JP4148653B2 - 液晶配向膜、棒状液晶性分子を配向させる方法、光学補償シートおよび偏光板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶配向膜に関する。また、本発明は、棒状液晶性分子を配向膜を用いてラビング方向に垂直に配向させる方法に関する。さらに、本発明は、透明支持体上に配向膜と棒状液晶性分子から形成された光学的異方性層とをこの順に有する光学補償シート、およびそれを用いた偏光板にも関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、液晶セル、偏光素子および光学補償シート(位相差板)からなる。透過型液晶表示装置では、二枚の偏光素子を液晶セルの両側に取り付け、一枚または二枚の光学補償シートを液晶セルと偏光素子との間に配置する。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚の光学補償シート、そして一枚の偏光素子の順に配置する。
液晶セルは、棒状液晶性分子層、それを封入するための二枚の基板、棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層、および棒状液晶性分子の配向を制御する配向膜層からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いで、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence )、反射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest-Host)のような様々な表示モードが提案されている。
【0003】
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折ポリマーフイルムが従来から使用されていた。
延伸複屈折フイルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に液晶性分子から形成された光学的異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。液晶性分子には多様な配向形態があるため、液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折ポリマーフイルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0004】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定する。液晶性分子を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。液晶性分子としては、一般に、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子が用いられている。
液晶性分子を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。例えば、TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号および国際特許出願WO96/37804号の各明細書に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
棒状液晶性分子から形成された光学的異方性層を有する光学補償シートでは、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向が、光学補償シートの遅相軸に相当する。棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向は、一般に配向膜のラビング方向に相当する。光学補償シートは実際の生産においてはロール状であって、ラビング処理はロール状光学補償シートの長手方向に実施することが最も容易である。従って、棒状液晶性分子から形成された光学的異方性層を有する光学補償シートでは、長手方向に遅相軸を有する態様が最も容易に生産できる。
偏光膜の透過軸は、偏光膜を構成するポリマーフイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。偏光素子も実際の生産においてはロール状であって、延伸処理はロール状偏光膜の長手方向に実施することが最も容易である。従って、長手方向に垂直な方向(幅方向)に透過軸を有する偏光素子が最も容易に生産できる。
【0006】
以上の関係から、ロール状光学補償シートとロール状偏光素子とを積層する場合、光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とを実質的に垂直になるように配置することが最も生産が容易である。
一方、液晶セルの表示モードによっては、光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とを実質的に平行になるように配置することが好ましい場合がある。
ロール状光学補償シートの遅相軸が光学補償シートの幅方向となるためには、棒状液晶性分子を、その長軸方向が配向膜のラビング方向に対して垂直となるように配向させる必要がある。本明細書において「棒状液晶性分子の長軸方向が配向膜のラビング方向に対して垂直」とは、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向が、ラビング方向に対して直交することを意味する。棒状液晶性分子をラビング方向に対して垂直となるように配向させるためには、そのような配向機能を有する配向膜が必要である。従来の配向膜は、棒状液晶分子をラビング方向に対して平行に配向させる機能を有する。
【0007】
本発明の目的は、棒状液晶分子をラビング方向に対して垂直に配向させる機能を有する液晶配向膜を提供することである。
本発明の別の目的は、棒状液晶分子をラビング方向に対して垂直に配向させることである。
本発明のさらに別の目的は、幅方向に遅相軸を有するロール状の光学補償シートを提供することである。
本発明のさらにまた別の目的は、光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とが実質的に平行になるように容易に配置できる偏光板を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(4)の液晶配向膜、下記(5)〜(9)の棒状液晶性分子を配向させる方法、下記(10)の光学補償シートおよび下記(11)の偏光板により達成された。
(1)支持体上に設けられている液晶配向膜であって、ポリイミドまたはポリアミック酸を含み、ポリイミドまたはポリアミック酸が、側鎖にカルバゾール骨格を有することを特徴とする液晶配向膜。
(2)ポリイミドまたはポリアミック酸が、下記式(XI)または(XA)で表される繰り返し単位と、下記式(Y)で表される繰り返し単位とを有する(1)に記載の液晶配向膜:
