JP4145411B2 - ガス圧接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋等の鋼材の接合面を突き合わせて圧接器で加圧するとともに、加熱用バーナーによって接合部を加熱して鋼材同士を接合させるガス圧接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼材を接合する方法の一つにガス圧接方法が知られている。ガス圧接方法は以下のように行われる。
まず、鋼材の接合面をできるだけ軸に対して直角に調整し、グラインダ等による研削によって平滑および清浄に仕上げる。そして、接合面間には何等の異物を介在させることなく端面同士を突き合わせて圧接器(支持器)でクランプし、軸方向へ加圧(社団法人日本圧接協会発行の「鉄筋のガス圧接工事標準仕様書」(1994年改訂)の53ページの記載によれば30MPa以上である)しながら、突き合わせ部周辺を加熱用バーナーにより加熱する。この加熱により、突き合わせた部分は赤熱され、接合面同士が接合される。通常、加熱用バーナーとしては燃焼口が一つの単孔火口バーナーが用いられ、燃料ガスとしてアセチレンガスが用いられる。しかしながら、燃料ガスとしてアセチレンガスを用いる場合には、以下のような問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
アセチレンガスは最低発火温度が約305℃と比較的低く、かつ爆発限界濃度範囲が空気中で2.5〜80%と広いことから逆火しやすく、取り扱いが面倒である。そこで、アセチレンガスを利用する際に生じる前記の問題を起こさない他の燃料ガス、例えばエチレンガスあるいはエチレンガスを主剤とする燃料ガスを用いる方法が考えられるが、単孔火口を備えた従来タイプの加熱用バーナーでは十分な火力を得ることができない。燃料ガスに対する酸素ガスの混合体積比を種々に変化させても火力が十分とならず、接合不良の原因となることが判明した。
【0004】
しかしながら、エチレンガスをアセチレンガスの代替とすることができれば、安全性においてメリットが大きいことから、本発明者らはエチレンガスを用いるガス圧接方法について鋭意検討した。その結果、従来の加熱用バーナーを改良したうえで好適な条件を与えれば、アセチレンガスを用いることなく、エチレンガスを使用することで、鋼材を良好にガス圧接できる事を見出す事に成功した。
本発明では、アセチレンガスよりも安全性においてメリットの大きいエチレンガスあるいはエチレンガスを主剤とする燃料ガスを使用するガス圧接方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被圧接物の接合部を複数方向から加熱して圧接するために複数方向から火炎を噴出する加熱用バーナーに、エチレンガスに対する酸素ガスの混合体積比を0.5〜2.0に調整したエチレンガスと酸素ガスの混合ガスを供給して燃焼させることを特徴としている。請求項1に記載のガス圧接方法を用いれば、複数方向から火炎を噴出する加熱用バーナーを用いるために、エチレンガスあるいはエチレンガスを主剤とする燃料ガスを従来の単孔火口の加熱用バーナーによって燃焼させる場合には得られない高火力が得られる。また、複数方向から火炎を噴出する加熱用バーナーを用いるために、圧接端面全体がバーナー火炎に覆われ、炉の内部のような状態となり圧接端面の酸化防止の効果が得られる。以上の結果より、鋼材を良好にガス圧接することが可能になる。燃料ガスとして、空気中での最低発火温度が高く、かつ爆発限界濃度範囲が狭いエチレンガスを用いるため、安全性が高い。
【0006】
また請求項2に記載の発明は、被圧接物の接合部を複数方向から加熱して圧接するために複数方向から火炎を噴出する加熱用バーナーに、炭素数が1〜12個のアルコール類、炭素数が2〜12個のエーテル類、炭素数が3〜12個のケトン類、炭素数3〜12個のエステル類及び前記以外の炭化水素であって炭素数が5〜12個のものから選ばれた少なくとも1種以上の助燃剤をエチレンガスに混入させた燃料ガスに対する酸素ガスの混合体積比を0.5〜2.5に調整した燃料ガスと酸素ガスの混合ガスを供給して燃焼させることを特徴としている。
