JP4162849B2 - 新規Fasリガンド誘導体 - Google Patents
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Description
本発明は、様々な疾患に関与するアポトーシスを制御することができるFasリガンドに関する。
背景技術
Fasリガンド(以下、FasLとする)はFasL、TNF、リンフォトキシン、TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)、CD40リガンド(CD40L)、CD27リガンド(CD27L)、CD30リガンド(CD30L)、およびOX40リガンド(OX40L)を含む腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーに属す(ナガタ、Cell,88,355−365,1997;ウィリー等、Immunity,3,673−682、1995)。リンフォトキシンのα鎖以外のTNFファミリーの大部分はII型の膜タンパク質として合成される。しかしFasLの可溶型、TNFα、およびCD40Lはこれらの分子を発現する細胞の培養上清中で見つかり、これらのTNFファミリーの構成員は膜から切断(切り出)されることを示す(ペレ等、Cell,63,251−258,1990 ;ピエトラベール等、J.Biol.Chem.,271,5965−5967,1996b;タナカ等、EMBOJ.,14,1129−1135,1995)。メタロプロテアーゼの阻害剤はTNFαと同様FasLの放出を妨げるので、メタロプロテアーゼが膜結合型FasLやTNFαがその可溶型を生み出すのに関与すると考えられた(ジーリング等、Nature 370,555−557,1994;マックジーハム等、Nature,370,558−561,1994;モーラー等、Nature,370,218−220,1994;タナカ等、Nature Med.2,317−322,1996)。最近、特異的にTNFαを切断するメタロプロテアーゼがADAMメタロプロテアーゼファミリーの一員として同定された(ブラック等、Nature 385,729−733,1997;モス等、Nature,385,733−736,1997)。これに対してTNFファミリー構成員の膜からの放出の生理学的役割は十分には解析されていない。
FasLは、TNFレセプターファミリーの一員であり、かつCD95やAPO−1とも呼ばれる、そのレセプターFasに結合することによって、アポトーシスを引き起こす。FasLは、主として、ナチュラルキラー細胞(NK)と同様、活性化されたT細胞で発現し(アラセ等、J.Exp,Med.,181,1235−1238,1995;スダ等、J.Immunol.,154,3806−3813,1995;タナカ等、Nature Med.2,317−322,1996)、一方Fasは様々な細胞で普遍的に発現する(フレンチ等、J.Cell.Biol.335−343,1996;レーザンサー等、Lab.Invest.69,415−429,1993;スダ等、J.Immunol.,154,3806−3813,1995;ワタナベーフクナガ等、J.Immunol.,148,1274−1279,1992)。FasやFasLが欠損しているマウスの分析によりFasLがCD8T細胞やCD4Th1型T細胞のような細胞障害性Tリンパ球(CTL)の主要作用分子の1つであることが示された(ハナブチ等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,4930−4934,1994;スダ等、J.Immunol.,154,3806−3813,1995;ビグノークスおよびゴルステン、Eur.J.Immunol.,24,923−927,1994)。CTLの役割はウイルスに感染した細胞や癌細胞を除去し、動物体内でウイルスや癌細胞が拡散増殖するのを防ぐことである。しかし、この系が過剰に作用したとき、組織の破壊が引き起こされる。肝炎、インシュリン依存性糖尿病、および甲状腺炎(橋本病)のようなCTL介在自己免疫疾患ではFasLが誘導するアポトーシスが関与する可能性が示唆されてきた(シェルボンスキー等、Cell 89,17−24,1997;ジオルダノ等、Sience,275,960−963,1997;コンドウ等、Nature Med.,3,409−413,1997)。
上述のとおり、膜結合型FasLは切断されて可溶型になる。可溶型ヒトFasLは、少なくともFasを過剰に発現するマウスWR19L細胞形質転換体にアポトーシスを誘導する機能がある(タナカ等、EMBO J.,14,1129−1135,1995)。可溶型FasLは、NKリンパ腫、TやNK型の大型顆粒白血病患者の血清中で高値を示す(タナカ等、Nature Med.2,317−322,1996)。これらの白血病患者はしばしば肝炎や好中球減少症を呈するので、TNFで見られるとおり、FasLの可溶型が全身性組織破壊を引き起こすことが仮定される。一方、ヒト可溶型FasLの組み換え型をマウスに投与した際、Propionibacterium Acnesによる前処理でFasL誘導致死に対するマウスの感受性を挙げたにもかかわらず、大量のFasLが致死効果を示すのに必要であった(タナカ等、J.Immunol.,158,2303−2309,1997)。
発明の開示
これらの結果は本発明者が可溶型と膜結合性のFasLの細胞障害活性を比較し、膜からのFasLの放出の生理学的役割を調べるきっかけとなった。
本発明者は、発現するマウスのT細胞形質転換体の培養上清からヒトFasLを精製した。そのN末端配列分析により本発明者はヒトFasLの切断部位を決定できた。切断部位近傍のアミノ酸欠失変異は膜結合型FasLの切断を完全に阻害した。ヒトジャーカットT細胞株とマウス肝細胞はむしろ可溶型FasLに耐性があることがわかったが、それらは効率的に膜結合型FasLにより殺された。また、可溶型FasLは肝細胞に対する膜結合型FasL誘導細胞障害を阻害する。これらの結果はFasLの細胞膜からの放出はFasLの細胞障害活性をダウンレギュレートすることを示唆する。
本発明はFasアンタゴニストまたはアポトーシス調節物質として機能する可溶型Fasリガンド、アポトーシス誘導活性または細胞障害活性に優れた新規なFasリガンド誘導体および該ペプチドをコードするDNAを提供しようとする。
FasリガンドはII型の膜タンパク質であり、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーに属しており、レセプターであるFasに結合することによりアポトーシスを誘発する。FasLは推定されるプロセッシング酵素であるメタロプロテアーゼにより切断され、可溶型のタイプを生じる。本発明者はヒトの可溶型FasLをヒトのFasLを発現するマウス細胞の形質転換体の上清から精製し、その開裂箇所を特定した。開裂箇所近傍の4〜23アミノ酸の欠失はヒトFasLの膜からの放出を妨げた。しかし、アポトーシスの誘導活性は保持していた。Fasを過剰に発現するマウスWR19L細胞はFasLの可溶型タイプと同様に、膜結合FasLに感受性がある。しかしながら、低濃度で内因性Fasを発現するジャーカット細胞やマウス初代培養肝細胞はむしろ可溶型FasLに耐性がある。膜結合型FasLがエフェクターとして用いられたとき、ヒトジャーカット細胞とマウス肝細胞は効率的に殺傷される。さらに、可溶型FasLはマウス肝細胞に対する膜結合型FasLの細胞障害性を阻害する。これらの結果は膜結合型は機能性の型で、その活性は膜からの可溶型FasLの放出によりダウンレギュレーションされることを示す。
