JP4141187B2 - 脂取りシートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定機能付き多孔質物品(特に脂取りシート)の製造方法に関する。特に本発明は、脂取りシートの製造方法において、多孔質基材が有する微細空孔群へ、特定機能を発揮し得る機能材を分散配置するための方法を改善するものである。
【0002】
【従来の技術】
多孔質基材の微細空孔群に機能材を分散配置してなる特定機能付き多孔質物品は、従来、様々な分野で提供されている。例えば、印刷技術の分野では、特開平10−138655号公報に開示されるように、多孔質基材シートの厚さ方向全層に渡り、疎水性樹脂(機能材)を主成分とする塗布液を任意のパターンで浸透させてなる部分親水性シートが、簡易型の印刷用版材を構成し得るものとして提案されている。疎水性樹脂は、多孔質基材シートに親水性部分と疎水性部分とを任意のパターンで形成する機能を有する。この公報には、紙や不織布からなる多孔質基材シートの表面に、疎水性樹脂を主成分とする塗布液をシルクスクリーン印刷等の印刷法によりパターン状に塗布した後、塗布面に圧力を加えて塗布液を多孔質基材シートの裏面にまで浸透させ、塗布液を乾燥させることにより部分親水性シートを製造することが記載されている。
【0003】
また特開平10−138455号公報には、上記と同様の構成を有する部分親水性シートの製造方法であって、多孔質基材シートの表面に、疎水性樹脂を主成分とする塗布液を印刷法によりパターン状に塗布した後、塗布面側から送風したり裏面側から吸引したりして塗布液を多孔質基材シートの裏面にまで浸透させる方法が開示されている。
【0004】
また、化粧用品の分野では、実開平5−18392号公報に開示されるように、油取り紙本体に、粘土粒子、シリカ微粒子、繊維の粉体等の無機又は有機の粉粒体(機能材)を含有させてなる油取り紙が提案されている。粉粒体は、対象物から拭き取った皮脂分を迅速に油取り紙全体に浸透させて、油取り紙本体の透明化(すなわち視覚的使用感)を促進するように機能する。この公報には、紙漉き時に粉粒体を混入したり、製造後の油取り紙を粉粒体の水溶液で湿潤させたりすることにより、粉粒体を油取り紙本体の紙繊維の隙間に含有させて油取り紙を製造することが記載されている。
【0005】
さらに、特開平11−239517号公報は、プラスチック材料の多孔質延伸フィルムからなる脂取りシートに、界面活性剤等の親水性の液体吸収物質(機能材)を分布させて、皮脂分のみならず汗等の水分も迅速に吸い取ることができるようにした構成を開示する。この公報には、多孔質延伸フィルムの作製後、液体吸収物質を溶剤に溶かした塗工液をフィルム表面に塗工し、後に塗工液を乾燥させて溶剤を除去することにより親水性脂取りシートを製造することが記載されている。また、多孔質延伸フィルムの作製過程で、フィルム原材料である熱可塑性樹脂、充填剤、有機核剤などを溶融して混合する際に、任意のタイミングで液体吸収物質を混入する製造方法も記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来、特定機能付き多孔質物品の製造方法としては、多孔質基材の作製後に、機能材を含有する液体材料を多孔質基材の表面に塗布して微細空孔群に浸透させ、その状態で液体材料を乾燥させることにより微細空孔群に機能材を残留させる第1の方法と、多孔質基材の作製過程で基材材料に機能材を混入し、多孔質基材の作製と同時に機能材が微細空孔群に保持されるようにする第2の方法とが提案されている。
【0007】
