JP4161872B2 - 内燃機関始動装置 - Google Patents

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本発明は、少なくとも2つ以上の複数の蓄電池を有する内燃機関始動装置に関するものである。
従来、自動車に搭載される内燃機関始動装置は、直巻型直流電動機を用いたものが主流であった(特許文献1参照)。また、界磁が永久磁石により構成した直流電動機を用いたものもあった。
特開2003−148315号公報
直巻型直流電動機を用いた場合には、内燃機関の始動に十分な回転エネルギーを生成するために、電動機の巻線インピーダンスを低減する構成としている。しかし、このような巻線インピーダンスが低い電動機により内燃機関を始動する場合には、この電動機により大電流を消費するので、結果として車載の蓄電池が電圧低下し励磁電流が減少することになる。そのため、十分な界磁束を得ることができなくなり、電動機の大型化若しくは蓄電池の大容量化を招来していた。
また、永久磁石により界磁を構成した直流電動機を用いる場合には、永久磁石の飽和磁束密度が低いために十分な界磁束を得るために、電動機が大型化するという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、内燃機関始動用電動機が稼働して蓄電池の電圧が低下した場合であっても、内燃機関始動用電動機の大型化を招来することなく十分な界磁束を得ることができる内燃機関始動装置を提供することを目的とする。
そこで、本発明の内燃機関始動装置は、界磁巻線が巻回された界磁と電機子巻線が巻回された電機子とを備え、内燃機関にトルクを伝達可能な内燃機関始動用電動機と、前記電機子巻線に電機子電流を供給可能に接続された第1蓄電池と、前記界磁巻線に励磁電流を供給可能に接続された第2蓄電池と、前記界磁巻線と前記第2蓄電池との間に直列接続され前記第2蓄電池の電源電圧を昇圧可能な直流電圧変換器を備え、前記第1蓄電池は車両用発電機から充電可能に接続され、さらに、前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器との間に配設され前記内燃機関始動用電動機が稼働していない際に前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器とを接続し、前記内燃機関始動用電動機が稼働している際に前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器とを遮断する蓄電池間スイッチ手段を備えたことを特徴とする(請求項1)。すなわち、第1蓄電池と第2蓄電池とをそれぞれ電機子巻線と界磁巻線とに独立して接続している。つまり、第1蓄電池を電機子電流供給用途とし、第2蓄電池を励磁電流供給用途とする。
内燃機関を始動する際には、内燃機関にトルクを伝達するために内燃機関始動用電動機の電機子巻線にて大きな電機子電流を消費する。このように電機子巻線にて大きな電機子電流を消費することにより、電機子巻線に接続された第1蓄電池の電圧が低下する。しかし、電機子巻線にて大きな電機子電流を消費する場合であっても、第2蓄電池は電圧低下することがない。一方、第2蓄電池は界磁巻線に接続されており、界磁巻線の消費電流は
電機子電流に比べて非常に小さい。従って、第2蓄電池は大きく電圧低下することなく、所定の電圧を常に維持することができる。その結果、内燃機関始動用電動機を大型化することなく、第2蓄電池から界磁巻線に供給される励磁電流により、十分な界磁束を発生させることができる。そして、界磁巻線にて常に十分な界磁束を発生させることができるので、内燃機関始動用電動機により発生させるトルクを従来に比べて大きく維持することが
