JP4167096B2 - ポリプの除去又は増殖抑制方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明はクラゲの着生世代であるポリプを効果的に除去又は増殖抑制する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クラゲは、刺胞動物(あるいは腔腸動物)に属する動物である。傘径が十数cm以上に成長する比較的大型のクラゲの多く、例えばミズクラゲは、一生の中で浮遊クラゲ世代と着生ポリプ世代を交代することが知られている。その生活史の概略は以下の通りである(図1参照)。すなわち、クラゲの受精卵が発生して繊毛の生えたほぼ球状のプラヌラ幼生となり、これが適切な基盤に着生変態してポリプとなる。ポリプは分裂・出芽等により無性的に増殖し、コロニーを形成する。これらのポリプは水温低下等の条件によって体部に多数の横くびれが生じ横分体(ストロビラ)を形成する。この横分体の一つ一つのくびれがくびれきれることによって多数のエフィラ幼生が無性的に遊離し遊泳を開始する。このエフィラ幼生は遊泳生活中に胃水管系や触手を生じ、寒天層が発達して変態・成長しクラゲ成体となる。
【0003】
これらのクラゲ成体は火力発電所、原子力発電所等の海水利用プラントの取水口付近にしばしば大量に来襲し、海水利用プラントの海水取水を妨げる。かかるクラゲ成体の大量来襲による海水の取水障害は機器の性能低下、発電出力の低下、取水および発電停止等の極めて深刻な被害をもたらす。また、クラゲ成体は漁業施設にもしばしば大量に来襲する。この場合、クラゲ成体は定置網等の漁網に入り込み、漁網中の魚類の窒息、死亡、品質低下および漁網破損等の被害を発生させる。
【0004】
このようなクラゲ成体大量来襲による被害への対策として、現在、クラゲ成体出現状況の監視、海水取水口前面でのクラゲ成体防止網の設置、船舶・人手やスクリーンによるクラゲ成体回収、クラゲ成体来襲予知による対策の早期化等の様々な対策がなされている。しかし、これらの対策は全てクラゲ成体に対する対策であり、クラゲ成体の発生源であるポリプに対しては何ら対策がとられていないのが現状である。
【0005】
一方、クラゲの着生世代であるポリプの再生力は極めて強く、組織・細胞が死滅又は抑制されない限り再生すると言われている。例えば、ポリプの外形が崩壊し細胞塊となった場合でも、組織や細胞が生きていて再生能力を持つならば、細胞・細胞塊を静置することによって触手原基や腔腸部が形成され、水温20℃の環境においては細胞塊の状態から約1週間でポリプが形成されるという報告がある(非特許文献1参照)。従って、ポリプを除去又は増殖抑制する場合、十分にポリプ組織・細胞を死滅又は抑制させない限りポリプからのクラゲ成体の発生を完全に防止することは困難であると考えられる。しかしながら、ポリプ組織・細胞を十分に死滅又は抑制させるためにはどのような処理条件が有効であるかについては未だ明らかになっていない。
【0006】
【非特許文献1】
現代発生生物学シリーズ3 海産無脊椎動物の発生実験 第3章 腔腸動物・有櫛動物(柿沼好子)培風館 1988年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的はポリプを除去又は増殖抑制する効果的な方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するためにポリプ組織・細胞を十分に死滅又は抑制させるための有効な処理条件について鋭意研究した結果、ポリプを塩分濃度5‰以下の水、空気又は50℃以上の高温水に一定時間以上暴露させることによりポリプ組織・細胞を十分に死滅又は抑制させることができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の方法によれば、クラゲの着生世代であるポリプを塩分濃度5‰以下の水に暴露することを特徴とする、ポリプを除去又は増殖抑制する方法が提供される。
【0010】
本発明の第一の方法の好ましい実施態様においては、塩分濃度5‰以下の水へのポリプの暴露時間は1時間以上である。
【0011】
また、本発明の第二の方法によれば、クラゲの着生世代であるポリプを空気に3日以上暴露することを特徴とする、ポリプを除去又は増殖抑制する方法が提供される。
【0012】
本発明の第二の方法の好ましい実施態様においては、空気へのポリプの暴露時間は1週間以上である。
【0013】
さらに、本発明の第三の方法によれば、クラゲの着生世代であるポリプを50℃以上の高温水に暴露することを特徴とする、ポリプを除去又は増殖抑制する方法が提供される。
【0014】
本発明の第三の方法の好ましい実施態様においては、50℃以上の高温水へのポリプの暴露時間は10分間以上である。
【0015】
本発明の第一乃至第三の方法の更に好ましい実施態様においては、塩分濃度5‰以下の水、空気又は50℃以上の高温水へのポリプの暴露はポリプの着生場所で着生状態のまま行われる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明はクラゲの着生世代であるポリプを効果的に除去又は増殖抑制する方法を提案するものであり、これによりポリプからのクラゲ成体の発生を防止することを意図するものである。以下、本発明の上述の第一乃至第三の方法について順に説明する.
