JP4158396B2 - 乳酸エステルの製造方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸エステルを製造する方法および装置に関し、特に低コストで乳酸エステルを製造することができる製造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、乳酸は、醸造、漬物等の食品添加物のほか、医薬、農薬、化粧品、繊維仕上げ剤、塗料、溶剤、生分解性プラスチックなどの原料として使用されている。また乳酸の誘導体である乳酸ブチルなどの乳酸エステルは、溶剤、洗浄剤として用いられている。
乳酸エステルの製造方法としては、乳酸発酵により得られた乳酸をアルコールでエステル化する方法が広く用いられている。
特開平6−311886号公報には、原料を乳酸発酵させ、この際、生成する乳酸の中和剤としてアンモニアを用い、得られた乳酸アンモニウム溶液にアルコールを添加して加熱し、反応後期に鉱酸を加え反応をさらに進行させ、アンモニアを回収するとともに乳酸エステルを回収する方法が開示されている。
【0003】
図3に示すように、この公報に記載された方法では、アンモニア水を中和剤として添加しつつ乳酸発酵を行うことによって得られた乳酸アンモニウム溶液と、ブタノールとを反応器31に入れ、オイルバス32を用いて150〜160℃で加熱する。
反応器31からの反応蒸気を蒸留器33を経て冷却器34に導き、ブタノールと水を液化させ、経路L31を通して二相分離器35に導く。
二相分離器35では、ブタノールと水が分離し、上相側のブタノールが経路L32を通して反応器31に戻され、下相側の水が経路L33を通して排出される。
反応蒸気中のアンモニアは、冷却器34を通過し、経路L34を通して回収される。
【0004】
回収されたアンモニアは、コスト低減のため、乳酸発酵の際の中和剤として再利用するのが好ましい。
アンモニアは、ガス状のまま中和剤として使用すると供給量調節が難しくなるため、水に溶解させた状態とするのが好ましい。
回収されたアンモニアガスを水に溶解させるには、コンプレッサなどで昇圧し、アンモニアスクラバーなどを用いて水に接触させる操作が必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の製造方法では、アンモニアを水に溶解させるため、コンプレッサやスクラバーなどの大がかりな装置が必要となり、設備コストが高騰する問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、低コストで乳酸エステルを製造できる方法および装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の乳酸エステルの製造方法は、原料を乳酸発酵させるとともに、生成した乳酸をアンモニアで中和して乳酸アンモニウム溶液を得る乳酸発酵工程と、乳酸発酵工程で得られた乳酸アンモニウム溶液にアルコールを添加し加熱することによって、乳酸アンモニウムをエステル化させて乳酸エステルを含む反応液を得るエステル化工程と、エステル化工程で生成したアンモニアとアルコールと水とを含む反応蒸気を冷却し、アルコールと水の一部を液化させる中間冷却工程と、中間冷却工程で液化したアルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、アルコールおよび水を含む分離ガスとを分離する気液分離工程と、気液分離工程で得られた分離ガスを冷却することによって液化し、アンモニアと水を冷却することにより得られたアンモニア水とアルコールとを得る主冷却工程とを有することを特徴とする。
中間冷却工程における冷却温度は、反応蒸気中のアンモニアの大部分が気相中に留まり、かつ分離ガス中のアンモニアの大部分が主冷却工程で水に溶解する温度とするのが好ましい。
中間冷却工程における冷却温度は、反応蒸気の露点より1〜10℃低い温度に設定することができる。
中間冷却工程における冷却温度は、常圧条件において80〜120℃に設定することができる。
本発明の製造方法では、アルコールとして、炭素数が4以上であるものを用い、気液分離工程で得られた分離液中のアルコールと水とを分離する分離液側分液工程を行い、得られたアルコールをエステル化工程に供給することができる。
本発明の製造方法では、主冷却工程で得られたアンモニア水とアルコールとを分離する分離ガス側分液工程を行い、得られたアンモニア水を、乳酸発酵工程における中和剤として使用することができる。
本発明の製造方法では、エステル化工程で得られた反応液を加熱することによって、反応液中に不純物として含まれるアンモニアとアルコールと水とを反応蒸気として放出させる精製工程と、精製工程で放出された反応蒸気を冷却し、アルコールと水の一部を液化させる第2中間冷却工程と、第2中間冷却工程で液化したアルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、アルコールおよび水を含む分離ガスとを分離する第2気液分離工程と、第2気液分離工程で得られた分離ガスを冷却することによって液化し、アンモニア水とアルコールとを得る第2主冷却工程とを有する方法を採用することもできる。
【0007】