すなわち、本発明は、プロテアーゼ(蛋白分解酵素)に耐性の、又は抵抗性の、もしくは感受性の低下したFasリガンド誘導体、具体的には天然型ヒトFasリガンドのN末端から129〜130番目のアミノ酸が欠失または置換され、かつ、111〜128番目、131〜133番目のアミノ酸のうち少なくとも一つが欠失または置換されたアミノ酸配列からなるもの、またはその8〜69番目のアミノ酸が欠失した配列からなるものである。好ましくは、配列番号1または2に記載したアミノ酸配列を含有する新規Fasリガンド誘導体、およびこれらの新規Fasリガンド誘導体をコードするDNAを提供する。
さらに、本発明は、Fasアンタゴニストまたはアポトーシス調節物質として機能する可溶型Fasリガンド、および可溶型Fasリガンドを含有するアポトーシス調節剤を提供し、これらを投与するFasリガンド誘導アポトーシスが関与する疾患の予防治療方法を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の第1の態様である新規FasL誘導体は、プロテアーゼに対して耐性の、または抵抗性の、もしくは感受性の低下したFasリガンド誘導体又は変異体である。特に、前記プロテアーゼが特にメタロプロテアーゼであり、および/または細胞膜結合型FasLを生体内又は試験管内で細胞から遊離する作用を有するプロテアーゼ、すなわちプロセッシング酵素である、Fasリガンド誘導体である。具体的には天然の膜結合型FasLのプロセッシング酵素による切断部位又はその近傍に何らかのアミノ酸残基の変異を有するもの、例えば、1以上のアミノ酸の欠失、置換または挿入、特に1以上、例えば4以上のアミノ酸の欠失を有するものがよい。本発明の新規FasL誘導体には、FasLの細胞外領域中、Fas結合性および/またはアポトーシス誘導能に必要な最小活性部分は必須であり、生理的条件下で細胞膜等の膜に結合性を有する、膜結合領域を含有することが好ましいが、実施例に示すように、細胞内領域は少なくとも全体は必須ではない。細胞外領域と膜結合領域との結合は直接でもよいし、リンカーペプチド等を介して間接的であってもよい。また、膜貫通領域は必ずしも天然のFasL由来のものである必要はなく、場合によっては、ポリペプチド以外の膜結合性物質でもよいし、他の機能、例えば、多量体化能を有する物質を結合してもよい。なお、結合する膜としては細胞膜以外にリポソーム等が挙げられる。
本発明の第1の態様である新規Fasリガンド誘導体の具体例としては、天然型ヒトFasリガンドのN末端から129〜130番目のアミノ酸が欠失または置換され、かつ、111〜128番目、131〜133番目のアミノ酸のうち少なくとも一つが欠失または置換されたアミノ酸配列からなるもの、またはその8〜69番目のアミノ酸が欠失した配列からなるものである。好ましくは、配列番号1に記載の配列、又はその8〜69番目のアミノ酸を欠失した配列(以下D4と称す)、および配列番号2に記載の配列、又はその8〜69番目のアミノ酸を欠失した配列(以下D5と称す)に記載のアミノ酸配列からなるものである。配列番号1またはD4は天然型のヒトFasリガンドのN末端から111〜133番の23アミノ酸が欠失したものであり、配列番号2又はD5は天然型のヒトFasリガンドのN末端から128〜131番の4アミノ酸が欠失したものである。これらは膜結合型Fasリガンドを129番のLysと130番のGlnの間で切断して可溶型Fasリガンドを放出するメタロプロテアーゼの作用箇所近傍のアミノ酸が欠失している。上記の膜結合型Fasリガンド誘導体は欠失変異を有するが、その細胞障害活性は天然型の膜結合型Fasリガンドと同等以上である。
上述で具体例として示した天然型ヒトFasリガンドのN末端から129〜130番目のアミノ酸が欠失または置換され、かつ、111〜128番目、131〜133番目のアミノ酸のうち少なくとも一つが欠失または置換されたアミノ酸配列、またはその8〜69番目のアミノ酸が欠失した配列、並びに配列番号1に記載の配列、D4、配列番号2に記載の配列またはD5である、本発明のFasリガンド誘導体は、メタロプロテアーゼ耐性、抵抗性、または感受性の低下した特性を有するため、メタロプロテアーゼによる分解を受けないので、膜から遊離せず、細胞障害活性が減少しないため、天然型の膜結合型Fasリガンドより、効率的に標的細胞表面のFasに作用し、アポトーシスのより優れた細胞障害活性を示すことができる。
なお、配列番号1または2に示したアミノ酸配列には、それぞれ4ヶ所の糖鎖付加可能部位(N−グリコシレーションサイト)があり、配列番号1おいては、アミノ酸番号76〜78、161〜163、227〜229、237〜239が、配列番号2においては、アミノ酸番号76〜78、180〜182、246〜248、256〜258が糖鎖付加可能部位に相当する。本発明の新規Fasリガンド誘導体はこの位置に糖鎖が付加していてもよい。
本発明のFasリガンド誘導体が、遺伝子工学的に酵母や動物細胞等の真核細胞を宿主として生産されたものである場合は、糖鎖が付加される場合があり、これに対し、本発明の膜結合型Fasリガンド誘導体が、大腸菌等の原核細胞を宿主として遺伝子工学的にポリペプチドを生産されたものである場合には、糖鎖の付加はない。
本発明のFasリガンド誘導体は、アポトーシスを誘導し、生体にとって不必要な細胞を除去するために使用することが可能である。たとえば、エイズウイルス感染細胞ではFas抗原が発現されているので、本発明のFasリガンド誘導体は、エイズウイルス感染初期に使用してアポトーシスを人工的に誘導し、感染細胞を早期に除去する事により、エイズ治療に用いることができる。また、本発明のFasリガンド誘導体は、ある種の自己免疫疾患に対しても、人為的にFas抗原を介したアポトーシスを生じさせる事により、自己抗原反応性のT細胞を除去することができる。また、本発明のFasリガンド誘導体は、癌治療するために使用することができる。なお、モリモト H.(Morimoto H.)等は、癌細胞にFas抗原を介したアポトーシスを誘導する事によって、アドリアマイシンやシスプラチンによる制癌効果が相乗的に増強されることを報告している(Cancer Res.,53巻、2591−2596頁、1993年)。
本発明の第2の態様である可溶型Fasリガンドは、天然型のFasリガンドの少なくとも1部を有し、界面活性剤等を用いなくても水溶液に可溶性であるもののうち、Fasアンタゴニストとして機能するもの、またはアポトーシス調節作用を有するものであれば特に制限されない。本発明において、Fasアンタゴニストとは、Fas/Fasリガンド系アンタゴニストというべきものであり、Fasによるシグナルの発生又は伝達をいずれかの段階で何らかの形で遮断し、Fasを介するアポトーシスを抑制又は阻害するものである。
本発明の可溶型Fasリガンドは、天然型のFasリガンドの少なくとも1部を有し、界面活性剤等を用いなくても水溶液に可溶性であるもののうち、例えば、Fas細胞外領域と相互作用し、天然型のFasLと競合したり、または、Fasのダウンレギュレーションを引き起こすものが挙げられる。このような可溶型Fasリガンドとしては、Fasリガンドの細胞外領域の少なくとも一部からなるものが例示され、好ましくはヒト天然型FasリガンドのN末端から130番目のGlnからC末端までのアミノ酸配列からなるペプチドが例示される。
さらに、天然の膜結合型Fasリガンド、および天然の膜結合型Fasリガンドと同様に生体内または試験管内でメタロプロテアーゼにより切断されて可溶性Fasリガンドになるポリペプチドは、本発明の可溶型Fasリガンドの前駆体として用いられる。
