JP4168191B2 - スルホニウム塩化合物及びそれを含有する感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光照射により容易に分解して酸を発生させる光酸発生剤として有用な新規なスルホニウム塩化合物及びそれを含有する感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイス、例えばDRAMなどに代表される高集積回路素子では、一層の高密度化、高集積化、あるいは高速化の要望が高い。それに伴い、各種電子デバイス製造分野では、ハーフミクロンオーダーの微細加工技術の確立、例えば、微細パターン形成のためのフォトリソグラフィー技術開発に対する要求がますます厳しくなっている。近年では、ハーフミクロン以下の線幅からなる超微細パターンの加工が必要とされるようになってきた。超微細パターンを形成するためにフォトリソグラフィーに用いられる露光装置の使用波長は、短波長化し、KrFエキシマーレーザー(波長248nm)、ArFエキシマーレーザー(波長193nm)等の遠紫外線や電子線及びX線が実用化または検討されている。
【0003】
このような露光波長に適したレジストとして、化学増幅型のものが提案されている。前記化学増幅型レジストは、光照射により強酸を発生する化合物(光酸発生剤)と、酸により疎水性の基を分解し、親水性の物質に変化させる化合物を含む。具体的には、米国特許第4491628号には、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)の水酸基をブトキシカルボニル基でブロックしたポリマーと光照射により酸を発生する化合物であるオニウム塩を含むポジ型レジストが開示されている。また、M.J.O'Brien,J.V.Crivello,SPIE Vol.920,Adovances in Resist Tecnology and Processing,p42,(1988)において、m−クレゾールノボラック樹脂とナフタレン−2−カルボン酸−tert−ブチルエステルと、トリフェニルスルホニウム塩を含むポジ型レジストが発表されている。更に、H.Ito,SPIE Vol.920,Adovances in ResistTecnology and Processing,p33,(1988)において、2,2−ビス(4−tert−ブトキシカルボニルオキシフェニル)プロパンやポリフタルアルデヒドとオニウム塩を含むポジ型レジストが発表されている。
【0004】
また、従来、保護用、装飾用及び絶縁用塗料、注封材料、印刷インキ、シーラント、接着剤、フォトレジスト、電線絶縁物、織物被覆、印刷用版面などの用途に用いられるものとして、光酸発生剤を含むエポキシ樹脂組成物が知られている。このような光酸発生剤としては、N−イミドスルホネート、N−オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネート、ピロガロールのトリスメタンスルホネート等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した光酸発生剤は、450nmから300nmの範囲における露光では、光分解効率が十分ではない。また、有機ハロゲン化合物(米国特許第3515552号、米国特許第3536489号、米国特許第3779778号)においては、450nmから300nmの露光波長により十分な酸を発生することは知られているが、このような有機ハロゲン化物は、ハロゲン化水素酸を形成する化合物であり、工業的に使用することが問題となる。
【0006】
特開平5−181279号公報には、1−ナフトキノン−2−ジアゾ−4−スルホン酸エステルが好適な酸発生剤として有用であると記載されている。かかるエステルは、J.J.Grunwald,C.Gal,S.Eidelman,SPIE Vol.1262,Adovances in Resist Technology and Processing VII,p444,(1990)で発表されているように、光照射によりカルボン酸と、それよりも強い酸であるスルホン酸を生じることが知られている。しかし、このスルホン酸では十分な酸強度を得ることが出来ていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、増感剤を用いることなく、450nmから300nmの波長で露光することにより、光分解効率が十分であり、且つ強酸を発生する新規光酸発生剤及びそれを含有する感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、所定構造を有する新規スルホニウム塩化合物が、増感剤を用いることなく、450nmから300nmの波長で露光することにより、光分解効率が十分であり、且つ強酸を発生する新規光酸発生剤として有用であり、また、これを光酸発生剤として含有させた感光性樹脂組成物は、露光により発生する酸の拡散性、揮発性が小さく、露光後の加熱に対してパターン形状が安定した、優れた化学増幅型レジストとして有用なものであることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
かかる本発明の第1の態様は、下記一般式(I)で表される構造を有することを特徴とするスルホニウム塩化合物にある。
【0010】
【化4】
【0011】
(式中、R1、R2は炭素環式もしくは複素環式アリール基、またはアルキル基であって、同一または互いに異なってもよく、R1及びR2が互いにつながって環を形成してもよい。また、X−は対イオンを表し、X−で示される対イオンが下記一般式(II)で表される陰イオン、下記一般式(III)で示されるビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオン、Cl−、Br−、I−、BF4 −、AsF6 −、SbF6 −、及びPF6 −からなる群から選択される陰イオンである。)
