JP4161827B2 - エンジンの燃料供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの燃料供給装置、特にエンジンにより駆動される高圧燃料ポンプから吐出した燃料を燃焼室に臨んで設けた燃料噴射弁に供給するようにした筒内直接噴射式エンジンに適用されるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
電動の低圧ポンプにより供給される燃料をエンジン駆動の高圧燃料ポンプで高圧にして蓄圧室に蓄えておき、この蓄圧室より各気筒の燃料噴射弁に燃料を分配するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−89401号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、始動時、特に冷間始動時には早期に圧縮行程噴射を開始して理論空燃比に近い空燃比で成層燃焼を行わせたほうが、HCの排出量を低減できる。これは、混合気にムラのある状態で燃焼させることになり、未燃燃料であるHCの燃焼が、吸気行程噴射による場合よりも促進されることなどのためである。
【0005】
ここで、圧縮行程噴射を行うためには、燃焼室に臨んでいる燃料噴射弁により圧縮行程での燃焼室内圧力に打ち勝って燃焼室内に燃料噴射を行わなければならないので、圧縮行程噴射許可燃圧が予め定められており、蓄圧室の実際の燃圧がこの圧縮行程噴射許可燃圧まで上昇したときに圧縮行程噴射が許可されることになる。
【0006】
この場合、上記従来装置では、高圧燃料ポンプはプランジャポンプであり、プランジャ駆動カムをエンジン回転の1/2で回転させている。このため、エンジンの始動時にはプランジャ駆動カムのカム1回転当たりのプランジャの総ストローク量とクランキング回転速度とにより定まる吐出量に応じてしか蓄圧室の実際の燃圧が上昇してゆかない。
【0007】
この結果、蓄圧室の実際の燃圧が圧縮行程噴射許可燃圧に達する前には吸気行程噴射を行うしかないのが現状であり、圧縮行程噴射に切換わるまでの間でHC排出量が増加してしまう。
【0008】
そこで本発明は、従来のプランジャ駆動カムをベースカムとすると、このベースカムの他にカム1回転当たりのプランジャの総ストローク量を増大させた始動用カムを設けて、これら2つのカムをカム切換機構により切換可能に構成し、エンジンの始動時に早期に圧縮行程噴射を開始させることを目的とし、さらにエンジンの停止指令があったとき始動用カムへの切換をカム切換機構に指令し、この指令により始動用カムに切換わっていないときには次回のエンジン始動時に圧縮行程での噴射を禁止し代わって吸気行程での噴射を指令することにより、不十分な燃圧状態での圧縮行程噴射に伴う始動不良を防止することをも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高圧燃料ポンプと、燃料噴射弁とを備えるエンジンの燃料供給装置において、前記高圧燃料ポンプはエンジンのカムにより駆動され、前記カムはエンジン要求最大燃料流量を供給するためのカムプロフィールを有するベースカムと、エンジン要求最大燃料流量を供給するカム山とこのカム山よりも小作動のカム山を設けたプロフィールを有し、カム1回転当たりのプランジャの総ストローク量を前記ベースカムより増大させた始動用カムとの2つのカムで構成され、この2つのカムを切換可能なカム切換機構を有させる。
【0010】
さらに、エンジンの停止指令があったとき前記始動用カムにより前記高圧燃料ポンプを駆動するように前記カム切換機構に指令し、エンジンの停止指令があったときしばらくエンジンの運転を継続して燃料噴射弁に加わっている燃圧の脈動を検出し、この燃圧の脈動に基づいて始動用カムに切換わっているか否かを判定し、この判定結果より始動用カムに切換わっているときには次回の始動時に圧縮行程での噴射を、始動用カムに切換わってないときには次回の始動時に吸気行程での噴射を指令するように構成する。
【0011】
【発明の効果】