【0017】
本発明の第一の方法においては、ポリプを塩分濃度5‰以下の水に暴露することによりポリプが除去又は増殖抑制される。この塩分濃度5‰以下の水は例えば海水(塩分濃度約30‰)を希釈した低塩分水又は淡水であることができる。かかる低塩分水又は淡水への暴露によりポリプが除去又は増殖抑制される理由としては、ポリプ組織・細胞が細胞内外の塩分濃度の極端な違いから浸透圧による大きなダメージを受け、結果として組織および細胞破壊に至ることが考えられる。なお、本発明者らが調査したところ、塩分濃度10‰程度の低塩分水ではたとえ24時間ポリプを暴露してもポリプ組織および細胞は破壊されなかった。
【0018】
本発明の第一の方法においてポリプを塩分濃度5‰以下の水に暴露する時間はポリプ組織・細胞を死滅又は抑制させるのに十分な時間であれば特に限定されないが、1時間以上暴露すればポリプ組織・細胞を十分に死滅又は抑制させることができる。
【0019】
本発明の第二の方法においては、ポリプを空気に3日以上暴露することによりポリプが除去又は増殖抑制される。かかる処理によりポリプが除去又は増殖抑制される理由としては、ポリプ組織・細胞が空気に長時間さらされることにより組織・細胞が壊死し、結果として組織および細胞破壊に至ることが考えられる。なお、本発明者らが調査したところ、空気に一日程度ポリプを暴露してもポリプ組織および細胞は破壊されなかった。本発明の第二の方法においてポリプを空気に暴露する時間は3日以上必要であり、1週間以上であることがポリプ組織・細胞を十分に死滅又は抑制させる上で好ましい。
【0020】
本発明の第三の方法においては、ポリプを50℃以上の高温水に暴露することによりポリプが除去又は増殖抑制される。かかる処理によりポリプが除去又は増殖抑制される理由としては、ポリプ組織・細胞が高温水処理により組織・細胞が熱死し、結果として組織および細胞破壊に至ることが考えられる。なお、本発明者らが調査したところ、40℃程度の高温水ではたとえ10分間ポリプを暴露してもポリプ組織および細胞は破壊されなかった。本発明の第三の方法においてポリプを50℃以上の高温水に暴露する時間はポリプ組織・細胞を死滅又は抑制させるのに十分な時間であれば特に限定されないが、10分間以上暴露すればポリプ組織・細胞を十分に死滅又は抑制させることができる。
【0021】
本発明の方法を実施するにあたって塩分濃度5‰以下の水、空気又は50℃以上の高温水へのポリプの暴露はポリプの着生場所で着生状態のまま行うことが好ましい。ポリプ付着部位周辺を切断するなどしてポリプをその着生場所から回収すると、塩分濃度5‰以下の水、空気又は50℃以上の高温水にまとめて暴露させることができるので一見好ましく思えるが、実際はポリプを完全に回収することができず、付着基盤側に残った組織からのポリプ再生や回収しきれなかった浮遊切断個体の再付着が高い確率で生ずるのでポリプの除去又は増殖抑制効果が低くなり、あまり好ましくない。
【0022】
ポリプは野生状態では浮き桟橋や防波堤のオーバーハング等の人工構造物の水平裏面部に通常着生している。一方、本発明の方法において用いる塩分濃度5‰以下の水、空気又は50℃以上の高温水は海水よりも比重が小さい。従って人工構造物の水平裏面部に着生しているポリプの周囲に必要により水平裏面部から下方に延びる障壁を設けてポリプを包囲し、その包囲の中に塩分濃度5‰以下の水、空気又は50℃以上の高温水を注入して海水と置換してやれば、ポリプをその着生場所で着生状態のまま塩分濃度5‰以下の水、空気又は50℃以上の高温水に暴露させることができる。
【0023】
本発明の方法によれば、クラゲの着生世代であるポリプを効果的に除去又は増殖抑制することができ、これを利用すればポリプからのクラゲ成体の発生を確実に防止することができる。例えば、海水利用プラントや漁業施設へ来襲するクラゲ成体の発生源であり得るポリプ集団を本発明の方法を用いて除去又は増殖抑制することにより、クラゲ成体の来襲によるこれらの施設への被害を根本的に防止することができる。本発明の方法は特に「クラゲ成体の来襲予防方法」と題する同一出願人の別途同日付の出願に開示されている方法と共に好適に使用することができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明の方法を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、以下の試験例の理解を容易にするため、ミズクラゲの生活史について図1を参照して補足説明する。
ミズクラゲ成体の雌体内にて受精した卵より、体表が繊毛で被われたプラヌラ幼生が生じる。プラヌラ幼生は繊毛を用いて遊泳し、基盤に付着後、変態してポリプとなる。ポリプは16本の触手を用いて動物プランクトン等の餌を口へと運び、それらを消化、栄養を吸収する。ポリプは分裂、またはポリプ根元より芽のように組織を出して(出芽)新しいポリプを形成する(無性生殖)。また、ポリプ根元よりストロン(走根)を伸ばして基盤上を移動し、ストロン上からの出芽や移動時に残されたキチン質の鞘に被われた細胞塊(足盤)からポリプ形成が行われる。このようにポリプは無性生殖を行って増殖し、コロニーを形成する。次に、水温の低下等によって、ポリプにくびれが生じストロビラになる。くびれの1つ1つは横分体と呼ばれ、横分体形成(ストロビレーション)が進むにともないポリプ由来の触手が吸収される。先端の横分体は拍動(パルセーション)を活発に行い、ストロビラから遊離してエフィラ幼生となる。エフィラ幼生は8対の縁弁を持ち、プランクトンを摂餌して成長しやがてミズクラゲ成体となる。ミズクラゲ雄・雌が有性生殖を行い再び受精卵が生じる。
