JP4163534B2 - 質量スペクトルの解析方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量分析装置で得られたスペクトルを解析するための方法および装置に係り、特に、移動相溶媒や移動相溶媒に含まれる不純物の分子が付加したイオンを質量分析して得られたスペクトルを解析する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
質量分析装置(以下、MSと略記する)を用いて試料に含まれる分子(以下、試料分子と称する。また、試料分子をMと記すこともある)の質量を分析する場合には、試料のイオン化を行なうが、イオン化法にも種々の方法があり、その中に、イオン化を行なった場合、移動相溶媒や、移動相溶媒に含まれる不純物が試料分子に付加したイオンが生成されるイオン化法がある。
【0003】
そのようなイオン化法の代表的な例として、液体クロマトグラフィ(以下、LCと略記する)とMSとの間のインターフェイスとして使われている大気圧イオン化法(API)が挙げられる。
【0004】
大気圧イオン化法には、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)と大気圧化学イオン化法(APCI)の2種類があるが、いずれの場合も、試料分子と、メタノール、アセトニトリル、酢酸等の移動相溶媒との間の、プロトン移動によってイオン化が行なわれる。
【0005】
そして、MSで正イオン検出を行なう場合には、試料分子MにプロトンHが付加したプロトン付加イオン[M+H]が検出され、MSで負イオン検出を行なう場合には、試料分子MからプロトンHが脱離したプロトン脱離イオン[M−H]が検出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、APIによって生成されるイオンが、プロトン付加イオン[M+H]、あるいは、プロトン脱離イオン[M−H]だけであるなら、問題は少ないのであるが、プロトン付加イオン、あるいは、プロトン脱離イオンの他にも、移動相溶媒や溶媒に含まれる不純物が試料分子に付加したイオンが生成され、そのような付加イオンがMSで検出されて、スペクトル上にしばしば現れることが知られている。
【0007】
尚、以下では、上記のような移動相溶媒や溶媒に含まれる不純物が試料分子に付加したイオンを不純物付加イオンと称することとし、不純物付加イオン、プロトン付加イオン、及びプロトン脱離イオンを総称して付加イオンと称するものとする。また、付加イオンの中の試料分子に付加している物質を付加物と称することにする。例えば、プロトン付加イオンでは、プロトンが付加物であり、後述するように不純物付加イオン[M+NHでは、アンモニウムイオンが付加物である。プロトン脱離イオンについても、便宜的にプロトンを付加物と称することにする。
【0008】
例えば、移動相溶媒としてメタノールを用いてESIによりイオン化を行ない、MSで正イオンを検出すると、プロトン付加イオン[M+H]の他に、試料分子Mにアンモニウムイオンが付加した正の不純物付加イオン[M+NH及び/または試料分子Mにナトリウムイオンが付加した正の不純物付加イオン[M+Na]が検出される場合のあることが、経験的に知られている。
【0009】
また、移動相溶媒としてメタノールを用いてAPCIによりイオン化を行ない、MSで正イオンを検出すると、プロトン付加イオン[M+H]の他に、試料分子MにプロトンHとメタノール分子が付加した正の不純物付加イオン[M+H+CHOH]が検出される場合のあることが、経験的に知られている。
【0010】
更に、ギ酸を含む移動相溶媒を用いてESIによりイオン化し、MSで負イオンを検出すると、プロトン脱離イオン[M−H]の他に、試料分子Mにギ酸イオンが付加した負の不純物付加イオン[M+HCOO]が検出される場合のあることが、経験的に知られている。
【0011】
このように、APIによりイオン化して質量分析を行なうと、そのスペクトルには、プロトン付加イオン、あるいは、プロトン脱離イオンのピークの他に、不純物付加イオンのピークも現れるので、スペクトルに基づく試料分子の分子量の判定や、スペクトルの解析が困難になる場合がしばしば起きる。
【0012】
従って、APIでイオン化してMSで質量分析を行なって得られたスペクトルの解析は非常に難しいものであり、スペクトルに基づいて試料分子の分子量を決定したり、スペクトルを解析するには、豊富な経験が必要であるばかりか、分析者の経験の度合いによって、スペクトルの解析結果が異なる可能性があるという問題さえある。
【0013】
以上は、APIによりイオン化した場合について説明したが、不純物付加イオンが生成されるのはAPIだけではなく、化学イオン化法(CI:chemical ionization)、高速原子衝撃法(FAB:fast atom bombardment)、マトリクス支援レーザイオン化法(MALDI:matrix assisted laser desorption ionization)、電界脱離イオン化法(FD:field desorption)などによりイオン化した場合にも、不純物付加イオンが生成される場合があり、これらのイオン化法で得られた質量スペクトルの解析を行なう場合にも、上述したと同じ問題が生じる。これが、本願が課題とする、第1の問題点である。
【0014】
また、上述した種々のイオン化法によってイオン化され、質量分析測定されたスペクトルは、その観測されたイオンの化学式を同定するために、市販の質量スペクトルライブラリデータベースに登録されている膨大な質量スペクトルと比較される。ところが、市販の質量スペクトルライブラリデータベースに登録されている質量スペクトルは、すべてハードなイオン化法である電子衝撃イオン化法(EI)によって得られたものであるため、その特徴は、最も高質量電荷比領域に、試料分子から電子が1つ放出されて正電荷を帯びた分子イオン[M]+・、分子イオンより低質量電荷比領域に、分子イオン[M]+・が開裂して生成したフラグメントイオンが分布するスペクトルのスタイルとなっている。例えば、図1に示すトルエンの質量スペクトルがそれである。尚、このスペクトルは、測定された質量スペクトルの各ピークを、データ処理により、1本ずつのバーで表示させたバー型スペクトルである。