【0013】
【化5】
CkHmFnSO3 − (II)
【0014】
(式(II)においてmが0の場合、kは1〜8の正の整数であり、パーフルオロアルキルスルホネートイオンから選択される陰イオンである。
式(II)においてnが0の場合、kは1〜10の正の整数であり、アルキルスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、及びアルキルベンゼンスルホネートイオンからなる群から選択される陰イオンである。
式(II)においてm及びnが同時に存在する場合、フッ素置換ベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオン、及びフッ素置換アルキルスルホネートイオンからなる群から選択される陰イオンである。)
【0017】
【化6】
(CpF2p+1SO2)2N− (III)
【0018】
(式中pは1〜8の正の整数を示す。)
【0019】
本発明の第2の態様は、第1の態様のスルホニウム塩化合物の少なくとも一種を光酸発生剤として含有することを特徴とする感光性樹脂組成物にある。
【0020】
本発明の第3の態様は、第2の態様の感光性樹脂組成物が、前記光酸発生剤の少なくとも一種の他、酸分解性基を有することによりアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の樹脂であって、酸の作用により酸分解性基が分解した時にアルカリ可溶性となる樹脂を含有するポジ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする感光性樹脂組成物にある。
【0021】
本発明の第4の態様は、第2の態様の感光性樹脂組成物が、前記光酸発生剤の少なくとも一種の他、アルカリ可溶性樹脂と、このアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性を阻止する作用を有し且つ酸の作用により該アルカリ溶解性阻止能を低下もしくは消失するか又は上記アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性を促進させる作用を有する化合物とを含有するポジ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする感光性樹脂組成物にある。
【0022】
本発明の第5の態様は、第2の態様の感光性樹脂組成物が、前記光酸発生剤の少なくとも一種の他、アルカリ可溶性樹脂と、酸の作用で前記アルカリ可溶性樹脂を架橋し得る化合物とを含有するネガ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする感光性樹脂組成物にある。
【0023】
以下、本発明の構成をさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明のスルホニウム塩化合物を表す上記一般式(I)において、R1、R2は有機基であって、同一であっても、また互いに異なってもよい。
【0025】
ここで、有機基としては、好ましくは、炭素環式または複素環式アリール基を挙げることができる。このアリール基は、C1〜C30の炭化水素基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルキルチオ基、C1〜C30のジアルキルアミノ基、C1〜C30のアルコキシカルボニル基、C1〜C30のアシロキシ基、シリルオキシ基、C1〜C30のアシル基、炭酸エステル基、カルボン酸エステル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基もしくは水酸基等の置換基を有してもよい。
【0026】
また、C1〜C30の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、t−アミル基、デカニル基、ドデカニル基、ヘキサデカニル基などのアルキル基や、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデカニル基、シクロヘキサデカニル基のようなシクロアルキル基や、フェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられ、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0027】
C1〜C30のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、t−アミロキシ基、n−ヘキシロキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデカンオキシ基などが挙げられ、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0028】
C1〜C30のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、t−アミルチオ基、デカニルチオ基、ドデカニルチオ基、ヘキサデカニルチオ基、などのアリファティックなアルキルチオ基やフェニルチオ基、ベンジルチオ基、ナフチルチオ基などのアリールチオ基などが挙げられ、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0029】