本発明の乳酸エステルの製造装置は、乳酸発酵で生成した乳酸をアンモニアで中和して得られた乳酸アンモニウム溶液に、アルコールを添加し加熱することによって、乳酸アンモニウムをエステル化させて乳酸エステルを得るエステル化反応器と、エステル化反応器で生成したアンモニアとアルコールと水とを含む反応蒸気を冷却し、アルコールと水の一部を液化させる中間冷却器と、中間冷却器で液化したアルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、アルコールおよび水を含む分離ガスとを分離する気液分離器と、気液分離器で得られた分離ガスを冷却することによって液化し、アンモニア水とアルコールとを得る主冷却器とを有することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の乳酸エステルの製造方法では、分解により糖を生成するものであれば、原料として用いることができる。
この原料としては、バイオマス材料由来のものを用いることができる。
バイオマス材料とは、生物に由来する材料をいい、木質系材料(木材など)、古紙、農産廃棄物(稲わらなど)、果実殻(ヤシ殻など)、澱粉系材料(トウモロコシ、ジャガイモなど)、糖質材料(サトウキビ絞り汁など)を例示することができる。
バイオマス材料としては、木質系材料、古紙、農産廃棄物、果実殻などの繊維系バイオマス材料(繊維状組織を含むバイオマス材料)を用いることができる。バイオマス材料は、廃棄物(産業廃棄物、都市ゴミ、農産廃棄物)に由来するものを、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0009】
以下、本発明の乳酸エステルの製造方法の第1の実施形態を説明する。
(1)加水分解工程
この工程では、原料を加水分解し、糖を含む分解物を得る。例えばジャガイモ由来の澱粉系材料を原料として用いる場合には、グルコースを含む分解物が得られる。
加水分解の方法としては、濃酸加水分解法、希酸加水分解法、水蒸気爆砕法、酵素法を挙げることができる。
【0010】
濃酸加水分解法は、原料を濃酸で処理する方法である。
濃酸としては、硫酸、塩酸、フッ化水素酸を挙げることができ、なかでも特に、硫酸を用いるのが好ましい。濃酸の濃度は20〜80質量%とするのが好ましい。
濃酸加水分解法の具体例としては、次の方法を挙げることができる。
まず、原料を60〜80質量%の硫酸溶液と混合する。この際、温度は40℃以下とするのが好ましい。
次いで、混合物を、硫酸濃度が20〜40質量%となるように希釈し、好ましくは80〜100℃に加熱する。
混合物から固形分を分離することによって、5炭糖や6炭糖を含む液状の分解物を得ることができる。硫酸は、擬似移動相を用いて分解物から除去することができる。
濃酸加水分解法は、繊維系バイオマス材料の加水分解に用いるのが好ましい。
【0011】
希酸加水分解法は、原料を希酸で処理する方法である。希酸としては、硫酸、塩酸、フッ化水素酸を挙げることができ、なかでも特に、硫酸を用いるのが好ましい。希酸の濃度は0.5〜2質量%とするのが好ましい。
希酸加水分解法の具体例しては次の方法を挙げることができる。
まず、原料を0.5〜1質量%の硫酸溶液と混合する。この際、温度は200〜300℃にすることが好ましい。
次いで、混合物を硫酸濃度が1〜2質量%となるように希釈し、好ましくは230〜250℃に加熱する。
混合物から固形分を分離することによって、5炭糖や6炭糖を含む液状の分解物を得ることができる。硫酸は、炭酸カルシウムの添加により硫酸カルシウムとして析出させることによって、分解物から取り除くことができる。
希酸加水分解法は、繊維系バイオマス材料の加水分解に用いるのが好ましい。
【0012】
水蒸気爆砕法は、原料を爆砕する方法である。水蒸気爆砕法の具体例としては次の方法を挙げることができる。
原料に水蒸気を注入することによって、この原料を230〜240℃、30〜40気圧の条件で爆砕する。得られた爆砕物から固形分を分離することによって、5炭糖や6炭糖を含む液状の分解物を得ることができる。
【0013】
酵素法は、原料を酵素で分解する方法である。酵素としては、αアミラーゼ、セルラーゼを使用できる。
澱粉系材料をα−アミラーゼで分解する方法の具体例としては次の方法を挙げることができる。
まず、原料である澱粉系材料とα−アミラーゼを水に分散させて、ジェットクッカーを用いて、105℃〜110℃の条件で4〜8kg/cm2Gの水蒸気と混合する。α−アミラーゼとしては、耐熱性の優れたもの(例えばバチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)のα−アミラーゼ)が好ましい。
この混合物を上記温度および圧力条件で滞留管内に5〜10分間おいた後、反応槽に入れ、大気圧下で95℃程度の条件で90分〜120分間滞留させ、分解物を得る。
酵素法は、澱粉系材料の加水分解に用いるのが好ましい
【0014】
(2)乳酸発酵工程
この工程では、得られた分解物を、乳酸発酵微生物を用いて乳酸発酵させる。
この乳酸発酵微生物としては、細菌、酵母、カビが使用可能である。
細菌としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、バチルス(Bacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属のものを例示できる。
酵母としては、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クルーベルマイセス(Kluyveromyces)属のものを例示できる。
