JP4163668B2 - 電磁波送受信装置及びそれを用いた核磁気共鳴分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は電磁波送受信装置、及びそれを用いた核磁気共鳴分析装置(以下、「NMR装置」という)に関する。
NMR装置は、静磁場下に置かれた試料に数マイクロ秒周期程度のラジオ波やマイクロ波等の電磁波を照射し、その電磁波に基づいて試料から発せられる自由減衰信号を受信することで試料の構造を特定する装置であり、近年、蛋白質の組成や構造の特定等に特に期待されている。
NMR装置は一般的に、静磁場を発生させるマグネット装置、試料周囲に配置され試料に電磁波を照射する送信コイル、送信コイルから試料に照射される電磁波を生成送信する送信装置、試料周囲に配置され試料からの自由減衰信号を受信する受信コイル、この受信コイルが受信した自由減衰信号を処理する受信装置とを有している。なお、局部発振器(ローカルオシレーター)など送信装置、受信装置のどちらにも属する機器もあり、送信装置、受信装置の機能を双方含めた形で送受信装置としている場合も一般的である。
また近年、NMR装置の送信装置、受信装置にデジタル技術が導入されつつある。特に10MHz程度の低い周波数領域でのデジタル技術が実現されてきており、回路基板上で数十MHzから数百MHzの電磁波の信号をデジタル信号で作成及び処理することが可能となってきた。デジタル信号による処理(以下「デジタル処理」という)は、基板上の配線長の違いによる信号のずれや、コンデンサー、インダクター等の回路構成要素が持つ温度変化による特性の違いから生ずる周波数や位相のずれを抑えることができ、より正確な測定を行うことができるという利点を有する。
そしてデジタル処理の中でも、試料からの自由減衰信号を処理する方法はデジタル検波方式と呼ばれており、(1)スプリアスノイズや周波数誤差を少なくできる、(2)ダイナミックレンジが広く取れる、(3)S/N比が増大する、(4)個々の製品による性能のばらつきを低減できる、(5)メンテナンスや回路調整部位を簡素化できる、という特有な多くの利点を有している。
なおデジタル処理に関するものとして、送信装置におけるデジタル処理が下記特許文献1に、受信装置におけるデジタル処理が下記特許文献2にそれぞれ記載されている。
しかしながら、上記デジタル処理を採用したNMR装置であっても、例えば送信装置における高周波の部分までをデジタル処理を採用することについては現状ではかなりの困難性があり、一部アナログ処理を採用しなければならない。しかしこのようなアナログ処理の部分とデジタル処理の部分とが混在する装置では、アナログの発振器とデジタルの発振器との間で位相の同期をとる必要がある。従来はこの位相の同期を取るために位相固定ループ回路部を設けている。
特開2004−4089号公報 米国特許第6259253号明細書
しかしながら、位相固定ループ回路部には温度などの影響による回路定数のドリフトや電気的な突発ノイズに関する問題があり、装置におけるアナログ処理の回路部(以下「アナログ回路部」という)とデジタル処理の回路部(以下「デジタル回路部」という)との間で位相を数時間に渡り一致させることが難しかった。例えば、送信装置のアナログ回路部である中間周波数発生器と、受信装置のデジタル回路部であるデジタル検波器内の基準信号発生器とは位相固定ループ回路部を介して同期しているが、1時間当たり数度程度の位相のずれが互いに生じてしまっている。この位相のずれは、パワーアンプやバンドパスフィルター、減衰器などの温度係数や特性の違いによって生じる。
一方、この位相のずれを補正するには、製品出荷時若しくは数ヶ月に一回の装置のメンテナンス時にラジオ波の送信系と受信系を直接ケーブルでつなぎ、校正プログラムを実行することにより位相、振幅のずれを調整することで一応の対応は可能である。
しかし、近年、蛋白質のNMR装置による測定(以下「NMR測定」という。)の測定時間は長時間化する傾向にあり、長いものでは数週間にわたるものもある。従って上記のメンテナンス間隔では測定中における位相、振幅のずれによる測定誤差を十分に抑制することができない。特に、突発的な電気ノイズによる位相ずれに対しては対応が極めて困難である。
本発明は、測定中にデジタル回路部とアナログ回路部との間に生ずる位相のずれを十分に抑制した測定精度の高い核磁気共鳴装置、及びそれに用いられるラジオ波送受信装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するための代表的な手段として、以下を採用する。