【0015】
このようなEIによる質量スペクトルのライブラリサーチデータベースは、一般に、ガスクロマトグラフィ(以下、GCと略記する)とMSとが組み合わされたGC/MSで得られる質量スペクトルに適用されるものであり、GC/MSの測定系では、質量スペクトル中に付加イオンのピークをまったく含まない。そのため、API、CI、FAB、MALDI、FDなどのソフトなイオン化法によりイオン化したイオンをMSで検出して得られた、付加イオンのピークを多く含む質量スペクトルと比較すると、同じ化合物の質量スペクトルであっても、パターンが一致しない場合が多くなる。
【0016】
API、CI、FAB、MALDI、FDなどによりイオン化したイオンをMSで検出して得られた質量スペクトルには、EIにおいてごく普通に見られる、試料分子から電子が1つ放出されて正電荷を帯びた分子イオン[M]+・が含まれていることは、ほとんどない。
【0017】
ただ、API、CI、FAB、MALDI、FDなどは、ソフトなイオン化法のため、フラグメントイオンは生成されにくいが、それでも、ESIやAPCIにおいて大気圧イオン化領域から真空領域へのイオンの導入口(オリフィス)に数十ボルトの電圧を印加することで、イオンを瞬間的に加速させ、大気ガスなどと衝突させてフラグメントイオンを生成させる In-source CID、あるいは In-source フラグメンテーションと呼ばれる方法を用いると、フラグメントイオンを生成させることはできる。
【0018】
また、FABは、ESIやAPCIと比較すると、ややハードなイオン化法であるために、測定化合物の性質によっては、フラグメントイオンが生成されることが多い。
【0019】
このように、上述のようなソフトなイオン化法で得られる質量スペクトルは、In-source CIDで測定しさえすれば、フラグメントイオンの多いものを得ることは可能であるが、それでも、市販のライブラリデータベースに登録されている同じ化合物の質量スペクトルとは、そのパターンが著しく異なるために、検索した際のヒット率が低いという問題があった。
【0020】
このヒット率が低い原因には、ソフトなイオン化法で得られたLC/MSの質量スペクトルにおける[M+H]、[M+Na]、[M+NH、[M+H+Solvent]などの、[M]+・イオンよりも高質量領域に観測される付加イオンの存在が挙げられる。例えば、図2に示すレセルピンの質量スペクトルの場合がそれである。このため、GC/MS用のライブラリデータベースとは異なる、LC/MS専用の汎用ライブラリデータベースを新たに構築することが求められるが、LC/MSで得られる質量スペクトルは、装置メーカーの違いから来るイオン源構造の微妙な相違によって若干異なる。
【0021】
従って、LC/MSについては、現在のGC/MS用のライブラリのような、すべてのメーカーの装置に適用可能な汎用性の高いデータベースを構築することは、なかなか期待できない。だからと言って、数万件にも及ぶライブラリデータベースを、メーカー別に分けて構築することは、時間と労力を考慮すれば現実的ではない。これが、本願が課題とする、第2の問題点である。
【0022】
従って、本発明の第1の目的は、上述した点に鑑み、不純物付加イオンのピークが現れている質量スペクトルの解析を、熟練を要することなく、容易に行なうことができる、新しい質量スペクトルの解析方法、および装置を提供することにある。
【0023】
また、本発明の第2の目的は、ソフトなイオン化法で得られたLC/MSの質量スペクトルを、EIで得られた既に市販されているGC/MS用の汎用ライブラリデータベースに基づいて解析することのできる新しい質量スペクトルの解析方法、および装置を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明かかる質量スペクトルの解析方法は、
入力されたイオン化法、質量分析装置の検出極性、および、移動相溶媒の情報を、データベース部に登録されたイオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、および、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報と比較することにより、質量分析装置で得られた検出データ中に含まれる付加イオンのピークを検出し、該付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピークの位置に加算した上で、前記検出データのライブラリー検索を行なうようにしたことを特徴としている。
また、前記データベース部は、イオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報、および、これらの項目名自体のうち、少なくとも1つを、追加または書き換え可能に記憶していることを特徴としている。
また、前記付加イオンのピークの検出は、高質量電荷比領域に観測される、少なくとも2つのピーク間の、質量電荷比の差の値が、その測定系で観測される可能性のある、少なくとも2種類の付加イオン間の、質量電荷比の差の値と、一致するか否かに基づいて行なわれることを特徴としている。
また、前記付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピークの位置に加算する作業を行なう際に、同位体ピークの削除および加算を、一括して行なうことを特徴としている。
また、前記所定の高さは、予め指定された任意の強度であることを特徴としている。
また、前記質量スペクトルは、ソフトなイオン化法により生成されることを特徴としている。
また、前記ソフトなイオン化法は、API、CI、FAB、MALDI、FDのうちの1つであることを特徴としている。
また、前記APIは、液体クロマトグラフィと質量分析計との間のインターフェイスとして用いられるESI、またはAPCIのいずれかであることを特徴としている。
また、イオン化法として前記APIを使用した場合は、In-source CID、あるいはIn-sourceフラグメンテーションと呼ばれる方法で得られた、フラグメントイオンを多く含むマススペクトルを解析することを基本とすることを特徴としている。
