JP4142491B2 - プラズマ処理方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマ処理方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エレクトロニクス分野で広く用いられている半導体集積回路の製造では、高度な微細加工が要求されている。代表的には、被処理体として基板表面をプラズマと接触させ、表面処理を行うプラズマ処理がある。基板表面をプラズマと接触させ、プラズマの化学反応等により所定の部分を揮発させて除去する方法をプラズマ・エッチング処理という。
【0003】
例えば、被処理体がシリコン(Si)の基板に対してプラズマを用いてプラズマ・エッチングする場合、当該基板に負の電圧をかけてプラズマの中に入れると、プラズマ中の正イオン(活性種)が高速で基板に突入し、フォトレジストの覆っていない部分がエッチングされる。具体的には、プラズマ処理の活性種を含む材料として化学的に安定な4フッ化炭素(CF4)の気体が用いられた場合、プラズマが起きると4フッ化炭素(CF4)が解離し化学的に活性なフッ素ラジカル(F*)やフッ素イオン(F+、F-)等の活性種が生成される。そして、フッ素ラジカル(F*)は、シリコン(Si)と反応し、ケイ化フッ素(SiF4)となりすぐに気化する。この反応はイオンやラジカルの当たる部位で活発に起こり、その結果、主としてイオンの飛行方向にエッチングが進行し、パターンに忠実なエッチング処理が行われる。また、基板を覆っているフォトレジストは、酸素プラズマで分解・ガス化して除去することができ、この処理をプラズマ・アッシング処理という。
【0004】
上述したように、被処理体に対するプラズマ・エッチング処理は、フォトレジストが覆われていない部位をエッチングする、いわゆるレジストプロセスが用いられている。このレジストプロセスは、高精度な微細パターンを形成できるため、半導体集積回路等の電子デバイスの製造において用いられているが、工程が複雑となるという欠点がある。
【0005】
一方、上記レジストプロセスを用いない加工方法も検討されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、ガス吹き出し口を備えた固体誘電体容器が配設された一方の電極と、当該ガス吹き出し口に対向して設けられた他方の電極とを有し、当該ガス吹き出し口から反応ガスを連続的に排出させ双方の電極間に電界を印加することによって放電プラズマを発生させる装置が開示されており、この装置によって部分的な表面処理が行えるとされている。この装置で用いられるプラズマ処理の活性種を含む材料には、処理用ガスが用いられ所望の表面処理に合わせて選択される。例えば、処理用ガスとしては、4フッ化炭素(CF4)、6フッ化炭素(C26)、6フッ化プロピレン(CF3CFCF2)、8フッ化シクロブタン(C48)等のフッ素−炭素化合物、1塩化3フッ化炭素(CClF3)等のハロゲン−炭素化合物、6フッ化硫黄(SF6)等のフッ素−硫黄化合物等のフッ素含有化合物ガスが用いられる。また、上述した処理用ガスは、不活性ガスによって希釈されて用いられる場合もある。この場合、不活性ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)等の希ガス、窒素気体(N2)等が用いられる。特許文献1で開示された装置では、これらの処理用ガスを上記ガス吹き出し口から連続的に排出する。この処理用ガスの供給量および吹き出し流速は、上記ガス吹き出し口の断面積、被処理体と上記ガス吹き出し口との間の距離等により適宜決定される。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−49083号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したプラズマ処理の活性種を含む材料である処理用ガスとして用いられるフッ素含有化合物ガスは、非常に高価である。また、プラズマ処理のために排出する処理用ガスは、プラズマ処理に最低限必要な供給量以上を排出することが一般的であり、処理用ガスの使用量がプラズマ処理のコスト増加に大きく起因していた。
【0008】
それ故に、本発明の目的は、プラズマ処理の活性種を含む材料にかかるコストを低減し、安価なプラズマ処理を実現するプラズマ処理方法およびその装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
本発明のプラズマ処理方法は、被処理体配置ステップ、電界生成ステップ、プラズマ発生ステップ、および処理用液体供給ステップを含んでいる。被処理体配置ステップは、先端部がテーパ形状となった平面状の電極が一対の側板挟持され、それぞれのガス噴出口の長軸方向が当該電極の先端部に沿って互いに平行の線状となって当該一対の側板それぞれと当該電極との間に第1のガス流路および第2のガス流路が形成されたプラズマ源の一方端部と対向して、被処理体を配置する。電界生成ステップは、電極に高周波電力を印加して、プラズマ源の一方端部と被処理体との間の電極近傍に電界を生じさせる。プラズマ発生ステップは、一対の側板の一方に形成された第1の貫通孔を介して、少なくとも不活性ガスを含む第1のガスを第1のガス流路および第2のガス流路に供給してガス噴出口から被処理体に向けて噴出させることによって、10 4 Paから3気圧の範囲の圧力下でプラズマ源の一方端部に線状のプラズマを発生させる。処理用液体供給ステップは、一方の側板に形成された第2の貫通孔を介して、フッ素、塩素、臭素、および酸素原子から成る群から選ばれたプラズマ処理の活性種の少なくとも1つを含む処理用液体を、第1のガス流路および第2のガス流路の一方に供給してプラズマと当該第2の貫通孔が形成された側板と電極との間にて接触させる。
【0010】
上記した本発明の構成によれば、処理用液体がプラズマと接することによって加熱され低沸点物質が気化し、プラズマ中で電子と衝突しプラズマ処理の活性種として解離する。したがって、上記活性種を用いたプラズマ処理を被処理体の表面等に施すことができる。このプラズマ処理では、高価なフッ素含有化合物ガス等の処理用ガスを用いることなく、処理用液体をプラズマ処理の活性種を含む材料として用いているため、プラズマ処理に要するコストを大幅に低減することができる。
【0011】
また、上記プラズマ発生ステップでは、第1の貫通孔から一対の側板それぞれと電極との間に形成された第1のガス流路および第2のガス流路を介して、電極と当該一対の側板との間の一方端部側にそれぞれ構成された線状の第1のガス噴出口および第2のガス噴出口から第1のガスが被処理体に向けて噴出されてもかまわない。この場合、処理用液体供給ステップでは、処理用液体が第1のガス流路を介してプラズマ化され第1のガスと共に第1のガス噴出口から噴出される。これによって、処理用液体を容易に気化させてプラズマ中で電子と衝突させプラズマ処理の活性種として解離させることができる。