C1〜C30のジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジsec−ブチルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジドデカニルアミノ基、ジヘキサデカニルアミノ基、などが挙げられ、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0030】
C1〜C30のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、もしくはt−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、t−アミロキシカルボニル基、n−ヘキシロキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデカンオキシカルボニル基などが挙げられ、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0031】
C1〜C30のアシロキシ基としては、例えば、アセトキシ基、エチリルオキシ基、プロピリルオキシ基、イソプロピリルオキシ基,n−ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、t−ブチリルオキシ基、t−アミリルオキシ基、ペンタンカルボニルオキシ基、ヘキサンカルボニルオキシ基、ヘプタンカルボニルオキシ基、オクタンカルボニルオキシ基、デカンカルボニルオキシ基、ドデカンカルボニルオキシ基、ヘキサデカンカルボニルオキシ基のようなシクロアルカンカルボニルオキシ基などが挙げられ、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0032】
C1〜C30のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、t−ブチルカルボニル基、t−アミルカルボニル基などが挙げられ、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
【0033】
シリルオキシ基としては、例えば、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。炭酸エステル基としては、例えばt−ブトキシカルボニルオキシ基などが挙げられる。カルボン酸エステル基としては、例えばt−ブトキシカルボニルメチルオキシ基などが挙げられる。ハロゲン基としては例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0034】
また、R1及びR2は、互いに結合して環を形成してもよく、この場合には、上記炭素骨格を含む二価の基:−R1−R2−となる。このような二価の基としては、R1及びR2が飽和炭素骨格を有してつながった炭素数3〜9のシクロアルキル基、より具体的には、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などのポリメチレン基などを好適な基の例として挙げることができる。一般に、二価の基−R1−R2−がSとともに形成する環は、好ましくは4員環〜8員環、より好ましくは5員環〜6員環を構成するとよい。
【0035】
なお、以上例示した好適な基は例示であり、本発明を限定するものではないのは勿論である。
【0036】
一般式(I)で示されるスルホニウム塩化合物中、X−で示される対イオンは従来より、この種の光酸発生剤に用いられている陰イオンX−を選択することができ、具体的には、上述した一般式(II)及び一般式(III)を挙げることができる。
【0037】
一般式(II)において、mが0の場合には、パーフルオロアルキルスルホネートイオンであり、kは1〜8の正の整数が好ましく、このとき、nは2k+1で示される。具体的には、例えば、CF3SO3 −(トリフルオロメタンスルホネートイオン)、C4F9SO3 −(ノナフルオロブタンスルホネートイオン)、C8F17SO3 −(ヘプタデカフルオロオクタンスルホネートイオン)等を好適な例として挙げることができるが、好適なパーフルオロアルキルスルホネートイオンはこれらだけに限定されるものではない。
【0038】
一般式(II)において、nが0の場合には、kは1〜10の正の整数が好ましく、アルキルスルホネートイオンの場合には、mは2k+1で示される。具体的には、例えばCH3SO3 −(メタンスルホネートイオン)、C2H5SO3 −(エタンスルホネートイオン)、C9H19SO3 −(1−ノナンスルホネートイオン)等を好適な例として挙げることができる。また、アルキルスルホネートイオンとして、橋架け環式アルキルスルホネートイオン、例えば、10−カンファースルホネートイオン等を好適な例として挙げることができる。なお、好適なアルキルスルホネートイオンはこれらだけに限定されるものではなく、また、好適な橋架け環式アルキルスルホネートイオンは上述したものに限定されるものではない。さらに、アルキルスルホネートイオン以外にも、ベンゼンスルホネートイオン、及びアルキルベンゼンスルホネートイオンなどを挙げることができる。
【0039】
