JP4167532B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単一周波数ネットワーク(SFN)において放送されるディジタル放送信号を受信するためのアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、テレビジョン放送やラジオ放送のディジタル化が推進されており、衛星放送のディジタル化に続き、今後、地上波テレビジョン放送がディジタル放送に切り換る予定である。
【0003】
地上波ディジタルテレビジョン放送では、一般的に、変調方式として直交周波数分割多重(OFDM)方式が採用されている。OFDM方式は、直交関係にある複数の搬送波を用いて情報を伝送する方式である。この方式では、建物からの反射等によって生じる遅延波の影響を除去するために、ガードインターバルを設ける。ガードインターバルは、搬送波の変調により得られるシンボルの後半のコピーを、シンボルの前半に貼り付けることで形成される。
【0004】
このようなOFDM方式では、ガードインターバルより遅延量の少ない遅延波について、マルチパス歪の影響を受けることなく、適切な復調結果を得ることができるといった特徴がある。また、OFDM方式においては、希望波と妨害波との間に所定レベル(例えば、3dB)以上の差があれば、同一周波数帯の妨害波であっても、その妨害波の影響を受けず、適切な復調結果を得ることができるといった特徴がある。
【0005】
ところで、地上波ディジタル放送では、上述したようなOFDM方式の特徴を生かし、周波数資源を有効活用する目的で、単一周波数ネットワーク(SFN:Single Frequency Network)方式を採用することが検討されている。
従来のアナログ放送では、親局及び中継局において、異なる送信周波数が用いられるのに対し、単一周波数ネットワークでは、親局及び中継局のすべてにおいて、単一の周波数が用いられるので、周波数資源を有効活用することができるのである。尚、単一周波数ネットワーク及びOFDM方式の通信技術は、広く知られた技術であるので、ここでは、それらに関する先行技術文献を非開示とする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単一周波数ネットワークでは、一の中継局から送信されてくる希望波及び、他の中継局から送信されてくる妨害波の受信レベルが同程度となる地域で、希望波及び妨害波の合成波としての定在波が生じ、その定在波の節に対応する特定の地点において、希望波と妨害波とが打ち消しあい、合成波の受信レベルが略ゼロとなる空間(以下、「ヌル」と表現する)が生じる。
【0007】
このような地域では、受信アンテナが偶然ヌル内に配置されてしまうと、中継局から送信されてくる希望波を受信することができなくなり、テレビジョン信号の受像等が不可能になる。したがって、ヌルが生じる地域においては、難視世帯が増加することになり、利用者に不満が及ぶことになる。
【0008】
このようなヌルは、各中継局の送信電力が略同一で電波の減衰係数が略等しい場合、複数の中継局の中間に位置する地域A(図7参照)で生じることとなるが、各中継局の送信電力が異なる場合には、それら中継局の中間付近ではなく、送信電力が低い中継局側の地域Bにずれて生じることになる。また電波の減衰係数が異なれば、ヌルの発生する地域は更にずれることとなる。その他、建造物等で電波の反射が生じると、それによって、ヌルの発生する地域に更にズレが生じることになる。
【0009】
即ち、単一周波数ネットワークでは、他の中継局から送信されてくる妨害波が飛来する地域において、影響の大小はあるものの、ヌルが生じる可能性があり、従来のアンテナ構造では、その妨害波によってディジタル放送信号を良好に受信することができない難視世帯が多く生じる可能性があった。