【0027】
また、本発明にかかる質量スペクトルの解析装置は、
イオン化法、質量分析装置での検出極性、および、移動相溶媒を入力する入力部と、
入力部から入力された情報と比較するための、イオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、および、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報を登録したデータベース部と、
入力部から入力された情報とデータベース部に登録された情報との比較に基づいて、質量分析装置で得られた検出データ中の付加イオンのピークを検出し、該付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピーク位置に加算した上で、前記検出データのライブラリー検索を行なう制御部と、
を備えたことを特徴としている。
また、前記データベース部は、イオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報、および、これらの項目名自体のうち、少なくとも1つを、追加または書き換え可能に記憶していることを特徴としている。
また、前記付加イオンのピークの検出は、高質量電荷比領域に観測される少なくとも2つのピーク間の質量電荷比の差の値が、その測定系で観測される可能性のある少なくとも2種類の付加イオン間の質量電荷比の差の値と一致するか否かに基づいて行なわれることを特徴としている。
また、前記付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピークの位置に加算する作業を行なう際に、同位体ピークの削除および加算を、一括して行なうことを特徴としている。
また、前記所定の高さは、予め指定された任意の強度であることを特徴としている。
また、前記質量スペクトルは、ソフトなイオン化法により生成されることを特徴としている。
また、前記ソフトなイオン化法は、API、CI、FAB、MALDI、FDのうちの1つであることを特徴としている。
また、前記APIは、液体クロマトグラフィと質量分析計との間のインターフェイスとして用いられるESI、またはAPCIのいずれかであることを特徴としている。
また、イオン化法として前記APIを使用した場合は、In-source CID、あるいはIn-sourceフラグメンテーションと呼ばれる方法で得られた、フラグメントイオンを多く含むマススペクトルを解析することを基本とすることを特徴としている。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ発明の実施の形態について説明する。まず、本願の第1の課題である、不純物付加イオンのピークが現れている質量スペクトルの解析を、経験を要することなく、容易に行なう方法、および、装置から述べる。なお、以下の説明では、APIによりイオン化したイオンをMSで検出して得られたスペクトルを解析する場合について説明するが、本発明は、CI、FAB、MALDI、あるいはFDによってイオン化したイオンを、MSで検出して得られた質量スペクトルを解析する場合にも適用することができる。
【0029】
図3は、本発明に係る質量スペクトル解析装置の一実施形態を示す図であり、図中、1は入力部、2は制御部、3は表示部、4はインターフェース(以下、I/Fと記す)、5は記憶部、6はデータベース部、7はバスを示す。なお、以下ではデータベースをDBと記すことにする。
【0030】
まず、図3に示す質量スペクトル解析装置の各部について概略説明する。この質量スペクトル解析装置は、入力部1、制御部2、表示部3、I/F4、記憶部5、DB部6が、バス7で接続された構成を備えている。
【0031】
入力部1は、キーボードやマウスで構成される。制御部2は、MPU及びその周辺回路で構成され、当該スペクトル解析装置の動作を統括して管理するものであり、特に、以下に説明するスペクトル解析の処理を実行するためのソフトウェア、及びDB更新の処理を実行するソフトウェアが搭載されている。
【0032】
表示部3は、モニタであり、カラーCRTやカラー液晶表示装置等の画面表示が可能な表示装置で構成される。そして、入力部1、制御部2、および表示部3は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を構成するようになされている。
【0033】
I/F4は、MSで検出された検出データを通信ラインを介して取り込むためのインターフェースである。ここでは、MSの検出データを通信ラインからI/F4を介して取り込むものとするが、MSの検出データをフレキシブルディスク等の適宜な記憶媒体に記憶し、それを読み込むようにしてもよいことは当然である。I/F4から取り込まれた検出データは制御部2の制御により一旦記憶部5に記憶される。
【0034】
記憶部5は、取り込んだMSの検出データ、スペクトル解析結果等の種々のデータを記憶しておくためのものである。
【0035】
DB部6は、イオン化法と、MSで検出するイオンの極性と、移動相溶媒の種類との組み合わせのそれぞれに対して、検出が予想される付加イオン、及び、それら付加イオンに関する付加イオン情報が書き込まれたDBが登録されている。ここでは、付加イオン情報として、付加物の質量電荷比の差を用いるものとする。より具体的には、付加イオンの項目に書き込まれている付加イオンの中から2つの付加イオンを選択したときの、それら2つの付加イオンの付加物の質量電荷比の差を、付加イオン情報として用いるものとする。
【0036】
図4に、DBの構造の一実施例を示す。図4は、付加イオン由来のピークを正しく判別し、それらの付加イオンの質量電荷比から、質量スペクトルに現れた化合物の正しい分子量を判定する方法を説明するための表である。図4の各項目について説明すると次の通りである。「イオン化法」は、イオン化をESIで行なったか、APCIで行なったかを示す項目である。「極性」は、MSで検出されるイオンの電荷の極性を示す項目であり、「+」は正イオンの検出を示し、「−」は負イオンの検出を示している。「移動相溶媒」の項目には、試料分子をイオン化する直前に用いたLCの移動相溶媒の種類が書き込まれている。
