JP4149783B2 - 光硬化性樹脂成形物の製造方法 - Google Patents

光硬化性樹脂成形物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化状況を制御した光硬化性樹脂成形物の製造方法、特に歯科用充填物の製造方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】
光硬化性樹脂を用いて、歯科用の充填物など特定の構造を有する樹脂成形品を製造することが知られている。また、強さと耐摩耗性を向上させるために、ガラスの粉を表面処理(カップリング)して樹脂を混ぜたコンポジットレジンなどが知られている。
【0003】
従来の光硬化方法では、樹脂に光があたる表面部分が始めに硬化し、その後に内部が硬化していた。一般に光硬化性樹脂が硬化すると収縮が起こる。したがって、従来の光硬化方法では、表面が硬化し、外形が固定された後に、内部が収縮するためひずみが生ずる、変形が起こるなどの問題があった。
【0004】
この改善策として、積層法という、樹脂を少量詰めてから光で硬化させ、さらに樹脂を上に詰めまた光で硬化させる方法が知られている。このような方法を繰り返すことにより、例えば、深い窩洞に対する治療が行われている。しかし、臨床の場において、このような積層法は時間がかかりすぎること、また空気中で重合させるので酸素阻害が生じるという問題があった。
【0005】
また、穴(窩洞等)の中に光硬化性樹脂を充填し、光を照射することにより光硬化性樹脂を硬化させる場合がある。このような場合、光が直接当たる表面部分が始めに硬化し、その後に、内部部分の樹脂が収縮しつつ硬化する。すると、光硬化性樹脂と、穴(窩洞等)の底部分との間に隙間が生ずるという問題があった。
【0006】
例えば、光硬化性樹脂を歯科用の充填物として用いた場合、虫歯部分を取り除いた後、虫歯の穴(ウ窩)およびそのまわりの窩洞に充填物をつめる。穴(窩洞等)の底と、充填物との間に隙間が生じ、充填物の接着強度が得られないという問題があった。また、この方法では、暫時底部の方向に重合が進行し収縮ていくため最深部では歯質と離れ、脱離の原因となるという問題があった。
【0007】
なお、選択光源を用いた光造形法および該造形法によって得られる立体造形物の製造方法が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−119136号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、内部、又は底部から硬化が始まることにより、ひずみや変形を防止し、機械的性質の低下しない光硬化性樹脂成形物の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、特に窩洞などの穴部に充填した場合に穴の底部分との間に隙間が少なく、接着強度の強い光硬化性樹脂成形物の製造方法を提供することを別の目的とする。
【0011】
また本発明は、このような光硬化性樹脂成形物の製造方法を利用した、歯科用充填物の製造方法を提供することを別の目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題の少なくとも一つは、以下の発明によって解決される。
【0014】
) 第1の樹脂層と、当該第1の樹脂層を覆い、当該第1の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第2の樹脂層と、当該第2の樹脂層を覆い、当該第2の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第3の樹脂層とを有する光硬化性樹脂組成物であって、前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層、前記第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層の順に短波長にシフトする光硬化性樹脂組成物を用い、前記第1の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第1の光照射工程と、前記第2の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第2の光照射工程と、前記第3の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第3の光照射工程とを含むヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
【0015】
) 前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層、前記第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、それぞれ400nm〜500nm、350nm〜390nm、200nm〜340nmである前記()に記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
【0016】
) 前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層、前記第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、それぞれ500nm以上、470nm±20nm、355nm±20nmである前記()に記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