しかし、第1の方法では、予め作製された多孔質基材がそれ自体に厚みむらを有していたり空孔率(基材中の微細空孔群の体積占有率)が全体に一様でなかったりした場合、多孔質基材の全体に均一な充填率(微細空孔内の機能材の体積占有率)で機能材を分散配置することが困難であった。すなわち、通常の塗布方法では、多孔質基材の全体に略一定量の液体材料が平均的に塗布されるので、基材自体の厚みや空孔率の局所的変化に応じて適量の液体材料を多孔質基材に浸透させることができず、結果として、厚みが大きい部分や空孔率が高い部分では機能材充填率が低くなり、厚みが小さい部分や空孔率が低い部分では機能材充填率が高くなる傾向があった。このような全体に一様でない機能材充填率を有する特定機能付き多孔質物品では、物品の所々において機能材が奏する作用効果に局所的な差異を生じることが懸念される。特に、物品製造効率を高めるために、長尺の多孔質基材を一方向に連続送りしながら液体材料を塗布する場合に、こうした課題が顕現することになる。
【0008】
また、前述した第2の方法では、多孔質基材に分散配置しようとする機能材の種類が、多孔質基材の作製工程における諸条件によって制限される課題があった。例えば、多孔質基材を溶融押出成形工程で作製する場合には、基材材料に混入した機能材が、基材材料の溶融温度で変性を生じる危惧があり、特に、基材材料の溶融温度で気化する機能材は使用できないことになっていた。さらに、基材材料に混入された機能材が、多孔質基材の成形性(寸法精度、機械的強度等)に何らかの影響を及ぼす懸念もあった。
【0009】
本発明の目的は、特定機能付き多孔質物品(特に脂取りシート)の製造方法において、多孔質基材に分散配置する機能材の種類が基材作製工程における諸条件の制約を受けないことを前提に、予め作製された多孔質基材がそれ自体に厚みむらや全体に不均一な空孔率を有していた場合にも、多孔質基材の全体に渡って一様な充填率で機能材を分散配置することができる製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、脂取りシートの製造方法であって、微細空孔群を初期空孔率で有する多孔質基材と、親水性液体吸収物質及び鉱油のいずれか一方からなる機能材並びに機能材を溶かす溶剤を含有した液体材料とを用意し、多孔質基材に圧力を加えながら多孔質基材を通すことができるニップ部であって、間隔を空けて並列配置される一対の回転ロールを有するニップ部を用意し、多孔質基材を、槽に貯留した液体材料に浸漬して接触させて、多孔質基材の微細空孔群に機能材を目標充填率で充填するに要する塗工量よりも多量の液体材料を多孔質基材に塗布することにより、微細空孔群の全体を液体材料で充填し、液体材料に接触させた多孔質基材をニップ部に通して、多孔質基材に、多孔質基材を塑性変形させない範囲の圧力であって、多孔質基材が加圧解除後に初期空孔率を維持できる弾性域の変形を生じる圧力を加えながら、微細空孔群を充填せずに多孔質基材に付着した余剰の液体材料を除去し、ニップ部に通した多孔質基材の微細空孔群を充填した液体材料を乾燥させて、溶剤を蒸発させて除去するとともに、機能材を微細空孔群に目標充填率で残留させること、を特徴とする方法を提供する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、ニップ部の一対の回転ロールが、間隔を空けて互いに対向する一対の外周面を有し、それら外周面の少なくとも一方が弾性を有する方法を提供する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の方法において、ニップ部の一対の回転ロールの少なくとも一方が、互いに接近する方向へ弾性的に付勢されて支持され、ニップ部で多孔質基材に圧力を加える間に、多孔質基材の厚みむらに応じて一対の回転ロールの少なくとも一方を受動式に弾性変位させる方法を提供する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、ニップ部の一対の回転ロールの少なくとも一方を、槽内の液体材料に部分的に没入して、多孔質基材の浸漬工程の直後に余剰の液体材料を除去する方法を提供する。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、液体材料を用意するときに、機能材の目標充填率に対応させて、液体材料における機能材の濃度を決定する方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の一実施形態による特定機能付き多孔質物品製造方法を実施するためのシステム全体構成を、模式図的に概略で示す。