JP4162735B2 - セロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セロトニン受容体拮抗薬を含有する直腸投与製剤に関する。より詳しく言うと、本発明は、セロトニン受容体拮抗薬と特定の基剤成分を組み合わせて配合することによって、優れた吸収性を有ししかも低刺激性としたセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
セロトニン(5−HT3)受容体拮抗薬は、抗悪性腫瘍薬の投与により誘発される悪心や嘔吐を抑制する有用な医薬化合物であり、優れた効果を発揮するものである。即ち、抗悪性腫瘍薬を投与すると、毒物に対する生体の防御機能として、セロトニンが放出され、それが求心性腹部迷送神経末端にある5−HT3受容体に結合し、嘔吐中枢を興奮させて悪心や嘔吐を引き起こすが、セロトニン受容体拮抗薬は、5−HT3受容体を遮断することによって、悪心や嘔吐を抑制する作用を有する。
また、セロトニン(5−HT4)受容体拮抗薬は、5−HT4受容体を刺激し、アセチルコリンの遊離を増大させ、消化管運動や胃排泄を亢進させる作用を有することから、過敏性腸症侯群(IBS)の治療薬としての使用が期待されている。
【0003】
セロトニン受容体拮抗薬は、一般的には、経口剤や注射剤として、広く利用されているが、セロトニン(5−HT3)受容体拮抗薬は、抗悪性腫瘍薬の副作用の抑制を目的として、癌患者に投与される薬物であるため、体の不自由な患者を対象として適用されることが多く、患者自身による経口投与が困難である。
また、注射による投与は患者に苦痛を与え、所謂「Quality of life」の妨げとなる。さらに、セロトニン受容体拮抗薬は、治療の性格上、連続投与することが必要であることが多く、経口剤や注射剤ではこのような問題が連続して発生する可能性があり、望ましくない。
従って、経口剤や注射剤以外で、投与後速やかに有効血中濃度に達し得るような製剤の開発が望まれている。
セロトニン受容体拮抗薬の直腸投与製剤としては、現在、(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−3−キヌクリジニル−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド1塩酸塩を有効成分とする坐剤が報告されている(特開平6−305969号公報)。
しかしながら、セロトニン(5−HT3)受容体拮抗薬は一般に、製剤のpHが低いと、薬物の腸粘膜からの吸収性が悪い等の問題があるため、セロトニン受容体拮抗薬を腸粘膜から効率良く吸収させるための技術が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況を鑑み、本発明は、上記課題を解決し、セロトニン受容体拮抗薬を腸粘膜から効率良く吸収させることができる直腸投与製剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セロトニン受容体拮抗薬を有効成分とする直腸投与製剤において、炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルを基剤成分として配合することにより、投与後速やかに有効血中濃度が得られ、しかも腸粘膜に対して低刺激性であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、セロトニン受容体拮抗薬を有効成分とし、炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルを基剤成分として含有することを特徴とするセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤である。
【0006】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の直腸投与製剤の有効成分であるセロトニン受容体拮抗薬は、特に限定されず、セロトニン(5−HT3)受容体拮抗薬でも、セロトニン(5−HT3および/または5−HT4)受容体拮抗薬でもよい。前者は、抗悪性腫瘍薬の投与により誘発される悪心や嘔吐の抑制等に、後者は過敏性腸症侯群(IBS)の治療等に用いることができる。
【0007】
セロトニン(5−HT3)受容体拮抗薬としては、塩酸グラニセトロン、塩酸アザセトロン、塩酸オンダンセトロン、塩酸ラモセトロン(以上、一般名)、(+)−8,9−ジヒドロ−10−メチル−7−[(5−メチル−4−イミダゾリル)メチル]ピリド[1,2−α]インドール−6(7H)−オン ハイドロクロライド、(R)−5−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イルカルボニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンズイミダゾール ハイドロクロライド、エンド−3,9−ジメチル−3,9−ジアザビシクロ[3,3,1]ノン−7−イル1H−インダゾール−3−カルボキシアミド ジヒドロクロライド、(−)−(S)−N−(エンド−8−メチル−8−アザビシクロ[3,2,1]オクト−3α−イル)−4−アミノ−5−クロロ−2−(1−メチル−2−ブチニル)オキシベンザミド モノハイドロクロライド ジハイドレイト、1αH、5αH−トロパン−3α−イリンドール−3−カブロキシレート(以上、化学式名)等が挙げられる。
セロトニン(5−HT3および/または5−HT4)受容体拮抗薬としては、例えば、クエン酸モサプリド等が挙げられる。
これらは、1種または2種以上を適宜混合して用いることができる。
