JP4153055B2 - 電磁波吸収炭素繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、電気機器、電子機器が発生する電磁波を吸収して、電磁波障害を排除するために、機器側に貼り付け、挾み込み及び反射させる物体の表面に貼り付ける炭素繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電気機器、電子機器から漏洩する電磁波が、他の機器に悪影響を及ぼす電磁波障害が問題となり、各国ともに基準を設けて漏洩する電磁波を規制している。コンピューター、衛星通信、衛星放送などの著しい発展に伴って、電磁波障害が更に厳しく規制される傾向にある。
電気機器、電子機器から漏洩して他に悪影響を与える電磁波障害には、空中に放射される輻射(ラディエーション)による障害と、電源電線を通じて逆流する伝導(コンダクション)による障害がある。
【0003】
前者の輻射を減らすためには、従来、電磁波を吸収する適当な材料がなかったため、漏洩させないために機器の電磁シールドを完全にすることが有効とされ、このために全体を金属板で覆い、金属板同士の隙間を無くして、電磁波を機器内部に封鎖し漏洩させない努力が払われてきた。
一方、後者の伝導による障害に対しては、漏洩する電磁波に対して高いインピーダンスを持つラインフィルターが電源電線に挿入されて、漏洩を極力減らす努力が払われてきた。
【0004】
しかし、電磁波を放射して調理に使う電子レンジなどでは、空中に放射する電磁波のエネルギーが極めて強く、漏洩する電磁波も強いので、有効な対策が確立されていない。従って、日本でも電子レンジの基本周波数である2,450メガヘルツ(水の分子の共振周波数)±50メガヘルツの帯域を、管理不能帯域として一般に解放している。
炭素繊維が飛来した電磁波を反射させずに吸収することを応用した例にステルス戦闘機、爆撃機がある。これらの機体構造には、金属を使わずに炭素繊維複合材を用いてある。表面には電磁波吸収塗料が塗布されている。
【0005】
しかし、使用されている炭素繊維は高強度、高弾性の特性を持つ、黒鉛繊維(グラファイト ファイバー)なので、反射が大きく要求を完全には満たしていない。電磁波吸収塗料も電磁波の周波数で共振するように磁性体の粒子の大きさや樹脂の弾性率を調整しなければならないので吸収は完全ではない。
このため、最近のステルス機では、吸収の限界を解決できないので、止むを得ず反射面を極力小さくした多面形状とするなどの工夫が凝らされている。
このような状況から、現在でも電磁波を吸収する技術は確立されていないことが判る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、電気機器、電子機器から漏洩して空中に放射される電磁波を、機器の筐体内部で吸収して、他への電磁波障害を防止すること、および飛来した電波を反射させずに吸収し熱エネルギーに変換することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
課題を解決するための手段として、空中に放射された電磁波を物体に吸収させて、熱エネルギーに変換する方法があるが、優れた吸収特性を持ち、取り扱いが容易な材料がないので、本発明は、この目的のために特種な炭素繊維を開発することによって課題を解決するための手段とした。
電磁波を吸収する物体として、数多くの物体が知られているが、最近ではフェライト粒子を混入させた塗料が、電磁波吸収塗料として有名になっているが、古くから、電磁波を完全に吸収する物体を理想黒体と呼んでいる。
理想黒体は、光、赤外線、電波など、あらゆる波長の電磁波を100%吸収する理想の材料とされているが、実在しない。
この理想黒体に最も近い性能を持つ材料は、木炭や消炭とされている。
木炭や消炭は容易に入手ができる反面、取り扱いは極めて困難なので、後に詳述する特殊な特性を持つ炭素繊維を開発して吸収体とした。
電磁波が飛来して理想黒体に衝突した場合、理想黒体は電磁波を反射せずに全てを吸収して熱に変換する。従って、電磁波を漏洩させる機器を理想黒体で覆えば、機器から放射される電磁波波は全て吸収されるので、電磁波障害を排除することができる。
電磁波が金属を始めとする通常の物体に衝突すると、物体に吸収されずに反射する。この反射の現象について、電磁学では、物体に入射した電磁波のエネルギーによって物体の表面に電流が流れ、その電流によって同じ波長の電波が放射される現象とされている。概念図を図8に示す。
従って、表面を流れる電流を捕らえて熱に変換できれば、電磁波の反射をなくすことができる。
表面を流れる電流は微量のため、従来の一般的な炭素繊維は電気抵抗値が極めて低いので吸収するエネルギー量(W=I2R)は少なかった。
物体の電気抵抗値を高くする必要があるが、吸収されるエネルギー量を最大にするには、電気抵抗の最適値を追求することが必要である。
本発明では、汎用を目的として、一般的な炭素繊維が持つ電気抵抗値の1,000倍を目標とした。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の目的に合わせて開発した電磁波吸収炭素繊維について説明する。
炭素繊維はPAN(ポリ アクリロ ニトリロ)などの高分子材料で作った連続繊維を焼成して作るのが一般的であり、焼成は酸化、炭素化、黒鉛化の順で進められる。
Figure 0004153055
現在、一般的に使われている炭素繊維は、黒鉛化を十分に進めて結晶分子の結合を密にした高強度、高弾性の特性を有していて、構造の軽量化に役立っている。
【0009】
このように、黒鉛化工程を進めて高強度、高弾性の特性を持たせた炭素繊維は黒鉛(グラファイト)繊維と呼ばれ、金属のように平滑な表面と、極めて低い電気抵抗値を持っている。