本発明ではベースカムの他に始動用カムを設け、これら2つのカムを切換可能に構成し、始動用カムに切換わっているときには次回の始動時に圧縮行程での噴射を指令するようにしたことから、始動用カムによればカム1回転当たりのプランジャの総ストローク量がベースカムによる場合より増大するため、実燃圧が圧縮行程噴射許可燃圧へと早期に達して圧縮行程噴射を開始できるタイミングが早まり、これによりHC排出量をベースカムの場合より低減できる。
【0012】
また、始動用カムに切換わっていない状態でエンジン停止されたときには次回の始動時に、燃料噴射弁に加わる燃圧を早期に圧縮行程噴射許可燃圧にまで高めることができないため、この不十分な燃圧状態により圧縮行程噴射で始動を行わせたのでは始動性が悪くなるのであるが、本発明によれば、このように始動用カムに切換わってないとき次回の始動時に吸気行程での噴射を指令するようにしたので、不十分な燃圧状態での圧縮行程噴射に伴う始動不良を防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の燃料供給装置の概略構成図で、電子制御スロットル装置、頂面に点火プラグ位置を考慮したキャビティの形成されるピストン、スワールコントロールバルブなどを備える筒内直接噴射式火花点火エンジン(図示しない)に適用されている。また、当該エンジンは図示しない車両に搭載されている。
【0015】
燃料タンク1内の燃料は低圧燃料ポンプ2により低圧燃料供給通路3を介して、高圧燃料ポンプ5に供給される。
【0016】
高圧燃料ポンプ5は図示しない加圧室、加圧室を開閉する弁機構、往復動するプランジャ6、プランジャ駆動カム7から構成される単筒プランジャポンプであり、カム7(後述するように2つのカム31、43からなる)の設けられるカムシャフト41(後述する)はエンジンの回転力により駆動される。例えばエンジンのカムシャフトのようにエンジン回転の1/2で回転するようにしている。
【0017】
この高圧燃料ポンプ5では供給される低圧燃料をさらに燃圧を高めて高圧燃料供給通路11に吐出する。高圧燃料供給通路11は蓄圧室としての直管状燃料ギャラリー12と連通しており、この燃料ギャラリー12からの高圧燃料が燃料噴射弁13に供給されている。
【0018】
燃料ギャラリー12は燃料タンク1へのリターン通路4とつながる連絡通路15と連通され、この連絡通路15にリリーフバルブ16が設けられている。このリリーフバルブ16は、燃料ギャラリー12内の燃圧が規定圧以上になると開いて燃料ギャラリー12内の高圧燃料を燃料タンク1へのリターン通路4へと戻すためのものである。
【0019】
上記の燃料噴射弁13は気筒毎に図示しないエンジンの燃焼室に臨んで設けられ、エンジンコントローラ21からの信号を受けて所定の時期に開かれ、その開弁時間と燃料噴射弁13に作用する燃料ギャラリー12内の燃圧とに比例した燃料を燃焼室内に直接的に噴射供給する。
【0020】
ここで、燃料ギャラリー12内の要求燃圧は運転条件(負荷と回転速度)に応じて定められ、負荷一定であればエンジン回転速度が大きくなるほど高くなり、また回転速度一定であれば負荷が大きくなるほど高くなる値である。要求燃圧の最小値は例えば0.5MPa程度、要求燃圧の最大値は例えば11MPa程度であり、その圧力範囲は広い。要求燃圧を全ての運転条件で一定としたときには、大きく変化する要求燃料量に対応させて燃料噴射弁13の開弁時間を長くしたり短くしたりしなければならず、燃料噴射弁13に対する仕様(ダイナミックレンジの拡大)が厳しくなることも考え得るのであるが、このように、回転速度一定であれば高負荷ほど要求燃圧を高めることで、燃料噴射弁13の開弁時間を長くしなくても要求燃料量を供給できることになり、燃料噴射弁13に対する仕様が厳しくならないようにすることができる。
【0021】
高圧燃料ポンプ5の内部には吐出燃料をリターン通路4へと逃す通路にデューティ制御可能な制御弁8を備えており、この制御弁8へのONデューティ値(制御量)を大きくするほどリターン通路4に逃される吐出燃料が多くなる。エンジンコントローラ21では燃圧センサ22により検出される燃料ギャラリー12内の実際の燃圧がそのときの運転条件に応じた要求燃圧と一致するように制御弁8に与えるONデューティ値をフィードバック制御する。
