JP4159920B2 - レールボンド端子の溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、レールの疲労強度の低下を軽減するようにしたレールボンド端子の溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、在来線のレール(普通レール、熱処理レール)におけるレールボンド端子などの取り付け方法としては、種々の方法が提案されているが、中でも特に溶接部の接合強度が高く、高度の技能を必要としない銅テルミット溶接工法が比較的多く使用されている。
この銅テルミット溶接工法は、熱化学反応(テルミット反応)を応用した溶接方法であり、原理は酸化銅とアルミニウムとの混合粉末(銅テルミット剤)を治具を構成するルツボ内で燃焼させ、それによって生じた熱を利用してレールボンド端子をレールのくびれた胴部に溶接するようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような銅テルミット溶接工法は、簡便で、高強度を実現できる溶接方法であるが、溶接部近傍に残留応力が残り、このためレールの疲労強度が低下するといわれている。例えば、三木他による「溶接止端部改良による疲労強度向上法」溶接学会論文集、第17巻、第1号にも記載されているように、溶接継ぎ手部の疲労強度を向上させるためには、溶接止端部における応力集中を低減させることと、溶接により生じる引張残留応力を低減させることが効果的であることが知られている。
また、前記論文の中には、これらの応力緩和方法として、TIG処理、グラインダー処理と併せてハンマーピーニング処理がある程度の効果があることも記載されている。
【0004】
前記ハンマーピーニング処理とは、溶接部をハンマーで打撃してレールを塑性変形させ、その変形に伴って生じる押圧側の残留応力によって溶接時の引張残留応力を緩和し、結果的に溶接による疲労強度の低下を縮小させるものである。
また、前記同論文の中にも記載されているように、前記ハンマーピーニング処理は、残留する引張応力が最も高いとされる溶接外縁部にハンマー打撃を加えることによって、疲労強度はある程度向上するが、その反面レールに傷が発生し、この傷を基点として疲労亀裂が発生することが知られている。
【0005】
また、溶接による溶融部を取り囲む熱影響部の外縁近傍に引張応力が残留しており、この引張応力が疲労強度の低下と亀裂の発生とに関係していることが知られている。
さらにまた、残留引張応力が最も高いとされる熱影響部の溶接外縁部ではなく、レールボンド端子の周縁部近傍を先端がドーム状のハンマーの打撃によって凹状の塑性変形を生じさせ、溶接による疲労強度の低下を防止することできることも知られている。
【0006】
特に、前記溶接を銅テルミット溶接工法によって行った場合、レールの溶融部と熱影響部はレールボンド端子の下に隠れているので、熱影響部の周縁部を直接押圧あるいはピーニングすることができないが、レールボンド端子を取り巻くレールの表面をハンマーで打撃することができ、これにより、凹状の塑性変形を形成することができることは、例えば特開2002−346771号に示すように公知である。
しかしながら、このようにレールの表面をハンマーで打撃することは、騒音が出ることとなり、作業量の増加、作業が厄介となり、また作業品質も悪く、均一とならず、圧痕の位置決めも不揃いとなるという問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決することを目的としてなされたものであり、レールの胴部表面にレールボンド端子を銅テルミット溶接によって溶接する工程と、銅テルミット溶接によってレールに溶接されたレールボンド端子を中心として直交するxy座標軸が分かつ第1象限〜第4象限における45°、135°、225°及び315°方向のレールボンド端子周縁部近傍4箇所を、ハンマー打撃によらない油圧シリンダで加圧する工程からなる下記レールボンド端子の溶接方法を提供するものである。
【0008】