【0010】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであって、単一周波数ネットワーク(SFN)において放送されるディジタル放送信号を良好に受信することが可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、単一周波数ネットワーク(SFN)において放送されるディジタル放送信号を受信するためのアンテナ装置であって、複数の受信アンテナを備え、これら複数の受信アンテナが、受信すべき希望波と同一周波数帯の妨害波によって希望波が打ち消される空間であるヌルの発生間隔とは異なる距離間隔で、希望波伝播方向に向けられて、並列配置されたものである。
具体的に、本発明のアンテナ装置は、上記複数の受信アンテナとして、三つの受信アンテナを備える。また、これら三つの受信アンテナは、両端に配置される二つの受信アンテナの配置間隔Wが、ヌルの発生間隔の最大長さの二分の一に等しく、両端に配置される二つの受信アンテナの間に配置される受信アンテナと、両端に配置される二つの受信アンテナのいずれか一方との配置間隔Lが、条件式W−L≠Lを満足するように、並列配置されている。
【0012】
単一周波数ネットワークでは、一の中継局から送信されてくる希望波及び他の中継局から送信されてくる妨害波の受信レベルが同程度となる地域の特定地点において、希望波と妨害波とが打ち消しあい、合成波の受信レベルが略ゼロとなる(換言すれば、合成電界がゼロ電界となる)。図6(a)に示すように、希望波の波面(図6(a)一点鎖線)とそれとは逆相の妨害波の波面(図6(a)点線)が交差する地点において、希望波と妨害波とが打ち消しあい、その受信レベルが略ゼロとなるのである。
【0013】
この妨害波によって希望波が打ち消される空間、即ちヌルに受信アンテナが配置されていると、当然のことながら、その受信アンテナでは放送信号を受信することができなくなり、テレビジョン受像機などの受信機側で、その放送信号を復調・再生することができなくなる。
【0014】
このようなヌルは等間隔で発生し、各ヌルは、隣り合うヌルとの距離間隔を維持した状態で変動する。変動の原因となるものとしては、受信アンテナに到達する妨害波の希望波に対する遅延時間の変化などが挙げられる。
したがって、図6(b)に示すように、ヌルの発生間隔とは異なる距離間隔で、受信アンテナ(ANT)を複数配置すれば、一方の受信アンテナがヌル内にあっても、他の受信アンテナはヌル以外の位置、即ち放送信号が受信可能な位置に存在することになる。この関係は、図6(c)からも理解できるように、ヌルの位置が変化しても変わることがない。
【0015】
よって、請求項1記載のアンテナ装置によれば、単一周波数ネットワークにおいて放送されるディジタル放送信号を良好に受信することができ、受信機側で、アンテナ装置の受信信号を正確に復調することができるのである。
特に、請求項1記載のアンテナ装置においては、両端に配置される二つの受信アンテナ間の距離(配置間隔)がヌルの発生間隔の半分となるようにし、一方の受信アンテナがヌルにあるときに、他方の受信アンテナでは受信レベルが最大となるようにしているので、良好に放送信号を受信することができる。
【0018】
この他、図6に示したように理論的には二つの受信アンテナを用いてアンテナ装置を構成することで、ヌルによる影響を抑制することができるが、ヌルの間隔は、妨害波の入射角や周波数など様々な影響によって変化するため、二つの受信アンテナだけでは、充分にヌルの影響を排除できない可能性がある。
【0019】
例えば、多チャンネルの放送信号を受信できるようにアンテナ装置を構成する場合には、受信可能とすべき希望波の周波数が広がる。したがって、ある一つのチャンネルでは良好に放送信号を受信することができても、他のチャンネルでは、ヌルの影響を受けて、良好に放送信号を受信することができない可能性がある。
【0020】
これに対し、本発明のように、三つの受信アンテナを当該アンテナ装置に設ければ、当該アンテナ装置において、二つの受信アンテナ間の距離を複数パターン設定することができ、複数チャンネルの放送信号に対して、ヌルの発生間隔とは異なる間隔で受信アンテナを配置することができる。よって複数チャンネルの放送信号について、良好にその放送信号を受信することができる。
【0021】