請求項2に記載のガス圧接方法を用いれば、複数方向から火炎を噴出する加熱用バーナーを用いるために、エチレンガスを主剤とする燃料ガスを従来の単孔火口の加熱用バーナーによって燃焼させる場合には得られない高火力が得られ、鋼材を良好にガス圧接することが可能になる。又、助燃剤を利用しない場合に比して、酸素ガスの混合体積比の範囲を広くする事が可能となり、ガス圧接作業がより多様な条件下で実施可能となる。また、アセチレンガスを利用しないので安全性が高い。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のガス圧接方法であって、助燃剤がトルエン、アセトン、メタノール、オクタン、オクタノールの中の1種以上であることを特徴とする。
請求項3に記載のガス圧接方法を用いれば、助燃剤の燃焼性が特に良いため、さらなる高火力を得ることができ、鋼材をより良好にガス圧接することが可能になる。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のガス圧接方法であって、前記加熱用バーナーに供給する前記エチレンガスの供給流量を25〜100リットル/分とすることを特徴としている。この流量範囲を用いると、ほぼ全ての鉄筋径にわたって鉄筋を良好にガス圧接することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施の形態を図1〜図4を用いて説明する。
なお、図1は加熱用バーナーの斜視図、図2は火炎噴出部の一部切除斜視図、図3は図2のIII−III線断面図、図4は図2のIV−IV線断面図である。
図1に示すように加熱用バーナー10は、基管1、ガス供給管2等により構成されている。
基管1の一端側には燃料ガス供給管8と酸素ガス供給管9が接続されており、基管1内で燃料ガス(例えばエチレンガス)と、酸素ガスが混合可能に構成されている。なお、燃料ガスおよび酸素ガスの流量は図示していない流量制御手段により所定の流量に制御可能に構成されている。助燃剤を使用する場合は、エチレンガスに助燃剤を添加した燃料ガスを所定の流量に制御して燃料ガス供給管8から基管1へ供給する。
基管1の他端側には周方向に一部が切欠かれたリング状に延びるガス供給管2が設けられており、ガス供給管2の内周面には所定の間隔をおいて複数の火炎噴出部3がリングの中心に向いた方向に設けられている。
【0010】
図2に良く示されているように、火炎噴出部3は略円筒状に形成され、その中心をガス供給管2まで貫通する主噴出口4と、主噴出口4を取り囲む位置に隣接して配置されてガス供給管2まで貫通する二対の副噴出口5,5,6,6が設けられている。一対の周方向副噴出口5は、主噴出口4を挟んでリング状ガス供給管2の周方向に沿う方向に配置されている。一対の幅方向副噴出口6は、主噴出口4を挟んでリング上のガス供給管2の軸芯方向に配設されている。そして、火炎噴出部3の先端には、主噴出口4と周方向副噴出口5および幅方向副噴出口6を取り囲む状態で筒壁7が立設している。
【0011】
図3、図4に示すように、周方向副噴出口5および幅方向副噴出口6の中心軸5aおよび6aは、それぞれ主噴出口4の中心軸4aに対して先拡がりとなるように開き角度をもって形成されており、幅方向副噴出口6の開き角度θ1は周方向副噴出口5の開き角度θ2よりも広く形成されている。図1に示すリング状のガス供給管の周方向の一部に形成された切欠部を通して圧接する鉄筋をリング内に取り込み、そのリングの軸心に沿って鉄筋を配置したとき、周方向副噴出口5の開き角度θ2は比較的に狭いために、各火炎噴出部3に生じた火炎による加熱範囲は鉄筋に集中し、幅方向副噴出口6の開き角度θ1は比較的に広いために、各火炎噴出部3に生じた火炎による加熱範囲は鉄筋の長さ方向にある広がりを持って及ぶ。このようにして、この加熱バーナー10によると、接合部を周方向からムラなく加熱することができるうえ、接合部および接合部付近(鉄筋の長さ方向の隣接部)を同時に加熱することができる。
なお、周方向副噴出口5および幅方向副噴出口6の数は必要に応じて変更可能である。
【0012】
加熱用バーナー10は、エチレンガスまたはエチレンガスに助燃剤を混入させた燃料ガスを用いて燃焼させることができる。
エチレンガスは、工業原料として用いられているものを特に精製して使用する必要はなく、そのままの状態で使用可能であり、その純度は99モル%以上であることが好ましい。
助燃剤は、下記(1)〜(5)から選択される1種又は2種以上の炭化水素を用いることができる。
