JP4167778B2 - 光学要素の収差評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学式記録再生装置用の光学ヘッド等の光学要素の収差を評価する方法及び装置に関する。
【0002】
【発明の背景】
一般に、光学要素の収差を評価する従来の方法は、2つの工程(段階)を必要とする。第1の工程は、2つの分割されたイメージのシェアリングパターンからオリジナル波面を再生する工程である。次に、第2の工程は、再生された波面から複数の収差を求める工程である。
【0003】
具体的に、図19は、光学要素302の収差を求める装置300を示す。光学要素の収差を求める場合、光学要素302からの光は第1のビームスプリッタ304に送られ、そこで、第1の光306と第2の光308に分割される。第1のビームスプリッタ304を透過した第1の光306は第1のミラー310で反射れた後、第2のビームスプリッタ312を介して受像部314に送られる。第1のビームスプリッタ304で反射した第2の光308は第2のミラー316と第2のビームスプリッタ312で反射して受像部314に送られる。第2のミラー316は、第1の光306と第2の光308が互いに受像部314上でずれてシェアリング干渉像又はシェアリングパターンをその上に形成するように、配置されている。次に、シェアリング干渉像又はシェアリングパターンがイメージプロセッサ316で解析されて光学要素の収差が求められる。
【0004】
上記構成によれば、オリジナル波面がシェアリング干渉像又はシェアリングパターンから求められ、そこでは収差を評価するために多くの工程を必要とし、そのために多くの時間がかかる。また、二次のオーダの行列を解析する必要があり、それは非常に多くの計算過程を要する。同様に、シェアリング干渉像からオリジナル波面を求める計算は、多数の工数を要し、そのために時間がかかるものである。また、光は2つに分割され、分割された2つのの光は受像部314上で正確に重ね合わさなければならない。しかし、そのためにはそれぞれの光の経路を安定して保持しなければならず、それは装置を大型化することになる。
【0005】
図20は、調整すべき光学要素の収差を求めるための、別の従来の装置318を示す。この装置によれば、光322は、光学要素320の対物レンズ324を介して透明板326に送られる。次に、光322は、収束レンズ328によって光スポットとして受像部330上に結像され、受像部330は受像したイメージに対応した一連の信号を形成する。この信号は信号プロセッサ332に送られ、そこで受像したイメージの光強度の分布が求められる。光強度の分布は、光学要素320の収差を求めるために利用され、求められた収差は光学要素320の調整に利用される。
【0006】
しかし、本形態では、結像された光のスポットは、大きく拡大しなければならない。そのため、受像部328の視野は非常に狭い。これは、イメージスポットが僅かでもずれると、光スポットが受像部の視野からはずれ、収差の検出ができないことを意味する。また、スポット光は位相情報を含まず、そのために収差を正確に求めることが困難であった。
【0007】
【発明の概要】
そこで、本発明の目的は、光学要素の収差を容易に求めることができる優れた方法と装置を提供することである。
【0008】
その目的の沿って、光学要素の収差を評価する方法では、光は光学要素に透過され、次に、例えば0次、±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。とりわけ、第1と第2の光(例えば、0次と+1次、0次と−1次、−1次と+1次のオーダの回折光)が重ね合わされて、これら第1と第2の光のシェアリング干渉像が形成される。次に、シェアリング干渉像中の第1と第2の点で光強度が検出される。ここで、第1の点と第2の点の光強度は変化する。次に、第1と第2の点の間の光強度の位相差が求められる。これらの位相差を利用し、光学要素の収差が求められる。
【0009】
本発明の他の形態では、シェアリング領域に複数の点を決定する。具体的に、決定されるのは第1から第7の点である。第1の点は、第1の回折光と第2の回折光の軸を連結する第1の線の中央である。第2の点は、第1の点で第1の線を通る第2の線上に位置している。第3の点は第2の線上に位置し、第2の点と第3の点が第1の線に対して対称に位置する。第4の点と第5の点は第2の線上に第1の線の両側に対称に位置しており、第4の転と第5の点はそれぞれ第1の線から所定距離だけ離れている。第6の点と第7の点は第1の線の両側に位置し、これら第6と第7の点は第1の線から上記所定距離だけ離れている。
【0010】
本発明の他の形態において、その方法は光学要素のコマ収差を求める複数の工程を有する。ここでは、第1の点と第2の点の間の光強度の第1の位相差Ph(1)を求める。同様に、第2の点と第3の点の間の光強度の第2の位相差Ph(2)と、第4の点と第5の点の間の光強度の第3の位相差Ph(3)と、第6の点と第7の点の光強度の第4の位相差Ph(4)を求める。これらの位相差を用い、コマ収差の大きさが、次式から求めた位相差により求められる。
位相差=|Ph(1)−Ph(2)|/2
また、コマ収差の方向は、次式から求めた位相差により求められる。
位相差=|Ph(4)−Ph(3)|/2
本発明の他の形態では、光学要素の非点収差を求める。非点収差を求めるには、回折格子を3つの方向に方向付ける。それぞれの方向に関し、光は光学要素を介して送られ、そして回折格子を案内され、第1と第2の回折光が得られる。第2と第3の回折光が互いに重ね合わされてシェアリング干渉像が形成される。次に、光の強度が、シェアリング干渉像中の第1と第2の点で求められる。第1の点と第2の点は、第1の回折光と第2の回折光の中心を結ぶ別の線の中点を通る線上に且つ上記別の線に対称に位置する。この状態で、光の強度を変化する。また、第1の点と第2の点の間の光強度の差が求められ、これは光学要素の非点収差を評価するために利用される。
【0011】
光学要素の収差を評価する装置は、反射型又は透過型の回折格子を有する。回折格子には複数の溝が形成されており、光学要素からの光が回折されて回折光が得られる。回折光は第1の光と第2の光を含み、それらの光は部分的に重なり合ってシェアリング干渉像が形成される。光の軸にほぼ垂直な方向に回折格子を移動する機構が設けてある。次に、シェアリング干渉像が受像部により受像される。シェアリング干渉像中の複数の点のそれぞれで光強度の位相が求められ、収差の評価に利用される。