【0012】
また、上記処理用液体供給ステップでは、プラズマ発生ステップのプラズマ発生期間に対応して、第2の貫通孔を介して所定の量の処理用液体が第1のガス流路および第2のガス流路の一方に供給されてもかまわない。これによって、処理用液体の供給をプラズマ処理に必要な供給量に制御できるため、その使用量を低減することができる。
【0013】
上記処理用液体は、例えば、フッ素系不活性液体である。フッ素系不活性液体は、一般的に市販されている安価な液体であるため、プラズマ処理に要するコストを低減することができる。
【0014】
また、本発明は、上述したプラズマ処理方法を実現するプラズマ処理装置としても実現可能である。本発明のプラズマ処理装置は、プラズマ源、電源、第1のガス供給手段、および処理用液体供給手段を備えている。電源は、電極に高周波電力を供給する。プラズマ源は、電極に沿って一対の側板それぞれと当該電極との間に第1の貫通孔および第2の貫通孔と連通して形成され、電極と一対の側板との間に形成されるガス噴出口の長軸方向が当該電極の先端部に沿って互いに平行の線状となった第1のガス流路および第2のガス流路とを含み、10 4 Paから3気圧の範囲の圧力下で電源から高周波電力が供給されることによって先端部に線状のプラズマを発生させる。第1のガス供給手段は、第1の貫通孔を介して、第1のガス流路および第2のガス流路に少なくとも不活性ガスを含む第1のガスを供給する。処理用液体供給手段は、一方の側面に設けられ、第2の貫通孔を介して、フッ素、塩素、臭素、および酸素原子から成る群から選ばれたプラズマ処理の活性種の少なくとも1つを含む処理用液体を第1のガス流路および第2のガス流路の一方に供給してプラズマと当該第2の貫通孔が形成された側板と電極との間にて接触させる
【0015】
上記処理用液体供給手段は、一例として、第2の貫通孔を介して、第1のガス流路へ処理用液体を所定の流量で供給する処理用液体定量供給部を含んでいる
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。以下の説明では、レジストプロセスを用いずに被処理体の線方向に微小で均一な表面処理を行うプラズマ処理(以下、マイクロプラズマと記載する)を行うプラズマ処理装置を一例に説明する。なお、図1は、当該プラズマ処理装置1aの概略構成を示す斜視図である。
【0019】
図1において、本発明のプラズマ処理装置1aは、マイクロプラズマ源2a、電源3、処理用液体供給装置4、ガス供給装置5、駆動機構6、およびレール7を備えている。そして、プラズマ処理装置1aは、マイクロプラズマ源2aの一方端部(以下、先端部と記載する)を被処理体Pの一方面に近接させてプラズマ処理を行う。なお、被処理体Pの他方面は接地されている。
【0020】
マイクロプラズマ源2aは、平板状の電極21aの両面が複数の側板で挟持されて構成されている(詳細な構造は後述する)。電極21aには、電源3から所定の高周波電力が印加される。マイクロプラズマ源2aの一方側板には、貫通孔223aおよび224aが形成されており、これらを介して処理用液体供給装置4およびガス供給装置5からそれぞれ処理用液体およびガスが供給される。なお、処理用液体供給装置4およびガス供給装置5は、後述する駆動機構6によるマイクロプラズマ源2aの移動と共に一体的に移動してもいいし、貫通孔223aおよび224aとの間を接続する管を伸縮可能に構成することによって、マイクロプラズマ源2aの移動に対応してもかまわない。
【0021】
駆動機構6は、マイクロプラズマ源2aをブラケット8によって保持している。駆動機構6は、レール7と噛合しており、図示しない動力源からの駆動力によってレール7に沿った移動が可能に構成されており、マイクロプラズマ源2aと被処理体Pとの相対位置を変化させる。この駆動機構6の移動方向は、マイクロプラズマ源2aの平板面と平行で、かつ被処理体Pと平行であり(図示左右方向)、この方向に移動することによって、被処理体Pの表面に細線状のプラズマ処理を施すことができる。なお、マイクロプラズマ源2aと被処理体Pとの相対位置を変化させる方法は、これに限定されず、図示上下方向にも移動可能にしてもかまわない。マイクロプラズマ源2aの移動方法は、本発明の特徴ではないため、これ以上の説明を省略する。
【0022】
図2〜図4を参照して、マイクロプラズマ源2aの構造について説明する。図2(a)は、マイクロプラズマ源2aの先端部から見た外観図であり、図2(b)は、マイクロプラズマ源2aの一方面から見た外観図である。図3は、図2(a)に示す断面A−AをA方向から見たマイクロプラズマ源2aの断面図である。図4は、図2(a)に示すB方向から見たマイクロプラズマ源2aの分解斜視図である。なお、図2および図4で示す電極21aは、他との区別を容易にするために平行斜線領域で示している。また、図2(b)、図3、および図4は、マイクロプラズマ源2aの先端部の構造の理解を容易にするために、当該先端部を上方向(つまり図1の方向とは逆)に配置して図示している。
【0023】
図2〜図4において、マイクロプラズマ源2aは、略平板状の電極21aと例えばセラミック製の側板22aおよび23aとによって構成されており、電極21aは、側板22aおよび23aに挟持され、例えば、所定の接着剤で接合、あるいは、所定のネジを螺合することによって接合される。電極21aの先端部は、テーパー形状を形成しており、このような先端部を被処理体Pと近接させることによって、より微細な線状領域をプラズマ処理できるようになっている。電極21aの両面は、側板22aおよび23aにそれぞれ形成された電極21aの図示左右方向の幅と略同一の溝に嵌合して接面しており、側板22aおよび23aから電極21aの先端部および当該先端部の逆方向の左右に形成される一対の片が外部に露出している。
【0024】
側板22aおよび23aには、ガス噴出口221aおよび231aとガス流路222aおよび232aとを形成する凹部がそれぞれ形成されている。そして、マイクロプラズマ源2aにおいては、ガス噴出口221aおよび231aとガス流路222aおよび232aとが、側板22aおよび23aと電極21aとが互いに接面することによって、それぞれの上記凹部と電極21aとで形成される空間によって形成される。なお、側板23aに形成されるガス流路232aは、図4では隠れるために図示していないが、側板22aに形成されるガス流路222aと面対称の形状で形成されている。
【0025】
