JP4141936B2 - 遠心脱泡機 - Google Patents

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Description

本発明は、液中に散在する泡を除去するための脱泡機に関し、特に、化学、医薬、製紙、繊維、印刷、電子材料、油製品などの工業分野や、化粧品、食品、樹脂、塗料、接着剤、シール材などの製品の製造過程において、液中に混入した泡を連続的に除去するための脱泡機に関する。
従来より、液中に混入した泡を除去する方法としては、当該液中に消泡剤などを利用する化学的方法と以下に示す物理的方法が挙げられる。物理的脱泡方法としては、例えば、自然圧力下又は減圧下において自然に泡と液体とが分離するまで液体を放置する方法や加圧ロール方式、回転スクリーン方式、減圧薄膜方式を用いた方法が開示されている。
しかし、化学的方法は、液中に消泡剤などを添加することにより液中成分が変化するため、用途によっては好ましくない場合がある。また物理的方法では、上記いずれの方法においても粘度が高い液体の脱泡が難しく、また脱泡に長時間を有する等の問題がある。また、例えば、減圧下において処理を行うものは、液体の中に香料や溶剤などの揮発しやすい成分が蒸発しやすくなり、液の物性が不安定になると共に、高真空度対応の精密ポンプが必要であり設備費が高くなる等の問題がある。
このような問題を解決するために、遠心分離による脱泡装置がいくつか開示されている。例えば、特開平8−187404号公報(特許文献1)には、遠心分離力を多段で働かせる遠心脱泡装置が開示されている。しかしこの装置は、回転筒や飛散邪魔部などを多段で使用するため、構造が複雑であり、収率や生産性に劣るという問題があった。
また、特開平8−57206号公報(特許文献2)には、別の遠心脱泡機が開示されている。図4は、この遠心脱泡機の構成を示す断面図である。この遠心脱泡機70は、円形型ロータ71の回転中心部に中空シャフト72を配置し、中空シャフトには円形の分離板73を取りつけ、中空シャフトは軸受けにより原液ケーシング74に支持されている。この装置は、原液ケーシング74に送りこまれた泡液75が中空シャフト上流部76に送りこまれ、中空シャフト上流部76に設けられた開口77から円形型ロータ71に送りこまれる。円形型ロータ71では、回転により、泡が円形型ロータ71の中心部に集まり、中空シャフト下流部78に設けられた泡液回収用開口79から中空シャフト下流部78内に入り、泡液ケーシング80から排出される。
一方、円形型ロータ中に与えられた遠心力により円形型ロータの端部に移動する脱泡液は、円形型ロータ71内に設けられた分離板73と円形型ロータ71の外筒との隙間81及び脱泡液通路82を通って脱泡液ケーシング83に送られる。
このように、この装置には、分離板73を設けて、泡と液とを分離するための工夫などにより比較的高粘度の原液を処理できるようにされているものの、当該分離板通過後の液の滞留時間が不十分であり、泡分離の不十分な含泡液体が分離板73を越えてショートパスすることにより脱泡液側に流入する場合があり、十分な泡分離ができない場合があった。
また、円形型ロータ71の一部として共に回転する中空シャフト上流部76内でも液と泡との分離が生じ、中空シャフト上流部76の外筒に設けられた開口77からは、泡分離がなされた原液が流出する結果、中空シャフト上流部76内に泡が残り、分離が不十分である。このように装置内に残った泡や初期駆動時に装置内に存在する空気抜きまたは空気の除去が構造的に不十分であり、装置内にガスがたまりやすいという問題があった。
さらに、円形型ロータ71の中空シャフト72の両端に原液ケーシング74及び泡液ケーシング80、脱泡液ケーシング83が回転可能に取り付けられる構成であるため、装置の組立及び分解が困難であるという問題があった。
特開平8−187404号公報 特開平8−57206号公報
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の遠心式の脱泡装置が有していた問題を解消し、多様な原液を高い精度で気泡と液とに分離でき、ガス抜きが容易で、さらに簡単に分離、組立を行うことができる遠心脱泡機を提供することである。
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の遠心脱泡機を提供する。
