JP4151815B2 - 複合材製キャップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂と金属薄板からなる複合材製キャップに関し、特に、合成樹脂材により一体成形されたキャップの頂部外面が金属薄板製のシェルにより被覆されている複合材製のキャップに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス瓶やプラスチック容器や金属缶等において、内容物の取出口を大きく開口させた広口(開口部の内径35mm以上)の容器は、従来から食品等の容器として広く使用されており、そのような広口容器用で嵌め込み式の樹脂製キャップについて、金属製キャップと同様のガスバリヤー性(耐気体透過性)を持たせるために、キャップ頂面の外面側を金属部材で被覆した密閉キャップというものが、特開平6−122463号公報により既に公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、金属製キャップと比べてガスバリヤー性で劣る樹脂製キャップについて、特に、広口容器の場合には、容器の開口面積が大きい分だけキャップのガスバリヤー性の影響が顕著なものとなることから、キャップのガスバリヤー性が劣ることで容器内に密封された内容物の賞味期間が短くなるのを防止するためには、キャップが嵌め込み式であるか否かに関わらず、上記のようにキャップの頂面の外面側を金属部材で被覆したりすることでガスバリヤー性を向上させることが必要となってくる。
【0004】
そこで、上記の引用公報に開示されているガスバリヤー性を改善した密閉キャップの構造を検討してみると、天面(頂部)と側壁(スカート部)を形成する軟質合成樹脂部材に対して板状の金属部材を取り付け、それとは別の硬質合成樹脂部材により、天面(頂部)外周縁部から下向きに側壁(スカート部)を外側から覆っていることから、軟質合成樹脂部材とは別に硬質合成樹脂部材を製造して、それを軟質合成樹脂部材に嵌め込む工程が必要となり、生産コストが高いものとなっている。
【0005】
また、金属部材を軟質合成樹脂部材に取り付ける方法について、「金属部材を金型内にセットし、インサート成型により合成樹脂を金属部材の周囲に一体成型する。」「接着剤を用いて貼付けてもよい。」と記載されているが、何れにしても、板状の金属部材を金型内に位置合わせしたり、或いは軟質合成樹脂部材と位置合わせしたりするには、位置合わせのための装置が必要となり、位置合わせが面倒なものとなることで生産効率を上げることはできない。
【0006】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、樹脂製キャップの頂部外面が金属薄板製のシェルで被覆されている複合材製のキャップについて、簡単に低コストで生産することができると共に、インサート成型により金属シェルと共に樹脂製キャップを一体成形するに際して、金型に対する金属シェルの位置合わせを簡単に行えるような構造のものにすることを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、合成樹脂材により一体成形されたキャップの頂部外面が金属薄板製のシェルにより被覆されている複合材製のキャップについて、金属シェルを、円形の頂板の周縁から下方に垂下する短い円筒部を有するものとして、金属シェルの頂板に続く円筒部の少なくとも上部側の一部を露出させた状態で、インサート成型により金属シェルと合成樹脂を一体的に結合し、金属シェルの円筒部の下部をキャップのスカート部上端部分で合成樹脂に埋設して、キャップを容器の口頸部に冠着させた状態で、金属シェルの円筒部の下端を容器の口頸部の上端位置よりも下方にまで垂下させると共に、 金属シェルの円筒部の下端部分を、その円筒面から内方向又は外方向に0.2〜0.8mm突出するように曲げていることを特徴とするものである。
【0008】
上記のような構成の複合材製キャップによれば、金属シェルを金型内に入れたインサート成型によって同じ合成樹脂材で樹脂製キャップを一体成形していることにより、金属シェルと合成樹脂材からなる複合材製キャップを簡単に低コストで生産できると共に、インサート成型のために金属シェルを金型内にセットする際に、金型の凹部に金属シェルを嵌め込むことによって、位置合わせのための特別な装置を必要とすることなく、金型に対する金属シェルの位置合わせを簡単に行うことができる。
