JP4162552B2 - ハンディタイプ作業機の吊支構造 - Google Patents

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Description

本発明は、刈払機等、ハンディータイプの作業機を身体に吊り下げるハンディタイプ作業機の吊支構造に関するものである。
刈払機等、ハンディタイプの農用機械(以下、作業機という。)では、作業機を手で抱えて振り回しながら作業をする。この作業のときの負担を軽減するため、則ち、作業機の重量を担って振り回しを容易にするため、身体に付けた吊支バンド(以下、単にバンドという。)で作業機を吊支している。このバンドには、種々のものがあり、もっとも多く使用されているのが、バンドを片方の肩から斜めに掛けるカバン方式である。しかし、これによるものは、作業機を吊り下げる吊り紐とバンドとの連結点が腰の一側であるから、吊り紐が身体の側面に位置し、力が入らない。又、力は腰の一点に集中するから、身体への負担が大きい。
このため、バンドを両肩に掛けるランドセル方式のものがあり、これにおいて、胸又は背中に両バンドを結節する結節具を設けて両バンドをこの部分に寄せて身体にフィットさせている。しかし、これにおいても、吊り紐との連結点は、腰の一点であり、ここに力が集中するのは変わらない。又、物を安定して吊り下げるには、腰の位置では低すぎるということもある。更に、身体への負担が大きい原因の一つには、吊り紐が剛体の紐であることにも起因している。
そこで、吊り紐にゴム等の弾性紐を使用したものもある。則ち、上記したカバン方式におけるバンドで、肩当ての両端から弾性紐を出したものである。しかし、このものも、弾性紐の弾性力で作業機の重量を弾性支持できるとはいうものの、バンドが身体の側面に位置すること、吊り下げ点が腰の一側であって低いことは変わらない。また、背中にあてがわれる背板が軟らかくて変形し易く、吊り紐を安定して支えられないという問題もある
本発明はこのような課題を解決するものであり、要するに、背板を硬くしてこれから延出して作業機を吊支する弾性紐を両側の肩紐の胸前部分からV字形に出すことで、高い位置での二点支持を可能にして荷重に安定して耐えられるようにし、身体への負担を軽減するとともに、作業姿勢及び作業機の位置の調整に対する自由度を高めたものである。
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、ハンディタイプの作業機を身体に吊支する吊支構造であり、この吊支構造が、背中にやや反り返ってあてがわれ、硬質部材からなる背板と、背板の上部と下部の左右二カ所から延出して両肩に掛け回される肩紐と、肩紐の両胸前部分から延出して作業機に連結される弾性紐とを有するものであるとともに、弾性紐がV字形に延出してその先端にフックが設けられ、フックを作業機の操作杆に設けられた係合金具に連結するものであることを特徴とするハンディタイプ作業機の吊支構造を提供したものである。
本発明によると、両肩にランドセル方式で掛けられる肩紐の両胸前部分から弾性紐がV字形に延びて作業機に係止するものであるから、荷重点を高い位置に設定できるとともに、二カ所に分散できる。従って、荷重に対して身体の踏ん張りがきき、負担が軽減して疲労が少ない。加えて、このとき、変形し難い硬い背板が肩紐や弾性紐のずれを抑止し、作業機の支持が安定する。又、弾性紐の弾性力が、ほぼ作業機の重量を担うものにしておけば、作業機のほぼ全重量を弾性支持するものとなり、手で支える力をほとんど必要とせず、負担が軽減する。特に、傾斜面の草を刈り取るような場合、作業機の重量は身体で支えているから、シャフトをわずかに押さえるだけで作業姿勢を変更できる。
図1は本発明の一例を示す吊支バンドの後側斜視図、図2、図3は装着状態を示す説明図、図4はこの吊支バンドによる刈払機の使用状態を示す説明図であるが、この吊支バンドは、背中に負う背板1の上部と下部の左右二カ所に前方に亘って掛け渡される肩紐2と、それぞれの肩紐2の途中に止め付けられる二本の弾性紐3とからなるものである。
この場合の背板1は、布や剛性樹脂で板状に形成されており、首の下から腰の辺りまで背中のほぼ全面にあてがわれる。このとき、背板1が背中に対してむしろ反り返るように、背板1は背中に対してやや後方に湾曲させられている。この形状は不変的であることが、ずり上がったりしないで好ましいから、背板1は硬質の部材で構成される。
具体的には、硬質の樹脂板等が考えられるが、重量が重くなる場合には、布製等のものを用い、これに背中に対してやや後方に湾曲させて成形した金属製(アルミ等が軽量で好ましい)の芯板17を上又は下から挿入してもよい(図1)。尚、この場合の芯板17は、一枚物であっても、複数に分割されたものであってもよいが(本例では2個)、挿入されたときには、背板1に対してボルト20等で固定されるのが好ましい。
そして、背板1の上部と下部の前面(身体に当たる面)にはスポンジ等のクッション材4を貼設しておく。この場合、上部のクッション材4は幅(高さ)が広く、下部のクッション材4は幅の狭いものが好ましい。このクッション材4の存在により、硬い背板1の背中への当たりが軟らかくなるとともに、他の部分は身体から離れることになり、汗等でむせるのを防ぐ。
