JP4165669B2 - 化粧品用樹脂組成物およびその製法 - Google Patents

化粧品用樹脂組成物およびその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系の両性ウレタン樹脂を主成分とする化粧品用樹脂組成物およびその製法に関するものであり、詳しくは整髪剤、コンディショニング剤、粘度調整剤としてスキンケア製品、ヘアケア製品の用途に用いられる化粧品用樹脂組成物およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、整髪剤のベース樹脂としては、アニオン系のアクリル樹脂、アニオン/カチオン系の両性アクリル樹脂、ノニオン系のポリビニルピロリドン樹脂等が用いられている。これらのベース樹脂を用いた場合は、固く仕上がるためセット性(整髪性)は良好であるが、風合い、櫛通り性に劣り、またフレーキング(粉ふき)が起こるという問題がある。他方、風合い、櫛通り性を優先させると、セット力が不充分となる等の問題がある。このように、上記従来の樹脂では、整髪剤として要求される、セット性、風合い、櫛通り性および耐フレーキング性のすべての特性を満たすことは困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題を解決するために、上記アクリル樹脂等に代えて、アニオン系のウレタン樹脂を用いることが提案されている(特開平6−321741号公報)。このウレタン樹脂を整髪剤のベース樹脂として使用した場合は、良好なセット性、風合い、櫛通り性および耐フレーキング性といった相反する物性を具備することができる。しかしながら、上記アニオン系のウレタン樹脂はシャンプー等によって充分に洗い流すことができず、洗浄性に劣るという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、整髪剤として要求される、セット性、風合い、櫛通り性、耐フレーキング性を損なうことなく、髪への密着性および洗髪性を具備した化粧品用樹脂組成物およびその製法の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、上記(A),(C)および(D)成分中のイソシアネート基と反応する基の合計量に対し、(B)成分のイソシアネート基が過剰であり、少なくとも(A)〜(C)成分をイソシアネート基過剰にて反応させて作製したイソシアネート基含有プレポリマーと、(D)成分とを反応させて得られる、イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを、水中に分散させ鎖延長反応を行い、高分子量化して得られる、一分子中にカルボキシル基と第三級アミノ基を有する両性ウレタン樹脂を主成分とする化粧品用樹脂組成物を第一の要旨とする。また、上記化粧品用樹脂組成物の製法であって、上記(A),(C)および(D)成分中のイソシアネート基と反応する基の合計量に対し、(B)成分のイソシアネート基が過剰であり、少なくとも(A)〜(C)成分をイソシアネート基過剰にて反応させて作製したイソシアネート基含有プレポリマーと、(D)成分とを反応させて、イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを作製する工程と、上記イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを水中に分散させ鎖延長反応を行い、高分子量化させる工程とを有する化粧品用樹脂組成物の製法を第二の要旨とする。
【0006】
本発明者らは、整髪剤として要求される、セット性、風合い、櫛通り性、耐フレーキング性、髪への密着性および洗髪性のすべての特性を備えたベース樹脂を探究すべく鋭意研究を重ねた。その結果、一分子中にカルボキシル基と第三級アミノ基を有する両性ウレタン樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いることにより、所期の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、ベース樹脂の主骨格をウレタン樹脂とすることにより、ウレタン樹脂の有する弾性および強靱性によって、元来相反する物性である、セット性と風合い、櫛通り性、耐フレーキング性を両立させることが可能となる。しかし、ウレタン樹脂は、分子鎖間で絡み合いが起こりやすく、造膜しやすいため、整髪剤として使用した場合、シャンプー等による洗髪性が不充分であり、洗浄性を優先させると、ウレタン樹脂の有する弾性、強靱性が損なわれるということを突き止めた。そこで、これらの問題を解決すべく、さらに研究開発を重ねた結果、カルボキシル基と第三級アミノ基とを有する両性ウレタン樹脂を用いることにより、中性の水に対しては、カルボキシル基と第三級アミノ基とがイオン結合することで耐水性に優れ、シャンプー等の洗浄に対してはこのイオン結合が切断され、洗浄性に優れる整髪剤を調製することが可能となる。さらに、上記両性ウレタン樹脂は、その分子鎖中にカチオン性の第三級アミノ基を有し、これがマイナス帯電している髪の表面と相互作用するため、従来のアニオン系のウレタン樹脂と比較して良好な密着性を示すようになる。
【0007】
そして、上記両性ウレタン樹脂中のカルボキシル基と第三級アミノ基の比率(両官能基の数の比)を特定の範囲に設定することにより、特に優れた洗浄性(洗髪性)を備えるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