【0025】
試験例1. 低塩水処理によるミズクラゲポリプ除去又は増殖抑制
横分体形成(ストロビレーション)条件下にあるポリプコロニーを対象として、短時間の低塩分および淡水処理によるポリプ・ストロビラの除去、ポリプ増殖抑制、ストロビラからのエフィラ発生抑制の可能性について検討するために以下の試験を行った。
【0026】
(1)試験方法
若狭湾にて採集した成体ミズクラゲ(雌)より得られたプラヌラ幼生から付着変態したポリプを循環式水槽にて飼育した。飼育水温は25±1℃、餌として孵化したブラインシュリンプ(動物プランクトン)を与えた。これらのポリプを直径9センチのPMP(ポリメチルペンテン)シャーレに数個体移植し1〜2週間静置した。シャーレに付着したポリプに週約3回、1週間程度、孵化したブラインシュリンプを餌として与えた後、12.5℃に設定した恒温装置に移し、これらのシャーレに付着しているポリプと12.5℃の低温処理によってポリプから形態変化させたストロビラを用いて試験を行った。試験水温は12±1℃、試験海水は天然海水を定性2号ろ紙でろ過した後、純水を混ぜて塩分濃度30‰・10‰・5‰・0‰(純水)に調節して用いた。なお、塩分濃度は電極式塩分計を使用した。淡水処理時間は無し、1時間、24時間とし、塩分濃度30‰で処理時間無しをコントロールとした。サンプルは1シャーレのポリプを1コロニーとし、ポリプコロニー試験は処理条件の組み合わせにより各3例(3シャーレ)の試験を行った。シャーレは処理後、塩分濃度30‰海水を約1,000ml満たした止水式のプラスチック水槽に収容し、12.5℃に設定した恒温装置に移してポリプ、ストロビラ、エフィラの観察を行った。試験期間中の個体数の計測については、触手が確認できる個体をポリプとし、触手の有無にかかわらず横分体が確認できる個体をストロビラ、ストロビラから遊離し縁弁が確認できる個体をエフィラとした。
【0027】
(2)試験結果
試験結果を図2及び図3に示す。
(a)[コントロール:ポリプコロニー]シャーレNo.1〜3
実験開始1日・3日・6日・14日後にポリプ付着部付近において、出芽による新しいポリプが形成され(無性生殖)、ポリプ数の増加がみられた。実験期間中にポリプからストロビラへ形態変化した個体は見られなかった。
【0028】
(b)[10‰1時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.4〜6(比較例)処理中のポリプの様子は処理前と同様に触手を広げた状態であった。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した後は、触手を縮めて触手先端を口の中に入れた状態の個体が多く、ポリプの周辺に粘液が見られる個体も観察された。処理1日後は縮んでいた触手も伸び始め、3日後には触手をより細く長く伸ばしている様子が観察された。処理6・14日後には無性生殖によるポリプ数の増加が見られた。実験期間中にポリプからストロビラへ形態変化した個体は見られなかった。
【0029】
(c)[10‰24時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.7〜9(比較例)
処理中のポリプの様子は、時間経過と共に触手を縮めて触手先端を口の中に入れた状態の個体が多く見られた。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した後も同様の状態の個体が多く、ポリプの周辺に粘液が見られる個体も観察された。処理1日後、縮んでいた触手がわずかに伸び始める個体が見られるが、大部分の個体は3日後以降から触手を伸ばし始めた。処理3日後に一部のポリプがシャーレより剥がれ付着ポリプ数は減少したが、6・14日後には無性生殖によるポリプ数の増加が見られた。また、実験期間中にポリプからストロビラへ形態変化した個体は見られなかった。
【0030】
(d)[5‰1時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.10〜12(本発明)
処理中のポリプの様子は、触手を縮めた個体と触手をわずかに広げているが触手表面の組織が崩れている個体などが観察された。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した際、ポリプの組織が崩れそれらが海水中に溶出する様子や触手・口の構造が確認できない個体が見られた。処理1日後、ポリプとしての外形はかろうじて保っているが表面の組織が崩れ始めている個体、またシャーレからのポリプ剥離が観察された。その後、ポリプの外形の崩壊はより進み、シャーレ付着跡にわずかな組織塊や足盤のみが残っている様子が確認された。実験開始後の無性生殖によるポリプ数の増加は見られなかった。
【0031】