カビとしては、リゾプス(Rhyzopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属のものを例示できる。
この乳酸発酵微生物としては、特に、ホモ乳酸発酵能を有する微生物を使用するのが好ましい。
【0015】
これによって、原料中の糖(6炭糖、5炭糖など)は分解され、乳酸が生成する。
式(i)は、ホモ乳酸発酵による6炭糖分解反応を示し、式(ii)は、ホモ乳酸発酵による5炭糖分解反応を示す。
C6H12O6 → 2CH3CH(OH)COOH ・・・ (i)
3C5H10O5 → 5CH3CH(OH)COOH ・・・ (ii)
なお、この工程では、ヘテロ乳酸発酵を行う乳酸発酵微生物を使用することもできる。
【0016】
乳酸発酵時には、乳酸の生成により発酵液のpHが低下するため、アンモニア等の塩基を用いて発酵液を中和する。
アンモニアは、水溶液の状態(アンモニア水)で使用し、発酵液のpHを中性領域(好ましくはpH6〜8)に保つように供給するのが好ましい。
これによって、乳酸がアンモニアと反応し、乳酸アンモニウムが生成し、乳酸アンモニウムを含む発酵液(乳酸アンモニウム溶液)が得られる。
発酵液は、遠心分離、膜分離などによって菌体を分離するのが好ましい。
【0017】
(3)エステル化工程
この工程では、乳酸発酵工程で得られた乳酸アンモニウムをエステル化する。エステル化により生成する反応蒸気中のアンモニア濃度を調整するため、エステル化に先だって、溶液中の乳酸アンモニウムを濃縮するのが好ましい。濃縮された溶液中の乳酸アンモニウム濃度は、70〜85質量%とするのが好ましい。乳酸アンモニウムを濃縮する手段としては、多重効用管や、薄膜蒸留器を挙げることができる。濃縮にあたっては、乳酸のラセミ化を避けるため、加熱温度を130℃未満にするのが好ましい。
【0018】
図1は、本実施形態の製造方法を実施可能な製造装置を示すもので、この製造装置は、乳酸アンモニウムをエステル化させるエステル化反応器1と、反応器1で生成した反応蒸気を冷却する中間冷却器4と、中間冷却器4を経た反応蒸気の液成分(分離液)とガス成分(分離ガス)とを分離する気液分離器5と、分離ガスを冷却し液化する主冷却器6と、分離液を冷却する分離液冷却器7と、分離液中のアルコールと水とを分離する分離液側分液器8と、主冷却器6で得られたアンモニア水とアルコールとを分離する分離ガス側分液器9とを備えている。
【0019】
図1に示すように、乳酸アンモニウム溶液である発酵液を、経路L1を通してエステル化反応器1に供給するとともに、反応器1にアルコールを添加し、これらを加熱する。
アルコールとしては、炭素数が4以上であるものを用いるのが好ましい。
特に、炭素数が4であるもの(C4アルコール)または炭素数が5であるもの(C5アルコール)を用いるのが好ましい。
炭素数が4未満であるアルコールを用いる場合には、このアルコールが水に混和しやすいため、後述する分液工程において水とアルコールとを分離するのが難しくなる。
一方、炭素数が5を越えるアルコールを用いる場合には、生成する乳酸エステルが高沸点となるため、乳酸エステルを蒸留などにより精製するのが難しくなる。
【0020】
C4またはC5アルコールとしては、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、t−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、活性アミルアルコール、ジエチルカルビノール、t−ブチルカルビノールを例示できる。
【0021】
アルコールの添加量は、溶液(発酵液)中の乳酸アンモニウムに対して1〜10倍(好ましくは1.5〜4倍)(モル基準)とするのが好適である。
アルコールの添加量は、アルコールを乳酸アンモニウム溶液に添加して得られる混合物中の水とアルコールの比率が、水:アルコール=1:1〜1:1000(重量基準)となるように設定するのが好ましい。
【0022】
反応器1における加熱温度は、100〜170℃(好ましくは120〜150℃)とするのが好適である。
この加熱によって、発酵液中の乳酸アンモニウムはエステル化し、乳酸エステルが生成する。
例えばアルコールとしてブチルアルコールを用いる場合には、乳酸アンモニウムがブチルアルコールによってエステル化され、乳酸ブチルが生成する。
【0023】
生成した乳酸エステルを含む反応液は、経路L2を通して回収される。
乳酸アンモニウムのエステル化に伴って生成するアンモニアは、アルコールおよび水(水蒸気)とともに気相中に放出され、反応蒸気として蒸留器2に導入される。蒸留器2では、アルコールと水の一部が液化して反応器1に戻される。
【0024】
本実施形態では、乳酸アンモニウム溶液を連続的に反応器1に供給し、かつ乳酸エステルを含む反応液を連続的に反応器1から取り出す連続式プロセスを採用することが好ましい。なお本発明では、回分式プロセスを採用することもできる。
【0025】
(4)中間冷却工程
蒸留器2を経た反応蒸気は、凝縮器3を経て、経路L3を通して中間冷却器4に導入され、ここで冷却される。
中間冷却器4での冷却温度は、反応蒸気中のアンモニアの大部分(好ましくは90質量%以上)が気相中に留まり、かつ気液分離器5で得られる分離ガス中のアンモニアの大部分(好ましくは90質量%以上)が主冷却器6(主冷却工程)で水に溶解するように設定するのが好ましい。