本発明の化粧品用樹脂組成物は、上記(A),(C)および(D)成分中のイソシアネート基と反応する基の合計量に対し、(B)成分のイソシアネート基が過剰であり、少なくとも(A)〜(C)成分をイソシアネート基過剰にて反応させて作製したイソシアネート基含有プレポリマーと、(D)成分とを反応させて得られる、イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを、水中に分散させ鎖延長反応を行い、高分子量化して得られる、一分子中にカルボキシル基と第三級アミノ基を有する両性ウレタン樹脂を主成分とするものである。そして、この化粧品用樹脂組成物は、整髪剤、コンディショニング剤、粘度調整剤としてスキンケア製品、ヘアケア製品の用途に用いられ、好ましくは整髪剤として用いられる。なお、両性ウレタン樹脂を主成分とするとは、一般にこれに他の成分を添加して目的とする組成物を構成するものであるが、両性ウレタン樹脂のみからなる場合も含める趣旨である。
【0010】
上記両性ウレタン樹脂は、例えばポリオール化合物(A成分)と、ポリイソシアネート化合物(B成分)と、活性水素とカルボキシル基を有する化合物(C成分)とを、イソシアネート基過剰にて反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを作製した後、このイソシアネート基含有プレポリマーと、活性水素と第三級アミノ基を有する化合物(D成分)とを反応させて、イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを作製し、このイソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを水中に分散させ鎖延長反応を行い、高分子量化させることにより製造することができる。このような方法により、従来よりも簡易かつ安全に両性ウレタン樹脂を製造することができるようになる。なお、上記製法において、A成分およびB成分と共に、特定のC成分およびD成分の双方を同時に反応させると、C成分中のカルボキシル基と、D成分中の第三級アミノ基とが先に塩を形成して反応系に不溶となり、OH基があってもイソシアネート化合物との反応が起こらなくなり、目的とする両性ウレタン樹脂を製造することはできない。すなわち、上述のように、A,B成分とC成分とを反応させた後、D成分を反応させることにより、目的とする両性ウレタン樹脂を製造することができるのである。
【0011】
上記A成分であるポリオール化合物としては、一般にポリウレタンの製造に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリル酸エステル系ポリオール等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが特に好ましい。上記ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも1種と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、スピログリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの少なくとも1種とを縮重合させて得られるものや、ラクトン類の開環重合により得られるもの等があげられる。また、上記ポリエーテルポリオールとしては、水や上記ポリエステルポリオールの合成に使用する多価アルコールの他、ビスフェノール−A等のフェノール類、または第一級アミン類、第二級アミン類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、オキセタン、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを開環付加重合させて得られるものが使用でき、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドまたはエチレンオキサイドの少なくとも一方を開環付加重合させたもの(共重合体の場合は、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。)等があげられる。
【0012】
上記B成分であるポリイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物等の有機ジイソシアネート化合物があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えばエチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等があげられる。また、上記脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば水素添加4,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等があげられる。そして、上記芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば4,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等があげられる。これらのなかでも、低価格である点で、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が好ましい。
【0013】
上記C成分である活性水素とカルボキシル基を有する化合物としては、分子内に少なくとも1つの活性水素と、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばジメチロールプロピオン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸、カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール等があげられる。