本発明者は可溶型FasリガンドがFasL、特に膜結合型のFasL誘導細胞障害を抑制すること、すなわち、Fasアンタゴニストまたはアポトーシス調節物質として作用し、アポトーシスを抑制、阻害または調節することを見出し本発明を完成させた。このような本発明のFasアンタゴニストとして機能する可溶型Fasリガンドを用いることにより、FasL誘導アポトーシスの治療、予防を行なうことができる。また、可溶型FasLを用いるFas機能またはアポトーシスの抑制若しくは調節方法、および可溶型FasLを含有するアポトーシス拮抗剤若しくは調節剤が提供される。
肝炎、インシュリン依存性糖尿病、および甲状腺炎(橋本病)のようなCTL介在自己免疫疾患においてFasL誘導アポトーシスが関与することが示されてきた。さらに、アポトーシスが関与する疾患としては、例えば、免疫担当細胞あるいは肝細胞のアポトーシスにより組織の機能が著しく低下した結果生じると考えられる、エイズウイルス感染後期の免疫能の低下や、劇症肝炎における肝機能低下が挙げられる。また、アポトーシスが関与する疾患として、心疾患、GVHD、腎疾患、虚血再灌流障害に基づく疾患及び臓器障害に基づく疾患が挙げられる。
例えば、心疾患としては、特に心筋梗塞等の虚血性心疾患、種々の原因による心筋炎、心筋症、特に拡張型心筋症、心不全、並びに虚血再灌流障害及びそれに基づく心疾患等が;GVHDとしては、不適合性骨髄移植や先天性免疫不全症への骨髄移植等の骨髄移植後に起るGVHD、臓器移植後に起るGVHD、免疫低下した宿主に対する大量輸血等の輸血後に起るGVHD等が;虚血再灌流障害としては、肝臓、心臓、腎臓、肺、脾臓、小腸、大腸、胃、膵臓、脳、筋肉、皮膚などにおいて認められる虚血再灌流障害及びそれに基づく疾患、例えば、肝不全、再灌流不整脈、腎不全、壊死性陽炎などで各臓器の損傷や機能障害が挙げられる。
さらに、アポトーシスが関与する疾患として、上述した虚血再灌流障害に基づく疾患、アレルギー性接触皮膚炎または関節リウマチなどが、さらには、SIRSに伴うMODS挙げられる。
また、アポトーシスが関与する疾患として、エンドトキシンによる臓器障害、特に肝臓障害又はエンドトキシン血症もしくは敗血症において、急性期のみならず、慢性的な障害が挙げられる。
さらに、アポトーシスが関与する疾患として、肝臓においては、移植などの外科的手術時、あるいはショックおよび循環不全などによる肝血流量(血液供給)の減少、あるいは遮断の際の虚血再灌流障害において、肝不全や組織障害ならびに肝機能低下が挙げられる。心臓においては、心筋梗塞に対する血栓溶解療法、経皮的冠動脈内血栓溶解療法(PTCR)や経皮的冠動脈内腔拡張術(PTCA)後の再灌流の結果、細胞内カルシウムイオンの過負荷等に起因する不可逆的な細胞死や致死的な不整脈が挙げられる。また、腎臓においては、術後、または腎移植等に起因する虚血再灌流による腎不全や糸球体固有細胞(内皮細胞、上皮細胞、メサンギウム細胞)、メサンギウム基質、基底膜の細胞外基質または尿細管上皮細胞などの障害が挙げられる。
本発明の第1および第2の態様の、可溶型FasリガンドおよびFasリガンド誘導体は医薬組成物に用いることができる。この場合は、少なくとも一種の医薬用担体、または媒体、例えば滅菌水や生理食塩水、植物油、鉱油、高級アルコール、高級脂肪酸、無害性有機溶媒等、さらには必要に応じて賦形剤、着色剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、溶解補助剤、吸着防止剤、安定化剤、保存剤、保湿剤、酸化防止剤、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤等と適宜組み合わせて注射剤や経口剤などの医薬組成物やキットの形態をとることができる。本発明の予防・治療剤は、好ましくは非経口的に、たとえば、静脈内注射、冠動脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身あるいは局部的に、ならびに急速もしくは持続的に投与することができる。本発明の予防・治療剤のヒトに対する投与量は患者の病態、年齢あるいは投与方法により異なるが、適宜適当な量を選択することが必要である。例えば、全身投与の場合、約0.1−100mg/kgの範囲で適当な分割容量を選択することができる。しかしながら、当該医薬組成物の使用はこれらの投与方法および投与量に制限されるものではない。さらに、他の薬剤と併用してもよい。
本発明の第1および2の態様のFasリガンドを医薬組成物に用いる場合は、常法に従って、製剤化することができる。たとえば、注射用製剤は、精製された本発明の第1および2の態様のFasリガンドを溶剤、たとえば、生理食塩水、緩衝液などに溶解し、それに、必要に応じて吸着防止剤などを加えたものであり、または、使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための一般的な賦形剤を使用することができる。
本発明の第1および第2の態様のFasリガンドはいかなる方法で生産されたものであってもよい。例えば、ペプチド合成機(例えば、ペプチドシンセサイザー430A型、パーキンエルマージャパン(株)製)を使用して化学合成してもよい。
また、ヒトおよびヒト以外のいかなる生物の組織や細胞、体液から精製してもよい。ヒトや動物の体液としては、血液や尿が挙げられる。細胞としては、本発明の新規ポリペプチドを産生する細胞を適宜選択して用いることができる。例えば、脾細胞や胸腺細胞、リンパ球系細胞、および、それらの株化細胞などを、ノーザンブロットあるいはウエスタンブロット等で解析し、本発明の新規ポリペプチドの発現量の高いものを選択する。
必要があれば、細胞をPMA(ホルボールミリステートアセテート)やイオノマイシン、PHA(フィトヘムアグルチニン)、ConA(コンカナバリンA)、IL−2(インターロイキン−2)等の刺激剤から選ばれる、1種もしくは2種以上の適切な刺激剤で刺激して産生誘導し、細胞もしくは培養上清から、当該ポリペプチドを精製してもよい。精製は、濃縮や、各種クロマトグラフィー、塩折なと一般的に行われているポリペプチドの精製方法を適宜組み合わせ、Fas抗原への結合性、もしくは、Fas抗原を発現している細胞への細胞障害活性等を指標として行うことができる。
しかし、本発明の第1および第2の態様のFasリガンドは、その純度の面から、遺伝子工学的に生産されたもの、すなわち、組換え型ポリペプチドであることが好ましい。当該ポリペプチドを遺伝子工学的に生産するには、適当なベクターに本発明の第1および第2の態様のFasリガンドのcDNAや本発明のDNA等を組み込み組換え遺伝子を得て、該組換え遺伝子で適当な宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養して培養混合物を回収し、当該ポリペプチドを精製する。また、該DNAや組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法(サムブルック J.(Sambrook,J.)et al.:Molecular Cloning,a Laboratory Manual,2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989年))で得る方法も例示される。
本発明の第3の態様の新規DNAは、本発明の新規Fasリガンド誘導体、特に配列番号1および2に記載されたアミノ酸配列、またはD4、D5をコードするものである。本発明のDNAは、それが本発明の新規Fasリガンド誘導体をコードする限り、いかなる配列からなるDNAであってもよい。同じアミノ酸をコードするDNAのトリプレットは、アミノ酸の種類ごとに1〜6種類迄存在することが知られており、同じペプチドをコードする塩基配列は1種類には限定されないが、このうちいずれのコドンを使用してもよい。