例えば、この冷却温度は、分離液中のアンモニア濃度が3質量%以下となり、かつ分離ガス中のアンモニア濃度が30質量%以下となるように設定するのが好ましい。
【0026】
この冷却温度は、反応蒸気の露点より1〜10℃低い温度(好ましくは露点より1〜5℃低い温度)に設定するのが好ましい。
この冷却温度は、具体的には、常圧条件において80〜120℃(好ましくは86〜112℃)とするのが好ましい。また圧力1kg/cm2Gの条件では100〜140℃が好ましい。また圧力2kg/cm2Gの条件では110〜155℃が好ましい。
【0027】
冷却温度が上記範囲を下回る場合には、気液分離器5で分離される分離ガス中のアルコールおよび水の量が少なくなり、アンモニアがこれらアルコールおよび水に十分に溶解しなくなり、分液器9からの排出ガス中にアンモニアが混入するおそれがある。
また、アンモニアが水に溶解する量が多くなり、気液分離器5で分離される分離液中へのアンモニア混入量が多くなる。
一方、冷却温度がこの範囲を越える場合には、分離ガスを主冷却器6で冷却する際に、アンモニアが水に溶解しにくくなるため、アンモニアを十分に水に溶解させるために必要な温度が低くなることから、冷却に要するエネルギーコストが上昇する。
また、気液分離器5において分離液として分離されるアルコールと水の量が少なくなり、これらアルコールおよび水を再利用することによるコスト削減効果が小さくなる。
【0028】
中間冷却器4では、反応蒸気中のアルコールの一部と水の一部が液化する。一方、アンモニアの大部分は水に溶解せず、気相中に留まる。
【0029】
(5)気液分離工程
中間冷却器4で液化したアルコールと水を含む反応蒸気は、気液分離器5に導入される。
気液分離器5では、液化したアルコールおよび水を含む液成分(分離液)と、アンモニア、アルコールおよび水を含むガス成分(分離ガス)とが分離される。中間冷却工程においてアンモニアの大部分が気相中に留まるため、分離液は、アンモニア濃度が低いものとなる。
【0030】
(6)主冷却工程
気液分離器5で得られた分離ガスは、経路L4を通して主冷却器6に導入され、ここで冷却される。
主冷却器6での冷却温度は、分離ガス中のアルコールおよび水の大部分が凝縮(液化)し、かつアンモニアの大部分が水に溶解する温度とされる。
この冷却温度は、5〜50℃とすることができる。
冷却温度がこの範囲を下回る場合には、冷却に要するエネルギーコストが高くなるため好ましくない。
冷却温度がこの範囲を越えると、アンモニアが十分に水に溶解せず、分液器9からの排出ガス中にアンモニアが混入するおそれがある。
【0031】
主冷却器6では、分離ガス中のアルコールおよび水の大部分が凝縮(液化)するとともに、この凝縮水にアンモニアの大部分が溶解する。
このため、アンモニア水とアルコールとが、いずれも液の状態で得られることになる。
【0032】
(7)分離液側分液工程
気液分離器5で得られた分離液は、経路L5を通して分離液冷却器7に導入され、ここで冷却される。
分離液冷却器7での冷却温度は、分離液中のアルコールと水とが混和せず、2相に分離する温度とされる。
この冷却温度は、40〜80℃とするのが好ましい。
冷却温度がこの範囲を下回る場合には、冷却に要するエネルギーコストが高くなるため好ましくない。
冷却温度がこの範囲を越えると、分液器8において、分離液中のアルコールと水とが十分に分離できなくなり、分離されたアルコールおよび水の純度が低くなる。
【0033】
分離液冷却器7を経た分離液は、経路L6を通して分離液側分液器8に導入され、上相側のアルコールと下相側の水とに分離する。
中間冷却工程においてアンモニアの大部分が気相中に留まるため、この分液工程で分離されるアルコールおよび水は、アンモニア濃度が低いものとなる。
例えばアルコール中のアンモニア濃度は1質量%以下となり、水中のアンモニア濃度は3質量%以下となる。
【0034】
また、このアルコールおよび水は、中間冷却器4での冷却で得られた分離液をさらに分離液冷却器7で冷却して得られたものであるため、互いに混和しにくく、分液器8で十分に分離される。
このため、水の混入量が少ないアルコールが得られる。例えばアルコール中の水の濃度は、10mol%以下となる。
【0035】
上相側のアルコールは、アンモニア濃度が低いため、経路L7を通して反応器1に戻し、エステル化反応に用いられるアルコールとして再利用することができる。これによって、アルコール使用量を削減し、低コスト化を図ることができる。
下相側の水は、経路L8を通して系外に導出される。この水は、アンモニア濃度が低いため、乳酸発酵工程において培地調製用の水として再利用することができる。
【0036】
(8)分離ガス側分液工程
主冷却器6で得られたアルコールとアンモニア水は、分離ガス側分液器9に導入され、それぞれ上相側および下相側に分離する。
上相側のアルコールは、経路L9を通して系外に導出される。アルコールのアンモニア濃度は、例えば15質量%未満となる。
下相側のアンモニア水は、経路10を通して系外に導出される。アンモニア水のアンモニア濃度は、例えば15〜30質量%となる。
このアンモニア水は、そのまま乳酸発酵工程における中和剤として再利用することができる。これによって、アンモニア使用量を削減し、低コスト化を図ることができる。
【0037】
