JP4154490B2 - ガスケット - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車等に搭載されたエンジンにおけるカバー部材と相手部材との密封をなさしめる密封材に関し、具体的にはカバー部材へ削設された環状溝とガスケットとの装着構造の改良に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、自動車等に搭載されるエンジンのヘッドカバーとかオイルパン等のカバー部材とブロック部材を密封するガスケットとしては、合成ゴム、コルクあるいは合成樹脂等の弾性体で形成された角あるいは丸形状等の断面形状を持つ環状のガスケットが用いられることが知られている。
これらのガスケットは、カバー部材に削設された環状溝に多くの部分が挿入着され、露出した部分の底面が相手部材に接して、ボルト等の締付け具によってこれを締付け圧縮せしめると、その圧縮弾性変形をもって互いの部材に強く密着し、ここで求められる密封作用を働かせている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような環状のガスケットは昨今の自動ロボットによる組付け作業性とか締付け時の倒れ込み防止などの要求に対応出来得ない。
すなわち、昨今の軽量化要求に対応して前記環状のガスケットは細身で縦長のＯリング形状に形成されており、このようなガスケットはその細身形状から確実で迅速にカバー部材の環状溝へ装着し難く、また、該ガスケットがカバー部材へ装着され締付け具によって締め付け（締付けトルク５０〜１００ｋｇｆ−ｃｍ程度）られると、該ガスケットは縦長形状ゆえ該環状溝の外方部で変形し易く、横方向に倒れ込み締込みされ易いものとなっている。
【０００４】
さらにエンジンの組立ラインでは、カバー部材に取付けた後該カバー部材を反転せしめて組付けるため、脱落防止手段が不充分な場合ではガスケットの脱落、ズレによるシール不良、あるいはもっと重大な破損に至る場合も有り、作業性が簡便で確実な装着構造が求められていた。
【０００５】
さらに昨今では前記事態から一歩進み、エンジン組立ラインにおいて環状ガスケットを取付け作業ロボットなどを用いてカバー部材へ自動装着する要求さえ起きており、形状維持性の悪い細身の環状ガスケットではこれに対処することができない。
以下、図面を参照しつつ詳述する。
【０００６】
この取扱性の向上においては、図５に示す実開平２−３１９６０号公報で示されたような、ガスケット本体の非シール部分にインサート板材５を埋め込んで、ある程度の剛性を付与せしめたガスケット４が提案されている。
しかしながら、このガスケット４はインサート板材５の埋め込みによってその剛性を高め形状の維持をなさしめる他には有用な作用を発揮し得ず、配置形状あるいはシール材料によっては締込みによる圧縮変形時に該インサート板材５の埋設縁部から亀裂を起こしシール作用に悪影響を及ぼす大きな欠点を有するものであった。
本発明はこのような欠点に鑑み、そのシール性能を高めると共に装着・取扱性をも向上せしめるガスケットを提供することを目的としている。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明を図面に基づいて説明すると、図１に示すように自動車用エンジン等のカバー部材１（例えばシリンダヘッドカバー）とブロック部材２（例えばシリンダヘッドとかシリンダブロック）との間に装着され、該両部材１、２間の密封をなす弾性体例えば合成ゴム材あるいは合成樹脂材等からなったガスケット３であって、図４に示すように前記カバー部材１へ削設した環状溝１１を底部・口部とも大きく溝幅の異ならない深溝形状とし、これに挿入するガスケット３を、挿入先部ａが一定幅で細く挿入基部ｂが一定幅で太い段差の有る幅寸法に形成せしめて前記挿入先部と前記挿入基部が前記環状溝内に装着されることを特徴としている。
【０００８】
また、前記カバー部材１とブロック部材２との間に装着されるガスケット３´を、図１に示すように挿入先部ａ´が一定幅で細く挿入基部ｂが一定幅で太い複数の段差のある幅寸法に形成せしめることも特徴としている。
【０００９】
【発明の実施の態様】
本発明は、上記した構造をもって下記に示す優れた作用をなす。
すなわち、本発明のガスケット３あるいは３´は、前記したように挿入先部ａが一定幅で細く挿入基部ｂが一定幅で太い段差をもった形状に造形され、この挿入先部と挿入基部がカバー部材１の深溝形状をした環状溝１１へ装着されるものであり、図１及び図４に示すように前記カバー部材１を締付けることによって前記ガスケット３あるいは３´はブロック部材２に挟まれ弾性変形するが、まず挿入先部ａが変形し始め、その変形量が許容値に近づくと次の段部へ変形を移し徐々に環状溝１１の側壁に密着していくもので、あくまでカバー部材１の環状溝１１内で段階的に圧縮を受け止め変形するよう構成されている。
