JP4143070B2 - 新規酵素、その製造法及びそれを用いた分子量調整二本鎖dnaの製造法 - Google Patents
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(1)活性:DNA及びRNA分解活性を有し、二本鎖DNA、一本鎖DNA、一本鎖RNAの順に親和性が高い。二本鎖DNAをエンド型活性により低分子化し、Mn 2+ の存在下において、鎖長が5〜7のオリゴヌクレオチドが最も多い分解物を生成し得る。
(2)分子量:SDS-PAGE及びゲルろ過法により約25,000 Daと示される。
(3)至適pH:至適pHを7.5〜9.0に有する。
(4)至適温度:至適温度を40〜45℃に有する。
(5)カチオンの影響:Mg2+又はMn2+で活性が賦活され、EDTA又はリン酸により活性が阻害される。
(6)単量体からなる。
本発明酵素の製造方法
(1)酵素活性測定:
salmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)を基質として、基質分解によるOD260値の上昇から活性を算出した。1分間で反応液のOD260値を1上昇させる酵素量を1Uと定義した。
(2)粗酵素の取得:
Aspergillus melleus NBRC No.4420を600gのふすま培地(小麦ふすま:水=7:4)に接種し、25℃で6日間培養した。その培地から水抽出により酵素液2,500mlを得た。
(3)硫酸アンモニウム分画:
上記と同様な操作で得られた酵素液の70-90%飽和硫酸アンモニウム沈殿画分を回収、20mM Tris-HClバッファー(pH8.0)に懸濁し、同バッファーに対して透析を行なった。
(4)DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー:
上記と同様な操作で得られた透析後の粗画分を、20mM Tris-HClバッファー(pH8.0)で平衡化したDEAE-TOYOPEARL(東ソー製)充填カラムに供し、同バッファーで溶出した画分をヌクレアーゼ活性画分として回収した。
(5)疎水性相互作用クロマトグラフィー:
上記と同様な操作で得られたDEAE-TOYOPEARL陰イオン交換クロマトグラフィーからの活性画分を、2M 硫酸アンモニウム/20mM Tris-HClバッファー(pH8.0)で平衡化したPhenyl-TOYOPEARL(東ソー製)充填カラムに供し、同バッファーで洗浄した。2Mから0Mの硫酸アンモニウム濃度直線勾配で溶出分画し、各画分のヌクレアーゼ活性を測定して活性画分を集めた。
上記と同様な操作で得られた硫酸アンモニウム濃度直線勾配で溶出後の活性画分を、20mM Tris-HClバッファー(pH8.0)/0.15M NaClで平衡化したSephacryl S-200カラム(アマシャム製)に供し、同バッファーにより溶出分画した。各画分のヌクレアーゼ活性を測定して活性画分を集めた。
(7)RESOURCE Q陰イオン交換クロマトグラフィー:
上記と同様な操作で得られたSephacryl S-200クロマトグラフィーからの活性画分を、10mM Tris-HClバッファー(pH8.0)で平衡化したRESOURCE Qカラムに供し、0Mから0.4MのNaCl濃度直線勾配で溶出分画し、各画分のヌクレアーゼ活性を測定した。活性画分を18% SDS−PAGEで分離してCoomassie Brilliant Blue(CBB)染色により蛋白質を検出した結果、単一な標品にまで精製されていた。各精製ステップの活性回収率、比活性及び精製度を表1に示す。
本発明酵素の特性(1):
本発明酵素のRESOURCE Qクロマトグラフィー後の活性画分をSDS−PAGEに供し、CBB染色した結果を図1に示す。活性画分は単一バンドを示し、実施例1に示す方法で精製されることが示された。また、分子量マーカーとの比較により本酵素の分子量は約25,000Daと推測された。さらに、Sephacryl S-200クロマトグラフィーによる分離精製の際に分子量マーカー(ovalbumin、ribonuclease A、albumin、chymotrypsinogen A)の溶出容量を分析して分子量検量線を作成し、それを基に本酵素の溶出量から分子量を算出した結果、24,900 Daと推定されたことより、本酵素は単量体の蛋白質であることが示唆された。
salmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)、90℃で15分加熱変性したsalmon sperm DNA、及びRNA(関東化学製、酵母由来)を基質として本酵素の活性を測定した結果、salmon sperm DNAに対する活性は385.8 U/mg、熱変性DNAに対する活性は215.2 U/mg、そしてRNAに対する活性は25.8 U/mgであった(この試験に限り、ヌクレアーゼ活性は、基質である核酸が分解されることにより生じる酸可溶性ヌクレオチドを定量することにより測定し、1分間で基質より1μmoleのモノヌクレオチドに相当する酸可溶性ヌクレオチドを生成する酵素量を1 Uと定義した)。これより、本酵素は二本鎖DNAに対する親和性が最も高いことが判った。また、RNAよりもDNAの方が親和性が高いことが判った。