(1)炭素数が1〜12個のアルコール類
(2)炭素数が2〜12個のエーテル類
(3)炭素数が3〜12個のケトン類
(4)炭素数が3〜12個のエステル類
(5)前記(1)〜(4)以外の、炭素数が5〜12個の炭化水素(特にトルエン等の芳香族炭化水素やオクタン等のパラフィン系炭化水素が好ましい)
これらの助燃剤の中でも、トルエン、アセトン、メタノール、オクタン及びオクタノールが燃焼性の面で好ましい。また、エチレンガスにその助燃剤を混入させた燃料ガス中の助燃剤の割合は、エチレンガス100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲において使用するのが好ましい。助燃剤の割合が30重量部を超えると燃料ガスが気化しにくく、一方0.1重量部未満では、助燃剤を混入させない場合、すなわちエチレンガスのみを燃料ガスとして使用する場合の燃焼性とほとんどかわらない。
【0013】
次に、本発明の一実施の形態のガス圧接方法について説明する。鋼材として例えば鉄筋のガス圧接を行う場合には、まず従来の方法と同様にして鉄筋の接合面をできるだけ軸に対して直角にし、グラインダ等による研削によって平滑および清浄に仕上げる。そして、接合面間には何等の異物を介在させることなく端面同士を突き合わせて図示しない圧接器(支持器)によりクランプする。また、ガス圧接装置としては手動圧接装置、半自動圧接装置、自動圧接装置等が使用できる。なお、鉄筋には通常用いられている外径19〜51mmのものが使用可能である。
【0014】
次に、圧接器によって鉄筋の軸方向への加圧(30MPa以上)を行いながら、突合わせ部周辺を加熱用バーナー10によって加熱する。この加熱に際しては、燃料ガス供給管8からエチレンガスを、また酸素ガス供給管9から酸素ガスをそれぞれ所定の流量に調整した後、基管1へ供給し、エチレンガスと酸素ガスとの混合ガスを火炎噴出部3で燃焼させる。そして、火炎の状態を確認後、鋼材の接合部をガス供給管2のリングの中心付近に挿入して加熱する。このとき複数の火炎噴出部3の周方向副噴出口5および幅方向副噴出口6から噴出する火炎が接合部を取り囲む状態になるため、鉄筋の接合部および接合部付近を均一かつ短時間に加熱することができる。
【0015】
エチレンガスに対する酸素ガスの混合体積比は、0.5〜2.0の範囲に調整することができる。この混合体積比は最初から一定に維持してもよいが、圧接加工中の初期に酸素ガスの割合が多すぎると接合部表面に酸化皮膜が形成されて接合部の機械強度が低下することから、最初は酸素ガスの割合を少なく(例えば、エチレンガス/酸素ガスの体積比を0.5〜1.0)し、その後に酸素ガスの割合を所定の割合まで増やすことが望ましい。なお、エチレンガスに対する酸素ガスの混合体積比の調整は、燃料ガス供給管8および酸素ガス供給管9の上流側に設けられた図示しない流量制御手段の測定値に従って行うことができる。また、ガス供給管2内に酸素濃度をオンラインで測定可能な自動検出器を設けることもできる。この場合には、自動検出器による酸素濃度測定値を確認しながら燃料ガス(例えばエチレンガス)および酸素ガスの流量の調整を行う。
【0016】
また、エチレンガスに、助燃剤としてトルエン等の芳香族炭化水素やオクタン等のパラフィン系炭化水素やアセトン等のケトン類あるいはメタノールやオクタノール等のアルコール類を混入させたものを燃料ガスとして用い、加熱用バーナー10で燃焼させることもできる。この場合は、燃料ガス供給管8からエチレンガスと助燃剤(例えばトルエン)を、また酸素ガス供給管9から酸素ガスをそれぞれ所定の流量に調整後、基管1へ供給し、エチレンガスと助燃剤と酸素ガスとの混合ガスを火炎噴出部3で燃焼させる。
なお、エチレンガスと助燃剤との合計に対する酸素ガスの混合体積比(以下、「酸素比」という。)は、0.5〜2.5の範囲に調整することができ、燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いる場合の酸素比(0.5〜2.0)に比べ酸素比の範囲を広くすることができる。したがって、加熱用バーナー10の調整を容易に行うことができる。
【0017】