本発明の遠心脱泡機は、鉛直方向に延在する回転中心を有する回転可能な有底円筒形状のロータを有し、前記ロータ内の分離室に存在しかつ気泡が含まれる原液に遠心力を与えることにより、脱泡処理後の脱泡液と前記気泡が集められた泡液とに分離するものである。そして、前記ロータの回転中心近傍に、前記分離室内に鉛直方向に延在して配置され、その内側を前記泡液が通過する鉛直方向に延在した泡液通路を形成し、前記ロータの前記分離室に連通する泡液取込口をその最下端近傍に有する内筒及び、前記内筒の外側に位置し前記内筒との間に前記ロータに供給される原液が通過する鉛直方向に延在した原液通路を形成しその下端近傍に前記ロータの前記分離室と連通する原液供給口を備える前記外筒と、を有する中空シャフトと、
ロータ内であって前記外筒の原液供給口よりも上位に設けられ、前記外筒に交差する方向に放射状に突出した面を有して、当該面により前記気泡の移動を規制する分離板と、
前記分離板の外周端と前記ロータの周壁との間に形成され、前記ロータ内の脱泡液を通過させる脱泡液排出部とを有する。
本発明にかかる遠心脱泡機は、泡が分散した原液をロータ内に貯留した状態でロータを回転させ、泡液と脱泡液とを分離するものであって、その原液の供給及び泡液及び脱泡液の排出を鉛直方向に立設した2重の中空シャフトに形成された通路を用いて行う。中空シャフトは内筒と外筒を備えており、前記ロータの底壁に固着して設けられることが好ましい。中空シャフトの外筒の周囲には分離板が外筒交差する方向に放射状に突出して設けられている。ロータ内への原液の供給は、2重の中空シャフトの内筒及び外筒の間に形成された原液通路からおこなう。原液通路は、分離板の下位にロータ内へ原液を排出する原液供給口を備えている。
ロータは、有底円筒形状の容器で構成されており、鉛直方向に伸びる回転軸を中心に回転可能に構成されている。ロータが回転することにより、ロータ内の原液に回転力が与えられ、泡がロータの中心側へ移動し、気泡を含まない脱泡液はロータの外周側へ存在することとなる。その結果、ロータ内の原液を泡と脱泡液に分離することができる。ロータは、ロータ内部の原液に回転力をより効率よく伝達することができるように、抵抗手段をその内側の壁に備えていることが好ましい。具体的には、フィン状の抵抗板や内側壁表面を粗面となるように処理し、原液とロータ壁との間の摩擦力が高まるようにすることが好ましい。
2重の中空シャフトの下端近傍には内筒の内側に位置する泡液通路に連通する泡液取込口が設けられており、泡液は、泡液通路を通ってロータ外に排出される。また、脱泡液は、分離板とロータの外周との間を通って、ロータ外に排出される。
また、脱泡液を排出するために、ロータは、中空軸が貫通する貫通孔を有する蓋部と前記中空軸の外側に位置し、前記貫通孔の周囲に立設して設けられたシリンダ部とを備え、前記シリンダ部と前記外筒との間に形成される脱泡液通路を通って脱泡液を排出する。上記構成によれば、脱泡液がロータの回転に伴い、脱泡液に余計なせん断力を加えることがない。よって、気泡の再発生をより効率よく防止することができる。
分離板は、放射状に突出した面を有し、当該面で脱泡液に残存する泡を脱泡液通路側に移動するのを規制するものである。分離板は、分離する原液の性状やロータの運転条件などの諸条件に関連して適宜変更することが好ましい。また、分離板は、平板形状であってもよいし円錐形にしてもよし、内周側が平板形状で外周側だけが傾斜して構成されていてもよいが、中空シャフトを中心として中心対称形状であることが好ましい。円錐形状にした場合、その傾斜角は、少なくともその外周部が回転軸に対して30〜150度の角度となるようにすることができる。このように分離板を傾斜させて設けることにより、分離板の表面積が大きくなり、原液中の泡の脱泡液側への混入をより効果的に防止することができる。また、分離板は複数設けられていてもよい。
さらに、分離板の直径は、ロータの内径と比較して10:4から10:9の範囲に設定することが好ましく、泡液と脱泡液とが分離しにくい原液を用いるときは、分離板の直径を大きくすることにより、分離の精度を向上させることができる。一方、あまりに分離板の直径を大きくすると、ロータの外に流れ出す脱泡液の量が少なくなるため、単位時間当りの脱泡処理量が少なくなるか、圧力を上げる必要がある。