一般式(II)において、m及びnが同時に存在する場合には、フッ素置換ベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルスルホネートイオンなどとなる。フッ素置換ベンゼンスルホネートイオンの具体例としては、例えば、2−フルオロベンゼンスルホネートイオン、4−フルオロベンゼンスルホネートイオン、2,4−ジフルオロベンゼンスルホネートイオン、ペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等を好適な例として挙げることができるが、好適なフッ素置換ベンゼンスルホネートイオンはこれらだけに限定されるものではない。また、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオンとしては、例えば2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートイオン、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネートイオン、2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネートイオン、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネートイオン等を好適な例として挙げることができるが、好適なフッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオンはこれらだけに限定されるものではない。さらに、フッ素置換アルキルスルホネートイオンとしては、例えば、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートイオンが好適な例として挙げられるが、好適なフッ素置換アルキルスルホネートイオンはこれだけに限定されるものではない。
【0040】
一方、一般式(III)で示されるのは、例えば、ビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンであり、式中、pは1〜8の正の整数であるのが好ましい。ビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドイオン等を好適な例として挙げることができる。なお、好適なビス(パーフルオロアルキルスルホン)イミドイオンはこれらだけに限定されるものではない。
【0041】
本発明において、X−で示される対イオンとしては、その他、BF4 −(テトラフルオロボレートイオン)、AsF6 −(ヘキサフルオロアルセネートイオン)、SbF6 −(ヘキサフルオロアンチモネートイオン)、PF6 −(ヘキサフルオロホスフェートイオン)などのフッ素化物イオン、並びにCl−(塩素イオン)、Br−(臭素イオン)、I−(ヨウ素イオン)等のハロゲン化物イオン等の無機陰イオンを好ましい対イオンの例として挙げることができる。なお、好適な無機陰イオン種はこれらに限定されるものではない。
【0042】
以上説明した本発明の新規スルホニウム塩化合物は、光酸発生剤として有用であり、この光酸発生剤の少なくとも1種を含有させることにより、本発明の感光性樹脂組成物を得ることができる。すなわち、本発明の光酸発生剤は、フォトレジスト組成物のポリマー重合時の光開始剤、ラジカル光開始剤、又は有機化合物の保護基を脱離させる光酸発生剤として用いることができる。
【0043】
また、本発明の光酸発生剤を用いることにより、感光性樹脂組成物を得ることができる。かかる感光性樹脂組成物、すなわち、化学増幅型レジストとしては、ポジ型とネガ型とがある。ポジ型としては、酸との反応により分解してアルカリ可溶性となる基を有する樹脂及び光酸発生剤からなる2成分系と、アルカリ可溶性樹脂、光酸発生剤、及び酸分解性基を有し、アルカリ可溶性樹脂に対して不溶化能を有する溶解阻止化合物からなる3成分系とに大別できる。すなわち、光酸発生剤の少なくとも一種と、酸分解性基を有することによりアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の樹脂であって、酸の作用により酸分解性基が分解した時にアルカリ可溶性となる樹脂を含有するポジ型感光性樹脂組成物とを有するもの、又は、光酸発生剤の少なくとも一種と、アルカリ可溶性樹脂と、このアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性を阻止する作用を有し且つ酸の作用により該アルカリ溶解性阻止能を低下もしくは消失するか又は上記アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性を促進させる作用を有する化合物とを含有するポジ型感光性樹脂組成物である。また、ネガ型としては、アルカリ可溶性樹脂と酸により可溶性樹脂を架橋させる作用を有する架橋剤から成る系が考えられ、すなわち、光酸発生剤の少なくとも一種と、アルカリ可溶性樹脂と、酸の作用で前記アルカリ可溶性樹脂を架橋し得る化合物とを含有するネガ型感光性樹脂組成物である。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の光酸発生剤を含有するものであれば、その他の成分は従来から知られているものを用いることができる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは各成分が有機溶剤に溶解されている。ここで、本発明で用いることができる有機溶剤は、従来から一般的に用いられているものを用いることができる。
【0046】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて種々の添加剤を含有することができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ソルビトールなどの水酸基を有する水溶性の希釈剤、あるいは各種界面活性剤、接着助剤、保存安定剤などを含有することができる。また、蛍光体、あるいは無機粉体などをさらに含有させてもよいことは勿論である。さらに、従来から使用されている各種添加剤を必要に応じて添加できることはいうまでもない。