尚、多チャンネルの放送信号を良好に受信できるようにするためには、受信アンテナの個数を多くするほうが好ましい。しかしながら、受信アンテナの個数が多すぎると、アンテナ装置自体が大型化する。また、受信アンテナの個数をむやみに増やしても、それに似合うだけの効果を期待することができない。
【0022】
一方、アンテナ装置に設ける受信アンテナを、本発明のように、三つとすると、装置の大型化を抑制しつつ、ヌルの影響を効果的に排除することができる
【0023】
また、本発明のアンテナ装置のように、条件式W−L≠Lを満足するように、三つの受信アンテナを配置すれば、仮に二つの受信アンテナが受信環境の好ましくない地点にあったとしても、残りの受信アンテナにて良好に放送信号を受信することができる。
したがって、本発明のアンテナ装置によれば、周波数や、妨害波の入射角の変化にも柔軟に対応して、ディジタル放送信号を良好に受信することができる。
【0024】
また、請求項2記載の発明は、外部装置と電気的に接続される端子部と、上記複数の受信アンテナの夫々から入力される信号のいずれか一つを選択して、その選択した信号を端子部を通じて外部装置に入力する切替回路と、を備える請求項1記載のアンテナ装置に関するものである。請求項2記載のアンテナ装置によれば、受信レベルの高い受信アンテナが受信した信号を選択的に外部装置に入力することができるので、外部装置(テレビジョン受像機など)に適切にディジタル放送信号を復調・再生させることができる。
【0025】
この他、請求項3記載の発明は、外部装置と電気的に接続される端子部と、上記複数の受信アンテナの夫々から入力される信号を合成し、その合成信号を端子部を通じて外部装置に入力する合成器と、を備える請求項1記載のアンテナ装置に関するものである。請求項3記載のアンテナ装置によれば、各受信アンテナが受信した信号を合成して出力することができるから、外部装置に適切にディジタル放送信号を復調・再生させることができる。
【0026】
また、請求項4記載のアンテナ装置は、条件式0.2W≦|W−2L|≦0.3Wを満足するように、上記三つの受信アンテナを配置したものである。このアンテナ装置によれば、ヌルによる影響をあまり受けることなく、アンテナ装置にて受信されるべき周波数帯域の放送信号を、概ね帯域全体にわたって同一の受信レベルで受信することができる。したがって、受信レベルが周波数帯域の一部で急激に落ち込むことが原因で、放送信号が正確に復調できなくなるのを防止することができる。よって、請求項4記載のアンテナ装置によれば、外部装置(テレビジョン受像機など)に適切にディジタル放送信号を復調・再生させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例について、図面とともに説明する。尚、以下に説明する本実施例のアンテナ装置は、単一周波数ネットワーク(SFN)を用いて放送されるOFDM方式の地上波ディジタル放送信号を受信するためのものである。また、図1は、本発明が適用されたアンテナ装置1のスタックアンテナ部30の構成を表す説明図であり、図2は、アンテナ装置1の回路部40の構成を表すブロック図である。
【0028】
本実施例のアンテナ装置1は、同一構成の受信アンテナ10を複数(具体的には、3つ)備えるスタックアンテナ部30と、そのスタックアンテナ部30に接続される回路部40と、から構成される。
このスタックアンテナ部30が備える各受信アンテナ10は、主に、導波器11と、ダイポールアンテナ素子13と、反射器15と、を備える周知のダイポールアンテナである。各受信アンテナ10は、接続金具(図示せず)を介してマスト20のアンテナ支持材21に固定される。
【0029】
マスト20は、受信アンテナ10と同数のアンテナ支持材21と、そのアンテナ支持材21の軸線とは垂直な面(地平面)に沿って配置され各アンテナ支持材21の下端部が固定される中間支持材23と、その中間支持材23を下方から支持する支柱25と、から構成される。
【0030】
このアンテナ支持材21及び中間支持材23並びに支柱25は、ステンレス鋼などで構成され、アンテナ支持材21は、中間支持材23の軸線(長尺方向)に沿って所定の間隔で、中間支持材23に固定される。