また、本発明のDNAは、それが本発明の新規Fasリガンド誘導体をコードする塩基配列を含有する限り、cDNAであってもイントロンを有する染色体DNAであってもよい。しかしながら、ベクターへの導入の容易さ等、遺伝子工学的手法における扱い易さから、本発明の新規DNAはcDNAであることが好ましく、配列番号4,5および6に記載された塩基配列を有するものが例示される。
本発明の新規DNAは、1本鎖であっても、それに相補的な配列を有するDNAやRNAと結合して2重鎖、3重鎖を形成していても良い。
また、本発明のDNAの塩基配列が提供されることにより、RNAの配列、相補的なDNAおよびRNAの配列が一義的に決定される。
本発明のDNAは、本発明の新規Fasリガンド誘導体を組み換えDNA技術を使用して製造するために用いることができる。すなわち、本発明のDNAを、プロモーター配列等の発現に必要な配列を有する適当な発現ベクターの適当な位置に挿入し、このベクターで適当な宿主細胞を形質転換することによって、形質転換体に本発明の新規Fasリガンド誘導体を発現させることができる。また、本発明の新規DNAを適当なベクターに組み込んで、投与し、例えば、ガン、ウイルス疾患、自己免疫疾患等の遺伝的にアポトーシスの機構が欠損している疾患等の遺伝子治療にも使用する事ができる。さらに細胞株や生体外に取り出した細胞を本発明のDNAにより形質転換し、それを生体に戻すことにより細胞治療を行なうこともできる。また、FasL誘導体を発現する移植用の臓器や組織を提供するためのトランスジェニック動物の作製に使用できる。
さらに、本発明の新規DNAは、アンチセンス医薬の開発に使用したり、トランスジェニックマウス等、アポトーシスが関与する疾患のモデル動物の作製に使用したり、酵素等で標識して、組織におけるFasリガンドおよびその誘導体の発現状況を検査し、アポトーシスが関与する疾患の診断に使用することができる。
本発明の新規DNAは化学合成やDNAライブラリーから得ることができる。
本発明の新規DNAを化学合成するには、たとえば、次のように行えばよい。すなわち、所望の塩基配列を有するDNAを約20塩基程度からなる断片に分けてDNA化学合成機(例えば、394型、パーキンエルマージャパン(株)製)を用いて合成し、その後、必要に応じて5’末端のリン酸化を行い、各断片をアニーリングし、ライゲーションして目的とするDNAを得る。
本発明の新規DNAをDNAライブラリーから得る例としては、適当なゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーを、ハイブリダイゼーションによるスクリーニング法や、抗体を用いたイムノスクリーニング法等でスクリーニングし、目的のDNAを有するクローンを増殖させ、そこから制限酵素等を用いて切り出す方法がある。
本発明の新規DNAはまた、ゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーを鋳型とするPCR(Polymerase Chain Reaction)によっても得る事ができる。
以下に記載の条件に従って、本発明の1例を実施した。
(1)ヒト可溶型FasLの生産と精製
ハムスター抗ヒトFasLモノクローナル抗体(clone4H9)はタナカ等、Nature Med.2,317−322,1996に記載されている。3.5mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の抗体(10.5mg)が5mlのプロテインA−セファロース4FFビーズ(ファルマシア社製)と混ぜられ、4℃で1時間保温した。ビーズは念入りにトリス緩衝化生理食塩水(TBS,50mM Tris−HCl,pH7.4,150mM NaCl)で洗浄し、200mMのほう酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で1度洗浄し、結合していないタンパク質を取り除いた。結合抗体は200mMほう酸ナトリウム緩衝液に溶かした20mMジメチルピメルイミデイト(dimethylpimerimidate)(DMP)とインキュベートすることにより、ビーズに共有結合的に結合された。
ヒトFasLを発現するマウスWR19L細胞形質転換体(1A12細胞)はタナカ等、Nature Med.2,317−322,1996に記載された。1A12細胞(1×105細胞/ml)が5%FCSが補充されたRPMI1640培地で3日間培養され、約2Lの培地が集められた。培地中のタンパク質は硫安沈殿(50−70%)で集められ、PBSで透析された。タンパク質は、次いで、PBSで平衡化された抗FasL抗体結合プロテインAセファロースのカラム(1ml)にかけられた。カラムは150mMのNaClを含んだ50mM Tris−HClバッファー、pH8.6の20mlで洗浄され、カラムに吸着したFasLは150mMのNaClを含む50mMグリシン−HClバッファー(pH2.2)で溶出された。溶出液は直ぐに1M Tris−HCl(pH7.5)で中和され、PBSに透析され、セントリコン(アミコン社製)を用いて濃縮された。
N末端アミノ酸配列を決定するために、6μgの精製されたFasLが0.1%のSDSが入っている10−20%のポリアクリルアミドゲル(第一純正化学社製)の電気泳動で分離された。タンパク質は、ブロッティング用のバッファーが0.075%SDSを含んでいた以外はフクナガ等、J.Biol.Chem.,265,14008−14015,1990に記載のとおりPVDF膜に30Vで16時間、電気ブロッティングされた。膜上のタンパク質はクマジーブリリアントブルーで染色することにより検出され、宝酒造株式会社に依頼してN末端のアミノ酸配列がエドマン分解で決定された。
(2)様々なヒトFasLの変異体を発現する形質転換体の確立
細胞内領域(8−69番のアミノ酸)が欠けたヒトFasLの発現プラスミド(pBOSHFLD1)がタナカ等、Nature Med.2,317−322,1996に記載された。鋳型としてpBOSHFLD1を用いた組み換えPCRにより、切断部位に一連の欠失と点変異を有するヒトFasL変異体用の発現プラスミド(pBOSHFLD4,pBOSHFLD5,およびpBOSHFLD6)が、作られた。要約すると、111−133番のアミノ酸が欠失しているpBOSHFLD4を構築するために、FasL cDNAの5’部分がpEF−BOSベクターのセンスプライマー(BOS6;CCTCAGACAGTGGTTCAAAG)(ミズシマ、ナガタ、Nucleic Acids Res.,18,5322,1990)と、アンチセンス欠失プライマー(DA4;TTTTCAGGGGGTGGACTGGGCTCCTTCTGTAGGTGGAAG、ヒトFasLの105−110番と134−139番のアミノ酸をコードする配列)により増幅された。cDNAの3’部分はDA4プライマーに相補的なセンスプライマー(DS4)と、FasLcDNAの3’非コード領域の配列を有するプライマー(HFLP3;GCTCTAGAACATTCTCGGTGCCTGTAAC)で増幅された。PCRの条件はタカハシ等、Cell,76,969−976,1994に記載されたとおりである。最初のPCR産物はアガロースゲル電気泳動で精製され、1:1で混合され、次いでプライマーBOS6とHELP3で第2回目のPCRで増幅された。得られたDNA断片はXbaIで消化され、pEF−BOSベクターに挿入された。