本実施形態の製造方法では、主冷却工程に先だって、反応蒸気を冷却しアルコールと水の一部を液化させる中間冷却工程と、この工程を経た反応蒸気を、アルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、アルコールおよび水を含む分離ガスとに分離する気液分離工程とを行うので、以下に示す効果を得ることができる。
1)反応蒸気中のアンモニアを、アルコールおよび水とともに、分離ガスとして、分離液(アルコールと水)から分離することができる。
よって、主冷却器6において分離ガスを冷却することによって、アンモニアを水およびアルコールに溶解させた状態で得ることができる。
従って、アンモニア回収にあたってアンモニアを水に溶解させる設備(アンモニアスクラバーやコンプレッサ)が不要となり、設備コストを低く抑えることができる。
またこのアンモニア水を、そのまま乳酸発酵時の中和剤として再利用することができるため、乳酸発酵工程におけるアンモニア使用量を削減し、アンモニアに要するコストを低減することができる。
2)気液分離工程において、反応蒸気中のアルコールと水の一部を、低アンモニア濃度の分離液として分離することができるため、これらアルコールおよび水を再利用することができる。よって、さらなる低コスト化を図ることができる。
3)中間冷却器4で反応蒸気を冷却し、得られた分離液を分離液冷却器7でさらに冷却する、すなわち反応蒸気を2段階で冷却することによって、分離液中のアルコールと水を、分液器8で2相に分離しやすくすることができる。
従って、分液器8において、水の混入量が少ないアルコール、例えば水の濃度が10mol%以下であるアルコールを得ることができる。
この高純度アルコールを反応器1に戻すことによって、反応器1におけるエステル化反応を効率化することができる。
4)反応蒸気中のアンモニアを、ガス成分(分離ガス)として分離するので、分離ガス側分液工程(分液器9)において、高濃度のアンモニアを含むアンモニア水を得ることができる。例えばアンモニア濃度が15〜30質量%であるアンモニア水を得ることができる。
このため、これを乳酸発酵工程における中和剤として再利用する際に、少量のアンモニア水でpH調整が可能となることから、その取り扱いが容易となる。
【0038】
次に、本発明の製造方法の第2の実施形態を説明する。
図2に示す製造装置は、本実施形態の製造方法を実施可能な製造装置を示すもので、複数の反応ユニットU1〜Unを備えている。
第1反応ユニットU1は、反応器1と、中間冷却器4と、気液分離器5と、主冷却器6と、分離液冷却器7と、分離液側分液器8と、分離ガス側分液器9とを備えている。
第2反応ユニットU2は、精製反応器11と、第2中間冷却器14と、第2気液分離器15と、第2主冷却器16と、第2分離液冷却器17と、第2分離液側分液器18と、第2分離ガス側分液器19とを備えている。
最終反応ユニットUnは、反応ユニットU1〜Unのうち最終段に相当するもので、第(n−1)精製反応器21と、第n中間冷却器24と、第n気液分離器25と、第n主冷却器26と、第n分離液冷却器27を備えている。
反応ユニットU1〜Unの数(n)は、第1反応ユニットU1に供給される乳酸アンモニウム溶液の成分濃度や、要求される製品の純度などに応じて定められる。
【0039】
(1)第1反応ユニットU1における操作
本実施形態の製造方法では、第1の実施形態の製造方法と同様の加水分解工程、乳酸発酵工程を経て得られた乳酸アンモニウム溶液とアルコールを、エステル化反応器1内で加熱し、乳酸アンモニウムをエステル化する(エステル化工程)。
乳酸エステルを含む反応液は、経路L2、冷却器20、経路L11を経て第2反応ユニットU2に供給される。
【0040】
反応器1からの反応蒸気は、熱交換器10で冷却された後、中間冷却器4でさらに冷却される。
中間冷却器4での冷却温度は、第1の実施形態の方法と同様に、反応蒸気中のアンモニアの大部分が気相中に留まり、かつ分離ガス中のアンモニアの大部分が主冷却器6(主冷却工程)で水に溶解する温度とするのが好ましい。
この冷却温度は、例えば反応蒸気の露点より1〜10℃低い温度(好ましくは露点より1〜5℃低い温度)、具体的には常圧条件において80〜120℃(好ましくは86〜112℃)とするのが好ましい。
中間冷却器4では、反応蒸気中のアルコールの一部と水の一部が液化する一方、アンモニアの大部分は水に溶解せず、気相中に留まる(中間冷却工程)。
【0041】
中間冷却器4で液化したアルコールと水を含む反応蒸気は、気液分離器5に導入され、アルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、アルコールおよび水を含む分離ガスとに分離される(気液分離工程)。
【0042】
気液分離器5で得られた分離ガスは、主冷却器6で冷却される。冷却温度は、5〜50℃とするのが好ましい。
これによって、アルコールおよび水の大部分が凝縮(液化)するとともに、この凝縮水にアンモニアの大部分が溶解する(主冷却工程)。
【0043】
気液分離器5で得られた分離液は、分離液冷却器7で、好ましくは40〜80℃に冷却されて分液器8に導入され、上相側のアルコールと下相側の水とに分離する。
上相側のアルコールは、経路L7を通して反応器1に戻され、下相側の水は経路L8を通して系外に導出される(分離液側分液工程)。
【0044】