上記の方法で鉄筋の接合部の加熱を行うと、接合部および接合部付近は赤熱され塑性変形を起こして若干の膨らみを生じる。このとき、幅方向副噴出口6の開き角度θ1は周方向副噴出口5の開き角度θ2よりも広く形成しており、鉄筋の長さ方向に火炎が広がりをもって及び、接合部および接合部付近を均一に加熱する。そして、加熱用バーナー10による加熱を燃料ガスの流量や酸素比等に応じた所定の時間継続する。圧接器により所定の圧縮量に達したら圧力を開放し、加熱用バーナー10を消火してガス圧接を終了する。この時の接合部の温度は1,100〜1,300℃であることが好ましい。また、接合部の圧接に要する総圧接時間は鉄筋径25mmの場合で60〜90秒程度であり、総圧接時間が90秒以上かかっていた従来タイプの単孔火口バーナーに比べて作業時間を短縮することができる。
【0018】
ガス圧接を終了したあとの圧接結果の評価は、例えば既知の外観検査(焼き割れ、垂れ下がりの有無を確認する)、曲げ破断測定(接合部にノッチを入れて曲げ加工を行う)、フラット面積測定(全破面に対するフラット破面の面積比率を求める)と、同条件で別途ガス圧接を行った試験片についてJIS Z 3120(鉄筋コンクリート用棒鋼ガス圧接継手の検査方法)に記載の方法で行う引張り試験およびJIS Z 3881(ガス圧接技術検定における試験方法及び判定基準)に記載の方法で行う曲げ試験との結果により行う。
【0019】
以上説明した方法を、実施例および比較例を挙げて更に詳細に説明する。
以下の実施例および比較例等においては、種々の組成の燃料ガスと酸素ガスの混合ガスを用い、その混合ガスを種々の火口形状の加熱用バーナーで燃焼させて鉄筋のガス圧接を行った。なお、鉄筋としては、JIS G 3112に記載のSD345−D25を用いた。
以下に示す表1〜表7は実際に鉄筋のガス圧接を実施した時の実施条件(燃料ガス流量、助燃剤の割合、酸素ガス流量、酸素比、バーナー火口の形状等)およびその結果である。表1〜3には、本実施例の複孔火口バーナーを用いて数々の条件で鉄筋のガス圧接を行った結果の一部を示している。ガス圧接の実施条件として、燃料ガス量を22.6〜36リットル/分、助燃剤の割合をエチレン100重量部に対して0〜5重量部、酸素ガス量を10.1〜60リットル/分、酸素比を0.45〜2.61とした場合のデータを示している。また、バーナーの火口形状としては、火口の主噴出口の有無、副噴出口の有無のデータを示している。なお、燃料ガスとしてエチレンガスに助燃剤を混入させたガスを用いた例を表1〜2に記載した実施例1〜10、比較例1a〜1c、3〜4に示し、燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いた例を表3に記載した実施例11、比較例2、5〜6に示している。
【0020】
表4〜5は、表1〜3に示す本実施例等における結果の概要を示している。また、表6〜7は、従来の単孔火口バーナーを用いた場合の結果(実施例に対する比較例)の概要を示している。表4〜表7には、エチレン流量あるいはエチレンガスに助燃剤を混入させた燃料ガスの流量を22.6〜36リットル/分、酸素流量を57.5〜60リットル/分とした場合について示している。また、表4および表6は助燃剤を混入させたケースであり、表5および表7は助燃剤を混入させていないケースである。なお、表4〜表7中のセル内の表示は、上段が酸素比の数値をあらわし、また下段は接合部の判定結果および表1中に実施例のあるものはその実施例の番号をあらわしている。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
(実施例1〜5)
加熱用バーナーとして本実施例の複孔火口バーナーを用い、燃料ガスとしてエチレンガスに助燃剤を混入させた燃料ガスを用いた場合の結果が実施例1〜5である。この場合、燃料ガス34リットル/分に対して酸素ガス59リットル/分の量を供給し、酸素比は1.74であった。また、総圧接時間は81〜86秒であった。このときのガス圧接の結果は、表1および以下の表4に示すように合格であった。
【0025】
【表4】
【0026】
(実施例6〜7)
実施例1〜5に示す条件から燃料ガスの流量を29.2リットル/分まで低下させた場合の結果が実施例6である。この場合、酸素比は2.02であり、総圧接時間は71秒であった。
さらに、実施例6に示す条件から燃料ガスの流量を32.4リットル/分まで増加させた場合の結果が実施例7である。この場合、酸素比は1.85であり、総圧接時間は92秒であった。
