JP4167708B2 - コーティング種子の製造方法 - Google Patents
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Description
一般の野菜の種子のような比較的大粒の種子においては、従来から様々な種子用コーティング材料が知られており、例えば非晶質シリカ、タルク、カオリナイト、珪藻土、炭酸カルシウム等の無機物の単材もしくはそれらの混合物が使用されている。これらの無機物をデンプン、ゼラチン、PVAまたは水等の結合材と共に種子にコーティングすることによってコーティング種子を得ていた。
従って、灌水等の水分供給によって被覆層に水が接触した際に、速やかに被覆層が崩壊するコーティング材料が望まれていた。
すなわち、本発明は、相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%以下、仮比重が0.60〜0.80g/cm3の粉体および水溶性バインダーから実質的になることを特徴とする種子用コーティング材料(以下、本発明コート材料と記す。)を用いて被覆されたコーティング種子(以下、本発明コート種子と記す。)を提供するものである。
本発明において用いられる粉体とは、相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%以下、仮比重が0.60〜0.80g/cm3 である必要がある。
上記のような低い平衡含水率を有する粉体は、例えば、カオリン、珪藻土、クロライト、パイロフィライト、タルク等の粘土鉱物の中から適するものを選択すればよい。もちろん、これらを組み合わせることも可能である。仮にカオリン、珪藻土、クロライト、パイロフィライト、タルク等の粘土鉱物であっても、相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%を超えるような吸湿性の粉体の場合には、粒子間の付着力が高くなりすぎ、本発明が解決するような被覆層の崩壊性が得られない。一方、仮比重が0.60〜0.80g/cm3 の範囲を外れた場合にも、被覆層に水が接触した際に、速やかに被覆層が崩壊しなくなるので、本発明に適する平衡含水率を有する粉体の中から、さらに仮比重の適するものを選択することによって本発明において用いられる粉体を選び出すことができる。
なお、本発明における良好な崩壊性とは、水中にコーティング種子を投入した際に約5秒程度で被覆層が崩壊し、種子から剥離することを意味する。
また、本発明において用いられる粉体の粒度(粒径)は、約280メッシュ(53μm)程度以下であることが好ましい。特に花の種子に代表されるような種子粒径が1500μm程度以下のオーダーである種子、たとえば、ベゴニア種子の粒径は120〜250μm、ユーストマで200〜350μm、りんどう、ペテュニアで290〜710μm、の場合、被覆材料の粒度が大きくなると加工性が悪くなる等の影響が大きい。
該水溶性バインダーは、約0.5cpsから約15cpsの粘度範囲に調製した水溶液の形で、通常、被覆材料に添加されたり、または種子に直接吹き付けながら使用される。仮にこの濃度が約0.5cps未満であると被覆層の強度が不足し、良好な製品(コーティング種子)収率の低下につながり、一方、約15cpsを超えると粘性が高くなることで団粒が多く加工できなくなるか、あるいは被覆層の強度が高すぎて発芽が遅延したり、粘着性が勝って根系の呼吸活動を抑制したりして良好な製品(コーティング種子)が得られない。なお、上記の粘度範囲は、たとえばB型粘度計等を用いて測定することができる。
また、本発明において用いられる水溶性バインダーの粒度(粒径)は、約280メッシュ(53μm)程度以下であることが好ましい。特に花の種子に代表されるような種子粒径が1500μm程度以下のオーダーである種子、たとえば、ベゴニア種子の粒径は120〜250μm、ユーストマで200〜350μm、りんどう、ペテュニアで290〜710μm、の場合、被覆材料の粒度が大きくなると加工性が悪くなる等の影響が大きい。
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