(e)[5‰24時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.13〜15(本発明)
処理中のポリプの様子は、触手を広げているが触手表面の組織が崩れている個体が多く観察された。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した際、すべてのポリプは外形が崩れて組織が海水中に溶出し、次いでシャーレからのポリプの剥離が起こり、付着跡にはわずかな組織と足盤が残存する様子が観察された。処理1日後以降、シャーレ上の残存組織と足盤も徐々に崩れ、処理14日後にはわずかに確認できる程度であった。シャーレに残った組織からポリプへの再生は見られなかった。
【0032】
(f)[0‰1時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.16〜18(本発明)
処理中のポリプの様子は触手や体の組織が崩れ始め、処理海水に混ざる様子が見られた。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した際、すべてのポリプの外形は大きく崩れ、組織は処理海水に溶出して触手や口の構造は確認できなかった。処理1日後、大部分の組織はシャーレから剥離し、付着跡にわずかな組織とそれらの組織にかろうじて付着している足盤が残っている状態であった。処理3日後以降、シャーレ上の残存組織と足盤は徐々に崩れ、それらは処理14日後にわずかに確認できる程度であった。シャーレに残った組織からポリプへの再生は見られなかった。
【0033】
(g)[0‰24時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.19〜21(本発明)
処理中のポリプの様子は、触手や体部表面の組織崩壊が進み、外形が崩れて組織が処理海水に溶出する様子が観察された。処理終了時に塩分濃度30‰海水にて換水した際、すべてのポリプは形が崩れ組織が海水中に溶出した。処理1日後、ポリプ組織の大部分はシャーレから剥離し、付着跡にはわずかな組織とそれらの組織にかろうじて付着している足盤が残った。処理3日後以降、シャーレに残ったポリプの組織と足盤は徐々に崩れ、処理14日後にわずかに確認できる程度であった。シャーレに残った組織からポリプへの再生は見られなかった。
【0034】
(3)考察
ポリプに対する10‰1時間・10‰24時間淡水処理(比較例)は、目立ったポリプ組織崩壊や剥離が見られず、処理6日後よりポリプの無性生殖が始まることから、ポリプの除去・増殖抑制効果が低いと判断された。
5‰1時間処理(本発明)は、一部のポリプ組織が崩壊し剥離することによってポリプ数が減少し、一時的なポリプ除去・増殖抑制効果が認められた。
5‰24時間・0‰1時間・0‰24時間淡水処理(本発明)は、処理終了後すべてのポリプの外形が崩れ、大部分の組織崩壊と剥離がみられた。ポリプの外形が崩壊し細胞塊となった場合でも組織や細胞が生きており再生能力を持つならば、細胞・細胞塊を静置することによって触手原基や腔腸部が形成され、水温20℃の環境においては細胞塊の状態から約1週間でポリプが形成されるという報告がある(現代発生生物学シリーズ3 海産無脊椎動物の発生実験 第3章 腔腸動物・有櫛動物(柿沼好子)培風館 1988年)。
しかし、5‰24時間・0‰1時間・0‰24時間処理において、処理後14日後に残存組織からの再生はなく、約1ヶ月後に観察したところ、残存した組織において触手原基等の組織の再生はまったく確認できなかった。これらの組織細胞は淡水処理による細胞内外の塩分濃度の極端な違いから、浸透圧による大きなダメージを受け細胞破壊に至ったと考えられる。よって、付着跡のわずかな組織からポリプが再生する可能性は低く、本発明のこれらの処理によるポリプ除去効果・増殖抑制効果は非常に高いと判断された。
【0035】
試験例2. 空気暴露処理によるミズクラゲポリプ除去又は増殖抑制
横分体形成(ストロビレーション)条件下にあるポリプコロニーとストロビラを含んだポリプコロニーを用いて、空気暴露(一時的な干出)処理によるポリプ・ストロビラの除去、ポリプ増殖抑制、ストロビラからのエフィラ発生抑制の可能性について検討するために以下の試験を行った。
【0036】
(1)試験方法
若狭湾にて採集した成体ミズクラゲ(雌)より得られたプラヌラ幼生から付着変態したポリプを循環式水槽にて飼育した。飼育水温は25±1℃、餌として孵化したブラインシュリンプ(動物プランクトン)を与えた。これらのポリプを直径9センチのPMP(ポリメチルペンテン)シャーレに数個体移植し1〜2週間静置した。シャーレに付着したポリプにほぼ週3回、1週間程度、孵化したブラインシュリンプを餌として与えた後、12.5℃に設定した恒温装置に移し、これらのシャーレに付着しているポリプと12.5℃の低温処理によってポリプから形態変化したストロビラを用いて試験を行った。試験条件は、水温12±1℃、海水は天然海水を定性2号ろ紙でろ過した後、純水を混ぜ、電極式塩分計を用いて塩分濃度30‰に調節した。空気暴露処理時間は無し(コントロール)、1時間、24時間、1週間とした。サンプルは1シャーレのポリプを1コロニーとし、ポリプコロニー試験は処理条件により各3例(3シャーレ)、ストロビラを含んだポリプコロニー試験は同じく各3例の試験を行った。シャーレは処理後、塩分濃度30‰海水を約1,000ml満たした止水式のプラスチック水槽に収容し、12.5℃に設定した恒温装置に移してポリプ、ストロビラ、エフィラの観察を行った。試験期間中の個体数の計測については、触手が確認できる個体をポリプとし、触手の有無にかかわらず横分体が確認できる個体をストロビラ、ストロビラから遊離し縁弁が確認できる個体をエフィラとした。