【0014】
上記D成分である活性水素と第三級アミノ基を有する化合物としては、分子内に少なくとも1つの活性水素と、少なくとも1つの第三級アミノ基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばN−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン化合物、ジメチルアミノエタノール等があげられる。
【0015】
そして、上記各成分を用いて両性ウレタン樹脂を作製する際には、鎖延長剤を使用することが好ましい。この鎖延長剤の使用により、最終的な製品として得られる両性ウレタン樹脂の諸特性を調整することが可能となる。上記鎖延長剤としては、特に限定されるものではなく、低分子ポリオール、アミン類等があげられる。上記低分子ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、スピログリコール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、キシリレングリコール等のグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオールがあげられる。また、上記アミン類としては、メチレン(ビス−o−クロルアニリン)等があげられる。
【0016】
なお、上記ポリオール化合物(A成分)、ポリイソシアネート化合物(B成分)、活性水素とカルボキシル基を有する化合物(C成分)、活性水素と第三級アミノ基を有する化合物(D成分)および鎖延長剤のいずれの成分としても、3種以上の多官能性の化合物を使用することが好ましく、かかる多官能性の化合物の使用によりポリウレタン−ウレア重合体に架橋が生じて耐熱性等の特性が改良される。
【0017】
上記両性ウレタン樹脂を製造する際には、必要に応じて溶剤を使用することができ、例えば、原料および生成するポリウレタンの双方を溶解する有機溶剤を使用することが特に好ましい。上記有機溶剤としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、その他セロソルブアセテートやセロソルブエーテル等があげられる。また、上記両性ウレタン樹脂を製造する際には、ポリウレタンの分野で周知の重合触媒を使用することができ、例えば第三級アミン触媒、有機金属触媒等を用いることができる。上記第三級アミン触媒としては、〔2,2,2〕ジアザビシクロオクタン(DABCO)、テトラメチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等があげられる。また、上記有機金属触媒としては、ジブチルチン(錫)ジラウレート等があげられる。
【0018】
上記各成分を用いて得られる両性ウレタン樹脂は、カルボキシル基と第三級アミノ基の比率(両官能基の数の比)が、カルボキシル基/第三級アミノ基=1/10〜10/1の範囲に設定されたものが好ましい。すなわち、両性ウレタン樹脂中のカルボキシル基と第三級アミノ基の比率を上記範囲に設定することにより、優れた洗浄性を備えるようになるからである。
【0019】
そして、上記両性ウレタン樹脂は、水中に分散させて水分散液とするか、あるいは可溶化して水溶液とした後、整髪剤、コンディショニング剤、粘度調整剤としてスキンケア製品、ヘアケア製品の用途に用いられる。この場合、上記両性ウレタン樹脂は、トリエチルアミンを含む水中に分散させることが好ましい。なお、上記両性ウレタン樹脂の水分散液には、添加剤としてシランカップリング剤を添加して他の基材との接着性を改善することも可能である。また、他に保存安定性を付与するために種々の添加剤を加えることも自由であり、例えば保護コロイド剤、抗菌剤・防かび剤等があげられる。
【0020】
このようにして得られた両性ウレタン樹脂の水分散液あるいは水溶液は、例えば増粘剤、エタノール、脱イオン水等と配合されて、ジェル状整髪剤として使用される。また、上記両性ウレタン樹脂の水分散液あるいは水溶液は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の各種界面活性剤、プロペラント(LPG)、ジメチルエーテル、エタノール、各種添加剤(シリコン系化合物、アミン系化合物)等と配合されて、泡状整髪剤として使用される。
【0021】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0022】
【実施例1】
攪拌装置、温度計、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製4つ口フラスコに、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)100g、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG、分子量2000)225gおよびジメチロールプロピオン酸(DMPA)18gを入れ、有機溶剤として酢酸エチル30g、触媒としてジブチルチンジラウレート0.02gを加え、オイルバスを使用して80℃に加熱、維持して4時間反応させた。その後70℃に温度を下げ、N−メチルジエタノールアミン(NMDEA)8gならびに酢酸エチル30gを追加して添加し、さらに2時間反応させ、NCO基の残存したポリウレタンプレポリマーの溶液を得た。このNCO基の残存したポリウレタンプレポリマーを、トリエチルアミン12gを含む水600g中に分散させ、50℃にて3時間鎖延長反応を行って高分子量化させた。得られた水分散液より上記酢酸エチルを回収し、実質的に有機溶剤を含まない両性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