一方、本実施例の各受信アンテナ10は、受信方向が中間支持材23の軸線とは直交する方向に設定されて、アンテナ支持材21の上端部に取り付けられ、マスト20に固定される。即ち、本実施例の各受信アンテナ10は、受信すべき希望波の到来方向(即ち、希望波伝播方向)に向けられた状態で、その到来方向とは直交する方向に沿って、所定の間隔で、並列配置される。そして、このように構成されたアンテナ装置1のスタックアンテナ部30は、支柱25の軸線が地平面に対して垂直となるようにされて、家屋の屋上等に固定される。
【0031】
また、マスト20に固定された各受信アンテナ10の給電部17には、受信アンテナ10が受信した放送信号を伝送するための伝送ケーブルLNが接続される。伝送ケーブルLNの他端は、回路部40の入力コネクタ41に接続され、各受信アンテナ10が受信した放送信号は入力コネクタ41を介して図2に示す回路部40内に入力される。
【0032】
回路部40は、主に、入力コネクタ41と、入力コネクタ41から延設される伝送線路43と、アンテナ切替回路45と、アンテナ選択回路47と、出力コネクタ49と、から構成される。
入力コネクタ41から延びる伝送線路43は、途中分岐されて、アンテナ切替回路45及びアンテナ選択回路47に接続されている。アンテナ切替回路45は、スイッチ等から構成されており、伝送線路43を介して、各受信アンテナ10から入力される受信アンテナ10の受信信号のうち、アンテナ選択回路47が選択した受信アンテナ10から入力される受信信号を、出力コネクタ49を通じて外部に出力する。
【0033】
一方、アンテナ選択回路47は、伝送線路43を介して、各受信アンテナ10から入力される受信信号に基づき、各受信アンテナ10の受信レベルを判定して、受信状態の良好な受信アンテナ10を一つ選択し、その受信アンテナ10の受信信号が出力コネクタ49から出力されるように、アンテナ切替回路45を制御する。具体的には、受信レベルの一番高い受信アンテナ10の受信信号が出力コネクタ49から出力されるように受信アンテナ10を選択する。
【0034】
アンテナ切替回路45から出力コネクタ49に入力され、その出力コネクタ49から出力される受信アンテナ10の受信信号は、出力コネクタ49に電気的に接続されたテレビジョン受像機などの外部装置に入力される。
したがって、本実施例のアンテナ装置1によれば、複数の受信アンテナ10のいずれか一つが良好な受信環境下にあれば、外部の基地局(又は中継局)から送信されてくる地上波ディジタル放送信号をテレビジョン受像機などで精度よく復調・再生することができる。
【0035】
さて、上述したように、単一周波数ネットワークでは、一の中継局から送信されてくる希望波及び、他の中継局から送信されてくる妨害波の受信レベルが同程度となる地域の特定地点において、希望波と同一周波数帯の妨害波が、その希望波を打ち消すことが原因で、希望波及び妨害波からなる合成波の受信レベルが略ゼロとなる(換言すれば、合成電界がゼロ電界となる)空間(ヌル)が生じる。このようなヌルにおちいるキャリアの数が所定数以上となると、受信機側(テレビジョン受像機等)では、その放送信号を復調・再生することができなくなってしまう。
【0036】
したがって、少なくとも複数の受信アンテナ10のうちのいずれか一つが良好な受信環境下となるようにし、受信機側(テレビジョン受像機等)で放送信号を復調・再生できるようにするためには、アンテナ装置1に取り付けられた受信アンテナ10の全てが同時にヌルに入らないようにする必要がある。
【0037】
理論上ヌルは、合成波の波長λの二分の一の間隔で発生する。したがって、アンテナ装置1に取り付けられた受信アンテナ10全てが同時にヌルに入らないようにするためには、受信アンテナ10間の距離を、希望波到来方向に垂直な面における合成波の波長λの二分の一(即ち、ヌルの発生間隔)とは異なる距離にすればよい。
【0038】
更に言えば、二つの受信アンテナ10間の距離を、希望波到来方向に垂直な面における合成波の波長λの四分の一(即ち、ヌルの発生間隔の二分の一)とするのがよい。このようにすれば、一方の受信アンテナ10がヌル内にある場合に、他方の受信アンテナ10では、受信レベルが理論上ピークとなるから(図6参照)、放送信号を、他方の受信アンテナ10で良好に受信することができる。
