JP4156737B2 - 制震壁を備える構造物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地震時に地震による振動を減衰させることができる制震壁および制震壁を備える構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の制震壁1は、図12に示されるように下層階の梁や床等の水平構造部材2に取り付けられた容器3と、容器3内に間隔を有して非接触状態に位置し上層階の梁等の水平構造部材4に取り付けられて容器内を移動可能な内板5と、容器3内に収納された粘性流体6とから構成されている。そして、地震等により上下の水平構造部材4、2間に振動による相対運動が発生すると粘性流体6内を内板5が左右に移動し、このときの粘性抵抗により振動が減衰されて制震するものである。また、制震壁を備える構造物は前記の制震壁1が柱7、7、梁2、4から構成される構造物の上下の梁2、4間に設置され、多層階の構造物の場合は各階に設置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した制震壁および制震壁を備える構造物においては、以下のような問題があった。すなわち、図12において地震等の振動により構造物の各階において、上部の水平構造部材である梁4と、下部の梁2との間の変位差により例えばQ、Qという力が生ずると、制震壁1においては粘性流体6中を内板5が水平方向に移動し、その粘性抵抗により地震による振動を減衰させる。このとき容器3に対して内板5が例えば右方向に移動すると、内部の粘性流体6を介して容器3には面方向に時計回転方向の回転力Mが作用し、この反力として上下の梁4、2には上下方向に剪断力Rが生ずる。この剪断力Rは、前記した場合には制震壁1の左側では下向きに作用し、制震壁1の右側では上向きに作用する。そして、相対運動の方向が逆の場合は、制震壁1の左側では上向きに作用し、制震壁1の右側では下向きに作用する。
【0004】
この上下方向に作用する剪断力Rが大きいと、梁の設計が困難となる問題点があるため、多層の構造物においては制震壁を各階に設置する場合、剪断力Rの一部が互いに打ち消されるように、図12(c)のように制震壁1を互い違いに配置して設計する。しかしながら、この場合でも中央部の剪断力R1〜R4は上下方向で打ち消されても、左側および右側の剪断力R1〜R4は依然として残り、左側の下向きの合力F1=2(R2+R4)、右側の上向きの合力F2=2(R1+R3)は梁に作用して地中梁等の地中構造物にも作用するため、制震壁1の設計の重要なポイントとなる。制震壁1はその減衰能力が大きいほど剪断力Rは大きくなり、特に制震壁の内板が3枚ともなり減衰効果が大きいものとなると、剪断力Rが極めて大きくなるため、梁の設計は極めて困難となる問題点がある。
【0005】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、梁に作用する剪断力Rを両外側の支持部材により負担させることにより梁の強度計算が容易となり、梁の設計が容易となるばかりでなく、構造物の本柱の鉛直力負担も減少させて梁の小型化が達成でき、設計が容易となる制震壁および制震壁を備える構造物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明に係る制震壁を備える構造物は、垂直構造部材、水平構造部材および平行する水平構造部材間に位置する制震壁とから構成され、前記制震壁は下層階の水平構造部材に固定され上方が開口し内部に粘性流体が注入された容器と、上層階の水平構造部材に固定され前記容器内に位置し粘性流体中を移動可能である内板とから構成され、前記容器の両外側に垂直荷重を支持し水平方向の移動を許容する滑り機構を有する支持部材を備えることを特徴とする。
【0008】
支持部材は鉄骨より形成される添え柱を基本形とし、支持部材がコンクリート材、鉄骨コンクリート材より構成され、容器の被覆を兼ねることも考えられる。水平構造部材は制震壁を支持するフレーム部材と、垂直構造部材から延在する突出部材とを連結して構成してもよく、フレーム部材と突出部材とは連結ピンにより連結されるように構成してもよい。
【0009】
前記のように構成された制震壁および制震壁を備える構造物によれば、制震壁に地震等による相対運動が加わると制震壁の容器に面方向の回転力が発生し、この回転力を阻止する垂直荷重である剪断力が梁に生ずるが、この剪断力は支持部材により負担されるため、梁の設計が容易となるとともに梁の小型化が達成できる。また、支持部材は水平方向の移動は許容されるため制震壁の機能を阻害することは無い。