【0009】
【化3】
【0010】
[式中、Xは、少なくとも一つの芳香族環、脂肪族環または複素環を含む四価の連結基であり;Yは、少なくとも一つの芳香族環を含む二価の連結基であり;Mは、水素原子、金属原子または有機塩基であり;そして、XおよびYの少なくとも一方は、カルバゾール骨格を含む置換基を有する]。
(3)カルバゾール骨格を含む置換基が、下記式(CZ)で表される(2)に記載の液晶配向膜:
【0011】
【化4】
【0012】
[式中、Lは、単結合、あるいは、−O−、−CO−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり;ベンゼン環AおよびBは、それぞれ、他のベンゼン環が縮合していてもよく;そして、ベンゼン環A、Bおよびそれらの縮合環は、置換基を有していてもよい]。
(4)ポリイミドまたはポリアミック酸が、さらに側鎖に重合性基を有する(1)に記載の液晶配向膜。
【0013】
(5)支持体上に、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸を塗布して塗布層を設け;塗布層の表面をラビング処理して配向膜を形成し;そして、配向膜の上に棒状液晶性分子を含む塗布液を塗布して乾燥することにより、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向と配向膜のラビング方向とが実質的に直交するように棒状液晶性分子を配向させる方法。
(6)棒状液晶性分子が重合性基を有し、棒状液晶性分子を配向させた後、棒状液晶性分子を重合させて配向状態を固定する(5)に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。
【0014】
(7)支持体がロール状であり、棒状液晶性分子の長軸方向を支持体面に投影して得られる線の平均方向が、支持体の長手方向に対して実質的に直交している(5)に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。
(8)支持体がロール状であり、配向膜のラビング方向が、支持体の長手方向に対して実質的に平行である(5)に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。(9)棒状液晶性分子の長軸方向と支持体面との間の平均傾斜角が5゜未満の状態で棒状液晶性分子を配向させる(5)に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。
【0015】
(10)透明支持体、配向膜および棒状液晶性分子から形成された光学的異方性層をこの順に有するロール状の光学補償シートであって、配向膜が、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸からなり、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向と配向膜のラビング方向とが実質的に直交するように棒状液晶性分子が配向していることを特徴とする光学補償シート。
【0016】
(11)棒状液晶性分子から形成された光学的異方性層、配向膜、透明支持体、偏光膜および透明保護膜を有するロール状の偏光板であって、配向膜が、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸からなり、棒状液晶性分子の長軸方向と透明支持体面との間の平均傾斜角が5゜未満の状態で棒状液晶性分子が配向しており、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向と偏光板の長手方向とが実質的に直交しており、そして偏光膜の透過軸と棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向とが実質的に平行であることを特徴とする偏光板。
【0017】
なお、本明細書において、実質的に平行あるいは実質的に直交とは、厳密な平行あるいは厳密な直交との角度の差が5゜未満であることを意味する。角度の差は、4゜未満であることが好ましく、3゜未満であることがより好ましく、2゜未満であることがさらに好ましく、1゜未満であることが最も好ましい。
【0018】
【発明の効果】
本発明者の研究の結果、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸を液晶配向膜に用いると、棒状液晶性分子をラビング方向に対して実質的に垂直となるように均一に配向できることが判明した。これにより、棒状液晶性分子が、ラビング方向に対して実質的に垂直に配向している光学補償シートを作製することができる。従って、長手方向に垂直な方向(幅方向)に遅相軸を有するロール状光学補償シートを、容易に生産することが可能になった。
一方、前述したように、長手方向に垂直な方向(幅方向)に透過軸を有するロール状偏光素子が最も容易に生産できる。従って、本発明に従うロール状光学補償シートとロール状偏光素子とを、ロール状態のまま貼り合わせることで、光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とが実質的に平行である偏光板を生産することができる。
以上のように、本発明に従う光学補償シートを用いることで、光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とが実質的に平行になるように容易に配置することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、透過型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
図1の(a)に示す透過型液晶表示装置は、バックライト(BL)側から順に、透明保護膜(1a)、偏光膜(2a)、透明支持体(3a)、光学的異方性層(4a)、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶性分子層(6)、液晶セルの上基板(5b)、光学的異方性層(4b)、透明支持体(3b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1b)からなる。
透明支持体および光学的異方性層(3a〜4aおよび4b〜3b)が光学補償シートを構成する。そして、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学的異方性層(1a〜4aおよび4b〜1b)が偏光板を構成する。
透明支持体(3a、3b)は、光学的異方性層(4a、4b)側に配向膜を有する。また、液晶セルの下基板(5a)および上基板(5b)も、棒状液晶性分子層(6)側に配向膜を有する。
【0020】