すなわち、本発明は、レールボンド端子を中心として直交するxy座標軸が分かつ第1象限〜第4象限における45°、135°、225°及び315°方向のレールボンド端子周縁部近傍4箇所をレールの両側から同時に加圧する工程からなるレールボンド端子の溶接方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、レールボンド端子を中心としてxy座標軸が分かつ第1象限と第3象限における45°及び225°若しくは第2象限と第4象限における135°及び315°方向のレールボンド端子周縁部近傍2箇所、さらに対応する第2象限と第4象限における135°及び315°若しくは第1象限と第3象限における45°及び225°方向のレールボンド端子周縁部近傍2箇所を両側から同時にそれぞれ加圧する工程からなるレールボンド端子の溶接方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係るレールボンド端子の溶接方法の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、銅テルミット溶接工法を適用する一般的な治具を構成するルツボの一例を示す一部切欠斜視図である。図2は、レールボンド端子の実施例を示す斜視図である。図3は、本発明に係るレールボンド端子の溶接方法を説明するための装置の正面図である。図4は、本発明の要部を説明する図である。図5は、レールボンド端子をレールのくびれた胴部の面に溶接した状態を示す斜視図である。図6は、圧痕形成用突起部の正面図である。図7は、同側面図である。
【0011】
図1において、1は、従来から使用されている銅テルミット溶接工法を適用する治具である。
この治具1は、凹部2aを形成したルツボ本体2と、湯道3と、この湯道3に連接する半円形の切り口4aを形成した銅溶着部4とから構成されている。
前記ルツボ本体2の凹部2aには、テルミット剤5とそれを覆うように点火剤6が投入されている。
初期の段階では、凹部2aの底口はスチールディスク7で塞がれている。
【0012】
このような治具1を使用して、銅テルミット溶接工法により前記半円形の切り口4aとほぼ同形の筒状のレールボンド端子8(図2に示す)を、レール10のくびれた胴部10aの面に溶接(15)する。
この筒状のレールボンド端子8には、レールボンド(電線)8aがカシメなどにより固着されている。8bは、前記銅溶着部4に位置して溶接される固着部である。
【0013】
さらに詳細に説明すると、まずこの筒状レールボンド端子8をルツボ本体2の半円形の切り口4aに、レール10(例えば普通レール、熱処理レール)の長手方向(例えばレールのくびれた胴部10aの面)に沿って挿入し、このルツボ本体2によりレールボンド端子8をレール10のくびれた胴部10aに溶接する際には、図示しないガスバーナによりこのルツボ本体2の内部を中心に加熱する。
【0014】
次にレール10を必要に応じて予熱する。予熱しない場合もある。
次いで,ガスバーナによりレール10のくびれた胴部10aにおけるレールボンド端子8を溶接する部分を加熱する。その際、ガスバーナの火炎を溶接面に直角に当て吹管を円状に動かしながら均等に加熱する。
【0015】
次いで前記治具1をレール10に、図示しないハンドルを開いてレール頭部10bに図示しないボンド取付金具を乗せ仮取付を行う。
次にレールボンド端子8をルツボ本体2の半円形の切り口4aに、レール10のくびれた胴部10aの面に沿って挿入すると、レールボンド端子8に設けた固着部8bは、銅溶着部4の適正な位置に止まる。
【0016】
ここで図示しないハンドルを閉じてレール10にしっかりと固定し、レール10とルツボ本体2の間に隙間やガタが生じないよう確実に取り付ける。
この状態で前記ルツボ本体2の上方からスチールディスク7をルツボ本体2内の中間、すなわち前記湯道3の上方部に上向きにセットし、銅テルミット剤5を投入する。
【0017】
更に点火剤6を投入して柄の長いライターなどで点火させると、点火とほぼ同時に反応し、数秒間銅テルミット剤5が燃焼した後、スチールディスク7も溶融して溶融銅が湯道3を通って銅溶着部4に流れ、この銅溶着部4において溶着すべきレールボンド端子8とレール10とを密着させておけば、この銅溶着部4の適正な位置に止まっているレールボンド端子8の固着部8bは、溶融銅によってレール10のくびれた胴部10aに確実に溶接(15)される。
【0018】
このように、本発明においては、図5に示すようにレール10のくびれた胴部10aにレールボンド端子8を溶接させる際には、上述のような銅テルミット溶接工法を適用させるのである。
まず前記ルツボ2本体の半円形の切り口4aに、銅溶着部4の適正な位置に止まるように形成した筒状のレールボンド端子8を、レール10のくびれた胴部10aの面に沿って挿入させ、ルツボ2本体の上方で銅テルミット剤5を点火させると、銅が溶けて湯道3を通って銅溶着部4においてレールボンド端子8の固着部8bがレール10のくびれた胴部10aに確実に溶接(15)される。
【0019】
しかして、レール10のくびれた胴部10aに溶接されたレールボンド端子8の溶接部(15)近傍は、残留応力が残り、疲労強度が低下することが知られており、またこの残留応力の解消方法として、レールボンド端子の周縁部近傍をハンマー打撃によって凹状の塑性変形を生じさせることによって溶接による疲労強度の低下を防止させることができることも公知技術である。