【0010】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1(a)は本発明に係る制震壁および制震壁を備える構造物の一実施形態の要部正面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図、図2(a)は図1(a)の要部拡大正面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図、図3(a)は図2(a)のC−C線断面図、図3(b)は図2(a)のD−D線断面図である。
【0011】
図1〜3において、構造物10は垂直構造部材である柱12、水平構造部材である下層階の梁14、上層階の梁16および平行する水平構造部材である梁14、16間に位置する制震壁20とから構成されている。本実施形態では、柱12は四角型鋼、梁14、16はH型鋼が用いられている。制震壁20は下層階の水平構造部材である梁14に固定され上方が開口し内部に粘性流体21が注入された容器22と、上層階の水平構造部材である梁16に固定され容器22内に位置して粘性流体21中を移動可能である内板30とから構成されている。粘性流体21はポリイソブチレン等の高粘度の流体が用いられる。制震壁20は構造物が多層階の場合には各階の所定位置に設置されるものであり、本実施形態では制震壁20の下層階側に制震壁20Aが、上層階側に制震壁20Bが設置されている。
【0012】
容器22は所定の間隔をもって対向する1対の平板23、24と、1対の平板の両端部を閉じる1対の側板25、25および底部を閉じる底板26とから形成され、上部が開口しており上部の開口部には1対のフランジ板27、27が固着されて補強されている。このフランジ板27、27の部分は幅広であり、粘性流体21の溜部となっている。なお、制震壁20の容器22は下層階の梁14に固定される例を示したが、1階に制震壁20を設置する場合は、容器22は1階の床等の水平構造部材に固定されるものである。
【0013】
内板30は厚さが10〜15mm程度の鋼板から構成され、内板30と1対の平板23、24との間に数mm〜5mm程度の間隙が形成され、この間隙に粘性流体21が注入され、内板30は粘性流体21内を面方向に水平に移動可能な構成である。このように制震壁20は構成され、地震等により上層階の構造部材である梁16と下層階の構造部材である梁14との間に相対的な運動が加わると容器22内の粘性流体21中を内板30が移動し、そのときの粘性抵抗により地震による振動を減衰させるものである。
【0014】
制震壁20の容器22の両外側には支持部材である添え柱35、36が溶接等により固着して備えられ、添え柱35、36の下端は梁14に溶接等により固着され、添え柱35、36と上層階の梁16との間に垂直荷重を支持し水平方向の移動を許容する滑り機構40が設けられている。すなわち、容器22の側板25、25の外側には、四角型鋼である添え柱35、36が溶接等により固着されており、添え柱35、36は下層階の梁14と上層階の梁16との間に位置して圧縮、引張りの鉛直力を負担するものである。添え柱35、36の上部には、柱材の内面に嵌合する短い継ぎ柱37が位置しており、制震壁20の設置時には伸長可能であるが、設置後は溶接等により固着されるものである。
【0015】
滑り機構40は、図2、3に詳細に示されるように、添え柱35、36の上端と上層階の梁16との間に位置し、添え柱35、36の上端に固着された下方プレート41と、梁16の下面に固着された上方プレート42とが滑り板43、43を介して対接し、下方プレート41と上方プレート42とを4本のボルト44およびナット45等の結合部材で結合している。滑り板43はステンレス板、テフロン板等の表面が円滑な薄板が使用され、1枚あるいは複数枚が介在され、制震壁20の地震時の水平移動を妨げないように構成されている。
【0016】
上方プレート42にはボルトが貫通する円形の貫通孔が穿設され、下方プレート41にはボルト44が貫通するとともに、ボルト44が梁16の長手方向に沿って移動可能である長孔46が穿設されている。ボルト、ナットは2枚の下方プレート41と上方プレート42とを緊結するものでなく、下方プレート41が移動可能な状態にダブルナット45、45により緩み止めされた状態で固定され、梁14、16に作用する圧縮、引張りの鉛直力を負担することができる。なお、上方プレート42の上面には筒状部材47が固着され、ボルト44の頭部を梁16のフランジ部から離すことにより、ボルト44、ナット45の結合を容易にしている。