即ち、第一の手段として、静磁場を発生させるマグネット装置と、マグネット装置に挿入され試料に電磁波を照射する送信コイルと電磁波から発せられる信号を検出する受信コイルとを有するNMRプローブと、NMRプローブにおける送信コイル若しくは受信コイルに電気的に接続される電磁波送受信装置と、を有するNMR装置であって、電磁波送受信装置は、中間波を作成する中間周波数発生器と、中間波の中間周波数に基づいて送信コイルから照射される電磁波を作成する送信用周波数アップコンバータと、NMRプローブが受信した信号を処理する受信用周波数ダウンコンバータと、受信用周波数ダウンコンバータの出力をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、アナログ−デジタル変換器の出力に基づいて検波を行うIQ検波器と、位相固定ループと、アナログ−デジタル変換器と前記受信用周波数ダウンコンバータとの間に、中間周波数発生器からの入力と前記受信用周波数ダウンコンバータからの入力とを選択するスイッチ回路と、を有するNMR装置とする。
また、第二の手段として、静磁場を発生させるマグネット装置と、マグネット装置に挿入され試料に電磁波を照射する送信コイルと電磁波から発せられる信号を検出する受信コイルとを有するNMRプローブと、NMRプローブにおける送信コイル若しくは受信コイルに電気的に接続される電磁波送受信装置と、を有するNMR装置であって、電磁波送受信装置は、中間波を作成する中間周波数発生器と、中間波の中間周波数に基づいて送信コイルから送信される電磁波を作成する送信用周波数アップコンバータと、NMRプローブが受信した信号を処理する受信用周波数ダウンコンバータと、受信用周波数ダウンコンバータの出力をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、アナログ−デジタル変換器の出力に基づいて検波を行うIQ検波器と、位相固定ループと、送信用周波数アップコンバータとNMRプローブにおける送信コイルとの間に設けられる第一のスイッチ、NMRプローブにおける受信コイルと受信用周波数ダウンコンバータとの間に設けられる第二のスイッチと、第一及び第二のスイッチの間を接続する配線と、を有し、第一のスイッチは、送信周波数アップコンバータからの出力を送信コイルと前記配線のいずれかに出力するスイッチであり、第二のスイッチは、受信コイルからの入力と配線からの入力とのいずれかを切り替えて受信用周波数コンバータへと出力するスイッチであるNMR装置とする。
また、第三の手段として、中間波を作成する中間周波数発生器と、中間波の中間周波数に基づいて電磁波を作成する送信用周波数アップコンバータと、電磁波に基づいて得られる信号を処理する受信用周波数ダウンコンバータと、受信用周波数ダウンコンバータの出力をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、アナログ−デジタル変換器の出力に基づいて検波を行うIQ検波器と、位相固定ループと、アナログ−デジタル変換器と受信用周波数ダウンコンバータとの間に、中間周波数発生器からの入力と受信用ダウンコンバータからの入力とを選択するスイッチ回路と、を有するNMR装置用送受信装置とする。
上記手段を採用することにより、本発明はデジタル回路部とアナログ回路部との間に生ずる位相のずれを十分に抑制した測定精度の高い核磁気共鳴装置、及びそれに用いられるラジオ波送受信装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお本発明はこれら実施の形態として開示する技術的思想を利用して種々の変更が可能であり、本明細書に記載の実施形態だけに狭く限定されることはない。
(実施形態1)
本発明の第一の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るNMR装置の概要を示す図である。図1(a)は本実施形態に係るNMR装置を側面から見た場合における断面図を示しており、図1(b)は図1(a)におけるマグネット装置を装置上部からみた平面図を示しており、図1(c)は図1(a)におけるマグネット装置をプローブ挿入方向からみた平面図を示している。
