JP4154399B2 - 接点部材、コネクタ、及び接点部材の表面改質方法 - Google Patents
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Description
スポット溶接やシーム溶接などの抵抗溶接で使用される電極チップ(ノズル)の表面硬さや耐摩耗性、電気的特性を改善する方法が特許文献1に示されている。この従来技術は硬度1000Hv、粒径75〜300μの粒子を噴射速度180m/sec以上で5〜15秒噴射して、非鉄金属に衝突(ショット)させ電極表面付近を再結晶化温度以上に上昇及び常温への冷却を反復し、電極表面部に再結晶層を生じさせて金属組織を微細化している。この回復、再結晶の過程を経て格子欠陥が消減してゆき、機械的性質及び電気的性質が変化することも示されている。
更に動力伝達軸、歯車などの動力伝達用機械部品の疲労強度を高めるため、被処理網をオーステンパー処理し、ベイナイト組織とした後、ショット径0.6〜0.8mm、投射速度35〜50m/s、投射時間5〜40msで第1のショットピーニングを施して深い表面加工層を形成し、この中温域からのショットピーニングの後、第2のショットピーニングを、同一条件、好ましくはショット径0.3〜0.5mmと1回目より小さい粒径で行って、表面の圧縮残留応力をさらに向上させ、表面粗さの良好な製品とすることが特許文献4に示されている。
特許文献1に示す技術は技術分野が異なり、粒子衝突(ショット)処理をしているが1回の処理だけであるため、電気的接触性の改善が十分とはいえない、また耐蝕については記載がないが、これも1回の処理では十分なものになるとは考えられない。
特許文献2及び3に示す技術は技術分野及び目的が異なり、電気的接触性の改善が得られているか不明であり、しかもいずれも1回の粒子衝突処理をするものであり、接点部材にこの技術を適用しても十分な電気的接触性及び耐蝕性は得られないと考えられる。
この発明による方法は導電性金属材よりなる被改質基材に、衝突(ショット)させても割れることがない材質であり、被改質基材の表面の凹凸の曲率と同程度以上の曲率の球状粒子を被改質基材表面に衝突(ショット)させて1回目の改質処理を行い、その後、被改質基材に衝突(ショット)させても割れることがない材質であり、かつ、前記1回目の改質処理後の前記被改質基材の凹凸の曲率よりも小さい曲率の球状粒子を、被改質基材の前記1回目の改質処理がされた表面に衝突(ショット)させて2回目の改質処理を行う。
この発明の方法によれば1回目の改質処理により全表面がアモルファス化され、かつ凹凸の曲率が小さくなり、この状態に対し、2回目の改質処理に平坦化されるため、耐蝕性が強く、かつ電気的接続性が良好であり、しかも大型設備を必要としない。
まず図1を参照してこの発明方法を実施するための基材表面改質装置の構成の概略を説明する。
処理室11内にステージ12が設けられ、ステージ12上に接点部材として使用される導電性金属材料の被改質基材(サンプル)13が配置される。この場合例えばステージ12上に基準位置乃至複数の基準点が設けられ、被改質基材13をステージ12上に位置決めして配置することができるようにされている。
処理室11外にノズル駆動装置31が設けられ、ノズル駆動装置31より可動体32が突出され、可動体32は2次元座標(平面)上の任意の位置にノズル駆動装置31内の駆動機構により移動させられるものである。可動体32に連結棒33の一端が固定され、連結棒33の他端は処理室11に形成された孔11aを通じて処理室11内に挿入され、その挿入端部にノズル15が取付けられる。制御装置34からの電気的制御信号がケーブル35を通じてノズル駆動装置31に入力され、その制御信号に基づき、ノズル駆動装置31が制御され、ノズル駆動装置31は可動体32を移動させ、ノズル15がステージ12上、従って被改質基材13上の前記制御信号に応じた位置に移動するように、ステージ12上の基準と可動体32の2次元上の移動位置との関係が予め対応付けられている。ノズル駆動装置31はいわゆるXYステージ駆動装置31と同様な機構である。
この発明では第1改質処理をした後第2改質処理を行う。 第1改質処理においては、被改質基材13自体の表面凹凸の曲率と同程度以上の曲率の球状粒子14を用いる。改質処理前の被改質基材13自体の表面には細かい凹凸や結晶粒界、構造欠陥が現われているが、ここではこれら全てを含めて凹凸と云う。この凹凸の凹部分の、基材13の表面における形状の最も間隔が小さい長さと同程度以下の直径の球状粒子が用いられる。
換言すれば、被改質基材13自体の凹凸面における最も大きい曲率と同程度以上の曲率をもつ球状粒子14が用いられる。また粒子14としては被改質基材13に高速で衝突させても割れることなく運動エネルギーを被改質基材13へ有効に伝えられる、比較的破壊靭性が高い、例えばアルミナ粒子が用いられる。