主冷却器6で得られたアルコールとアンモニア水は、分液器9に導入され、上相側および下相側に分離する。
上相側のアルコールは、経路L9を通して系外に導出され、下相側のアンモニア水は、経路10を通して系外に導出される(分離ガス側分液工程)。
【0045】
(2)第2反応ユニットU2における操作
第1反応ユニットU1から導出された反応液は、経路L11を通して精製反応器11に導入され、加熱される。加熱温度は、100〜170℃(好ましくは120〜150℃)とするのが好適である。
反応液中に不純物として含まれるアンモニア、アルコール、水(水蒸気)は、反応蒸気として気相中に放出される。
これによって、反応液中の乳酸エステルの純度が高められる。この反応液は、経路L12を通して次の反応ユニットに供給される(精製工程)。
【0046】
反応蒸気は、蒸留器12、凝縮器13を経て第2中間冷却器14に導入され、ここで冷却される。
中間冷却器14での冷却温度は、第1反応ユニットU1の場合と同様に、反応蒸気中のアンモニアの大部分が気相中に留まり、かつ分離ガス中のアンモニアの大部分が主冷却器16(主冷却工程)で水に溶解する温度とするのが好ましい。この冷却温度は、例えば反応蒸気の露点より1〜10℃低い温度(好ましくは露点より1〜5℃低い温度)、具体的には常圧条件において80〜120℃(好ましくは86〜112℃)とするのが好ましい。
中間冷却器14では、反応蒸気中のアルコールの一部と水の一部が液化する一方、アンモニアの大部分は水に溶解せず、気相中に留まる(第2中間冷却工程)。
【0047】
中間冷却器14で液化したアルコールと水を含む反応蒸気は、第2気液分離器15に導入され、アルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、アルコールおよび水を含む分離ガスとに分離される(第2気液分離工程)。
【0048】
気液分離器15で得られた分離ガスは、第2主冷却器16で冷却される。冷却温度は、5〜50℃とするのが好ましい。
これによって、アルコールおよび水の大部分が凝縮(液化)するとともに、この凝縮水にアンモニアの大部分が溶解する(第2主冷却工程)。
【0049】
気液分離器15で得られた分離液は、第2分離液冷却器17で好ましくは40〜80℃に冷却されて第2分離液側分液器18に導入され、上相側のアルコールと下相側の水とに分離する。
上相側のアルコールは、経路L13を通して反応器11に戻される。
第1反応ユニットU1において反応器1に戻されるアルコール量が少ない場合、または分液器18で得られた上相側のアルコール中のアンモニア濃度が高い場合には、分液器18で得られたアルコールを、経路L14、L7を通して、第1反応ユニットU1の反応器1に返送してもよい。
分液器18で得られた下相側の水は経路L15を通して系外に導出される(第2分離液側分液工程)。
【0050】
主冷却器16で得られたアルコールとアンモニア水は、第2分離ガス側分液器19に導入され、それぞれ上相側および下相側に分離する。
上相側のアルコールは、経路L16を通して系外に導出され、下相側のアンモニア水は、経路17を通して系外に導出される(第2分離ガス側分液工程)。
【0051】
(3)最終反応ユニットUnにおける操作
最終反応ユニットUnに供給された反応液は、経路L21を通して第(n−1)精製反応器21に導入され、加熱される。加熱温度は、100〜170℃(好ましくは120〜150℃)とするのが好適である。
反応液中のアンモニア、アルコール、水(水蒸気)は、反応蒸気として気相中に放出される。
これによって、反応液中の乳酸エステルの純度がさらに高められる。この反応液は、経路L22を通して回収される(第(n−1)精製工程)。
【0052】
反応蒸気は、蒸留器22、凝縮器23を経て第n中間冷却器24に導入され、ここで冷却される。
中間冷却器24での冷却温度は、第1反応ユニットU1の場合と同様に、分離液中にアンモニアがほとんど混入せず、しかも分離ガス中のアンモニアが主冷却器26で十分に水またはアルコールに溶解できる温度とする。
この冷却温度は、例えば反応蒸気の露点より1〜10℃低い温度(好ましくは露点より1〜5℃低い温度)、具体的には常圧条件において80〜120℃(好ましくは86〜112℃)とするのが好ましい。
中間冷却器24では、反応蒸気中のアルコールの一部と水の一部が液化する一方、アンモニアの大部分は水に溶解せず、気相中に留まる(第n中間冷却工程)。
【0053】
中間冷却器24で液化したアルコールと水を含む反応蒸気は、第n気液分離器25に導入され、液化したアルコールと水とを含む分離液と、分離ガスとが分離される(第n気液分離工程)。
【0054】
気液分離器25で得られた分離ガスは、主冷却器26で冷却される。冷却温度は、5〜50℃とするのが好ましい。
これによって、分離ガスは凝縮(液化)する。分離ガスは大部分がアルコールであるため、凝縮したアルコールが経路23を通して回収される(第n主冷却工程)。
【0055】
気液分離器25で得られた分離液は、大部分がアルコールであるため、そのまま第n分離液冷却器27を経て、経路L24を通して反応器21に戻される。
この最終反応ユニットUnよりも前段に位置する反応ユニットにおいて反応器に戻されるアルコール量が少ない場合、または気液分離器25で得られた分離液(アルコール)中のアンモニア濃度が高い場合には、このアルコールを、この前段反応ユニットの反応器に返送してもよい。