図1の(b)に示す透過型液晶表示装置は、バックライト(BL)側から順に、透明保護膜(1a)、偏光膜(2a)、透明支持体(3a)、光学的異方性層(4a)、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶性分子層(6)、液晶セルの上基板(5b)、透明保護膜(1b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1c)からなる。
透明支持体および光学的異方性層(3a〜4a)が光学補償シートを構成する。そして、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学的異方性層(1a〜4a)が偏光板を構成する。
透明支持体(3a)は、光学的異方性層(4a)側に配向膜を有する。また、液晶セルの下基板(5a)および上基板(5b)も、棒状液晶性分子層(6)側に配向膜を有する。
【0021】
図1の(c)に示す透過型液晶表示装置は、バックライト(BL)側から順に、透明保護膜(1a)、偏光膜(2a)、透明保護膜(1b)、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶性分子層(6)、液晶セルの上基板(5b)、光学的異方性層(4b)、透明支持体(3b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1c)からなる。
透明支持体および光学的異方性層(4b〜3b)が光学補償シートを構成する。そして、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学的異方性層(4b〜1c)が偏光板を構成する。
透明支持体(3b)は、光学的異方性層(4b)側に配向膜を有する。また、液晶セルの下基板(5a)および上基板(5b)も、棒状液晶性分子層(6)側に配向膜を有する。
【0022】
図2は、反射型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
図2に示す反射型液晶表示装置は、下から順に、液晶セルの下基板(5a)、反射板(RP)、棒状液晶性分子層(6)、液晶セルの上基板(5b)、光学的異方性層(4)、透明支持体(3)、偏光膜(2)、そして透明保護膜(1)からなる。
透明支持体および光学的異方性層(4〜3)が光学補償シートを構成する。そして、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学的異方性層(4〜1)が偏光板を構成する。
透明支持体(3)は、光学的異方性層(4)側に配向膜を有する。また、液晶セルの反射板(RP)および上基板(5b)も、棒状液晶性分子層(6)側に配向膜を有する。
【0023】
図3は、ロール状偏光素子とロール状光学補償シートとの貼り合わせ工程を示す模式図である。
図3に示すように、ロール状偏光素子は、透明保護膜(1)および偏光膜(2)からなる。ロール状光学補償シートは、透明支持体(3)および光学的異方性層(4)からなる。透明支持体(3)は、光学的異方性層(4)側に配向膜を有する。
偏光膜(2)の透過軸(TA)は、ロール状偏光素子の長手方向(LD)と実質的に直交している。光学的異方性層(4)の棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向、すなわち遅相軸(SA)は、ロール状光学補償シートの長手方向(LD)と実質的に直交している。そのため、図3に示すように、ロール状偏光素子とロール状光学補償シートとをそのまま貼り合わせるだけで、偏光膜(2)の透過軸(TA)と光学的異方性層(4)の遅相軸(SA)とが実質的に平行になるように配置することができる。
なお、図1〜図3において、透明支持体(3)と光学的異方性層(4)との順序を逆に配置してもよい。
【0024】
[配向膜]
配向膜には、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸を用いる。ポリイミドは、下記式(XI)で表される繰り返し単位と、下記式(Y)で表される繰り返し単位とを有することが好ましい。ポリアミック酸は、下記式(XA)で表される繰り返し単位と、下記式(Y)で表される繰り返し単位とを有することが好ましい。
【0025】
【化5】
【0026】
式(XI)および(XA)において、Xは、少なくとも一つの芳香族環、脂肪族環または複素環を含む四価の連結基である。
芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロブタン環、シクロブテン環、シクロペンタン環、シクロヘプテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロへプタンおよびシクロヘプテン環が含まれる。脂肪族環と芳香族環とが縮合していてもよい。複素環の例には、オキソラン環が含まれる。
Xは、環状構造以外の連結基を含むこともできる。環状構造以外の連結基の例には、−O−、−CO−、−NH−、(鎖状)アルキレン基およびそれらの組み合わせが含まれる。
環状構造および鎖状アルキレン基は、置換基を有することができる。置換基の例には、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−CO−R、−CO−O−Rおよび−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0027】
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至6であることが好ましい。脂肪族基には、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が含まれる。置換アルキル基、置換アルケニル基および置換アルキニル基の置換基の例には、−CO−R、−CO−O−Rおよび−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
芳香族基には、アリール基および置換アリール基が含まれる。フェニルおよび置換フェニル基が好ましい。置換アリール基の置換基の例には、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−CO−R、−CO−O−Rおよび−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
複素環基は、後述するカルバゾール骨格を含む基であることが好ましい。複素環基は、置換基を有することができる。置換基の例には、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−CO−R、−CO−O−Rおよび−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0028】
式(Y)において、Yは、少なくとも一つの芳香族環を含む二価の連結基である。
芳香族環は、ベンゼン環またはナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがさらに好ましい。Yは、置換フェニレンであることが好ましく、5−置換−1,3−フェニレンであることが特に好ましい。置換フェニレンの置換基としては、カルバゾール骨格を含む置換基(後述)が好ましい。