【0023】
【実施例2】
実施例1におけるN−メチルジエタノールアミン(NMDEA)の量を4gに変えた。それ以外は、実施例1と同様にして両性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
【0024】
【実施例3】
実施例1におけるN−メチルジエタノールアミン(NMDEA)の量を13gに変えた。それ以外は、実施例1と同様にして両性ウレタン樹脂の水分散液を得た。
【0025】
【比較例】
実施例1におけるN−メチルジエタノールアミン(NMDEA)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にしてアニオン系のウレタン樹脂の水分散液を得た。
【0026】
このようにして得られた実施例1〜3および比較例の各水分散液を用いて、下記に示す配合割合でジェル状整髪剤a〜dを作製した。
【0027】
〔ジェル状整髪剤a〕
下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し、粘性ゲルが形成されるまで混合してX成分を得た。ついで、下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合して得たY成分を、上記X成分中に添加し、均質になるまで静かに混合して、ジェル状整髪剤aを作製した。
【0028】
【表1】
Figure 0004165669
【0029】
〔ジェル状整髪剤b,c〕
上記表1に示すY成分である実施例1の水分散液に代えて、実施例2,3の水分散液をそれぞれ用いた。それ以外は、上記ジェル状整髪剤aと同様にして、ジェル状整髪剤b,cを作製した。
【0030】
〔ジェル状整髪剤d〕
上記表1に示すY成分である実施例1の水分散液に代えて、比較例の水分散液を用いた。それ以外は、上記ジェル状整髪剤aと同様にして、ジェル状整髪剤dを作製した。
【0031】
このようにして得られたジェル状整髪剤a〜dを用いて、下記の基準に従い、洗浄性(洗髪性)の評価を行った。その結果を下記の表2に示した。
【0032】
〔洗浄性(洗髪性)〕
ガラス板上に各ジェル状整髪剤を塗布し、厚み40μmの塗膜を形成した後、この塗膜を市販のシャンプー溶液で洗浄した。そして、塗膜を極めて容易に除去できるものを◎、塗膜を容易に除去できるものを○、塗膜を充分に除去できないものを×として表示した。
【0033】
【表2】
Figure 0004165669
【0034】
上記表2の結果から、実施例1〜3の両性ウレタン樹脂を用いたジェル状整髪剤a〜cは、いずれも優れた洗浄性を備えており、特に実施例1の両性ウレタン樹脂を用いたジェル状整髪剤aは、極めて優れた洗浄性を備えていることがわかる。これは、両性ウレタン樹脂中のカルボキシル基と第三級アミノ基とのイオン結合が、シャンプー溶液によって切断されるためであると思われる。これに対して、比較例のアニオン系のウレタン樹脂を用いたジェル状整髪剤dは、洗浄性が極めて悪く、整髪剤としての使用には不適当である。
【0035】
つぎに、上記ジェル状整髪剤a〜dを用いて、下記の基準に従い、風合い、セット性、櫛通り性、耐フレーキング性および帯電防止性の評価を行った。その結果を下記の表3に併せて示した。すなわち、各ジェル状整髪剤を1束の黒色バージンヘアー(長さ15cm、重量3.0g)に1.0gずつ塗布し、乾燥した後、上記特性の評価を行った。
【0036】
〔風合い〕
乾燥後に髪の毛の手触りまたは感触が優れたものを○として表示した。
【0037】
〔セット性〕
乾燥後に髪の毛の乱れがなく整髪性が優れたものを○として表示した。
【0038】
〔櫛通り性〕
乾燥後の櫛通り性が良好なものを○として表示した。
【0039】
〔耐フレーキング性〕
乾燥後に櫛を10回通した後に髪の毛に粉ふきが全く生じなかったものを◎、粉ふきが殆ど生じなかったものを○として表示した。
【0040】
〔帯電防止性〕
乾燥後に櫛を10回通した後に髪の毛に静電気が全く生じなかったものを◎、静電気が殆ど生じなかったものを○として表示した。
【0041】
【表3】
Figure 0004165669
【0042】
上記表3の結果から、実施例1〜3の両性ウレタン樹脂を用いたジェル状整髪剤a〜cは、比較例のアニオン系のウレタン樹脂を用いたジェル状整髪剤dに比べて、すべての特性について同等あるいはそれ以上に優れた評価が得られた。特に、ジェル状整髪剤a〜cは、優れた耐フレーキング性および帯電防止性を備えていることがわかる。
【0043】
一方、前記実施例1〜3および比較例の水分散液を用いて、下記に示す配合割合で泡状整髪剤a〜dを作製した。
【0044】
〔泡状整髪剤a〕
下記の表4に示す各成分を同表に示す割合で配合し、均質になるまで混合してX成分を得た。ついで、下記の表4に示すY成分を上記X成分中に添加して、泡状整髪剤aを作製した。
【0045】
【表4】
Figure 0004165669
【0046】
〔泡状整髪剤b,c〕
上記表4に示すX成分である実施例1の水分散液に代えて、実施例2,3の水分散液をそれぞれ用いた。それ以外は、上記泡状整髪剤aと同様にして、泡状整髪剤b,cを作製した。
【0047】
〔泡状整髪剤d〕
上記表4に示すX成分である実施例1の水分散液に代えて、比較例の水分散液を用いた。それ以外は、上記泡状整髪剤aと同様にして、泡状整髪剤dを作製した。
