JP4151892B2 - 熱安定性の優れたd−アミノ酸オキシダーゼ、その遺伝子、組み換え体dna及び熱安定性の優れたd−アミノ酸オキシダーゼの製造法 - Google Patents

熱安定性の優れたd−アミノ酸オキシダーゼ、その遺伝子、組み換え体dna及び熱安定性の優れたd−アミノ酸オキシダーゼの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱安定性の優れたD−アミノ酸オキシダーゼ、その遺伝子、組み換え体DNA及び熱安定性の優れたD−アミノ酸オキシダーゼの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
D−アミノ酸オキシダーゼは、D−アミノ酸を酸化し、イミノ酸及び過酸化水素に変換する酵素であり、生成するイミノ酸は、非酵素的に加水分解されて対応するケト酸とアンモニアとなる。本酵素は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、昆虫、微生物等天然に広く存在することが知られている【非特許文献1参照】。
例えば、哺乳類由来のものとしては、ブタ腎臓由来【非特許文献2参照】,ヒト由来【非特許文献3参照】,ウサギ由来、ラット由来、マウス由来、モルモット由来等の報告がある。
また微生物由来としては、Rhodotorula属【特許文献1参照】,Trigonopsis属【特許文献2参照】,Aspergillus属【特許文献3参照】,Candida属【特許文献4参照】,【非特許文献4参照】,Fusarium属【特許文献5参照】,【特許文献6参照】,【特許文献7参照】,Gibberella属【特許文献8参照】,Rhodosporidium属【特許文献9参照】,Curvularia属【特許文献10参照】,Robillarda属【特許文献10参照】,Myrothecium属【特許文献10参照】,Pseudomonas属【特許文献11参照】,Shizosaccharomyces属等が知られている。
【0003】
なかでも哺乳類由来のD−アミノ酸オキシダーゼについては、ブタ腎臓由来,ヒト由来,ウサギ由来,ラット由来、マウス由来のアミノ酸配列が互いに高い相同性を有していることが知られている。例えば、ブタ由来D−アミノ酸オキシダーゼに対して、ヒト由来は84%、ウサギ由来は80%、ラット由来は78%、マウス由来は76%の相同性がある。【非特許文献5参照】
これらの酵素のなかにはすでに遺伝子のクローニングに成功し、組み換え体によって生産されている例もある【非特許文献6参照】,【特許文献12参照】。
本酵素は、産業上広く利用されており、例えば、D−アミノ酸の測定、DL−アミノ酸からのL−アミノ酸の製造【特許文献11参照】、2−オキソ酸の製造、抗生物質前駆体の製造【特許文献13参照】等に用いられる。なかでも近年、D−アミノ酸の測定については臨床診断における重要性が高まっている。例えば、腎疾患患者では血中D−アミノ酸量が高値であるという報告がある【非特許文献7参照】。
【0004】
また老化に伴い、レンズタンパク質あるいは脳中のD−アミノ酸が増加蓄積することが知られている【非特許文献8参照】,【非特許文献9参照】。
すでに、D−アミノ酸オキシダーゼを用いて酵素的にD−アミノ酸を測定する方法について検討されている【非特許文献7参照】。
しかしここで用いられている酵素は、ブタ腎臓由来であり、この酵素は、液状化した状態では不安定であるという欠点があった。そこで、体外診断薬あるいは測定試薬として処方するために、さらに熱安定性の優れた酵素の開発が強く求められていた。
酵素を安定化する技術としては、酵素タンパクをコードする遺伝子に変異を導入し、アミノ酸を1もしくは複数欠失、置換もしくは付加する遺伝子工学的手法が広く知られており、例えば、ホタルルシフェラーゼの耐熱性がアミノ酸変異により向上することが報告されている【特許文献14参照】,【特許文献15参照】。
しかしながら、D−アミノ酸オキシダーゼの遺伝子改変によるアミノ酸置換については、酵素の触媒機構の解明等を目的として行われた報告があるものの【非特許文献10参照】,【非特許文献11参照】,【非特許文献12参照】,【非特許文献13参照】,【非特許文献14参照】、耐熱性等の機能が向上したという例はなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−211890号公報
【特許文献2】
特公昭59−15635号公報
【特許文献3】
特開平9−75078号公報
【特許文献4】
特開昭55−23966号公報
【特許文献5】
特開平2−200181号公報
【特許文献6】
特開平10−52265号公報
【特許文献7】
特開平11−318439号公報
【特許文献8】
特開平11−318440号公報
【特許文献9】
特開平11−56362号公報
【特許文献10】
特開平7−274957号公報
【特許文献11】
特開平63−63377号公報
【特許文献12】