【0012】
光学要素の収差を評価する別の装置は、一対の第1と第2の透過型回折格子を有する。第1の回折格子と第2の回折格子にはそれぞれ、光を0次回折光以外の回折光に回折するために複数の平行なスリットが形成されている。第1と第2の回折格子は互いに平行に配置されている。スリットは、2つの回折像を部分的に重ね合わせたシェアリング干渉像を形成するために所定の方向に向けられている。上記所定の方向と所定の角度をなす別の方向に第1の回折格子を移動するための機構が設けてある。また、シェアリング干渉像を受像するための受像部と、上記シェアリング干渉像の複数の点で光強度の位相を求めるために処理装置が設けてある。
また、光学要素の収差を補正する装置は、光学要素の収差を補正する機構を有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0014】
(1)第1実施形態
図1は、光学要素における種々の収差を評価するための、本発明に係る光学システム1の第1実施形態を示す。この目的に対応して、光学システム1は、符号10で示す光学装置を有する。光学装置10は、デジタルビデオディスクの再生装置等の光学式記録再生装置に搭載される光学アセンブリ又は光学ヘッドであって、図示しない適当な支持部に支持された光学要素又は光学レンズ12を備えている。光学装置10はまた、光16を放出する光源14を有する。光源14としては、レーザを生成して放出するレーザ源14を含むのが好ましい。例えば複数の光学要素からなる変調器18が、光をコリメート光20に変調するために設けてあり、この変調された光はレンズ12の光軸22に沿って送られる。光軸22上であって、変調器18とレンズ12との間には、ビームスプリッタ24が設けてある。
【0015】
コリメートされた光はビームスプリッタ24を通りレンズ12に送られる。一方、レンズ12から反対方向に向けてビームスプリッタ24に入射する別の光26は、このビームスプリッタ24によって、コリメートされた光20に垂直な別の方向に向けて送られる。
【0016】
ビームスプリッタで反射された光26を受像するために、光学システム1は受像部28を有する。受像部28は、撮像素子(CCD)を構成する多数の受光要素からなり、それぞれの受光要素は受像したイメージを連続したイメージ信号に変換する。受像部28は信号プロセッサ(信号処理部)30に電気的に接続されている。信号プロセッサ30はまた、CRT又はLCDのようなイメージ表示部34を有するイメージ表示ユニット32に接続されており、受像部28で受像されたイメージが表示部34で再生されるようにしてある。イメージ表示ユニット32は、表示されたイメージ上に線を引いたり、表示されたイメージ中の点を特定するために、キーボード、マウス等の入力装置に接続されている。
【0017】
また、光学システム1は、反射型の回折格子40を有する。この回折格子40は平坦な面42を有し、この面には多数の小さな溝44が平行に形成されている。回折格子40は、装置10によって再生される光学ディスクの一部であってもよい。表面42が光を反射できるように、その表面には適当な金属からなる反射性の薄い膜がコーティングされている。
【0018】
回折格子40は、適当な支持部46に支持されており、表面42が所定の小さな隙間を介してレンズ12に対向している。この隙間は、コリメートされた光20をレンズ12が回折格子40の表面42上に正確に焦点合わせできるように、決定される。
【0019】
回折格子支持部46は、回折格子40と共に、適当な駆動機構40に駆動連結されており、レンズの光軸22に垂直な矢印50で示す基準方向に往復移動できると共に、レンズ12に対して矢印52で示す方向にレンズ光軸22を中心として回転できるようにしてある。
【0020】
光学システム1がレンズ12の収差を評価するだけのものである場合、このシステム1はレンズ12が着脱できるように設計するのが好ましい。他方、装置10をDVD等の光学装置に内蔵する場合、この装置10が該装置の収差を評価する光学システム1に着脱自在に設けてもよい。
【0021】
以上のように構成された光学システム1の動作において、回折格子40は格子支持部40上に配置されて固定される。次に、駆動機構48が起動し、回折格子40は方向50に搬送される。その間、光源14は光16を放出する。放出された光は変調器18でコリメート光20に変調される。次に、コリメート光20はビームスプリッタ24を透過し、そしてレンズ12に到達し、レンズ12の焦点位置を通過する溝38に結像される。結像された光は溝38で回折され、反射してレンズ12に戻される。
【0022】
反射した光は、0次、±1次、±2次・・・のオーダの回折光を含む。本実施形態では、回折格子40の回折角は、とりわけ0次と±1次のオーダの回折光がレンズ12に入射されて該レンズ12の開口部又は瞳の一部を共有するように設計されている。当業者に明らかなように、回折角は入射光の波長と溝44の間隔により決めることができる。
【0023】
0次と±1次の回折光は互いに干渉し、干渉縞(シェアリング干渉像又はシェアリングパターン)を形成する。このシェアリング干渉像は、レンズ12に含まれる種々の収差(以下に詳細に説明する。)を反映している。次に、0次と1次のオーダの回折光はレンズ12でコリメートされ、ビームスプリッタ24で反射されて光受像部28に送られる。光受像部28は受像した像に対応した信号を作成する。その信号は信号プロセッサ30に送られ、表示部34に表示される像の信号に処理される。
【0024】
図2は、表示部34に表示される典型的な像を示す。表示された像は、シェアリングパターン60を有する。このシェアリング干渉像60は、0次と+1次のオーダの円形回折光の像62、64からなり、これらの像を部分的に重ねてシェアリング領域66を形成している。シェアリングパターン60において、アルファベット(O)と(O’)は円形像62と64のそれぞれの中心を表している。符号68で示す線はシェアリング軸又はシェリング方向を示し、符号70で示す別の線はシェアリング軸に垂直で且つ円形像62、64の中心(O)と(O’)の中点を横切る線又は方向を示す。なお、基準方向50に対する回折格子40の回転により、シェアリングパターン60はシェアリング軸66と共に、図3Bと図3Cに示すように、表示部34上で回転する。これらの図において、θ2とθ3は、基準方向50に対するシェアリング軸68の回転角を示す。
【0025】