式(XA)において、Mは、水素原子、金属原子または有機塩基である。Mは、水素原子であることが好ましい。
式(XI)、(XA)および(Y)において、XおよびYの少なくとも一方は、カルバゾール骨格を含む置換基を有する。カルバゾール骨格を含む置換基は、、下記式(CZ)で表される基であることが好ましい。
【0029】
【化6】
【0030】
式(CZ)において、Lは、単結合、あるいは、−O−、−CO−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。組み合わせからなる二価の連結基の例を以下に示す。Czは、カルバゾール骨格である。
L1:−CO−NH−アリーレン基−CO−Cz
L2:−アルキレン基−アリーレン基−Cz
L3:−O−CO−アリーレン基−
L4:−NH−CO−アリーレン基−
L5:−CO−NH−アリーレン基−CO−
L6:−O−CO−アリーレン基−CO−
L7:−O−アルキレン基−CO−
L8:−CO−O−アルキレン基−O−アリーレン基−CO−
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基の例は、置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0031】
式(CZ)において、ベンゼン環AおよびBは、それぞれ、他のベンゼン環が縮合していてもよい。
式(CZ)において、ベンゼン環A、Bおよびそれらの縮合環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−O−CO−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−NH−CO−R、−O−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0032】
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至6であることが好ましい。脂肪族基には、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基が含まれる。置換アルキル基、置換アルケニル基および置換アルキニル基の置換基の例には、−O−R、−CO−R、−O−CO−R、−CO−O−Rおよび−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
芳香族基には、アリール基および置換アリール基が含まれる。フェニルおよび置換フェニル基が好ましい。置換アリール基の置換基の例には、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−O−CO−R、−CO−O−Rおよび−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
複素環基は、置換基を有することができる。置換基の例には、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−O−CO−R、−CO−O−Rおよび−CO−NH−Rが含まれる。また、後述する重合性基(Q1〜Q17)も、置換基の例に含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0033】
ポリイミドまたはポリアミック酸は、さらに側鎖に重合性基を有することが好ましい。重合性基の例を以下に示す。
【0034】
【化7】
【0035】
重合性基は、後述する棒状液晶性分子の重合性基(Q)と重合反応させて、ポリイミドまたはポリアミック酸と棒状液晶性分子とを、配向膜と光学的異方性層との界面を介して化学的に結合させる。従って、重合性基の種類は、棒状液晶性分子の重合性基(Q)の種類と同様であることが好ましい。
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1〜Q7)、エポキシ基(Q8)またはアジリジニル基(Q9)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。
【0036】
主鎖と重合性基とは、直結せずに、連結基を介して連結することが好ましい。連結基の例には、−O−、−CO−、−NH−、アルキレン基、アリーレン基およびそれらの組み合わせが含まれる。組み合わせからなる連結基の例には、−O−CO−、−O−CO−NH−、−CO−O−アルキレン基−、−O−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−NH−アルキレン基−、−O−CO−NH−アルキレン基−O−、−O−CO−NH−アルキレン基−CO−O−、−O−CO−NH−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−NH−アルキレン基−CO−NH−、−O−CO−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−CO−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−O−、−O−CO−アリーレン基−O−アルキレン基−および−O−アルキレン基−O−CO−が含まれる(左側が主鎖に結合し、右側が重合性基に結合する)。
【0037】
上記アルキレン基は、分岐または環状構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
上記アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンであることが好ましく、フェニレンであることがさらに好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の置換基の例は、置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0038】
以下に、式(XI)で表される繰り返し単位(テトラカルボン酸起源の繰り返し単位、ただしイミドの窒素原子はジアミン起源)の例を示す。(XI−1)〜(XI−4)は、カルバゾール骨格を含む置換基を有する繰り返し単位である。(XI−5)〜(XI−13)は、カルバゾール骨格がない繰り返し単位である。
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
以下に、式(Y)で表される繰り返し単位(ジアミン起源の繰り返し単位、ただし窒素原子を除く)の例を示す。いずれの繰り返し単位も、カルバゾール骨格を含む置換基を有する。
【0048】
【化16】
【0049】
【化17】
【0050】
【化18】
【0051】
【化19】
【0052】
【化20】
【0053】
【化21】
【0054】
【化22】
【0055】
【化23】
【0056】
【化24】
【0057】