側板22aには、上述した貫通孔223aおよび224aがガス流路222aと外部とを貫通するように形成されており、これらを介して処理用液体供給装置4およびガス供給装置5からそれぞれ処理用液体およびガスが供給される。したがって、ガス供給装置5から貫通孔224aを介して供給されたガスは、ガス流路222aに導かれ、ガス噴出口221aから噴出する。そして、処理用液体供給装置4から貫通孔223aを介して供給された処理用液体は、ガス流路222aから電極21aに導かれ、電極21aに印加されている高周波電力により発生するプラズマや高温状態の電極21aと接触することによって気化してガス噴出口221aから被処理体Pに向けて噴出する。なお、上記処理用液体が気化するメカニズムについては、後述する。
【0026】
電極21aには、側板22aに形成された貫通孔224aと対向する位置に貫通孔214aが形成されている。上述したガス流路222aに導かれたガスは、この貫通孔224aを介して、ガス流路232aにも導かれる。そして、ガス流路232aにも導かれたガスは、ガス噴出口231aからも噴出する。つまり、ガス供給装置5から貫通孔224aを介して供給されたガスは、ガス流路222aおよび232aに導かれてガス噴出口221aおよび231aから被処理体Pに向けて噴出する。
【0027】
ここで、ガス噴出口221aおよび231aとガス流路222aおよび232aとが有するコンダクタンスを、マイクロプラズマ源2aの先端部長軸方向(図2左右方向)に略垂直で、かつ被処理体Pの表面に概略平行な方向(つまり、図2(a)で示す紙面上下方向)の幅が広くコンダクタンスが大きいことを「深い」、当該幅が狭くコンダクタンスが小さいことを「浅い」と表現する。この場合、図2および図3から明らかなように、ガス噴出口221aおよび231aは、コンダクタンスの小さい「浅い」形状を有した微細な線状で形成され、例えば、0.1mmである。一方、ガス流路222aおよび232aは、ガス噴出口221aおよび231aよりコンダクタンスが大きい「深い」形状で形成されている。この場合、ガス供給装置5から貫通孔224a等を介して供給されたガスは、まず「深く」てコンダクタンスの大きいガス流路222aおよび232a内に行き渡り、次いで、「浅く」てコンダクタンスの小さいガス噴出口221aおよび231a内に導かれる。つまり、圧力分布としては、ガス流路222aおよび232a内は、ガス噴出口221aおよび231aよりも圧力が高くなる。したがって、「深さ」に差を設けない場合と比較して、ガス噴出口221aおよび231aから噴出するガスの量および速度が、上記線状の方向に均一になるという効果を奏する。
【0028】
次に、ガス供給装置5から貫通孔224a等を介してマイクロプラズマ源2aに供給するガスについて説明する。このガスは、ガス噴出口221aおよび231aから被処理体Pに向けて噴出し、後述するプラズマ化しやすい性質のものが用いられる。一般的に、不活性ガス(希ガス)を主体とするガスは、他のガスと比べて大気圧近傍の圧力下でプラズマ化しやすいため、ガス供給装置5から供給するガスとして用いられる。例えば、ガス供給装置5から供給するガスは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、あるいはキセノン(Xe)等の不活性ガス、またはそれらの混合ガスが用いられる。特に、ヘリウムガスは、大気圧近傍で安定したグロー放電を発生しやすいガスであるため好ましい。
【0029】
次に、処理用液体供給装置4から貫通孔223aを介してマイクロプラズマ源2aに供給する処理用液体について説明する。この処理用液体は、プラズマ処理の活性種を含む安価な液体であり、当該プラズマ処理装置1aによって被処理体Pの表面処理を行う処理内容によって選ばれる。例えば、被処理体Pの表面にエッチング処理を行う場合、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)等のハロゲン原子を含む液体が選ばれる。具体的には、一般的に市販されているフッ素系不活性液体や各種フロン、代替フロン等の洗浄液、塩酸(HCl)やフッ化水素酸(HF)の水溶液、フッ化アルカリ水溶液、ヨード含有液剤、フッ素系撥水撥油剤等が用いられる。また、被処理体Pの表面にアッシング等の酸化や酸素欠陥を埋める処理を行う場合、酸素(O)原子を含む液体が選ばれる。具体的には、酸素(O2)を溶かした水等が用いられる。これらのプラズマ処理の活性種を含む処理用液体は、高温状態の電極21aやプラズマと接触することによって気化する沸点を有することが必要であるが、揮発性はあまり高くない方が望ましい。具体的には、上記処理用液体の沸点は、50℃〜300℃程度が好ましい。処理用液体の沸点が低く揮発性を有する場合、後述する処理用液体の供給頻度が増すという欠点がある。例えば、プラズマ処理装置1aが間欠的にプラズマを発生させる場合、電極21aに電力供給を停止している間にも処理用液体が揮発してしまう。一方、処理用液体の沸点が高いものは、電極21aやプラズマとの接触によって気化しにくいという欠点がある。
【0030】
次に、処理用液体供給装置4から貫通孔223aを介して処理用液体をマイクロプラズマ源2aに供給する方法について説明する。上述した処理用液体は、プラズマ処理に必要な量だけマイクロプラズマ源2aに供給される。このような供給量を制御した液体の供給は、一般的な各種方法を用いて実現することが可能である。例えば、所定の条件に基づいて、塗油器のようなポンプで処理用液体を所定の供給量だけ押し出してもいいし、エンジンで用いられている燃料噴射インジェクタやプリンタで用いられているピエゾ方式やバブル方式のディスペンサ等を用いて処理用液体を所定の供給量だけ吐出してもかまわない。また、予めガス供給装置5から供給されガス流路222aを流動するガス流速と貫通孔223aの孔径とを調整し、上記ガス流速で発生する負圧により処理用液体を吸い出してガスおよび処理用液体を混合させてもかまわない。処理用液体をマイクロプラズマ源2aに供給するタイミングは、一定時間間隔や放電累積時間に基づいてマイクロプラズマ源2aで処理用液体が不足しないように供給される。
【0031】