回転パンにユーストマ(Eustoma russellianum G. Don )種子を50g投入し、回転数140rpmで種子を回転させながら、粉体としてパイロフィライト(相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%以下、仮比重が0.67g/cm3 )を15g/分の速度で徐々に供給し、同時に水溶性バインダーとして粘度10cpsのカルボキシメチルセルロース水溶液も2.5g/分の速度で供給し、30分間加工することによって、本発明コート材料による種子の被覆造粒を行った。さらに得られた被覆造粒種子を乾燥機を用いて、最終含水率が4.5湿重量%になるまで乾燥することによって、本発明コート種子(粒径は1.00〜1.68mmφ)を得た。得られた本発明コート種子の圧縮強度(g/粒)は150で、水中崩壊性(sec)は4未満であった。また、本発明コート材料の加工性はよく、しかも良好な製品(コーティング種子)収率は97%と高い値であった。
実施例1によって得られた本発明コート種子の発芽性能を調査するために、被覆前の裸種子と同時に育苗培土(太平園芸培土)をつめたプラグトレーに播種し、上面から充分に灌水して育苗ハウス内で栽培した。7日目に発芽勢(%)および14日目に発芽率(%)を調査した。その結果を表1に示す。本発明コート種子は発芽性能を低下することなく発芽勢、発芽率共に裸種子と同等であった。
回転パンにエキザカム(Exacum affine Balf. )種子を20g投入し、回転数140rpmで種子を回転させながら、粉体としてパイロフィライトとカオリンクレーの混合物〔9:1(重量比)、相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%以下、仮比重が0.72g/cm3 〕を35g/分の速度で徐々に供給し、同時に水溶性バインダーとして粘度5cpsのカルボキシメチルセルロース水溶液も1.5g/分の速度で供給し、30分間加工することによって、種子の被覆造粒を行った。さらに得られた被覆造粒種子を乾燥機を用いて、最終含水率が4.5湿重量%になるまで乾燥することによって、本発明コート種子(粒径は1.00〜1.68mmφ)を得た。得られた本発明コート種子の圧縮強度(g)は167で、水中崩壊性(sec)は5未満であった。また、本発明コート種子の加工性はよく、しかも良好な製品(コーティング種子)収率は96%と高い値であった。
実施例2によって得られた本発明コート種子の発芽性能を調査するために、被覆前の裸種子と同時に育苗培土(太平園芸培土)をつめたプラグトレーに播種し、上面から充分に灌水して育苗ハウス内で栽培した。7日目に発芽勢(%)および14日目に発芽率(%)を調査した。その結果を表2に示す。本発明コート種子は発芽勢において裸種子より若干劣ったものの、発芽率において裸種子と同等であり、実用上特に問題となる発芽性能の低下はなかった。
回転パンにユーストマ(Eustoma russellianum G. Don )種子を50g投入し、回転数140rpmで種子を回転させながら、粉体としてベントナイトとパリゴルスカイトの混合物〔1:4(重量比)、相対湿度100%中での平衡含水率が25湿重量%程度、仮比重が0.40g/cm3〕を15g/分の速度で徐々に供給し、同時に水溶性バインダーとして粘度10cpsのカルボキシメチルセルロース水溶液も1.5g/分の速度で供給し、30分間加工することによって、種子の被覆造粒を行った。さらに得られた被覆造粒種子を乾燥機を用いて、最終含水率が4.5湿重量%になるまで乾燥することによって、比較コート種子(粒径は1.00〜1.68mmφ)を得た。得られた比較コート種子の圧縮強度(g)は680で、水中崩壊性(sec)は80であった。
比較例1によって得られた比較コート種子の発芽性能を調査するために、被覆前の裸種子と同時に育苗培土(太平園芸培土)をつめたプラグトレーに播種し、上面から充分に灌水して育苗ハウス内で栽培した。7日目に発芽勢(%)および14日目に発芽率(%)を調査した。その結果を表3に示す。比較コート種子は発芽性能を著しく低下し、発芽勢、発芽率共に裸種子より著しく劣った。