以下に、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドの例を、テトラカルボン酸起源の繰り返し単位(XI)とジアミン起源の繰り返し単位(Y)とを引用しながら示す。コポリマー中の繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0058】
PI−1:−(XI−1−Y−1)−
PI−2:−(XI−1−Y−1)40−(XI−1−Y−2)60−
PI−3:−(XI−1−Y−1)10−(XI−5−Y−1)90−
PI−4:−(XI−2−Y−1)10−(XI−5−Y−1)90−
PI−5:−(XI−3−Y−1)5 −(XI−6−Y−1)95−
PI−6:−(XI−4−Y−1)5 −(XI−5−Y−1)95−
PI−7:−(XI−5−Y−1)−
PI−8:−(XI−6−Y−1)−
PI−9:−(XI−5−Y−4)−
PI−10:−(XI−5−Y−11)−
【0059】
PI−11:−(XI−6−Y−11)−
PI−12:−(XI−6−Y−5)−
PI−13:−(XI−7−Y−6)−
PI−14:−(XI−8−Y−10)−
PI−15:−(XI−12−Y−1)−
PI−16:−(XI−13−Y−1)−
PI−17:−(XI−12−Y−11)−
PI−18:−(XI−13−Y−11)−
PI−19:−(XI−12−Y−18)−
PI−20:−(XI−8−Y−16)−
【0060】
以下に、式(XA)で表される繰り返し単位(テトラカルボン酸起源の繰り返し単位、ただしアミドの窒素原子はジアミン起源)の例を示す。(XA−1)〜(XA−4)は、カルバゾール骨格を含む置換基を有する繰り返し単位である。(XA−5)〜(XA−13)は、カルバゾール骨格がない繰り返し単位である。
【0061】
【化25】
【0062】
【化26】
【0063】
【化27】
【0064】
【化28】
【0065】
【化29】
【0066】
【化30】
【0067】
【化31】
【0068】
【化32】
【0069】
【化33】
【0070】
式(XA)で表される繰り返し単位のカルボキシル基(−COOM)と、重合性基(Q)を有するアルコールの水酸基(−OH)とをエステル結合させた繰り返し単位を、重合性基を有する繰り返し単位として、ポリイミドまたはポリアミック酸に導入することができる。
そのような重合性基を有する繰り返し単位の例を以下に示す。
【0071】
【化34】
【0072】
【化35】
【0073】
【化36】
【0074】
【化37】
【0075】
【化38】
【0076】
【化39】
【0077】
【化40】
【0078】
【化41】
【0079】
【化42】
【0080】
【化43】
【0081】
【化44】
【0082】
【化45】
【0083】
【化46】
【0084】
【化47】
【0085】
【化48】
【0086】
【化49】
【0087】
以下に、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリアミック酸の例を、テトラカルボン酸起源の繰り返し単位(XA)、ジアミン起源の繰り返し単位(Y)および重合性基を有する繰り返し単位(XQ)を引用しながら示す。コポリマー中の繰り返し単位の割合は、モル%である。
【0088】
PA−1:−(XA−1−Y−1)−
PA−2:−(XA−1−Y−1)40−(XA−1−Y−2)60−
PA−3:−(XA−1−Y−1)10−(XA−5−Y−1)90−
PA−4:−(XA−2−Y−1)10−(XA−5−Y−1)90−
PA−5:−(XA−3−Y−1)5 −(XA−6−Y−1)95−
PA−6:−(XA−4−Y−1)5 −(XA−5−Y−1)95−
PA−7:−(XA−5−Y−1)−
PA−8:−(XA−6−Y−1)−
PA−9:−(XA−5−Y−4)−
PA−10:−(XA−5−Y−11)−
【0089】
PA−11:−(XA−6−Y−11)−
PA−12:−(XA−6−Y−5)−
PA−13:−(XA−7−Y−6)−
PA−14:−(XA−8−Y−10)−
PA−15:−(XA−12−Y−1)−
PA−16:−(XA−13−Y−1)−
PA−17:−(XA−12−Y−11)−
PA−18:−(XA−13−Y−11)−
PA−19:−(XA−12−Y−18)−
PA−20:−(XA−8−Y−16)−
PA−21:−(XA−6−Y−1)98−(XQ−7−Y−1)2 −
PA−22:−(XA−6−Y−1)98−(XQ−16−Y−1)2 −
【0090】
配向膜は、ポリアミック酸またはポリイミドを塗布して塗布層を形成し、塗布層の表面をラビング処理することにより得られる。ポリアミック酸を塗布してから、カルボキシル基(−COOM)とアミド結合のイミノ基(−NH−)とを反応させてポリイミドを形成してもよい。
ラビング処理は、ポリマー塗布層の表面を、紙や布で一定方向(通常は長手方向)に、数回こすることにより実施する。
配向膜の厚さは、0.01乃至5μmであることが好ましく、0.05乃至1μmであることがさらに好ましい。
なお、配向膜を用いて、光学的異方性層の棒状液晶性分子を配向させてから、光学的異方性層を透明支持体上に転写してもよい。配向状態で固定された棒状液晶性分子は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。
【0091】
[光学的異方性層]
光学的異方性層は、棒状液晶性分子から形成する。棒状液晶性分子は、棒状液晶性分子の長軸方向と透明支持体面との間の平均傾斜角が5゜未満の状態で配向させることが好ましい。
光学的異方性層を設けることにより、光学補償シート全体のレターデーションを調整することが好ましい。光学補償シート全体の面内レターデーション(Re)は、20乃至200nmであることが好ましく、20乃至100nmであることがさらに好ましく、20乃至70nmであることが最も好ましい。光学補償シート全体の厚み方向のレターデーション(Rth)は、70乃至500nmであることが好ましく、70至400mであることがより好ましく、70乃至300nmであることがさらに好ましい。光学補償シートの面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re=(nx−ny)×d
Rth=[{(nx+ny)/2}−nz]×d
式中、nxおよびnyは、光学補償シートの面内屈折率であり、nzは光学補償シートの厚み方向の屈折率であり、そしてdは光学補償シートの厚さである。光学的異方性層と、光学的一軸性または光学的二軸性を有する透明支持体とを組み合わせることで、光学補償シート全体のレターデーションを調整することもできる。光学的一軸性または光学的二軸性を有する透明支持体については、後述する。
【0092】
光学的異方性層に用いる棒状液晶性分子は、配向している状態で固定されていることが好ましい。ポリマーバインダーを用いて配向状態を固定することもできるが、重合反応により固定することが好ましい。