また図2及び図3は、図1の製造方法で使用される特定機能付き多孔質物品の主材料をそれぞれ示す。この製造方法では、まず、多数の微細空孔10を有する多孔質基材12と、特定機能を発揮し得る機能材14を含有した液体材料16とを用意するとともに、多孔質基材12に圧力を加えながら多孔質基材12を通すことができるニップ部18を用意する。次に、多孔質基材12を液体材料16に接触させて、多孔質基材12の微細空孔群10を液体材料16で充填する。続いて、液体材料16に接触させた多孔質基材12をニップ部18に通して、所定圧力下で、微細空孔10を充填せずに多孔質基材12に付着した余剰の液体材料16′を除去する。そして、ニップ部18に通した多孔質基材12の微細空孔群10を充填した液体材料16を乾燥させて、液体材料16に含有されていた機能材14を微細空孔群10に残留させる。このようにして、機能材14自体の性質によって特定される機能を有した多孔質物品が製造される。
【0015】
図示実施形態による製造方法をさらに詳細に説明する。多孔質基材12は、任意の工程により所定の幅及び厚みを有する長尺シート形状に作製され、例えばロール20に巻かれた形態で基材供給部22に用意される。多孔質基材12は、図示しない送り駆動機構により、基材供給部22から連続的に繰り出されて所定速度Vで一方向に送られる。基材供給部22の基材送り方向下流側には、機能材14を溶剤24に溶かしてなる液体材料16を貯留した槽26が設置される。走行する多孔質基材12は、複数のローラ28を通過して方向付けされ、槽26内に導かれて液体材料16に十分に浸漬された後に、槽26から導出される。この段階で、多孔質基材12の微細空孔群10には、液体材料16が連続して実質的完全に吸収、充填され、さらに微細空孔群10から溢れた余剰量の液体材料16′が、多孔質基材12に連続的に追随して槽26から導出される。
【0016】
ここで図4に示すように、多孔質基材12が全体に一様な空孔率を有していると仮定して、微細空孔群10に所望充填率αで機能材14を充填するための液体材料16の適正塗工量βを、空孔率や送り速度V等の諸条件から算出しておけば、その適正塗工量βの液体材料16が多孔質基材12に連続的に塗布されるように液体材料塗布工程S1(上記実施形態では浸漬工程)を適宜制御することにより、後の乾燥段階S2を経て、機能材14を目標の充填率αで微細空孔群10に分散配置した特定機能付き多孔質物品Aが得られる。これに対し、図5(a)に示すように、同じ塗布工程S1によって、より厚みの大きい(又は空孔率の高い)多孔質基材12に塗工量βの液体材料16を塗布すると、乾燥段階S2を経て得られた特定機能付き多孔質物品A′は、液体材料16の不足に起因して、目標充填率αに達しない過少の機能材14が微細空孔群10に配置されたものとなる。また図5(b)に示すように、同じ塗布工程S1によって、より厚みの小さい(又は空孔率の低い)多孔質基材12に塗工量βの液体材料16を塗布すると、乾燥段階S2を経て得られた特定機能付き多孔質物品A″は、液体材料16の過剰に起因して、目標充填率αを超える過多な機能材14が微細空孔群10に配置されたものとなる。そこで、上記実施形態においては、図5(a)に示すような機能材過少状態を回避するべく、予め算出された適正塗工量βよりも十分に多量の液体材料16が槽26内で多孔質基材12に連続的に塗布されるように、浸漬工程を制御する。
【0017】