他の欠失や点変異は以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて同様な手法で作成された。つまり、pBOSHFLD5(128−131番のアミノ酸の欠失)に対しては、DA5(TGGACTGGGGTGGCCCAAAGATGATGCTGT)とDS5プライマー(DA5に相補的)、pBOSHFLD6(Lys−129をAlaに置換)に対しては、DA6(GGGGTGGCCTATTTGTGCCTCCAAAGATGATGC)とDS6プライマー(DA6に相補的)である。マウスWR19L細胞はpPURと一緒にピューロマイシン耐性遺伝子(クローンテック社製)を有する発現プラスミドを、エレクトロポーレーションでコートランスフェクションされた(イトウ等、Cell,66,233−243,1991)。ピューロマイシン耐性形質転換体は800ng/mlピューロマイシンで選択され、ヒトFasLを発現する形質転換体のクローンはフローサイトメトリー用のビオチン化された抗ヒトFasL抗体(4H9)およびPE標識ストレプトアビジン(ベクトンディキンソン社製)を用いたFACS分析により選択された。
(3)細胞障害活性の分析
Fas発現W4細胞やジャーカット細胞に対するヒト可溶型FasLの細胞障害活性はタナカ等、EMBO J.,14,1129−1135,1995に記載のとおりMTT法により決定された。これに対し、Fas発現W4細胞やジャーカット細胞に対するFasL発現形質転換体の細胞障害活性は基本的にはスダ等、Cell,75,1169−1178,1993に記載されたとおり51Cr−放出分析で決定された。要約すると、W4やジャーカット細胞(1×104)は51Crでラベルされ、様々な比でFasL形質転換体と混合された。37℃で4時間のインキュベーションの後、標的細胞からの51Crの特異的な放出が測定された。
初代肝細胞に対する可溶型FasLやFasL形質転換体の細胞障害活性は以下のように測定された。マウス肝細胞は11週齢の雌のC3H/Heのマウス(SLC,静岡から購入)から、アダチ等、Nature Genet.11,294−300,1995に記載のとおり調製された。肝細胞(1×105)は0.03%I型コラーゲンでコートされた48穴のプレートに植えられ、5%FCSを含むDMEMで24時間培養された。肝細胞は、可溶型FasLやFasL形質転換体と一緒に37℃で22時間インキュベートされた。培地に放出されたGOTの濃度は和光化学社製のトランスアミナーゼCIIキットで測定された。
(4)免疫沈降とウエスタンブロッティング
FasL形質転換体は10%FCSを含むPRMI1640培地で培養され、培地中のFasLと細胞溶解物が免疫沈降に続くウエスタンブロッティングで分析された。要約すると、細胞は、1%NP40、1mM〔p−アミノーフェニル〕メタンスルホニルフルオライドハイドロクロライド、1μg/mlのペプスタチン、および1μg/mlのロイペプチンを含むTBS中で氷上で30分インキュベーションすることより溶解した。15,000rpmで20分間遠心した後、免疫沈降の為に上清が集められた。4×105細胞の細胞溶解物(100μl)や100μlの培地が4℃で45分間25μlのプロテインAセファロース4FFビーズ(ファルマシア社製)に前もって吸収され、次いで、10μlの抗FasLモノクローナル抗体(4H9)で修飾されたプロテインAセファロースと4℃で一晩インキュベーションされた。ビーズは0.1%NP40を含むTBSで念入りに洗浄され、βメルカプトエタノールを含まない10μlのレミールサンプルバッファー(Laemmli’s sample buffer)と懸濁された。サンプルは10−20%勾配ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、タンパク質は4℃、30Vで、15時間でPVDF膜(ミリポア社製)に転写された。FasLタンパク質はタナカ等、EMBO J.,14,1129−1135,1995に記載のとおり、抗FasLポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングで検出された。
実施例で得られた結果は、以下のように表1、および図1〜7に表された。
表1には、野生型と変異FasLを発現する形質転換体によるヒトFasLの可溶型の生産の結果が示された。
野生型、欠失変異体(D4,D5)、または点変異(D6)を発現するマウスWR19L細胞形質転換体クローンは20μMのBB2116の存在下で37℃で24時間培養され、次いで4×105細胞/ml濃度でBB2116なしで、37℃で24時間培養した。上清の細胞障害活性はW4細胞をターゲット細胞として用いてMTT分析を行なうことにより測定された。細胞障害活性の1ユニットは100μl中の7.5×104細胞に対して極大の2分の1の細胞障害活性を付与する希釈率として定義された。
図1には、精製されたヒト可溶型Fasリガンドが示された。
(A)はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析の結果である。精製された可溶型ヒトFasL(6μg)が0.1%SDSの存在下10−20%勾配ポリアクリルアミドゲルで電気泳動により分析され、クマジーブリリアントブルーで染色された。サイズマーカーとして、分子量スタンダード(アマーシャム社、レインボウTM着色タンパク質マーカー)が並行して流され(M)、標準タンパク質のサイズがキロダルトン(kD)で示された。(B)は可溶型FasLの細胞障害活性を示したものである。7.5×104マウスW4やヒトジャーカット細胞が、96穴マイクロタイタープレート中で提示した濃度の可溶型FasLと37℃で15時間インキュベーションされた。細胞生存率はMTT分析を用いて測定され、FasLなしで観察された生存率に対するパーセンテージとして表された。
図2には欠失や点変異を有するFasL構築の概要図が示された。
野生型ヒトFasL(wild)、欠失(D4およびD5)、および点変異(D6)の構造が概要的に示された。CYT,TMおよびEXTは、それぞれヒトFasLの細胞内、膜貫通、および細胞外領域をあらわす。ヒトFasLの切断部位のアミノ酸配列(EKQI)が示された。D4とD5の構築では、それぞれ、111−133番と128−131番のアミノ酸配列が欠失させられ、D6の構築では、Lys129がAlaに置換された。
図3には、ヒトFasL欠失変異による可溶型のFasLの非放出が示された。
形質転換体におけるヒトFasLの免疫的検出が示された。親株であるWR19L細胞(WR19L)や、野生型のヒトFasL(wild)やD4、D5やD6変異体を発現する形質転換体が20μMのBB2116を含有する培地で4×105細胞/mlの濃度で24時間培養された。細胞は次いでBB2116のはいっていない培地に移され、さらに24時間インキュベートされた。形質転換体の細胞溶解物(C)と上清(S)は抗ヒトFasLモノクローナル抗体(4H9)と免疫沈降に供された。免疫沈降物は上記のとおり、ウサギ抗ヒトFasL抗体を用いてウエスタンブロッティングで分析された。サイズマーカーとして分子量スタンダード(アマーシャム社製、レインボーマーカー)が並行して電気泳動され、標準タンパク質のサイズはキロダルトン(KD)で示された。
図4は細胞表面上でのFasLの発現を示す。野生型FasL(クローン1A12と1F10)、D4変異体(クローン41B,44D)、D5変異体(クローン59Aと5−2−21)、またはD6変異体(クローン61Bおよび617C)を発現するマウスWR19L細胞形質転換体が20μMBB2116あり(破線)となし(実線)の培地で24時間培養された。細胞はビオチン化された4H9抗ヒトFasL抗体とPE標識ストレプトアビジンで染色され、上記のとおり提示したフローサイトメトリーで分析された。