シェアリング領域66における任意の点の光強度は、回折格子40の移動と共に変化する。また、シェアリング領域66におけるある点の光強度の変化は特定に位相を有し、それは別の点の位相と異なる。したがって、レンズ12の収差を評価するために、選択された2点間の光強度の位相差が用いられる。これについては、後に詳細に説明する。
【0026】
次に、装置10の収差評価について説明する。上述のように、収差は、シェアリング領域66における複数の選択された点で光強度の位相差を検出することで評価される。光強度の位相差を求めるために、位相シフト法が採用されており、この位相シフト法では予め決められた複数の点で光強度が検出され、その間回折格子が基準方向に移動する。この位相シフト法については(Optical Shop Testing, ed. D. Malacara (John Wiley and Sons, New York, 1978),p.414に詳細に説明されている。
【0027】
本発明にかかる収差評価を理解するために本発明で取り扱われる収差のそれぞれについて簡単に説明する。具体的に、図4Aから7Cには、2つの回折された像のシェアリング干渉により生ずるデフォーカス、球面収差、コマ収差及び非点収差を含む波面が示されている。それらの図面においてλは受像部28で受像された光の位相を示す。また、θはシェアリング軸と基準方向とのなす角度を示す。
【0028】
まず、図4Aから4Cにおいて、実線によって示されるとともにデフォーカスによって生ずる干渉縞を含むデフォーカスの波面はシェアリング軸に対して対称に表れる。デフォーカスによる波面は以下の式(1)によってξ軸とη軸の座標で表すことができる。
Фdefocus=K(ξ2+η2) (1)
Фdefocus:デフォーカスによる波面の関数
K :定数
【0029】
この式は回折された像のシェアリングにより生じる干渉縞がシェアリング軸に対して垂直に伸びることを示す。すなわち、シェアリング軸の片側における一点の光強度変化はシェアリング軸の反対側に対称に設けた別の点の位相と同一の位相を有する。
【0030】
次に、図5Aから5Cに示すように、実線によって表され、球面収差によって生じる干渉縞を含む波面はシェアリング軸に対して対称に表れる。球面収差による波面は以下の式(2)によって、ξ軸とη軸の座標で表すことができる。
Фspherical aberration=Q(ξ2+η2)2 (2)
Фspherical aberration:球面収差による波面の関数
Q:定数
【0031】
この式は、球面収差により生ずる干渉縞が、基準方向とは無関係に、シェアリング軸68と垂直ライン70に対して対称に存在することを示す。また、球面収差は、垂直ライン70上の2つの点の間の光強度に位相差を生じない。同様に、球面収差による位相差は、シェアリング軸68に対称に位置する2つの点の光強度変化の間には存在しない。
【0032】
図6Aから図6Cに示すように、コマ収差による波面は、以下の式(3)によって、ξ軸とη軸の座標で表すことができる。
Фcomma=R(ξ2+η2)η (3)
Фcomma:コマ収差による波面の関数
R:定数
【0033】
この式(3)は、コマ収差がη方向(必要に応じてコマ方向という。)に依存することを意味する。一般的に、コマ方向はシェアリング方向68と異なる。コマ方向を求めるためには、コマを2つの成分(シェアリング方向の第1コマ成分と、垂直方向70の第2コマ成分)に分解する必要がある。次に、第1コマ成分と第2コマ成分の大きさを求め、それを用いたベクトル解析によりコマ方向を求める。
【0034】
コマ方向がシェアリング軸68に一致する場合、図6Aに示すように、コマ収差による干渉縞はシェアリング軸68に対して対称に表れる。これは、シェアリング軸68上に位置すると共に、対称な干渉縞の中央に対称に位置する2つの点の間の光強度の位相差が、第2コマ収差にのみ依存することを意味する。他方、コマ方向がシェアリング方向68に垂直な場合、図6Cに示すように、コマ収差による干渉縞は、シェアリング方向68と垂直方向70に対して対称に表れる。これは、垂直ライン70上に位置する2点の間の光強度の位相差が、第1コマ成分にのみ依存することを意味する。参考のために、図6Bは、シェアリング軸68を基準方向70に対して45°回転したときのコマ収差による干渉縞を示す。
【0035】
図7Aから図7Cは、非点収差による干渉縞を示す。非点収差は、次式(4)によりη軸の座標で表される。
Фastigmatism=Sη2 (4)
Фastigmatism:非点収差による波面の関数
S:定数
【0036】
この式(4)は、非点収差は方向ηにのみ依存することを意味する。したがって、2つの回折像がξ方向にシェアリングされた場合、図7Cに示すように、いかなる干渉縞も現れることはない。これに対し、回折像がξ方向以外の方向にシェアリングされた場合、図7Bに示すように、干渉縞は方向ξに平行に伸びるように表れる。また、η方向にシェアリングした場合、隣接する干渉縞の距離が、図7Aに示すように、最小となる。
【0037】
次に、再び図2を参照すると、コマ収差と非点収差の求め方について以下に詳細に説明する。この目的に対応して、シェアリングパターン60のシェアリング領域66には複数の点が設定される。点の設定は、キーボードやマウス等の適当な入力装置36を用いて表示部上で行なうことができる。具体的に、点(B1)と(B2)が、中点(A)の両側で且つシェアリング軸68の両側で、中点(A)から所定距離(L1)をあけて、垂直ライン70上に選択される。同様に、点(C1)と(C2)が、中点(A)の両側に、この中点(A)から所定距離(L2)をあけて、垂直ライン70上に設定される。本実施形態では、(L1)は(L2)と異なるが、(L1)は(L2)と同一であってもよい。また、別の点(D1)と(D2)が、シェアリング軸68の両側に対称に、シェアリング軸68から距離(L2)をあけ、垂直ライン70の片側に、垂直ライン70から距離(L3)をあけて設定される。
【0038】
次に、設定された点(A)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)及び(D2)のそれぞれで、光強度の変化が検出される。これは、受像部28の対応するCCD要素から送られる信号の強度を検出することで行なわれる。続いて、検出された強度変化を用い、信号又は強度の位相が各点について求められる。
【0039】
点(B1)と(B2)の間の光強度の位相差は、シェアリング軸68に対称な垂直ライン70上の2点の間の位相差に対応し、その位相差は非点収差(デフォーカス、球面収差、コマ収差以外)にのみ依存する。