これらのガス圧接の結果は、表2に示すように合格であった。
【0027】
(実施例8〜9)
実施例1〜5に示す条件から燃料ガスの流量を29.1リットル/分まで低下させた場合の結果が実施例9である。なお、実施例8も実施例9とほぼ同じ条件下で行った。これらの場合、酸素比は2.03であり、総圧接時間は82〜86秒であった。これらのガス圧接の結果は、表2および表4に示すように合格であった。
【0028】
(実施例10)
実施例9に示す条件からさらに燃料ガスの流量のみを25.9リットル/分まで低下させた場合の結果が実施例10である。この場合、酸素比は2.28であり、総圧接時間は76秒であった。このときのガス圧接の結果は、表1および表4に示すように合格であった。
【0029】
(比較例3)
実施例10に示す条件からさらに燃料ガスの流量のみを22.6リットル/分まで低下させた場合の結果が比較例3である。この場合、酸素比は2.61であり、総圧接時間は83秒であった。このときのガス圧接の結果は、表2および表4に示すように不合格であった。したがって実施例1〜10、比較例3から、酸素比を高くし過ぎるとガス圧接が不良となることが確認された。
【0030】
(比較例4)
比較例3に示す条件から酸素ガスの流量のみを10.1リットル/分まで低下させて酸素比を0.45にした場合の結果が比較例4である。この場合、表2に示すように総圧接時間が180秒以上かかったためガス圧接は中止した。したがって、比較例3とは逆に酸素比を低くし過ぎると、酸素不足により鉄筋が圧接できないことが確認された。
【0031】
(実施例11)
加熱用バーナーとして本実施例の複孔火口バーナーを用い、燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いた場合の結果が実施例11である。この場合、エチレンガス34リットル/分に対して酸素ガス59リットル/分の量を供給し、酸素比は1.74であった。総圧接時間は80秒であった。このときのガス圧接の結果は、表3および以下の表5に示すように合格であった。
【0032】
【表5】
【0033】
(比較例5)
実施例11に示す条件からエチレンガスの流量を29.1リットル/分まで低下させた場合の結果が比較例5である。この場合、酸素比は2.03であり、総圧接時間は82秒であった。このときのガス圧接の結果は、表3および表5に示すように不合格であった。
【0034】
(比較例6)
比較例5に示す条件からさらにエチレンガスの流量のみを25.9リットル/分まで低下させた場合の結果が比較例6である。この場合、酸素比は2.28であり、総圧接時間は82秒であった。このときのガス圧接の結果は、表3および表5に示すように不合格であった。
【0035】
(比較例1a〜1c)
以下の表6に示すように、加熱用バーナーとして従来の単孔火口バーナーを用い、燃料ガスとしてエチレンガスに助燃剤を混入させたガスを用いた場合の結果が比較例1a〜1cである。この場合、燃料ガス36リットル/分に対して酸素ガス60リットル/分の量を供給し、酸素比は1.67であり、総圧接時間は93〜99秒であった。このときのガス圧接の結果は、表1および表6に示すように曲げ試験の結果が不合格であった以外は合格であった。
【0036】
【表6】
【0037】
(比較例2)
以下の表7に示すように、加熱用バーナーとして従来の単孔火口バーナーを用い、燃料ガスにエチレンガスのみを用いた場合の結果が比較例2である。エチレンガス34.4リットル/分に対して酸素ガス57.5リットル/分の量を供給し、酸素比は1.67であり、総圧接時間は102秒であった。このときのガス圧接の結果は不合格であった。なお、燃料ガスにエチレンガスのみを用いた場合は、酸素比等のガス圧接条件を種々変化させても良好なガス圧接状態は得られなかった。
【0038】
【表7】
【0039】
上記の実施例および比較例から、従来の単孔火口バーナーに替えて本実施例の複孔火口バーナーを用いることにより、燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いた場合でも、従来の単孔火口バーナーではうまくいかなかったガス圧接が可能となった。また、燃料ガスとしてエチレンガスに助燃剤を混入させた燃料ガスを用いた場合は、ガス圧接が可能となる条件範囲、例えば酸素比の条件範囲が拡大することが確認された。