図示例では、分離液を経路L25、L13を通して第2反応ユニットU2の反応器11に戻すことができる。
【0056】
本実施形態の製造方法では、第2反応ユニットU2以降の反応ユニットにおいて、エステル化工程で得られた反応液を加熱することによって、反応液中に不純物として含まれるアンモニアとアルコールと水とを反応蒸気として放出させる精製工程を行うので、純度の高い乳酸エステルを得ることができる。
【0057】
【実施例】
(試験例1〜9)
図1に示す製造装置を用いて、次に示すようにして乳酸エステルの製造を行った。
澱粉系材料であるトウモロコシ澱粉を、αアミラーゼとともに水に分散させた後、この混合物を、105℃になるまで水蒸気を注入して加熱した。
混合物から固形分を分離することによって、液状の分解物を得た(加水分解工程)。
この分解物を、滅菌処理した後、乳酸発酵微生物(ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei))を接種して乳酸発酵させ、発酵液を得た。乳酸発酵時には、アンモニア水を中和剤として用いて発酵液のpHを7.0に維持した(乳酸発酵工程)。
発酵液は、11質量%の乳酸アンモニウムを含むものとなった。
発酵液を、菌体分離後、濃縮し、85質量%の乳酸アンモニウム溶液(濃縮液)とした。
【0058】
濃縮液500mlとn−ブチルアルコール(以下、ブタノールという)290gを反応器1内で加熱し、乳酸アンモニウムをエステル化した。加熱温度は150℃とし、加熱時間は50時間とした。
乳酸エステルを含む反応液は、経路L2を通して回収した(エステル化工程)。
【0059】
反応器1からの反応蒸気を中間冷却器4に導入し、常圧条件で冷却した。冷却温度は表1に示すとおりとした(中間冷却工程)。
中間冷却器4を経た反応蒸気を気液分離器5に導入し、液成分(分離液)とガス成分(分離ガス)とに分離した(気液分離工程)。
【0060】
気液分離器5で得られた分離液を、分離液冷却器7で50℃に冷却した後、分液器8に導入し、上相側のブタノールと下相側の水とに分離させ、上相側のブタノールを反応器1に戻し、下相側の水を系外に導出した(分離液側分液工程)。
【0061】
気液分離器5で得られた分離ガスを、主冷却器6に導入し冷却した。冷却温度は、10℃とした(主冷却工程)。
主冷却器6で得られたブタノールとアンモニア水を、分液器9に導入し、上相側および下相側に分離させ、上相側のブタノールおよび下相側のアンモニア水を系外に導出した(分離ガス側分液工程)。
【0062】
分離液側分液器8で得られたブタノールと水のアンモニア濃度を表1に示す。分離ガス側分液器9で得られたブタノールおよびアンモニア水のアンモニア濃度を表1に併せて示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、中間冷却器4における冷却温度を86℃とする試験例5では、アンモニアを含む排出ガスが発生せず、しかも低アンモニア濃度のブタノールおよび水を回収することができたことがわかる。
【0065】
(試験例10〜17)
試験例1〜9と同様にして、原料の加水分解および乳酸発酵を行い、得られた発酵液を、菌体分離後、濃縮し、74質量%の乳酸アンモニウム溶液(濃縮液)を得た。
濃縮液1000mlとブタノール7000gの混合物を反応器1内で加熱し、乳酸アンモニウムをエステル化した。加熱温度は150℃とした。
反応器1中の混合物の反応最終段階での反応蒸気(水分濃度0.5質量%)を、中間冷却器4に導入し、常圧条件で冷却した。冷却温度は表2に示すとおりとした(中間冷却工程)。
中間冷却器4を経た反応蒸気を気液分離器5に導入し、液成分(分離液)とガス成分(分離ガス)とに分離した(気液分離工程)。
気液分離器5で得られた分離液は、大部分がブタノールであったため、分離液冷却器7で70℃に冷却した後、そのまま反応器1に戻した。
【0066】
気液分離器5で得られた分離ガスを、主冷却器6に導入し冷却した。冷却温度は、10℃とした(主冷却工程)。
主冷却器6で得られたブタノールとアンモニア水を、分液器9に導入し、上相側のブタノール、および下相側のアンモニア水を系外に導出した(分離ガス側分液工程)。
【0067】
分離液側分液器8で得られたブタノールのアンモニア濃度を表2に示す。
分離ガス側分液器9で得られたブタノールおよびアンモニア水のアンモニア濃度を表2に併せて示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2より、中間冷却器4における冷却温度を110〜114℃とする試験例14〜16、特に試験例15では、アンモニアを含む排出ガスが発生せず、しかも低アンモニア濃度のブタノールを回収することができたことがわかる。
【0070】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、主冷却工程に先だって、反応蒸気を冷却しアルコールと水の一部を液化させる中間冷却工程と、この工程を経た反応蒸気を、アルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、アルコールおよび水を含む分離ガスとに分離する気液分離工程とを行うので、反応蒸気中のアンモニアを、アルコールおよび水とともに、分離ガスとして、分離液(アルコールと水)から分離することができる。