【0022】
こうした燃料供給装置を備える筒内直接噴射式火花点火エンジンを前提として本実施形態では、ベースカム31の他に始動用カム43を別体で備え、いずれかのカム31、43をカム切換機構により切換可能に構成すると共に、エンジンの冷間始動時には始動用カム43によりプランジャ6を、これに対してエンジンの始動時より所定期間の経過後やエンジンの暖機完了後になるとベースカム31によりプランジャ6を往復動させるようにしている。すなわち、図2に示したようにカムシャフト41にはベースカム31と始動用カム43との2つのカムが並んで設けられている。
【0023】
ここで、ベースカム31のプロフィールは、図3で示したようなものである。すなわち、従来のカムをベースカム31としており、このベースカム31にはエンジン要求最大燃料流量を供給するために必要十分なカム山32、33が180度離れて対向する左右の位置に1つずつ設けられている。
【0024】
これに対して、始動用カム43は図4に示したようにそのプロフィールを形成している。すなわち、エンジン要求最大燃料流量を供給するために必要十分なカム山44、45が180度離れて対向する左右の位置に1つずつ設けられ、それらカム山44、45のちょうど中間の対向する位置(上下の位置)にも1つずつ、カム山44、45よりもリフト量、作動角が共に小さなカム山(小作動のカム山)46、47が設けられている。この場合、大作動のカム山44、45から小作動のカム山46、47へと移る際、あるいはこの逆へと移る際にプランジャ6が運動限界を逸脱して飛び跳ねることがないようにカムプロフィールを設定している。
【0025】
このため、本実施形態によれば2つのカム31、43のリフト特性は図5に示したように、大きなリフトの中間に小さなリフトが生じるものとなり、始動用カム43によるときにはカム1回転当たりのプランジャ6の総ストローク量がベースカム31によるときより増大している。
【0026】
これら2つのカム31、43を切換可能なカム切換機構としては特開平8−74537号公報に記載の機構を流用している。機構そのものは公知であるので、図8、図9を参照して簡単に説明すると、図8はベースカム31によりポンプ5のプランジャ6を駆動しているときの、図9は始動用カム43によりポンプ5のプランジャ6を駆動しているときのカム切換機構の概略構成図である。
【0027】
メインロッカアーム55は、ロッカシャフト52により直接支持されるのではない。すなわち、メインロッカアーム55は両端が出っ張った形状のハウジング53がロッカシャフト52に固定されており、このハウジング53の一方の端にロッカシャフト52に対して偏心して設けたシャフト54により回動可能に支持されている。
【0028】
ロッカシャフト52の下方に横たわるように位置しているメインロッカアーム55は左端上面でプランジャ6に、また中央より左側の下面でベースカム31の側面に当接している。このため、メインロッカアーム55はベースカム31のプロフィールに応じシャフト54を支点にして揺動し、これを受けてプランジャ6が図で上下方向に往復動する。
【0029】
一方、メインロッカアーム55の手前にあるサブロッカアーム56も、右端でシャフト54により回動可能に支持されると共に、ロッカシャフトの下方に横たわるように位置している。このサブロッカアーム56の中央位置上部にはピストン58とロストモーションスプリング59とからなるロストモーション機構57が設けられ、このロストモーションスプリング59の付勢力でピストン58をハウジング53の下面に当接し、その反作用でサブロッカアーム56を、その左端下面において始動用カム43の側面に当接させている。このため、始動用カム43のプロフィルに従いサブロッカアーム56がシャフト54を支点として揺動するとき、その動きはロストモーション機構57に吸収され、始動用カム43、サブロッカアーム56の動きがプランジャ6の動きに寄与することはない。
【0030】