【0017】
本発明に係る制震壁および制震壁を備える構造物は前記した構成であり、以下に動作について図1〜3および図4を参照して説明する。図4は図2(a)の移動状態を示す要部拡大正面図である。構造物10に地震等の振動が作用し、例えば下層階の梁14に対して上層階の梁16が右方向に移動する変位差により力Q1が加わると、滑り機構40は図4に示されるように梁16が右方向に平行移動する。梁16の平行移動により梁16に固着された制震壁20の内板30は容器22内の粘性流体21中を移動し、このときの粘性抵抗により地震による平行移動の振動を減衰させる。
【0018】
上方プレート42は上方の梁16とともに移動するが、下方プレート41は添え柱35、36により固定されているため移動せず、図4に示されるような状態となる。すなわち、ボルト44、ナット45が長孔46内を移動し、この移動は滑り板43により円滑に行われる。このため、制震壁20の容器22に対する内板30の移動が妨げられることはなく、確実な制震作用が行われる。
【0019】
制震壁20の上方の梁16が下方の梁14に対して、前記のように例えば右方向に移動するような相対運動が作用すると、制震壁20の容器22には時計回転方向の回転力M1が作用し、左方の添え柱35には上向きの力が作用して上下の梁16、14の左側部分には垂直荷重として下向きの剪断力R1が生ずる。また、右方の添え柱36には下向きの力が作用して上下の梁16、14の右側部分には垂直荷重として上向きの剪断力R2が生ずる。相対運動が左方向の場合は、前記の逆で、左方の添え柱35には上向きの剪断力R1が生じ、右方の添え柱36には下向きの剪断力R2が生ずる。
【0020】
しかしながら、これらの下向きの剪断力R1、上向きの剪断力R2は、添え柱35、36により負担されるため梁の強度を増大させる必要はない。このように、制震壁20の振動減衰に伴う剪断力R1、R2は添え柱35、36により負担されるため、制震壁の減衰性能を大きくしても梁の強度を極端に大きくする必要はなく、梁の設計が容易となる。また、本柱である柱12は、添え柱35、36により鉛直力負担が減少するので、等しい強度で設計する場合は細い柱材を使用することができて材料の節約が達成でき、同じ柱材を使用する場合は強度を増大することができる。
【0021】
本発明に係る制震壁20および制震壁を備える構造物10は前記したような構成を有するものであり、制震壁は構造物が高層の場合は図5に示されるように設置される。図5(a)は制震壁を備える4階建の構造物の要部正面図、図5(b)は制震壁を備える6階建の構造物の要部正面図である。図5(a)は制震壁20が図1に示されるように各階の同一個所に設置された例であり、地震等により構造物に例えば右方向の変位差により力Q2が作用すると、左側の添え柱35には下向きの剪断力R1〜R4が作用し、右側の添え柱36には上向きの剪断力R1〜R4が作用する。そして、これらの合力F3、F4=2(R1+R2+R3+R4)は地中梁等の地中構造部材に作用し、左側の添え柱に対応して下向きの合力F3が、右側の添え柱に対応して上向きの合力F4が作用する。従って地中構造部材はこれらの合力に耐える強度を有するものである。
【0022】
図5(b)は制震壁20が各階に互い違いに設置された例であり、制震壁は奇数階には左側に、偶数階には右側に設置され、奇数階の右側の添え柱と偶数階の左側の添え柱とが一直線上に位置するように設置されている。そして、1、3、5階には2、4、6階の制震壁の右側の添え柱に対応して一直線上に3本の間柱48が設置され、2、4階には1、3、5階の制震壁の左側の添え柱に対応して一直線上に2本の間柱49が設置されている。
【0023】
地震等により構造物の上辺に例えば右方向の変位差により力Q3が作用すると、各階の制震壁20には左側の添え柱35に下向きの剪断力R1〜R6が生じ、右側の添え柱36には上向きの剪断力R1〜R6が生ずる。そして、梁の中央側の剪断力、すなわち1、3、5階の下向きの剪断力R1、R3、R5と、2、4、6階の上向きの剪断力R2、R4、R6とは打ち消され、1、3、5階の左側の下向きの剪断力2(R2+R4+R6)と、2、4、6階の右側の上向きの剪断力2(R1+R3+R5)が残る。