【0047】
本発明の光酸発生剤となるスルホニウム塩化合物の一製造例を以下に説明する。
【0048】
本発明のスルホニウム塩化合物を合成するには、下記式に示すように、メタンスルホン酸中、五酸化二リンを触媒として、1,2−ナフトキノン−2−ジアジドにジアルキルスルホキシドを反応させ、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジアルキルスルホニウム メタンスルホン酸塩を形成する。
【0049】
【化7】
【0050】
ここで、1,2−ナフトキノン−2−ジアジドは特開2000−072740号公報に記載の方法に基づき合成した。また、ジアルキルスルホキシドはジアルキルスルフィドを過酸化水素で酸化することにより容易に得ることができる。
【0051】
ここで、触媒であるP2O5は、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド 1モルに対して、0.1〜3.0モル、好ましくは0.5〜1.5モル用いる。メタンスルホン酸は、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド 1モルに対して、1〜10モル、好ましくは4〜6モル用いる。
【0052】
また、この場合の反応温度は、通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃であり、反応時間は、通常1〜12時間、好ましくは3〜8時間である。反応終了後、水を添加して反応を停止する。
【0053】
合成した1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジアルキルスルホニウムメタンスルホン酸塩は、反応溶液にヨウ化カリウムを加え、メタンスルホン酸イオンをヨウ素イオンに塩交換することにより取り出し、精製後、次の工程に用いても良いが、一連の反応において通常この溶液のまま次の反応に供することができる。
【0054】
本発明の光酸発生剤において、対イオンの塩交換を行う場合には、このように製造した1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジアルキルスルホニウム メタンスルホン酸塩の水溶液に、上記一般式(II)や(III)に記載の対イオンやCl−、Br−、I−、BF4 −、AsF6 −、SbF6 −、及びPF6 −などの対イオンを含む各種酸あるいは塩を、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジアルキルスルホニウム メタンスルホン酸 1モルに対して1〜2モル、好ましくは1.05〜1.2モルを加える。なお、反応溶媒としては、塩素系溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム等を用いるのが好ましい。この反応温度は、10〜50℃、好ましくは20〜30℃である。反応終了後、水層を分離し、更に有機層を水で洗浄する。洗浄終了後、適当な再結晶溶媒で結晶化させることにより、目的とする光酸発生剤を得ることができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジメチルスルホニウム 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートの合成
メタンスルホン酸4.81g(0.05モル)に五酸化二リン1.42g(0.01モル)を加え、5℃に冷却させた。次いでジメチルスルホキシド0.78g(0.01モル)を添加し、更に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド1.70g(0.01モル)を添加して室温で8時間反応した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却し、そこへジクロロメタン25mlを添加した。次いで水を反応液温が20℃以上にならないように滴下し、滴下終了後20分攪拌した後に、水層を分取した。この有機層を分離後、水層をトルエン30mlで二回洗浄し、ノナフルオロブタンスルホン酸カリ3.38g(0.01モル)を添加し、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、乾燥し、目的物の粗結晶を2.53g得た(収率47%)。この粗結晶をメタノール、イオン交換水で再結晶を行い、1H−NMRより、下記式で示される1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジメチルスルホニウム 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートであることを確認した。
【0057】
【化8】
【0058】
1H−NMR(CD3COCD3、内部標準物質テトラメチルシラン): δ 3.57 (s, 6H, CH3), 7.70 (ddd, J = 1.2, 7.4, 8.0 Hz, 1H, ArH), 7.91 (ddd, J = 1.4, 7.4, 8.2 Hz, 1H, ArH), 8.10 (ddd, J = 0.4, 1.2, 8.2 Hz, 1H, ArH), 8.36 (ddd, J = 0.4, 1.4, 8.0 Hz, 1H, ArH), 8.77 (s, 1H, C=CH).分解温度:134.9℃
【0059】
(実施例2)