【0018】
) 少なくとも一つ以上の樹脂層には、可視光を吸収する金属微粉末、又はフラーレン、若しくはカーボンナノチューブが含まれている前記(1)〜()のいずれかに記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
【0019】
) 少なくとも一つ以上の樹脂層には、ベンゾフェノン系色素が含まれている前記(1)〜()のいずれかに記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
【0020】
) 光源として、YAGレーザの第2並びに第3高調波、及びLEDを用いる前記(1)〜()のいずれかに記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光硬化性樹脂成形物の製造方法を詳細に説明する。
【0022】
本発明の一つの実施の形態としては、「第1の樹脂層と、第1の樹脂層を覆い、第1の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第2の樹脂層と、第2の樹脂層を覆い、第2の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第3の樹脂層とを有する光硬化性樹脂組成物であって、第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層の順に短波長にシフトする光硬化性樹脂組成物を用い、第1の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第1の光照射工程と、第2の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第2の光照射工程と、第3の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第3の光照射工程とを含む、ヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。」が挙げられる。
【0023】
また、本発明の別の実施の態様としては、それぞれ吸収波長の異なる複数層の樹脂を光照射により硬化させ、その後、さらに吸収波長の異なる複数層の樹脂を硬化した樹脂に堆積させ、硬化させるという作業を、所望の大きさ(厚さ)の樹脂硬化物が得られるまで繰り返す「本発明の積層法」が挙げられる。光の樹脂への侵入度は、その樹脂の種類や、光の種類、強度などによって異なるが、本発明の積層法を用いることで、例えば、深い窩洞模型を作成する場合などにおいても、従来単なる積層法(単一種類の樹脂の充填・硬化を繰り返す方法)に比べ、層ごとの継ぎ目が少ないので機械的強度を持った審美性のある樹脂硬化物を得ることができる。
【0024】
なお、本明細書において「吸収波長領域」とは、光吸収スペクトルの半値全幅が含まれる領域を意味する。また、「光吸収の最大ピーク」とは、光吸収スペクトルのうち光吸収強度がほぼ最強である領域を意味する。また、「光硬化性樹脂成形物」とは、光硬化性組成物を硬化させてできる成形物、またはそのような成形物を含むものを意味する。
【0025】
(歯科用充填物)
本発明を歯科用充填物の製造方法として用いる場合は、以下の様にして製造すれば良い。まず、光硬化性樹脂を含むペーストを取り出して窩洞(又は歯形の窩洞)にてん入する。次に光照射器を使用して、光を光硬化性樹脂に照射する。このようにして歯科用充填物を得ることができる。1回で硬化できる光硬化性樹脂の厚さは、通常約2〜3mm、最大でも10mm〜12mm程度である。したがって、例えば窩洞が10mm以上と深い場合は、数回に分けて充填、硬化を繰り返しても良い。従来の単層毎に硬化させる場合(積層法)に比べ本発明では一度に多くの層を硬化させることができる。特に、神経を取り去った場合のように、比較的深い窩洞に充填する場合は、数回に分けて充填、硬化を繰り返すこと(本発明の積層法)が好ましい。従来の単層を用いて複数回充填及び硬化を繰り返す方法では、硬化した樹脂に、硬化していない樹脂を堆積させ硬化させると、その境において継ぎ目ができ、強度が弱くなるという問題があったが、本発明の積層法では継ぎ目の数を減らすことができるため、強度が強く、また(神経を取り去った窩洞に充填した際には、直接見ることはできないが、)審美的な充填物を製造することができる。
【0026】
(樹脂層構成物)
各樹脂層を構成する、光硬化性樹脂組成物は、光重合性オリゴマ−(モノマーを含む)、反応性希釈剤および光重合開始剤を含むものが挙げられる。光硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて光重合助剤、添加剤、着色剤、ポリマー、安定剤、フィラー、顔料、重合禁止剤など各種添加剤が含まれていても良い。光硬化性樹脂組成物は、硬化の反応機構により大別して二つに分類することができる。一つはラジカル重合反応により硬化するタイプであり、もう一つはカチオン重合反応により硬化するタイプである。前者はアクリロイル基やビニル基が官能基であり、後者はエポキシ基やビニルエーテル基が官能基となる。また、使用される光重合性オリゴマーの種類によって、大別して、
(a) ウレタンアクリレ−ト系
(b) エポキシアクリレ−ト系
(c) エステルアクリレ−ト系
(d) アクリレ−ト系
(e) エポキシ系
(f) ビニルエーテル系