特開平6−90744号公報
【特許文献13】
特表2001−506868号公報
【特許文献14】
特開平5−244942号公報
【特許文献15】
特開2000−197487号公報
【非特許文献1】
J.Agric.Food Chem. 47,3457(1999)
【非特許文献2】
Biochim.Biophys.Acta,48,1(1961)
【非特許文献3】
FEBS Lett.238,180(1988)
【非特許文献4】
Biosci.Biotech.Biochem.65,627(2001)
【非特許文献5】
Biochim.Biophys.Acta,1395,165(1998)
【非特許文献6】
J.Biochem.119,1114(1996)
【非特許文献7】
Clin.Sci.73,105(1987)
【非特許文献8】
ファルマシア 32,1214(1996)
【非特許文献9】
J.Neurochem.48,510(1987)
【非特許文献10】
J.Biochem.131,59(2002)
【非特許文献11】
J.Biol.Chem.269,31666(1994)
【非特許文献12】
J.Biochem.109,171(1991)
【非特許文献13】
J.Biochem.105,1024(1989)
【非特許文献14】
FEBS Lett.238,269(1988)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、種々の用途、特に臨床診断に用いることのできる、水溶液中で熱安定性の優れたD−アミノ酸オキシダーゼを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者等は、前記課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、ブタ腎臓由来のD−アミノ酸オキシダーゼにおける特定のアミノ酸残基を特定のアミノ酸残基に置換することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
(1)アミノ酸が置換されたD−アミノ酸オキシダーゼであって、熱安定性がpH6.0において55℃, 15分の熱処理で30%以上の残存活性を示すものであることを特徴とするD−アミノ酸オキシダーゼ。
(2)アミノ酸が置換されたD−アミノ酸オキシダーゼであって、熱安定性がpH6.0において55℃, 15分の熱処理で50%以上の残存活性を示すものであることを特徴とするD−アミノ酸オキシダーゼ。
(3)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、42位のアミノ酸がシステインに、または246位のアミノ酸がチロシンに置換されているアミノ酸配列を有することを特徴とするD−アミノ酸オキシダーゼ。
(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列の60%以上の相同性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の42位と同等位置のアミノ酸がシステインに、または配列番号1の246位と同等位置のアミノ酸がチロシンに置換されているアミノ酸配列を有することを特徴とするD−アミノ酸オキシダーゼ。
(5)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、42位のアミノ酸がシステインに、または246位のアミノ酸がチロシンに置換されているアミノ酸配列をコードするD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子。
(6)配列番号1に示されるアミノ酸配列の60%以上の相同性を有するアミノ酸配列において、配列番号1の42位と同等位置のアミノ酸がシステインに、または配列番号1の246位と同等位置のアミノ酸がチロシンに置換されているアミノ酸配列をコードするD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子。
(7)(5)または(6)記載のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする組み換え体DNA。
(8)(7)記載の組み換え体DNAを含む形質転換体または形質導入体。
(9)(8)記載の形質転換体または形質導入体を培地に培養し、培養物よりD−アミノ酸オキシダーゼを採取することを特徴とする熱安定性の優れたD−アミノ酸オキシダーゼの製造法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
先ず、D−アミノ酸オキシダーゼとは、D−アミノ酸酸化酵素ともいい、酸素の存在下、D−アミノ酸を酸化して、過酸化水素、2−オキソ酸及びアンモニアを生成する作用を有するオキシダーゼをいう。D−アミノ酸オキシダーゼは、自然界に広く分布しており、種々の動物、例えば、タコ、イカ、昆虫等の無脊椎動物あるいは脊椎動物の組織、例えば、腎臓、肝臓、脳、白血球等、また各種微生物、例えば、糸状菌、酵母、細菌等に存在する。