できる。このように伝達トルクを向上することができるので、内燃機関の始動時間を短縮することができる。また、直流電圧変換器により励磁電圧を徐々に増加させることが可能であるため、内燃機関始動用電動機の回転軸に形成されたピニオンギヤと内燃機関のリングギヤとの噛み合いを滑らかに実施することができる。これにより、内燃機関始動時のギヤ噛み合いによる騒音の低減を図ることができると共に、ギヤの寿命の向上を図ることができる。さらに、内燃機関始動用電動機が稼働していない際に蓄電池間スイッチ手段を閉成することにより、発電機から発電された電力が直流電圧変換器を介して第2蓄電池に充電される。つまり、第1蓄電池の最適電圧と第2蓄電池の最適電圧とが異なる場合においても、それぞれの最適電圧によりそれぞれの蓄電池を充電することができる。すなわち、2つの蓄電池を独立した電圧で最適に充電管理することができる。
従来、内燃機関始動時には蓄電池の電圧が低下することにより、ナビゲーション装置やオーディオ装置等の他の電気装置は正常な動作を保証できないために作動を禁止していた。しかし、本発明の内燃機関始動装置によれば、第2蓄電池から所定電力を供給することができるので、内燃機関始動時であってもナビゲーション装置やオーディオ装置などの電気装置に対して安定した電力供給が可能となる。つまり、内燃機関始動時であっても、他の電気装置の作動を禁止することなく、運転者等の利便性を向上することができる。
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
本発明の内燃機関始動装置は、前記界磁巻線と前記第2蓄電池との間に直列接続され前記第2蓄電池の電源電圧を昇圧可能な直流電圧変換器を備えている。つまり、比較的電圧降下の小さい第2蓄電池電圧を昇圧することは、電圧降下の大きな第1蓄電池の電圧を昇圧するよりも定量的に容易に制御管理しやすい利点があり、昇圧効果を有効に利用でき、より大きな励磁電流を界磁巻線に供給することができるので、界磁束をさらに向上させることができる。これにより、内燃機関始動用電動機の電機子の小型化を図ることができ、結果として内燃機関始動用電動機の小型化を図ることができる。
また、本発明の内燃機関始動装置は、前記第1蓄電池は車両用発電機から充電可能に接続され、さらに、前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器との間に配設され前記内燃機関始動用電動機が稼働していない際に前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器とを接続し、前記内燃機関始動用電動機が稼働している際に前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器とを遮断する蓄電池間スイッチ手段を備えている。この蓄電池間スイッチ手段を開閉することにより、第1蓄電池と第2蓄電池とを任意に断続することができる。例えば、電機子巻線にて大電流を消費する内燃機関の始動時には、蓄電池間スイッチ手段を開成して、第1蓄電池と第2蓄電池とを遮断することにより、大きな界磁束を得ることができる。また、大電流を消費しない場合などには、蓄電池間スイッチ手段を閉成して、第1蓄電池と第2蓄電池とを接続することにより、一方の蓄電池のみを消費することを防止することができ、結果として両蓄電池の寿命を向上することができる。蓄電池間スイッチ手段を閉成することにより、発電機から発電された電力が直流電圧変換器を介して第2蓄電池に充電される。つまり、第1蓄電池の最適電圧と第2蓄電池の最適電圧とが異なる場合においても、それぞれの最適電圧によりそれぞれの蓄電池を充電することができる。すなわち、2つの蓄電池を独立した電圧で最適に充電管理することができる。
前記内燃機関始動用電動機は、分巻巻線若しくは複巻巻線からなる直流電動機としてもよい(請求項2)。また、前記内燃機関始動用電動機は、インバータを有する同期電動機としてもよい(請求項3)。
また、本発明の内燃機関始動装置は、さらに、前記内燃機関始動用電動機の稼働時間が所定時間に達するまでの間該稼働時間の経過に応じて前記直流電圧変換器により励磁電圧を徐々に増加させるようにしてもよい(請求項4)。これにより、内燃機関始動用電動機が稼働開始直後においては、内燃機関始動用電動機の回転軸に形成されたピニオンギヤと内燃機関のリングギヤとの噛み合いを滑らかに実施することができる。これにより、内燃機関始動時のギヤ噛み合いによる騒音の低減を図ることができると共に、ギヤの寿命の向上を図ることができる。