よって、主冷却工程において分離ガスを冷却することによって、アンモニアを水およびアルコールに溶解させた状態で得ることができる。
従って、アンモニア回収にあたってアンモニアを水に溶解させる設備(アンモニアスクラバーやコンプレッサ)が不要となり、設備コストを低く抑えることができる。
またこのアンモニア水を、そのまま乳酸発酵時の中和剤として再利用することができるため、乳酸発酵工程におけるアンモニア使用量を削減し、コストを低減することができる。
また、気液分離工程において、反応蒸気中のアルコールと水の一部を、低アンモニア濃度の分離液として分離することができるため、これらアルコールおよび水を再利用することができる。よって、さらなる低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の乳酸エステルの製造方法の第1の実施形態を実施可能な製造装置を示す概略構成図である。
【図2】 本発明の乳酸エステルの製造方法の第2の実施形態を実施可能な製造装置を示す概略構成図である。
【図3】 従来の乳酸エステルの製造方法の一例を実施可能な製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1・・・エステル化反応器、4・・・中間冷却器、5・・・気液分離器、6・・・主冷却器、8・・・分離液側分液器、9・・・分離ガス側分液器、11、21・・・精製反応器、14・・・第2中間冷却器、15・・・第2気液分離器、16・・・第2主冷却器、18・・・第2分離液側分液器、19・・・第2分離ガス側分液器
Claims (8)
- 原料を乳酸発酵させるとともに、生成した乳酸をアンモニアで中和して乳酸アンモニウム溶液を得る乳酸発酵工程と、
乳酸発酵工程で得られた乳酸アンモニウム溶液に炭素数4または5のアルコールを添加し加熱することによって、乳酸アンモニウムをエステル化させて乳酸エステルを含む反応液を得るエステル化工程と、
エステル化工程で生成したアンモニアと上記アルコールと水とを含む反応蒸気を冷却し、上記アルコールと水の一部を液化させる中間冷却工程と、
中間冷却工程で液化した上記アルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、上記アルコールおよび水を含む分離ガスとを分離する気液分離工程と、
気液分離工程で得られた分離ガスを冷却することによって液化し、アンモニアと水を冷却することにより得られたアンモニア水と上記アルコールとを得る主冷却工程とを有することを特徴とする乳酸エステルの製造方法。 - 中間冷却工程における冷却温度を、反応蒸気中のアンモニアの90質量%以上が気相中に留まり、かつ分離ガス中のアンモニアの90質量%以上が主冷却工程で水に溶解する温度とすることを特徴とする請求項1記載の乳酸エステルの製造方法。
- 中間冷却工程における冷却温度を、反応蒸気の露点より1〜10℃低い温度に設定することを特徴とする請求項1または2記載の乳酸エステルの製造方法。
- 中間冷却工程における冷却温度を、常圧条件において80〜120℃に設定することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の乳酸エステルの製造方法。
- 気液分離工程で得られた分離液中の上記アルコールと水とを分離する分離液側分液工程を行い、得られた上記アルコールをエステル化工程に供給することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の乳酸エステルの製造方法。
- 主冷却工程で得られたアンモニア水と上記アルコールとを分離する分離ガス側分液工程を行い、得られたアンモニア水を、乳酸発酵工程における中和剤として使用することを特徴とする請求項5記載の乳酸エステルの製造方法。
- エステル化工程で得られた反応液を加熱することによって、反応液中に不純物として含まれるアンモニアと上記アルコールと水とを反応蒸気として放出させる精製工程と、
精製工程で放出された反応蒸気を冷却し、上記アルコールと水の一部を液化させる第2中間冷却工程と、
第2中間冷却工程で液化した上記アルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、上記アルコールおよび水を含む分離ガスとを分離する第2気液分離工程と、
第2気液分離工程で得られた分離ガスを冷却することによって液化し、アンモニア水と上記アルコールとを得る第2主冷却工程とを有することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載の乳酸エステルの製造方法。 - 乳酸発酵で生成した乳酸をアンモニアで中和して得られた乳酸アンモニウム溶液に、炭素数4または5のアルコールを添加し加熱することによって、乳酸アンモニウムをエステル化させて乳酸エステルを得るエステル化反応器と、
エステル化反応器で生成したアンモニアと上記アルコールと水とを含む反応蒸気を冷却し、上記アルコールと水の一部を液化させる中間冷却器と、
中間冷却器で液化した上記アルコールおよび水を含む分離液と、アンモニア、上記アルコールおよび水を含む分離ガスとを分離する気液分離器と、
気液分離器で得られた分離ガスを冷却することによって液化し、アンモニア水と上記アルコールとを得る主冷却器とを有することを特徴とする乳酸エステルの製造装置。
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