【0037】
「付加イオン」の項目には、イオン化法と、極性と、移動相溶媒との組み合わせから判断して、MSで検出される可能性の高い付加イオンの種類が書き込まれている。例えば、図4の一番上の欄によれば、イオン化法がESI、極性が正、移動相溶媒がメタノールの場合には、プロトン付加イオン[M+H]、不純物付加イオン[M+NH、及び、別の不純物付加イオン[M+Na]の3種類が、MSで検出される可能性が高い付加イオンとして書き込まれている。この表のように、どのような移動相溶媒を使用して、どのようなイオン化法を採用して、正負どちらの極性でイオンを検出した場合に、どのような付加イオンが検出され得るかは、経験的に大体分かっている。
【0038】
「質量電荷比の差」の項目には、観測されることが経験的に分かっている複数の付加イオン間の質量電荷比の差の値が書き込まれている。例えば、図4の一番上の欄に関して言えば、3種類の付加イオンが観測される可能性が高いので、それらの付加イオンの中から2つを選択するときの組み合わせは3通りあり、それら3通りの組み合わせそれぞれについての付加物の質量電荷比の差が書き込まれている。具体的に言えば、プロトンとアンモニウムイオンの間の質量電荷比の差である17、プロトンとナトリウムイオンの間の質量電荷比の差である22、及び、アンモニウムイオンとナトリウムイオンの間の質量電荷比の差である5が書き込まれている。その他の欄についても同様である。観測される可能性の高い付加イオンが2種類しかない場合には、それら2種類の付加イオンの付加物の質量電荷比の差のみが書き込まれている。
【0039】
さて、本願が提示する、付加イオン由来のピークを判別する方法とは、上記所定のイオン化法、極性、移動相溶媒の下で得られた質量スペクトルの高質量領域に観測される特定の2つのピークの間隔の値が、図4の所定のイオン化法、極性、移動相溶媒の測定条件を満たす欄に記載された質量電荷比の差の値に一致するか否かを判定し、もし一致すれば、その2つのピークは、図4に記載された付加イオンに由来するピークであると判定するものである。これにより、付加イオンの付加物が何であるかが分かるので、付加イオン由来のピークであると判定されたピークの質量電荷比の値から、付加物自身の質量電荷比の値を差し引くことにより、本来の分子イオン[M]+・の質量電荷比の値、すなわち、目的化合物の分子量を決定することができる。この方法は、最低2つの付加イオンのピークがあれば実施可能なので、極めて有効な方法である。
【0040】
例えば、図4の一番上の欄に示された測定条件、すなわち、イオン化法がESI、極性が正、移動相溶媒がメタノールであるような測定条件の場合に、質量スペクトルの高質量領域に観測される特定の2つのピークの間隔の値が17であったとすると、これら2つのピークは、その質量電荷比の差の値に基づいて、より高質量領域側にあるピークから順番に、アンモニウムイオン付加イオン[M+NHのピーク、及び、プロトン付加イオン[M+H]のピークであると帰属することができる。そして、それぞれのピークの質量電荷比の値から、アンモニウムイオンの質量電荷比と、プロトンの質量電荷比をそれぞれ差し引くことにより、本来の分子イオン[M]+・の質量電荷比の値、すなわち、目的化合物の真の分子量を決定することができる。
【0041】
尚、図4に記載されている「イオン化法」、「極性」、「移動相溶媒」の各内容は、別に固定的なものではなく、この図の例に限定されないものであることは言うまでもない。例えば、「イオン化法」、「極性」、「移動相溶媒」の各内容は、必要に応じて、随時、別の内容を追加したり、他の内容と書き換えたりするようなことがあっても良い。また、測定中に、新たな付加イオン種の出現が確認されたような場合には、「付加イオン」と「質量電荷比の差」の各項目にも、その情報が、随時、追加される。
【0042】
以上のような、構造と用法を持ったDBを備えた、図1の質量スペクトル解析装置の動作について、図5に示すフローチャートを参照して、質量スペクトル解析の処理方法と共に、より詳しく説明する。
【0043】
オペレータは、入力部1からスペクトル解析のメニューを選択する(ステップS1−1)。このスペクトル解析のメニューが選択されると、制御部2は表示部3にパラメータの入力を要求する画面を表示する(ステップS1−2)。このパラメータとしては、イオン化法の種別、MSで正イオンを検出するか、負イオンを検出するかという極性の種別、移動相溶媒の種別、及びMSの検出データ中のバックグランドノイズを除くための閾値がある。なお、閾値は固定的に定められていてもよいが、ここではオペレータが入力するものとする。
【0044】
そして、オペレータは、入力部1により、入力要求されたパラメータを入力する(ステップS1−3)。このパラメータの入力は、オペレータがイオン化法、極性、及び移動相溶媒については直接文字入力を行ない、閾値については数値を入力するようにしてもよく、イオン化法、極性、移動相溶媒、閾値のそれぞれのパラメータについて、DBに書き込まれた用語、あるいは表現を選択肢として表示し、その選択肢の中から選択するようにしてもよい。
【0045】
これらのパラメータが入力されると、制御部2はDB部6に登録されているDBを検索する。即ち、制御部2は、イオン化法、検出極性及び移動相溶媒の組み合わせに基づいてDBを検索して、それらの組み合わせに対応する付加イオンを抽出して、その抽出した付加イオンを、入力されたパラメータと共に表示部3に表示する(ステップS1−4)。この表示によって、オペレータは、MSの検出データであるスペクトル中にどのような付加イオンのピークが現れる可能性があるかを認識することができる。
【0046】
そして、次に、オペレータは、入力部1で、質量スペクトル解析の実行を指示する操作を行なう(ステップS1−5)。これによって、制御部2は、質量スペクトル解析の処理を実行する(ステップS1−6)。なお、この時点までの間の何れかの時に、MSの検出データを取り込んでおくことは、当然である。どの時点で検出データを取り込むかは、その時の状況によって様々であろうが、予め、検出データを取り込んでおいてから、図5のステップS1−1の処理を行なってもよく、あるいは図5のステップS1−4とS1−5の間に、検出データを取り込んでもよい。また、ステップS1−4は、随時、省略可能であり、ステップS1−3で所定のパラメータを入力後、直ちに、ステップS1−5に移行しても良い。