なお、前記励磁電圧は、前記内燃機関の回転数が所定回転数に達した後に低減するようにしてもよい(請求項5)。これにより、内燃機関始動用電動機による消費電流を低減することができるので、蓄電池を有効に利用することができる。さらに、励磁電圧を低減して励磁電流を低減することにより、内燃機関の回転数を高く維持することができるので、内燃機関の始動時間を短縮することができる。
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(第1実施例)
第1実施例における内燃機関始動装置について図1を参照して説明する。図1に示すように、第1実施例における内燃機関始動装置は、内燃機関始動用電動機1と、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第1イグニッションスイッチリレー4と、第2イグニッションスイッチリレー5とから構成される。
内燃機関始動用電動機1は、分巻直流電動機であって、電機子11と界磁12とから構成される。電機子11は、直流の電機子巻線が巻回されており、両端側が一対のブラシ(図示せず)に接続されている。さらに、電機子11の出力軸(図示せず)には、内燃機関のリングギヤに螺合するピニオンギヤが形成されており、界磁12に対して相対回転可能に配設されている。すなわち、電機子11の出力軸に形成されたピニオンギヤが回転することにより、内燃機関のリングギヤを回転して内燃機関を始動させる。界磁12は、界磁巻線が巻回されている。この界磁巻線に励磁電流が供給されることにより、界磁12は界磁束を発生する。なお、電機子11の電機子巻線と界磁12の界磁巻線とは、並列に接続されており、一端側は蓄電池に接続され、他端側は車体等にアース接続されている。
第1蓄電池2は、第1イグニッションスイッチリレー4を介して電機子11の電機子巻線の一端側に接続されている。この第1蓄電池2は、電機子巻線に電機子電流を通電可能に電気的に接続されて設けられている。第1蓄電池2は、界磁12の界磁巻線には通電することがないように界磁巻線とは電気的に遮断され、接続されていない。第2蓄電池3は、第2イグニッションスイッチリレー5を介して界磁12の界磁巻線の一端側に接続されている。この第2蓄電池3は、界磁巻線に界磁電流を通電可能に電気的に接続されて設けられている。第2蓄電池3は、電機子11の電機子巻線には通電することがないように電機子巻線とは電気的に遮断され、接続されていない。すなわち、第1蓄電池2は、界磁12の界磁巻線とは電気的に遮断されている。また、第2蓄電池3は、電機子11の電機子巻線とは電気的に遮断されている。つまり、第1蓄電池2は、電機子11の電機子巻線へ電機子電流のみを供給する。第2蓄電池3は、界磁12の界磁巻線へ励磁電流のみを供給する。
なお、第1蓄電池2はエンジンルーム内に配設されており、第2蓄電池は車室内又は荷室内に配設されている。第1蓄電池2は大電力が必要な電機子巻線に接続されているので、電圧低下を抑制するために内燃機関始動用電動機1付近に配設する方がよい。一方、第2蓄電池3は大電力を必要としないので、エンジンルームに配設する必要はない。そこで、温度環境がエンジンルームに比べると比較的良好な所に第2蓄電池3を配設することにより、第2蓄電池3の寿命等を向上することができる。また、第1蓄電池2及び第2蓄電池3の電圧は12Vである。
第1イグニッションスイッチリレー4は、電機子11の電機子巻線と第1蓄電池2との間に直列的に配設されている。そして、第1イグニッションスイッチリレー4は、イグニッションスイッチがONしたときに閉成して、第1蓄電池2と電機子11の電機子巻線とを電気的に接続する。一方、イグニッションスイッチがOFFしたときには開成して、第1蓄電池2と電機子11の電機子巻線との接続を遮断する。
第2イグニッションスイッチリレー5は、界磁12の界磁巻線と第2蓄電池3との間に直列的に配設されている。そして、第2イグニッションスイッチリレー5は、イグニッションスイッチがONしたときに閉成して、第2蓄電池3と界磁12の界磁巻線とを電気的に接続する。一方、イグニッションスイッチがOFFしたときには開成して、第2蓄電池3と界磁12の界磁巻線との接続を遮断する。