0.16 Uの本酵素を0.4 mgのsalmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)に2 mM MnCl2存在下でpH8.0、37℃で45分間反応させ、MCI GEL-CDR10カラム(三菱化学製)により核酸関連物質を分析した結果、デオキシリボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド-1-リン酸及び核酸塩基のいずれも全く検出されなかった。また、TSK−GEL DEAE-NPRカラム(内径4.6 mm x 3.5 cm、東ソー製)により分解物の鎖長を解析した結果、ダイマー以上のオリゴヌクレオチドが検出され、特に鎖長が5-7のオリゴヌクレオチドが最も多く検出された。これらの結果より、本酵素は二本鎖DNAをオリゴヌクレオチドにまで加水分解することが判った。
本酵素をsalmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)に過剰量作用させ、得られたDNA断片に5´-ヌクレオチダーゼまたは3´-ヌクレオチダーゼを作用させて、キャピラリー電気泳動により遊離リン酸を分析した。その結果、いずれのヌクレオチダーゼ消化サンプルからも遊離リン酸が検出されたことより、本酵素のDNA分解物にはリン酸基がデオキシリボースの5´-及び3´-位に付加していることが推測された。
本酵素をsalmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)にpH4.0〜9.5、37℃で30分間作用させ、ヌクレアーゼ活性を25 mM Tris / HClバッファー(pH8.0)中で測定した。その結果、pH7.5〜9.0で最も高い活性を示した。なお、上記の4.0〜9.5のpH範囲は、pH4.0〜pH5.0を25 mM クエン酸 / 25mM クエン酸ナトリウムバッファーにより、pH5.0〜pH9.5を25mM 1-methyl-piperazine / 25mM Bis-Tris / 12.5mM Tris / HClバッファーにより調整した。
本酵素をsalmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)を0.1%含むpH3.0〜9.5のバッファー中で37℃で1時間インキュベートし、このインキュベート前後でのpH8.0、37℃における活性を25 mM Tris / HClバッファー(pH8.0)中で測定し、以下の式に従って活性の残存率を求めた。
残存率(%)=[(所定のpHでの処理後の活性)/(所定のpHでの処理前の活性)]×100
その結果、いずれのpHにおいても80%以上の酵素活性が残存した。
なお、上記の3.0〜9.5のpH範囲は、pH3.0〜pH5.0を25 mM クエン酸 / 25mM クエン酸ナトリウムバッファーにより、pH5.0〜pH9.5を25mM 1-methyl-piperazine / 25mM Bis-Tris / 12.5mM Tris / HClバッファーにより調整した。
本酵素をsalmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)に20〜75℃、pH8で5分間作用させ、ヌクレアーゼ活性を25 mM Tris / HClバッファー(pH8.0)中で測定した。その結果、40〜45 ℃で最も高い活性を示した。
本酵素をsalmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)を0.1%含むpH8.0のバッファー中で20〜70℃で30分間インキュベートを行ない、このインキュベート前後でのpH8.0、37℃における活性を25 mM Tris / HClバッファー(pH8.0)中で測定し、以下の式により残存活性を求めた。
残存率(%)=[(所定の温度での処理後の活性)/(所定の温度での処理前の活性)]×100
その結果、30℃以下の温度ではインキュベート前後で活性の変化はなく活性が100%維持され、35℃以下の温度では活性が少なくとも80%維持され、40℃以下の温度では活性が少なくとも50%維持された。
本酵素を0.1% salmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)及び2又は20 mM MnCl2、MgCl2、CaCl2、CuSO4、Co(NO3)2、ZnCl2又はFeCl2を含むpH8.0のバッファー中で37℃で酵素反応させ、活性を25 mM Tris / HClバッファー(pH8.0)中で測定した。その結果、2mM MnCl2又は20 mM MgCl2添加の場合に活性の上昇が認められた。これらカチオン塩の至適添加濃度を調べた結果、MnCl2は2mMの添加により活性を103倍に上昇させ、MgCl2は40 mMの添加により活性を98倍に上昇させた。