また、金属シェルの下端を容器口頸部の上端位置よりも下方にまで垂下させていることにより、キャップにおいてガスバリヤー性が必要な部分を金属シェルにより略完全にカバーすることができて、キャップのガスバリヤー性を充分に確保することができると共に、金属シェルの下端部分を内方向又は外方向に0.2〜0.8mm突出するように曲げていることにより、キャップが落下衝撃等を受けた場合でも、金属シェルが樹脂キャップから抜け落ちて分離するようなことはない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複合材製キャップの一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態の複合材製キャップについて、図1は、キャップの右半分を断面として側面視で示し、図2は、キャップの断面の一部を拡大して缶の口頸部との嵌合状態を示すものであり、また、図3は、金属シェルと共に樹脂製キャップをインサート成型する際の金型への金属シェルのセット状態を示すものである。
【0010】
本実施形態のキャップ1は、ピルファープルーフ性を備えたネジキャップ(スクリューキャップ)であり、広口で再封鎖可能な金属缶(広口リシール缶)のネジ付き口頸部に対して螺合により冠着されるものであって、同じ材質の合成樹脂材により一体成形された樹脂キャップ2と、その頂部外面を被覆する金属薄板製のシェル3とからなる複合材製のキャップである。
【0011】
キャップ1の樹脂キャップ2では、頂部21の周縁から下方に垂下してスカート部22が形成されており、スカート部22と所定の間隔を置いて同心的に、円筒状のインナープラグ23が頂部21の内面(下面)から垂設されていて、スカート部22の上端部内面とインナープラグ23の外面の間に、図2に示すように、缶の口頸部4の上端カール部41が挿入されることとなる。
【0012】
樹脂キャップ2のスカート部22には、その内面側に、缶の口頸部4に形成されたネジ42と螺合するネジ24が形成され、その外面側に、キャップ1を指で掴んで回す時の滑り止めとなるローレット(多数の細かい縦溝と縦リブ)25が形成されていて、スカート部22の下方には、不正使用を示す(開封されたかどうかを示す)ためのピルファープルーフ(タンパーエビデンス)機構が一体的に形成されている。
【0013】
ピルファープルーフ機構は、スカート部22の下端に、破断容易な弱化部となる連結部26を介して、缶の口頸部4の下部に係止されるバンド部27を形成したものであり、図2に示すように、缶の口頸部4の下部に上側が傾斜して下側が段部となった環状の突起43が形成されているのに対して、バンド部27の内面には、下側が傾斜して上側が段部となった環状の突起27bが形成されていて、キャップ1を缶の口頸部4に螺着すると、バンド部27の突起27bが口頸部4の突起43を乗り越えて、両方の突起27b,43の段部同士が係合できるようになっている。
【0014】
また、スカート部22の下端とバンド部27の上端のそれぞれには、対向する凹部22aと凸部27aが形成されており、この凹部22aと凸部27aは、常態では噛み合うことなく、キャップ1の螺着によりバンド部27の突起27bが口頸部4の突起43を乗り越える際に、その抵抗力により連結部26が屈曲するように弾性変形してスカート部22とバンド部27の間隔が狭まったときに、凹部22aと凸部27aが噛み合って、スカート部22とバンド部27がキャップの円周方向で連係するようになっている。
【0015】
このようなピルファープルーフ機構によれば、キャップ1を装着する際には、バンド部27の突起27bが口頸部4の突起43を乗り越えるときに、凹部22aと凸部27aを介してスカート部22とバンド部27がキャップの円周方向で連係するため、キャップ1の回動が連結部26の切断力として働くことはなく、そのため、弱化部となる連結部26を切断され易いものにしても、キャップ1の装着時に連結部26が切断されることはない。
【0016】
一方、キャップ1を開封する際には、バンド部27が口頸部4の突起43に係合している状態で、スカート部22が上方に移動することから、凹部22aと凸部27aは噛み合わず、スカート部22とバンド部27が凹部22aと凸部27aを介して連係することはないため、キャップ1の回動が連結部26の切断力として働き、弱化部となる連結部26を切断され易いものとしておくことで、その分だけキャップ1の開封時に弱い力で連結部26を切断することができるようになる。
【0017】