また、上記処理用液体は、処理用液体供給装置4から貫通孔223aを介してマイクロプラズマ源2aに供給しなくてもかまわない。図5は、処理用液体をマイクロプラズマ源2aに供給する他の方法を説明するための概略図である。なお、図5では、説明を簡単にするために、マイクロプラズマ源2aは電極21aのみが描かれている。図5において、処理用液体は、上述した駆動機構6の移動可能範囲内に配置され、その上部が開口した容器C内に貯溜されている。そして、駆動機構6は、上述した処理用液体をマイクロプラズマ源2aに供給するタイミングにおいて、マイクロプラズマ源2aを処理位置から容器Cの開口部上部に移動させる。その後、駆動機構6がマイクロプラズマ源2aを下降させる、あるいは図示しない上下動機構によって容器Cを上昇させることによって、マイクロプラズマ源2aの先端部を容器Cに貯溜された処理用液体に浸漬させる。次に、駆動機構6がマイクロプラズマ源2aを上昇させる、あるいは上記上下動機構によって容器Cを下降させることによって、マイクロプラズマ源2aを容器Cの開口上部まで移動させ、駆動機構6によって処理位置までマイクロプラズマ源2aを移動させる。このマイクロプラズマ源2aを処理用液体に浸漬させる深さおよびそのタイミングを調整することによって、所望の供給量で処理用液体をマイクロプラズマ源2aに供給することができる。
【0032】
次に、プラズマ処理装置1aによって、上記処理用液体を気化し、プラズマを発生させるメカニズムを説明する。ガス供給装置5から貫通孔224aを介して供給されたガスは、ガス流路222aおよび232a内に行き渡り、ガス噴出口221aおよび231a内に導かれた後、ガス噴出口221aおよび231aから噴出する。この状態で、電源3から電極21aに、例えば交流電圧を高周波電力として供給することによってマイクロプラズマが発生する。これは、大気圧近傍の圧力下において放電しやすい上記ガス(例えばヘリウム)が高濃度となるガス噴出口221aおよび231aの近傍にプラズマが発生し、高周波電力を供給したためにプラズマの発生領域が小さくなるためである。このマイクロプラズマ発生領域は、電極21aの先端部およびガス噴出口221aおよび231aが形成する線状であり、被処理体Pに対する線状領域に対してプラズマを発生させることができる。
【0033】
一方、上述したように、処理用液体供給装置4から貫通孔223aを介して、あるいは容器Cにマイクロプラズマ源2aを浸漬させることによって、上記処理用液体がマイクロプラズマ源2aに供給されている。電源3から電極21aに高周波電力が供給されプラズマが発生している場合、電極21aおよびプラズマ中の粒子は高温状態にある。例えば、プラズマ中では、電子温度が約10000K(ケルビン)であり、中性粒子やイオンが数百〜数千Kである。したがって、プラズマや電極21aと接する上記処理用液体は、加熱され低沸点物質(ハロゲン含有分子)が気化する。そして、気化したハロゲン含有分子は、プラズマ中で電子と衝突し解離する。このとき、ハロゲン原子、ハロゲンラジカル、ハロゲンイオンが生じ、被処理体Pと反応する。つまり、上記処理用液体は、プラズマ化する。なお、マイクロプラズマ源2aは、数Pa(パスカル)から数気圧までプラズマ化が可能であるが、典型的には104Paから3気圧程度の範囲の圧力でプラズマ処理が可能である。特に、大気圧付近での処理は、厳重な密閉構造や特別な排気装置が不要であるとともに、プラズマや活性粒子の拡散が適度に抑制されるため、特に好ましい。
【0034】
上述したようにプラズマ化したハロゲン原子、ハロゲンラジカル、およびハロゲンイオンも、上記マイクロプラズマ発生領域と同様に被処理体Pに対する線状領域に対して発生する。例えば、被処理体がシリコン(Si)の基板であり、処理用液体としてフッ素系不活性液体を用いてプラズマ・エッチングする場合、当該フッ素系不活性液体は、化学的に活性なフッ素ラジカル(F*)やフッ素イオン(F+、F-)等の活性種が生成される。そして、フッ素ラジカル(F*)は、シリコン(Si)と反応し、ケイ化フッ素(SiF4)となりすぐに気化する。この反応はイオンやラジカルの当たる上記線状領域で活発に起こり、その結果、線状領域に忠実なエッチング処理が行われる。そして、駆動機構6がレール7に沿ってマイクロプラズマ源2aと被処理体Pとの距離を一定に保った状態で移動することによって、線方向に均一なエッチング処理を行うことができる。
【0035】
このように、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置1aは、高価なフッ素含有化合物ガス等の処理用ガスを用いることなく、安価な液体をプラズマ処理の活性種を含む材料として用いているため、プラズマ処理に要するコストを大幅に低減することができる。また、処理用液体の供給は、プラズマ処理に必要な供給量に制御できるため、その使用量も低減することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。当該実施形態でも、レジストプロセスを用いずに被処理体の線方向に微小で均一な表面処理を行うマイクロプラズマ処理を行うプラズマ処理装置を一例に説明する。なお、図6は、当該プラズマ処理装置1bの概略構成を示す斜視図である。
【0037】
図6において、本発明のプラズマ処理装置1bは、マイクロプラズマ源2b、電源3、処理用液体供給装置4、内側ガス供給装置5、駆動機構6、レール7、および外側ガス供給装置9を備えている。そして、プラズマ処理装置1bは、マイクロプラズマ源2bの先端部を被処理体Pの一方面に近接させてプラズマ処理を行う。なお、被処理体Pの他方面は接地されている。
【0038】
ここで、第1の実施形態で説明したプラズマ処理装置1aと第2の実施形態に係るプラズマ処理装置1bとを比較すると、電源3、処理用液体供給装置4、内側ガス供給装置5、駆動機構6、およびレール7は同一の構成部であり、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。なお、新たに設けられた外側ガス供給装置9と区別するため、プラズマ処理装置1aに設けられたガス供給装置5をプラズマ処理装置1bで内側ガス供給装置5に名称が変更されているが、ガス供給装置5および内側ガス供給装置5は同一の構成である。
【0039】
マイクロプラズマ源2bは、平板状の電極21bの両面が複数の側板で挟持され、円筒26bが外部から電極21bまで貫装されて構成されている(詳細な構造は後述する)。電極21bには、電源3から所定の高周波電力が印加される。マイクロプラズマ源2bの一方側板には、円筒26bが貫装され貫通孔244bおよび245bが形成されており、これらを介して処理用液体供給装置4、内側ガス供給装置5、および外側ガス供給装置9からそれぞれ処理用液体、内側ガス、および外側ガスが供給される。なお、処理用液体供給装置4、内側ガス供給装置5、および外側ガス供給装置9は、駆動機構6によるマイクロプラズマ源2bの移動と共に一体的に移動してもいいし、円筒26bや貫通孔244bおよび245bとの間を接続する管を伸縮可能に構成することによって、マイクロプラズマ源2bの移動に対応してもかまわない。
【0040】