ここでガスケット３あるいは３´の倒れ込みあるいは圧縮偏り、横流れ、変形不良、など全ての締込み不備が解消され、均一の圧縮量（密着量）を保つことができるものとなる。
【００１０】
【実施例】
本発明を実施するに、前記ガスケット３あるいは３´の挿入先部ａと挿入基部ｂは、図１に示すように複数の段差のある段々形状に配置して複数回段階的に効率よく圧縮を受け止める構造が本発明の作用を際立たせるが、図４で示すような挿入先部ａと挿入基部ｂが単数の単純な段差形状では変形替わり部分が少ないのでガスケット材の変形歪み量を抑えることができると共に、環状溝１１内面への密着性も向上するなど他の利点を有するので、要求される性能に応じて選択し対処すれば良い。
【００１１】
また、本発明では、図２及び図３で示すようなガスケット（ここでは３´を示す）の挿入先部ａへ環状溝１１の溝幅以上に突出する脱落防止突起３１を部分的に数箇所設けることもでき、該脱落防止突起３１は前記環状溝１１の側壁に圧着してブロック部材２へのカバー部材１の装着時にガスケット３あるいは３´の脱け落ちの防止を図るが、この脱落防止突起３１ではガスケット３あるいは３´の挿入先部ａが挿入基部ｂの溝幅より狭く形成されているので環状溝１１の内部に多くの空間を持っており、よって前記環状溝１１の側壁に該脱落防止突起３１が圧着しても変形自由度が高くその変形は他部分にあまり影響を与えないものとなり、ここでガスケット３あるいは３´の上下面の接触面圧を均一に保たせる作用をなさしめる。
【００１２】
なお、本発明のガスケット３あるいは３´は、前記したように挿入先部ａが一定寸法で細く挿入基部ｂが一定寸法で太い段差をもって形成されているので、装着時には前記細い一定寸法を持つ挿入先部ａをガイドとしてカバー部材１の環状溝１１へ極めてスムースに装着せしめることが可能となり、これに続く挿入基部ｂも前記挿入先部ａに引っ張られて環状溝１１内へ入り込むから装着不備の恐れが全くないものとなる。
そして、挿入基部ｂにあっては前記環状溝１１に近い幅寸法を有するものであるので充分なボリュームを保持するものとなり、このボリュームが該ガスケット３あるいは３´に剛性と安定性を与えるから、エンジン組立ラインでの自動取付け作業ロボットなどの採用を可能にし、一方、締込みにおいて前記安定性をもって倒れ込みによる装着不備を防止する作用を表わす。
【００１３】
ここで用いるガスケット３あるいは３´の材料としては、ゴム材や熱硬化性エラストマー・樹脂材等が挙げられ、例えばゴム材を挙げれば、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、
エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム等が採用可能である。
【００１４】
【発明の効果】
本発明によると、ガスケット３あるいは３´を上記したような段構造に形成することにより環状溝１１へ装着時とか締め付け過程でその姿勢を正確に保持せしめて倒れ込みを防止することができ、また、圧縮時に変形自由度のある空間を有しているのでガスケットの内部応力を均一にでき、応力緩和を減少させてシール寿命を大きく延ばすことができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の取付けられた実施例を示す部分断面図
【図２】 本発明のガスケットの実施例を示す断面図
【図３】 図２で示した平面図
【図４】 本発明の取付けられた実施例を示す部分断面図
【図５】 従来の構造の断面図
【符号の説明】
１ カバー部材
２ ブロック部材
３ ガスケット
３´ ガスケット
４ 従来の構造のガスケット
５ インサート板材

Claims (1)

1. カバー部材の密封面へ削設した環状溝に装着し、該カバー部材とブロック部材とを密封するガスケットにおいて、
   前記カバー部材の環状溝を、当該環状溝の幅寸法が底部と口部とで大きく異ならない形状とし、
   当該環状溝に挿入される前記ガスケットは、
   前記カバー部材とブロック部材とが締め付けられた際に、当該ガスケットを構成する先端側の挿入先部と、当該挿入先部の基端に連続する基端側の挿入基部とが、前記環状溝内に装着されるものであって、
   前記挿入先部は、その先端側から当該挿入先部の基端に向かって一定の幅を有し、
   前記挿入基部は、前記挿入先部の基端に連続する側から当該挿入基部の基端に向けて一定の幅であって前記挿入先部の幅寸法より太く、前記環状溝の幅寸法に近い幅寸法で
   段差のある幅寸法に形成されていて、
   前記ガスケットの挿入先部と挿入基部とが前記環状溝内に装着される際に、
   前記挿入先部の先端が前記環状溝の底面に接触し、
   前記ガスケットは前記環状溝内で段階的に圧縮を受け止め変形する
   ことを特徴とするガスケット。

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