とに識別される。(a)〜(d)はラジカル重合反応で硬化するタイプであり、(e)および(f)はカチオン重合反応により硬化するタイプである。現状ではこの中で、(a)ウレタンアクリレ−ト系および(b)エポキシ系の感光性樹脂が主に使われている。この両者には一長一短があり、その目的に応じて使い分けられている。
【0027】
本発明において各樹脂層を構成する物質としては、光硬化性樹脂組成物であれば特に限定されるものではない。
【0028】
((メタ)アクリル系有機材料)
モノマーは、重合してプラスチックを形成する有機材料である。オリゴマーは、モノマーを予めいくつか反応させてあるもので、モノマーと同様重合してプラスチックを形成する。モノマーやオリゴマーは、簡単に重合を開始しない。そこで、光重合開始剤が添加されて光硬化性樹脂組成物となる。
【0029】
モノマーとしては、アクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、ジメタクリレート、ジメタクリレートのウレタン系置換物、ジメタクリレートの脂肪族系置換物、ジメタクリレートの芳香族系置換物、およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、モノマーとしてジメタクリレートが好ましい。オリゴマーとしては、これらモノマーが、2から10程度重合したものが挙げられる。ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレートの粒子状粉末が上げられる。ポリマーの数平均分子量としては、30万〜60万、25℃における平均粘度としては、20マイクロメートル〜40マイクロメートルが挙げられる。
【0030】
これら(メタ)アクリル系有機材料は、光硬化性組成物の40〜80重量%含まれていることが好ましい。
【0031】
(フィラー)
フィラーとしては、溶融石英、アルミナ、アルミノケイ酸塩ガラス、ナトリウムガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、ベータ−ユークリプタイトのような無機材料を用いることができる。また、フラーレンやカーボンナノチューブなど炭素系フィラーを用いてもよい。これら炭素系フィラーを加えることにより、樹脂組成物の帯電性などを制御できるため好ましい。フィラーの形状としては、不規則な形状、粒状、球状などが挙げられる。フィラーの大きさとしては0.03マイクロメートルから60マイクロメートルが挙げられる。フィラーの表面には、シロキサン処理や、シラン処理をしたものが好ましい。また、レーザ光を吸収するような金属微粉末を用いることが好ましい。ここで、本明細書において金属微粉末とは、10nm〜1mm、好ましくは100nm〜100マイクロm程度の直径(長さ)を持つ金属の微粉末を意味する。レーザ光を吸収した金属微粉末が発熱し、周囲の樹脂を硬化させることができるためである。このような場合、樹脂層には熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。このような金属微粒子としては、コバルト、銅、鉄、インジウム等の微粒子が好ましく、これらの中でもコバルトの微粒子がより好ましい。フィラーの量としては、樹脂全体の0.001〜10重量%であることが好ましく、0.005〜5重量%であるのがより好ましく、0.01〜2重量%であるのが更に好ましい。フィラーは、攪拌など通常用いられる方法に従って、樹脂に混入されても良い。
【0032】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができる。また、各層は、例えば光重合開始剤以外の組成を同様にして形成することができる。光重合開始剤は、樹脂全体の0.001〜10重量%であることが好ましく、0.005〜5重量%であるのがより好ましく、0.01〜2重量%であるのが更に好ましい。光重合開始剤は、攪拌など通常用いられる方法に従って、樹脂に混入されても良い。
【0033】
好ましい光重合開始剤であるベンゾフェノンおよびその誘導体としては下記のものが挙げられる。ベンゾフェノン、アセトフェノン、o−メトキシベンゾフェノン、アセナフテンキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、アルファ−フェニル−ブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、ベンズアルデヒド、9−アセチルフェナンスレン、2−アセチルフェナンスレン、10−チオキサンセノン、3−アセチルフェナンスレン、3−アセチルインドン、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,5−トリアセチルベンゼン、チオキサンセン−9−オン、キサンセン−9−オン、7−H−ベンズ[デ]−アントラセン−7−オン、1−ナフトアルデヒド、フルオレン−9−オン、2,3−ブタンジオン、アセトナフテン、ベンズ[a]アントラセン7.12ジオンなどであり、より具体的には、ユヴィヌル(Uvinul)D49TM ニュージャージー州パルシパニーのBASFコーポレーションから入手可能な(2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシ−ベンゾフェノン)、ユヴィヌル(Uvinul)D50TM ニュージャージー州パルシパニーのBASFコーポレーションから入手可能な(2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン)、ユヴィヌル(Uvinul)N539 ニュージャージー州パルシパニーのBASFコーポレーションから入手可能な(ベンゾフェノンシアノアクリレート)、アルドリッヒ・ケミカル・カンパニーから入手可能な4−(ジメチルアミノベンゾフェノン)チヌヴィン(Tinuvin)PTM 、チバ・ガイギー・コーポレーションから入手可能な(ベンゾトリアゾール)イントラワイト(Intrawite)OBTM 、クロンプトン・アンド・ノウレス・リミテッドから入手可能な色素イントラプラスト・イエロー2GLN、クロンプトン・アンド・ノウレス・リミテッドから入手可能な色素アルドリッヒから入手可能な4−フェニルアゾフェノール(「4−PAP」)。