本実施例に係るNMR装置は、試料に対し静磁場を印加する超電導マグネット101を低温容器102に備えてなるマグネット装置103と、その超電導マグネット装置に挿入され、試料に対してラジオ波などの電磁波を送信する送信コイル、及び、試料から発せられる自由減衰信号を受信する受信コイル、とを有するNMRプローブ104と、このNMRプローブ104に接続され、送信コイルから照射される電磁波を作成及び送信、並びに受信コイルからの自由減衰信号に基づいて信号の処理を行うNMR送受信装置105と、NMR送受信装置に接続されこの送受信装置の出力に応じて種々の情報処理を行う情報処理装置106と、を有して構成されている。
マグネット装置103は、低温容器102と、その内部に配置される超伝導マグネット101とを有して構成されており、低温容器102内には液体窒素、液体ヘリウムなどの冷媒が注入され超伝導マグネット101を冷却する。超伝導マグネット101は水平方向に巻き軸を有し、一対に配置された超伝導コイルであり、この一対の超伝導コイルの間は試料を挿入する又は配置する試料挿入空間107となっている。試料はこの試料挿入空間の上部から挿入される。また、超伝導マグネット101を構成する各超伝導コイルは本実施形態においては説明の簡略化のため単層のマグネットを表示している。しかし複数層の超伝導コイルを用いることは各超伝導コイル間の調整を必要とするものの、磁場の均一性を高める上で有用である。また、超伝導コイルの水平方向の巻き軸を貫くように空間が形成されており、低温容器102もその空間に対応して空間が形成されている。NMRプローブ104はこの超伝導コイル及び低温容器の空間に沿って挿入される。NMRプローブ104は図1において図示していないが、試料を鉛直方向から挿入するために垂直方向に試料空間を有するコイルを採用しており、送信コイルは鞍型、受信コイルはソレノイド型を採用している。またこれらコイルは感度を向上させるために超伝導物質により形成されており、NMRプローブ内部にはこれらコイルを流すための冷却構造が配置されている。
以上の構成により本実施形態にかかるNMR装置は、静磁場下に置かれた試料に数マイクロ秒周期程度の電磁波を照射し、その電磁波に基づき試料から発せられる自由減衰信号を受信し、信号処理を行い、NMR計測を行うことができる。
次に図2のブロック図を用いて実施形態に係るNMR送受信回路105の構成について周囲の構成を含めて説明する。本実施形態に係るNMR送受信回路は、中間波を発生させる中間周波数発生器201、中間周波数発生器が作成した中間波の中間周波数に基づいて試料に対して送信される電磁波を作成する送信用周波数アップコンバータ202、NMRプローブ203に電磁波が送信され、この結果NMRプローブ203における受信コイルが受信した自由減衰信号(Free Induction Decay:以下、「FID信号」という。)を処理する受信用周波数ダウンコンバータ204、NMRプローブ203が受信したアナログのFID信号をデジタルのFID信号(以下「デジタルFID信号」という)に変換するアナログ−デジタル変換器205(以下「A/D変換器」という。)、位相固定ループ回路部206とを有して構成されており、更に、受信用周波数ダウンコンバータ204とアナログ−デジタル変換器205との間には、受信用周波数ダウンコンバータ204からの入力と中間周波数発生器からの入力とを切り替えるスイッチ207、アナログ−デジタル変換器205に接続されるIQ検波器(In−Phase&Qadrature−Phase検波器、以下単に「IQ検波器」という)208、IQ検波器208に接続されるIQ位相補正器209を有している。なお、IQ検波器208には数値制御発振器210が、IQ位相補正器209には位相振幅計算器211がそれぞれ接続されている。なお、本実施形態においては、アナログ−デジタル変換器205、IQ検波器208、数値制御発信器210、位相振幅計算器211、IQ位相補正器209がデジタル処理の部分である(以下、この部分を「デジタル検波器212」とよぶ。)なお、数値制御発振器(Numerical controlled oscillator = NCO)は、所定の速度のクロックに合わせて数値をデジタルデータとして出力するICであり、アナログの発振器に比べて、周波数や位相を細かく精度良く制御できるものである。数値制御発振器210とアナログ−デジタル変換器205のクロックは中間周波数発生器201のクロックと同期している必要がある。そのために位相固定ループ回路206が中間周波数発生器の周波数を参照して同期したクロックを安定して生成し、アナログ−デジタル変換器205および数値制御発振器210にクロックを供給する。そうすることで電磁波送受信装置全体の周波数関係が安定させることができる。