【0047】
ステップS1−6の質量スペクトル解析の処理は制御部2が行なう。このスペクトル解析の処理は、図4に示すDBの質量電荷比の差の項目を使用して行なう。ここではイオン化法がAPCI、検出極性が正であり、移動相溶媒がアセトニトリルである場合、即ち図4の上から2番目の場合について説明する。
【0048】
まず、制御部2は、検出データであるスペクトルデータの閾値以上の部分を抽出してバックグランドノイズを除去する。次に、制御部2は、質量電荷比の差が、DBの当該欄の質量電荷比の差の項目に書き込まれている値、この場合にはアンモニウムイオンとプロトンの質量電荷比の差、と一致する2つのピークがあるか否かを判定する。実際には、ある一つのピークに着目して、そのピークの質量電荷比から、質量電荷比の差の項目に書き込まれている値を減算し、その減算値の質量電荷比の位置にピークがあるか否かを判定するようにすればよい。
【0049】
そして、そのような2つのピーク(このような2つのピークをペアとなるピークと称す)がある場合には試料分子を検出したと判定し、無かった場合には試料分子は検出できなかったと判定する。いま、スペクトルデータ中の、ペアとなる2つのピークの質量電荷比をそれぞれp1、p2(ただし、p2>p1)とし、質量電荷比の差の項目に書き込まれている値がkであるとしたとき、
p2−p1=k …(1)
を満足する場合には試料分子を検出したと判定する。そして、制御部2は、試料分子を検出したと判定した場合には、試料分子の分子量は、上記のようなペアとなる2つのピークのうちの、質量電荷比が小さい方のピークの質量電荷比からプロトンの質量電荷比を減算した値と決定する。なぜなら、この場合には、これら2つのピークのうちの質量電荷比が小さい方のピークはプロトン付加イオンのピークとなるからである。
【0050】
ペアとなるピークが検出できた場合に試料分子の分子量を決定するには、一般的には、ペアとなるピークのうちの質量電荷比が大きい方のピークの質量電荷比から、試料分子の検出に用いた質量電荷比の差を得るために用いた2つの付加物の質量電荷比の大きい方の付加物の質量電荷比、この場合にはアンモニウムイオンの質量電荷比を減算するか、あるいは、ペアとなるピークのうちの質量電荷比が小さい方のピークの質量電荷比から、試料分子の検出に用いた質量電荷比の差を得るために用いた2つの付加物の質量電荷比の小さい方の付加物の質量電荷比、この場合にはプロトンの質量電荷比を減算するようにすればよい。
【0051】
そして、制御部2は、以上の処理をスペクトル中のピークについて順次行なう。
【0052】
なお、図4の一番上の欄のように、付加イオンが3種類ある場合、上述したように質量電荷比の差の項目には3つの値が書き込まれているが、その中の何れか一つの質量電荷比の差を満足する2つのピークがある場合には試料分子を検出したと判定し、そうでない場合には試料分子は検出できなかったと判定する。なぜなら、上述したように、DBの付加イオンの項目に登録されている全ての不純物付加イオンが必ずMSで検出されるとは限らないからである。付加イオンが4種類以上登録されている場合にも同様である。
【0053】
以上がスペクトル解析の処理であり、制御部2は、スペクトル解析の処理を終了すると、その解析結果を記憶部5に書き込むと共に、解析結果を表示部3に表示(ステップS1−7)して、一連の処理を終了する。
【0054】
解析結果の表示は、試料分子が検出でき、その質量電荷比を決定した場合には、その試料分子の分子量を文字表示するようにしてもよく、あるいは図6(a)に示すように、解析を行なったスペクトルを表示すると共に、付加イオンに基づくピークに付加イオンを示し、更に試料分子の分子量を表示するようにしてもよい。なお、図6(a)は、緑茶成分を、移動相溶媒としてアセトニトリルを用いてAPCIでイオン化し、MSで正イオンを検出した場合のスペクトルの例を示しており、スペクトル中にプロトン付加イオン[M+H] と、不純物付加イオンである[M+H+CHCN] のピークが現れている。そして、この試料分子の分子量は 458と決定されている。
【0055】
また、イオンが検出できなかった場合には、例えば、図6(b)に示すように、イオンを検出できなかったこと、及び、検出極性を変更する等、分析条件を変更して再測定を行なうことを促す表示を行なう。
【0056】
また、ペアのイオンは検出できなかったが、1本だけ、ピークが検出された場合には、例えば、図6(c)に示すように、「m/z=500に、ピークが1本だけ、検出されました。この測定条件を考慮すると、[M+H]あるいは[M+H+CHCN]である可能性が高いです。分子量を確定するには、検出極性を変更するなどして、再測定して下さい。」というメッセージの表示を行なう。
【0057】
以上がスペクトル解析の方法であるが、次に、DBの更新について説明する。DB部6に登録されているDBには、イオン化法、検出極性、移動相溶媒の種々の組み合わせに対して、付加イオン、及び、2つの付加イオンの付加物の質量電荷比の差が書き込まれているのであるが、これらDBに登録されている移動相溶媒以外にも特殊な移動相溶媒が用いられる場合もある。
【0058】
そこで、ユーザが、必要に応じて、イオン化法、検出極性、移動相溶媒、そして、それらの組み合わせにおいて、検出される可能性のある付加イオン、それら付加イオンの中の、2つの付加イオンの、付加物の質量電荷比の差などを、変更したり、追加登録したりして、DBを更新できるようにしておくことが望まれる。更にまた、これらの項目名自体を変更したり、追加登録したりすることが、できるような構成にしておくことも望まれる。これは、例えば、APCIにおいて、気化管内で試料液滴を加熱して、試料液滴を脱溶媒する際に、試料分子が、熱分解を起こして、その結果生成したフラクメントイオンが、試料分子に付加するような現象が起きるような場合には、有用な機能となるからである。これらのために、このスペクトル解析装置には、DBの更新のメニューが用意されている。以下に、図7を参照してDB更新の処理について説明する。
【0059】