【0034】
他の例としては、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン, 2,2,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノンまたは4−フェニルアゾフェノールが挙げられる。
【0035】
近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークが、200nm〜340nmにある光重合開始剤としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール、アルファ−ヒドロキシシクロヘキスルフェニルケトン、2−ヒドロキシー2−メチルーフェニルプロパンがどが挙げられる。
【0036】
近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークが、350nm〜390nmにある光重合開始剤としては、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ユヴィヌルTMD49およびD50(BASF)並びに4−フェニルアゾフェノールなどが挙げられる。
【0037】
近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークが、400nm〜500nmにある光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビスアシルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0038】
光重合開始剤とともに、または光重合開始剤に変えて光硬化性物質を用いても良い。光硬化性物質とは光の作用によって短時間に分子構造が化学変化をおこし硬化などの物性的変化を生ずるものである。この種の化合物としては有機単量体、オリゴマー、樹脂あるいはそれらを含む組成物等多くのものが知られており、市販されている任意のものを使用し得る。不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が代表的なものであるが、不飽和アクリル系化合物が特に好ましい。光硬化性物質としては、東亜合成化学工業製、多官能アクリレートM−8560,M−400が挙げられる。
【0039】
不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系またはメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー、あるいはそれらの混合物であって、プロピレン(またはブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)ジメタクリレート等の単量体または分子量10000以下のオリゴエステルが挙げられる。
【0040】
(不純物)
上記の樹脂層用の樹脂には、一般に不純物が含まれるが、イオン性不純物の料が樹脂の100ppm以下であることが硬化のために好ましく、より好ましくは50ppm以下であり、更に好ましくは20ppm以下である。ここでイオン性不純物としては、例えば、ナトリウムイオン、カルシウムイオンなどが挙げられる。
【0041】
(光源)
本発明に用いられる光源としては、各層の光吸収ピークを与える光を発することができるものであれば特に限定されるものではない。光源としては、例えば、固体レーザ、半導体レーザ(LD)、液体レーザ(色素レーザ)、気体レーザ、LED、などが挙げられる。本発明において、少なくとも2つ以上の半導体レーザを用いることは、装置が簡単であり好ましい。色素レーザを用いれば、様々な光を得ることができるが、装置が大掛かりとなる。
【0042】
固体レーザとしては、ルビーレーザ(波長690nm)、ガラスレーザ(波長1060nm)、YAGレーザ(波長1064nm)、およびこれらの2次、3次、及び4次の高調波が挙げられる。
【0043】
半導体レーザとしては、ガリウム砒素系、インジウムガリウム砒素系、インジウムガリウム砒素リン系など種々の半導体レーザを用いることができる。
【0044】
具体的には、松下電器産業(株)製青色レーザ(波長410nm)、松下電器産業(株)製SHG青色レーザ光源(波長426nm(分布型ブラッグ反射(半導体レーザから出力する赤外レーザ光(波長852nm)を、2次高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)素子に入力し、レーザヘッドから青色レーザ(波長426nm、出力0.6mWmin.、1.5mWtyp.)を出力するもの。)、松下電器産業(株)製赤外レーザ(波長852nm)、日亜化学製NLHV500C(波長 400-410nm)、NDHV310ACA (400-415nm)、NDHV310AFBE1 (400-415nm)、NDHB500APAE1 (435-445nm)などが挙げられる。
