル抗体mAb27用、もう1枚(パネルB)は全上皮を検出する抗E−カドヘリン抗体(タカラ)用)に10μlずつアプライした。液体を吸引し、メンブレンにブロットした後、メンブレンを取り外し室温で10分間乾燥し、TBSで1回洗浄後、スキムミルクで室温で1時間ブロッキングした。次いで、一次抗体であるモノクローナル抗体mAb27(ハイブリドーマの培養上清を1/30に希釈したもの)または抗E−カドヘリン抗体(2000倍希釈;タカラ)と一緒に室温で1時間インキュベートした。TBSで10分間の洗浄を2回繰り返した。次いで、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgGまたはペルオキシダーゼ標識抗ラビットIgG(アマシャム社)を1/1000に希釈したものを二次抗体として反応させ、TBSで10分間の洗浄を2回繰り返した後、ECL plus(アマシャム社)を用いて反応の強さを調べた。
【0118】
実施例8:データ解析
ECLで検出したもののオートラフィルムをフジフイルムルミノイメージアナライザ(LAS-1000plus)を用いて取り込み、パネルAからはモノクローナル抗体mAb27の抗原の量(新生毛包誘導の指標)を測定し、パネルBからはE−カドヘリンの量(上皮細胞の全体数の指標)を測定した。
パネルA及びパネルBの測定量の割合をコンピュータ解析して、単位上皮細胞当たりの発毛誘導の度合いを解析した。
【0119】
合計960個のサンプルについて解析した結果、パネルBの測定量に対してAの測定量が高い解析例(即ち、新生毛包誘導能が高い解析例)の上位65サンプルのpep7類似配列を図4に示す。また、これら65クローンのアミノ酸配列の構造の規則性も図4に示す。これら65クローンのアミノ酸配列は配列番号16から80に示す。なお。図4及び配列表における表記X及びXaaは、不明のアミノ酸残基を示す。
【0120】
パネルBの測定量に対してAの測定量が高い解析例は、図4の右部に示す。これらの具体的なアミノ酸配列は、配列表の配列番号20、55、66、68、74、75、77、78及び80である。これらの活性は、アミノ酸配列(I)を有するペプチドの約3倍である。
【0121】
65クローンのうちには、7アミノ酸残基から成る配列番号19に記載のアミノ酸配列を有するペプチドがある。このペプチドは、アミノ酸配列 Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Asp (I)(配列番号1)のペプチドのN末端からの7アミノ酸残基に対応する。従って、この7アミノ酸残基が毛成長促進作用を有するのに必要な部分であると考えられる。
【0122】
また、65クローンをみると、Cys残基は他のアミノ酸で置換されておらず、本発明のオリゴペプチドにおいては、Cys残基は重要であると考えられる。
さらに、65クローンのうち、Glu-Gln-Ser-Cys-Aspで表されるアミノ酸配列は比較的よく保存された配列であり(23クローンで保存されている)、Glu-Gln-Ser-Cysで表されるアミノ酸配列はさらによく保存されている(30クローンで保存されている)。
【0123】
本実施例では、960個のサンプルから新生毛包誘導能が高いペプチドが65クローン得られた。実施例3に示したように二次スクリーニングでは2.5×105クローンのペプチドが得られたので、これらの中には上記の65クローン以外にも同様の活性を有するペプチドがあると考えられる。本発明者の解析によれば、7アミノ酸残基のうちの3アミノ酸残基を置換してもよく、個々のアミノ酸の候補が8種類であるとすれば、それらの組み合わせの総数は73×83=17920種類となる。17920クローンが2.5×105のライブラリーに示す割合は7.1%である。一方、本実施例で取得した65クローンが960個の母集団に占める割合は6.8%である。上記の仮定は、本実施例の結果(スクリーニングの結果、陽性となったペプチドの出現率)と非常によく一致する。
【0124】
上記規則性に合致する以下の出現しなかったものについても、例えば、下記の10種のオリゴペプチドについて合成し、上記と同様に発毛活性について評価すると、活性が認められる。
SIDQSCD (配列番号81)
SIEESCD (配列番号82)
SIEQACD (配列番号83)
SIEQSCR (配列番号84)
SIEQFCH (配列番号85)
SFDQSCD (配列番号86)
SFEESCD (配列番号87)
SFEQACD (配列番号88)