ハウジング53の左端近くには別のシャフト61に支持されて回動可能なレバー62が設けられ、このレバー62の上端62aは、図示しないスプリングの付勢力により、ハウジング53の左端に設けられた油圧ピストン71と常時当接している。油圧ピストン71の油圧室72には常時は高圧の作動油が供給されていないが、図示しない電動油圧ポンプとロッカシャフト52の内部に設けた油路73とをつなぐ油通路の切換弁75(図1参照)が、エンジンコントローラ21からの信号を受けて開かれたとき、電動油圧ポンプにより吐出される高圧の作動油が、油路73、この油路73との連通路74を介して油圧室72に供給される。この油圧供給を受けると、油圧ピストン71がスプリングに抗してレバー62を図で反時計方向に回動する(図9参照)。この場合に、図8に示したようにベースカム31のリフト域にあるときにはレバー62の下端62bはサブロッカアーム56の左端側面56aに当接するだけであるが、ベースカム31がベースサークル域にきたとき、図9のようにレバー62の下端62bがサブロッカアーム56の左端上面に設けた係合部56bにはまり込み、この係合状態ではメインロッカアーム55とサブロッカアーム56とが一体で動く。
【0031】
このときには、一体動する2つのロッカアーム55、56は2つのカム31、43のうちのリフトの高いほう、つまり始動用カム43のプロフィールに従って要することになる。すなわち、切換弁75が開かれたときには始動用カム43のプロフィールに従いメインロッカシャフト52がシャフト54を支点にして揺動し、これを受けてプランジャ6が上下方向に往復動する。
【0032】
上記の切換弁75は、エンジンの始動時より所定期間が経過したときあるいはエンジンの暖機完了後に全閉する。切換弁75が閉じられると、油圧室72内の油圧が低下しスプリングの付勢力が打ち勝ったとき、いずれのカム31、43もベースサークル域にあればレバー62が図で時計方向に回動され、レバー62の下端62bがサブロッカアーム56の係合部56bから外れる。このときには、メインロッカアーム55は再びベースカム31に従って揺動する。すなわち、従来装置と同様となる。
【0033】
ここで、本実施形態の作用を図6、図7を参照しながら説明すると、図6はエンジンの始動時から燃料ギャラリー12内の実燃圧がどのように変化するのかを示すタイミングチャート、図7はこれに加えて燃料の噴射時期、HC排出量の変化を示すタイミングチャートである。ただし、図6には燃料ギャラリー12内の実際の燃圧の変化を、図7最上段には燃料ギャラリー12内の実燃圧の変化をモデル的に示している。
【0034】
破線で示したベースカム31による始動の場合には、t1でスタータモータによりクランキングが開始されると、実燃圧が直線的に上昇しt2のタイミングで燃料噴射を開始する。ただし、t2のタイミングでは実燃圧が圧縮行程噴射許可燃圧に達していないので、吸気行程噴射を開始する。すなわち、吸気行程で噴射し、燃料と空気の混合を早め、燃焼室の全域を均質的な混合気で満たし、理論空燃比付近の混合気による均質燃焼を行う。
【0035】
この吸気行程噴射により発生するエンジントルクによりエンジンが自立運転に入り、このときの回転速度に応じて実燃圧が上昇してゆき、やがて実燃圧が圧縮行程噴射許可燃圧に達するt3のタイミングで吸気行程噴射より圧縮行程噴射に切換えられる。すなわち、燃料を圧縮行程の後半に噴射し、これにより圧縮上死点付近において、点火プラグ近傍のキャビティに可燃混合気を形成し、点火プラグによる点火に伴い燃料を成層燃焼させる。ただし、このときの成層燃焼時の空燃比は、エンジンの暖機完了後に所定の運転域において目標とされる40を超えるリーンな空燃比ではなく、吸気行程噴射と同じく理論空燃比付近の空燃比である。
【0036】
これに対して、始動用カム43による始動の場合には、カム1回転当たりのプランジャ6の総ストローク量がベースカム31による場合より増大するため、同じクランキングを行っても、高圧燃料ポンプ5からの吐出量が増える。このため、図6実線、図7最上段実線で示したように、t1からベースカム31の場合より急激な傾きで実燃圧が上昇し、t2ですでに実燃圧が圧縮行程噴射許可燃圧に達することから、t2のタイミングで早くも圧縮行程噴射を開始することができる。すなわち、図7中段にも示すように、ベースカムによる場合には圧縮行程噴射を開始できるタイミングがt3であったものが(図7中段の破線参照)、本実施形態のカム7によれば圧縮行程噴射を開始できるタイミングがt2まで早まり(図7中段の実線参照)、これにより図7下段に示したようにHC排出量をベースカム31の場合より低減できる。