このように構成される内燃機関始動装置の動作は、次のとおりである。まず、運転者によりイグニッションスイッチがONされると、第1イグニッションスイッチリレー4及び第2イグニッションスイッチリレー5が閉成する。そうすると、第1蓄電池2は、電機子11の電機子巻線に電機子電流を供給する。一方、第2蓄電池3は、界磁12の界磁巻線に励磁電流を供給する。そして、界磁12には界磁束が発生し、電機子11が所定トルクで回転を開始する。電機子11が回転することにより、電機子11の出力軸のピニオンギヤから内燃機関のリングギヤへ回転が伝達される。その結果、内燃機関が始動する。
次に、第1実施例の内燃機関始動装置における第1蓄電池2及び第2蓄電池3の電圧について、従来の内燃機関始動装置における蓄電池の電圧と比較して図2を参照して説明する。ここで、図2(a)は、第1実施例の内燃機関始動装置における第1蓄電池2及び第2蓄電池3の電動機稼働時間に対する電圧を示す図である。図2(b)は、従来の内燃機関始動装置における蓄電池の電動機稼働時間に対する電圧を示す図である。なお、従来の内燃機関始動装置としては、1つの蓄電池で直流直巻電動機を内燃機関始動用電動機に用いた装置を例にあげる。
図2(b)に示すように、従来の内燃機関始動装置は、電動機稼働開始直後には、1つの蓄電池の電圧が、急激に低下した後に僅かに昇降を繰り返しながら徐々に上昇している。ここで、最初に大きく電圧降下した時点は、停止している内燃機関を駆動するための大きなトルクを必要とするために、大きな電力を消費することによるものである。その後、第1番目の電圧上昇後の頂点の時点が、内燃機関が最初に上死点位置に達したときである。一度回転を始めた内燃機関を内燃機関始動用電動機により回転するためのトルクは、最初のトルクに比べて非常に小さくてよい。従って、最初に上死点位置に達した後は、大きく電圧降下することなく、僅かな電圧昇降を繰り返している。そして、内燃機関が数回転した後に、第1,第2イグニッションスイッチリレー4,5をOFFさせて内燃機関始動装置は停止する。その後は、蓄電池の電圧は、内燃機関始動用電動機に電力消費されないので、さらに上昇している。
このように、従来の内燃機関始動装置における蓄電池の電圧は、図2(b)のように変化しており、この変化する電圧が内燃機関始動用電動機の電機子巻線及び界磁巻線に印加されていることになる。
一方、本実施例の内燃機関始動装置は、電動機稼働開始直後には、電機子巻線に接続されている第1蓄電池2の電圧が急激に低下している。それに対して、界磁巻線に接続されている第2蓄電池3の電圧は、非常に僅かな電圧しか低下していない。これは、電力消費量が、電機子11では大きいの対して、界磁12は非常に小さいからである。従って、電機子巻線に接続されている第1蓄電池2の電圧は、従来の内燃機関始動装置の蓄電池の電圧の変化とほぼ同様の変化となる。しかし、界磁巻線に接続されている第2蓄電池3の電圧は、ほとんど変化しない。
その結果、本実施例の内燃機関始動装置によれば、界磁巻線に常に一定値以上の励磁電流を供給することができるので、電機子11の出力軸の回転トルクを従来に比べて非常に大きくすることができる。その結果、内燃機関の始動までの時間を短縮することにつながる。また、第2蓄電池3に、例えばナビゲーション装置やオーディオ装置等の他の電気装置に接続することで、内燃機関始動時においてもこれらの他の電気装置を使用することがでる。その結果、運転者等の利便性を向上することができる。
(第2実施例)
第2実施例における内燃機関始動装置について図3を参照して説明する。図3に示すように、第2実施例における内燃機関始動装置は、内燃機関始動用電動機1と、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第1イグニッションスイッチリレー4と、第2イグニッションスイッチリレー5と、さらに蓄電池間スイッチ6と、車両用発電機7とから構成される。ここで、内燃機関始動用電動機1と、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第1イグニッションスイッチリレー4と、第2イグニッションスイッチリレー5とは、上述した第1実施例において説明したものと同様であるので説明を省略する。