肩紐2は、布製等の帯状のもので、背板1の上部と下部の左右二カ所にそれぞれの上端と下端とが止め付けられている。従って、肩紐2を両肩にかけて背板1を負うと、ランドセルを負ったようになるが、このとき、肩紐2の間隔はできるだけ広い方が好ましい。これにおいて、肩紐2は長さが調整できるものが体格の違いに対応できて好ましい。そこで、肩紐2を上部部分2aと下部部分2bとに分け、これをバックル5で繋いでいる。更に、肩紐2の内側にもスポンジ等のクッション材6を設けて身体への当たりが軟らかいものにしている。
肩紐2の途中の前面には後述する弾性紐3を連結するためのリング7を設けている。このリング7は、位置を変えることができたり、複数設けたりして連結個所を変更できるようにするのが体格の違いに対応できて好ましい。この他、背板1の下部には、背板1がずり上がるのを防ぐために、腰に回す腰バンド8が長さ調整可能なバックル9付きで設けられている。
弾性紐3は、文字通りゴム等の弾性体からなる紐であり、その上端を肩紐2に連結し、下端を作業機10に連結するものである。このときの連結を容易にするために、上下両端にはフック11を取り付けている。本例の弾性紐3は、ゴム紐を二本折り返したものであり、その途中にバックル12を設けて長さが調整できるようにしてある。これも体格に合わせるためであるが、作業地形に応じて長さを調整するのにも利用される。
本例の作業機10は、ハンディタイプのエンジン18直結型の刈払機を例示しており、その操作杆13の後部寄りに吊支バンドに連結する係合金具14が設けられている。そこで、上端を肩紐2に連結した弾性紐3の下端のフック11をこの係合金具14に連結すると、弾性紐3はV字形になり、その弾性力で刈払機10を吊支する。このときの弾性紐3は、操作杆13の後部をやや押さえて前部を少し上げたとき、先端の刈刃15が接地しない状態でその全重量を弾性支持できる強さと長さのものが好ましい。
次に、以上の吊支バンドを用いて刈払機10による草刈り作業について説明する。刈払機10は、周知のようにその操作杆13を両手で持ち(本例のものは、前方の手は係合金具14の前方に設けられているループハンドル16を掴む)、これを左右に振り回しながら刈刃15で草を刈り取って行く。この場合において、草刈りする地形は平地の場合もあれば傾斜面のこともあり、更に、前進しながら草刈りすることもあれば、後進しながら草刈りすることもあるのは周知のとおりである。
本発明では、この刈払機10を両肩にランドセル方式で掛けた肩紐2から弾性紐3をV字形に出してその弾性力で吊支したものである。このため、荷重点が両胸前になり、高い位置に設定できるとともに、二カ所に分散でき、安定した吊支ができて身体への負担が少ない。特に、中山間部では傾斜地が多く、又、作業者も高齢者が多いから、この効果は非常に大きい。
この吊支バンドを用いた刈払機によって山間地水田の畦畔の草刈り作業をしてみた。そして、手持ち方式の刈払機による作業と比較してみた(このような地の畦畔は、傾斜が40〜50°もあるような個所があり、このような急傾斜地では、従来のカバン方式の吊支バンドでは身体の自由が効かないため、作業機にループハンドルを取り付け、これを手持ち方式で作業している)。
図5はその結果を示すものであるが、縦軸に心拍数増加率をとり、横軸に作業能率をとって作業負担の軽減度を調べてみた。結果は、すべての作業方法(作業姿勢)において、本発明の吊支バンドによるものの方が心拍数増加率も低く、作業能率も高かった。この点で、作業負担の軽減度は大である。
この吊支バンドの用途は、刈払機に限らずヘッジトリマーやチェンソー等、あらゆるハンディータイプの作業機に用いて好適である。更に、作業機に限らず、身体に吊り下げることがある散布桶や旅行カバン或いはクーラーボックスにも適用できる。
本発明の一例を示す吊支構造の後方斜視図である。 本発明による吊支構造で作業機を吊支した状態を示す正面図である。 本発明による吊支構造で作業機を吊支した状態を示す側面図である。 本発明による吊支構造を用いて作業機による作業状態を示す前方斜視図である。 本発明による吊支構造による刈払機の作業と手持ち式による作業とのテスト結果を示す比較図である。
符号の説明
1 背板
2 肩紐
3 弾性紐
17 芯板

Claims (4)

  1. ハンディタイプの作業機を身体に吊支する吊支構造であり、この吊支構造が、背中にやや反り返ってあてがわれ、硬質部材からなる背板と、背板の上部と下部の左右二カ所から延出して両肩に掛け回される肩紐と、肩紐の両胸前部分から延出して作業機に連結される弾性紐とを有するものであるとともに、弾性紐がV字形に延出してその先端にフックが設けられ、フックを作業機の操作杆に設けられた係合金具に連結するものであることを特徴とするハンディタイプ作業機の吊支構造
  2. 背板が硬質樹脂板から構成され又は金属製の芯板が挿入されたものである請求項1のハンディタイプ作業機の吊支構造
  3. 弾性紐の弾性力がほぼ作業機の重量を担うものである請求項1又は2ハンディタイプ作業機の吊支構造
  4. 肩紐における弾性紐を取り付ける位置及び弾性紐の長さが調整可能なものである請求項1〜3いずれかのハンディタイプ作業機の吊支構造
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