図5は膜結合型FasLのFasを過剰に発現するマウスW4細胞の殺傷力を示す。
親のWR19L細胞(白丸)と、野生型(クローン1F10、黒丸)、D4変異体(クローン44D、白四角)を発現する細胞形質転換体の細胞障害活性が5 1Crで標識したW4をターゲットとして用いて、上記のとおり提示したエフェクター/ターゲット(E/T)比で測定された。
図6はヒトジャーカット細胞に対する膜結合型FasLの増大された細胞障害活性を示す。親のマウスWR19L細胞(WR19L)と、野生型(クローン1F10)、またはD4変異体(クローン44D)を発現するその形質転換体が20μMBB2116あり(黒丸)となし(白丸)で24時間培養された。細胞障害活性が51Crで標識したヒトジャーカット細胞をターゲットとして用いて、上記のとおり、提示したE/T比で測定された。
図7はマウス肝細胞の可溶型と膜結合型のFasLの反応性を示す。(A)には肝細胞に対する可溶型FasLの細胞障害活性が示された。初代マウス肝細胞は10μg/mlのシクロヘキシミドがあり(黒丸)となし(白丸)でヒト可溶型FasLの提示した濃度で37℃で22時間インキュベーションされた。インキュベーションの後、キットを用いて上清のGOT濃度が測定された。合計のGOT活性は0.1%NP−40で細胞を溶解させた後で、細胞の溶解物中で測定された。特異的障害は合計のGOT活性に対する放出されたGOT濃度のパーセンテージとして表された。(B)にはマウス肝細胞に対する膜結合型FasLの細胞障害活性が示された。マウス肝細胞は、WR19L細胞(白丸)、またはD4変異体(クローンD44、白四角)と、提示したE/T比で、37℃で22時間インキュベーションされた。インキュベーションの後、障害活性は上記のとおり測定された。(C)は可溶型FasLによる膜結合型FasLの細胞障害活性の阻害を示した。マウス肝細胞がE/T比2.0で、可溶型FasLが提示した濃度で存在して、D4変異体を発現するWR19L細胞形質転換体と一緒に37℃22時間インキュベートされた。インキュベートの後、特異的障害活性が上記のとおり測定された。
〈ヒト可溶型Fasリガンドの精製〉
本発明者は以前、構成的にヒトFasLを発現する安定な形質転換体(1A12 Cell)を確立した。形質転換体は細胞表面にFasLを発現して、また培地中にも機能を持った可溶型FasLを生産した(タナカ等、Nature Med.2,317−322,1996)。可溶型ヒトFasLを精製するために、1A12細胞は5%のFCSを含むPRMI培地で培養され、FasLは抗FasL抗体(4H9)を固定したプロテインAセファロースで親和的に精製された。およそ200μgの精製されたFasLがコンディションドメディウム2000mlから得られた。図1aに提示したとおり、精製したFasLのポリアクリルアミドゲル電気泳動は分子量26,000に単一バンドを示し、これは活性化されたヒト末梢血リンパ球により生産される可溶型FasLに似ていた(タナカ等、EMBO J.,14,1129−1135,1995)。精製したFasLの細胞障害活性がFas発現マウスW4細胞をターゲットとして分析された時、それは2×107 U/mgの比活性を有し、これは基本的にPichia Pastorisにより生産された組み換え可溶型FasLと同じであった(タナカ等、J.Immunol.,158,2303−2309,1997)。ヒトジャーカット細胞は内因性Fasを発現し、抗Fas抗体誘導アポトーシスに感受性がある(タカハシ等、Eur.J.Immunol.,23,1935−1941,1993)。可溶型FasLの細胞障害活性がジャーカット細胞を標的として分析されたとき、非常に弱い活性を示した。すなわち、可溶型FasLの1μg/mlが15時間でたった30%の細胞しか殺すことができず、ジャーカット細胞が、同じ条件で、可溶型FasLに対し、マウスW4細胞より1000倍以上非感受性であることを示す。
〈FasLの切断位置〉
精製された可溶型FasLのN末端のアミノ酸配列を決定するために該タンパク質はポリアクリルアミド上で電気泳動で分離され、PVDF膜に転写された。エドマン分解法による自動シークエンサーにおける精製された26kDaタンパク質の分析の結果、Gln−Ile−Gly−His−Pro−Ser−Pro−Proの単一の配列が示された。この配列はヒトFasLの130〜137番のアミノ酸に正確に対応した。これらの結果から本発明者は、膜結合型として合成されたヒトFasLはLys−129とGln−130の間で切断されて可溶型になると結論づけた。
〈切断されないFasLを発現する細胞株の確立〉
切断されないFasLを発現する形質転換体を確立するために、切断部位に欠失や点変異がある一連の発現プラスミドを構築した。D4やD5は、それぞれ、−19〜+4と−2〜+2のアミノ酸が欠失した欠失変異である。D6はLys129をAlaに置き換えた点変異を持っている。これらの変異した遺伝子はヒトエロンゲーションファクター(pEF)1α遺伝子のプロモーターの制御下におかれ、マウスWR19L細胞へ導入された。
変異FasLが切断されるか否かを調べるために、それぞれの形質転換体は、メタロプロテアーゼ阻害剤BB2116を含有する培地中で24時間培養され、次いで、阻害剤がはいっていない培地へ移された。それらを24時間培養した後、培養上清中のFasL活性とFasLタンパク質が分析された。表1に示すとおり、本来の切断部位を持つFasLの形質転換体は高濃度で培地中に可溶型FasLを分泌した。切断部位における23アミノ酸欠失変異遺伝子形質転換体(CD4)は全くFasL活性を示さず、4アミノ酸欠失変異形質転換体(CD5)も、ほとんど、細胞障害活性を生じなかった。一方、−1でのLysからAlaへの点変異は依然FasLの可溶型を生じた。形質転換体の培養上清と細胞破砕物は、次いで、抗ヒトFasLモノクローナル抗体(4H9)で免疫沈降され、免疫沈降は抗ヒトFasLポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングで分析された。図2Bで示すとおり、それぞれのFasL形質転換体から得られた細胞破砕物は32〜35kDaの主要バンドを示し、それは欠失のサイズから予想されるものであった。野生型と点変異(D6)の上は分子量26000の可溶型FasLを含むが、一方、可溶型FasLタンパク質は欠失変異を発現する形質転換体(CD4とCD5)の上清中では見られなかった。これらの結果は野生型とD6変異の上清中ではFasL活性が検出され、D4とD5では検出されなかったことと一致する。
タンパク質切断に対する変異FasLの耐性を確かめるために、細胞表面でのFasL発現をフローサイトメトリーで調べた。図4で示すとおり、BB2116の存在下で培養した場合、全ての形質転換体が細胞表面に高濃度のFasLを発現した。野生株や置換変異体を発現する形質転換体をBB216なしで培養した場合、細胞表面でのFasLの発現濃度は著しく減少した(約10分の1)。一方、欠失変異の形質転換体(CD4およびCD5)は同じ条件下で細胞表面からほとんどFasLを失わなかった。これらの結果はFasLの細胞外領域の切断部位のEKQI配列は膜結合型FasLの開裂に不可欠であることを示した。一方、−1位での単一置換変異は効果がないことは、−1位のアミノ酸(Lys)は開裂に重要ではないことを示唆した。
〈膜結合型FasLの増大された細胞障害活性〉