【0024】
このため地中構造物には、左側の添え柱に対応して下向きの剪断力の合力F5=2(R2+R4+R6)が間柱49を介して作用し、右側の添え柱に対応して上向きの剪断力の合力F6=2(R1+R3+R5)が間柱48を介して作用する。この例の場合は中央よりの剪断力が打ち消されるため、前記した図5(a)のような同一個所に制震壁20を設置する場合と比較して地中構造物に作用する合力が小さくなり、地中構造物の強度を低下させても問題ない。このように図5(a)、(b)の例において剪断力は梁には作用せず、直接、地中構造物に作用するため梁の強度計算が容易となり設計が容易となるとともに、梁の小型化が達成できる。
【0025】
つぎに本発明に係る制震壁を備える構造物の他の実施形態について、図6、7を参照して説明する。図6は本発明に係る制震壁を備える構造物の他の実施形態の要部正面図、図7(a)は図6のE−E線に沿う拡大断面図、図7(b)は連結ピンの他の実施形態の分解断面図である。この実施形態において、前記した実施形態と実質的に同等の構成については同一の参照符号を付して、詳細な説明は省略する。垂直構造部材である柱12、12間を連結する水平構造部材は、制震壁20の上部に位置し内板30を支持するフレーム部材50と、柱12から延在する突出部材51(一方のみ図示)とを連結ピン55により連結して構成される。突出部材51は柱12に溶接される根元部の高さが大きく、先端に向かって高さが小さくなるように下辺が傾斜している。そして、突出部材51の先端部には2枚のプレート52、52が溶接等により固着され、これらのプレートには連結ピン55が挿入される通孔が穿設されている。
【0026】
フレーム部材50は通常使用されるH型鋼より小形のH型鋼が使用され、両端部に連結ピン55が挿入される通孔が穿設されており、フレーム部材50の通孔とプレート52、52の通孔とを貫通して連結ピン55が挿入されている。フレーム部材50と図示していない下層階のフレーム部材との間に制震壁20が設置され、その容器22は下層階のフレーム部材に固定され、その内板30はフレーム部材50に固定されている。また、容器22の両側部に固着された添え柱35は、下端が下層階のフレーム部材に固着され、上端は滑り機構40を介して上層階のフレーム部材50に連結されている。このようにフレーム部材50は上下方向の鉛直力が圧縮、引張りとも添え柱35により負担されているため、小形のH型鋼を使用することができる。滑り機構40は前記した実施形態と実質的に同一の構成である。
【0027】
連結ピン55は中央の円柱状の胴部56と、その両側に位置する胴部より大径の円板部57、57およびこれらを結合するボルト58、ナット59とから構成され、フレーム部材50とプレート52、52の通孔に挿入されて両者を連結している。通孔の内径は胴部56の外径より僅かに大きく設定され、胴部56の幅はフレーム部材50の中央ウェブの厚さとプレート52、52の厚さとの和より僅かに大きく設定されているため、プレート52、52に対してフレーム部材50は連結ピン55部分において回転できる構成となっている。
【0028】
図6、7に示される実施形態において地震等の振動が構造物に作用すると、制震壁は振動の相対運動により容器22に対して内板30が平行移動し、そのときの粘性抵抗力により振動を減衰させる。この平行移動は添え柱35とフレーム部材50との間の滑り機構40により円滑に行われる。そして、この平行移動により容器22に回転力が作用すると、これに対抗して剪断力が梁に生ずるが、この剪断力は添え柱35により負担される。このため、梁の設計が容易となり、梁の小型化も達成することができる。この例においては、梁はフレーム部材50と突出部材51とをプレート52、52を介して連結ピン55により連結した構成であり、梁は連結ピン55部分で回転可能であるため、地震等に対してより柔軟に対応できる。
【0029】
連結ピンは前記した例の代わりに図7(b)に示されるものでもよい。即ち、連結ピン60は胴部61と、2枚の円板部62、62およびこれらを結合する皿ねじ63、63とから構成され、胴部61の中心には皿ねじ63、63が螺合される雌ねじ部が形成されている。この連結ピン60においても前記した連結ピン55と同様にフレーム部材50と突出部材51とを回転可能に連結することができる。なお、フレーム部材50と突出部材51との連結は、通常のハイテンションボルトにより回転不能に連結するように構成してもよい。
【0030】