SFEQSCR (配列番号89)
SFEQFCH (配列番号90)
【0125】
参考例1:改変オリゴペプチド
下記のアミノ酸配列で表されるオリゴペプチド(A)、(B)、(C)及び(D)をFmocを用いた固相法により合成した。
Figure 0004168624
【0126】
次に、合成したオリゴペプチドを架橋剤(ビスマレイミドヘキサン、品名BMH、ピアス社製)を用いて二量化してホモ二量体を作成した。具体的には、同架橋剤の使用説明書に従った。
【0127】
得られた反応混合物中には、ホモ二量体オリゴペプチドだけではなく、架橋剤が結合した単量体オリゴペプチドも含まれている。
【0128】
また、上記と同様にして、オリゴペプチド(I)及び(II)を等量で用いてヘテロ二量体オリゴペプチドを作製した。なお、得られた反応混合物中には、ヘテロ二量体オリゴペプチドだけではなく、架橋剤が結合した単量体オリゴペプチドも含まれている。
【0129】
合成した各オリゴペプチド(A)、(B)及び(C)は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、HPLC及びMassによって純度が90%以上であることを確認した。
HPLCの条件は以下のとおりである。
カラム:ODS-UG3(モノメリックODS、野村化学製)内径1.0 mm、全長100 mm
測定:室温(25℃)
検出:UV 214 nm、280 nm
溶出溶媒:溶媒A及び溶媒Bのグラジエント(溶媒A:0.1% トリフルオロ酢酸;溶媒B:90%アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸、5分後(溶媒B:0%)から55分(溶媒B:55%)の直線濃度勾配)
流速:75 ml/ml
リテンションタイム
pep7: 21.52分(dimer), 20.59分(monomer)
【0130】
参考例2:改変体オリゴペプチドの毛成長促進作用の評価
12日目のICRマウス胎児の上アゴ皮膚組織を実体顕微鏡で採取し、左と右に分けて5頭分を回収した。回収した5頭分の皮膚を左(コントロール用)と右(被験オリゴペプチド用)を別々に5個ずつ一枚のヌクレポアメンブレン(孔径8μm、直径13mm)の上に載せ、実体顕微鏡で観察して外側が上になるようにした。1%BSAを含むダルベッコMEM/ハムF12培地500μlを24ウエルディッシュの2ウエルに添加し、片方には被験オリゴペプチド溶液(溶媒はPBS)を最終濃度20μMとなるように添加し、他方には溶媒(PBS)を対照として同量入れた。被験オリゴペプチドとしては、参考例1で作成したものを使用した。
【0131】
皮膚組織を載せたメンブレン1枚ずつを上記のウエル中の溶液に浮かべ、37℃で6日間培養した。メンブレンから5個の組織片をSDSサンプルバッファ(SDS 0.02g/ml、グリセロール 0.2g/ml、pH6.8)100μl中に回収し、超音波粉砕器により溶解した。対照も同様に処理した。上記処理で得た溶液をSDS−PAGE(アクリルアミド4〜20%)にて電気泳動後(35mA、1.5時間)、PVDF膜にトランスファーし、5%スキムミルクを含むトリス緩衝液(TBST)中で1時間インキュベートした。モノクローナル抗体mAb27(TBST中10μg/ml)と1時間反応後、TBSにて十分に洗浄し、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG(アマシャム社)をTBSTで1/1000に希釈したものを二次抗体として反応させ、十分に洗浄後、ECLキット(アマシャム社)を用いてmAb27の反応の強さを調べた。
【0132】
得られた結果を図5及び図6に示す。
図5における各レーンの被験オリゴペプチドは以下の通りである。
左から1番目:Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Asp-Gln-Asp-Glu (A)
左から2番目:対照
左から3番目:Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Asp-Gln-Asp-Glu (B)
左から4番目:対照
左から5番目:Ser-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Asp-Gln-Asp-Glu (C)
左から6番目:対照