【0045】
460nm付近にピークを有するLEDとしては、日亜化学製NSPB300A、NSPB310A、NSPB320BS、NSPB500S、NSPB510S、NSPB520Sが挙げられる。520nm付近にピークを有するLDとしては、日亜化学製NSPG300A、NSPG310A、NSPG320BS、NSPG500S、NSPG510S、NSPG520S、NSPGF50S、NSPGF50S、NSPG346BSが挙げられる。また、630nm付近にピークを有するLEDとしては、日亜化学製NSPR346BS、NSPR546BS、NSPR636ASが挙げられる。
【0046】
色素レーザとしては、種々の色素レーザを用いることができる。
【0047】
気体レーザとしては、He-Neレーザ(632.8nm)、アルゴンレーザ(510nm)、フッ素―アルゴンエキシマレーザ(193nm)、フッ素クリプトンエキシマレーザ(249nm)、フッソクリプトンエキシマレーザ(351nm)、塩素アルゴンエキシマレーザ(175nm)、塩素クリプトンエキシマレーザ(222nm)、塩素キセノンエキシマレーザ(308nm)、臭素キセノンエキシマレーザ(282nm)などを用いることができる。
【0048】
本発明の別の実施態様は、「第1の樹脂層と、当該第1の樹脂層を覆い、当該第1の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第2の樹脂層と、当該第2の樹脂層を覆い、当該第2の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第3の樹脂層とを有する光硬化性樹脂組成物であって、前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層、前記第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層の順に短波長にシフトする光硬化性樹脂組成物を用い、前記第1の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第1の光照射工程と、前記第2の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第2の光照射工程と、前記第3の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第3の光照射工程とを含む光硬化性樹脂成形物の製造方法。」である。一般に、波長が長い光の方が、波長が短い光にくらべ透過性がある。したがって、複数層からなる光硬化性樹脂組成物の内部の層の光吸収の最大ピークを長波長とすることにより、内部からの光硬化を促進することができる。ただし、条件によっては上記と異なる様に制御することも可能である。
【0049】
なお、第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層の順に長波長側にシフトする光硬化性樹脂組成物を用いても構わない。
【0050】
【実施例】
以下本発明を、実施例を用いてより具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
1.樹脂層の準備
まず、以下のようにして第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層を用意した。
1-1 第1の樹脂層用の樹脂
第1の樹脂層用の樹脂の原料として、アクリレートを95g、ベンゾフェノン系色素を5g用意した。
これらの原料を、混ぜ、加温することにより第1の樹脂層用の樹脂を得た。
1-2 第2の樹脂層用の樹脂
第1の樹脂層用に用いたものと異なるベンゾフェノン系色素を用いた以外は、第1の樹脂層と同様にして第2の樹脂層用の樹脂を得た。
1-3 第3の樹脂層用の樹脂
第1の樹脂層用に用いたものと異なるベンゾフェノン系色素を用いた以外は、第1の樹脂層と同様にして第3の樹脂層用の樹脂を得た。
【0052】
2.樹脂層
口径4×4mm角のガラスセル3本用意し、角セルに第1、2、3の樹脂を注いだ。光を第3の樹脂方向から照射し、第1の樹脂を重合させた。
重合が不完全であったので、感光剤が各樹脂に反応し、密度屈折率が変わった様子をみることができる、シャドウ法によって重合を確認した。
【0053】
3.成形
3-1 第1の光照射
YAGレーザ(JDSユニフェイズ社製)を用いて、第2高調波である532nmの光を1分間、上記の積層体に照射した。この光の強度は、17.62mWであった。シャドウ法により、感光剤が反応し、密度が変化した状態で重合を判断した(以下同様である。)。この結果を図1に示す。図1から、第3層目がまず硬化し始めていることが確認できる。
3-2 第2の光照射
LED豊田合成社製レーザの470nmの光を1分上記の積層体に照射した。この結果を図2に示す。図2から第2層目がまず硬化することがわかる。
3-3 第3の光照射
YAGレーザ(JDSユニフェイズ社製)を用いて、第3高調波である355nmの光を1分間、上記の積層体に照射した。この光の強度は、5.8mWであった。この結果を図3に示す。図3から第1層目及び第2層目が硬化することがわかる。
【0054】
4.評価
十分に光を照射して成形した光硬化性樹脂成形物を指で触ったところ、しっかりと硬化していた。表面タックを指で確認したところべたつきがない良好な成形物であった。また、得られた光硬化性樹脂成形物を1週間放置し、表面タックを確認したところ、製造時とかわらず良好な成形物であった。