【0048】
このようにして得られた泡状整髪剤a〜dを用いて、前記基準に従い、洗浄性(洗髪性)、風合い、セット性、櫛通り性、耐フレーキング性および帯電防止性の評価を行った。その結果、ジェル状整髪剤a〜dを用いた場合と略同様の評価が得られた。すなわち、実施例1〜3の両性ウレタン樹脂を用いた泡状整髪剤a〜cは、いずれも洗浄性に優れ、その他の評価においても、比較例のアニオン系のウレタン樹脂を用いた泡状整髪剤dに比べて、同等あるいはそれ以上に優れた評価が得られた。
【0049】
なお、本発明の化粧品用樹脂組成物は上記整髪剤以外に、下記に示すコンデイショニング・シェイビング・クリーム剤、スキンケアローション剤等に用いることが可能である。
【0050】
〔コンデイショニング・シェイビング・クリーム剤〕
【0051】
下記の表5に示す各成分を同表に示す割合で混和し、80℃に加温してX成分を得た。ついで、下記の表5に示す各成分を同表に示す割合で混和し、80℃に加温してY成分を得た。そして、上記X成分とY成分とを80℃で混合し、40℃に冷却した後、適量の防腐剤と香料を添加し、目的とするコンデイショニング・シェイビング・クリーム剤を作製した。
【0052】
【表5】
Figure 0004165669
【0053】
〔スキンケアローション剤〕
【0054】
下記の表6に示す各成分を同表に示す割合で混和し、80℃に加温してX成分を得た。ついで、下記の表6に示す各成分を同表に示す割合で混和し、80℃に加温してY成分を得た。そして、上記X成分とY成分とを混合し、80℃で30分間攪拌した後、2%カーボポール940水溶液20.00重量%を添加し、均一になるで攪拌した。その後、40℃に冷却し、目的とするスキンケアローション剤を作製した。
【0055】
【表6】
Figure 0004165669
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明の化粧品用樹脂組成物は、一分子中にカルボキシル基と第三級アミノ基を有する両性ウレタン樹脂を主成分とするため、この樹脂組成物を用いて整髪剤を作製した場合には、整髪剤として要求される、セット性、風合い、櫛通り性、耐フレーキング性、髪への密着性および洗髪性のすべての特性を備えるようになる。すなわち、ベース樹脂の主骨格をウレタン樹脂とすることにより、ウレタン樹脂の有する弾性および強靱性によって、元来相反する物性である、セット性と風合い、櫛通り性、耐フレーキング性を両立させることが可能となる。また、カルボキシル基と第三級アミノ基とを有する両性ウレタン樹脂を用いることにより、中性の水に対しては、カルボキシル基と第三級アミノ基とがイオン結合することで耐水性に優れ、シャンプー等の洗浄に対してはこのイオン結合が切断され、洗浄性に優れる整髪剤を調整することが可能となる。さらに、上記両性ウレタン樹脂は、その分子鎖中にカチオン性の第三級アミノ基を有し、これがマイナス帯電している髪の表面と相互作用するため、従来のアニオン系のウレタン樹脂と比較して良好な密着性を示すようになる。
【0057】
そして、上記両性ウレタン樹脂中のカルボキシル基と第三級アミノ基の比率(両官能基の数の比)を特定の範囲に設定することにより、特に優れた洗浄性(洗髪性)を備えるようになる。

Claims (5)

  1. 下記の(A),(C)および(D)成分中のイソシアネート基と反応する基の合計量に対し、(B)成分のイソシアネート基が過剰であり、少なくとも(A)〜(C)成分をイソシアネート基過剰にて反応させて作製したイソシアネート基含有プレポリマーと、(D)成分とを反応させて得られる、イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを、水中に分散させ鎖延長反応を行い、高分子量化して得られる、一分子中にカルボキシル基と第三級アミノ基を有する両性ウレタン樹脂を主成分とすることを特徴とする化粧品用樹脂組成物。
    (A)ポリオール化合物。
    (B)ポリイソシアネート化合物。
    (C)活性水素とカルボキシル基を有する化合物。
    (D)活性水素と第三級アミノ基を有する化合物。
  2. 上記両性ウレタン樹脂は、トリエチルアミンを含む水中に分散して得られる請求項1記載の化粧品用樹脂組成物。
  3. 化粧品用樹脂組成物が整髪剤用樹脂組成物である請求項1または2記載の化粧品用樹脂組成物。
  4. 上記両性ウレタン樹脂中のカルボキシル基と第三級アミノ基の比率(両官能基の数の比)が、カルボキシル基/第三級アミノ基=1/10〜10/1である請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧品用樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の化粧品用樹脂組成物の製法であって、上記(A),(C)および(D)成分中のイソシアネート基と反応する基の合計量に対し、(B)成分のイソシアネート基が過剰であり、少なくとも(A)〜(C)成分をイソシアネート基過剰にて反応させて作製したイソシアネート基含有プレポリマーと、(D)成分とを反応させて、イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを作製する工程と、上記イソシアネート基の残存したポリウレタンプレポリマーを水中に分散させ鎖延長反応を行い、高分子量化させる工程とを有することを特徴とする化粧品用樹脂組成物の製法。
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