蓄電池間スイッチ(蓄電池間スイッチ手段)6は、第1蓄電池2と第2蓄電池3との間に配設されている。そして、蓄電池間スイッチ6を開成することにより、第1蓄電池2と第2蓄電池3とは電気的に遮断される。一方、蓄電池間スイッチ6を閉成することにより、第1蓄電池2と第2蓄電池とは電気的に接続される。なお、蓄電池間スイッチ6が閉成された場合には、第1,第2イグニッションスイッチリレー4,5がONしているかOFFしているかに関わらずに、第1蓄電池2と第2蓄電池3とが接続される。車両用発電機7は、第1蓄電池2に接続されている。
このような構成からなる内燃機関始動装置の動作について説明する。まず、運転者によりイグニッションスイッチがONされると、第1イグニッションスイッチリレー4及び第2イグニッションスイッチリレー5が閉成する。このとき、蓄電池間スイッチ6は開成している。そうすると、第1蓄電池2は、電機子11の電機子巻線に電機子電流を供給する。一方、第2蓄電池3は、界磁12の界磁巻線に励磁電流を供給する。そして、界磁12には界磁束が発生し、電機子11が所定トルクで回転を開始する。電機子11が回転することにより、電機子11の出力軸のピニオンギヤから内燃機関のリングギヤへ回転が伝達される。その結果、内燃機関が始動する。
内燃機関が始動した後には、第1,第2イグニッションスイッチリレー4,5が開成され、同時に蓄電池間スイッチ6が閉成する。そうすると、車両用発電機7と第2蓄電池3とは、蓄電池間スイッチ6を介して接続されることになる。ここで、第1蓄電池2は常に車両用発電機7に接続されている。従って、内燃機関始動用電動機1の稼働を停止した後には、1つの車両用発電機7により第1蓄電池2及び第2蓄電池3を充電される。
(第3実施例)
第3実施例の内燃機関始動装置について図4を参照して説明する。図4に示すように、第3実施例における内燃機関始動装置は、内燃機関始動用電動機8と、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第2イグニッションスイッチリレー5と、蓄電池間スイッチ6と、車両用発電機7とから構成される。ここで、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第2イグニッションスイッチリレー5と、蓄電池間スイッチ6と、車両用発電機7とは、上述した第1実施例及び第2実施例において説明したものと同様であるので説明を省略する。
内燃機関始動用電動機8は、3相同期電動機であって、インバータ81と電機子82と界磁83とから構成される。インバータ81は、第1蓄電池2に接続されている。このインバータ81は、第1蓄電池2から供給される直流電流を交流電流に変換し、電機子82の電機子巻線に接続している。なお、インバータ81は、第1実施例における第1イグニッションスイッチリレー4の役割をも有している。
電機子82は、3相巻線が巻回されており、インバータ81の各相の端子にそれぞれ接続されている。そして、回転子ここでは界磁83の出力軸(図示せず)には、内燃機関のリングギヤに螺合するピニオンギヤが形成されている。すなわち、回転子83の出力軸に形成されたピニオンギヤが回転することにより、内燃機関のリングギヤを回転して内燃機関を始動させる。界磁83は、界磁巻線が巻回されている。この界磁巻線に励磁電流が供給されることにより、界磁83は界磁束を発生する。
このような構成からなる内燃機関始動装置の動作について説明する。まず、運転者によりイグニッションスイッチがONされると、第2イグニッションスイッチリレー5が閉成する。さらに、インバータ81の各相のスイッチング素子が所定のデューティーによりON・OFF駆動する。このとき、蓄電池間スイッチ6は開成している。そうすると、第1蓄電池2は、インバータ81の駆動により電機子82の電機子巻線に交流からなる電機子電流を供給する。一方、第2蓄電池3は、界磁83の界磁巻線に励磁電流を供給する。そして、界磁83には界磁束が発生し、回転子83が所定トルクで回転を開始する。回転子83が回転することにより、回転子83の出力軸のピニオンギヤから内燃機関のリングギヤへ回転が伝達される。その結果、内燃機関が始動する。