液晶セルの表示モードによっては、棒状液晶性分子がコレステリック配向していてもよい。棒状液晶性分子がコレステリック配向する場合、選択反射域は可視領域外であることが好ましい。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994年)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001乃至0.7であることが好ましい。
【0093】
棒状液晶性分子は、重合性基を有することが好ましい。重合性基(Q)の例は、前述したポリイミドまたはポリアミック酸の重合性基の例(Q1〜Q17)と同様である。重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1〜Q7)、エポキシ基(Q8)またはアジリジニル基(Q9)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。
棒状液晶性分子は、短軸方向に対してほぼ対称となる分子構造を有することが好ましい。そのためには、棒状分子構造の両端に重合性基を有することが好ましい。
以下に、棒状液晶性分子の例を示す。
【0094】
【化50】
【0095】
【化51】
【0096】
【化52】
【0097】
【化53】
【0098】
【化54】
【0099】
【化55】
【0100】
【化56】
【0101】
【化57】
【0102】
【化58】
【0103】
【化59】
【0104】
【化60】
【0105】
【化61】
【0106】
【化62】
【0107】
【化63】
【0108】
【化64】
【0109】
【化65】
【0110】
【化66】
【0111】
【化67】
【0112】
【化68】
【0113】
【化69】
【0114】
【化70】
【0115】
光学的異方性層は、棒状液晶性分子あるいは下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む液晶組成物(塗布液)を、配向膜の上に塗布することで形成する。
液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
液晶組成物の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0116】
棒状液晶性分子の重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20質量%であることが好ましく、0.5乃至5質量%であることがさらに好ましい。
棒状液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 乃至50J/cm2 であることが好ましく、100乃至800mJ/cm2 であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
光学的異方性層の厚さは、0.1乃至20μmであることが好ましく、0.2乃至15μmであることがさらに好ましく、0.3乃至10μmであることが最も好ましい。
【0117】
[支持体]
支持体は、透明であることが好ましい。光学補償シートの透明支持体として、ガラス板またはポリマーフイルム、好ましくはポリマーフイルムが用いられる。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。
透明支持体として、一般には、光学等方性のポリマーフイルムが用いられている。光学等方性とは、具体的には、面内レターデーション(Re)が10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。また、光学等方性透明支持体では、厚み方向のレターデーション(Rth)も、10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。透明支持体の面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re=(nx−ny)×d
Rth=[{(nx+ny)/2}−nz]×d
式中、nxおよびnyは、透明支持体の面内屈折率であり、nzは透明支持体の厚み方向の屈折率であり、そしてdは透明支持体の厚さである。
【0118】
液晶表示モードの種類によっては、透明支持体として光学異方性のポリマーフイルムが用いられる場合もある。すなわち、光学的異方性層の光学異方性に透明支持体の光学異方性も加えて、液晶セルの光学異方性に対応する(光学的に補償する)場合もある。そのような場合、透明支持体は、光学的一軸性または光学的二軸性を有することが好ましい。光学的一軸性支持体の場合、光学的に正(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも大)であっても負(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも小)であってもよい。光学的二軸性支持体の場合、前記式の屈折率nx、nyおよびnzは、全て異なる値(nx≠ny≠nz)になる。
光学異方性透明支持体の面内レターデーション(Re)は、0乃至300nmであることが好ましく、0乃至200nmであることがさらに好ましく、0乃至100nmであることが最も好ましい。光学異方性透明支持体の厚み方向のレターデーション(Rth)は、10乃至1000nmであることが好ましく、50乃至400nmであることがより好ましく、100乃至300nmであることがさらに好ましい。
【0119】
透明支持体を形成する材料は、光学等方性支持体とするか、光学異方性支持体とするかに応じて決定する。光学等方性支持体の場合は、一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学異方性支持体の場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。ただし、欧州特許0911656A2号明細書に記載されている(1)レターデーション上昇剤(複屈折率上昇剤)の使用、(2)セルロースアセテートの酢化度の低下、あるいは(3)冷却溶解法によるフイルムの製造により、光学異方性の(レターデーションが高い)セルロースエステルフイルムを製造することもできる。
ポリマーフイルムからなる透明支持体は、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
【0120】
光学異方性透明支持体を得るためには、ポリマーフイルムに延伸処理を実施することが好ましい。
光学的一軸性支持体を製造する場合は、通常の一軸延伸処理または二軸延伸処理を実施すればよい。
光学的二軸性支持体を製造する場合は、アンバランス二軸延伸処理を実施することが好ましい。アンバランス二軸延伸では、ポリマーフイルムをある方向に一定倍率(例えば3乃至100%、好ましくは5乃至30%)延伸し、それと垂直な方向にそれ以上の倍率(例えば6乃至200%、好ましくは10乃至90%)延伸する。二方向の延伸処理は、同時に実施してもよい。