そして、本実施例の複孔火口バーナーを用いてガス圧接を行うことができる好適な条件について種々検討した結果、本発明者らは以下に示す(A)および(B)のような条件を見出した。
(A)燃料ガスとしてエチレンガスに助燃剤を混入させたガスを用いた場合は、酸素比が2.61および0.45で不合格でありその間は合格であった。このことから、燃料ガスとしてエチレンガスに助燃剤を混入させて用いる場合は、酸素比を0.5〜2.5の範囲に調整することにより良好なガス圧接を行うことができる。
(B)燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いた場合は、酸素比が1.74で合格であり、2.03で不合格であった。このことから、燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いる場合は、酸素比を0.5〜2.0の範囲に調整することにより良好なガス圧接を行うことができる。
【0040】
以上のように構成した本実施の形態のガス圧接方法によれば、燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いたガス圧接において、酸素比を0.5〜2.0の範囲に調整することにより、外観検査、曲げ、フラット面積測定、引張り試験、曲げ試験等をクリアした良好なガス圧接状態を得ることができる。
また、エチレンガスに助燃剤を混入させたガスを燃料ガスとして用いると、エチレンガスと酸素ガスのみを用いる場合に比べ、酸素比の範囲を0.5〜2.5まで広くすることができる。したがって、加熱用バーナーの調整の幅が広がるため、例えば鉄筋のガス圧接をより容易に行うことができる。
また、鉄筋の接合部で鉄筋の中心軸に向かう主噴出口4と、接合部の近傍を加熱可能な周方向副噴出口5および幅方向副噴出口6を設けたため、加熱用バーナー10を鉄筋に対して往復動させることなく、短時間に均一に接合部および接合部付近の加熱ができる。また、加熱用バーナー10による加熱効率が上がり燃料ガスの消費量が少なくて済む。
また、エチレンガスの供給流量を適宜変化させて実験したところ、エチレンガスの流量として25〜100リットル/分とすることにより、各種の鉄筋径(19〜51mm)に対応して良好なガス圧接状態を得ることができる。
また、アセチレンガスに比べて最低発火温度が高く、かつ爆発限界が狭いエチレンガスを主剤として用いるため、安全性を高めることができる。
また、アセチレンガスに比べてガスコスト、運搬コストおよび貯蔵コストの安価なエチレンガスを主剤として用いるため、経済性を高めることができる。
また、燃料ガスとしてエチレンガスを用いるため、アセチレンガスを燃焼させた場合に発生する遊離炭素の発生が少なく、いわゆる浸炭といわれる加熱部の表面硬化を防止することができる。
【0041】
以上の実施の形態では、リング状に形成されたガス供給管2の内周面に複数の火炎噴出部3を設けたが、これに代えて、図5に示すように、リング状のガス供給管12の内周面にガス供給管12の周方向に直交する形状に複数のスリット溝13を所定の間隔をおいて設け、火炎噴出孔として用いることもできる。このように火炎噴出孔をスリット溝13とすることにより、スリット溝13から噴出する炎は鉄筋の軸芯方向に広がる扇状に形成され鉄筋を一定の幅にわたって加熱することから、鉄筋の接合部を均一に加熱することができる。
また、このスリット溝11の形状は種々変更可能であり、例えばガス供給管12の円周方向のスリット溝と軸方向のスリット溝とからなる十字溝であってもよい。
【0042】
さらに、図6に示すようにガス供給管22の断面形を楕円形状に形成し、ガス供給管22の内周面に設けられた火炎噴出部23を楕円形状に形成し、周方向副噴出口25および幅方向副噴出口26の噴出方向を主噴出口24の噴出方向と平行に形成してもよい。この場合には、各火炎噴出部23に生じた火炎による加熱範囲は略楕円形状となり、接合部の周方向をムラなく加熱することができるうえ、接合部での加熱と同時に接合近傍部も加熱することができる。
【0043】
また、本実施の形態では各火炎噴出部3に一つの主噴出口4と、一対の周方向副噴出口5および一対の幅方向副噴出口6を設けたが、主副噴出口4〜6の数、形状、配置等は必要に応じて種々変更可能である。