駆動機構6は、マイクロプラズマ源2bをブラケット8によって保持している。駆動機構6は、レール7と噛合しており、図示しない動力源からの駆動力によってレール7に沿った移動が可能に構成されており、マイクロプラズマ源2bと被処理体Pとの相対位置を変化させる。この駆動機構6の移動方向は、マイクロプラズマ源2bの平板面と平行で、かつ被処理体Pと平行であり(図示左右方向)、この方向に移動することによって、被処理体Pの表面に細線状のプラズマ処理を施すことができる。なお、マイクロプラズマ源2bと被処理体Pとの相対位置を変化させる方法は、これに限定されず、図示上下方向にも移動可能にしてもかまわない。マイクロプラズマ源2bの移動方法は、本発明の特徴ではないため、これ以上の説明を省略する。
【0041】
図7〜図9を参照して、マイクロプラズマ源2bの構造について説明する。図7(a)は、マイクロプラズマ源2bの先端部から見た外観図であり、図7(b)は、マイクロプラズマ源2bの一方面から見た外観図である。図8は、図7(a)に示す断面A−AをA方向から見たマイクロプラズマ源2bの断面図である。図9は、図7(a)に示すB方向から見たマイクロプラズマ源2bの分解斜視図である。なお、図7および図9で示す電極21bは、他との区別を容易にするために平行斜線領域で示している。また、図7(b)、図8、および図9は、マイクロプラズマ源2bの先端部の構造の理解を容易にするために、当該先端部を上方向(つまり図6の方向とは逆)に配置して図示している。
【0042】
図7〜図9において、マイクロプラズマ源2bは、略平板状の電極21bと円筒26bと例えばセラミック製の内側板22bおよび23bと外側板24bおよび25bとによって構成されている。電極21bは、内側板22bおよび23bに挟持され、内側板22bおよび23bは、外側板24bおよび25bによって挟持され、それぞれ所定の接着剤によって接合される。電極21bの先端部は、テーパー形状を形成しており、このような先端部を被処理体Pと近接させることによって、より微細な線状領域をプラズマ処理できるようになっている。電極21bの両面は、内側板22bおよび23bにそれぞれ形成された電極21bの図示左右方向の幅と略同一の溝に嵌合して接面している。内側板22bおよび23bの電極21bと接面しない側の面は、外側板24bおよび25bとそれぞれ接面している。そして、電極21bは、内側板22bおよび23bと外側板24bおよび25bとから電極21bの先端部および当該先端部の逆方向の左右に形成される一対の片が外部に露出している。
【0043】
内側板22bおよび23bには、内側ガス噴出口221bおよび231bと内側ガス流路222bおよび232bとを形成する凹部がそれぞれ形成されている。そして、マイクロプラズマ源2bにおいては、内側ガス噴出口221bおよび231bと内側ガス流路222bおよび232bとが、内側板22bおよび23bと電極21bとが互いに接面することによって、それぞれの上記凹部と電極21bとで形成される空間によって形成される。なお、内側板23bに形成される内側ガス流路232bは、図9では隠れるために図示していないが、内側板22bに形成される内側ガス流路222bと面対称の形状で形成されている。
【0044】
外側板24bおよび25bには、外側ガス噴出口241bおよび251bと外側ガス流路242bおよび252bとを形成する凹部がそれぞれ形成されている。そして、マイクロプラズマ源2bにおいては、外側ガス噴出口241bおよび251bと外側ガス流路242bおよび252bとが、外側板24bおよび25bと内側板22bおよび23bとがそれぞれ互いに接面することによって、それぞれの上記凹部と内側板22bおよび23bとで形成される空間によって形成される。なお、外側板25bに形成される外側ガス流路252bは、図9では隠れるために図示していないが、外側板24bに形成される外側ガス流路242bと面対称の形状で形成されている。
【0045】
外側板24bには、貫通孔243bと上述した貫通孔244bおよび245bとが形成されている。貫通孔243bおよび245bは、外側ガス流路242bと外部とを貫通するように形成されており、貫通孔244bは、外側ガス流路242bおよび外側ガス噴出口241b以外の部位を貫通するように形成されている。そして、貫通孔243bには、円筒26bが貫装され固設される。貫通孔245bを介して外側ガス供給装置9から外側ガスが供給される。したがって、外側ガス供給装置5から貫通孔245bを介して供給された外側ガスは、外側ガス流路242bに導かれ、外側ガス噴出口241bから被処理体Pに向けて噴出する。一方、円筒26bおよび貫通孔244bを介して、処理用液体供給装置4および外側ガス供給装置9からそれぞれ処理用液体および外側ガスが供給される。円筒26bは、後述する内側板22bに形成された貫通孔223bにも貫装されており、上記処理用液体は、外側ガス流路242bには導かれずに内側板22bへ導かれる。貫通孔244bを介して供給された内側ガスは、後述する内側板22bに形成された貫通孔224bへ導かれる。
【0046】
内側板22bには、貫通孔223b〜225bがそれぞれ外側板24bに形成された貫通孔243b〜245bと対向する位置に形成されている。貫通孔223bおよび224bは、内側ガス流路222bと外部とを貫通するように形成されており、貫通孔245bは、内側ガス流路222bおよび内側ガス噴出口221b以外の部位を貫通するように形成されている。そして、貫通孔223bには、円筒26bが貫装され固設される。円筒26bおよび貫通孔224bを介して処理用液体供給装置4および内側ガス供給装置5からそれぞれ処理用液体および内側ガスが供給される。したがって、内側ガス供給装置5から貫通孔244bおよび224bを介して供給された内側ガスは、内側ガス流路222bに導かれ、内側ガス噴出口221bから被処理体Pに向けて噴出する。また、上述した外側ガス流路242bに導かれた外側ガスは、貫通孔225bを介して、後述する電極21bに形成された貫通孔215bに導かれる。そして、処理用液体供給装置4から円筒26bを介して供給された処理用液体は、内側ガス流路222bから電極21bに導かれ、電極21bに印加されている高周波電力により発生するプラズマや高温状態の電極21bを接触することによって気化して内側ガス噴出口221bから被処理体Pに向けて噴出する。なお、上記処理用液体が気化するメカニズムについては、後述する。
【0047】
電極21bには、内側板22bに形成された貫通孔224bおよび225bと対向する位置にそれぞれ貫通孔214bおよび215bが形成されている。これらの貫通孔214bおよび215bは、他方の内側板23bに形成された内側ガス流路232bおよび後述する貫通孔235bともそれぞれ相対している。上述した内側板22bの内側ガス流路222bに導かれた内側ガスは、この貫通孔214bを介して、他方の内側板23bに形成された内側ガス流路232bにも導かれる。そして、上述した外側板24bの外側ガス流路242bから内側板22bの貫通孔225bに導かれた外側ガスは、電極21bに形成された貫通孔215bを介して内側板23bに形成された貫通孔235bへ導かれる。