【0040】
点(A)と(B1)との間の光強度の位相差は、デフォーカスの影響を与えるものでない。これは、点(A)と(B1)はシェアリング方向に垂直な線上に位置しているので、それらの間の光強度の位相差はコマ収差の第2成分に無関係である。このことは、点(A)と(B1)との間の光強度の位相差が、コマ方向の第1コマ成分と非点収差の合計に対応したものであることを意味する。なお、点(A)と(B1)との間の距離は、点(B1)と(B2)との間の距離の半分である。これは、非点収差により生じる、点(A)と(B1)との間の光強度の位相差は、点(B1)と(B2)の間の位相差の半分であることを意味する。したがって、点(A)と(B1)との間の光強度の位相差と、点(B1)と(B2)との間の光強度の位相差との差が、コマ方向の第1コマ成分の大きさを表す。
点(C1)と(C2)との間の光強度の位相差は、非点収差からも生じる。点(D1)と(D2)はシェアリング軸68に対称に位置しているので、それらの間の光強度の位相差は、デフォーカス、球面収差、コマ方向の第1コマ成分に無関係であるが、コマ方向に垂直な方向の第2コマ成分と非点収差に関係する。なお、点(D1)と(D2)の間の距離は、点(C1)と(C2)との間の距離に等しく、そのために非点収差による点(D1)と(D2)の間の光強度の位相差は、点(C1)と(C2)との間の光強度の位相差に等しい。したがって、点(D1)と(D2)との間の光強度の位相差と、点(C1)と(C2)との間の光強度の位相差との差が、コマ方向に垂直な方向の第2コマ成分を表す。
【0041】
そのため、第1コマ成分と第2コマ成分の大きさは、以下の式(5)と(6)で示される。
PD1=|ph(A)-ph(B1)|−|ph(B1)-ph(B2)|/2 (5)
PD2=|ph(D1)-ph(D2)|−|ph(C1)-ph(C2)| (6)
PD1:第1コマ成分
PD2:第2コマ成分
ph(A):点Aの光強度の位相
ph(B1):点B1の光強度の位相
ph(C1):点C1の光強度の位相
ph(C2):点C2の光強度の位相
ph(D1):点D1の光強度の位相
ph(D2):点D2の光強度の位相
また、コマ方向は、PD1とPD2の位相差を用いたベクトル解析により求めることができる。
【0042】
以上のように、コマ収差は、2つの回折像のシェアリング領域における選択された複数の点の位相差から、シェアリング干渉像のオリジナル波面を再現することなく、評価できる。
【0043】
なお、点(C1)と(C2)はそれぞれ点(B1)と(B2)からシフトしているが、これらの点(C1)と(C2)はそれぞれ点(B1)と(B2)上に位置させてもよい。
【0044】
図3Aから図3Cを参照し、非点収差の求め方について詳細に説明する。図3Aはシェアリング干渉像を示し、そこではシェアリング軸が回折格子の移動する基準方向に一致している。図3Bは、シェアリング軸68を角度θ2(0<θ2<90°)だけ回転したときのシェアリング干渉像を示す。他方、図3Cは、シェアリング軸68を基準方向に対して直角θ2(90°)だけ回転したときの別のシェアリング干渉像を示す。これらの図において、(E1)と(E2)は、垂直ライン70上に位置し、シェアリング軸68に対称に配置され、シェアリング軸68から所定距離(L7)だけ離れた点を示す。
【0045】
本実施形態の場合、点(E1)と(E2)との間の光強度の位相差は以下の式(7)で示される。
PDR1-R2=|ph(E1)-ph(E2)| (7)
PDR1-R2:点(E1)と(E2)との間の光強度の位相差
ph(E1):点(E1)での光強度の位相
ph(E2):点(E2)での光強度の位相
【0046】
この式を用い、非点収差の大きさは、以下の式(8)、(9)及び(10)に示すように、基準方向と90°、180°、又は270°以外の角度を形成する2つのシェアリング方向X1、X2に関する2つのシェアリング干渉像から求めることができる。
PDX1(R1-R2)=|phX1(E1)-phX1(E2)| (8)
PDX2(R1-R2)=|phX2(E1)-phX2(E2)| (9)
ここで、
PDX1(R1-R2):方向X1に関するE1とE2の間の位相差
PDX2(R1-R2):方向X2に関するE1とE2の間の位相差
Mastigmatism=PDX1(R1-R2)−PDX2(R1-R2) (10)
ここで、Mastigmatism:非点収差の大きさ
他方、非点収差の方法は、上述の式と以下の式、すなわち式(8)、(9)及び(11)から位相差を用いたベクトル解析により求められる。
PDX3(R1-R2)=|phX3(E1)-phX3(E2)| (11)
ここで、PDX3(R1-R2):方向X3に関するE1とE2の間の位相差
【0047】
なお、3つの方向X1、X2及びX3は、方向X1とX2、X2とX3及びX3とX1の間の角度の少なくとも一つが90°、180°、270°でないように決定すべきである。
その理由について説明する。具体的に、位相差PDX1(R1-R2)とPDX2(R1-R2)との位相差は、デフォーカス、球面収差、コマ収差以外の、非点収差のみを含む。また、非点収差はシェアリング方向によって変化する。その結果、例えばある方向にシェアリングした場合には非点収差を生じないが、上記ある方向に垂直な別の方向にした別のシェアリングはシェアリング方向に垂直に伸びる最も近接した干渉縞を生じる。そのため、点(E1)と(E2)の間の光強度には位相差を生じない。
【0048】
そのため、非点収差により生じる、点(E1)と(E2)との間の光強度の位相差は、基準方向と90°、180°又は270°以外の角度を形成する2つの方向を選択し、それらの2つの方向にそれぞれ回折像をシェアリングすることで、求めることができる。その角度は、検出結果から方向依存性を排除するために、45°とするのが好ましい。
【0049】
それら2つの方向について式(8)と式(9)から求められるPDX1(R1-R2)とPDX2(R1-R2)が同一の場合、2つの方向X1とX2の間の中央を通る第3の方向X3は、非点収差の存在する方向又は非点収差の存在しない方向として特定される。したがって、非点収差の存在する方向を求めるためには、上記2つの方向と90°、180°又は270°の角度形成することがないように、第3のシェアリング方向を求める。
【0050】