【0037】
(2)試験結果
試験結果を図4〜図7に示す。
(a)[コントロール:ポリプコロニー]シャーレNo.1〜3
実験開始3日・6日後にポリプの付着部付近において、出芽による新しいポリプが形成され(無性生殖)ポリプ数の増加がみられた。実験期間中にポリプからストロビラへ形態変化した個体は見られなかった。
【0038】
(b)[コントロール:ストロビラ・ポリプコロニー]シャーレNo.13〜15
観察開始時にポリプ様の長い触手を持っていた若いストロビラは触手を短く太くさせてしだいに触手を吸収し、数枚の横分体を持つストロビラへと形態変化を行う様子が観察された。すでに触手を持たないストロビラは先端の横分体が拍動(パルセーション)を始め、次第に頻繁に大きく拍動して先端の1枚が遊離し、エフィラ幼生が誕生した。このようにストロビラ先端の横分体が順次拍動と遊離を繰り返しすべての横分体が遊離した後、シャーレに付着したまま残る組織が再びポリプとなり、触手を伸長していく様子が観察された。
【0039】
(c)[1時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.4〜6(比較例)
処理中のポリプの様子は触手や体を縮め、ポリプ内部および周辺の水分は保持された状態であった。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した後は、触手を広げ処理前と形態的な違いは見られなかった。処理1日・6日後には、無性生殖によるポリプ数の増加が見られ、14日後にはポリプからストロビラへの形態変化が観察された。
【0040】
(d)[1時間処理:ストロビラ・ポリプコロニー]シャーレNo.16〜18(比較例)
処理中のストロビラの様子は体部を縮め、ストロビラ内部および周辺の水分は保持された状態であった。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した際にストロビラより遊離するエフィラが1個体あり、縁弁を16枚持つ奇形エフィラであった。実験期間中、無性生殖によるポリプ数の増加はなかったが、ポリプからストロビラへの形態変化、ストロビラからのエフィラの遊離、エフィラ遊離後のストロビラ残存組織からのポリプへの形態形成が観察された。
【0041】
(e)[24時間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.7〜9(比較例)
処理中のポリプの様子は触手や体を縮め、ポリプ内部および周辺の水分は保持された状態であった。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した後は、触手を縮めて口を大きく開けた状態であったが、処理2日後には触手を伸ばす様子が観察された。実験期間中、無性生殖によるポリプ数の増加はなかったが、処理14日後にはポリプからストロビラへの形態変化が観察された。
【0042】
(f)[24時間処理:ストロビラ・ポリプコロニー]シャーレNo.19〜21(比較例)
処理中のストロビラの様子は体を縮め、ストロビラ内部および周辺の水分は保持された状態であった。処理終了後に塩分濃度30‰海水にて換水した際にストロビラより遊離した2個体のエフィラが拍動して遊泳する様子、また、ストロビラの先端の横分体にも処理前と同じく拍動する様子が見られた。実験期間中、無性生殖によるポリプ数の増加はなかったが、ポリプからストロビラへの変化、ストロビラからのエフィラの遊離、エフィラ遊離後のストロビラ残存組織からのポリプへの形態形成が観察された。
【0043】
(g)[1週間処理:ポリプコロニー]シャーレNo.10〜12(本発明)
処理中のポリプの状態は乾燥することなくポリプ周辺の水分が保たれた状態であったが、ポリプ組織の崩壊が見られポリプが保持していた水分と共に組織が溶出している様子が観察された。処理終了後、塩分濃度30‰海水にて換水した際にはポリプ組織の大部分は崩れ落ち、付着跡にわずかな組織が残った。シャーレに残ったポリプ組織は徐々に剥離し、処理14日後にはわずかに確認できる程度となり、ポリプへの再生は見られなかった。
【0044】
(h)[1週間処理:ストロビラ・ポリプコロニー]シャーレNo.22〜24(本発明)
処理中のストロビラの状態はポリプと同じく、周辺の水分が保たれた状態であったがストロビラ組織の崩壊が見られ、ストロビラが保持していた水分と共に組織が溶出している様子が観察された。処理終了後、塩分濃度30‰海水にて換水した際にはストロビラ組織の大部分は崩れ落ち、付着跡にわずかな組織が残った。シャーレに残った組織は徐々に剥離し、処理14日後にはわずかに確認できる程度となり、ポリプへの再生は見られなかった。
【0045】
(3)考察