【0037】
このように、本実施形態(請求項1に記載の発明)ではベースカム31の他に始動用カム43を別体で設け、これら2つのカム31、43をカム切換機構により切換可能に構成し、エンジンの冷間始動時には始動用カム側に切り換えてプランジャ6を駆動するようにしたことから、始動用カム43によればカム1回転当たりのプランジャ6の総ストローク量がベースカム31による場合より増大するため、実燃圧が圧縮行程噴射許可燃圧へと早期に達して圧縮行程噴射を開始できるタイミングが早まり、これによりHC排出量をベースカム31の場合(従来装置の場合)より低減できる。
【0038】
また、始動用カム43のみで全ての回転速度域をカバーするものとし、かつ最大限に冷間始動時の圧縮行程噴射許可燃圧への昇圧期間を短縮しようと始動用カム43のプロフィールを定めた場合に、高回転速度域でプランジャ6が運動限界を逸脱して飛び跳ねることが考え得るのであるが、本実施形態(請求項2に記載の発明)では、エンジンの冷間始動時より所定期間が経過した後あるいはエンジンの暖機完了後の高回転速度域であればプランジャ6はベースカム31により駆動されるので、高回転速度域においてもプランジャ6が運動限界を逸脱することを避けることができる。
【0039】
さて、エンジンの冷間始動時に始動用カム43によりプランジャ6を駆動させるには、前回の運転時にイグニッションキースイッチがOFFとされたとき(エンジンの停止指令があったとき)、カムをベースカム31より始動用カム43へと予めに切換えておくことが望ましい。
【0040】
しかしながら、始動用カム43へと切換えるべく切換弁75に開弁指令を出したとき、何らかの理由により切換弁75が全閉状態のままで開かれず、従って始動用カム43へと切換えられない事態が考え得る。
【0041】
これに対処するため、エンジンコントローラ21では、実際に始動用カム43に切換わっているか否かを判定し、始動用カム43に切換わっていないときには次回のエンジン冷間始動時に、圧縮行程での噴射を禁止し代わって吸気行程での噴射を指令する。
【0042】
エンジンコントローラ21で行われるこの制御を図10のフローチャートを参照して詳述すると、図10はイグニッションキースイッチ23がONにされてからエンジンが停止されるまでの処理を時間的経過の順に示したものである。一定時間毎にサイクリックに実行するものではない。
【0043】
イグニッションキースイッチ23がONにされているときにはステップ1に進んで圧縮行程噴射始動禁止フラグをみる。この圧縮行程噴射始動禁止フラグは、圧縮行程噴射始動禁止フラグ=1であるとき圧縮行程噴射による始動を禁止することを、また圧縮行程噴射始動禁止フラグ=0であるとき圧縮行程噴射による始動を許可することを表すフラグである。
【0044】
従って、圧縮行程噴射始動禁止フラグ=0であるときにはステップ2に進んで圧縮行程での噴射を、これに対して圧縮行程噴射始動禁止フラグ=1であるときにはステップ3に進んで吸気行程での噴射を行わせ、これによりエンジンを始動する。
【0045】
エンジン運転中にステップ4においてはイグニッションキースイッチ23がON状態でありながらエンジンがストール(回転停止)しているか否かをみる。これは、クランク角センサ24によりエンジン回転速度を算出しているので、この算出されるエンジン回転速度が所定値以下であれば回転停止していると判定すればよい。
【0046】
エンジンがストール状態になければステップ5に進んでイグニッションキースイッチ23がOFF状態になっているか否かをみる。イグニッションキースイッチ23がOFF状態になっていなければステップ4に戻ってエンジンがストール状態に陥ってないか否かを確かめる。
【0047】