【0048】
内側板23bには、貫通孔235bが電極21bに形成された貫通孔215bと対向する位置に形成されている。貫通孔235bは、内側ガス流路232bおよび内側ガス噴出口231b以外の部位を貫通するように形成されている。電極21bの貫通孔214bを介して供給された内側ガスは、内側ガス流路232bに導かれ、内側ガス噴出口231bから被処理体Pに向けて噴出する。また、電極21bの貫通孔215bを介して導かれた外側ガスは、貫通孔235bを介して外側板25bに形成された外側ガス流路252bに導かれる。そして、外側ガス流路252bに導かれた外側ガスは、外側ガス噴出口251bから被処理体Pに向けて噴出する。
【0049】
つまり、外側ガス供給装置9からマイクロプラズマ源2bに供給される外側ガスは、貫通孔245bを介して外側ガス流路242bに導かれて外側ガス噴出口241bから噴出し、貫通孔245b、225b、215b、および235bを介して外側ガス流路252bに導かれて外側ガス噴出口251bから噴出する。内側ガス供給装置5からマイクロプラズマ源2bに供給される内側ガスは、貫通孔244bおよび224bを介して内側ガス流路222bに導かれて内側ガス噴出口221bから噴出し、貫通孔244b、224b、および214bを介して内側ガス流路232bに導かれて内側ガス噴出口231bから噴出する。そして、処理用液体供給装置4からマイクロプラズマ源2bに供給される処理用液体は、貫通孔243bおよび223bに貫装された円筒26bを介して内側ガス流路222bから電極21bに導かれ、気化して内側ガス噴出口221bから噴出する。
【0050】
ここで、第1の実施形態と同様に、内側ガス噴出口221bおよび231bと内側ガス流路222bおよび232bと外側ガス噴出口241bおよび251bと外側ガス流路242bおよび252bとが有するコンダクタンスを、マイクロプラズマ源2bの先端部長軸方向(図7左右方向)に略垂直で、かつ被処理体Pの表面に概略平行な方向(つまり、図7(a)で示す紙面上下方向)の幅が広くコンダクタンスが大きいことを「深い」、当該幅が狭くコンダクタンスが小さいことを「浅い」と表現する。この場合、図7および図8から明らかなように、内側ガス噴出口221bおよび231bと外側ガス噴出口241bおよび251bとは、コンダクタンスの小さい「浅い」形状を有した微細な線状で形成され、例えば、内側ガス噴出口221bおよび231bの「深さ」は0.1mmである。一方、内側ガス流路222bおよび232bと外側ガス流路242bおよび252bとは、内側ガス噴出口221bおよび231bと外側ガス噴出口241bおよび251bとよりそれぞれコンダクタンスが大きい「深い」形状で形成されている。この場合、内側ガス供給装置5から貫通孔244b等を介して供給された内側ガスは、まず「深く」てコンダクタンスの大きい内側ガス流路222bおよび232b内に行き渡り、次いで、「浅く」てコンダクタンスの小さい内側ガス噴出口221bおよび231b内に導かれる。つまり、圧力分布としては、内側ガス流路222bおよび232b内は、内側ガス噴出口221bおよび231bよりも圧力が高くなる。また、外側ガス供給装置9から貫通孔245b等を介して供給された外側ガスは、まず「深く」てコンダクタンスの大きい外側ガス流路242bおよび252b内に行き渡り、次いで、「浅く」てコンダクタンスの小さい外側ガス噴出口241bおよび251b内に導かれる。つまり、圧力分布としては、外側ガス流路242bおよび252b内は、外側ガス噴出口241bおよび251bよりも圧力が高くなる。したがって、「深さ」に差を設けない場合と比較して、内側ガス噴出口221bおよび231bと外側ガス噴出口241bおよび251bとから噴出する内側ガスおよび外側ガスの量および速度が、上記線状の方向に均一になるという効果を奏する。
【0051】
次に、内側ガス供給装置5から貫通孔244b等を介してマイクロプラズマ源2bに供給する内側ガスについて説明する。この内側ガスは、第1の実施形態で用いたガスと同様のプラズマ化しやすい性質のものが用いられるため、詳細な説明を省略する。
【0052】
次に、外側ガス供給装置9から貫通孔245b等を介してマイクロプラズマ源2bに供給する外側ガスについて説明する。この外側ガスは、外側ガス噴出口241bおよび251bから被処理体Pに向けて噴出し、内側ガス噴出口221bおよび231bから噴出する上記内側ガスおよび処理用液体が気化したガスよりも放電しにくいガスが用いられる。これは、電源3から電圧を電極21bに供給する場合、安定したグロー放電が発生するが、外側ガス噴出口241bおよび251bから不活性ガスのような放電しやすいガスを噴出させてしまうと、プラズマが広範囲に拡がりやすいからである。したがって、外側ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、あるいはキセノン(Xe)等の不活性ガス以外のガスを主体とするが用いられ、プラズマと接しても解離した活性種が被処理体Pと顕著な反応を示さない安価で取り扱いが容易なガスが用いられる。例えば、外側ガスは、窒素(N2)が用いられる。その他、外側ガスとしては、酸化されにくい物質が被処理体Pの場合、空気や酸素(O2)を用いることができる。また、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)等のハロゲン原子を含むエッチングガスを放電抑制ガスとして用いてもかまわない。
【0053】
次に、処理用液体供給装置4から円筒26bを介してマイクロプラズマ源2bに供給する処理用液体について説明する。この処理用液体も、第1の実施形態と同様にプラズマ処理の活性種を含む安価な液体であり、当該プラズマ処理装置1bによって被処理体Pの表面処理を行う処理内容によって選ばれる。例えば、被処理体Pの表面にエッチング処理を行う場合、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)等のハロゲン原子を含む液体が選ばれる。具体的には、一般的に市販されているフッ素系不活性液体や各種フロン、代替フロン等の洗浄液、塩酸(HCl)やフッ化水素酸(HF)の水溶液、フッ化アルカリ水溶液、ヨード含有液剤、フッ素系撥水撥油剤等が用いられる。また、被処理体Pの表面にアッシング等の酸化や酸素欠陥を埋める処理を行う場合、酸素(O)原子を含む液体が選ばれる。具体的には、酸素(O2)を溶かした水等が用いられる。これらのプラズマ処理の活性種を含む処理用液体は、高温状態の電極21bやプラズマと接触することによって気化する沸点を有することが必要であるが、揮発性はあまり高くない方が望ましい。具体的には、上記処理用液体の沸点は、50℃〜300℃程度が好ましい。処理用液体の沸点が低く揮発性を揮発性を有する場合、後述する処理用液体の供給頻度が増すという欠点がある。例えば、プラズマ処理装置1bが間欠的にプラズマを発生させる場合、電極21bに電力供給を停止している間にも処理用液体が揮発してしまう。一方、処理用液体の沸点が高いものは、電極21bやプラズマとの接触によって気化しにくいという欠点がある。