一般にNMR測定は、ラジオ波送受信装置から送信コイルへのラジオ波パルスの送信、送信コイルから試料へのラジオ波の照射、試料からのFID信号の受信、試料の緩和、という一連の手順が繰返されることによって行われる。なお、一般に、試料が液体である場合、パルスの送信時間は約0.1秒、FID信号の受信時間は約0.5秒、試料の緩和時間は約1秒程度であり、NMR測定の長いものでは1週間ほどこれら手順を繰返して行うものもある。
ここで本実施例に係るNMR装置を用いたNMR測定の手順を図2を用いて具体的に説明する。まず送信用周波数アップコンバータ202は、中間周波数発生器201の中間周波数を参照して数百MHzの電磁波を作成し、NMRプローブ203の送信コイルへと送信する。電磁波は送信コイルにより試料に照射され、受信コイルは試料から発せられるFID信号を受信する。受信されたFID信号は受信用周波数ダウンコンバータ204において中間周波数発生器201の中間周波数を参照して作られた数百MHzの電磁波を用いて中間周波数付近にダウンコンバートされ、スイッチ207を介してアナログ−デジタル変換器205に入力され、デジタルFID信号へと変換される。なおこの測定において、試料からFID信号を受信する際スイッチ207はアナログ−デジタル変換器205と受信用ダウンコンバータ204とを電気的に接続されているが、試料が緩和時間にある場合、中間周波数発生器201とアナログ−デジタル変換器205とを接続する構成となっている。このような構成とすることで、試料の緩和時間を効率よく利用しつつ、必要以上の時間をかけることなく位相補正を行うことができる。緩和時間は試料の核スピンをばらばらの方向に向かせ、それにより一度試料がもつ情報をリセットし新しい測定に備えるために必要な時間であり、この時間を有効に使うことができるのである。またスイッチ207は、アナログ−デジタル変換器内部のサンプリングクロックのばらつきによるノイズを抑えることができ、高精度なNMR測定に寄与する。スイッチ207の特性は以下のようなものが必要である。
ここで用いられるスイッチは受信用ダウンコンバータ204とアナログ−デジタル変換器205を接続する際はノイズの付加が少なく、かつ中間周波数発生器201からの信号の漏れを充分に排除したものでなくてはならない。なぜならば、もし中間周波数発生器201からの信号が少しでも漏れてくると真の試料からの信号と混ざり、受信スペクトルにノイズとして混入するからである。一般にアナログ−デジタル変換器205のダイナミックレンジは80dB程度であるので、スイッチ207のアイソレーション(分離度)も80dB以上あることが望ましい。いわゆる高周波スイッチには、機械的リレーを用いたものと半導体のダイオードを用いたものとがあるが、前者はスイッチングスピードが数ミリ秒と遅いがアイソレーションが60dBから80dB程度と良く、後者はスイッチングスピードが数マイクロ秒と速いがアイソレーションが40dB程度であり、充分取れないという特徴がある。核磁気共鳴で用いられる試料の緩和時間は一般に1秒程度以上あるので、本用途に用いるスイッチは機械式のもので良いと考えられる。但しスイッチが使える周波数帯域が充分中間周波数に合致したものであることが必要である。スイッチの駆動方法は電磁波送受信装置全体の動きを制御している情報処理装置からタイミング指令を出し、試料の緩和時間中に正しくスイッチを切り換える機構が必要である。
ここで更に、位相補正について説明する。上述のように、緩和時間中、中間周波数発生器201とアナログ−デジタル変換器205とはスイッチ207を介して接続されているため、IQ検波器208には周波数純度が高い中間周波数が信号が入力される。IQ検波器208はこの結果の検波信号を位相振幅計算器211に出力する。なおIQ検波器208に入力される信号は、周波数純度が高いため検波信号が直流信号となっている。そして位相振幅計算器211は振幅補正値及び位相補正値を計算する。具体的に説明すると、位相振幅計算器211はIQ検波器208により検波される信号のIn−Phaseの信号をI、Quadra−Phaseの信号をQとした場合のそれぞれについての時間平均をI、Qとして用い、振幅補正値をsqrt(I×I+Q+Q)、位相補正値θを90×sign(I)×(1−sign(Q))+tan−1(I/Q)として求める。なおここで関数sign(x)は、xが正の数のとき1、負のとき−1となる関数である。
そして位相振幅計算器211はIQ位相補正器208にその結果を出力し、位相補正値θとして保持する。