内燃機関が始動した後には、第2イグニッションスイッチリレー5及びインバータ81の全てのスイッチング素子が開成され、同時に蓄電池間スイッチ6が閉成する。そうすると、車両用発電機7と第2蓄電池3とは、蓄電池間スイッチ6を介して接続されることになる。ここで、第1蓄電池2は常に車両用発電機7に接続されている。従って、内燃機関始動用電動機1の稼働を停止した後には、1つの車両用発電機7により第1蓄電池2及び第2蓄電池3を充電される。
なお、前記インバータ81の導通モードを発電モードで通電し、第2イグニッションスイッチリレー5を閉成すれば、内燃機関始動用電動機8は発電機として作動し内燃機関の軸出力を電気エネルギーに変換しインバータ81を介して第1蓄電池2に蓄積することも可能である。この場合、内燃機関始動用電動機8はいわゆる発電電動機であり、すなわち内燃機関始動用電動機8は発電電動機により構成することも可能である。
(第4実施例)
第4実施例の内燃機関始動装置について図5を参照して説明する。図5に示すように、第4実施例における内燃機関始動装置は、内燃機関始動用電動機9と、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第1イグニッションスイッチリレー4と、第2イグニッションスイッチリレー5と、励磁電流制御装置10とから構成される。ここで、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第1イグニッションスイッチリレー4と、第2イグニッションスイッチリレー5とは、上述した第1実施例において説明したものと同様であるので説明を省略する。
内燃機関始動用電動機9は、分巻直流電動機であって、電機子91と界磁92と励磁電流供給スイッチ93とから構成される。電機子91は、直流の電機子巻線が巻回されており、両端側が一対のブラシ(図示せず)に接続されている。さらに、電機子91の出力軸(図示せず)には、内燃機関のリングギヤに螺合するピニオンギヤが形成されている。すなわち、電機子91の出力軸に形成されたピニオンギヤが回転することにより、内燃機関のリングギヤを回転して内燃機関を始動させる。界磁92は、界磁巻線が巻回されている。この界磁巻線に励磁電流が供給されることにより、界磁92は界磁束を発生する。励磁電流供給スイッチ93は、界磁92の界磁巻線とアースとの間に直列的に接続されている。この励磁電流供給スイッチ93は、高速制御可能で消費電力の小さいパワートランジスタであるMOSFET等からなる。そして、励磁電流供給スイッチ93は、励磁電流制御装置10から出力されるPWM信号に基づき、ON・OFF駆動する。つまり、励磁電流制御装置10から出力されるPWM信号のデューティーに応じた励磁電流が第2蓄電池3から界磁巻線に供給される。
励磁電流制御装置(PWM制御手段)10は、所定のデューティーからなるPWM信号を出力する。この励磁電流制御装置10が出力するPWM信号のデューティーについて図6を参照して説明する。なお、図6(a)は、第1蓄電池2の電圧を示す図である。これは、上述した第1実施例にて説明した図2(a)の第1蓄電池2の電圧と同様である。図6(b)は、励磁電流制御装置10が励磁電流スイッチ93に出力するPWM信号のデューティーを示す図である。
図6(a)(b)に示すように、内燃機関始動用電動機9が稼働開始した直後(t1)には、第1蓄電池2の電圧が急激に低下する。そして、第1番目の電圧上昇の頂点の時点(t2)には、内燃機関が最初の上死点位置に達する。この間、つまり、時刻t1から時刻t2までの間、デューティーは徐々に増加させ、時刻t2のときにデューティー100%となるようにしている。このように徐々にデューティーを増加することにより、電機子91の出力軸のピニオンギヤと内燃機関のリングギヤとが滑らかに螺合して、騒音の抑制及びギヤ寿命の向上を図ることができる。
続いて、内燃機関が第1番目の上死点位置から第2番目の上死点位置までは、大きなトルクを必要とするので、第1番目の上死点位置に相当する時刻(t2)から第2番目の上死点位置に相当する時刻(t3)までは、デューティーを100%で維持する。