本発明で述べられるD−アミノ酸オキシダーゼは、例えば、配列番号1に示されたアミノ酸配列を有するブタ由来のD−アミノ酸オキシダーゼ等であり、また、配列番号1と高い相同性を有するアミノ酸配列を有するD−アミノ酸オキシダーゼでもよく、例えば、哺乳類由来のD−アミノ酸オキシダーゼ、好ましくはヒト由来、ウサギ由来、ラット由来、マウス由来、モルモット由来のD−アミノ酸オキシダーゼである。さらに、配列番号1のアミノ酸で1から複数個が欠失、置換、付加及び/または挿入されたアミノ酸配列を有するD−アミノ酸オキシダーゼである。
本発明で用いられるD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子は、例えば配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするブタ由来のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子であり、また、配列番号1と高い相同性を有するアミノ酸配列をコードする遺伝子でもよく、例えば、哺乳類由来のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子、好ましくはヒト由来、マウス由来、モルモット由来のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子を用いてもよい。さらに、配列番号1のアミノ酸で1から数個が欠失、置換、付加及び/または挿入されたアミノ酸配列をコードする遺伝子を用いてもよい。
【0009】
これらの遺伝子等は、既に公知の方法に従って調製される。例えば、野生型ブタ由来D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子のcDNAは、Biochemistry, 26,3612(1987)記載の方法により調製可能である。その組み換え体DNAは、例えば、pKK223−3,pUC19,pET−11dベクターに挿入されたものとして、Biochem.Biophys.Res.Commun., 165,1422(1989),J.Biochem.,119,1114(1996)に記載の方法により調製することが可能である。
本発明において、「D−アミノ酸オキシダーゼの42位と同等位置のアミノ酸」とは、確定したD−アミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるブタ由来のD−アミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のD−アミノ酸オキシダーゼの42位のアミノ酸に対応するアミノ酸を意味するものである。また、「D−アミノ酸オキシダーゼの246位と同等位置のアミノ酸」とは、確定したD−アミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるブタ由来のD−アミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のD−アミノ酸オキシダーゼの246位のアミノ酸に対応するアミノ酸を意味するものである。
具体的には、既製のアミノ酸の相同性の解析用ソフト、例えば、GENETYX−Mac(Software Development社製)により、配列番号1に示されるブタ由来のD−アミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列との相同性を比較することにより決定される。
D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の変異処理は、企図する変異形態に応じた通常公知の方法で行い得る。
すなわち、D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子あるいは当該遺伝子の組み込まれた組み換え体DNAと変異原となる薬剤とを接触・作用させる方法;紫外線照射法;遺伝子工学的手法;または蛋白質工学的手法を駆使する方法等を広く用いることができる。
【0010】
上記変異処理に用いられる変異原となる薬剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン、蟻酸、5−ブロモウラシル等を挙げることができる。この接触・作用の諸条件は、用いる薬剤の種類等に応じた条件を採ることが可能であり、現実に所望の変異をD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子において惹起することができる限り特に限定されない。通常、好ましくは0.5〜12Mの上記薬剤濃度において、20〜80℃の反応温度下で10分間以上、好ましくは10〜180分間接触・作用させることで、所望の変異を惹起可能である。