本発明において、セロトニン受容体拮抗薬は、直腸投与製剤の全体量に対して0.1〜10重量%配合することが好ましい。
【0008】
本発明のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤の基剤成分は、親油性基剤成分として、炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルを使用することを特徴とする。
炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルの例としては、カプリル酸、カプリン酸、ペラゴン酸、ウンデシル酸、トリデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレイン酸等のグリセリンエステルが挙げられ、これらは必要に応じて、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、通常は、モノ、ジ、トリからなるグリセライドの混合物が使用される。
【0009】
本発明の炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルとしては、下記に例示する市販品を用いることができる。
ウイテプゾール(ダイナミットノーベル社製)は、炭素数12〜18の飽和脂肪酸モノ・ジ・トリグリセライド混合物であり、詳細には、ウイテプHシリーズ(例えば、ウイテプゾールH5、H12、H15、H19、H32、H35、H37、H39、H42、H175、H185等)、ウイテプゾールWシリーズ(例えば、ウイテプゾールW25、W31、W35、W45等)、ウイテプゾールEシリーズ(例えば、ウイテプゾールE75、E76、E79、E85等)、ウイテプゾールSシリーズ(例えば、ウイテプゾールS52、S55、S58等)が挙げられる。
サポイヤー(ガットフォーズ社製)は、炭素数10〜18の飽和脂肪酸のモノ・ジ・トリグリセライド混合物であり、詳細には、サポイヤーNA、サポイヤーOS、サポイヤーAS、サポイヤーBS、サポイヤーBM、サポイヤーDM等が挙げられる。
マサエスタリナム(ダイナミットノーベル社製)は、炭素数10〜18の飽和脂肪酸のモノ・ジ・トリグリセライド混合物であり、詳細には、マサエスタリナムA、AB、B、BB、BC、BCF、C、D、E、BD及びマサエスタリナム299等が挙げられる。
SB(鐘紡化学社製)は、炭素数12〜18の飽和脂肪酸のモノ・ジ・トリグリセライド混合物であり、詳細には、SB−H、SB−E、SB−AM等が挙げられる。
ミグリオール810及びミグリオール812(ダイナミットノーベル社製)は、炭素数8〜12の飽和脂肪酸のモノ・ジ・トリグリセライド混合物である。
これらは、必要に応じて1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0010】
炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルは、本発明の直腸投与製剤の全体量に対して、25〜98重量%、さらに40〜96重量%、特に60〜95重量%配合することが好ましい。配合量が25重量%未満となると、薬剤の放出が速くなりすぎ、98重量%を越えると、薬剤の放出が遅くなりすぎるので好ましくない。
【0011】
また、本発明において用いられる炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルは、水酸基価が50〜90であることが好ましい。水酸基価が50〜90の炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルは、自己乳化作用を有するため、界面活性剤を添加しなくても容易に製剤を調整することができる等の優れた特徴を有する。従って、界面活性剤を添加しなくてもよいので、界面活性剤の副作用である刺激性の発現が少なくてすみ、安全性の高い製剤が得られ、しかも薬物の放出性の良好な製剤が得られる。水酸基価が50未満のグリセリンエステルは可塑性が低く、急速に冷却すると脆くなる等製造面に問題があり、水酸価基が90を越えると、化学的に反応性の高い化合物と相互作用を起こしやすくなり、刺激性の面でも問題が生じやすい。
【0012】
本発明において用いられる炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルには、油性成分を添加して、直腸投与製剤の硬度や使用感を調整し、製剤からの薬物放出性や安定性を改良することができる。
油性成分としては、ゴマ油、オリーブ油、ツバキ油、ダイズ油、ナタネ油、綿実油、アマニ油、ヒマシ油、ヌカ油、トウモロコシ油、落花生油、ヤシ油、アーモンド油、アボガード油、パーム油、パーム核油、カヤ油、カホツク油、クロモジ油、サザンカ油、チヤ油、エノ油、カカオ脂、ニツケイ脂、ラウリン脂、牛脂、豚脂、羊毛脂、タートル油、スクワレン等の動植物油脂や、これらの動植物油脂を水素添加、脂肪酸変換、アセチル化、分割抽出等により化学的に変化させて得られる改質油脂、ワセリン、白色ワセリン、流動パラフィン、パラフィン、脱水ラノリン、アイソバー、シリコン脂等の鉱物油、イソプロピルミリステート、ノルマルブチルミリステート、イソプロピルリノレート、ステアリルリノレート、ジエチルセバケート、ジイソプロピルアジベート、セチルアルコール、ステアリルアルコール、サラシミツロウ、ゲイロウ、モクロウ等の高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸エステル、ワックス類、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸等が挙げられる。これらは必要に応じて1種または2種以上を混合して用いることができる。