したがって、3つの方向を決める場合、これら3つの方向の少なくとも一つは、残る2つの方向のいずれか一方と90°、180°又は270°の角度を形成しないようにすることが必要である。これは、仮に3つの方向のそれぞれが残る方向の一方と90°、180°又は270°の角度を形成すると、3つのシェアリング方向の2つの方向が同一のシェアリング方向に一致し、結果的に2つのシェアリング方向だけを与えることになるからである。
【0051】
以上のようにして3つのシェアリング方向が決まると、3つのシェアリング方向の2つについて上述の式により2つのMastigmatismの合計からレンズの非点収差の大きさが得られる。また、3つの位相差を用い、ベクトル解析により非点収差の方向が求まる。以上のように、光学装置の非点収差はオリジナル波面を求めることなく評価できる。
【0052】
上記実施形態では、0次と+1次のオーダの回折光を用いてレンズの非点収差を求めたが、+1次と-1次のオーダの回折光又は0次と-1次の回折光を用いて非点収差を求めても良い。(図8参照)また、3つの回折光(例えば、0次、+1次、−1次のオーダの回折光)をレンズ12に透過し、0次と+1次の回折光と、0次と−1次の回折光をレンズ12の異なる領域で互いに重ねてもよい。(図9参照)これらの場合、球面収差と非点収差は、上述と同様に求めることができる。
【0053】
また、基準方向に対してシェアリング軸を変化するために、駆動機構48にはレンズ12の光軸22を中心として回折格子を回転する機能を設けてもよいが、基準方向に対するシェアリング方向を変更するために図10に示す反射型の回折板を用いてもよい。回折板80は3つの回折格子82、84及び86を有し、これらはいずれも多数の溝が異なる方向に平行に形成されている。例えば、回折格子84と86の溝は回折格子82の溝と+45°、−45°をそれぞれなしている。また、回折板80は、基準方向に垂直な方向に移動して3つの格子82から86の一つを選択的にレンズ12の焦点に位置させるように支持される。
【0054】
(2)第2実施形態
図11は、レンズの非点収差を評価する別のシステム1Aを示す。反射型の回折格子に代えて、本実施形態のシステム1Aは、透過型の回折格子9Cを備えており、レンズ12からの光は0次、±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。回折格子90の近傍であってレンズ12から離れた場所には、別のレンズ92が設けてあり、0次と+1次、0次と−1次、+1次と−1次、または0次と±1次のオーダの回折光がレンズ92に送られ、このレンズ92の開口部又は瞳の一部をそれらの光がシェアリングするようにしてある。これは、入射光の波長と回折格子90の溝間隔で決まる、回折格子90の回折角により調整できる。受像部28は、レンズ92からの光を受像するように配置されている。透過型の回折格子90は反射型回折格子の場所で用いられ、光分離装置(ビームスプリッタ)を設ける必要はない。
【0055】
動作を説明する。回折格子90が適当な駆動機構により基準方向に移動する。光源14からの光又はレーザ16は、変調器18とレンズを透過し、回折格子90上に結像される。回折格子90で、光は0次、±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。とりわけ、0次と+1次、0次と−1次、+1次と−1次、または0次と±1次のオーダの回折光がレンズを介して受像部28に送られる。受像部28は、受像イメージに対応した信号を作成し、該信号を信号プロセッサ30に送る。信号プロセッサは、上記信号からイメージ信号に変換され、このイメージ信号を用いて受像したイメージが表示ユニット32の表示部34に表示される。次に、表示された像を用い、レンズの収差が上述のようにして評価される。この場合、シェアリング方向は駆動機構48により、又は透過型の回折格子を使用することで、変更される。
【0056】
図12に示すように、図10に示す反射型の回折板と同様の透過型の回折板93を用いてもよい。透過型の回折板93は3つの回折格子を有し、それらはいずれも多数のスリットが固有の方向に形成されている。例えば、図10に示す反射型の回折板と同様に、第2と第3の回折格子の溝は、第1の回折格子の溝と+45°、−45°をなす。
【0057】
(3)第3実施形態
図13は回折ユニット94を有するシステム1Bの一部の他の形態を示す。回折ユニット94は一対の第1と第2の透過型の回折格子941と942を有する。第1と第2の回折格子941と942はそれぞれ所定の間隔を空けて溝が形成されており、入力された光を、0次の回折光を除く、±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折することが出来る。第1と第2の回折格子94と94は、それらの溝をある方向に向けて、レンズ12に隣接して平行にかつレンズ12の光軸22に垂直に配置されている。また、第2の回折格子942は支持部96により支持され光軸22に垂直な基準方向50に移動する。第1と第2の回折格子941と942は駆動機構98に支持され光軸22を中心として共に回転できるようにしてある。
【0058】
以上のように構成されたシステム1Bの動作において第2の回折格子942は光軸22に垂直に基準方向50に移動し、その間光がレンズに透過されてコリメートされる。このコリメートされた光は第1の回折格子941に透過されそこでその光は±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。
【0059】
次に、第2の回折格子942で+1次と−1次のオーダの回折光はそれぞれ±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。
【0060】
第2の回折格子からの−1次のオーダの回折光であって第1の回折格子941からの+1次のオーダの回折光から得られた光は光軸22に平行に伸びる。同様に第2の回折格子942からの+1次のオーダの回折光であって第1の回折格子941からの−1次のオーダの回折光より得られた光もまた、光軸22に平行に伸びる。しかしながら、第2の回折格子942からの+1次と−1次のオーダの回折光であって第1の回折格子941からの−1次と+1次のオーダの回折光から得られた光は光軸22に垂直な方向にわずかにシフトされており、シェアリング干渉像を形成する。このシェアリング干渉像は受像部28により受像され、上述のようにレンズ12の収差を評価するために利用される。また、回折格子941と942は非点収差を評価するために光軸22を中心として同時に回転される。