紫外線照射を行う場合においても、上記の通り常法に従うことができる(現代化学,pp24〜30,1989年6月号)。
蛋白質工学的手法を駆使する方法としては、一般的に、Site−Specific Mutagenesisとして知られる手法を用いることができる。例えば、Kramer法〔Nucleic Acids Res.,12,9441(1984): Methods Enzymol.,154,350(1987): Gene,37,73(1985)〕,Eckstein法〔Nucleic Acids Res.,13,8749(1985):Nucleic Acids Res.,13,8765(1985):Nucleic Acids Res, 14,9679(1986)〕,Kunkel法〔Proc.Natl.Acid. Sci.U.S.A.,82,488(1985):Methods Enzymol.,154,367(1987)〕等が挙げられる。
【0011】
また、一般的にポリメラーゼ チェイン リアクション(Polymerase Chain Reaction)として知られる手法を用いることもできる〔Technique,1,11(1989)〕 。
なお、上記遺伝子改変法の他に、有機合成法または酵素合成法により、直接所望の改変D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子を合成し得ることはもちろんである。
上記方法により得られる所望のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の塩基配列の決定・確認は、例えば、マルチキャピラリーDNA解析システムCEQ2000(ベックマン・コールター社製)等を用いることにより行い得る。
上述の如くして得られたD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子を、常法により、バクテリオファージ、コスミド、または原核細胞若しくは真核細胞の形質転換に用いられるプラスミド等のベクターに組み込み、各々のベクターに対応する宿主を常法により、形質転換または形質導入をすることができる。
例えば、宿主として、エッシェリア属に属する微生物、例えば得られた組み換え体DNAを用いて、例えば、大腸菌K−12、好ましくは大腸菌JM109(東洋紡績社製)、DH5α(宝酒造社製)等を形質転換またはそれらに形質導入して夫々の菌株を得る。
【0012】
そして、上記菌株より変異型D−アミノ酸オキシダーゼ生産能を有する菌株をスクリーニングすることにより、変異型D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを含み、変異型D−アミノ酸オキシダーゼ生産能を有する菌株を得ることができる。
このようにして得られた菌株より純化された新規な組み換え体DNAを得るには、例えば、Guerryの方法〔J.Bacteriology,116,1064(1973)〕、Clewellの方法〔J.Bacteriology,110, 667(1972)〕等により得ることができる。
そして、このようにして得られた組み換え体DNAより変異型D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子を含有するDNAを得るには、例えば、該プラスミドDNAに制限酵素を温度30〜40℃、好ましくは37℃程度で1〜24時間、好ましくは2時間程度作用させて、反応終了液をアガロースゲル電気泳動法〔Molecular Cloning,150,Cold Spring Harbor Laboratory(1982)〕で処理することにより得ることができる。
【0013】
上記のようにして得られた変異型D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子をベクターDNAに挿入した組み換え体DNAを含み、変異型D−アミノ酸オキシダーゼ生産能を有する菌株を用いて変異型D−アミノ酸オキシダーゼを生産するには、この菌株を通常の固体培養法で培養してもよいが、可能な限り液体培養法を採用して培養するのが好ましい。
また、上記菌株を培養する培地としては、例えば、酵母エキス、トリプトン、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーあるいは大豆若しくは小麦ふすまの浸出液等の1種以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄あるいは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、さらに必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。