油性成分は、炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルに対して、0.1〜50重量%、特に0.5〜30重量%配合することが好ましい。配合量が0.1重量%未満では、油性成分の特長が発揮できず、50重量%を越えると、製剤粘土が低下して安定性に問題が生じやすくなる。
【0013】
本発明の直腸投与製剤において用いられる炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルは、乳化剤を添加して乳化性基剤として用いることもできる。
乳化剤は、W/O型乳化剤でも、O/W型乳化剤でもよい。
W/O型乳化剤を使用した場合には、グリセリンエステルにW/O型乳化剤を添加し、融解または溶解させて、W/O型乳剤となる油中水型基剤が得られる。この場合、W/O型乳化剤の配合量は、直腸投与製剤の全体量に対して、10〜90重量%、さらに20〜80重量%、特に30〜80重量%とすることが好ましい。配合量が10重量%未満となると十分な乳化が得られず、製剤中で薬剤の均一性が悪くなる可能性があり、90重量%を越えると直腸への刺激性が高くなる。
また、O/W型乳化剤を使用した場合には、グリセリンエステルにO/W型乳化剤を添加し、融解または溶解させて、O/W型乳剤となる水中油型基剤が得られる。この場合、O/W型乳化剤の配合量は、直腸投与製剤の全体量に対して、1〜70重量%、さらに5〜60重量%、特に10〜60重量%とすることが好ましい。W/O型乳化剤の場合と同様に、配合量が1重量%未満となると十分な乳化が得られず、製剤中で薬剤の均一性が悪くなる可能性があり、90重量%を越えると、直腸への刺激性が高くなる。
【0014】
本発明のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤のその他の基剤成分としては、水溶性基剤を使用することもできる。
水溶性基剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロゼラチン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられ、これらは必要に応じて、1種または2種以上を混合して用いることができる。水溶性基剤は、本発明の直腸投与製剤の全体量に対して、25〜95重量%以下配合することが好ましい。
【0015】
本発明の直腸投与製剤の基剤には、界面活性剤(乳化剤)を添加することができる。
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤または両性界面活性剤等を使用することができる。これらの中でも非イオン性界面活性剤は好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油等を用いることができ、特に、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル(例えば、日光ケミカルズ社製、ニッコールBL−25、ニッコールBC−20TX)や、ポリオキシエチレンヒマシ油(例えば、日光ケミカルズ社製、ニッコールSO−15)は好ましい。
界面活性剤は、本発明の直腸投与製剤の全体量に対して、0.1〜20重量%、特に0.5〜10重量%配合することが好ましい。配合量が0.1重量%未満となると、界面活性能が十分でなく、20重量%を越えると直腸への刺激が高くなる。
【0016】
本発明のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤は、セロトニン受容体拮抗薬の直腸吸収性を良好にするために、pH調整剤を含有することが好ましい。pH調整剤は、その水溶液がアルカリ性を示すような化合物であれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、無機アミン、有機アミンが挙げられる。pH調整剤は、本発明の直腸投与製剤が低刺激性でしかも良好な直腸吸収性を有するように、pH3〜7、さらにpH3.5〜6.5、特にpH4〜6の範囲となるように用いることが好ましい。pH値が3未満となると、セロトニン受容体拮抗薬の直腸からの吸収性が悪くなり、pH値が7を越えると、刺激性が高くなる等直腸への影響があり、好ましくない。
【0017】
本発明のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤は、必要に応じて、セロトニン受容体拮抗薬以外の薬効成分等の配合成分を配合することができる。
例えば、局所麻酔薬や抗ヒスタミン薬、例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸メプリルカイン、塩酸フェニレフリン、塩酸セチルピリジウム、塩酸エピカロイン、塩酸ナファゾリン、塩酸エフェドリン、塩酸ジブカイン、dl−塩酸メチルエフェドリン、アミノ安息香酸エチル、リドカイン、カルボカイン、ハッカ油、カンフル、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、マレイン酸クロルフェニラミン等を、直腸投与製剤の全体量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜15重量%配合することができる。また、吸収促進剤、例えば、カプリン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等を、直腸投与製剤の全体量に対して、0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜10重量%配合することができる。0.1重量%未満では、十分な吸収促進効果が得られず、25重量%を越えると、直腸刺激が増加するので好ましくない。