一方、測定により試料から発せられたFID信号は、先ほど述べたようにアナログ−デジタル変換器205によりデジタルFID信号に変換され、IQ検波器207に入力される。IQ検波器207はデジタルFID信号をIn−Phaseの信号(以下「I(t)」と表現する)とQuadrature−Phaseの信号(以下「Q(t)」と表現する)とを検波し、IQ位相補正器208へと出力する。IQ位相補正器208は、上述の過程により予め保存された補正位相値θに基づき、IQ検波器から出力される検波されたデジタルFID信号を以下の式に従って補正する。なおこの補正は数ミリ秒の短時間で行う動作であることが望ましい。
I'(t)=cos(θ)×I(t)+sin(θ)×Q(t)―――(1)
Q'(t)=−sin(θ)×I(t)+cos(θ)×Q(t)―――(2)
この結果、I'(t)、Q'(t)は位相の補正を加えられることとなり、測定中にデジタル回路部とアナログ回路部との間に位相のずれが生じたとしても十分にずれを抑制することができる。なお、位相振幅計算器とIQ位相補正規は、自由プログラミングゲート列(Free Programming Gate Arrays)やアプリケーション特化集積回路(Application Specific Integrated Circuit)、またはデジタル信号処理集積回路(Digital Signal Processor Integrated Circuit)などの組み込み半導体回路によって高速動作を実現することができ望ましい。
以上、本実施形態に係る電磁は送受信回路を用いてNMR装置を構成することで測定精度の高い核磁気共鳴装置を得ることができる。
なお、本実施形態においてIQ位相補正器の機能を実現するためには、図中の数値制御発振器の位相や振幅を補正する方法も考えられる。しかしながら、通常数値制御発振器の動作クロックは早いもので50MHz程度であり、A/D変換器のサンプリングクロックと同等程度の早さである。つまりIQ検波に用いられる中間周波数が10〜20MHzの場合、数値制御発振器の発振する数値が1周期当たり2.5〜5点程度にしかならず、補正の効果を高めるためには中間周波数を数MHzまで落とすことやNCOの出力ビット数を通常12ビット程度のものを16ビットのものを用いるなどの工夫が必要である。
また、本実施形態に係るNMR装置における超伝導マグネット装置は水平方向に巻き軸を有する超伝導マグネットであるが、本実施形態に係る電磁波送受信装置を用いる限りにおいて他のNMR装置に対しても適用可能である。
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態について図3を用いて説明する。なお本実施例はスイッチの位置及びそれに伴う、その他の構成が異なる以外はほぼ実施形態1とほぼ同様である。
本実形態のNMR装置は、スイッチ301、302を送信用周波数アップコンバータ202とNMRプローブ203の間、受信用周波数ダウンコンバータ204とNMRプローブ203との間にそれぞれ設け、これらスイッチ間に設けられた配線によってNMRプローブ102を迂回することが可能な構成としている。
本実施形態におけるスイッチ301、302は、NMRプローブからFID信号を取り込む場合、送信用周波数アップコンバータ202とNMRプローブ203を、受信用周波数アップコンバータ204とNMRプローブ203とを夫々接続する一方、試料の緩和時間にはスイッチ301、302をNMRプローブを迂回する配線に接続させ、試料の緩和時間を利用して位相補正値θを更新させる。なお本実施形態では、実施形態1では補正しきれない送信用周波数アップコンバータ202と受信用周波数ダウンコンバータ204に起因する位相誤差までも補正することができる。特に送信用周波数アップコンバータの機能にはパワーアンプなどの電力増幅器が含まれるため、パワーアンプに起因する大きな位相誤差を抑えることが可能となる意味でも特に有用である。
なお、一般にラジオ波と受信信号とは60dB程度のレベル差があるため、位相補正を行う際に送信用周波数アップコンバータ202と受信用周波数ダウンコンバータ203とを短絡する際には送信ラジオ波の出力を弱めることが望ましい。また、その出力を弱めるために、スイッチ間に60dB程度の減衰器を配置することも有用である。
以上本実施形態により、実施形態1と同様、測定中にデジタル回路部とアナログ回路部との間に生ずる位相のずれを十分に抑制した測定精度の高い核磁気共鳴装置を提供することができる。
実施形態1に係るNMR装置の概要を示す図である。 実施形態1に係るNMR送受信回路の概略を示すブロック図である。 実施形態2に係るNMR送受信回路の概要を示すブロック図である。