回転パンにエキザカム(Exacum affine Balf. )種子を20g投入し、回転数140rpmで種子を回転させながら、粉体としてベントナイトとパリゴルスカイトの混合物〔1:4(重量比)、相対湿度100%中での平衡含水率が25湿重量%程度、仮比重が0.40g/cm3 〕を35g/分の速度で徐々に供給し、同時に水溶性バインダーとして粘度5cpsのカルボキシメチルセルロース水溶液も1.5g/分の速度で供給し、30分間加工することによって、比較コート材料による種子の被覆造粒を行った。さらに得られた被覆造粒種子を乾燥機を用いて、最終含水率が4.5湿重量%になるまで乾燥することによって、比較コート種子(粒径は1.00〜1.68mmφ)を得た。得られた比較コート種子の圧縮強度(g)は643で、水中崩壊性(sec)は87であった。
比較例2によって得られた比較コート種子の発芽性能を調査するために、被覆前の裸種子と同時に育苗培土(太平園芸培土)をつめたプラグトレーに播種し、上面から充分に灌水して育苗ハウス内で栽培した。7日目に発芽勢(%)および14日目に発芽率(%)を調査した。その結果を表4に示す。比較コート種子は発芽性能を著しく低下し、発芽勢、発芽率共に裸種子より著しく劣った。
回転パンにユーストマ(Eustoma russellianum G. Don )種子を50g投入し、回転数140rpmで種子を回転させながら、粉体としてパイロフィライト(相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%以下、仮比重が0.67g/cm3 )を15g/分の速度で徐々に供給し、同時に水溶性バインダーとして粘度0.3cpsのカルボキシメチルセルロース水溶液も1.5g/分の速度で供給し、30分間加工することによって、種子の被覆造粒を行った。さらに得られた被覆造粒種子を乾燥機を用いて、最終含水率が4.5湿重量%になるまで乾燥することによって、参考コート種子(粒径は1.00〜
1.68mmφ)を得た。得られた参考コート種子の圧縮強度(g)は25で、水中崩壊性(sec)は2未満であった。また、参考コート種子の加工性は悪く、しかも良好な製品(コーティング種子)収率は48%と低い値であった。
参考例1によって得られた参考コート種子の発芽性能を調査するために、被覆前の裸種子と同時に育苗培土(太平園芸培土)をつめたプラグトレーに播種し、上面から充分に灌水して育苗ハウス内で栽培した。7日目に発芽勢(%)および14日目に発芽率(%)を調査した。その結果を表5に示す。参考コート種子は発芽性能を低下することなく発芽勢、発芽率共に裸種子と同等であった。
Claims (6)
- 粉体全体での相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%以下、仮比重が0.60〜0.80g/cm 3 の粉体および0.5〜15cpsの粘度範囲に調製した水溶性バインダーの水溶液を用いて、種子粒径が1500μm程度以下のオーダーの種子を被覆造粒することを特徴とするコーティング種子の製造方法。
- 粉体が粘土鉱物の粉体である請求項1記載のコーティング種子の製造方法。
- 粉体の粒度が280メッシュ以下である請求項1又は2記載のコーティング種子の製造方法。
- 水溶性バインダーがカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル及びPVAからなる群より選ばれるいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング種子の製造方法。
- 種子粒径が1500μm程度以下のオーダーの種子が発芽に際して光を必要とする種子である請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング種子の製造方法。
- 以下の工程を有するコーティング種子の製造方法。
(1)種子粒径が1500μm程度以下のオーダーの種子が入った回転パンを回転させながら、粉体全体での相対湿度100%中での平衡含水率が5.0湿重量%以下、仮比重が0.60〜0.80g/cm 3 の粉体と、0.5〜15cpsの粘度範囲に調製した水溶性バインダーの水溶液とを同時に徐々に供給し、該種子を被覆造粒する工程、
(2)前工程で得られた被覆造粒種子を乾燥機を用いて、最終含水率が4.5湿重量%になるまで乾燥する工程。
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