【0039】
また、アンテナ装置1を設計する際には、上記合成波の波長λとして、受信悪化の原因となる合成波の波長を設定すればよいが、その合成波の波長は、妨害波の希望波に対する入射角や、希望波の周波数などによって変化する。
したがって、このような変化に対処できるよう、両端に配置する受信アンテナ10間の距離Wを、合成波の最大波長λaの四分の一(即ち、ヌルの発生間隔の最大長さの二分の一)程度に設定すると共に、3本目の受信アンテナ10を、両端の受信アンテナ10の中心地点からずらして配置するのがよい。
【0040】
以下では、この受信アンテナ10の配置に関するシミュレーション結果について説明する。
本発明者らは、次に示す1)〜6)の条件を満足する計算モデルを設定してシミュレーションを行った。
【0041】
1)希望波及び妨害波は、正弦波である。
2)希望波及び妨害波の周波数は同一であり、473MHz〜713MHzの範囲内である。
3)希望波に対する妨害波の入射角度Θは、5度〜40度である。
【0042】
4)アンテナ装置1を構成する受信アンテナは3つである。
5)アンテナ装置1を構成する各受信アンテナ10は、多素子で物理的に長さをもって空間を占めるが、長さによる影響は無視し、ダイポールアンテナ素子13での受信レベルを個々の受信アンテナ10の受信レベルとする。
【0043】
6)両端に配置される受信アンテナ10間の距離Wは、最大2m程度とする(アナログUHFアンテナ長程度)。
また、シミュレーションの際には希望波到達時刻を基点としたときの妨害波の遅延時間を、希望波到来方向に垂直な面における合成波の波長λに対応する範囲内で走査した。図3には、このシミュレーション結果の一例を示す。
【0044】
図3(a)は、両端の受信アンテナ10間の距離Wを、合成波の最大波長λaの四分の一(即ち、W=λa/4)とし、その両端の受信アンテナ10の中間地点に3本目の受信アンテナ10を配置することで、アンテナ装置1を構成する3つの受信アンテナを等間隔で配置したときのアンテナ装置1の受信レベルを示したものである。即ち、図3(a)に示すシミュレーション結果は、両端の受信アンテナ10の間に配置される受信アンテナ10と、両端の受信アンテナのうち一方との距離Lが、両端の受信アンテナ間の距離Wに対し、W−L=L(W=λa/4,L=λa/2)となるアンテナ装置1に関するものである。
【0045】
また、図3(b)は、両端の受信アンテナ10間の距離Wを、合成波の最大波長λaの四分の一(W=λa/4)とし、3本目の受信アンテナ10を、両端の受信アンテナ10の一方から、両端の受信アンテナ10間の距離Wの三分の二だけ離れた位置(即ち、L=2W/3となる位置)に配置することで、アンテナ装置1を構成する3つの受信アンテナを不等間隔で配置したときのアンテナ装置1の受信レベルを示したものである。即ち、図3(b)に示すシミュレーション結果は、両端の受信アンテナ10の間に配置される受信アンテナ10と、両端の受信アンテナのうち一方との距離Lが、両端の受信アンテナ間の距離Wに対し、W−L≠L(W=λa/4,L=λa/6)となるアンテナ装置1に関するものである。
【0046】
尚、図3に示すグラフは、横軸を妨害波の遅延時間としたときのアンテナ装置1の受信レベルを表すものである。また、ここでいうアンテナ装置1の受信レベルとは、複数の受信アンテナ10のうち、受信レベルが一番高いものがアンテナ選択回路47で選択され、その受信アンテナの受信信号が出力されると仮定し、各遅延時間毎に、その複数の受信アンテナ10のうち、受信レベルの一番高いものを当該アンテナ装置1の受信レベルとしたものである。その他、ここで設定した距離Wは、概ね1mである。
【0047】
図3からも理解できるように、等間隔で受信アンテナ10を配置した場合には、10dB以上受信レベルが下がる可能性があるが、不等間隔(具体的には、L=2W/3となる配置)で、受信アンテナ10を配置した場合には、最大で5dB程度のレベル低下で済む。このことから、受信アンテナ10は、等間隔に配置するよりも、3本目の受信アンテナ10を両端の受信アンテナ10の中心地点からずらして配置して3つの受信アンテナ10が不等間隔となるようにする(即ち、条件式W−L≠Lを満足するように受信アンテナ10を配置する)ほうが、好ましいことが理解できる。