この構成はそのシステムの光学的構造を相当簡略化できるので、このようなシステムにとって非常に有効である。
【0061】
回折格子941と942は光軸22を中心として回転し、シェアリング軸の方向を変更するが、図14に示すように、3つの回折格子を備えた回折格子941と942は透過型回折板941’と942’に置きかえても良い。この場合、回折格子を交換するために回折ユニットを移動する機構が必要である。
【0062】
(4)第4実施形態
図15は、DVD等の光学装置とともに使用される光学ヘッド101のコマ収差と非点収差を評価し補正できるシステム100を示す。この光学ヘッド1010はレーザビームのような光104を放出するためにレーザ発生装置のようなレーザ源102を有する。放出された光104はコリメータレンズ106でコリメートされる。次に、コリメートされた光104はビームスプリッタ108とミラー110に反射されて対物レンズ112に送られ、そこで透明なカバープレート114を介して、反射型の回折格子114に結像される。回折格子116は駆動機構120によって符号118で示す方向に移動される。また、非点収差を評価するために回折格子116は機構120によって対物レンズ112の光軸を中心として符号112で示す方向に回転される。回折されそして反射された光(特に0次と+1次のオーダ、0次と−1次のオーダ、または+1次と−1次のオーダの回折光)は対物レンズ112、ミラー110及びビームスプリッタ108を介して受像部124に送られる。受像部124は光電変換素子(CCD)の小さな光受像要素を有し、これらの要素は受像したイメージを一連のイメージ信号に変換する。次にイメージ信号は信号プロセッサ126に送られ、そこで表示部128に表示されるシェアリング干渉像のイメージ信号に処理される。表示されたシェアリング干渉像を用いてシステムのコマ収差と非点収差が上述したプロセスにより評価される。
【0063】
コマ収差は対物レンズ112の軸と光源からの光の光軸との間の角と、及び/または、光軸に垂直に伸びるX−Y平面上での光源102の位置を調整することにより補正される。そのために、対物レンズ112はこの対物レンズ112の角度または傾斜を調整できる機構130によって支持されている。また、光源102はX−Y平面における位置を移動するために機構132によって支持されている。
【0064】
他方、非点収差はコリメータレンズ106をその軸方向(すなわち、Z方向)に移動してコリメートされた光の平行度を調整することで補正される。そのために、コリメータレンズ106はこのコリメータレンズ106をZ方向に移動できる機構134によって支持されている。
【0065】
これに代えて、コマ収差はX−Y平面におけるコリメータレンズ106を移動することにより及び/またはビームスプリッタ108とミラー110のようなl光学要素の反射角を変更することにより調整できる。また非点収差は光源102及び/または対物レンズ112を軸方向(すなわちZ方向)に移動することで、またはビームスプリッタ108の位置を移動することで調整できる。
また、回折格子116は図10に示す反射型の回折板に置き換えてもよい。この場合、回折板はシェアリング方向を変更するために方向116に垂直に移動する。
さらに回折格子とカバーガラスは光学ディスクの一部に置き換えてもよい。
さらにまた、カバーガラス114は回折格子116の上に設けてあるが、それは削除してもよい。この場合、システムは対物レンズが光を回折格子116に適当に結像するように設計する。
そして、上記システムは、光が物体上で光スポットとして形成されるレーザビーム式記録装置(LBR)、レーザ加工装置、レーザ顕微鏡のようないかなる光学装置の調整に適用できる。
【0066】
(5)第5実施形態
図16は、DVD等の光学装置と共に使用される光学ヘッド152のコマ収差と非点収差を評価し補正する別のシステム150を示す。光学ヘッド152は、支持機構153に固定的に支持されており、レーザビーム等の光156を放出するレーザ発生装置等のレーザ源154を有する。また、放出された光156をコリメートするためのコリメートレンズ158と多数の平行なスリットが形成された透過型の回折格子162にコリメートされた光156を結像するための対物レンズ160が設けてある。この回折格子162は透過型の回折板に置き換えてもよい。また、透明なカバーガラス164が回折格子162の片面に設けてあるがそれは削除することができる。
【0067】
ヘッド152に対する回折格子162の位置は光学ヘッド及び製品中の光学ディスクに必要とされる位置的な条件を満足するように調整される。
【0068】
回折格子162は駆動機構168によって符号166によって示される方向に移動する。また、非点収差を評価するために回折格子162は機構168によって対物レンズ160の光軸を中心として符号170で示す方向に回転される。
回折格子162に結像された光156は±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。次に回折光は別のレンズ172に送られる。本実施形態では、0次と+1次のオーダの回折光または0次と−1次のオーダの回折光がレンズ172に透過され、そのレンズ170で部分的に重ね合わさってシェアリングパターンを形成する。このシェアリングパターンは光電変換素子(CCD)の小さな光受像要素を有する受像部174で受像され、その受像要素は受像したイメージを一連のイメージ信号に変換する。次にイメージ信号は信号プロセッサ176に送られ、そこで表示部178に表示するシェアリング干渉像のイメージ信号に処理される。続いて表示されたシェアリング干渉像を用いてヘッド152のコマ収差と非点収差が上述した位相シフト法により評価される。
【0069】
コマ収差は光軸に対する対物レンズ160の角度を調整することにより、及び/または光軸に垂直な面(すなわちX−Y平面)で光源154を移動することにより補正できる。そのために、ヘッド152を支持する支持機構153は対物レンズ160の角度を変更するように移動すべく設計されている。また、光源154はこの光源154をX方向とY方向に移動できる別の機構182によって支持されている。
他方、非点収差はコリメータレンズ158を光軸に沿って移動し、それにより対物レンズ160に送られる光の平行度を調整することにより補正できる。
【0070】
(6)第6実施形態