1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−シクロペンタチアニオ 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートの合成
メタンスルホン酸48.06g(0.50モル)に五酸化二リン14.20g(0.10モル)を加え、5℃に冷却させた。次いでテトラメチレンスルホキシド10.42g(0.10モル)を添加し、更に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド17.02g(0.10モル)を添加して室温で3時間反応した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却し、そこへ水を反応液温が20℃以上にならないように滴下した。次いでこの水層をジクロロメタン300mlで二回洗浄し、ノナフルオロブタンスルホン酸カリ20.29g(0.06モル)を添加し、室温で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、乾燥し、目的物の粗結晶を23.63g得た(収率42%)。この粗結晶をメタノール、イオン交換水で再結晶を行い、1H−NMRより、下記式で示される1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−シクロペンタチアニオ 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートであることを確認した。
【0060】
【化9】
【0061】
1H−NMR(CD3COCD3、内部標準物質テトラメチルシラン): δ 2.55-2.59 (m, 2H, CH2), 2.73-2.77 (m, 2H, CH2), 3.98-4.05 (m, 2H, CH2), 4.25-4.32 (m, 2H, CH2), 7.72 (ddd, J = 1.2, 7.3, 8.0 Hz, 1H, ArH), 7.93 (ddd, J = 1.4, 7.3, 8.2 Hz, 1H, ArH), 8.17 (ddd, J = 0.4, 1.2, 8.2 Hz, 1H, ArH), 8.36 (ddd, J = 0.4, 1.4, 8.0 Hz, 1H, ArH), 8.47 (s, 1H, C=CH).分解温度: 134.1℃
【0062】
更に、この1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−シクロペンタチアニオ1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートの光反応性を評価した。すなわち、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−シクロペンタチアニオ 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートを5.74mg/lの濃度で含むアセトニトリル溶液を調製し、この溶液にi線(365nm)の光を照射してその吸収スペクトル変化を観察した。その結果を図1に示す。
【0063】
照射時間が長くなるにつれて1,2−ナフトキノン−2−ジアジド構造に起因する380nmの吸収が次第に減少していることから、i線(365nm)の照射により、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−シクロペンタチアニオ 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートから酸が発生していることが判る。
【0064】
(実施例3)
1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジフェニルスルホニウム 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートの合成
メタンスルホン酸4.81g(0.05モル)に五酸化二リン1.42g(0.01モル)を加え、5℃に冷却させた。次いでジフェニルスルホキシド2.34g(0.01モル)を添加し、更に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド17.02g(0.10モル)を添加して5℃で5時間反応した。反応終了後、反応液を5℃まで冷却し、そこへ水を反応液温が20℃以上にならないように滴下した。次いでこの水層をトルエン30mlで二回洗浄し、この水層にジクロロメタン30ml、ノナフルオロブタンスルホン酸カリ3.38g(0.01モル)を添加し、室温で2時間攪拌した。有機層を分取し、この有機層をイオン交換水30.0gで6回洗浄した後、濃縮し、酢酸ブチル50mlを添加し、目的物を結晶化させ、その後室温で1時間熟成した後濾別、乾燥し、目的物を0.65g得た(析出10%)。1H−NMRより、下記式で示される1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジフェニルスルホニウム 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートであることを確認した。
【0065】
【化10】
【0066】
1H−NMR(CD3COCD3、内部標準物質テトラメチルシラン) :δ 7.55 (s, 1H, C=CH2), 7.58 (ddd, J = 1.2, 7.5, 8.0 Hz, 1H, ArH), 7.68-7.73 (m, 5H, ArH), 7.78-7.83 (m, 7H, ArH), 8.30 (ddd, J = 0.4, 1.2, 8.0 Hz, 1H, ArH).