このように本発明によれば、ロータに鉛直方向に原液が供給されると共に、鉛直方向に泡液及び脱泡液が排出するため、中空シャフト内での原液の分離などの問題が生じることなく、供給された原液がロータ内に移動してから分離が行われるため、分離の効率が向上する。また、この構造により、ロータ内の空気が蓄積することがなく、ガス抜きを容易に行うことができる。さらに、ロータの中心に2重の中空シャフトを設けた簡単な構造であるため、装置をコンパクトに構成することができると共に、組立及び分解などを簡単にすることができる。また、ロータの回転軸を鉛直方向にすることにより、ロータの回転が安定化する。
以下、本発明の一実施形態に係る遠心脱泡機について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる遠心脱泡機の構成を示す断面図である。遠心脱泡機1は、多数の泡が分散した原液を脱泡液と泡液とに分離することによって、原液中の泡を取り除くための装置である。遠心脱泡機1は、鉛直方向に延在する回転軸Aを有する円筒型のロータ2を有している。ロータ2は、有底円筒形状の容器で構成され、その内部が分離室2bとなっている。また、ロータ2は、蓋部5を備えており、後述する中空シャフト3に設けられた各種通路の部分以外は密閉構造となっている。また、ロータ2の底壁4の外面中心部には回転シャフト5aが設けられ、図示しないモーターなどから動力を受けて矢印70に示すように回転する。
ロータ2の底壁4内面には、分離室2b内を鉛直方向に延在する中空シャフト3が固着されている。中空シャフト3は、内筒6と外筒7とを有する2重の中空シャフトである。中空シャフトの外筒7は、中空シャフトの内筒よりも短く構成されており、外筒7の最下端に設けられた外筒固定部材8によって固定され、内筒6の両端を除く中間部分にのみ設けられている。
また、ロータの内壁表面2aは粗面になっており、後述するようにロータ内に存在する原液との摩擦を高くしてロータの回転力が原液に伝達されやすいように構成されている。また、図2に示すようにロータの内壁表面には抵抗板を取り付けてロータの回転を原液に伝達しやすいようにすることができる。回転羽根の枚数は2〜10枚程度が好ましい。また、抵抗板の形状は、幅が1〜20mm、高さがロータ2の0.1〜0.5倍とすることが好ましい。
中空シャフトの内筒6の最下端には、泡液取込口9が設けられており、また、外筒7の最下端には、原液供給口10が設けられている。中空シャフトの太さは、原液の性状等の運転条件により設定することができ、図2に示すように、ロータ2の内径Rと中空シャフト3の内径Sとの比が2:1から20:1となるような太さを有していることが好ましい。中空シャフト3が上記範囲を越えて太くなると、後述するように気泡の分離に必要な遠心力の差があまり発生せず、有効な脱泡効果が得られず、また、ロータ2の有効容積が減少して分離効果が減少する。一方、上記範囲を越えて細くなると、有効な脱泡効果を得ることができるが、ロータ2の有効容積が過大になるため、過剰な動力が必要となり、装置製造上コストが大きくなる。
外筒7の原液供給口10の上位には、分離板11が設けられている。分離板11は、図1に示すように、円板形状に設けられており、水平面に平行な方向に配置される。分離板11は、運転条件や脱泡したい原液の性状などの運転条件に応じて、図2に示すように、ロータの内径Rと分離板の直径rの比が10:4から10:9の範囲となるように適宜変形することができる。分離板11の直径が上記範囲よりも小さくなると、ロータ2内での泡の分離が不完全となり、脱泡液に混入する泡の量が増える一方、上記範囲を越えて大きくなると、分離効果は大きくなるが、脱泡液を排出するための抵抗も大きくなり、単位時間当りの処理量が少なくなるか、圧力を上げる必要がある。
また、分離板は、図2に示すように、外周部11cを傾斜させた形状とすることもできる。また、円錐形状にしてもよい。傾斜角度αとしては、概ね30から150度であることが好ましく、原液中の泡は分離板の下面に沿って流れるように誘導されるため、分離板11を傾斜させて設けることにより、分離板の直径を大きくすることなく接触面積を大きくすることができ、分離効果を向上させることができる。また、分離板は複数設けられていてもよい。