DBの更新を行なう場合には、オペレータは、入力部1からDB更新のメニューを選択する(ステップS1−10)。このDB更新のメニューが選択されると、制御部2は表示部3にデータ入力を要求する画面を表示する(ステップS1−11)。そして、オペレータはDBに登録するデータを入力する(ステップS1−12)。
【0060】
ここで入力するデータは、イオン化法、検出極性、移動相溶媒、付加イオン及び質量電荷比の差の項目全部についてのデータである。更には、必要に応じて、これらの項目名自体を変更したり、追加登録したりすることも行なわれる。
そして、これらのデータを入力するとオペレータはDBへの更新登録の指示を行なう(ステップS1−13)。これによって、制御部2は、入力されたデータをDB部6のDBを更新(ステップS1−14)して、一連の処理を終了する。
【0061】
以上のようであるので、このスペクトル解析装置によれば、イオン化法、検出極性、移動相溶媒に対応する付加イオンに関する情報がDBに登録されており、イオン化法、質量分析装置での検出極性、及び移動相溶媒を入力すれば、それらの入力されたデータに基づいて、DBの付加イオン情報に基づいて自動的に検出データの解析が実行され、質量分析装置で得られた検出データ中の付加イオンのピークを検出して、それらの付加イオンの質量電荷比に基づいて試料分子の分子量が決定される。
【0062】
従って、不純物付加イオンのピークが現れているスペクトルであっても、自動的に解析できるので、分析者には従来要求されていたような豊富な経験あるいは熟練は要求されることはないものである。また、分析者の経験を問わず、同一の解析結果が得られる。更に、必要に応じてDBを更新することができるので、ユーザの使い勝手がよいものである。
【0063】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、図4に示すDBには、イオン化法としてESIとAPCIの2種類しか登録していないが、CI、FAB、MALDIあるいはFD等のイオン化法についても、同様に付加イオン、及び付加イオンの項目に書き込まれている付加イオンの中から2つの付加イオンを選択したときの、それら2つの付加イオンの付加物の質量電荷比の差を書き込んで登録しておけば、それらのイオン化法を用いて質量分析を行なった場合に得られた検出データの解析も自動的に、容易に行なうことができる。
【0064】
また、予め試料分子の分子量が予測できる場合には、その予測値をパラメータとして入力するようにして、その予測値の近傍のピークについて上述したスペクトル解析の処理を行なわせるようにすることも可能である。このようにすれば、スペクトル解析の処理時間を短縮することができる。
【0065】
さて、次に、本願の第2の課題である、上述したような方法によって、試料分子の質量電荷比の判明した質量スペクトルのパターンから、試料分子が何であるかを、既存のGC/MS用データ・ベースに基づいて、サーチする装置および方法について、説明する。
【0066】
まず、本発明にかかる質量スペクトルの解析装置の一実施例は、図3で示したものと、ほぼ同一の構成である。再び、図3を参照して説明すると、イオン化法、質量分析装置での検出極性、および、移動相溶媒を入力する入力部1と、カラーCRTやカラー液晶表示装置等の画面表示が可能な表示装置で構成される表示部3と、MSで検出された検出データを通信ラインを介して取り込むためのインターフェース(I/F)4と、取り込んだMSの検出データ、スペクトル解析結果等の種々のデータを記憶しておくための記憶部5と、入力部から入力された情報と比較するための、イオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、および、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報を登録したデータベース部6とを備えている。本発明では、さらに、入力部1から入力された情報と、データベース部6に登録された情報との比較に基づいて、質量分析装置で得られた検出データ中の付加イオンのピークを検出し、該付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピーク位置に加算した上で、前記検出データのライブラリー検索を行なう機能を持った制御部2を備えたことを特徴とする。
【0067】
図8は、本発明にかかる質量スペクトルの解析方法の一実施例のフローチャートを示したものである。図8に従って、本発明にかかる質量スペクトルの解析方法について説明する。
【0068】
まず、オペレータは、上述したようなソフトなイオン化方法により、LC/MSの質量スペクトルを測定し、データ処理により、バー型スペクトルを作る(ステップS2−1)。ソフトなイオン化方法により、LC/MSのバー型スペクトルが得られたら、市販されているGC/MS用の汎用ライブラリデータベースに基づいてライブラリ検索を行なうか否かを判断する(ステップS2−2)。判断結果が「No」の場合は、本発明にかかる質量スペクトルの解析方法は、実行されない。一方、判断結果が「Yes」の場合は、次のステップに進む。
【0069】
次のステップS2−3では、図4〜6で詳述したような方法に基づいて、ソフトなイオン化方法でLC/MSの質量スペクトルを測定したときに観測される、付加イオン由来のピークの抽出と、抽出されたそれらの付加イオンのピークの質量電荷比から、質量スペクトルに現れた目的化合物の正しい分子量を判定することが行なわれる。
【0070】
ステップS2−3において、目的化合物の分子量の判定作業が終わったら、ステップS2−4において、分子量の判定が無事できたか否かを判断する。判断結果が「Yes」の場合は、観測された質量スペクトルから、付加イオンと判定された2つのピークを削除する(ステップS2−5)。一方、判断結果が「No」の場合は、違う測定条件で質量スペクトルを測定し、前回のスペクトルと総合して目的化合物の分子量を判定する。その結果、分子量が判定されたら、観測された質量スペクトルから、付加イオンと判定された2つのピークを削除する(ステップS2−5)。
【0071】