ポリプとストロビラに対する1時間・24時間空気暴露処理(比較例)は、目立った組織崩壊や剥離が見られず、1時間処理ではコントロールと同じく3日後よりポリプの無性生殖が始まった。1時間・24時間処理は共に、ポリプからストロビラへの形態変化、ストロビラからのエフィラの遊離が観察された。これらの結果から、ポリプ・ストロビラの除去効果とポリプ増殖抑制効果、ストロビラからのエフィラ発生抑制効果は低いと判断された。またエフィラ遊離後のストロビラの残存組織からポリプへの形態形成が確認されたことから、このポリプの成長に伴うさらなるストロビラへの形態変化とエフィラ再発生の可能性が示唆された。
ポリプとストロビラに対する1週間空気暴露処理(本発明)の場合、処理終了直後よりすべての個体で大部分の組織の崩壊や剥離が起こり、ポリプの無性生殖・ポリプからストロビラへの形態変化・ストロビラによるエフィラの遊離はなかった。シャーレに残存した組織の約1ヶ月後の観察からもポリプの再生は確認できなかった。これらの組織細胞は空気暴露処理によって空気に長時間さらされることにより、大きなダメージを受け組織および細胞破壊に至ったと考えられる。よって残存組織からポリプが再生する可能性は低く、本発明の処理におけるポリプ・ストロビラの除去効果、残存組織からの再生抑制効果は非常に高く、ポリプ増殖やエフィラ発生を抑制することが明らかになった。
【0046】
試験例3. 高温水処理によるミズクラゲポリプ除去又は増殖抑制
横分体形成(ストロビレーション)条件下にある、ストロビラを含んだポリプコロニーを対象に一時的な高温水暴露処理によるポリプ・ストロビラの除去、ポリプ増殖抑制、ストロビラからのエフィラ発生抑制の可能性について検討するために以下の試験を行った。
【0047】
(1)試験方法
若狭湾にて採集した成体ミズクラゲ(雌)より得られたプラヌラ幼生から付着変態したポリプを循環式水槽にて飼育した。飼育水温は25±1℃、餌として孵化したブラインシュリンプ(動物プランクトン)を与えた。これらのポリプを直径9センチのPMP(ポリメチルペンテン)シャーレに数個体移植し1〜2週間静置した。シャーレに付着したポリプにほぼ週3回、1週間程度、孵化したブラインシュリンプを餌として与えた後、12.5℃に設定した恒温装置に移し、これらのシャーレに付着しているポリプと12.5℃の低温処理によってポリプから形態変化したストロビラを用いて試験を行った。試験条件は、水温12±1℃、海水は天然海水を定性2号ろ紙でろ過した後、純水を混ぜて塩分濃度30‰に調節して用いた。なお、塩分濃度は電極式塩分計を使用した。高温処理水温は12±1℃(コントロール)、約40℃、約50℃とし、処理時間は10分間とした。サンプルは1シャーレのポリプを1コロニーとし、処理条件につき各3例(3シャーレ)の試験を行った。シャーレは処理後、塩分濃度30‰海水を約1,000ml満たした止水式のプラスチック水槽に収容し、12.5℃に設定した恒温装置に移してポリプ、ストロビラ、エフィラの観察を行った。試験期間中の個体数の計測については、触手が確認できる個体をポリプとし、触手の有無にかかわらず横分体が確認できる個体をストロビラ、ストロビラから遊離し縁弁が確認できる個体をエフィラとした。
【0048】
(2)試験結果
試験結果を図8及び図9に示す。
(a)[コントロール:ポリプとストロビラコロニー]シャーレNo.1〜3
実験開始1日・3日後にポリプの付着部付近において、出芽による新しいポリプが形成され(無性生殖)ポリプ数の増加がみられた。実験期間中にポリプからストロビラへ形態変化した個体はなく、ストロビラ先端の横分体が拍動してすべてのエフィラが遊離した後、ストロビラ残存組織からポリプへと形態形成した個体が観察された。
【0049】
(b)[40℃処理:ポリプ・ストロビラコロニー]シャーレNo.4〜6(比較例)
処理中のポリプの様子は触手を縮めて短く、体も収縮している状態であった。処理終了後に通常海水にて換水した後、処理中と同じく触手を縮めた状態であったが、処理3日後より触手を広げ無性生殖によるポリプ数の増加が見られた。
処理中のストロビラの様子は体部を縮め、処理前に拍動が見られた個体は拍動を停止した。処理終了後に通常海水にて換水した際、ストロビラより遊離するエフィラが1個体、シャーレより剥離したストロビラが1個体見られた。また、先端の横分体がわずかに拍動するストロビラが観察された。処理1日後は先端横分体が活発に拍動するストロビラ見られ、処理3日・6日・14日後にはストロビラから遊離したエフィラが多数観察された。これらの遊離したすべてのエフィラは、拍動と共に遊泳する様子が見られた。実験期間中、ポリプからストロビラへの形態変化とストロビラからのエフィラの遊離、エフィラ遊離後のストロビラ残存組織からポリプへの形態形成が観察された。
【0050】
(c)[50℃処理:ポリプ・ストロビラコロニー]シャーレNo.7〜9(本発明)
処理中のポリプの様子は触手を伸ばし、口を大きく広げた状態であった。処理終了後に通常海水にて換水した際、ポリプ組織が崩れ、海水中に組織が溶出していく様子が観察された。処理1日後には付着跡にわずかな組織とそれらの組織にかろうじて付着している足盤が残った。シャーレに残ったポリプ組織は徐々に崩れ落ち、処理14日後にはわずかに確認できる程度となり、ポリプへの再生は見られなかった。