つぎに添え柱をコンクリートにより構成した制震壁および制震壁を備える構造物の実施形態について図8〜10を参照して説明する。図8はコンクリート製の添え柱を備える制震壁の水平方向の要部断面図、図9は他のコンクリート製の添え柱を備える制震壁の水平方向の要部断面図、図10は図9の制震壁の製造方法を示す工程図である。図8は左右対称の概略半分を示しており、図8において、制震壁20は前記実施形態と同様に、容器22と、容器内に注入された粘性流体21と、粘性流体中を平行移動可能な内板30とから構成されている。そして、容器22の面方向の端部にコンクリート製の添え柱70が固着され、この添え柱70と一体のコンクリートにより容器の平板面を被覆部71が被覆している。添え柱70は前記した各実施形態と同様に、上層階の梁と下層階の梁との間に滑り機構(図示せず)を介して設置され、梁に作用する鉛直方向の引張り、圧縮方向の剪断力を負担するものであり、前記した各実施形態と同様の作用効果を奏するものである。
【0031】
図9も左右対称の概略半分を示しており、図9において、制震壁20の容器22の面方向の端部にコンクリート製の添え柱75が固着され、容器22の平板に対して両側に発泡ポリスチレン等の断熱材76が配置され、制震壁20の粘性流体21の温度上昇を防止するものである。この断熱材76を配置することによりコンクリートの被覆部77は添え柱75の幅と同じとなり、制震壁20部分と添え柱75がフラットな状態となる。この例の場合も前記した図8の例と同様の作用効果を奏するものであり、この例ではさらに、制震壁20の断熱性能を向上させることができる効果を奏する。
【0032】
図9のコンクリート製の添え柱75の製法について、図10を参照して説明する。先ず、(a)に示されるように制震壁20の容器22内に容器がつぶれるのを防止するために仮板80を挿入し、容器22の平板の外側に断熱材76、76を配置して型枠81を設置し、型枠81内にコンクリート82を充填する。次いで(b)に示されるように、型枠81を外すとともに仮板80を外し、容器22内に粘性流体21を注入する。そして、(c)に示されるように、容器22の粘性流体21内に内板30を挿入してコンクリート製の添え柱75付き制震壁が完成する。
【0033】
図11を参照して、コンクリート製の添え柱に鉄骨を挿入した鉄骨コンクリート製の添え柱の例を説明する。図11(a)はその一部を破断した状態の正面図、(b)は(a)のF−F線断面図、(c)は滑り機構を示す要部展開斜視図、(d)は(a)のG−G線に沿う要部断面図である。下部の水平構造部材はコンクリート製の床85であり、上部の水平構造部材はコンクリート製の床86である。床85、86にはH型鋼の補強梁87、88が埋め込まれており、これらの補強梁間に制震壁20が設置されている。制震壁20は前記した実施形態と同等の構成をしており、容器22と、容器内に注入された粘性流体21と、粘性流体中を平行移動可能な内板30とから構成されている。そして、容器22の両外側にH型鋼の添え柱90、90が固着されている。
【0034】
添え柱90と下方の床85に埋め込まれた補強梁87とは溶接等により固着されており、添え柱90と上方の補強梁88とは垂直荷重を支持し水平方向の移動を許容する滑り機構92により連結されている。すなわち、滑り機構92は上方の補強梁88の両端部に形成された水平方向に長い長孔93と、添え柱90の上端に固着され補強梁88のウェブに対接する2枚の滑り板94、94と、これらの滑り板間に支持され長孔93に挿入される移動ピン95とから構成される。補強梁88の両端部の下方のフランジは、滑り板94、94が移動可能なように長手方向に貫通溝が形成されている。添え柱90、90および制震壁の容器22はコンクリート96により被覆されており、容器22の一方の平板に対接して断熱材97が配置されている。
【0035】
地震等が発生して下方の床85に埋め込まれた補強梁87と上方の床86に埋め込まれた補強梁88との間に相対運動が発生すると、制震壁20の容器22および補強梁87に固着された添え柱90、90に対し、上方の補強梁88が滑り機構92を介して移動する。すなわち、2枚の滑り板94、94が補強梁88のウェブに対して移動し、移動ピン95は長孔93内を移動する。このように上方の補強梁88は添え柱90、90に対して相対的に平行移動可能であるため、制震壁20の内板30は容器22内を円滑に平行移動でき、そのときの粘性抵抗で地震の振動を減衰させる。この減衰により容器22に生ずる回転力に対抗して補強梁87、88に生ずる剪断力は圧縮、引張りとも添え柱90、90により負担されるため、補強梁を含めた床の設計が容易となり、梁の小型化も可能となる。