観測された質量スペクトルから、付加イオンと判定された2つのピークを削除したら、次に、本来の分子量と判定された位置に、所定の強度のピークを付加する(ステップS2−6)。これは、最大の質量電荷比を持つピークとして、分子イオン[M]+・が観測されるスペクトルパターンを持つ、従来のGC/MS用の汎用ライブラリデータベースに収録された質量スペクトルのパターンに、観測された質量スペクトルのパターンを近づけ、データ検索を容易ならしめるための操作である。この操作により、擬似的に、従来のGC/MS用の汎用ライブラリデータベースに収録されたスペクトルパターンに近い、ライブラリ検索用のスペクトルを再構築することができる(ステップS2−7)。
【0072】
尚、ステップS2−6において、本来の分子量と判定された質量位置に付加される、擬似ピークの強度は、任意の強度でかまわないが、もし可能であれば、観測された質量スペクトルから削除された付加イオンのピーク強度の総和に相当する強度であることが望ましい。
【0073】
また、ステップ2−5で行なわれる、付加イオンのピークの削除作業と、ステップ2−6で行なわれる、目的化合物の質量電荷比の位置へのピークの付加作業では、対象ピークだけでなく、目的化合物の同位体ピークも一緒に、削除および付加させても良い。目的化合物の同位体ピークであるか否かの判断は、目的化合物のピーク位置からのずれの値が、同位体間の質量数の差の値と一致しているか否か、また、目的化合物のピーク強度に対する強度比率が、天然存在比の値になっているか否か、で行なう。
例えば、塩素原子1個を含む化合物では、塩素原子の同位体として、質量数35のものと、質量数37のものが、75.53%と24.47%の天然存在比で混じっているため、質量数Mのピークと、質量数M+2のピークが、約3:1の比率で混じり合って観測される。これらのピークの一部が、付加イオンのピークであると判定された場合、付加イオンのピークとは必ずしも判定されなかった残りの同位体由来のピークも合わせて、削除及び付加するようにすれば、効率が良い。
このことは、複数個の塩素原子を含む化合物にも、適用される。例えば、塩素原子を2個含む化合物では、質量数Mのピークと、質量数M+2のピークと、質量数M+4のピークが、約9:6:1の比率で混じり合って観測される。これらのピークの一部が、付加イオンのピークであると判定された場合、付加イオンのピークとは必ずしも判定されなかった残りの同位体由来のピークも合わせて、削除及び付加するようにすれば、効率が良い。
このことは、塩素以外のハロゲン元素、および、特徴的な同位体パターンを持つ、その他の元素にも共通して言えることである。そのような元素を含む化合物では、同位体パターンが化合物の同定にとって重要なので、同位体由来のピークを一括して削除し、その後、一括して付加するようにすれば、質量スペクトルの再構築に、きわめて有力な手段となる。
【0074】
このようにして、データ検索用に再構築された質量スペクトルを用いて、従来のGC/MS用の汎用ライブラリデータベースに対するヒット率を高めた上で、スペクトルの検索を行ない、検索結果を報告する(ステップS2−8)。
【0075】
このような機能を、図3の制御部2に、あらかじめ与えておけば、LC/MSから得られる、付加イオンのピークを含む複雑な質量スペクトルを、従来のGC/MS用の汎用ライブラリデータベース上で、検索することが可能な、質量スペクトルの解析装置を、得ることができる。
【0076】
このような質量スペクトルの解析方法による解析結果の一例を示したものが、図9である。図9から明らかなように、LC/MSで得られたレセルピンの質量スペクトルは、図8の方法に基づいて再構築されることにより、汎用ライブラリデータベースに収められたEIによるレセルピンの質量スペクトルとの一致度が高まり、スペクトルのヒット率が向上する。
【0077】
尚、この検索方法の応用は、図4に示したESIやAPCIで得られた質量スペクトルに限られるものではなく、正イオンFABスペクトル、負イオンFABスペクトル、正イオンCIスペクトル、負イオンCIスペクトル、正イオンMALDIスペクトル、負イオンMALDIスペクトル、正イオンFDスペクトル、負イオンFDスペクトルなどのライブラリ検索にも有効である。
【0078】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明の質量スペクトルの解析方法および装置によれば、質量スペクトル上に現れた複数のピーク間の質量電荷比の差の値を、あらかじめデータベースに登録しておいた、移動相溶媒や溶媒に含まれる不純物に由来する付加物の質量電荷比と比較することにより、それらのピークが、付加イオン由来のピークであるか否かを判定するようにしたので、従来は、経験と知識が必要であった、不純物付加イオンのピークが現れている質量スペクトルの解析を、熟練を要することなく、容易に行なうことができるようになった。
【0079】
また、質量スペクトルを構成するピークの中から付加イオンのピークを判定して、該付加イオンのピークを質量スペクトルの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピーク位置に加算した上で、ライブラリー検索を行なうようにしたので、ソフトなイオン化法で得られたLC/MSの質量スペクトルを、EIで得られた既に市販されているGC/MS用の汎用ライブラリデータベースに基づいて解析し、ヒット率を高めることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】トルエンの質量スペクトルを示す図である。
【図2】レセルピンの質量スペクトルを示す図である。
【図3】本発明にかかる質量スペクトル解析装置の一実施例を示す図である。
【図4】本発明にかかる質量スペクトル解析装置のデータベース部に登録されているデータベースの一例を示す図である。
【図5】本発明にかかる質量スペクトルの解析方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図6】質量スペクトルの解析結果の表示例を示す図である。
【図7】本発明にかかる質量スペクトル解析装置のデータベース部に登録されているデータベースの更新方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明にかかる質量スペクトルの解析方法の別の実施例を示すフローチャートである。