イグニッションキースイッチ23がOFF状態になると、ステップ6に進み次回の冷間始動時に備えて始動用カム43への切換指令(切換弁75への開弁指令)を出す。この時点ではまだエンジンを停止せず暫く運転を継続する。ベースカム31によりプランジャ6が駆動されているときには切換弁75が全閉状態にされている。このため、始動用カム43への切換指令が出ると、切換弁75が開かれ、油圧室72に高圧の作動油が供給されてカムが始動用カム43に切換わる。
【0048】
しかしながら、始動用カムへ43の切換指令を出したにも拘わらず、何らかの原因により切換弁75が開かれず、従ってベースカム31のままであることが考えられる。このときには次回の冷間始動時に燃料ギャラリー12内の実燃圧を早期に圧縮行程噴射許可燃圧にまで高めることができないため、不十分な燃圧状態で圧縮行程噴射により始動を行ったのでは始動性が悪くなる。これは、十分な燃圧状態でのもとでも圧縮行程噴射のほうが吸気行程噴射よりもともと回転力が弱いところ、不十分な燃圧状態になると回転力がさらに落ちてしまうためである。
【0049】
ステップ7では、実際に始動用カム43に切換えられたか否かを、燃圧センサ22により検出される燃料ギャラリー12内の実燃圧に基づいて判定する。
【0050】
この判定については図11により説明すると、同図はカム切換指令を出した後も暫くエンジンの運転を継続したときの燃料ギャラリー12内の実燃圧の変化を示したもの、より詳しくは図11上段はカム切換指令により始動用カム43に切換わったときの、図11下段はカム切換指令を出しても始動用カム43に切換わらずベースカム31のままである場合のものである。
【0051】
2つのカムプロフィールの違いにより、始動用カム43により駆動されているほうが実燃圧が小刻みに脈打っていることが分かる。従って、イグニッションキースイッチのOFFから所定の期間かけて、燃圧センサ22により検出される実燃圧に基づいて燃圧脈動の周波数(あるいは位相)を計測し、その直後にその計測した周波数と所定値とを比較することで、いずれのカムによりプランジャが駆動されているのかがわかる。燃圧脈動の周波数が所定値より大きいときには始動用カム43によりプランジャが駆動されている(つまり始動用カム43に切換わっている)と、また燃圧脈動の周波数が所定値より小さいときにはベースカム31によりプランジャが駆動されている(つまり始動用カム43に切換わっていない)と判定する。
【0052】
図10に戻り、実燃圧の脈動の周波数検出により始動用カム43に切換わっていないと判定されたときには次回の冷間始動時に圧縮行程での噴射を禁止するためステップ8に進んで圧縮行程噴射始動禁止フラグ=1とし、これに対して始動用カム43に切換わっていると判定されたときには次回の冷間運転時に圧縮行程噴射による始動を許可するためステップ10に進んで圧縮行程噴射始動禁止フラグ=0とする。ステップ9では、燃料供給を停止してエンジンを停止させる。
【0053】
一方、エンジンの運転中にエンジンがストール状態になったときにはステップ4よりステップ8に進み圧縮行程噴射始動禁止フラグ=1とした後、ステップ9の操作を実行する。運転中にエンジンがストール状態になったときには燃料供給を停止して再始動に備える必要があるが、このときには始動用カム43に切換わったか否かを判定していないのに再始動を迎えることになる。そこで、安全策として圧縮行程噴射による再始動を避けるようにしたものである。この再始動後にエンジンストール状態に陥ることなく、ステップ7に至り、始動用カム43に切換わっているときには圧縮行程噴射始動禁止フラグ=0となって、次回の冷間始動時に圧縮行程噴射による始動が行われる。
【0054】
このように始動用カム43に切換わっていない状態でエンジン停止されたときには次回のエンジンの冷間始動時に、燃料噴射弁13に加わる燃圧を早期に圧縮行程噴射許可燃圧にまで高めることができないため、この不十分な燃圧状態により圧縮行程噴射で始動を行わせたのでは始動性が悪くなるところ、本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、今回のエンジン停止時にベースカム31より始動用カム43へと切換わっていないとき、次回のエンジンの冷間始動時には圧縮行程噴射を禁止して吸気行程での噴射を指令するようにしたので、不十分な燃圧状態での圧縮行程噴射に伴う始動不良を防止できる。