さらに、殺菌剤、局所収れん剤、抗生物質、サルファ剤、創傷治療薬、ビタミン類、アミノ酸類、胆汁酸類、生薬エキス、防腐剤、賦形剤(酸化アルミニウムも含む)等を配合することもできる。これらの種類は特に限定されず、通常直腸投与製剤に配合されているものや配合可能なものであればよい。
【0018】
本発明の直腸投与製剤は、これらの基剤成分を適宜処方することにより、坐剤、軟膏剤、クリーム剤またはゲル剤等の剤形とすることができる。
本発明のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤の製造法は特に限定されず、通常の直腸投与製剤の製法により調製することができる。例えば、坐剤の場合は、各基剤を加温融解し、これにセロトニン受容体拮抗薬を加え、均一に溶解させ、坐剤用プラスチックコンテナ中に注入して成形し、冷却固化することにより製造することができる。坐剤は、室温では固体状態を保ち、投与後に体温で溶融するかまたは消化液に溶解し分散するので、好ましい。また、軟膏剤やクリーム剤の場合は、セロトニン受容体拮抗薬を各基剤に溶解または分散させ、軟膏剤やクリーム剤の剤形にし、これをチューブ等を介して投与するような剤形にしてもよい。さらに、セロトニン受容体拮抗薬とポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子を混合して、ゲル剤とすることもできる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例、比較例および試験例を挙げて本発明をより詳細に説明する。実施例、比較例および試験例中の数値は、特に断らない限り、全て「重量%」を示すものとする。
実施例1(グリセリンエステルの水酸基価:65、坐剤)
ウイテプゾールS55 98.0
塩酸グラニセトロン 2.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが5となるように水酸化ナトリウムを適量加え、常法により坐剤を得た。
【0020】
実施例2(グリセリンエステルの水酸基価:50、坐剤)
ウイテプゾールW35 93.0
ニッコールHCO−60 3.0
塩酸オンダンセトロン 4.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが3となるように水酸化ナトリウムを適量加え、常法により坐剤を得た。
【0021】
実施例3(グリセリンエステルの水酸基価:90、坐剤)
ポリエチレングリコール
(マクロゴール4000) 39.0
ポリエチレングリコール
(マクロゴール6000) 25.0
ポリエチレングリコール
(マクロゴール1500) 25.0
アミノ安息香酸エチル 1.0
塩酸アザセトロン 10.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが7となるようにリン酸ナトリウムを適量加え、常法により坐剤を得た。
【0022】
実施例4(グリセリンエステルの水酸基価:60、坐剤)
マサエスタリナムE 98.0
塩酸ラモセトロン 2.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが4となるようにジメチルアミンを適量加え、常法により坐剤を得た。
【0023】
実施例5(グリセリンエステルの水酸基価:63、クリーム剤)
精製水 67.9
白色ワセリン 10.0
セタノール 8.0
ステアリルアルコール 8.0
ポリオキシエチレンラウリルアルコール 4.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
塩酸グラニセトロン 2.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが6となるようにジエチルアミンを適量加え、常法によりクリーム剤を得た。
【0024】
実施例6(グリセリンエステルの水酸基価:66、油性軟膏剤)
白色ワセリン 50.0
イソプロピルミリステート 10.0
モノステアリン酸グリセリン 20.0
マイクロクリスタリンワックス 16.0
塩酸オンダンセトロン 4.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが4となるようにトリエチルアミンを適量加え、常法により油性軟膏剤を得た。
【0025】
実施例7(グリセリンエステルの水酸基価:65、坐剤)
水酸化ナトリウム(pH調整剤)を添加しないこと以外は、実施例1と同様の組成及び方法により、坐剤を得た。
【0026】
比較例1(グリセリンエステルの水酸基価:35、坐剤)
ウイテプゾールW31 98.0
塩酸グラニセトロン 2.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが5となるように水酸化ナトリウムを適量加え、常法により坐剤を得た。
【0027】
比較例2(グリセリンエステル不使用、水酸基価:110、坐剤)
ポリエチレングリコール
(マクロゴール1000) 98.0
塩酸グラニセトロン 2.0
上記の配合組成に、溶出時のpHが5となるように水酸化ナトリウムを適量加え、常法により坐剤を得た。
【0028】
比較例3(グリセリンエステルの水酸基価:35、坐剤)
水酸化ナトリウム(pH調整剤)を添加しないこと以外は、比較例1と同様の組成及び方法により、坐剤を得た。
【0029】
試験例1(水酸基価による放出性の評価)