本発明者は次いで、可溶型FasLを生じない膜結合型FasLが機能を有するか否かを調べた。図5に示すとおり、開裂可能または開裂不可能FasL(wtまたはD4変異体)を発現する形質転換体はW4細胞に対して同程度の細胞障害活性を示し、膜結合型FasLは活性があり、切断部位での23アミノ酸の欠失はFasLがFasに結合してアポトーシスを誘導する能力に影響しないことを示した。
次いで、標的としてジャーカット細胞を用いて、これらの形質転換体の細胞障害活性が調べられた。図6に示すとおり、非変異のFasLを発現する形質転換体がエフェクターとして用いられた場合、細胞障害活性は非常に低かった。一方、開裂できないFasLを発現するD4形質転換体がエフェクターとして用いられた場合、それらは効率的にジャーカット細胞を殺傷した。ジャーカット細胞の膜結合型FasLへの反応性はW4細胞に匹敵するか僅かに劣る。つまり、約50%のW4細胞がE/T比5.0で特異的に殺傷されるのに対し、20%以上のジャーカット細胞がE/T比3.0で殺傷される。これらの結果は、少なくともヒトジャーカット細胞に対して、膜結合型FasLが可溶型FasLより潜在的な細胞障害性が強いことを示した。従って、非変異のFasLを発現する形質転換体がBB2116で前処理された場合、その細胞は開裂できないD4変異体で観察されたのと同様な、ジャーカット細胞に対する強い細胞障害活性を示した(図6)。
膜結合型FasLの細胞障害活性が可溶性FasLのそれより強いことを確認するために、さらに本発明者はマウス初代培養肝細胞を標的として用いた。マウス肝細胞はFas受容体を発現し、シクロヘキシミドの存在下で、アゴニスティックな抗Fas抗体、Jo2により殺される(ニー等、Exp.Cell Res.,215,332−337,1994)。可溶型FasLが細胞障害のエフェクターとして用いられた場合、同様な結果が得られた。つまり、可溶型FasLは肝細胞に対してほとんど細胞障害活性を示さないが、10μg/mlのシクロヘキシミドがあれば細胞死がおこる(図7A)。一方、開裂することができない欠失変異FasL(D4)を発現する形質転換体をエフェクターとして用いると、シクロヘキシミドなしで効果的に肝細胞を殺す(図7B)。同様に、開裂できるFasL(wt)を発現する形質転換体は弱い細胞障害活性を肝細胞に対して示すけれども、その細胞障害活性はそのエフェクター細胞をBB2116で前処理することにより、大幅に増大する(データは省略する)。
〈可溶型FasLの阻害効果〉
上述したとおり、非変異のFasLの形質転換体は膜結合型のFasLを高濃度で発現する(図3)が、その細胞障害活性は低い(図6)。これらの結果は形質転換体により産生された可溶型FasLが細胞障害活性に対して阻害的に働くことを示唆した。この可能性を調べるために、肝細胞が様々な濃度の可溶型FasLて前処理され、肝細胞のFasLの膜結合型(D4変異体)に対する反応性が調べられた。図7Cに示すとおり、可溶型FasLは用量依存的に細胞障害活性を阻害し、0.4μg/mlの可溶型FasLはE/T比2.0で細胞障害活性の半分を阻害するのに十分であった。
本発明において、ヒトFasLの可溶型はヒトFasL発現プラスミドにより形質転換されたマウスT細胞株で生産された。精製されたヒトFasLのN末端アミノ酸配列の決定は可溶型ヒトFasLがLys129とGln130の間で開裂して、放出されることを明らかにした。FasLの切断部位近傍のアミノ酸配列(Glu−Lys−Gln−Ile)はヒト、ラット、およびマウスで観察され(タカハシ等、Int.Immunol.,6,1567−1574,1994)、そして切断部位近傍の4〜23アミノ酸の欠失は可溶型ヒトFasLの上清中への放出を阻害した。この結果は、FasLを認識して分解するプロテアーゼにとって、切断部位近傍の該アミノ酸配列が重要であることを示唆する。
II型の膜タンパク質として合成されるTNFファミリー構成員のなかで、TNFαとCD40リガンドは可溶型になることが示された(ペレ等、Cell,63,251−258,1990;ピエトラベール等、J.Biol.Chem.,271,5965−5967,1996)。TNFαとCD40リガンドの切断部位は、それぞれLeu−Ala−Gln−Ala/Val−Arg−Ser−Ser、およびAsn−Ser−Phe−Glu/Met−Gln−Lys−Glyである(アガーウォール等、J.Biol.Chem.,260,2345−2354,1985;グラフト等、Eur.J.Immunol.,25,1749−1754,1995)。これらの配列はFasL(Ser−Leu−Glu−Lys/Gln−Ile−Gly−His)と明白な類似性は示さず、TNFα、FasL、およびCD40リガンドは異なった基質特異性をもった別個のプロテアーゼにより分解されることを示す。これに対し、FasLとTNFαの放出はどちらもマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤(BB2116)により阻害され(ジーリング等、Nature 370,555−557,1994;マックジーハム等、Nature,370,558−561,1994;モーラー等、Nature,370,218−220,1994;タナカ等、Nature Med.2,317−322,1996)、TNFαとFasLを開裂するプロテアーゼは似た活性部位を有することを示唆する。最近、TNFαを分解するプロテアーゼ(TACE,TNFα変換酵素)が同定されA Disintegrin And Metalloproteaseドメインを有する膜タンパク質であるADAMファミリープロテアーゼの構成員であることが示された(ブラック等、Nature 385,729−733,1997;モス等、Nature,385,733−736,1997)。今まで、このファミリーの10以上が知られている(ハワード等、Biochem.J.,1996;ウォルフスバーグ等、Develop.Biol.,169,378−383,1995;ヤガミ等、Nature,377,652−6,1995)。あるものは精巣や筋肉で特異的に発現して、特異的な機能を有しているが、これに対し他のものはむしろ至るところで発現し、機能は不明である。FasLを切断するプロテアーゼもADAMファミリープロテアーゼの一員であるようだ。TNFα切断部位近傍の配列を有する12アミノ酸ペプチドはTACEを特定し、それを精製するためにうまく用いられた(ブラック等、Nature 385,729−733,1997;モス等、Nature,385,733−736,1997)。この研究で明らかにされたヒトFasLの切断部位の情報により本発明者はFasLの開裂に関与するプロテアーゼを特定するのに用いるペプチド基質を設計できる。