なお、機能材14は、多孔質物品に要求される特定機能を発揮し得るものであって特に限定されないが、樹脂、金属、油、薬剤等を含む無機物又は有機物の粉粒体、液体、コロイド等から形成される。また多孔質基材12は、紙、不織布、樹脂フィルム、スポンジマット等、寸法が均一又は不均一な多数の微細空孔10を不規則又は規則的に配置した種々の素材から形成される。例えば樹脂フィルムからなる多孔質基材12は、特開平11−239517号公報に開示されるように、透明性の高い結晶性熱可塑性樹脂に充填剤を添加して主原料とし、これを成膜した樹脂フィルム材を適当に延伸して微細空孔群を付与することにより作製できる。この場合、例えばポリオレフィン系、ポリウレタン系又はポリイミド系の熱可塑性樹脂を使用できる。さらにこの場合、機能材14を溶かす溶剤24としては、液体材料16に多孔質基材12への自己浸透性を付与するべく表面張力が低く機能材14の溶解性が高いものであって、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアルキルケトン、メチルエーテル、エチルエーテル、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン等を使用できる。
【0018】
機能材14に関する液体材料16の体積濃度X(vol%)は、以下の式によって定義される。この式から分かるように、体積濃度Xは、目標とする機能材14の充填率α(vol%)に対応する値である。
X=(Q−R)/Q×100=α
ここで、Qは多孔質基材12の全体の初期空孔容積であって、多孔質基材12の作製条件によって算出される。また、Rは製造された(すなわち機能材充填後の)多孔質物品Aに残される空孔容積であって、多孔質物品Aに要求される特定機能の水準に基づいて決定される。
したがって、例えば10%の機能材充填率αを有する多孔質物品Aを製造しようとする場合には、濃度10%で機能材14を含有する液体材料16を使用すれば良いことになる。
【0019】
再び図1を参照すると、槽26の基材送り方向下流側に設置されるニップ部18は、間隔を空けて並列配置される一対の回転ロール30、32を有する。それら回転ロール30、32の外周面30a、32aは、間隔を空けて互いに対向する一対の当接面を構成する。これら回転ロール30、32は、少なくともそれぞれの外周面30a、32aを含む部分が、双方ともに金属等の剛性材料から形成されるか、一方が剛性材料で他方がゴム等の弾性材料から形成されるか、双方ともに弾性材料から形成されるかの、いずれかを選択して構成できる。そして、槽26内で十分に多量の液体材料16を塗布された多孔質基材12は、余剰量の液体材料16′を担持して槽26から導出され、その状態で一対の回転ロール30、32の間に通される。そこで、図6に示すように、速度Vで走行する多孔質基材12に両回転ロール30、32から圧力Pを加えることにより、多孔質基材12に付着した余剰量の液体材料16′を連続的に除去し、適正量の液体材料16を全体に含浸した状態の多孔質基材12を送出する。
【0020】
回転ロール30、32によって多孔質基材12に加えられる圧力(ニップ圧)Pは、図7に示すように、多孔質基材12が加圧解除後に初期空孔率を維持できる弾性域Eの変形を生じる(すなわち塑性変形を生じない)圧力である。したがって、多孔質基材12の弾性限度Lにおける圧力をPLとすると、0<P<PLであって、この範囲の圧力Pをニップ部18で多孔質基材12に負荷したときに、図6に示すように、後の乾燥段階S2を経て、機能材14を目標の充填率αで微細空孔群10に分散配置した特定機能付き多孔質物品Aが得られる。これに対し、図8(a)に示すように、ニップ部18で多孔質基材12に圧力が実質的に負荷されない場合は、余剰液体材料16′が完全には除去されずに残留するので、乾燥段階S2を経て得られた特定機能付き多孔質物品A″は、目標充填率αを超える過多な機能材14が微細空孔群10に配置されたものとなる。他方、図8(b)に示すように、ニップ部18でPL以上の圧力P′が多孔質基材12に負荷されると、多孔質基材12が塑性変形して加圧解除後の空孔率が著しく低下する(微細空孔10が潰れている)ので、乾燥段階S2を経て得られた特定機能付き多孔質物品Bは、所望の機能を発揮できないものとなる。
【0021】