【0048】
また周知のようにOFDM方式では、希望波(D)に対する妨害波(U)の振幅比(D/U比)が3dB以上であるときに、受信周波数帯域での受信信号の強度差である振幅リップルが15dB以下でないと、正しく復調が行えないため、アンテナ装置1はこれらの条件を満足する必要がある。また、より適切に復調が行えるようにするためには、余裕をもって、振幅リップルを5dB〜10dB以下とするのが好ましい。
【0049】
そこで、本発明者らは、上記計算モデルを用いて、振幅リップルが5dB以下となる受信アンテナ10の配置条件を求めた。そして、シミュレーションの結果から、振幅リップルを5dB以下に抑えるためには、三つの受信アンテナ10を、以下の条件式(1)を満足するように配置するのがよいことがわかった。
【0050】
0.2W≦|W−2L|≦0.3W …(1)
また同様に、本発明者らは、振幅リップルが10dB以下となる受信アンテナ10の配置条件を求めた。そして、シミュレーション結果から、振幅リップルを10dB以下に抑えるためには、三つの受信アンテナ10を、以下の条件式(2)を満足するように配置するのがよいことがわかった。
【0051】
0.1W≦|W−2L|≦0.3W …(2)
このように受信アンテナ10を配置し、アンテナ装置1を構成すれば、受信機側で良好に放送信号を復調することができる。したがって、図7に示すような地域で、テレビジョン放送の難視世帯を大幅に削減することができるのである。
【0052】
以上、各受信アンテナ10を、同一平面上に並べた図1,2に示す構成のアンテナ装置1に関して説明したが、ヌルの発生位置は、3次元的に変化するものであるので、より好ましくは、図4に示すように、スタックアンテナ部を構成するのが好ましい。
【0053】
図4は、変形例のアンテナ装置におけるスタックアンテナ部50の構成を表す説明図であり、図4(a)はその上面図、図4(b)はその側面図である。尚、このアンテナ装置における回路部40の構成は、上述のアンテナ装置1と同一であるので、その点についての詳しい説明は以下において省略することにする。
【0054】
変形例のスタックアンテナ部50は、マスト本体51aと、そのマスト本体51aを所定の角度φで支持する支柱51bと、からなるマスト51に、その支柱51bの軸線とは垂直な面(地平面)に沿って各受信アンテナ10を配置したものである。
【0055】
この際、各受信アンテナ10は、マスト51に沿った距離が上記条件式(1)若しくは(2)を満足するように配置される。即ち、支柱51bの軸線とは垂直な面(地平面)に沿った両端の受信アンテナ10間の距離をWとし、両端の受信アンテナ10の間に配置される受信アンテナ10と、両端に配置される二つの受信アンテナ10の一方との距離をLとした場合に、上記(1)若しくは(2)を満足するように、三つの各受信アンテナ10は配置される。
【0056】
この場合、支柱51bの軸線に沿った両端の受信アンテナ10間の距離Hと、両端の受信アンテナ10の間に配置される受信アンテナ10と両端の受信アンテナ10の一方との距離Lhは、幾何学的に同様の条件式(3)若しくは(4)を満足する。
【0057】
0.2H≦|H−2Lh|≦0.3H …(3)
0.1H≦|H−2Lh|≦0.3H …(4)
この変形例のアンテナ装置によれば、一層良好に放送信号を受信することができ、受信機側で良好な復調結果を得ることができる。したがって、ヌルが発生する地域で発生する難視世帯を大幅に削減することができる。
【0058】
また、アンテナ装置1においては、図2に示す構成の回路部40に代えて、図5に示す構成の回路部60を用いることも可能である。図5は、その変形例の回路部60の構成を示したブロック図である。
