JP4149588B2 - フイリプサイトを主体とする合成ゼオライトと鎖状粘土鉱物とからなる複合材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フイリプサイトを主体とする合成ゼオライトと鎖状粘土鉱物とからなる複合材およびその製造方法に係り、用いられた原材料各個の吸着特性よりも優れた吸着性能を有する複合材(以下、吸着材と称すことがある)およびその適切な製造方法を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
水分やアンモニア分などを吸着処理するための吸着材としては従来から種々のものが提案されているが、ゼオライトは特有の細孔組織を有すると共に表面電荷、イオン交換能ないし吸着能などを有し、吸着剤、乾燥剤、イオン交換剤などに幅広く採用されており、このゼオライトには天然産品と合成品とがある。またこのような合成品として火力発電所などから大量に発生する代表的に図1の顕微鏡写真に示す如き石炭灰(フライアッシュ)を原料とし、アルカリ処理した図2に示すようなものは安価な合成ゼオライトとして次第に広く採用されつつある。特にこのものは吸水率40〜55%のように優れた吸水性を備え、しかも産業廃棄物として入手が容易かつ低コストである。
【0003】
前記のような石炭灰粉末を利用した合成ゼオライトは、アルミノ硅酸の骨格を有しており、AlO4 及びSiO4 の四面体によってくびれを持ったトンネルを形成している。また、固有の細孔径、イオン交換能、吸着性を持ち、乾燥剤、分子ふるい、イオン交換剤等の吸着剤として様々な用途に用いられていて、前記のようにコスト的に入手が容易で、しかも前記図2に示したような微細構成からして相当の吸水その他の吸着性を有することは利用上において決定的な有利性を有するものと言える。
【0004】
なお、前記した石炭灰粉末その他の粉状素材を用いて得られる合成ゼオライトによって成形吸着材を得るに当たり、調整された合成ゼオライト(粉状物)に対し、バインダーを添加して成形体(目的製品)を得ることについては従来から種々に実施されて来たところであり、前記のようなアルカリ処理されたフライアッシュなどによる合成ゼオライトに対しバインダーとして天然鉱物である図3に示すようなセピオライトやパリゴルスカイトのような鎖状粘土鉱物を用いることも特開昭60−132643号公報や特開昭61−242911号公報の如きに発表されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のようなフライアッシュなどを用いた合成ゼオライトはその利用目的に則した製品とするために、その用途、目的に即応した成形体とすることが実質的に不可欠であって、単なる粉状物ではその取扱いに困難性が多く、粉状のものでは目的の物体に混入添加すること、及びそうした混合状態のものをカラム中に収容して処理しなければならない不利がある。従って何等かの結着剤を用いて成形することとならざるを得ないが、そうした造形バインダーを混入して形成することは吸着物質としての担持能力を低下させる不利がある。
【0006】
また、フライアッシュなどによる合成ゼオライトが上記したように吸着性が好ましいものであるとしても、このものは保型性が不充分で、粉化し易い不利があり、斯うした欠点をカバーして形成するにはバインダー、特に有機バインダーを用いることが不可欠的となる。ところがこのようにして用いられる造粒バインダーは一般的に折角の図2に示すような微細粉粒化した周面全般を閉塞し、その吸着特性を低下(担持能力低下)する不利がある。就中前記した有機バインダーは、耐火性や耐熱性に欠けることが普通であるから、吸着材としての使用条件が大幅に制限される。何れにしても前記したフライアッシュなどによる合成ゼオライトが吸着材として成形体と されることにより折角の吸着性能が低減、阻害されることが不可避的で、精々その低減レベルを制限することとならざるを得ない。
【0007】