上記のようなピルファープルーフ機構が一体成形された樹脂キャップ2に対して、円形の頂板31の周縁から下方に短い円筒部32を垂下させた金属薄板製のシェル3が、樹脂キャップ2の頂部21の外面側を被覆するように一体的に設けられており、金属シェル3の内面と樹脂キャップ2の外面は一体的に接着されていて、金属シェル3の頂板31に続く円筒部32の上部の外面は露出し、金属シェル3の円筒部32の下部は、樹脂キャップ2のスカート部22の上端部分に埋設されている。
【0018】
なお、本実施形態では、樹脂キャップ2に埋設された金属シェル3の円筒部32の下端部分は、図2に示すように、キャップ1を缶の口頸部4に螺着した状態において、該口頸部4の上端位置(カール部41の上端)よりも下方にまで垂下されており、この円筒部32の下端は、外方に突出する鍔部33として、円筒部32の外径よりも外方向に0.2〜0.8mm突出するように曲げられている。(なお、この鍔部33は、円筒部32の内径よりも内方向に0.2〜0.8mm突出するように曲げても良い。)
【0019】
この樹脂キャップ2と金属シェル3は、溶融樹脂が注入される金型内に金属シェル3を予めセット(インサート)した状態で、樹脂キャップ2を金型内で一体成形する、所謂インサート成型により一体的に結合されているものであって、図3に示すように、金属シェル3の円筒部32の上部を金型(雌型)6の凹部に嵌合させることで、金属シェル3をキャップの径方向で中央に位置合わせ(センタリング)して金型6内にセットした状態から、溶融樹脂によるインジェクション成形等により、金属シェル3と一体的に樹脂キャップ2を成形するようにしている。
【0020】
上記のように金属シェル3と共に樹脂キャップ2がインサート成型される本実施形態のキャップ1について、具体例によって詳しく説明すると、上記のように金属シェル3を金型6内に位置合わせしてセットした状態から、例えば、合成樹脂としてポリプロピレンを樹脂温度230℃、射出圧60〜65kg/cm2 、成形サイクル28秒でインジェクション成形することにより、金属シェル3の頂板31に続く円筒部32の上部の外面が露出し、円筒部32の下部が合成樹脂に埋設されるように、金属シェル3の周囲に樹脂キャップ2を一体成形している。なお、上記のような樹脂キャップ2の成形法については、インジェクション成形に限らず、コンプレッション成形によっても成形可能である。
【0021】
金型内にセットされる金属シェル3については、例えば、厚さ0.20mmの3004材アルミニウム合金板に対し、外面塗装として、ポリエステル系樹脂〔大日本インキ工業(P−926−2)〕を60mg/dm2 塗装して170℃×10分焼き付け、また、内面塗装として、ポリプロピレン(PP)分散エポキシ−フェノール〔大東ペイント(ダイトロン#5378PP−2)〕を60mg/dm2 塗装して190℃×10分焼き付けてから、円形の頂板31から短い円筒部32を垂下させた形状にプレス成形したものである。
【0022】
なお、樹脂キャップ2の材料となる合成樹脂については、容器の用途に応じてポリプロピレン(PP)よりも耐熱性の劣るポリエチレン(PE)を使用することも可能であり、また、金属シェル3の材料となる金属薄板についても、アルミニウム合金板に限らず、錫メッキ鋼板,亜鉛メッキ鋼板,ニッケルメッキ鋼板等の表面処理鋼板を使用することも可能である。
【0023】
金属シェル3の内面塗装については、エポキシ樹脂成分と、フェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂及び熱硬化型アクリル樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の熱硬化性樹脂との組み合わせからなる合成樹脂を主成分として、それに樹脂キャップ2の合成樹脂と同種の合成樹脂を分散させた塗料を使用することにより、金属シェル3の内面側と樹脂キャップ2との接着性を良くすることができる。
【0024】
すなわち、樹脂キャップ2の材料がポリプロピレンである場合には、主成分となる樹脂の中にポリプロピレン又はカルボキシル変性ポリプロピレンの粉末を分散させた塗料を使用するのが好ましく、また、樹脂キャップ2の材料がポリエチレンである場合には、主成分となる樹脂の中にポリエチレン又はカルボキシル変性ポリエチレンの粉末を分散させた塗料を使用することが好ましい。
【0025】
以上に述べたような本実施形態の複合材製キャップ1によれば、キャップ1の頂部外面を金属シェル3により被覆していることで、充分なガスバリヤー性(耐気体透過性)を確保することができると共に、金属薄板製のシェル3とのインサート成型により同じ合成樹脂材で樹脂キャップ2を一体成形していることによって、金属部材と合成樹脂の複合材によるキャップを、通常の樹脂製キャップと同様に簡単に製造することができて、生産コストを低く抑えることができる。