【0055】
実施形態では、始動用カムに切換わっているか否かの判定を、始動用カム43によりプランジャ6が往復動するようにカム切換機構に指令した後に行う場合で説明したが、エンジンの冷間始動時に行うようにしてもかまわない(請求項4に記載の発明)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の燃料供給装置の概略構成図。
【図2】カムシャフトの要部平面図。
【図3】ベースカムの正面図。
【図4】始動用カムの正面図。
【図5】2つのカムの各リフト特性図。
【図6】エンジンの始動時からの実燃圧の変化を示すタイミングチャート。
【図7】エンジンの始動時からの実燃圧の変化に加えて噴射時期、HC排出量の変化を示すタイミングチャート。
【図8】カム切換機構のベースカム駆動時の概略構成図。
【図9】カム切換機構の始動用カム駆動時の概略構成図。
【図10】イグニッションキースイッチがONにされてからエンジンが停止されるまでの処理を時間的経過の順に示したフローチャート。
【図11】カム切換指令後の実燃圧の変化を示す波形図。
【符号の説明】
5 高圧燃料ポンプ
6 プランジャ
7 カム
12 燃料ギャラリー
13 燃料噴射弁
41 カムシャフト
42 ベースカム
43 始動用カム
44、45 大作動のカム山
46、47 小作動のカム山
Claims (5)
- 高圧燃料を吐出する高圧燃料ポンプと、この高圧燃料ポンプからの高圧燃料を開弁時にエンジンの燃焼室内に直接的に供給する燃料噴射弁とを備えるエンジンの燃料供給装置において、
前記高圧燃料ポンプはエンジンのカムにより駆動され、
前記カムはエンジン要求最大燃料流量を供給するためのカムプロフィールを有するベースカムと、エンジン要求最大燃料流量を供給するカム山とこのカム山よりも小作動のカム山を設けたプロフィールを有し、カム1回転当たりのプランジャの総ストローク量を前記ベースカムより増大させた始動用カムとの2つのカムで構成され、
この2つのカムを切換可能なカム切換機構を有させると共に、
エンジンの停止指令があったとき前記始動用カムにより前記高圧燃料ポンプを駆動するように前記カム切換機構に指令する始動用カム指令手段と、
前記エンジンの停止指令があったときしばらくエンジンの運転を継続して前記燃料噴射弁に加わっている燃圧の脈動を検出し、この燃圧の脈動に基づいて前記始動用カムに切換わっているか否かを判定する判定手段と、
この判定結果より始動用カムに切換わっているときには次回の始動時に圧縮行程での噴射を、始動用カムに切換わってないときには次回の始動時に吸気行程での噴射を指令する噴射時期指令手段と
を備えることを特徴とするエンジンの燃料供給装置。 - エンジンの始動時より所定期間が経過した後またはエンジンの暖機完了後に前記ベースカムにより前記高圧燃料ポンプを駆動するように前記カム切換機構に指令することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
- 前記始動用カムは、前記エンジン要求最大燃料流量を供給するためのカム山を180度離れた対向位置に設け、その山の中間に前記小作動のカム山を対向して設ける、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの燃料供給装置。 - 前記始動用カムに切換わっているか否かの判定を、前記始動用カムにより前記高圧燃料ポンプを駆動するように前記カム切換機構に指令した後またはエンジンの始動時に行う、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のエンジンの燃料供給装置。
- エンジンの運転中にエンジンストールを判定したときには次回の始動時に吸気行程での噴射を指令する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のエンジンの燃料供給装置。
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