また、ロータ2の上方には、後述する中空シャフト3により形成される各種通路を通る液を貯留する各種ケーシングが設けられている。各種ケーシングは、具体的には、ロータ2によって分離され、中空シャフトの通路を通って送りこまれた泡液を受け入れ、装置の外部に排出する泡液ケーシング12、ロータ2内に供給される原液を受け入れ、中空シャフトを通してロータ内へ供給する原液ケーシング13、ロータ2によって分離され、中空シャフトの外側を通って送りこまれた脱泡液を受け入れ、装置の外部に排出する脱泡液ケーシング14とを備えている。
泡液ケーシング12は、装置1の上側部分に設けられ、泡液通路15に連通する。すなわち、矢印71に示すように泡液通路15を通って流入される泡液を受け入れ、泡液ケーシング12に設けられた図示しない排出口から矢印72に示すように装置の外部に排出する。上述のように、内筒の最下端には、泡液取込口9が設けられており、泡液取込口9を通って泡液通路15へ泡液が送りこまれる。
原液ケーシング13は、泡液ケーシング12の下側に設けられており、中空シャフト3すなわち内筒6の先端を回転可能に支持し、その底板13bで外筒7の先端を回転可能に支持する。また、原液ケーシング13は、原液通路に連通しており、図示しない供給口から矢印73に示すように送りこまれた原液を矢印74に示すように外筒7と内筒6との間に形成された原液通路16に送りこむ。原液通路16の最下端には、上述のように、原液供給口10が設けられており、原液通路16を通過した原液は、原液供給口10を通ってロータ2内へ供給される。
脱泡液ケーシング14は、原液ケーシング13の底板13bの下側に設けられており、ロータ2の蓋部5に中空シャフト3の外周を囲うように設けられたシリンダ部18の先端を回転可能に支持する。脱泡液ケーシング14は、シリンダ部18と外筒7との間に形成された脱泡液通路17に連通しており、矢印75に示すように脱泡液通路17を通って流入される脱泡液を受け入れ、脱泡液ケーシング14に設けられた図示しない排出口から矢印76に示すように装置の外部に排出する。
上記の各ケーシング12、13(13b)、14は、回転しない構成であり、ロータ2及び中空シャフト3との間の回転をスムーズにするために、中空シャフト3の内壁6及び外壁7、シリンダ部18の上端近傍にベアリング19、20、21を設けると共に、各ケーシング間の液の漏出を防止するため、O−リング等のシール部材22〜26を備えている。
次に本実施形態にかかる遠心脱泡機の動作について説明する。先ず、図3を用いて本実施形態にかかる遠心脱泡機を用いて原液の処理をするシステムについて説明する。
脱泡処理を行う原液は、原液タンク40に蓄積されている。原液タンク40からの原液は、ポンプ41により配管42を通って本実施形態にかかる遠心脱泡機1の原液ケーシング13に送りこまれる。原液ケーシング13に送りこまれた原液は、上述したようにロータに送られて泡液と脱泡液とに分離される。泡液は遠心脱泡機の外部に排出され、配管43を通ってその一部は原料タンク40に戻される。残りの一部は排水される。一方、脱泡液は、配管44を通って装置の外部に排出される。各配管42、43、44には、当該配管を通過する給送量を調整するための図示しないバルブが設けられており、また、配管42には、配管内に存在する空気が装置内に送りこまれないようにするために、図示しない空気抜きバルブが設けられている。
上記システムにおいてポンプを駆動すると、原料タンク40から遠心脱泡機へ原液の供給がおこなわれる。このときのポンプ41の吐出圧は、装置の仕様にもよるが、概ね0.05メガパスカル以下に調整することが好ましい。空気抜きバルブ90、91から原液が出てきたら各バルブを閉じ、所定の回転数でロータ2の回転を開始する。ロータの回転数は、原料や装置仕様などの運転条件により適宜調整することができる。
配管42を通って原液ケーシング13に送りこまれた原液は、矢印74に示すように原液通路16を下り、原液供給口8からロータ2の分離室2b内へ送られる。ロータ2は、上述したように、鉛直方向に伸びる回転軸Aを中心に回転可能に構成されており、ロータの回転に伴う遠心効果の作用を受けて、原液が泡液と脱泡液に分離される。
すなわち、ロータ内において原液に回転力が与えられると、単位体積あたりの比重の大きい液体部分はロータの外側へ移動し、単位体積あたりの比重が小さい気泡部分はロータの中心軸側へ移動する。すなわち、中心軸近傍には、泡液が存在し、ロータの外側には脱泡液が存在することとなる。