再び図1を参照すると、ニップ部18の基材送り方向下流側には、乾燥室34が設置される。乾燥室34は、液体材料16における溶剤24を除去するための構成を有し、したがって機能材14には影響を及ぼさない条件(温度、風量等)下に多孔質基材12を置くことができる。ニップ部18で余剰量の液体材料16′を除去した多孔質基材12は、乾燥室34に導入され、所定の乾燥作用を受けて、微細空孔群10に浸透している液体材料16の溶剤24を蒸発させる。それにより、液体材料16に含有されていた機能材14が、多孔質基材12の微細空孔群10に目標充填率αで一様に残留する。その状態で乾燥室34から導出された多孔質基材12は、特定機能付き多孔質物品Aとして、例えばロール36に巻かれて物品回収部38に回収される。
【0022】
上記構成によれば、基材供給部22から速度Vで連続的に送り出される多孔質基材12が、それ自体に厚みむらや全体に不均一な空孔率を有していた場合にも、多孔質基材12の全体に渡って一様な充填率で機能材14を分散配置することができる。例えば、多孔質基材12が全体に不均一な空孔率を有していたとしても、塗布工程において多孔質基材12に十分に多量の液体材料16を塗布することにより、微細空孔群10に液体材料16を実質的完全に浸透させることができる。そして、多孔質基材12に付着した余剰量の液体材料16′は、前述したようにニップ部18で確実に除去される。ここで、多孔質基材12が厚みむらを有していた場合には、多孔質基材12のいかなる部分にも塑性変形を生じない範囲の適当な圧力Pをニップ部18で多孔質基材12に加えることにより、厚みむらに対応した圧力分布で多孔質基材12が弾性変形し、結果として余剰液体材料16′が確実に除去される。特にこの場合、ニップ部18の少なくとも一方の回転ロール30、32に、外周面30a、32aを含む部分がゴム等の弾性材料から形成される弾性ロールを使用することにより、多孔質基材12の厚みむらへの圧力追従性を向上させることができる。
【0023】
また、ニップ部18の少なくとも一方の回転ロール30、32の軸を弾性支持し、多孔質基材12の厚みむらに応じて少なくとも一方の回転ロール30、32が受動式に弾性変位可能な構成とすることによっても、厚みむらに対応した適正量の液体材料16を微細空孔群10に浸透させることができる。例えば図9(a)に示すように、液体材料16を十分に浸透させた多孔質基材12がニップ部18で圧力Pを受けることにより、機能材14を目標の充填率αで微細空孔群10に分散配置した特定機能付き多孔質物品Aが得られているとする。このとき、多孔質基材12の厚みむらに起因して、厚みが規定値よりも小さくなっている部分では、図9(b)に示すように、一対の回転ロール30、32の間隔が弾性支持構造(図示せず)の付勢下で自動的に縮小して多孔質基材12に適正範囲の圧力Pが負荷されるので、乾燥段階S2を経て得られた特定機能付き多孔質物品Aは、この厚みの小さい部分においても、機能材14を目標充填率αで微細空孔群10に配置したものとなる。同様に、多孔質基材12の厚みが規定値よりも大きくなっている部分では、図9(c)に示すように、一対の回転ロール30、32の間隔が弾性支持構造(図示せず)の付勢下で自動的に拡大して多孔質基材12に適正範囲の圧力Pが負荷されるので、特定機能付き多孔質物品Aは、この厚みの大きい部分においても、機能材14を目標充填率αで分散配置したものとなる。なお、回転ロール30、32を弾性支持する上記構成を、前述した弾性ロールの使用と組み合わせることによって、多孔質基材12の厚みむらへの圧力追従性が一層向上することは理解されよう。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、様々な変更を施すことができる。
例えば図1に示す構成では、多孔質基材12が、液体材料16に浸漬された後、槽26から導出されてニップ部18に至る間に、多孔質基材12に塗布された液体材料16の溶剤24が自然蒸発することにより、製造された多孔質物品における機能材14の充填率が変動する場合がある。このような懸念を排除するためには、槽26内に貯留された液体材料16とニップ部18との間の距離を可及的に削減することが望ましい。そこで、例えば図10(a)及び(b)に示すように、ニップ部18を構成する一対の回転ロール30、32の一方又は双方を、槽26内の液体材料16に部分的に没入して、多孔質基材12の浸漬工程の直後に余剰液体材料16′を除去するように構成することが有利である。なお、多孔質基材12を液体材料16に接触させる工程は、浸漬工程(ディップコーティング)に限定されず、グラビアコーティング、フレキソコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング等の種々の塗布工程を採用できる。