TNFαとCD40リガンドで示されたとおり(ペレ等、Cell,63,251−258,1990;ピエトラベール等、Eur.J.Immunol.,26,725−728,1996)、膜結合型FasLは機能を有しており、FasLはその機能を発揮するのに細胞内に入る必要はないことは確実である。FasLのFasへの結合はFADDやFLICEのようないくつかのシグナル要素とFas受容体を含むDISC(Death−Inducing Signaling Complex)の形成を誘導し、細胞を殺す。本発明者はある細胞は可溶型および膜結合型FasLに異なった反応性を有することを見出した。過剰にFasを発現するマウスW4細胞は可溶型のFasLて効率的に殺されるが、適当な濃度の内因性Fasを発現するヒトジャーカット細胞やマウス初代培養肝細胞は可溶型FasLに耐性である。一方、ジャーカット細胞と肝細胞は効果的に膜結合型FasLて殺される。この現象はどのように説明できるであろうか。TNFがレセプターに結合した場合、そのTNF/TNFレセプター複合体は、インターナライズし、分解され、レセプターのダウンレギュレーションを引き起こす(ツジモト等、Pro.Natl.Acad.Sci.,82,7626−7630,1985;ワタナベ等、J.Biol.,Chem.,263,10262−10266,1988)。同様なインターナリゼーションと分解がFasL/Fas系でも生じるのかもしれない。可溶型FasL/Fas複合体は容易にインターナライズするかもしれない。膜結合型FasLとFasのインターナリゼーションは遅延するようだ。最近、メデマ等(メデマ等、EMBO J.,16,2794−2804,1997)は、Fas誘導アポトーシスの最も早いシグナル伝達分子の1つであるFLICEは細胞質膜でDISC中のみで活性化されるに違いないと報告した。Fas受容体が可溶型FasLにより迅速にインターナライズされる場合、膜結合型FasLにより誘導されるDISCは長くとどまりFLICEを活性化するのに対して、可溶型FasLによるFLICEの活性化は非常に少ない。W4細胞はジャーカット細胞や肝細胞よりFasを数多く発現するため、弱いシグナルの合計は細胞を殺すのに十分である。さらに可溶型FasLがFas受容体の急速なダウンレギュレーションを起こしたら、膜結合型FasLの細胞障害活性を阻害するだろう。本発明者は、Fasが誘導するアポトーシスを協調して刺激する(膜結合性FasLとは)別の膜分子の存在の可能性を除外することはできないが、上記の説明は可能性のある説明であると考える。
本発明者は、最近ヒトHBVのエンベロープ遺伝子を肝臓で発現するトランスジェニックマウスがエンベロープ類蛋白を認識するCTLクローンを少量(3×106細胞)注射されたとき、マウスは肝炎を起こしてFas依存性態様で死んだことを示した(コンドウ等、Nature Med.,3,409−413,1997)。一方、同様の効果を示すには大量の組み換え可溶型FasLが必要であった(タナカ等、158,2303−2309,1997)。これらの結果は膜結合型FasLこそがインビボで機能性FasLてあるという上述の結果から説明される。同様の発見が、前にTNFαで報告された、つまり、可溶型TNFでなく膜結合型TNFαが細胞死を起こすTNFタイプII受容体を活性化し(グレル等、Cell,83,793−802,1995)、可溶型TNFでなく膜結合型TNFαがリーシュマニアに対する防御活性化に関与することが示された(シペックとウィリー、J.Exp.Med.,174,755−759,1991)。最近、サロルザノ等がメタロプロテアーゼ阻害剤(BB2116)がマウスにおけるConA誘導肝炎を起こし得ることが示された(サロルザノ等、J.Immunol.,158,414−419,1997)。ConA活性化T細胞からのTNFとFasLの放出の抑制はより多くの肝細胞の細胞死を起こし得る。
本発明者は、可溶型FasLを発見したとき、Fas受容体は多くの組織で発現されるので可溶型FasLが全身性組織破壊を引き起こすと考えた(タナカ等、Nature Med.2,317−322,1996;タナカ等、EMBO J.,14,1129−1135,1995)。しかし可溶型でなく膜結合型FasLに細胞障害活性が見つかったのでFasL誘導細胞死は局所的な反応であることが示唆される。免疫系の監視では、細胞障害性リンパ球がウイルス感染細胞や癌細胞を認識し、活性化される。細胞表面で発現したFasLは標的細胞を局所的に殺し、放出によりダウンレギュレートされる。この機構が無関係な健康な細胞を殺さないことを保証する。血清中に可溶型のヒトFasLを保有するヒト疾患全てではなく、一部のみが肝炎と好中球減少症を示したことは(タナカ等、Nature Med.2,317−322,1996)、可溶型FasLそのものは普通の細胞に対して無毒である事と一致する。細胞が例えばFas発現の正の調節によりFas誘導アポトーシスに感作させれば、これら細胞は可溶型FasLで殺されるだろう。
FasLは目や精巣で構成的に発現され、免疫回避に対するその役目が示唆される(ベルグロ等、Nature 377,630−632,1995;グリフィス等、Science,270,1189−1192,1995)。この現象を応用して、いくつかのグループは最近移植で免疫の攻撃から逃げるためにFasLを発現しようとした。ある報告では、FasLを発現する筋芽細胞と共に移植したランゲルハンスβ細胞は長く生き残った(ロー等、Science,273,109−112,1996)が、一方、他の報告では、FasLを発現するβ細胞または腫瘍細胞は好中球を増やし、FasLを発現しない細胞より速やかに殺された(アリソン等、Proc.Natl.Acad.Sci.,94,3943−3947,1997;セイノ等、Nature Medicine,3,165−170,1997)。以前、タラップ等は可溶型TNFを生産する腫瘍細胞が炎症をおこすが、一方、膜結合型TNFを生産する細胞は炎症をおこさないことを報告した(タラップ等、J.Immunol.,149,2076−2081,1992)。これにより、移植片で膜結合型FasLだけを産生する様に設計されたFasLを発現することは興味深いかもしれない。
産業上の利用可能性
本発明により、Fasアンタゴニストとして機能する可溶性Fasリガンド、細胞障害活性に優れた新規な膜結合性Fasリガンド誘導体および該ペプチドをコードするDNAが提供され、FasL誘導アポトーシスが関与する疾患の、治療および予防等に寄与することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、精製されたヒト可溶型Fasリガンドを示す図である。
(A)は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析の結果を示す。
(B)は、可溶性FasLの細胞障害活性を示すグラフである。
図2は、欠失や点変異を有するFasL構築の概要図である。
図3は、形質転換体におけるヒトFasLの免疫的検出結果を示す図である。
図4は、細胞表面上でのFasLの発現結果を示す図である。
図5は、膜結合型FasLのFasを過剰に発現するマウスW4細胞の細胞障害結果を示す図である。
図6は、ヒトジャーカット細胞に対する膜結合型FasLの増大された細胞障害活性の結果を示す図である。
図7(A)は、肝細胞に対する可溶型FasLの細胞障害活性を示し、(B)は、マウス肝細胞に対するFasLの細胞障害活性を示し、(C)は、可溶型FasLによる膜結合型FasLの細胞障害活性結果を示す図である。
Claims (5)
- 天然型ヒトFasリガンドのN末端から111〜133番のアミノ酸のうち、128〜131番を含む連続した4個〜23個のいずれかの個数のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を含有する新規Fasリガンド誘導体。
- プロテアーゼ耐性及び細胞傷害活性を有する、請求項1に記載の新規Fasリガンド誘導体。
- N末端から8〜69番のアミノ酸が欠失した、請求項1または2に記載の新規Fasリガンド誘導体。
- 配列番号1または2に記載したアミノ酸配列を含有する新規Fasリガンド誘導体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の新規Fasリガンド誘導体をコードするDNA。
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