ロータの回転に伴う遠心効果は、ロータ2の内径と回転数に比例する。例えば、ロータの内半径が0.1mでロータ内容積が1.8Lである装置の場合、粘度が200〜500パスカル・秒の原液では、回転数は、1500〜2200rpm程度に設定し、処理量を0.4〜1.0L/minとすることにより、十分な脱泡効果が得られる。また、粘度が500パスカル・秒程度の原液では、回転数3500rpm、処理量0.32〜1.0L/min程度とすることにより、十分な脱泡効果が得られる。
一般的に、原液の送り量をふやすと、ロータ2の回転数を上げることが好ましく、また、原液の粘度が上がった場合には送り量を減らしてロータ2の回転数を上げることが有効である。特に送り量が脱泡処理に大きく影響する。一般には、ロータ2の回転数を800rpm以上とすることが望ましく、高粘度液になるほど原液の送り量を減らすことが好ましい。
なお、原料タンク40から遠心脱泡機1に送られる液温は、装置1のシール部材22〜26にゴムが使用されている場合、変質を及ぼさない程度の液温とすることが好ましい。
ロータ内で内側に集められた気泡は、中空シャフトの内壁6に設けられた泡液取込口9から泡液通路15に送りこまれる。一方、ロータ2の外よりに移動した脱泡液は、分離板11とロータ2の周壁との間の隙間から分離板11の上側へ移動する。このとき分離板が放射状に設けられているため、気泡は、分離板を越えることができず、脱泡液には気泡が混入することがない。
これらの泡液及び脱泡液は、ポンプからの吐出圧によってそれぞれ泡液通路15及び脱泡液通路17を上昇してロータの外部へ排出される。泡液は、泡液ケーシング12へ送りこまれ、上述のように配管43を通って装置外部へ排出され、脱泡液は脱泡液ケーシングへ送りこまれ、配管44を通って装置外部へ排出される。
本実施形態にかかる遠心脱泡機は、大気圧下、完全な密閉回路内での遠心分離操作により、連続的に高粘度から低粘度まで幅広い多様な原液の脱泡処理が可能であり、特に高粘度液の脱泡処理に適している。また、鉛直方向に液の供給及び排出がおこなわれるため、ガス抜きが容易であり取り扱いを簡単にすることができ、分解及び組立も容易である。
また、減圧装置が不要で設備費を安価にすることができ、簡単な構造の設備で効率的に脱泡処理ができ、溶剤や香料など揮発性の成分を含む原液などの多様な液処理が可能である。また、インライン連続式であるため、運転休止に伴う各種ロスがなく、ストックタンクが不要である。
さらに、密閉回路による遠心分離装置であり、装置内壁などへの液の飛散や衝突が抑えられるため、泡の再発生が少なく、短時間で効率的な脱泡処理が可能である。また、処理液にせん断力が発生しないため、処理液に対して変質などの悪影響を及ぼすことがない。
さらに連続式に処理ができるため、必要な時に必要な量の処理が可能であり、必要処理量に対して効果的に柔軟に対応できる設備設計が可能となり、相対的に設備コストを低くすることができる。
以下の各種原液に人工的に気泡を混入させ、図1に示す遠心脱泡機の性能評価を行った。ロータ2の内径は200mmであり、分離板は、回転軸に対して直交するように水平に取り付け、ロータとの内径比を9:10となるように設定した。脱泡処理結果の判定は目視により行い、以下のような基準で行った。
○:脱泡液中にまったく泡の混入がみとめられない。
△:概ね直径0.5mm以下の泡がごく微量に混入している。
×:概ね直径0.5mm以上の泡が少量存在するか、直径0.5mm以下の泡が多数存在している。
Figure 0004141936
上記遠心脱泡機を用いて表2に示す条件で脱泡処理を行った。その結果はすべて○であり、良好な脱泡結果が得られた。
Figure 0004141936
サンプル番号4の原液について粘度一定の状態で、原液の送り量、ロータの回転数をそれぞれ変化させて脱泡処理に与える影響について試験した。その結果を表3に示す。結果、本脱泡機においては、粘度500パスカル・秒の高粘度の原液についても2400rpm程度の回転数で完全な脱泡が可能であった。なお、送り量2.0L/min以上については、それぞれ適正な脱泡結果が得られにくいことが判明した。
Figure 0004141936
サンプル番号5の原液について、原液の粘度の違いが脱泡処理に与える影響について試験した。具体的には粘度の異なるアルギン酸ソーダ水溶液を原液として使用し、ロータ回転数及び送り量を変化させて脱泡処理の結果を評価した。その結果、高粘度の液体についても完全な脱泡が可能であった。
Figure 0004141936