続いて、内燃機関が第2番目の上死点位置を超える(時刻t3→t4)、デューティーを低減させて内燃機関が高速回転可能な状態にする。そして、内燃機関が始動したとき(t4)にデューティーを0%として励磁電流の供給を停止する。すなわち、内燃機関始動用電動機9の動作を停止する。
このように、第2番目の上死点を超えたときにデューティーを低減させることにより、消費電力を低減することができると共に、内燃機関の回転数を高く維持することができるので内燃機関の始動時間を短縮することができる。なお、上記実施例においては、内燃機関が第1番目の上死点位置及び第2番目の上死点位置にてデューティーの切替を行っているが、これに限られるものではない。例えば、内燃機関が所定回転数に達したときにデューティーを切り替えるようにしてもよい。
(第5実施例)
第5実施例の内燃機関始動装置について図7を参照して説明する。図7に示すように、第5実施例における内燃機関始動装置は、内燃機関始動用電動機1と、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第1イグニッションスイッチリレー4と、車両用発電機7と、DC−DCコンバータ13と、蓄電池間スイッチ14とから構成される。ここで、内燃機関始動用電動機1と、第1蓄電池2と、第2蓄電池3と、第1イグニッションスイッチリレー4と、車両用発電機7とは、上述した第1実施例又は第2実施例において説明したものと同様であるので説明を省略する。
DC−DCコンバータ(直流電圧変換器)13は、第2蓄電池3と界磁12の界磁巻線との間に直列的に接続されている。そして、このDC−DCコンバータ13は、一方側の電圧を昇圧又は降圧した電圧を他方側へ印加することができる。なお、DC−DCコンバータ13の詳細な構成については公知であるので説明を省略する。
蓄電池間スイッチ(蓄電池間スイッチ手段)14は、第1蓄電池2とDC−DCコンバータ13の界磁12側との間に配設されている。そして、蓄電池間スイッチ14を開成することにより、第1蓄電池2と第2蓄電池3とは電気的に遮断される。一方、蓄電池間スイッチ14を閉成することにより、第1蓄電池2と第2蓄電池とはDC−DCコンバータ13を介して電気的に接続される。
このような構成からなる内燃機関始動装置の動作について説明する。まず、運転者によりイグニッションスイッチがONされると、第1イグニッションスイッチリレー4が閉成する。このとき、蓄電池間スイッチ14は開成している。そうすると、第1蓄電池2は、電機子11の電機子巻線に電機子電流を供給する。一方、DC−DCコンバータ13の駆動により第2蓄電池3の電圧を昇圧又は降圧した励磁電圧が、界磁12の界磁巻線に印加されて励磁電流が供給される。
ここで、DC−DCコンバータ13の駆動によりDC−DCコンバータ13から界磁巻線に印加される励磁電圧について図8を参照して詳述する。図8(a)は、第1蓄電池2の電圧を示す図である。図8(b)は、DC−DCコンバータ13から界磁巻線に印加される励磁電圧を示す図である。
図8(a)(b)に示すように、内燃機関始動用電動機1が稼働開始した直後(t1)には、第1蓄電池2の電圧が急激に低下する。そして、第1番目の電圧上昇の頂点の時点(t2)には、内燃機関が最初の上死点位置に達する。この間、つまり、時刻t1から時刻t2までの間、励磁電圧が徐々に増加するようにDC−DCコンバータ13が駆動する。すなわち、第2蓄電池3の電圧は12Vであるので、内燃機関始動用電動機1が稼働開始した直後t1付近では、DC−DCコンバータ13は第2蓄電池3の電圧を降圧した励磁電圧を界磁巻線に印加している。その後、励磁電圧が12Vを超えたときには、DC−DCコンバータ13は第2蓄電池3の電圧を昇圧した励磁電圧を界磁巻線に印加している。ここでは、内燃機関が最初の上死点位置に達するときに励磁電圧が30Vとなるように、励磁電圧を比例的に増加させている。このように、徐々に励磁電圧を増加することにより、電機子11の出力軸のピニオンギヤと内燃機関のリングギヤとが滑らかに螺合して、騒音の抑制及びギヤ寿命の向上を図ることができる。