【0025】
また、ニップ部18は、一対の回転ロール30、32を有する構成に限定されず、3個以上の回転ロールや、固定当接面と移動当接面との組み合わせ、固定当接面同士の組み合わせ等、種々の構成を採用できる。さらに、多孔質基材12に分散配置される機能材14は1種類に限定されず、例えば、異なる特定機能を発揮し得る複数種類の機能材14を含有した液体材料16を用意して、多孔質基材12の微細空孔群10に複数種類の機能材14を残留させるようにすることもできる。
【0026】
また、乾燥室34に代えて、種々の乾燥装置を採用することができる。例えば、米国特許第5581905号、同第5694701号、同第5813133号、同第5980697号、同第6047151号等に開示されるギャップ型乾燥装置を好適に採用できる。
【0027】
本発明に係る特定機能付き多孔質物品製造方法は、多孔質延伸フィルムの微細空孔群に親水性液体吸収物質を分散配置させてなる化粧用脂取りシートの製造方法として有利に適用できる。この場合、多孔質延伸フィルムが厚みむらや不均一な空孔率を有していても、機能材としての親水性液体吸収物質が全体に一様な充填率で脂取りシートに封入されるので、皮脂分及び水分吸い取り機能並びに使用者に視覚的使用感を与えるシート透明化機能を、脂取りシートの全体に渡って均一化できる。なお、この構成では、機能材充填率は、脂取りシートによる皮脂分及び水分吸い取り量とシート透明化速度との兼ね合いに応じて設定できる。また、同様の脂取りシートにおいて、親水性液体吸収物質の代わりに、多孔質延伸フィルムの微細空孔群に予め鉱油を封入しておくこともできる。この場合、機能材としての鉱油は、脂取りシートで吸い取ることができる皮脂分や水分の量を削減する一方で、迅速な透明化を実現する機能を有する。以下に実施例として、本発明の製造方法により製造したこのような脂取りシートの構成を説明する。
【0028】
【実施例】
ポリプロピレン樹脂を主原料とする多孔質延伸プラスチックフィルムからなる多孔質基材12と、鉱油(機能材14)を濃度X=10vol%でイソプロピルアルコール(溶剤24)に溶かして得られた液体材料16とを用意し、図1に示す製造方法により、目標充填率α=10vol%で鉱油を分散配置した特定機能付き多孔質物品(脂取りシート)を製造した。ここでニップ部18は、ショア硬度65のゴム製外周面30aを有する弾性ロール30と、金属製外周面30bを有する剛性ロール32とから構成した。また、多孔質基材12を速度V=50m/分で走行させて、槽26内の液体材料16へ0.1秒間浸漬した後、ニップ部18で圧力P(ニップ線圧)=50PLI(約900kgf/m)を多孔質基材12に負荷しながら余剰液体材料16′を除去した。この製造工程を、空孔率(空孔容積)の異なる3種類の多孔質基材12に対して同一条件で実施し、製造工程前の初期空孔容積Qと製造工程後の物品空孔容積Rとを測定した。測定結果を下表に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
この表から分かるように、空孔率(空孔容積)の異なる多孔質基材12に対し、略同一の機能材充填率αを達成することができた。したがって、連続送りされる多孔質基材12が厚みむらや不均一な空孔率を有する場合にも、本発明方法により全体に一様な機能材充填率を達成できることが予測される。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、多孔質基材に分散配置する機能材の種類が基材作製工程における諸条件の制約を受けないことを前提とする特定機能付き多孔質物品(特に脂取りシート)の製造方法において、予め作製された多孔質基材がそれ自体に厚みむらや全体に不均一な空孔率を有していた場合にも、多孔質基材の全体に渡って一様な充填率で機能材を分散配置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による特定機能付き多孔質物品製造方法を実施するためのシステム全体構成を概略で示す図である。