処理中のストロビラの様子は触手を大きく広げ、処理前に拍動が見られた個体は拍動を完全に停止した。処理終了後に通常海水にて換水した際には、ストロビラ組織が崩れ、ポリプと同様に海水中に組織が溶出する様子が観察された。処理1日後には付着跡にわずかな組織とそれらの組織にかろうじて付着している足盤が残った。シャーレに残ったストロビラ組織も徐々に崩れ落ち、処理14日後にはわずかに確認できる程度となり、ポリプへの再生は見られなかった。
【0051】
(3)考察
ポリプとストロビラに対する40℃・10分高温水処理(比較例)は、目立った組織崩壊や剥離が見られず、コントロールと同じく3日後よりポリプの無性生殖が始まり、ポリプからストロビラへの形態変化、ストロビラからのエフィラの遊離とポリプへの形態変化が観察された。これらの結果から、40℃高温処理によるポリプ・ストロビラの除去効果とポリプ増殖抑制効果、ストロビラからのエフィラ発生抑制効果は低いと判断された。またエフィラ遊離後のストロビラからポリプへの形態変化が確認されたことから、このポリプからのさらなるストロビラへの変化とエフィラ再発生の可能性が示唆された。
ポリプとストロビラに対する50℃・10分高温水処理(本発明)は、処理終了直後よりすべての個体で大部分の組織の崩壊や剥離が起こり、ポリプの無性生殖・ポリプからストロビラへの形態変化・ストロビラによるエフィラの遊離はなかった。シャーレに残存した組織の約1ヶ月後の観察からもポリプの再生は確認できなかった。これらの組織細胞は短時間の高温水処理により、大きなダメージを受けて細胞破壊に至ったと考えられる。よって残存組織からポリプが再生する可能性は低く、本発明の処理におけるポリプ・ストロビラの除去効果、残存組織からの再生抑制効果は非常に高く、ポリプ増殖やエフィラ発生を抑制することが明らかになった。
【0052】
試験例4. 物理的手法(切断処理)によるポリプコロニーの除去又は増殖抑制(比較例)
ミズクラゲのポリプやストロビラを対象に発生や再生について、学問的な視点からの研究は報告されている(Kakinuma,Y.(1975) An experimental study of the life cycle and organ differentiation of Aureliaaurita Lamarck.Biol.Bull.Asamushi Tohoku Univ.,Vol.15,101−117.など)。また、除去や対策についての調査報告は、ミズクラゲ成体の来襲予測やネットなどで回収した際の処理方法には言及されているが、ポリプ・ストロビラの除去について参考となる文献は皆無であった。よって本試験例は、物理的手法によるポリプ・ストロビラの除去がエフィラ発生抑制の対策として効果的であるかという視点から以下の試験を行った。
付着基盤からポリプ・ストロビラの掻き取りによる、ポリプ・ストロビラの除去効果について検討するために、付着基盤側に1mm以下のポリプ柱体部組織(図1)を残して付着部位を切断し、付着基盤に残った組織からのポリプの再生と切断されたポリプの再付着の可能性を調査した。また、ストロビラについても付着基盤側に1mm以下のストロビラ柱体部組織を残してストロビラ付着部位を切断し、付着基盤に残った組織からのポリプの再生と切断されたストロビラの再付着の可能性、ストロビラからのエフィラ遊離の可能性について試験した。
【0053】
(1)試験方法
若狭湾のある漁港にて採集した成体ミズクラゲ(雌)より得られたプラヌラ幼生から付着変態したポリプを循環式水槽にて飼育した。飼育水温は25±1℃、餌として孵化したブラインシュリンプ(動物プランクトン)を与えた。このポリプを直径9センチのPMP(ポリメチルペンテン)シャーレに移植し、ポリプが付着したシャーレを12.5℃の低温下においた。これらのシャーレに付着したポリプ5個体とポリプより形態変化したストロビラ10個体を用いて試験を行った。ポリプは顕微鏡下で付着基盤(シャーレ)に1mm以下の柱体部組織が残存するよう剃刀を用いて切断し、残存組織は12.5℃下で1日・3日・6日・14日後に観察した。切断ポリプは新しいシャーレに移し、12.5℃下で静置し6日・14日後に観察した。ストロビラも同様に顕微鏡下で付着基盤(シャーレ)に1mm以下の組織が残存するよう剃刀を用いて切断し、残存組織は12.5℃下で静置し1日・3日・6日・14日後に観察した。切断ストロビラは新しいシャーレに移し、12.5℃下で静置し1日・3日・6日・14日に観察した。試験期間中の個体数の計測については、触手が確認できる個体をポリプとし、触手の有無にかかわらず横分体が確認できる個体をストロビラ、ストロビラから遊離し縁弁が確認できる個体をエフィラとした。
【0054】
(2)試験結果
(a)[ポリプ試験]
試験結果を図10に示す。
ポリプ付着部位周辺の切断による付着基盤側に残った柱体部組織からのポリプの再生は、処理6日後から触手形成が見られ、試験期間終了時(14日後)までに5例中、1例(再生率20%)のポリプ再生が確認された。また、付着基盤より切断されたポリプは、処理6日後から切断部位よりストロンが伸長し再付着が見られた。試験期間終了時(14日後)までに5例中、3例(付着率60%)のポリプ再付着が確認された。また、再付着する前にポリプにくびれが生じてストロビラへ形態変化する過程が観察された。