なお、培地の初発pHは、pH7〜9に調整するのが適当である。また培養は、20〜42℃、好ましくは37℃前後で4〜24時間、好ましくは4〜8時間で、通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養等により実施するのが好ましい。
培養終了後、該培養物より変異型D−アミノ酸オキシダーゼを採取するには、通常の酵素採取手段を用いて得ることができる。
例えば、常法により菌体を、超音波破壊処理、磨砕処理等するか、または、リゾチーム等の溶菌酵素を用いて本酵素を抽出するか、またはトルエン等の存在下で振盪もしくは放置して自己消化を行わせ本酵素を菌体外に排出させることができる。
そして、この溶液を濾過、遠心分離等して固形部分を除去し、必要によりストレプトマイシン硫酸塩、プロタミン硫酸塩、硫酸マンガン等により核酸を除去したのち、これに硫安、アルコール、アセトン等を添加して分画し、沈澱物を採取し、粗酵素を得る。
【0014】
上記粗酵素よりさらに精製酵素標品を得るには、例えば、セファデックス、ウルトロゲルもしくはバイオゲル等を用いるゲル濾過法;イオン交換体を用いる吸着溶出法;ポリアクリルアミドゲル等を用いる電気泳動法;ヒドロキシアパタイトを用いる吸着溶出法;蔗糖密度勾配遠心法等の沈降法;アフィニティクロマト法;分子ふるい膜もしくは中空糸膜等を用いる分画法等を適宜選択し、またはこれらを組み合わせて実施することにより、精製された酵素標品を得ることができる。
このようにして、所望の変異型D−アミノ酸オキシダーゼを得ることができる。
また、本発明の「熱安定性の優れた」とは、以下に述べる活性測定方法及び熱安定性測定方法に記載した反応条件下で、pH6.0において55℃、15分間熱処理した後の残存活性比が熱処理前の活性に対して30%以上、好ましくは50%以上残存していることをいう。熱安定性の優れた変異型D−アミノ酸オキシダーゼは、酵素含有製品等の保存性が著しく向上するため、産業上非常に有利である。
D−アミノ酸オキシダーゼの活性の測定方法、基質親和性測定方法及び熱安定性測定方法は、種々の方法を用いることができるが、一例として、以下に、本発明で用いるD−アミノ酸オキシダーゼ活性の測定方法及び熱安定性測定方法について説明する。
【0015】
(D−アミノ酸オキシダーゼ活性の測定方法)
0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.3)2.55ml、0.56MD−アラニン溶液 0.2ml、6%フェノール溶液 0.1ml、150U/mlぺルオキシダーゼ溶液 0.1ml、1.76% 4−アミノアンチピリン溶液 0.05mlの混合液を25℃で5分間インキュベートし、D−アミノ酸オキシダーゼサンプルを0.1ml添加、混合した。全容3.1mlを37℃で3分間反応させ、反応開始から3分間の、反応溶液の500nmにおける吸光度の変化を分光光度計を用いて測定した。酵素1Uは、上記測定条件下において、1分間あたり1μmolの過酸化水素を生成する酵素量とした。
(熱安定性測定方法)
D−アミノ酸オキシダーゼサンプルを約0.5U/mlとなるように0.1M酢酸緩衝液(pH6.0)で希釈し、55℃にて15分間加温した。加熱前と加熱後のサンプルの酵素活性を測定し、残存活性比を求めることで安定性を評価した。
【0016】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1(変異型D−アミノ酸オキシダーゼの作製)
D−アミノ酸オキシダーゼcDNAを、Biochemistry,26,3612(1987)記載の方法で取得した。またD−アミノ酸オキシダーゼ発現プラスミドpDAOは、Biochem.Biophys.Res.Commun.,165,1422(1989)記載の方法で取得した。D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology,68,p.326−331,1979)に従い、組み換え体プラスミド pDAOを用いて大腸菌(E.coli)JM109(東洋紡績社製)を形質転換し、形質転換株を得た。
この形質転換株を、LB−amp寒天培地〔バクトトリプトン1%(W/V), 酵母エキス0.5%(W/V), NaCl 0.5%(W/V),アンピシリン(50μg/ml)及び1.4%(W/V)寒天〕に接種し、37℃で培養した。
12時間後、出現してきたコロニーを、LB−IPTG−amp培地〔バクトトリプトン1%(W/V), 酵母エキス0.5%(W/V), NaCl 0.5%(W/V),イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド (1mM)及びアンピシリン (50μg/ml)〕100ml中、37℃で18時間振盪培養を行った。この培養物を、8000r.p.m.で5分間遠心分離することにより集菌して菌体を得た。この菌体よりQIAGEN tip−100(キアゲン社製)を用いて組み換え体プラスミドpDAOを抽出して精製し、組み換え体プラスミドpDAOを100μg得た。
【0017】