【図2】図1の製造方法で用意される多孔質基材の概略斜視図である。
【図3】図1の製造方法で用意される液体材料の説明図である。
【図4】図1の製造方法における塗布工程の概念図である。
【図5】(a)図4の塗布工程で液体材料不足時の結果を示す概念図、及び(b)図4の塗布工程で液体材料過剰時の結果を示す概念図である。
【図6】図1の製造方法におけるニップ部の作用を示す概念図である。
【図7】図6のニップ部における適正圧力を説明する図である。
【図8】(a)図6のニップ部で圧力不足時の結果を示す概念図、及び(b)図6のニップ部で圧力過剰時の結果を示す概念図である。
【図9】図1の製造方法による機能材充填率の均一化効果を説明する概念図で、(a)平均厚みの多孔質基材に対する機能材充填作用、(b)厚みの小さい多孔質基材に対する機能材充填作用、及び(c)厚みの大きい多孔質基材に対する機能材充填作用を示す。
【図10】(a)図1の製造方法におけるニップ部の変形例を示す図、及び(b)図1の製造方法におけるニップ部の他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
10…微細空孔
12…多孔質基材
14…機能材
16…液体材料
18…ニップ部
24…溶剤
26…槽
30、32…回転ロール
34…乾燥室
Claims (5)
- 脂取りシートの製造方法であって、
微細空孔群を初期空孔率で有する多孔質基材と、親水性液体吸収物質及び鉱油のいずれか一方からなる機能材並びに該機能材を溶かす溶剤を含有した液体材料とを用意し、
前記多孔質基材に圧力を加えながら該多孔質基材を通すことができるニップ部であって、間隔を空けて並列配置される一対の回転ロールを有するニップ部を用意し、
前記多孔質基材を、槽に貯留した前記液体材料に浸漬して接触させて、該多孔質基材の前記微細空孔群に前記機能材を目標充填率で充填するに要する塗工量よりも多量の該液体材料を該多孔質基材に塗布することにより、該微細空孔群の全体を該液体材料で充填し、
前記液体材料に接触させた前記多孔質基材を前記ニップ部に通して、該多孔質基材に、該多孔質基材を塑性変形させない範囲の圧力であって、該多孔質基材が加圧解除後に前記初期空孔率を維持できる弾性域の変形を生じる圧力を加えながら、前記微細空孔群を充填せずに該多孔質基材に付着した余剰の該液体材料を除去し、
前記ニップ部に通した前記多孔質基材の前記微細空孔群を充填した前記液体材料を乾燥させて、前記溶剤を蒸発させて除去するとともに、前記機能材を該微細空孔群に前記目標充填率で残留させること、
を特徴とする方法。 - 前記ニップ部の前記一対の回転ロールが、間隔を空けて互いに対向する一対の外周面を有し、それら外周面の少なくとも一方が弾性を有する請求項1に記載の方法。
- 前記ニップ部の前記一対の回転ロールの少なくとも一方が、互いに接近する方向へ弾性的に付勢されて支持され、前記ニップ部で前記多孔質基材に前記圧力を加える間に、該多孔質基材の厚みむらに応じて該一対の回転ロールの少なくとも一方を受動式に弾性変位させる請求項1又は2に記載の方法。
- 前記ニップ部の前記一対の回転ロールの少なくとも一方を、前記槽内の前記液体材料に部分的に没入して、前記多孔質基材の浸漬工程の直後に前記余剰の液体材料を除去する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記液体材料を用意するときに、前記機能材の前記目標充填率に対応させて、該液体材料における該機能材の濃度を決定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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