前記した特開昭60−132643号公報や特開昭61−242911号公報のように天然鉱物であるセピオライトやパリゴルスカイトのような鎖状粘土鉱物を前記合成ゼオライトの造粒成形に用いることは少なくとも有機バインダーを用いることによる前記問題点を適切に解決し得るが、図2のような合成ゼオライトを図3のような鎖状粘土鉱物に対し均等状に分散担持させることが容易でなく、少なくとも部分的に合成ゼオライトの集合部を発生し易いこととなり、本発明者がこのようなセピオライトを用いて合成ゼオライトを造粒形成したものについてその吸着性を検討した結果においては150〜270wt%程度の吸水率しか得られない。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記したような従来技術における実情に鑑み、その課題を解決することについて更に検討を重ねた結果、セピオライトやパリゴルスカイトなどの鎖状粘土鉱物を前記したようなフライアッシュなどによる合成ゼオライトに対する結着材として採用すると共に合成ゼオライト化してない原材料のフライアッシュを鎖状粘土鉱物に分散担持させた状態でアルカリ処理し合成ゼオライト化することにより、上記したような課題を的確に解消し、用いられた各資材の個々よりも吸着性に優れた吸着材を得、また好ましい製造方法を得ることに成功したものであって、以下の如くである。
【0009】
本発明の請求項1記載の発明は、シリカ、アルミナ源としての石炭灰粉末またはアルミナシリケート系ガラス粉末と鎖状粘土鉱物を用い、前記石炭灰粉末またはアルミナシリケート系ガラス粉末を前記鎖状粘土鉱物の表面に分散担持せしめてからアルカリ処理することにより、フイリプサイトを主体とする合成ゼオライトがアルカリ処理された鎖状粘土鉱物表面に分散担持された複合材を製造することを特徴とする複合材の製造方法である。
【0010】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の製造方法により製造された複合材であって、シリカ、アルミナ源としての石炭灰粉末またはアルミナシリケート系ガラス粉末がフイリプサイトを主体とする合成ゼオライトにゼオライト化されて鎖状粘土鉱物表面に分散担持されていることを特徴とする複合材である。
【0011】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項2記載の複合材において、前記石炭灰粉末がフライアッシュであることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項2あるいは請求項3記載の複合材において、前記鎖状粘土鉱物がセピオライトやパリゴルスカイトであることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の複合材において、前記複合材が所定形態に成形されていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
上記したような本発明によるものの具体的な実施態様について説明すると、本発明者等は前記したようなフライアッシュの如き微粉状石炭灰をゼオライト化して吸着材として利用することについて研究を重ねた。即ち、前記微粉状石炭灰をゼオライト化したものは保型性に欠けることからこのものを吸着材とするには不都合が多く、少なくともバインダーを用いて適宜の形態に成型することが不可欠である。ところがこのような目的において有機バインダーを用いるならば耐水性や耐熱性に欠け、使用条件が著しく限定されたものとならざるを得ないことは上述の如くである。
【0015】
前記したような有機バインダーによる不利を解消すべく、本発明においては無機質バインダーとしてセピオライト、パリゴルスカイトのような鎖状粘土鉱物を採用する。このものは繊維状粘土鉱物とされていることは周知の如くで、その部分的性状は別に図3として示す如くである。即ち、この粘土鉱物が、本発明においては単に成型用バインダーとしてのみならず前記のような微粉状石炭灰のアルカリ処理によるゼオライト化目的においても均一に分散した系とすることができ最も効率化が図れる。
【0016】
即ち、上記のような技術的考慮からしてフライアッシュである図1の石炭灰粉末がゼオライト化しない状態において前記した図3の鎖状粘土鉱物に分散添加され、このような鎖状粘土鉱物への分散担持状態でアルカリ処理し石炭灰粉末をゼオライト化する。つまり、微粉状石炭灰がセピオライトに分散担持された状態でアルカリ処理することによりその微粉状石炭灰における露出外表面の全般における吸着性能が効率的に向上されたゼオライト化を得しめる。
【0017】