【0054】
次に、処理用液体供給装置4から円筒26bを介して処理用液体をマイクロプラズマ源2bに供給する方法について説明する。上述した処理用液体は、プラズマ処理に必要な量だけマイクロプラズマ源2bに供給される。このような供給量を制御した液体の供給は、一般的な各種方法を用いて実現することが可能であり、具体的な方法を第1の実施形態で説明したため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0055】
次に、プラズマ処理装置1bによって、上記処理用液体を気化し、プラズマを発生させるメカニズムを説明する。内側ガス供給装置5から貫通孔244b等を介して供給された内側ガスは、内側ガス流路222bおよび232b内に行き渡り、内側ガス噴出口221bおよび231b内に導かれた後、内側ガス噴出口221bおよび231bから噴出する。一方、外側ガス供給装置9から貫通孔245b等を介して供給された外側ガスは、外側ガス流路242bおよび252b内に行き渡り、外側ガス噴出口241bおよび251b内に導かれた後、外側ガス噴出口241bおよび251bから噴出する。この状態で、電源3から電極21bに、例えば交流電圧を高周波電力として供給することによってマイクロプラズマが発生する。これは、内側ガスおよび外側ガスの大気圧近傍の圧力下における放電のしやすさの差(内側ガスが格段に放電しやすい)を利用することで、内側ガス(例えばヘリウム)が高濃度となる内側ガス噴出口221bおよび231bの近傍に発生領域が小さいマイクロプラズマが発生するためである。このマイクロプラズマ発生領域は、電極21bの先端部および内側ガス噴出口221bおよび231bが形成する線状であり、被処理体Pに対する微細な細線状領域に対してプラズマを発生させることができる。
【0056】
一方、上述したように、上記処理用液体がマイクロプラズマ源2bに供給されている。電源3から電極21bに高周波電力が供給されプラズマが発生している場合、電極21bおよびプラズマ中の粒子は高温状態にある。例えば、プラズマ中では、電子温度が約10000K(ケルビン)であり、中性粒子やイオンが数百〜数千Kである。したがって、プラズマや電極21bと接する上記処理用液体は、加熱され低沸点物質(ハロゲン含有分子)が気化する。そして、気化したハロゲン含有分子は、プラズマ中で電子と衝突し解離する。このとき、ハロゲン原子、ハロゲンラジカル、ハロゲンイオンが生じ、被処理体Pと反応する。つまり、上記処理用液体は、プラズマ化する。なお、マイクロプラズマ源2bは、数Pa(パスカル)から数気圧までプラズマ化が可能であるが、典型的には104Paから3気圧程度の範囲の圧力でプラズマ処理が可能である。特に、大気圧付近での処理は、厳重な密閉構造や特別な排気装置が不要であるとともに、プラズマや活性粒子の拡散が適度に抑制されるため、特に好ましい。
【0057】
上述したようにプラズマ化したハロゲン原子、ハロゲンラジカル、およびハロゲンイオンも、上記マイクロプラズマ発生領域と同様に被処理体Pに対する微細な細線状領域に対して発生する。例えば、被処理体がシリコン(Si)の基板であり、処理用液体としてフッ素系不活性液体を用いてプラズマ・エッチングする場合、当該フッ素系不活性液体は、化学的に活性なフッ素ラジカル(F*)やフッ素イオン(F+、F-)等の活性種が生成される。そして、フッ素ラジカル(F*)は、シリコン(Si)と反応し、ケイ化フッ素(SiF4)となりすぐに気化する。この反応はイオンやラジカルの当たる上記微細な細線状領域で活発に起こり、その結果、微細な細線状領域に忠実なエッチング処理が行われる。そして、駆動機構6がレール7に沿ってマイクロプラズマ源2bと被処理体Pとの距離を一定に保った状態で移動することによって、線方向に均一なエッチング処理を行うことができる。
【0058】
このように、本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置1bは、高価なフッ素含有化合物ガス等の処理用ガスを用いることなく、安価な液体をプラズマ処理の活性種を含む材料として用いているため、プラズマ処理に要するコストを大幅に低減することができる。また、処理用液体の供給は、プラズマ処理に必要な供給量に制御できるため、その使用量も低減することができる。さらに、外側ガスを噴出することによって、微細な細線状領域に対してプラズマ処理を行うことができる。
【0059】
なお、第1および第2の実施形態の説明では、レジストプロセスを用いずに被処理体の線方向に微小で均一な表面処理を行うマイクロプラズマ処理を行うプラズマ処理装置を一例に説明したが、本発明はこの方式でプラズマ処理を行う装置に限定されない。例えば、一般的なフォトレジストを用いて行うエッチング処理装置やアッシング処理装置に対しても、プラズマ処理の活性種を含む材料として上述した処理用液体を用いれば、同様の効果が期待できる。
【0060】
また、第1および第2の実施形態の説明では、線状領域をプラズマ処理する一例を説明したが、本発明は、点状領域を処理するプラズマ処理装置としても適用可能である。この場合、第1の実施形態で説明したガス噴出口あるいは第2の実施形態で説明した内側ガス噴出口を微小な点状、もしくは微小な点状の固体を囲んで設けられた円環状とし、第2の実施形態で説明した外側ガス噴出口を当該内側ガス噴出口の外側で円環状に囲んで設ければよい。
【0061】
また、上述した説明では、被処理物を接地して電極から高周波電力を供給したが、被処理物に直流電圧または高周波電力を供給することにより、プラズマ中のイオンやラジカルを引き込む作用を強めることも可能である。この場合、電極を接地してもよいし、電極を浮遊電位に保ってもよい。
【0062】
また、高周波電力を用いてプラズマを発生させる場合を例示したが、数百kHzから数GHzまでの高周波電力を用いてプラズマを発生させることが可能である。あるいは、直流電力を用いてもよいし、パルス電力を供給することも可能である。
【0063】