本酵素を0.1% salmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)、2mM MnCl2及び0.125〜32 mMEDTA−2Na又は0.125〜32 mM PO43-を含むpH8.0のバッファー中で37℃で酵素反応させ、活性を25 mM Tris / HClバッファー(pH8.0)中で測定した。その結果、8 mM以上のEDTA-2Naにより本酵素の活性が99%以上阻害されることが判った。また、4 mM以上のPO4 3-により本酵素の活性が99%以上阻害されることが判った。また、本酵素を0.1% salmon sperm DNA(シグマアルドリッチ社)、2mM MnCl2及び阻害剤として4mM 5´-dAMP、5´-dCMP、5´-dGMP、5´-TMP、5´-AMP、3´-AMP、deoxyadenosine又はadenineを含む25 mM Tris / HClバッファー(pH8.0)中で37℃で酵素反応させ、ゲル濾過クロマトグラフィーでDNAの分解度を解析した。オリゴヌクレオチドを含むクロマトピークの面積をヌクレアーゼ活性の指標として阻害率を算出したところ、5´-dAMPが34.7 %、5´-dCMPが36.3 %、5´-dGMPが47.9 %、5´-TMPが37.7 %、5´-AMPが26.7 %、3´-AMPが38.5 %、deoxyadenosineが0 %、adenineが2.7 %であった。
(1)本発明酵素を用いた二重らせん構造を有する分子量調整DNAの調製例その1:
シロサケ精巣から抽出精製した高分子量DNA 0.4 mgに0.064 Uの本発明酵素を、20 mM MgCl2を含むpH8.0のバッファー中で37℃で10〜60分作用させ、アガロースゲル電気泳動に供してエチジウムブロミド染色により二重らせんを有するDNA断片を検出した。その結果、反応時間10分で100〜10000 bp、15分で数十〜1000 bp、25 分で数十〜600 bp、35分で300 bp以下、45分で150 bp以下、そして60分で100bp以下の二重らせん構造を有するDNAが生成されることが判った。
シロサケ精巣から抽出精製した高分子量DNA 100mgに1.6 Uの本発明酵素を、20 mM MgCl2を含むpH8.0のバッファー中で37℃で30分反応させた後、終濃度が20 mMになるようにリン酸ナトリウムを添加することにより反応を停止した。分子量カット100,000のUF膜で低分子物質を除去し、フリーズドライにより低分子化DNAを85 mg得た。アガロース電気泳動で分子量分布を解析した結果、主に100〜800 bpに分布することが判った。また、一本鎖DNA特異的ヌクレアーゼを用いて二本鎖率を測定した結果、基質DNAは85%、得られた低分子化DNAは71%であった。
本発明酵素を用いて調製した二重らせん構造を有する分子量調整DNAの機能材料としての利用例:
シロサケ精巣から抽出精製した高分子量DNA 0.4 gに8 Uの本発明酵素を、20 mM MgCl2を含むpH8.0のバッファー中で37℃で20分反応させた後、終濃度が20 mMになるようにリン酸ナトリウムを添加して反応を停止した。この溶液とモル数にして1.2倍当量の脂質溶液(ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド)を混合し、室温で1時間攪拌した。脱イオン水で未反応のDNAを除去し、凍結乾燥してDNA-脂質複合体を0.97 g得た。
Claims (4)
- 下記の物理化学的性質を有することを特徴するヌクレアーゼ。
(1)活性:DNA及びRNA分解活性を有し、二本鎖DNA、一本鎖DNA、一本鎖RNAの順に親和性が高い。二本鎖DNAをエンド型活性により低分子化し、Mn 2+ の存在下において、鎖長が5〜7のオリゴヌクレオチドが最も多い分解物を生成し得る。
(2)分子量:SDS-PAGE及びゲルろ過法により約25,000 Daと示される。
(3)至適pH:至適pHを7.5〜9.0に有する。
(4)至適温度:至適温度を40〜45℃に有する。
(5)カチオンの影響:Mg2+又はMn2+で活性が賦活され、EDTA又はリン酸により活性が阻害される。
(6)単量体からなる。 - Aspergillus melleus由来である請求項1に記載のヌクレアーゼ。
- 請求項1に記載のヌクレアーゼを製造するための方法であって、
Aspergillus melleusを培養した培地から抽出した前記ヌクレアーゼを含む粗酵素液を精製して、前記ヌクレアーゼの精製品を得ることを特徴とするヌクレアーゼの製造法。 - 機能材料として必要な所定の分子量分布で二本鎖構造を含むDNA調製物を得るための二本鎖DNA調製物の製造方法であって、
二本鎖DNAに請求項1のヌクレアーゼを作用させて、所定の分子量分布で二本鎖構造を含むDNA調製物を得る工程
を有することを特徴とする二本鎖DNAの調製物の製造方法。
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