また、主噴出口4、周方向副噴出口5および幅方向副噴出口6は火炎噴出部3内に設けたが、ガス供給管2の内周面に直接設けることもできる。この場合でも、噴出口4〜6を取り囲む形態に筒壁7を設けることが望ましい。
また、周方向副噴出口5の開き角度θ2および幅方向副噴出口6の開き角度θ1は、必要に応じて種々変更可能である。
また、ガス供給管2は被圧接物を囲むリング状に設けたが、ガス供給管2の複数の火炎噴出部3からの火炎により被圧接物を複数方向から加熱可能に構成されていればよく、ガス供給管2の横断面形状は種々変更可能である。また、ガス供給管2の形状は被圧接物の形状等に応じて変更可能であり、例えば三角形状や四角形状に形成することもできる。また、ガス供給管2は基管1に一対設けたが、ガス供給管2の数は用途に応じて増やすこともできる。
また、鋼材の接合部で鋼材の中心軸に向かう主噴出口と、接合部の近傍を加熱可能な副噴出口を設けたため、加熱用バーナーを鋼材に対して往復動させることなく、短時間に均一に接合部および接合部付近の加熱ができる。したがって、従来タイプの単孔火口の加熱用バーナーを用いた場合に比べ総圧接時間を短縮することができるうえ、作業者の熟練度を問うことなくガス圧接の品質を均質化することができる。さらに、加熱用バーナーの加熱効率が上がり燃料ガスの消費量を低減させることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載のガス圧接方法を用いれば、燃料ガスとしてアセチレンガスを利用しないで、エチレンガスのみを利用した鋼材のガス圧接が可能となるため、ガス圧接作業の安全性を向上させることができる。
また、請求項2に記載のガス圧接方法を用いれば、燃料ガスとしてエチレンガスのみを用いる場合に比して、酸素比の範囲を広くすることができ、加熱用バーナーの調整の幅を広げることができるため、鋼材のガス圧接をより容易に行うことができる。
また、請求項3に記載のガス圧接方法を用いれば、助燃剤の燃焼性が特に良いため、さらなる高火力を得ることができ、鋼材をより良好にガス圧接することができる。
また、請求項4に記載のガス圧接方法を用いれば、鋼材として鉄筋を用いる場合に、各種の鉄筋径に対応して良好にガス圧接することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の加熱用バーナーの斜視図である。
【図2】火炎噴出部部分の一部切除斜視図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】別の形態のガス供給管の斜視図である。
【図6】さらに別の形態のガス供給管の部分斜視図である。
【符号の説明】
1…基管
2,12,22…ガス供給管
3,23…火炎噴出部
4,24…主噴出口
5,25…周方向副噴出口
6,26…幅方向副噴出口
7…筒壁
8…燃料ガス供給管
9…酸素ガス供給管
10…加熱用バーナー
13…スリット
Claims (4)
- 被圧接物の接合部を複数方向から加熱して圧接するために複数方向から火炎を噴出する加熱用バーナーに、エチレンガスに対する酸素ガスの混合体積比を0.5〜2.0に調整したエチレンガスと酸素ガスの混合ガスを供給して燃焼させることを特徴とするガス圧接方法。
- 被圧接物の接合部を複数方向から加熱して圧接するために複数方向から火炎を噴出する加熱用バーナーに、炭素数が1〜12個のアルコール類、炭素数が2〜12個のエーテル類、炭素数が3〜12個のケトン類、炭素数3〜12個のエステル類及び前記以外の炭化水素であって炭素数が5〜12個のものから選ばれた少なくとも1種以上の助燃剤をエチレンガスに混入させた燃料ガスに対する酸素ガスの混合体積比を0.5〜2.5に調整した燃料ガスと酸素ガスの混合ガスを供給して燃焼させることを特徴とするガス圧接方法。
- 請求項2に記載のガス圧接方法であって、前記助燃剤はトルエン、アセトン、メタノール、オクタン、オクタノールの中の1種以上であることを特徴とするガス圧接方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のガス圧接方法であって、前記加熱用バーナーに供給する前記エチレンガスの供給流量を25〜100リットル/分とすることを特徴とするガス圧接方法。
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