延伸方向(アンバランス二軸延伸では延伸倍率の高い方向)と延伸後のフイルムの面内の遅相軸とは、実質的に同じ方向になることが好ましい。延伸方向と遅相軸との角度は、10゜未満であることが好ましく、5゜未満であることがさらに好ましく、3゜未満であることが最も好ましい。
なお、光学的一軸性または光学的二軸性を有する透明支持体を用いる場合、光学的異方性層の棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向が、透明支持体の面内の遅相軸と、実質的に平行または直交しているように配置することが好ましい。
【0121】
透明支持体の厚さは、10乃至500μmであることが好ましく、50乃至200μmであることがさらに好ましい。
透明支持体とその上に設けられる層(密着層、配向膜あるいは光学的異方性層)との密着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。
透明支持体に紫外線吸収剤を添加してもよい。
透明支持体の上に、密着層(下塗り層)を設けてもよい。密着層については、特開平7−333433号公報に記載がある。密着層の厚さは、0.1乃至2μmであることが好ましく、0.2乃至1μmであることがさらに好ましい。
【0122】
[偏光膜]
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光膜の透過軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
偏光膜の透過軸は、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向(遅相軸)と、実質的に平行になるように配置する。
【0123】
[透明保護膜]
透明保護膜としては、透明なポリマーフイルムが用いられる。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。
透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフイルム、好ましくはトリアセチルセルロースフイルムが用いられる。セルロースエステルフイルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
透明保護膜の厚さは、20乃至500μmであることが好ましく、50乃至200μmであることがさらに好ましい。
【0124】
[液晶表示装置]
本発明は、様々な表示モードの液晶セルに適用できる。前述したように、液晶性分子を用いた光学補償シートは、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence )およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モードの液晶セルに対応するものが既に提案されている。
本発明の光学補償シートおよび偏光板は、光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とを実質的に平行になるように配置することが好ましい液晶表示装置、例えば、TNモードやVAモードの液晶表示装置に用いることが好ましい。本発明は、VAモードの液晶表示装置において、特に効果がある。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0125】
【実施例】
[実施例1]
(配向膜の形成)
ポリイミド(PI−8)を、N−メチルピロリドン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比=1/4)に溶解して、4質量%溶液を調製した。この溶液を、バーコーターを用いてガラス支持体上に1μmの厚さに塗布した。塗布層を120℃で5分間加熱して、乾燥した。塗布層の表面をラビング処理して、配向膜を形成した。
【0126】
【化71】
【0127】
(光学的異方性層の形成)
配向膜の上に、以下の組成の塗布液をバーコーターを用いて0.7μmの厚さに塗布した。
【0128】
────────────────────────────────────
光学的異方性層塗布液組成
────────────────────────────────────
棒状液晶性分子(N71) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製) 3質量部
光重合増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────
【0129】
塗布層を100℃で1分間加熱して、棒状液晶性分子を配向させた。その温度で4秒間紫外線を照射して棒状液晶性分子を重合させ、配向状態を固定した。このようにして光学的異方性層を形成し、光学補償シートを作製した。
光学的異方性層の配向性および棒状液晶性分子のディレクタ(長軸方向)を偏光顕微鏡を用いて観察したところ、棒状液晶性分子は、長軸方向がラビング方向に直交するように配向していた。
波長550nmにおける面内レターデーション(Re)および厚み方向のレターデーション(Rth)をエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定したところ、Reは30nm、Rthは115nmであった。
【0130】
[実施例2]
ポリイミド(PI−8)に代えて、ポリイミド(PI−9)を同量用いた以外は、実施例1と同様にして光学補償シートを作製して評価した。
光学的異方性層の配向性および棒状液晶性分子のディレクタ(長軸方向)を偏光顕微鏡を用いて観察したところ、棒状液晶性分子は、長軸方向がラビング方向に直交するように配向していた。
波長550nmにおける面内レターデーション(Re)および厚み方向のレターデーション(Rth)をエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定したところ、Reは30nm、Rthは110nmであった。
【0131】
【化72】
【0132】
[実施例3]
ポリイミド(PI−8)に代えて、ポリイミド(PI−11)を同量用いた以外は、実施例1と同様にして光学補償シートを作製して評価した。
光学的異方性層の配向性および棒状液晶性分子のディレクタ(長軸方向)を偏光顕微鏡を用いて観察したところ、棒状液晶性分子は、長軸方向がラビング方向に直交するように配向していた。
波長550nmにおける面内レターデーション(Re)および厚み方向のレターデーション(Rth)をエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定したところ、Reは30nm、Rthは115nmであった。
【0133】
【化73】
【0134】
[実施例4]
(透明支持体の作製)
セルローストリアセテートに下記の複屈折率上昇剤を4.0質量%添加し、厚さ100μmのロール状セルローストリアセテートフイルムを作製した。得られたセルローストリアセテートフイルムを、透明支持体として用いた。