本発明の目的である電磁波の吸収を目的とした場合、
○高い電気抵抗値
○粗い表面
が必要となる。
【0010】
そこで、高い電気抵抗値を得るために、強度、剛性を犠牲にして、焼成工程を黒鉛化が進まない段階で止めることとした。
黒鉛化繊維の電気抵抗値は1.9×10−3 Ω・cmという低い値を持っている。
微細な電流値を持つ電磁波でも、エネルギーとして吸収するためには高い抵抗値がインピーダンスマッチングの点から必要で、このために焼成工程を種々調整した結果、最終的に1.8 Ω・cmと、通常の炭素繊維(黒鉛繊維)の1,000倍程度の抵抗値を持つ炭素繊維を得た。
本発明に関する研究で得られた焼成の進行度合と電気抵抗値の関係を図7に示す。
【0011】
電波は繊維の表面を流れるので、表面を粗にすることが高抵抗化に更に有効であるので、表面を活性化することとした。活性化の技術は、国内でも数社において既に開発されており、表面が粗となるに従って、表面面積は通常の繊維の500倍から5,000倍に達し、本発明の目的に合致する。
【0012】
電磁波吸収炭素繊維の特徴をまとめてみると、
○表面を活性化したので、通常の繊維の500倍から5,000倍の表面積を持つ。
○電気抵抗値は、通常の炭素繊維の1,000倍程度高いので、電磁波のエネルギーを熱エネルギーに効率よく変換するのに適している。
【0013】
更に、電磁波を吸収する材料の形態を研究した結果、吸収すべき電磁波の波長を基準として、全波長λ、1/2波長(λ/2)、1/4波長(λ/4)の長さに切断してアンテナ効果を発揮させたところ、電磁波が繊維の上で共振して吸収される効果を得た。
【0014】
【実施例】
図1は以上の工程により製造された炭素繊維を帯状に形成して電磁波吸収部材100を得る。
この電磁波吸収部材100は、吸収対象となる電磁波の波長をλとしたときに、波長の半分の長さの幅寸法を有する。
【0015】
図2に示す電磁波吸収部材200は、対角線の寸法が半波長となるものである。
【0016】
図3に示す電磁波吸収部材500は、第1の波長λ1の吸収部材400と第2の波長λ2の吸収部材を重ね合わせたものである。
【0017】
図4は以上のようにして得られた電磁波吸収部材600によってビル700の窓710の開口部を覆った状態を示す。電磁波吸収部材600の縦、横の寸法は全波長の半分に設定されており、アンテナ効果によって電磁波を吸収する。
【0018】
図5は飛行機800の機体805の外面に電磁波吸収炭素繊維シートを貼り付けて、電波の反射を小さくした例を示す。
【0019】
図6は電子機器の筐体900のコーナーに電磁波吸収炭素繊維を置いて、電波の漏洩を防いた例を示す。筐体900のコーナー910の内側に電磁波吸収炭素繊維920を貼り付けた構成(A)としたり、コーナー部材930内に電磁波吸収炭素繊維935を挾み込んだ構成(B)とする。
【0020】
【発明の効果】
従来、電磁波を吸収する適当な材料がなかったため、機器の中で発生する電磁波を機器の外部に漏れ出さないように努力が払われたが、吸収体がなければ熱に変換されることなく反射が繰り返されて、機器内には高いレベルの電磁波が蓄積される。
本発明の電磁波吸収炭素繊維を機器の筐体内部、あるいは漏洩の可能性がある隙間などに装着することによって、電磁波が吸収されて、他に障害を与えることを排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電磁波吸収部材の一例を示す説明図。
【図2】 本発明の電磁波吸収部材の他の例を示す説明図。
【図3】 本発明の電磁波吸収部材の更に他の例を示す説明図。
【図4】 ビルの窓に本発明の電磁波吸収シートを貼着した例を示す説明図。
【図5】 飛行機の機体外面に本発明の電磁波吸収シートを貼着した例を示す説明図。
【図6】 電子機器の筐体のコーナー部に電磁波吸収部材をとりつけた例を示す説明図。
【図7】 炭素繊維の焼成の進行度合と電気抵抗値の関係を示す説明図。
【図8】 本発明の原理を示す説明図。
【符号の説明】
100,200,500,600, 電磁波吸収部材
700 ビル
800 飛行機
900 筐体

Claims (3)

  1. 高分子材料製の連続繊維を焼成することによってつくられる炭素繊維であって、焼成工程を構成する酸化工程、炭化工程、黒鉛化工程のうちの黒鉛化工程を途中で停止することによって、中心値が1.8Ω・cmの抵抗値を有する炭素繊維を構成し、その表面に活性化処理を施して表面積を増加させ、アンテナ効果による電磁波吸収作用を有する炭素繊維を用意し、炭素繊維の長さを吸収すべき電磁波の波長に対して、全波長の長さに切断してつくられる電磁波吸収炭素繊維。
  2. 高分子材料製の連続繊維を焼成することによってつくられる炭素繊維であって、焼成工程を構成する酸化工程、炭化工程、黒鉛化工程のうちの黒鉛化工程を途中で停止することによって、中心値が1.8Ω・cmの抵抗値を有する炭素繊維を構成し、その表面に活性化処理を施して表面積を増加させ、アンテナ効果による電磁波吸収作用を有する炭素繊維を用意し、炭素繊維の長さを吸収すべき電磁波の波長に対して、1/2波長の長さに切断してつくられる電磁波吸収炭素繊維。
  3. 高分子材料製の連続繊維を焼成することによってつくられる炭素繊維であって、焼成工程を構成する酸化工程、炭化工程、黒鉛化工程のうちの黒鉛化工程を途中で停止することによって、中心値が1.8Ω・cmの抵抗値を有する炭素繊維を構成し、その表面に活性化処理を施して表面積を増加させ、アンテナ効果による電磁波吸収作用を有する炭素繊維を用意し、炭素繊維の長さを吸収すべき電磁波の波長に対して、1/4波長の長さに切断してつくられる電磁波吸収炭素繊維。
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