図17はDVD等の光学装置とともに使用される光学ヘッド201のコマ収差と非点収差を評価し補正する別のシステム200を示す。この光学ヘッド201は支持機構202によって固定的に支持されており、レーザビームのような光204を放出するためのレーザ発生装置のような光源203を有する。ヘッド201にはコリメータレンズ205、ビームスプリッタ206、及び対物レンズ208が設けられ、光源203から放出された光204はコリメータレンズ205及び対物レンズ208を介して送られミラー210上に結像される。ヘッド201に対するミラーの位置は実際の製品において光学ディクスと光学ヘッド201に必要な位置的条件を満足するように調整される。そのミラー210は光学ディスクの一部に置き換えてもよいし、対物レンズ208に対向する表面にカバーガラスを設けてもよい。
【0071】
ミラー210によって反射された光204は対物レンズ208とビームスプリッタ206を介して符号212で示す回折格子ユニットに送られる。回折格子ユニット212に送られる光204はコリメートされている。
【0072】
回折格子ユニット212は図13に示すように平行に配置された2つの対向する透過型の回折格子214と216を有する。したがって、コリメートされた光204は第1の回折格子によって±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。回折された光はそれぞれ第2の回折格子によって同様に±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。
【0073】
また、第1の回折格子214はその回折格子に入ってくる光に垂直に符号218で示す方向に移動するように機構220によって支持されている。また、第1と第2の回折格子214と216は光軸を中心として回転できるように機構220によって支持されている。
【0074】
回折格子214と216はそれぞれ上述した3つの回折格子を備えた透過型の回折板に置き換えてもよい。その場合に、回折板は回折格子を変更するために光軸に垂直に移動する。
【0075】
回折格子214と216により第1の回折格子214からの−1次のオーダの回折光より得られた第2の回折格子216からの+1次のオーダの回折光と、第1の回折格子からの+1次のオーダの回折光から得られた第2の回折格子216の−1次のオーダの回折光が部分的に重なり合いシェアリングパターンを形成する。それら回折格子及びそれらの位置は第2の回折格子212からの重ね合わされる+1次と−1次のオーダの回折光が互いに平行に移動するように決定される。
【0076】
次に、光電変換素子(CCD)における小さな受像要素を有する受像部222に受像される。そして、上記受像要素は受像したイメージを一連のイメージ信号に変換する。イメージ信号は信号プロセッサ224に送られそこで表示部226に表示されるシェアリング干渉像のイメージ信号に処理される。そして、表示されたシェアリング干渉像を用いてヘッド201のコマ収差と非点収差が上述した位相シフト法により評価される。
【0077】
コマ収差は光軸に対する対物レンズ208の角度を調整することにより及び/または、光軸に垂直な平面(すなわち、X−Y平面)で光源を移動することにより補正できる。そのために、ヘッド201を支持する支持機構202は対物レンズ208の角度を変更すべく移動するように設計されており、また、光源203はこの光源203をX方向とY方向に移動できる別の機構228によって支持されている。
【0078】
他方、非点収差はコリメータレンズ205を光軸に沿って移動し、これにより対物レンズ208に送られる光の平行度を調整することにより補正できる。そのために、コリメータレンズ205はこのコリメータレンズ205を光軸に沿って移動することができる機構230によって支持されている。
【0079】
(7)第7実施形態
図18はDVD等の光学装置とともに利用される光学ヘッド252のコマ収差と非点収差を評価し補正するための別のシステム250を示す。光学ヘッド252は支持機構254によって固定的に支持されており、レーザビーム等の光258を放出するレーザ発生装置等の光源256を有する。また、ヘッド252にはコリメータレンズ260と対物レンズ262が設けてあり、光源256から放出された光258がコリメータレンズ260と対物レンズ262を介して送られるようにしてある。
【0080】
このシステムは対物レンズ262から送られた光をコリメートされた光に変調する別のレンズ264を有する。次に、コリメートされた光は格子ユニット266に送られる。
【0081】
格子ユニット266は図13に示すように平行に配置された2つの対向する透過型の回折格子268と270を有する。そして、コリメートされた光258は第1の回折格子によって±1次、±2次のオーダの回折光に回折される。次に、回折された光はそれぞれ第2の回折格子によって±1次、±2次・・・のオーダの回折光に回折される。
【0082】
また、第1の回折格子268はこの回折格子に入射される光に垂直に符号274に示す方向に移動するように機構272によって支持されている。また、第1と第2の回折格子268と270は符号276で示す光軸を中心として回転できるように機構を272によって支持されている。
【0083】
回折格子268と270はそれぞれ上述した3つの回折格子を備えた透過型の回折板に置き換えてもよい。この場合、回折板は回折格子を交換するために光軸に垂直に移動する。
【0084】
これら2つの回折格子268と270によれば、第2の回折格子270から得られた+1次のオーダの回折光であってそれ以前に第1の回折格子268の−1次のオーダの回折光から得られた光と第2の回折格子270から得られた−1次の回折光であって、それ以前に第1の回折格子268の+1次のオーダの回折光から得られた光とが部分的に重ね合わされてシェアリングパターンを形成する。回折格子及びそれらの位置は第2の回折格子270から得られた+1次と−1次のオーダの回折光が互いに平行に移動するように決定される。
【0085】
次に、シェアリングパターンは光電変換素子(CCD)における小さな受像要素を有する受像部278によって受像される。また、受像要素は受像した光を一連のイメージ信号に変換する。次に、イメージ信号は信号処理部280に送られ、そこで、表示部282に表示されるシェアリング干渉像のイメージ信号に処理される。その後、表示されたシェアリング干渉像を用いてヘッド252のコマ収差と非点収差が上述した位相シフト法により評価される。
【0086】