【0135】
【化74】
【0136】
(配向膜の形成)
ポリアミック酸(PA−21)とトリエチルアミン(中和剤)との4質量%水溶液を調製した。この溶液を、バーコーターを用いてロール状透明支持体を搬送しながらその上に連続的に塗布した。塗布層を120℃で2分間加熱して、乾燥し、厚さ1μmの塗布層を形成した。
塗布層を設けたロール状透明支持体を搬送しながら、長手方向(搬送方向)に連続的に塗布層の表面をラビング処理して、配向膜を形成した。
【0137】
【化75】
【0138】
(光学的異方性層の形成)
配向膜の上に、以下の組成の塗布液をバーコーターを用いて、連続的に塗布した。
【0139】
────────────────────────────────────
光学的異方性層塗布液組成
────────────────────────────────────
棒状液晶性分子(N71) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製) 3質量部
光重合増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────
【0140】
塗布層を100℃で1分間加熱して、棒状液晶性分子を配向させた。その温度で4秒間、600mj/cm2 の紫外線を照射して棒状液晶性分子を重合させ、配向状態を固定した。このようにして光学的異方性層を形成し、光学補償シートを作製した。
棒状液晶性分子は、長軸方向が光学補償シートの長手方向と直交するように配向していた。
波長550nmにおける面内レターデーション(Re)および厚み方向のレターデーション(Rth)をエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて測定したところ、Reは30nm、Rthは115nmであった。
【0141】
(偏光板の作製)
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフイルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。偏光膜の一方の面に、ケン化処理したロール状セルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を、他方の面にケン化処理したロール状光学補償シートの透明支持体を、連続して貼り合わせ、偏光板を作製した。光学補償シートの遅相軸(棒状液晶性分子の長軸方向)と偏光膜の透過軸とは平行であった。
【0142】
(液晶表示装置の作製)
市販のMVA液晶表示装置(VL−1530S、富士通(株)製)から、観察者側およびバックライト側の偏光板と光学補償シートとを剥離し、代わりに作製した偏光板を二枚貼り付けた。
作製したMVA液晶表示装置について、視野角を視野角測定装置(EZContrast160D、ELDIM社製)で測定した。その結果、偏光膜の透過軸方向の視野角および透過軸方向から45゜の方向の視野角は、いずれも80゜を越える値であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】透過型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
【図2】反射型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
【図3】ロール状偏光素子とロール状光学補償シートとの貼り合わせ工程を示す模式図である。
【符号の説明】
BL バックライト
LD 長手方向
RP 反射板
SA 光学的異方性層の遅相軸
TA 偏光膜の透過軸
1、1a、1b、1c 透明保護膜
2、2a、2b 偏光膜
3、3a、3b 透明支持体
4、4a、4b 光学的異方性層
5a 液晶セルの下基板
5b 液晶セルの上基板
6 棒状液晶性分子層
Claims (11)
- 支持体上に設けられている液晶配向膜であって、ポリイミドまたはポリアミック酸を含み、ポリイミドまたはポリアミック酸が、側鎖にカルバゾール骨格を有することを特徴とする液晶配向膜。
- ポリイミドまたはポリアミック酸が、さらに側鎖に重合性基を有する請求項1に記載の液晶配向膜。
- 支持体上に、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸を塗布して塗布層を設け;塗布層の表面をラビング処理して配向膜を形成し;そして、配向膜の上に棒状液晶性分子を含む塗布液を塗布して乾燥することにより、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向と配向膜のラビング方向とが実質的に直交するように棒状液晶性分子を配向させる方法。
- 棒状液晶性分子が重合性基を有し、棒状液晶性分子を配向させた後、棒状液晶性分子を重合させて配向状態を固定する請求項5に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。
- 支持体がロール状であり、棒状液晶性分子の長軸方向を支持体面に投影して得られる線の平均方向が、支持体の長手方向に対して実質的に直交している請求項5に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。
- 支持体がロール状であり、配向膜のラビング方向が、支持体の長手方向に対して実質的に平行である請求項5に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。
- 棒状液晶性分子の長軸方向と支持体面との間の平均傾斜角が5゜未満の状態で棒状液晶性分子を配向させる請求項5に記載の棒状液晶性分子を配向させる方法。
- 透明支持体、配向膜および棒状液晶性分子から形成された光学的異方性層をこの順に有するロール状の光学補償シートであって、配向膜が、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸からなり、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向と配向膜のラビング方向とが実質的に直交するように棒状液晶性分子が配向していることを特徴とする光学補償シート。
- 棒状液晶性分子から形成された光学的異方性層、配向膜、透明支持体、偏光膜および透明保護膜を有するロール状の偏光板であって、配向膜が、側鎖にカルバゾール骨格を有するポリイミドまたはポリアミック酸からなり、棒状液晶性分子の長軸方向と透明支持体面との間の平均傾斜角が5゜未満の状態で棒状液晶性分子が配向しており、棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向と偏光板の長手方向とが実質的に直交しており、そして偏光膜の透過軸と棒状液晶性分子の長軸方向を透明支持体面に投影して得られる線の平均方向とが実質的に平行であることを特徴とする偏光板。
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