この組み換え体プラスミドpDAOを鋳型とし、センスプライマーとして5’−CACTCATTAGGCACCCCAGGCTTTA−3’(25 mer)、アンチセンスプライマーとして5’−GGGCCTCTTCGCTATTACGCCAGCT−3’(25mer)を用い、Arnoldの方法〔in Mannual of Industrial Microbiology and Biotechnology, 2nd edn, 597(1999)〕でError−Prone PCRを行った。
増幅したDNA断片をアガロースゲルで電気泳動を行い、ゲルからGeneElute MINUS EtBr SPIN COLUMN(Sigma社製)を用いて回収し、SacI,SphI処理した。これを、組み換え体プラスミドpDAOをSacI,SphI処理したものとライゲーションさせ、D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology,68,p.326−331,1979)に従い、変異が導入された組み換え体プラスミドDNAを用いて大腸菌(E.coli)JM109(東洋紡績社製)を形質転換し、形質転換株を得た。この形質転換株をLB−amp寒天培地に接種し、37℃で培養した。
12時間後、出現してきた各コロニーをLB−IPTG−amp培地20ml中、37℃で18時間振盪培養を行った。この培養液を8000r.p.m.で10分間の遠心分離を行い、上清を廃棄した。沈殿に0.1M 酢酸緩衝液(pH6.0)を0.5ml添加し、超音波破砕処理を行い粗酵素液を得た。
【0018】
実施例2(熱安定性の優れたD−アミノ酸オキシダーゼの探索)
実施例1で調製した変異導入酵素及び変異前の酵素(以下、未変異酵素という)を夫々約0.5U/mlとなるように0.1M酢酸緩衝液(pH6.0)で希釈し、55℃にて15分間加温した。加熱前と加熱後の各サンプルを前記D−アミノ酸オキシダーゼ活性の測定方法及び熱安定性測定方法で測定し、残存活性比を求めることで安定性を評価した。未変異酵素は、残存活性が5%であったが、変異を導入した酵素生産株のうち、活性が56%残存する酵素を生産する候補株Aと32%残存する酵素を生産する候補株Bが選択された。候補株Aと候補株BをLB−amp培地2ml中、37℃で18時間振盪培養を行い、この培養液からGFX Micro Plasmid Prep Kit(Amersham Biosciences社製)を用いてプラスミドを単離し、該プラスミド中のD−アミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列を、マルチキャピラリーDNA解析システムCEQ2000(ベックマン・コールター社製)を用いて決定した。その結果、候補株Aは、42番目のフェニルアラニンがシステインに、候補株Bは246番目のアスパラギンがチロシンに置換されていることが判った。
なお、このようにして得られた42位のフェニルアラニンがシステインに置換された変異型D−アミノ酸オキシダーゼをコードするプラスミドpDAO−F42C及び246位のアスパラギンがチロシンに置換された変異型D−アミノ酸オキシダーゼをコードするプラスミドpDAO−N246Yは、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに夫々FERM BP−8252及びFERM BP−8251として寄託されている。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、熱安定性の優れたD−アミノ酸オキシダーゼが提供され、診断用酵素等として測定用キットに有利に利用されることにより、産業上有用である。
【0020】
【配列表】
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  1. 配列番号1に示されるアミノ酸配列において、42位のアミノ酸がシステインに、または246位のアミノ酸がチロシンに置換されているアミノ酸配列を有することを特徴とするD−アミノ酸オキシダーゼ。
  2. 配列番号1に示されるアミノ酸配列において、42位のアミノ酸がシステインに、または246位のアミノ酸がチロシンに置換されているアミノ酸配列をコードするD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子。
  3. 請求項記載のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする組み換え体DNA。
  4. 請求項記載の組み換え体DNAを含む形質転換体または形質導入体。
  5. 請求項記載の形質転換体または形質導入体を培地に培養し、培養物よりD−アミノ酸オキシダーゼを採取することを特徴とする熱安定性の優れたD−アミノ酸オキシダーゼの製造法。
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