符号の説明
101…超伝導マグネット、102…低温容器、103…マグネット装置、104…NMRプローブ、105…NMR送受信装置、106…情報処理装置、201…中間周波数発生器、202…送信用周波数アップコンバータ、203…NMRプローブ、204…受信用周波数発生器、205…アナログ−デジタル変換器、206…位相固定ループ回路部、207…スイッチ、208…IQ検波器、209…IQ位相補正器、210…数値制御発振器、211…位相振幅計算器、301、302…スイッチ。

Claims (4)

  1. 静磁場を発生させるマグネット装置と、前記マグネット装置に挿入され試料に電磁波を照射する送信コイルと前記試料から発せられる信号を検出する受信コイルとを有するNMRプローブと、前記NMRプローブにおける前記送信コイル若しくは前記受信コイルに電気的に接続される電磁波送受信装置とを有するNMR装置であって、
    前記電磁波送受信装置は、中間波を作成する中間周波数発生器と、前記中間波の中間周波数に基づいて前記送信コイルから照射される電磁波を作成する送信用周波数アップコンバータと、前記NMRプローブが受信した信号を処理する受信用周波数ダウンコンバータと、前記受信用周波数ダウンコンバータの出力をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、前記アナログ−デジタル変換器の出力に基づいて検波を行うIQ検波器と、前記アナログ−デジタル変換器のクロック周波数を前記中間周波数発生器からの周波数と安定して同期させる位相固定ループと、前記アナログ−デジタル変換器と前記受信用周波数ダウンコンバータとの間に、前記中間周波数発生器からの入力と前記受信用周波数ダウンコンバータからの入力とを選択するスイッチ回路とを有することを特徴とするNMR装置。
  2. 静磁場を発生させるマグネット装置と、前記マグネット装置に挿入され試料に電磁波を照射する送信コイルと前記電磁波から発せられる信号を検出する受信コイルとを有するNMRプローブと、前記NMRプローブにおける前記送信コイル若しくは前記受信コイルに電気的に接続される電磁波送受信装置と、を有するNMR装置であって、
    前記電磁波送受信装置は、中間波を作成する中間周波数発生器と、前記中間波の中間周波数に基づいて前記送信コイルから送信される電磁波を作成する送信用周波数アップコンバータと、前記NMRプローブが受信した信号を処理する受信用周波数ダウンコンバータと、前記受信用周波数ダウンコンバータの出力をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、前記アナログ−デジタル変換器の出力に基づいて検波を行うIQ検波器と、前記アナログ−デジタル変換器のクロック周波数を前記中間周波数発生器からの周波数と安定して同期させる位相固定ループと、前記送信用周波数アップコンバータと前記NMRプローブにおける送信コイルとの間に設けられる第一のスイッチ、前記NMRプローブにおける受信コイルと前記受信用周波数ダウンコンバータとの間に設けられる第二のスイッチと、前記第一及び第二のスイッチの間を接続する配線とを有し、
    前記第一のスイッチは、送信周波数アップコンバータからの出力を前記送信コイルと前記配線のいずれかに出力するスイッチであり、前記第二のスイッチは、前記受信コイルからの入力と前記配線からの入力とのいずれかを切り替えて前記受信用周波数ダウンコンバータへと出力するスイッチであることを特徴とするNMR装置。
  3. 請求項2に記載のNMR装置であって、
    前記第一のスイッチと前記第二のスイッチとの間に減衰器を設けたNMR装置。
  4. 中間波を作成する中間周波数発生器と、前記中間波の中間周波数に基づいて電磁波を作成する送信用周波数アップコンバータと、前記電磁波に基づいて得られる信号を処理する受信用周波数ダウンコンバータと、前記受信用周波数ダウンコンバータの出力をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換器と、前記アナログ−デジタル変換器の出力に基づいて検波を行うIQ検波器と、位相固定ループと、前記アナログ−デジタル変換器と前記受信用周波数ダウンコンバータとの間に、前記中間周波数発生器からの入力と前記受信用周波数ダウンコンバータからの入力とを選択するスイッチ回路とを有することを特徴とするNMR装置用送受信装置。
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