また、本発明においては前記のように微粉状石炭粉末が鎖状粘土鉱物に分散担持されたものにおいて、その図3のような鎖状粘土鉱物を前記の如く吸着材とすると共に成型用バインダーとしても利用し、シート状または方形、円形その他の適宜の形態をなす成形吸着材とする。即ち、ゼオライト化された図2のような石炭粉末及びバインダーとしての鎖状粘土鉱物が共に有効な吸着材であり、このようなバインダーを用いても吸着作用が劣化するおそれはないことが明らかで、石炭灰粉末のゼオライト化を図4および図5に示すように効率化し、セピオライト自体も吸着性能を発揮し、成形バインダーによってもゼオライト化された石炭灰粉末の露出表面全般の吸着特性が充分に確保されて阻害されないところに本発明の特筆すべき技術的特質がある。
【0018】
【実施例】
上記したような本発明についてその具体的実施態様を説明すると、本発明者等は先ず原料たる石炭灰微粉末として火力発電所から発生した産業廃棄物である図1に示したようなフライアッシュ(石炭灰:FA)を採用し、また鎖状粘土鉱物として昭和鉱業株式会社の市販する図3に一例を示したようなセピオライトSP−2を採用した。即ち、これらの原材料についての化学組成の代表例を示すと次の表1及び表2の如くである。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
然して前記したような表1の石炭灰微粉末は、本発明において表2のセピオライトに対し分散担持せしめられるもので、石炭灰微粉末の50wt%であるセピオライトを用いて、略均等状態に石炭微粉末を分散担持させたものを準備し、このような分散担持材0.015Kgに対し、NaOH2N,75mlを用いてアルカリ処理し石炭灰微粉末をゼオライト化した。このアルカリ処理は一般的に80〜95℃の温度条件で5〜12時間処理するが、この実施例では代表的には95℃により5時間で実施した。
【0022】
得られた生成物は吸引瀘過し、蒸留水で洗浄してから例えば80℃以上で乾燥し製品とするが、このような本発明方法による製品について石炭灰粉末のゼオライト化を検討した結果は、前記NaOHによる水熱処理によってフイリプサイト(Na3Al3Si5O16・6H2O)の生成が確認され、その生成量は時間と共に増大し、5時間以上で一定状態となるが、NaOH水溶液の濃度の高い方が多く、また95℃で急増することが認められる。何れにしてもそれ自体が吸着作用を有する繊維状セピオライトとフイリプサイトを主体とした合成ゼオライトによる複合材を合成でき、このようにして得られた成品についての部分的な顕微鏡写真は図4と図5に示す如くである。
【0023】
具体的に得られた吸着材について、用いられた石炭灰粉末(フライアッシュ)によるゼオライトのみの吸水率(1) ,(2)(95℃でゼオライト化されたものでNaOH:75mlとNaOH:200mlでそれぞれゼオライト化されたFAゼオライト2種)と、本発明によるNaOH:75mlで95℃のもの(3) およびNaOH:200mlで95℃のもの(4) 及びNaOH:75mlで90℃のもの(5) の3種及び比較材として前記(1) とセピオライト(ミルコンSP−2)とを上述した本発明実施例のものと同じに2:1の割合に混合したもの(6) 、及び前記(2) とセピオライト(ミルコンSP−2)とを同じく2:1の割合に混合したもの(7) の7種類(これら比較例の顕微鏡写真は図6に示す如くである)の吸着材について、それぞれの吸水率を試験測定した結果は次の表3の如くであった。
【0024】
【表3】
【0025】
即ち、上記したような表3の結果によるときは本発明による(3) 〜(5) のものが比較材(1)(2)及び(6)(7)の何れのものよりも25〜100wt%程度優れた吸水率を有していることが明らかであって、好ましい吸着材であることは何れにしても明確である。なおこのようにして得られる本発明の吸着材はシート状に形成し、あるいはその他任意の形状に成形して製品とされる。
【0026】
また、上記のような吸水率とは別にアンモニウム吸着特性について試験した。即ち、検量線の作成は0.1mol/l のNH3 水を25ml採り、HCl を添加してpHを7程度とし、このものを50mlに稀釈してから該稀釈液を0.1mlおよび0.2ml採り、これらのものの夫々にネスラー試薬を2ml入れた後に100mlに稀釈し、このようにして得られたものを20min 放置してから吸光光度計にて測定(λ=420nm) した。
【0027】
またアンモニウム吸着量の測定は、次のように実施した。