続いて、内燃機関が第1番目の上死点位置から第2番目の上死点位置までは、大きなトルクを必要とするので、第1番目の上死点位置に相当する時刻(t2)から第2番目の上死点位置に相当する時刻(t3)までは、励磁電圧を30Vの高電圧を維持しておく。
続いて、内燃機関が第2番目の上死点位置を超えると(時刻t3→t4)、励磁電圧が6VとなるようにDC−DCコンバータ13が駆動する。すなわち、DC−DCコンバータ13は、第2蓄電池3の12Vの電圧を降圧させて界磁巻線に励磁電圧を印加している。そして、内燃機関が始動したとき(t4)には、励磁電圧が0VとなるようにDC−DCコンバータ13が駆動する。
そして、内燃機関が始動した後には、第1イグニッションスイッチリレー4が開成され、同時に蓄電池間スイッチ14が閉成する。そうすると、車両用発電機7とDC−DCコンバータ13とが接続されることになる。このとき、DC−DCコンバータ13は、車両用発電機7により発生した電力を第2蓄電器3に充電するように駆動する。第2蓄電池3は、DC−DCコンバータ13を介して充電することができるので、第2蓄電池3の最適電圧により充電することができる。
なお、上記実施例においては、内燃機関が第1番目の上死点位置及び第2番目の上死点位置にて印加する励磁電圧を変更しているが、これに限られるものではない。例えば、内燃機関が所定回転数に応じて印加する励磁電圧を変更してもよい。
第1実施例における内燃機関始動装置を示す図である。 第1実施例の第1蓄電池と第2蓄電池の電圧と従来の蓄電池の電圧とを説明する図である。 第2実施例における内燃機関始動装置を示す図である。 第3実施例における内燃機関始動装置を示す図である。 第4実施例における内燃機関始動装置を示す図である。 励磁電流制御装置が出力するデューティーを説明する図である。 第5実施例における内燃機関始動装置を示す図である。 励磁電圧を説明する図である。
符号の説明
1,8,9・・・内燃機関始動用電動機、
2・・・第1蓄電池、
3・・・第2蓄電池、
4・・・第1イグニッションスイッチリレー、
5・・・第2イグニッションスイッチリレー、
6,14・・・蓄電池間スイッチ(蓄電池間スイッチ手段)、
7・・・車両用発電機、
10・・・励磁電流制御装置(PWM制御手段)、
11・・・電機子、
12・・・界磁、
13・・・DC−DCコンバータ(直流電圧変換器)、

Claims (5)

  1. 界磁巻線が巻回された界磁と電機子巻線が巻回された電機子とを備え内燃機関にトルクを伝達可能な内燃機関始動用電動機と、
    前記電機子巻線に電機子電流を供給可能に接続された第1蓄電池と、
    前記界磁巻線に励磁電流を供給可能に接続された第2蓄電池と、
    記界磁巻線と前記第2蓄電池との間に直列接続され前記第2蓄電池の電源電圧を昇圧可能な直流電圧変換器を備え、
    前記第1蓄電池は車両用発電機から充電可能に接続され、
    さらに、前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器との間に配設され前記内燃機関始動用電動機が稼働していない際に前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器とを接続し、前記内燃機関始動用電動機が稼働している際に前記第1蓄電池と前記直流電圧変換器とを遮断する蓄電池間スイッチ手段を備えたことを特徴とする内燃機関始動装置。
  2. 前記内燃機関始動用電動機は、分巻巻線若しくは複巻巻線からなる直流電動機であることを特徴とする請求項1記載の内燃機関始動装置。
  3. 前記内燃機関始動用電動機は、インバータを有する同期電動機であることを特徴とする請求項1記載の内燃機関始動装置。
  4. さらに、前記内燃機関始動用電動機の稼働時間が所定時間に達するまでの間該稼働時間の経過に応じて前記直流電圧変換器により励磁電圧を徐々に増加させることを特徴とする請求項1記載の内燃機関始動装置。
  5. 前記励磁電圧は、前記内燃機関の回転数が所定回転数に達した後に低減することを特徴とする請求項4記載の内燃機関始動装置。
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