変形例の回路部60は、入力コネクタ61と、伝送線路63と、合成器65と、外部装置と電気的に接続される出力コネクタ69と、を備え、入力コネクタ61から入力される各受信アンテナ10の受信信号を、伝送線路63を通じて合成器65に入力する。そして、合成器65にて各受信アンテナ10の受信信号を合成し、その合成信号を、出力コネクタ69を通じて外部装置に入力する。このアンテナ装置によれば、良好な受信信号を、外部装置に提供して、外部装置側でその受信信号を適切に復調・再生させることができる。
【0059】
尚、本発明の端子部は、本実施例の出力コネクタ49,69に相当する。また本発明の切替回路は、本実施例のアンテナ切替回路45及びアンテナ選択回路47にて実現されている。
また、本発明のアンテナ装置は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、アンテナ装置1の受信アンテナ10は、その他の種類のアンテナでもよく、例えば、クロスダイポールアンテナでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例のアンテナ装置1におけるスタックアンテナ部30の構成を表す説明図である。
【図2】 アンテナ装置1における回路部40の構成を表す説明図である。
【図3】 アンテナ装置1に関するシミュレーション結果を表す説明図である。
【図4】 変形例のアンテナ装置におけるスタックアンテナ部50の構成を表す説明図である。
【図5】 変形例の回路部60の構成を表す説明図である。
【図6】 本発明の原理に関する説明図である。
【図7】 単一周波数ネットワークの構成を表す説明図である。
【符号の説明】
1…アンテナ装置、10…受信アンテナ、11…導波器、13…ダイポールアンテナ素子、15…反射器、17…給電部、20,51…マスト、21…アンテナ支持材、23…中間支持材、25,51b…支柱、30,50…スタックアンテナ部、40,60…回路部、41,61…入力コネクタ、43,63…伝送線路、45…アンテナ切替回路、47…アンテナ選択回路、49,69…出力コネクタ、51a…マスト本体、65…合成器、LN…伝送ケーブル

Claims (4)

  1. 単一周波数ネットワーク(SFN)において放送されるディジタル放送信号を受信するためのアンテナ装置であって、
    複数の受信アンテナとして、受信すべき希望波伝播方向に向けられて並列配置された三つの受信アンテナ
    を備え、
    前記三つの受信アンテナは、両端に配置される二つの前記受信アンテナの配置間隔Wが、受信すべき希望波と同一周波数帯の妨害波によって前記希望波が打ち消される空間であるヌルの発生間隔の最大長さの二分の一に等しく、両端に配置される前記二つの受信アンテナの間に配置される受信アンテナと、両端に配置される前記二つの受信アンテナのいずれか一方との配置間隔Lが、条件式
    W−L≠L
    を満足するように、並列配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
  2. 外部装置と電気的に接続される端子部と、
    前記複数の受信アンテナの夫々から入力される信号のいずれか一つを選択して、該選択した信号を前記端子部を通じて前記外部装置に入力する切替回路と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 外部装置と電気的に接続される端子部と、
    前記複数の受信アンテナの夫々から入力される信号を合成し、その合成信号を前記端子部を通じて前記外部装置に入力する合成器と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  4. 前記三つの受信アンテナは、両端に配置される二つの前記受信アンテナの配置間隔をWとし、両端に配置される前記二つの受信アンテナの間に配置される受信アンテナと、両端に配置される前記二つの受信アンテナのいずれか一方との配置間隔をLとした場合に、条件式
    0.2W≦|W−2L|≦0.3W
    を満足するように配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置。
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