(1)200mlビーカーに試料1gを秤量し、容器に入れ、0.1mol/l NH3 水を100ml入れた後HCl を入れてpHを約8にする。その後溶液を室温下で1時間撹拌する。
(2)200mlメスフラスコに移し200mlに定容する。また、確認のためpHも測定する。
(3)溶液を遠心分離機にかける(3000rpmで5min)。
(4)上澄み液0.2mlを100mlメスフラスコに採り、ネスラー試薬2ml入れ100mlに稀釈する。
(5)20min放置後、吸光光度計で測定する(λ=420nm) 。
【0028】
上記したようなアンモニウム吸着特性試験を、(1) FAのゼオライト化をセピオライトに分散担持させ実施した本發明によるもの、(2) FAゼオライトのみのもの、(3) セピオライト(ミルコンSP−2)のみのもの、および(4) FAゼオライトをセピオライトに分散担持させたもの、の(1) 〜(4) 4種について夫々実施した結果を要約して示すと次の表4の如くである。
【0029】
【表4】
【0030】
即ち、(2) のFAゼオライトのみにものがアンモニウム吸着量で1.79mmol/gと高い値を示すとしても単にFAゼオライト単味では吸着材として使用に支障のあることは明らかであり、一方このFAゼオライトをセピオライトに分散担持させた(4) のものは0.57mmol/gとアンモニアの吸着量が大幅に低下している。これに対し原材料組成としてはこの(4) のものと同じである本発明の(1) のものは、(4) と同じに適宜に成形された吸着材としての使用に好ましいものであるに拘わらず、アンモニア吸着量においては(2) のFAゼオライト単味の値に近く、FAゼオライト:セピオライトを2:1として分散担持させた(1) のものは次の数1のように計算され、殆ど理論値(1.26)に近いアンモニウム吸着量を得しめていることが知られた。
【0031】
【数1】
【0032】
【発明の効果】
上記したような本発明によるならば、コスト的に入手が容易なフライアッシュの如き石炭灰粉末またはアルミナシリケート系ガラス粉末を用い、しかもそれ自体も吸着作用を有しているセピオライトなどの鎖状粘土鉱物を用いて該鎖状粘土鉱物に分散担持された状態でゼオライト化されていることによって十分な吸着特性を具備し、また適切に成形された製品を提供することができるものであって、工業的にその効果の大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明者等の採用した石炭灰粉末(電源開発株式会社)についての図面代用顕微鏡写真である。
【図2】図1に示したような石炭灰粉末をゼオライト化したものの図面代用顕微鏡写真である。
【図3】本発明者等の用いた鎖状粘土鉱石(セピオライト SP−2)についての図面代用顕微鏡写真である。
【図4】本発明による吸着材についての部分的な図面代用顕微鏡写真である。
【図5】本発明による吸着材についてのもう1つの部分的な図面代用顕微鏡写真である。
【図6】ゼオライト化した石炭灰粉末をセピオライトに分散付着させた比較例についての図面代用顕微鏡写真である。
Claims (5)
- シリカ、アルミナ源としての石炭灰粉末またはアルミナシリケート系ガラス粉末と鎖状粘土鉱物を用い、前記石炭灰粉末またはアルミナシリケート系ガラス粉末を前記鎖状粘土鉱物の表面に分散担持せしめてからアルカリ処理することにより、フイリプサイトを主体とする合成ゼオライトがアルカリ処理された鎖状粘土鉱物表面に分散担持された複合材を製造することを特徴とする複合材の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法により製造された複合材であって、シリカ、アルミナ源としての石炭灰粉末またはアルミナシリケート系ガラス粉末がフイリプサイトを主体とする合成ゼオライトにゼオライト化されて鎖状粘土鉱物表面に分散担持されていることを特徴とする複合材。
- 前記石炭灰粉末がフライアッシュであることを特徴とする請求項2記載の複合材。
- 前記鎖状粘土鉱物がセピオライトやパリゴルスカイトであることを特徴とする請求項2あるいは請求項3記載の複合材。
- 前記複合材が所定形態に成形されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の複合材。
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