分解温度:134.7℃
【0067】
(試験例)
上記実施例1〜3の3種類の化合物のg線(436nm)、h線(405nm)及びi線(365nm)のモル吸光係数を記載する。
【0068】
【表1】
【0069】
(実施例4)
1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−シクロペンタチアニオ 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネート30mg、日ソー製VP−15000の水酸基の35モル%をエトキシエチル基で保護したポリマー1.50gをPGMEA8.5gに溶解し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過してレジスト液を調製した。このレジストをHMDS処理を施したシリコンウエハーに回転塗布し、90℃で60秒間プレベークし、膜厚0.72μmのレジスト膜を得た。この膜に、365nmの光で露光を行い、90℃で60秒間ポストベークを行った。その後現像液(2.38%TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)により、ブレイクスルータイム(一定のエネルギーを照射し、現像により残膜が0になる秒数)の有無を確認した。
【0070】
この結果、100mJ/cm2では122秒、500mJ/cm2では40秒にブレイクスルータイムが確認されたことから、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−シクロペンタチアニオ 1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタンスルホネートは365nmの光照射により酸を発生し、この酸により日ソー社製VP−15000の水酸基の35モル%をエトキシエチル基で保護したポリマーの保護基が脱離し、現像液に対して難溶性から可溶性になったことがわかった。
【0071】
(比較例1)
m−クレゾールの1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エステル30mg、日ソー社製VP−15000の水酸基の35モル%をエトキシエチル基で保護したポリマー1.50gをPGMEA8.5gに溶解し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過してレジスト液を調整した。このレジストをHMDS処理を施したシリコンウエハーに回転塗布し、90℃で60秒間プレベークし、膜厚0.72μmのレジスト膜を得た。この膜に、365nmの光で露光を行い、90℃で60秒間ポストベークを行った。その後現像液(2.38%TMAH)により、ブレイクスルータイムの有無を確認した。
【0072】
この結果、500mJ/cm2の露光で200秒現像しても、残膜率が70%もあり、ブレイクスルータイムは確認されなかった。光照射により発生するスルホン酸は、日ソー社製VP−15000の水酸基の35モル%をエトキシエチル基で保護したポリマーの保護基を脱離できるほどの強酸ではないことがわかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明のスルホニウム塩化合物、すなわち、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−ジアルキルスルホニウム塩誘導体は、g線、h線、i線、KrFエキシマーレーザー等の放射線の照射により酸を発生する新規で有用な光酸発生剤であり、化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤などとして利用できる。特にi線露光において光退色することから、i線用光酸発生剤として有用である。
【0074】
したがって、かかる光酸発生剤を用いることにより、露光により発生する酸の拡散性、揮発性が小さく、露光後の加熱に対してパターン形状が安定した、優れた化学増幅型レジストとして有用な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の化合物の吸収変化を示す図である。
Claims (5)
- 下記一般式(I)で表される構造を有することを特徴とするスルホニウム塩化合物。
式(II)においてnが0の場合、kは1〜10の正の整数であり、アルキルスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、及びアルキルベンゼンスルホネートイオンからなる群から選択される陰イオンである。
式(II)においてm及びnが同時に存在する場合、フッ素置換ベンゼンスルホネートイオン、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートイオン、及びフッ素置換アルキルスルホネートイオンからなる群から選択される陰イオンである。)
- 請求項1のスルホニウム塩化合物の少なくとも一種を光酸発生剤として含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 請求項2の感光性樹脂組成物が、前記光酸発生剤の少なくとも一種の他、酸分解性基を有することによりアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の樹脂であって、酸の作用により酸分解性基が分解した時にアルカリ可溶性となる樹脂を含有するポジ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 請求項2の感光性樹脂組成物が、前記光酸発生剤の少なくとも一種の他、アルカリ可溶性樹脂と、このアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性を阻止する作用を有し且つ酸の作用により該アルカリ溶解性阻止能を低下もしくは消失するか又は上記アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性を促進させる作用を有する化合物とを含有するポジ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 請求項2の感光性樹脂組成物が、前記光酸発生剤の少なくとも一種の他、アルカリ可溶性樹脂と、酸の作用で前記アルカリ可溶性樹脂を架橋し得る化合物とを含有するネガ型感光性樹脂組成物であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
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