【0026】
また、金属シェル3を、円形の頂板31の周縁から下方に垂下する短い円筒部32を有するものとして、金属シェル3の頂板31に続く円筒部32の上部外面を露出させるような構造としていることで、図3に示すように、インサート成型のために金属シェル3を金型6内にセットする際に、金型6の凹部に金属シェル3の円筒部32を嵌合させることによって、金属シェル3を簡単に金型6内で中央に位置合わせすることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、樹脂キャップ2のスカート部の上端部分に埋設されている金属シェル3の円筒部32の下端を、キャップ1を容器(広口リシール缶)の口頸部4に螺着させた状態において、該口頸部4の上端位置よりも下方にまで垂下させていることにより、キャップ1においてガスバリヤー性が必要な部分を金属シェル3により略完全にカバーすることができて、キャップ1のガスバリヤー性が一層向上されたものとなっている。
【0028】
また、本実施形態では、樹脂キャップ2に埋設されている金属シェル3の円筒部32の下端部分を、樹脂キャップ2の一部と充分に噛み合い、且つ、スカート部22の外面より突出しないように、該円筒部32の外径から外方向に0.2〜0.8mm突出する(或いは、内径から内方向に0.2〜0.8mm突出する)ような鍔部33として曲げていることにより、鍔部33と樹脂キャップ2の一部とが噛み合った状態となるので、キャップ1が落下衝撃等を受けた場合でも、金属シェル3が樹脂キャップ2から抜け落ちて分離するようなことはない。
【0029】
以上、本発明の複合材製キャップの一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に示した具体例に限定されるものではなく、例えば、上記の実施形態に示したような広口リシール缶用のネジキャップに限らず、他の容器(広口容器に限らない)に使用されるその他のキャップ(ネジ式のキャップに限らず、嵌め込み式のキャップであっても良い)としても実施可能である等、適宜設計変更可能なものであることは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の複合材製キャップによれば、樹脂製キャップの頂部外面を金属薄板製のシェルで被覆することにより、キャップのガスバリヤー性を充分に確保することができ、また、そのような複合材製のキャップを効率良く低コストで生産することができると共に、樹脂製キャップを金属シェルと共にインサート成型するために金属シェルを金型内にセットする際に、金型に対する金属シェルの位置合わせを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合材製キャップの一実施形態に係る広口容器(広口リシール缶)用キャップについて、右半分を断面として示す部分断面側面図。
【図2】図1に示したキャップの一部の断面を拡大して示す断面図。
【図3】図1に示したキャップの樹脂製キャップを金属シェルと共にインサート成型する際の金型への金属シェルのセット状態を示す断面図。
【符号の説明】
1 キャップ
2 樹脂キャップ(合成樹脂材)
3 金属シェル(金属薄板製のシェル)
4 広口リシール缶(広口容器)の口頸部
22 (キャップの)スカート部
31 (金属シェルの)頂板
32 (金属シェルの)円筒部
Claims (1)
- 合成樹脂材により一体成形されたキャップの頂部外面が金属薄板製のシェルにより被覆されている複合材製のキャップであって、金属シェルが、円形の頂板の周縁から下方に垂下する短い円筒部を有するものであり、金属シェルの頂板に続く円筒部の少なくとも上部側の一部を露出させた状態で、インサート成型により金属シェルと合成樹脂が一体的に結合されていて、金属シェルの円筒部の下部がキャップのスカート部上端部分で合成樹脂に埋設されており、キャップが容器の口頸部に冠着された状態で、金属シェルの円筒部の下端が容器の口頸部の上端位置よりも下方にまで垂下されていると共に、 金属シェルの円筒部の下端部分が、その円筒面から内方向又は外方向に0.2〜0.8mm突出するように曲げられていることを特徴とする複合材製キャップ。
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