【0036】
なお、コンクリート製の添え柱は前記した例の他に、鉄筋コンクリート製の添え柱であってもよいのは勿論である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、制震壁および制震壁を備える構造物は、梁に作用する剪断力を両外側の支持部材により負担させることにより梁の強度計算が容易となり、梁の設計が容易となるばかりでなく、構造物の本柱の鉛直力負担も減少させて梁の小型化が達成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る制震壁および制震壁を備える構造物の一実施形態の要部正面図、(b)は(a)のA−A線断面図、である。
【図2】(a)は図1(a)の要部拡大正面図、(b)は図2(a)のB−B線断面図である。
【図3】(a)は図2(a)のC−C線断面図、(b)は図2(a)のD−D線断面図である。
【図4】図2(a)の移動状態を示す要部拡大正面図である。
【図5】(a)は制震壁を備える4階建の構造物の要部正面図、(b)は制震壁を備える6階建の構造物の要部正面図である。
【図6】本発明に係る制震壁を備える構造物の他の実施形態の要部正面図である。
【図7】(a)は図6のE−E線に沿う拡大断面図、(b)は連結ピンの他の実施形態の分解断面図である。
【図8】コンクリート製の添え柱を備える制震壁の水平方向の要部断面図である。
【図9】他のコンクリート製の添え柱を備える制震壁の水平方向の要部断面図である。
【図10】図9の制震壁の製造方法を示す工程図である。
【図11】(a)は鉄骨コンクリート製の添え柱付き制震壁を備える構造物の一部を破断した状態の正面図、(b)は(a)のF−F線断面図、(c)は滑り機構を示す要部展開斜視図、(d)は(a)のG−G線に沿う要部断面図である。
【図12】(a)は従来の制震壁および制震壁を備える構造物の要部正面図、(b)は(a)の中央縦断面図、(c)は従来の制震壁を互い違いに配置した状態の構造物の要部正面図である。
【符号の説明】
10 構造物
12 垂直部材(柱)
14 下層階の水平部材(梁)
16 上層階の水平部材(梁)
20 制震壁
21 粘性流体
22 容器
23、24 平板
25 側板
26 底板
27 フランジ板
30 内板
35、36 添え柱
37 継ぎ柱
40 滑り機構
41 下方プレート
42 上方プレート
43 滑り板
44 ボルト
45 ナット
46 長孔
47 筒状部材
48、49 間柱
50 フレーム部材
51 突出部材
52 プレート
55、60 連結ピン
56、61 胴部
57、62 円板部
58 ボルト
59 ナット
63 皿ねじ
70、75 添え柱
71、77 被覆部
76 断熱材
80 仮板
81 型枠
82 コンクリート
85、86 床
87、88 補強梁
90 添え柱
92 滑り機構
93 長孔
94 滑り板
95 移動ピン
96 コンクリート
97 断熱材

Claims (6)

  1. 垂直構造部材、水平構造部材および平行する水平構造部材間に位置する制震壁とから構成され、前記制震壁は下層階の水平構造部材に固定され上方が開口し内部に粘性流体が注入された容器と、上層階の水平構造部材に固定され前記容器内に位置し粘性流体中を移動可能である内板とから構成され、前記容器の両外側に垂直荷重を支持し水平方向の移動を許容する滑り機構を有する支持部材を備えることを特徴とする制震壁を備える構造物。
  2. 支持部材は鉄骨より形成される添え柱であることを特徴とする請求項1記載の制震壁を備える構造物。
  3. 支持部材はコンクリート材より構成され、容器を被覆することを特徴とする請求項記載の制震壁を備える構造物。
  4. 支持部材は鉄骨コンクリート材より構成されることを特徴とする請求項記載の制震壁を備える構造物。
  5. 水平構造部材は制震壁を支持するフレーム部材と、垂直構造部材から延在する突出部材とを連結して構成されることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の制震壁を備える構造物。
  6. フレーム部材と突出部材とは連結ピンにより連結されることを特徴とする請求項記載の制震壁を備える構造物。
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