コマ収差は光軸に対する対物レンズ262の角度を調整することにより及び/または、光軸に垂直な面(すなわち、X−Y平面)で光源256を移動することにより補正できる。そのために、ヘッド252は対物レンズ262の角度を変更することができる機構282によって支持されている。また、光源256はこの光源256をX方向とY方向に移動することができる。別の機構284によって支持されている。
【0087】
非点収差は光軸に沿ってコリメータレンズ262を移動し、これにより対物レンズ262に送られる光の平行度を調整することによって補正できる。そのために、コリメータレンズ260はこのコリメータレンズ260を光軸に沿って移動できる機構286に支持されている。
【0088】
以上のように本発明に係る方法と装置によれば、シェアリングパターンは簡単な構成によって形成できる。また、コマ収差と非点収差はオリジナル波面を求めることなくシェアリング領域における複数の点の間の光強度の位相差を求めることで評価し補正できる。さらに、シェアリングパターンを高倍率に拡大する必要はないし、そのために目的の像、またはシェアリングパターンは受像部の視野内に容易に位置させることができ、それにより、システムは収差を非常に正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る第1の実施形態の、光学要素の収差を評価する装置を示す。
【図2】 図2は、2つの回折光のシェアリング干渉像と、光学要素のコマ収差を求めるシェアリング領域における複数の点を示す。
【図3】 図3Aから図3Cは、2つのシェアリング干渉像と、光学要素の非点収差を求めるシェアリング領域における複数の点を示す。
【図4】 図4Aから図4Cは、デフォーカスにより生じる波面を示す。
【図5】 図5Aから図5Cは、球面収差により生じる波面を示す。
【図6】 図6Aから図6Cは、コマ収差により生じる波面を示す。
【図7】 図7Aから図7Cは、非点収差により生じる波面を示す。
【図8】 図8は、本発明に係る他の形態の、光学要素の収差を評価する別の装置を示す。
【図9】 図9は、本発明に係る、光学要素の収差を評価する別の装置を示す。
【図10】 図10は、3つの異なる格子を有する格子プレートを示す。
【図11】 図11は、本発明に係る別の光学要素の収差を評価する別の装置を示す。
【図12】 図12は、本発明に係る光学要素の収差を評価する別の装置を示す。
【図13】 図13は、本発明に係る光学要素の収差を評価する別の装置を示す。
【図14】 図14は、本発明に係る光学要素の収差を評価する別の装置を示す。
【図15】 図15は、本発明に係る、光学要素の収差を評価し補正する装置を示す。
【図16】 図16は、本発明に係る、光学要素の収差を評価し補正する別の装置を示す。
【図17】 図17は、本発明に係る、光学要素の収差を評価し補正する別の装置を示す。
【図18】 図18は、本発明に係る、光学要素の収差を評価し補正する別の装置を示す。
【図19】 図19は、光学要素の収差を評価する従来の装置である。
【図20】 図20は、光学要素の収差を評価する別の従来の装置である。
【符号の説明】
1…光学システム、10…光学装置、12…レンズ、14…光源、18…変長器、24…ビームスプリッタ、26…光、28…受像部、30…信号プロセッサ、32…表示ユニット、34…表示部、40…回折格子、48…駆動機構。
Claims (4)
- 光学要素のコマ収差を評価する方法であって、
(a)上記光学要素に光を透過させる工程と、
(b)上記光を回折格子で回折して回折次数の異なる第1と第2の回折光を得る工程と、(c)上記第1と第2の回折光を重ねてシェアリング干渉像を形成する工程と、
(d)上記シェアリング干渉像に複数の点を求める工程とを有し、
上記複数の点には、
上記第1と第2の回折光の軸を結ぶ第1の線の中点である第1の点と、
上記第1の点で上記第1の線を横切る第2の線上に位置する第2の点と、
上記第2の線上に位置し、上記第2の点から上記第1の線に対して対称に位置する第3の点と、
上記第2の線上に位置すると共に上記第1の線の両側に対称に位置し、上記第1の線から所定の距離をあけて配置されている第4と第5の点と、
上記第1の線の両側に配置され、上記第1の線から上記所定の距離だけあけて配置されている第6と第7の点が含まれており、
上記方法はまた、
(e)上記第1から第5の点の光強度を求める工程と、
(f)上記光学要素の光軸に垂直な方向に上記回折格子を移動させて上記シェアリング干渉像における上記第1から第5の点の光強度を変化させる工程と、
(g)上記第1から第7の点のそれぞれの光強度の位相を求める工程と、
(h)上記第1から第7の点における上記位相から上記光学要素のコマ収差を評価する工程と、を含む光学要素の収差評価方法。 - 上記工程(h)は、
上記第1と第2の点の間の光強度の第1の位相差Ph(1)と、
上記第2と第3の点の間の光強度の第2の位相差Ph(2)と、
上記第4と第5の点の間の光強度の第3の位相差Ph(3)と、
上記第6と第7の点の間の光強度の第4の位相差Ph(4)とを求める工程を含み、
上記工程(h)は、
次式
位相差=|Ph(1)−Ph(2)|/2
から得られた位相差よりコマ収差の大きさを求める工程と、
次式
位相差=|Ph(4)−Ph(3)|/2
から得られた位相差よりコマ収差の方向を求める工程とを含む請求項1の光学要素の収差評価方法。 - 光学要素の非点収差を評価する方法であって、
(a)上記光学要素に光を透過する工程と、
(b)上記光を上記回折格子で回折して回折次数の異なる第1と第2の回折光を得る工程と、
(c)上記第1と第2の光を重ねてシェアリング干渉像を形成する工程と、
(d)上記シェアリング干渉像における第1と第2の点であって、上記第1と第2の点は上記第1と第2の回折光の中心を結ぶ線の中央を横切る線上にあって上記中心を結ぶ線に対して対称に位置する点で光強度を検出する工程と、
(e)上記光学要素の光軸に垂直な方向に上記回折格子を移動させて上記シェアリング干渉像における上記第1と第2の点の光強度を変化させる工程と、
(f)上記第1と第2の点の間の光強度の位相差を求める工程を実行する工程と、を含み、
間の角度の少なくとも一つが90°、180°、270°でない3つの方向に関して、それぞれ得られた上記位相差から上記光学要素の非点収差を評価する、光学要素の収差評価方法。 - 上記3つの方向のうちの2つの方向における上記位相差から上記非点収差の大きさを求める請求項3の光学要素の収差評価方法。
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