このことは次のことから理解される。例えば約200m/sの高速粒子を3μsごとにns幅のパルスとして試料表面に連続衝突させた際の温度分布数値解析結果は図2に示すようになる(雑誌「表面技術」52巻、2号、1995年、江上登著“微粒子高速度衝突による表面改質材の疲労強度特性”参照)。つまり粒子14を連続的にノズル15から噴射させても例えば図3に示すように粒子14がばらばらに基材13の表面に衝突し、被改質基材13上の各微小衝突点では1μm以下の極表面近傍において1000K/μs以上の急熱・急冷過程が例えば3μs程度ごとに繰り返されている。なお図2中パラメータZは表面からの深さである。
このようにした状態でこの発明では更に第2改質処理を行う。この第2改質処理では、第1改質処理に用いた粒子14より大きい径、更に正しくは第1改質処理された被改質基材13の表面の凹凸の曲率より小さい曲率の球状粒子を被改質基材13の第1改質処理された表面に高速衝突させる。この場合の粒子14に対する条件は粒子の径が異なるだけでその他は第1改質処理における条件と同一であり、粒子としては例えばアルミナ粒子が用いられる。
このように第1改質処理よりも曲率が小さい曲率の粒子14が被改質基材13に衝突されると、第1改質処理と同様のメカニズムにより、アモルファス化され耐蝕性があり、しかも被改質基材13の表面部の曲率の大きな凹凸部が少なくなり、平坦化され、接触抵抗が小さくなる。
第2改質処理では、前述したように粒子14は大きい程、平坦度がよくなる。しかし現実的には入手し易い粒子、ノズル15の内径などの点で制限される。
燐青銅を被改質基材(以下単にサンプルと書く)として、以下の異なる4条件で比較実験を実施した。粒子14としては比較的破壊靭性の高いアルミナ粒子を使用し、また粒子14の形状をサンプル表面を蝕刻しないように球に近いものとした。ノズル26aの直径を1.5mm、粒子噴射圧力を8kg/cm2、噴射時間を1分間、室温の大気を圧縮して粒子を噴射した。なお処理を行う場合は粒子14の径を変更するのみで他の条件は同一とした。
条件1 直径20μmの粒子による1回の処理のみ(比較例)
条件2 直径50μmの粒子による1回の処理のみ(比較例)
条件3 直径50μmの粒子で処理した後、直径20μmの粒子で再処理(比較例)
条件4 直径20μmの粒子で処理した後、直径50μmの粒子で再処理(この発明の実施例1)
これら各条件で表面改質処理した後、その処理された各サンプルに対し、耐蝕性の条件評価として48時間の塩水噴霧試験を行った。なお表面改質処理を全く行っていない燐青銅基材(サンプル)に対してこの塩水噴霧試験を行った。この場合は表面が完全にさび、かつ接触抵抗が大幅に劣化した。これより、この噴霧試験により表面改質による耐蝕性向上効果を確認することができる。
条件3のサンプルは1回目の処理で平坦化されるが、条件2と同様に小さな凹部が残り、しかも2回目の処理により新たな表面凹凸が形成され、これが原因で接触性が悪くなるだけでなく、腐蝕も生じ破線43に示すように接触抵抗が劣化したと考えられる。
なお条件4のサンプルに対する図4に示した断面図の場合、不動態層13b1の厚さは
10Å以下、アモルファス化層13b2は10Å以上であり、これと結晶微細化層13b3との和、つまり表面改質層の厚さは10μm近くであった。
燐青銅の場合は表面改質前の表面凹凸、つまり結晶粒は10〜20μmであり、第1改質処理で最も小さい凹部、つまり最も大きい曲率の凹凸部分もアモルファス化する点から用いる粒子14の直径は20μm程度以下がよい。第2改質処理で用いる粒子14の直径は20μmより大きければよい。接点部材の基材としては燐青銅の他に黄銅、コルソン銅などでもよい。
次にこの発明によるコネクタの実施例を図7に示す。コネクタ(この例ではプラグ)51が配線基板50上に実装された例である。コネクタ51の直方体状ハウジング52が配線基板50上の1端縁に沿って取り付けられ、ハウジング52の前記1端縁において配線基板50と直角な面から、前述したこの発明により表面改質が行われたピン状接点53が2列、配線基板51よりその面と平行に外方に突出されている。これら各ピン状接点53は図示していないが配線基板50上の配線とそれぞれ接続される。
このコネクタによればその接点部材がこの発明により、表面改質されているから、良好な電気的接続が行われ、かつ耐蝕性に強く寿命が長いものとなる。なおコネクタとしてはピン接点が配線基板50と直角方向でもよく、接点配列数、接点数など各種のものにこの発明を適用できる。
Claims (3)
- 厚さが少なくとも10Åのアモルファス化層が基材の表面に形成され、
そのアモルファス化層の下には上記アモルファス化層に近づく程結晶粒が小さくなっており、
上記アモルファス化層の表面は、腐蝕の起点となる凹凸面より平坦化されていることを特徴とする接点部材。 - 導電性金属材よりなる被改質基材に、衝突させても割れることがない材質であり、上記被改質基材表面の凹凸の曲率と同程度以上の曲率の球状粒子をショットする第1改質工程と、
上記被改質基材に衝突させても割れることがない材質であり、前記第1改質工程後の前記被改質基材表面の凹凸の曲率より小さい曲率の球状粒子を、上記被改質基材の上記第1改質工程で処理された表面にショットする第2改質工程とを有する接点部材の表面改質方法。 - 請求項1記載の接点部材により構成された接触部を備えることを特徴とするコネクタ。
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