【0055】
(b)[ストロビラ試験]
試験結果を図11に示す。
ストロビラ付着部位周辺の切断による付着基盤側に残った柱体部組織からのポリプの再生は、処理6日後から触手形成が見られ、試験期間終了時(14日後)までに10例中、3例(再生率30%)のポリプ再生が確認された。また、付着基盤より切断されたストロビラは、処理3日後から切断部位よりストロンが伸長し再付着が見られた。実験期間終了時(14日後)までに10例中、8例(付着率80%)のストロビラ再付着が確認された。ストロビラ切断後、ストロビラの再付着を待たずに横分体の成長が進み、エフィラの遊離が観察された。すべてのストロビラよりエフィラの遊離が観察され、同じストロビラより遊離した4個体のエフィラにおいて、10対もしくは12対の縁弁を持つ奇形エフィラが見られた(正常発生時8対)。また、別個体のストロビラから遊離した複数のエフィラのうち、切断部にもっとも近い横分体より遊離したエフィラは拍動する3枚の縁弁とわずかな胃腔しか持っていなかった。
【0056】
(3)考察
ポリプ・ストロビラの切断処理による、付着基盤側に残った組織からのポリプ再生と切断個体の再付着は高い確率で生じる結果となった。付着基盤側の組織からのポリプ再生の有無は、残存する組織の大きさに依存していなかったことから、切断した位置や切断状態によって再生状況が異なる可能性が推測された。切断されたポリプとストロビラは未付着の状態でも形態発生が進み、ポリプからストロビラへの形態変化、触手をもつ若いストロビラから触手吸収後の完全なストロビラへの変化、ストロビラからのエフィラの遊離、エフィラ遊離後の残存組織からの触手の形成とポリプへの成長が確認できた。また、ストロビラからの奇形エフィラの発生については、物理的な切断によって切断部位および周辺組織の分化や形態形成に異常が生じたためではないかと推測される。
これらの結果から、ポリプ切断処理においては一度付着基盤より離れた切断ポリプが再び基盤に付着する可能性が考えられる。ストロビラ切断処理においても付着基盤より離れたストロビラからエフィラが次々と遊離すると同時に、エフィラ遊離後のストロビラ残存組織が再び基盤に付着し、ポリプへと成長する可能性が考えられる。また、付着基盤に残存する組織から新たなポリプが成長してストロビラを再形成すると推定されるため、エフィラ発生抑制は一定期間に限定されると判断された。従って、切断という物理的処理によってはポリプを効果的に除去又は増殖抑制することができないことが判明した。
【0057】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので、クラゲの着生世代であるポリプを簡単かつ効果的に除去又は増殖抑制することができる。特に、本発明の方法は着生しているポリプに着生状態のまま適用できるのでポリプの除去又は増殖抑制に極めて効果的である。かかる方法は海水利用プラントの取水口付近又は漁業施設へ来襲するクラゲ成体の発生を根本的に断絶するために有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ミズクラゲの生活史の概略の説明図である。
【図2】ポリプコロニーに対する低塩水処理後のポリプ数を示す。
【図3】ポリプコロニーに対する低塩水処理後のポリプ数変化を示す。
【図4】ポリプコロニーに対する空気暴露処理後のポリプ数を示す。
【図5】ポリプ・ストロビラコロニーに対する空気暴露処理後のポリプ・ストロビラ・エフィラ数を示す。
【図6】ポリプコロニーに対する空暴露処理後のポリプ数変化を示す。
【図7】ポリプ・ストロビラコロニーに対する空気暴露処理後のポリプ・ストロビラ数の変化を示す。
【図8】ポリプ・ストロビラコロニーに対する高温水処理後のポリプ・ストロビラ・エフィラ数を示す。
【図9】ポリプ・ストロビラコロニーに対する高温水処理後のポリプ・ストロビラ数の変化を示す。
【図10】物理処理後の切断ポリプと付着基盤残存組織の様子を示す。
【図11】物理処理後の切断ポリプと付着基盤残存組織の様子を示す。

Claims (7)

  1. クラゲの着生世代であるポリプを塩分濃度5‰以下の水に暴露することを特徴とする、ポリプを除去又は増殖抑制する方法。
  2. 暴露時間が1時間以上であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. クラゲの着生世代であるポリプを空気に3日以上暴露することを特徴とする、ポリプを除去又は増殖抑制する方法。
  4. 暴露時間が1週間以上であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
  5. クラゲの着生世代であるポリプを50℃以上の高温水に暴露することを特徴とする、ポリプを除去又は増殖抑制する方法。
  6. 暴露時間が10分間以上であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
  7. ポリプの着生場所で着生状態のまま暴露が行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項の方法。
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