以上説明したとおり、本発明にかかる遠心脱泡機によれば、脱泡処理されにくい高粘度の液体についても、高い精度で脱泡処理を行うことができる。また、大気圧下で処理し、また原液にせん断力が加わることがないため、処理液に対して変質などの悪影響を及ぼすことがない。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、分離板を複数設けるようにしてもよい。また、上記実施形態においては、中空シャフトはロータの底壁に固定し、ロータの回転に伴って各ケーシングとの間で回転可能に支持されているが、たとえば、各ケーシングと中空シャフトとを固定し、ロータとの間で回転可能に支持されるように設けられていてもよい。
本発明の実施形態にかかる遠心脱泡機の構成を示す断面図である。 図2は、変形例にかかる遠心脱泡機の部分拡大図である。 図1の遠心脱泡機のシステム構成図である。 従来の遠心脱泡機の構成を示す断面図である。
符号の説明
1 連続式脱泡機
2 ロータ
3 中空シャフト
4 底壁
5 蓋部
6 内筒
7 外筒
9 泡液取込口
10 原液供給口
11 分離板
15 泡液通路
16 原液通路
17 脱泡液通路
18 シリンダ部

Claims (8)

  1. 鉛直方向に延在する回転中心を有する回転可能な有底円筒形状のロータ(2)を有し、前記ロータ(2)内の分離室に存在しかつ気泡が含まれる原液に遠心力を与えることにより、脱泡処理後の脱泡液と前記気泡が集められた泡液とに分離する遠心脱泡機であって、
    前記ロータの回転中心近傍に、前記分離室内に鉛直方向に延在して配置され、その内側を前記泡液が通過する鉛直方向に延在した泡液通路(15)を形成し前記ロータ(2)の前記分離室に連通する泡液取込口(9)をその最下端近傍に有する内筒(6)及び、前記内筒の外側に位置し、前記内筒(6)との間に前記ロータ(2)に供給される前記原液が通過する鉛直方向に延在した原液通路(16)を形成しその下端近傍に前記ロータ(2)の前記分離室と連通する原液供給口(10)を備える外筒(7)と、を有する中空シャフト(3)と、
    ロータ(2)内であって前記外筒(7)の原液供給口(10)よりも上位に設けられ、前記外筒(7)に交差する方向に放射状に突出した面を有して、当該面により前記気泡の移動を規制する分離板(11)と、
    前記分離板(11)の外周端と前記ロータの周壁との間に形成され、前記ロータ内の脱泡液を通過させる脱泡液排出部(27)とを有することを特徴とする、遠心脱泡機。
  2. 前記ロータ(2)は、前記中空シャフト(3)が貫通する貫通孔を有する蓋部(5)と、前記中空シャフトの外側に位置し前記貫通孔の周囲に立設して設けられたシリンダ部(18)とを有し、前記シリンダ部と前記外筒(7)との間に前記脱泡液が通過する脱泡液通路(17)を形成することを特徴とする、請求項1に記載の遠心脱泡機。
  3. 前記中空シャフト(3)は、前記内筒(6)が前記ロータ(2)の底壁(4)に固着することによって配置され、その側面に前記泡液取込口(9)を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遠心脱泡機。
  4. 前記ロータ(2)は、その内側の壁にロータの回転力を前記原液に伝達するための抵抗手段を備えていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心脱泡機。
  5. 前記抵抗手段は、前記ロータ(2)の内側に設けられた抵抗板であることを特徴とする請求項4に記載の遠心脱泡機。
  6. 前記抵抗手段は、前記ロータ(2)の内表面の少なくとも一部が粗面に形成されることによって実現されることを特徴とする、請求項4に記載の遠心脱泡機。
  7. 前記分離板(11)は、少なくともその外周部が、前記回転軸に対して30〜150度に傾斜して設けられていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載の遠心脱泡機。
  8. 前記ロータの内径(R)と前記分離板の径(r)との比が10:4から10:9の範囲となるように構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載の遠心脱泡機。
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