水酸基価の異なる実施例1(水酸基価:65)及び比較例1(水酸基価:35)の坐剤について、薬物放出性の評価試験を回転バスケット法により行なった。
試験条件は、試験液500ml、試験液温度37.0±0.5℃、バスケット回転数50rpmとした。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、水酸基価が50未満の比較例1に比べて、水酸基価が65の実施例1は、薬物の放出性が非常に優れていた。
【0030】
試験例2(水酸基価による安定性の評価)
水酸基価の異なる実施例1(水酸基価:65)および比較例2の坐剤について、薬物安定性の評価試験を行なった。
試験は、各坐剤を、25℃において6カ月間保存した後、坐剤中の薬物含量を、日局高速液体クロマトグラフ法に準じて測定し、それぞれの初期値との比較を行なった。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
薬物含量
−−−−−−−−−−−−−−
実施例1 比較例2
−−−−−−−−−−−−−−
98.5重量% 75.6重量%
−−−−−−−−−−−−−−
【0032】
表1から明らかなように、実施例1では薬物含量の低下がほとんど認められないのに対し、比較例2では薬物含量がかなり低下した。このことから、実施例1の製剤は、比較例2の製剤に比べて、安定性が優れていることが判明した。
【0033】
試験例3(血中濃度試験)
水酸基価の異なる実施例1、実施例7および比較例3について、直腸からの薬物吸収性を調べるために、小動物を用いて血中濃度を調べた。
体重250g〜350gのSD系雄性ラット6匹に、0.2mg/kgとなるように、実施例1、実施例7および比較例3の直腸投与製剤を直腸投与し、経時的な血中濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて定量した。結果を図2に示す。図2から明らかであるように、実施例1および実施例7では、比較例3に比べて、高い血中濃度が得られた。また、pH調整剤を使用したこと以外は、実施例7と全く同じ条件で調製された実施例1の直腸投与製剤は、実施例7の製剤に比べて、より高い血中濃度が得られた。このことから、pH調整剤を使用することにより、さらに高い血中濃度が得られることが判明した。
【0034】
【発明の効果】
本発明のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤は、従来のものに比べて、薬物の腸粘膜からの吸収性に優れ、効率良く薬物を吸収させることができ、しかも、直腸粘膜に対する刺激性が低い。また、直腸投与製剤としての安定性にも優れている。
さらに、本発明のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤は、注射剤と同等の速効性を有し、投与後速やかに有効血中濃度に達するので、注射による苦痛等を患者に与えることなく、経口投与の困難な患者にも容易に適用でき、連続投与が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例1の直腸投与製剤を用いる放出試験の結果を示すグラフである。
【図2】実施例1、実施例7および比較例3の直腸投与製剤を投与した場合の血中濃度を示すグラフである。
Claims (5)
- セロトニン受容体拮抗薬を有効成分とし、炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルを基剤成分として含有し、下記1)及び2)の要件を満たすことを特徴とするセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤。
1)セロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤の全体量に対するセロトニン受容体拮抗薬の配合量が0.1〜10重量%であり、かつ、セロトニン受容体拮抗薬が、塩酸グラニセトロン、塩酸アザセトロン、塩酸オンダンセトロンまたは塩酸ラモセトロンであり、
2)前記製剤の全体量に対する炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルの配合量が25〜98重量%であり、かつ前記飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルの水酸基価が、65〜90である。 - アルカリ性物質からなるpH調整剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤。
- pHが3〜7であることを特徴とする請求項1または2記載のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤。
- 炭素数8〜18の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のグリセリンエステルが、カプリル酸、カプリン酸、ペラゴン酸、ウンデシル酸、トリデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸またはリノレイン酸のグリセリンエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤。
- 坐剤、軟膏剤、クリーム剤またはゲル剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセロトニン受容体拮抗薬含有直腸投与製剤。
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