図5の結果から分かるように、左から1番目、3番目及び5番目のレーンのバンドはそれぞれ左から2番目、4番目及び6番目のレーンのバンドよりも濃かった。これらの結果は、被験したオリゴペプチド(A)、(B)及び(C)は発毛活性を有することを実証するものである。
【0133】
図6における各レーンの被験オリゴペプチドは以下の通りである。
左から1番目:オリゴペプチド(A)とオリゴペプチド(B)を処理後に混合したもの
左から2番目:対照
左から3番目:オリゴペプチド(A)とオリゴペプチド(B)を混合後に処理したもの
左から4番目:対照
左から5番目:Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Asp-Gln (D)
左から6番目:対照
図6の結果から分かるように、オリゴペプチド(A)とオリゴペプチド(B)を処理後に混合したものも、処理後に混合したものと同様の発毛活性が認められた。従って、ヘテロ二量体オリゴペプチドも発毛活性を有することが実証された。また、C末端側の2アミノ酸を削除したオリゴペプチド(D)にも発毛活性が認められた。
【0134】
実施例9:
参考例1と同様に上記した配列番号81から90に記載のアミノ酸配列を有する10種のオリゴペプチドについてCの位置を前に1個、2個、3個ずらしたものを合成し、上記と同様に発毛活性について評価すると、活性が認められる。即ち、Cの位置を変更したアミノ酸配列 Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Asp(II)(配列番号2)、 Ser-Ile-Glu-Cys-Gln-Ser-Asp(III)(配列番号3)またはSer-Ile-Cys-Glu-Gln-Ser-Asp(IV)(配列番号4)も毛成長促進作用を有することが分かった。これらのペプチドの個々のアミノ酸についても、アミノ酸配列Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Asp (I)(配列番号1)の場合と同様に置換できる。例えば、配列番号48に示すアミノ酸配列を有するぺプチドは、アミノ酸配列 Ser-Ile-Glu-Gln-Cys-Ser-Asp(II)(配列番号2)を有するペプチドのIleをAsnに、GlnをProに置換した例であり、このように置換しても毛成長促進作用を有することが実証された。
【0135】
【発明の効果】
本発明のオリゴペプチドは毛成長促進作用を有しており、毛成長促進剤などの医薬の有効成分として有用である。
【0136】
【配列表】
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【0137】
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【0138】
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【0232】
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【0233】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、EPMpep7類似ペプチドライブラリーを解析した結果を示す。
【図2】図2は、EPMpep7類似ライブラリーの内訳を調べた結果を示す。
【図3】図3は、EPMpep7類似ライブラリーに存在する理論値を示す。
【図4】図4は、合計960個のサンプルについて解析した結果、新生毛包誘導能が高い解析例の上位65サンプルのpep7類似配列、並びにこれら65アミノ酸配列の構造の規則性を示す。
【図5】図5は、ホモ二量体オリゴペプチドを用いた発毛活性検定の結果を示す。
【図6】図6は、ヘテロ二量体オリゴペプチド及びホモ二量体オリゴペプチドを用いた発毛活性検定の結果を示す。

Claims (3)

  1. 配列表の配列番号20、55、66、68、74、75、77、78又は80のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチド。
  2. 請求項1に記載のオリゴペプチドの修飾オリゴペプチドであって、修飾が架橋による二量化である修飾オリゴペプチド。
  3. 請求項1に記載のオリゴペプチド、請求項2に記載の修飾オリゴペプチド、または生理学的に許容されるそれらの塩を有効成分として含む医薬。
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