また、上述した説明では、マイクロプラズマ源の電極と被処理体との間で電界を生じさせてプラズマ処理を行っているが、本発明はこれに限定されない。マイクロプラズマ源の電極近傍に電界を生じさせれば、同様にプラズマ処理を実現できることは言うまでもない。
【0064】
【発明の効果】
本発明のプラズマ処理装置は、高価なフッ素含有化合物ガス等の処理用ガスを用いることなく、安価な液体をプラズマ処理の活性種を含む材料として用いているため、プラズマ処理に要するコストを大幅に低減することができる。また、処理用液体の供給は、プラズマ処理に必要な供給量に制御できるため、その使用量も低減することができる。さらに、外側ガスを噴出することによって、微細な細線状領域に対してプラズマ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置1aの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1のマイクロプラズマ源2aの先端部および一方面から見た外観図である。
【図3】図2(a)に示す断面A−AをA方向から見たマイクロプラズマ源2aの断面図である。
【図4】図2(a)に示すB方向から見たマイクロプラズマ源2aの分解斜視図である。
【図5】図1のマイクロプラズマ源2aに処理用液体を供給する他の方法を説明するための概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置1bの概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6のマイクロプラズマ源2bの先端部および一方面から見た外観図である。
【図8】図6(a)に示す断面A−AをA方向から見たマイクロプラズマ源2bの断面図である。
【図9】図6(a)に示すB方向から見たマイクロプラズマ源2bの分解斜視図である。
【符号の説明】
1…プラズマ処理装置
2…マイクロプラズマ源
21…電極
214、215、223〜225、235、243〜245…貫通孔
22、23…(内)側板
221、231…(内側)ガス噴出口
222、232…(内側)ガス流路
24、25…外側板
241、251…外側ガス噴出口
242、252…外側ガス流路
26…円筒
3…電源
4…処理用液体供給装置
5…(内側)ガス供給装置
6…駆動機構
7…レール
8…ブラケット
9…外側ガス供給装置
P…被処理体

Claims (6)

  1. 先端部がテーパ形状となった平面状の電極が一対の側板挟持され、それぞれのガス噴出口の長軸方向が当該電極の先端部に沿って互いに平行の線状となって当該一対の側板それぞれと当該電極との間に第1のガス流路および第2のガス流路が形成されたプラズマ源の一方端部と対向して、被処理体を配置する被処理体配置ステップと、
    前記電極に高周波電力を印加して、前記プラズマ源の一方端部と前記被処理体との間の前記電極近傍に電界を生じさせる電界生成ステップと、
    前記一対の側板の一方に形成された第1の貫通孔を介して、少なくとも不活性ガスを含む第1のガスを前記第1のガス流路および前記第2のガス流路に供給して前記ガス噴出口から前記被処理体に向けて噴出させることによって、10 4 Paから3気圧の範囲の圧力下で前記プラズマ源の一方端部に線状のプラズマを発生させるプラズマ発生ステップと、
    前記一方の側板に形成された第2の貫通孔を介して、フッ素、塩素、臭素、および酸素原子から成る群から選ばれたプラズマ処理の活性種の少なくとも1つを含む処理用液体を、前記第1のガス流路および前記第2のガス流路の一方に供給して前記プラズマと当該第2の貫通孔が形成された側板と前記電極との間にて接触させる処理用液体供給ステップとを含む、プラズマ処理方法。
  2. 前記プラズマ発生ステップでは、前記第1の貫通孔から前記一対の側板それぞれと前記電極との間に形成された前記第1のガス流路および前記第2のガス流路を介して、前記電極と当該一対の側板との間の前記一方端部側にそれぞれ構成された線状の第1のガス噴出口および第2のガス噴出口から前記第1のガスが被処理体に向けて噴出され、
    前記処理用液体供給ステップでは、前記処理用液体が前記第1のガス流路を介してプラズマ化され前記第1のガスと共に前記第1のガス噴出口から噴出されることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
  3. 前記処理用液体供給ステップでは、前記プラズマ発生ステップのプラズマ発生期間に対応して、前記第2の貫通孔を介して所定の量の前記処理用液体が前記第1のガス流路および前記第2のガス流路の一方に供給されることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
  4. 前記処理用液体は、フッ素系不活性液体であることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
  5. 先端部がテーパ形状となった平面状の電極と、
    一方に第1の貫通孔および第2の貫通孔が形成され、前記電極を挟持する一対の側板と、
    前記電極に高周波電力を供給する電源と、
    前記電極に沿って前記一対の側板それぞれと当該電極との間に前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔と連通して形成され、前記電極と前記一対の側板との間に形成されるガス噴出口の長軸方向が当該電極の先端部に沿って互いに平行の線状となった第1のガス流路および第2のガス流路とを含み、10 4 Paから3気圧の範囲の圧力下で前記電源から高周波電力が供給されることによって先端部に線状のプラズマを発生させるプラズマ源と、
    記第1の貫通孔を介して、前記第1のガス流路および前記第2のガス流路に少なくとも不活性ガスを含む第1のガスを供給する第1のガス供給手段と、
    方の前記側面に設けられ、前記第2の貫通孔を介して、フッ素、塩素、臭素、および酸素原子から成る群から選ばれたプラズマ処理の活性種の少なくとも1つを含む処理用液体を前記第1のガス流路および前記第2のガス流路の一方に供給して前記プラズマと当該第2の貫通孔が形成された側板と前記電極との間にて接触させる処理用液体供給手段とを備える、プラズマ処理装置。
  6. 前記処理用液体供給手段は、前記第2の貫通孔を介して、前記第1のガス流路へ前記処理用液体を所定の流量で供給する処理用液体定量供給部を含む、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
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