【図9】本発明にかかる質量スペクトルの解析方法によるレセルピンの質量スペクトルの解析結果を示す図である。
【符号の説明】
1・・・入力部、2・・・制御部、3・・・表示部、4・・・インターフェイス(I/F)、5・・・記憶部、6・・・データベース部、7・・・バス。

Claims (18)

  1. 入力されたイオン化法、質量分析装置の検出極性、および、移動相溶媒の情報を、データベース部に登録されたイオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、および、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報と比較することにより、質量分析装置で得られた検出データ中に含まれる付加イオンのピークを検出し、該付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピークの位置に加算した上で、前記検出データのライブラリー検索を行なうようにしたことを特徴とする質量スペクトルの解析方法。
  2. 前記データベース部は、イオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報、および、これらの項目名自体のうち、少なくとも1つを、追加または書き換え可能に記憶していることを特徴とする請求項記載の質量スペクトルの解析方法。
  3. 前記付加イオンのピークの検出は、高質量電荷比領域に観測される、少なくとも2つのピーク間の、質量電荷比の差の値が、その測定系で観測される可能性のある、少なくとも2種類の付加イオン間の、質量電荷比の差の値と、一致するか否かに基づいて行なわれることを特徴とする請求項または記載の質量スペクトルの解析方法。
  4. 前記付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピークの位置に加算する作業を行なう際に、同位体ピークの削除および加算を、一括して行なうことを特徴とする請求項、または、記載の質量スペクトルの解析方法。
  5. 前記所定の高さは、予め指定された任意の強度であることを特徴とする請求項または記載の質量スペクトルの解析方法。
  6. 前記質量スペクトルは、ソフトなイオン化法により生成されることを特徴とする請求項、または記載の質量スペクトルの解析方法。
  7. 前記ソフトなイオン化法は、API、CI、FAB、MALDIのうちの1つであることを特徴とする請求項記載の質量スペクトルの解析方法。
  8. 前記APIは、液体クロマトグラフィと質量分析計との間のインターフェイスとして用いられるESI、またはAPCIのいずれかであることを特徴とする請求項記載の質量スペクトルの解析方法。
  9. イオン化法として前記APIを使用した場合は、In-source CID、あるいはIn-sourceフラグメンテーションと呼ばれる方法で得られた、フラグメントイオンを多く含むマススペクトルを解析することを基本とすることを特徴とする請求項8記載の質量スペクトルの解析方法。
  10. イオン化法、質量分析装置での検出極性、および、移動相溶媒を入力する入力部と、
    入力部から入力された情報と比較するための、イオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、および、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報を登録したデータベース部と、
    入力部から入力された情報とデータベース部に登録された情報との比較に基づいて、質量分析装置で得られた検出データ中の付加イオンのピークを検出し、該付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピーク位置に加算した上で、前記検出データのライブラリー検索を行なう制御部と、
    を備えたことを特徴とする質量スペクトル解析装置。
  11. 前記データベース部は、イオン化法、質量分析装置の検出極性、移動相溶媒、それらの条件下で検出が予想される付加イオンの情報、および、これらの項目名自体のうち、少なくとも1つを、追加または書き換え可能に記憶していることを特徴とする請求項10記載の質量スペクトル解析装置。
  12. 前記付加イオンのピークの検出は、高質量電荷比領域に観測される少なくとも2つのピーク間の質量電荷比の差の値が、その測定系で観測される可能性のある少なくとも2種類の付加イオン間の質量電荷比の差の値と一致するか否かに基づいて行なわれることを特徴とする請求項10、または、11記載の質量スペクトルの解析装置。
  13. 前記付加イオンのピークを、前記検出データの中から削除すると共に、所定の高さのピークを、その付加イオンに対応した分子イオンのピークの位置に加算する作業を行なう際に、同位体ピークの削除および加算を、一括して行なうことを特徴とする請求項1011、または、12記載の質量スペクトルの解析方法。
  14. 前記所定の高さは、予め指定された任意の強度であることを特徴とする請求項10または13記載の質量スペクトルの解析装置。
  15. 前記質量スペクトルは、ソフトなイオン化法により生成されることを特徴とする請求項10111213、または、14記載の質量スペクトルの解析装置。
  16. 前記ソフトなイオン化法は、API、CI、FAB、MALDIのうちの1つであることを特徴とする請求項15記載の質量スペクトルの解析装置。
  17. 前記APIは、液体クロマトグラフィと質量分析計との間のインターフェイスとして用いられるESI、またはAPCIのいずれかであることを特徴とする請求項16記載の質量スペクトルの解析装置。
  18. イオン化法として前記APIを使用した場合は、In-source CID、あるいはIn-sourceフラグメンテーションと呼ばれる方法で得られた、フラグメントイオンを多く含むマススペクトルを解析することを基本とすることを特徴とする請求項17記載の質量スペクトルの解析装置。
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