【0020】
本発明においては、レール10のくびれた胴部10aの表面に銅テルミット溶接工法によって溶接された図2に示すレールボンド端子8の周縁部近傍を、ハンマー打撃によらない第1の油圧シリンダ11、第2の油圧シリンダ12で、前記レールのくびれた胴部10aを挟んで両側からレールボンド端子を中心として直交するxy座標軸が分かつ第1象限〜第4象限における45°、135°、225°及び315°方向のレールボンド端子周縁部近傍4箇所を同時に加圧して前記レール10のくびれた胴部10aに圧痕部14を形成している。この圧痕によって溶接による疲労強度の低下を防止させることができるものである。
【0021】
13は、第1の油圧シリンダ11の可動部の先端に、図4に示す位置関係をもって取り付けられている4個の圧痕形成用突起部である。この圧痕形成用突起部13には、取付孔13aaを設けた取付部13aが形成されており、この取付孔13aaに挿通するボルト13bによって前記第1の油圧シリンダ11の可動部の先端に、前記圧痕形成用突起部13の取付部13aが取り付けられる。
【0022】
本発明の実施例においては、圧痕部14を前記圧痕形成用突起部13によって前記レールのくびれた胴部10aに4箇所同時に形成する方法について説明したが、これに限らず、レールボンド端子を中心として直交するxy座標軸が分かつ第1象限と第3象限もしくは第2象と第4象限におけるそれぞれの45°方向のレールボンド端子周縁部近傍2箇所を両側から同時に加圧する工程と、さらに第2象と第4象限もしくは第1象限と第3象限におけるそれぞれの45°方向のレールボンド端子周縁部近傍2箇所を両側から同時に加圧する2回で4箇所形成する方法であってもよい。
【0023】
【発明の効果】
本発明に係るレールボンド端子の溶接方法は、レールにレールボンド端子を銅テルミット溶接によって溶接する工程と、この銅テルミット溶接によって溶接する工程によってレールに溶接されたレールボンド端子の周縁部近傍をハンマー打撃によらない油圧シリンダで加圧する工程とを含むものであるから、レールの表面をハンマーなどにより打撃しないので、レールに傷や亀裂が発生せず、作業が静かであり、作業量も軽減し、作業が簡単となり、楽な姿勢で作業ができ、また作業品質が悪くならないので、均一となり、圧痕の位置決めも不揃いとならず、正確な位置に形成されるなどの優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 銅テルミット溶接工法を適用する一般的な治具を構成するルツボの一例を示す一部切欠斜視図である。
【図2】 レールボンド端子の実施例を示す斜視図である。
【図3】 本発明に係るレールボンド端子の溶接方法を説明するための装置の正面図である。
【図4】 本発明の要部を説明する図である。
【図5】 レールボンド端子をレールのくびれた胴部の面に溶接した状態を示す斜視図である。
【図6】 圧痕形成用突起部の正面図である。
【図7】 同側面図である。
【符号の説明】
1 治具
2 ルツボ本体
2a 凹部
3 湯道
4 銅溶着部
4a 半円形の切り口
5 テルミット剤
6 点火剤
7 スチールディスク
8 筒状のレールボンド端子
8a レールボンド(電線)
8b 固着部
10 レール
10a くびれた胴部
10b レール頭部
11 第1の油圧シリンダ
12 第2の油圧シリンダ
13 圧痕形成用突起部
13a 取付部
13aa取付孔
13b ボルト
14 圧痕部
15 溶接部
Claims (2)
- レールの胴部表面にレールボンド端子を銅テルミット溶接によって溶接する工程と、銅テルミット溶接によってレールに溶接されたレールボンド端子を中心としてxy座標軸が分かつ第1象限〜第4象限における45°、135°、225°及び315°方向のレールボンド端子周縁部近傍4箇所を、ハンマー打撃によらない油圧シリンダでレールの両側から同時に加圧する工程からなることを特徴とするレールボンド端子の溶接方法。
- レールの胴部表面にレールボンド端子を銅テルミット溶接によって溶接する工程と、銅テルミット溶接によってレールに溶接されたレールボンド端子を中心としてxy座標軸が分かつ第1象限と第3象限における45°及び225°若しくは第2象限と第4象限における135°及び315°方向のレールボンド端子周縁部近傍2箇所、さらにそれぞれに対応する第2象限と第4象限における135°及び315°若しくは第1象限と第3象限における45°及び225°方向のレールボンド端子周縁部近傍2箇所を、ハンマー打撃によらない油圧シリンダでレール両側から同時にそれぞれ加圧する工程からなることを特徴とするレールボンド端子の溶接方法。
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