【0055】
(実施例2)
YAGレーザの倍波長である532nmの光を第3の樹脂の方向から照射すると、第1の樹脂のみ重合反応を起した。
次に、LEDの470nmの光を第3の樹脂方向から照射すると、第2の樹脂が重合反応を起し、第3の樹脂は重合反応を起さなかった。
さらに、YAGレーザの3倍波長である355nmの光を第3の樹脂の方向から照射すると、第3の樹脂のみ重合反応を起した。
【0056】
(実施例3)
フィラーとしてコバルト微粉末を1重量%混入した以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂成形物を得た。このものは、実施例1に比べ迅速に硬化し、さらに良好な硬度を有していた。
【0057】
(実施例4)
フィラーとして、カーボンナノチューブを1重量%加えた以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂成形物を得た。このものは、実施例1に比べより迅速に硬化し、良好な硬度を有していた。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば、歯磨き粉で市販されている三層のペーストのようにして、多層の光硬化樹脂を効率的に作製できることとなる。
本発明によれば、内部から硬化が始まることにより、ひずみや変形を防止した光硬化性樹脂成形物の製造方法を提供することができる。
また本発明によれば、特に窩洞などの穴部に充填した場合に穴の底部分との間に隙間が少なく、接着強度の強い光硬化性樹脂成形物の製造方法を提供することができる。
また本発明によれば、このような光硬化性樹脂成形物の製造方法を利用した、歯科用充填物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の光照射途中の3層(3つのセル中)の樹脂の様子を示す図面代用写真である。
【図2】 第2の光照射途中の3層(3つのセル中)の樹脂の様子を示す図面代用写真である。
【図3】 第3の光照射途中の3層(3つのセル中)の樹脂の様子を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
1 第1層
2 第2層
3 第3層
4 レーザ光
5 硬化により収縮している部分

Claims (6)

  1. 第1の樹脂層と、
    当該第1の樹脂層を覆い、当該第1の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第2の樹脂層と、
    当該第2の樹脂層を覆い、当該第2の樹脂層の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収波長領域を有する第3の樹脂層と、
    を有する光硬化性樹脂組成物であって、
    前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層、前記第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、第1の樹脂層、第2の樹脂層、第3の樹脂層の順に短波長にシフトする光硬化性樹脂組成物を用い、
    前記第1の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第1の光照射工程と、前記第2の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第2の光照射工程と、前記第3の樹脂層の吸収波長領域内にある光を照射する第3の光照射工程と、を含むヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
  2. 前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層、前記第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、それぞれ400nm〜500nm、350nm〜390nm、200nm〜340nmである請求項に記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
  3. 前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層、前記第3の樹脂層の近赤外から近紫外領域での光吸収の最大ピークは、それぞれ500nm以上、470nm±20nm、355nm±20nmである請求項に記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
  4. 少なくとも一つ以上の樹脂層には、可視光を吸収する金属微粉末、又はフラーレン、若しくはカーボンナノチューブが含まれている請求項1〜のいずれかに記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
  5. 少なくとも一つ以上の樹脂層には、ベンゾフェノン系色素が含まれている請求項1〜のいずれかに記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
  6. 光源として、YAGレーザの第2並びに第3高調波、及びLEDを用いる請求項1〜のいずれかに記載のヒト以外の動物の歯の空隙部に詰める充填物、または歯型の空隙部に詰める充填物を得るための光硬化性樹脂成形物の製造方法。
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