JP4140441B2 - トナー製造装置、トナー製造方法及びトナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に使用されるトナーを製造するトナー製造装置及びトナー製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水系媒体中での重合工程を経てトナー粒子を形成する重合トナーは、特開2000−214629号公報(以下特許文献1という。)に記載の様に、製造工程で粒子の粒径や形状を制御できるので、小粒径で粒径分布がシャープであり、しかも、個々の粒子の形状が揃った粒子表面に角のない丸みを帯びたトナーが得られる。
【0003】
この様な大きさと形の揃ったトナーを用いて画像形成を行うと優れた細線再現性や高解像度が発揮され、特に1200dpi(1インチあたりのドット数、1インチは2.54cm)という微小なドット画像を形成するデジタル方式の画像形成に最適である。
【0004】
重合トナーは、水系媒体中でトナー粒子を生成後、濾過装置の様な固液分離装置に代表される分離手段を用いて水系媒体よりトナー粒子を分離して得られる。トナー粒子を分散させていた水系媒体中には、界面活性剤やトナー粒子表面より脱離した遊離離型剤粒子、その分解物粒子等の不純物が含有されている。そのため、トナー粒子を水系媒体より分離する時は、トナー粒子表面にこれらの不純物が残存しない様によく洗浄することが必要である。
【0005】
トナー粒子表面からの不純物除去を目的として、特開2000−292976号公報(以下特許文献2という)には、遠心分離により固体粒子と水系媒体とを分離しながら、濾液の導電率が特定値以下になるまで洗浄水の供給を行ってトナー粒子の洗浄を行う技術が開示されている。また、特開2001−249490号公報(以下特許文献3という)には、攪拌翼と濾過材とを備えた容器内で水系媒体を除去したトナー粒子に洗浄液を加えて攪拌した後、加圧下でトナー粒子を濾過して不純物の除去を行う技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−214629号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−292976号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2001−249940号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常の洗浄行為を繰り返してもトナー粒子表面に吸着した界面活性剤や固着した分散安定剤を完全に除去できるものではないことが判明した。
【0010】
事実、上記特許文献に開示された洗浄方法を経て得られたトナーを用いて画像形成を行うと、トナー画像上の高濃度部分に白い粒上の画像欠陥が発生するトナーブリスターと呼ばれる問題が発生した。特に、10万枚以上の連続プリントを行う場合や低湿度環境下で連続的に画像形成を行う場合にこの傾向が顕著に見られた。これはトナー粒子表面に残存した不純物が取り込んでいた水分が定着工程の加熱により水蒸気となって排出され、排出の際にトナー層を破壊する結果画像欠陥を発生させるものと推測される。
【0011】
トナー粒子表面に残存する不純物を有効に除去する方法として、洗浄工程で酸またはアルカリ処理を併用することも試みたが不十分であった。
【0012】
この様に、機械的手段によりトナー粒子表面から不純物を完全に除去しながらトナー粒子の洗浄を行う技術は確立されていなかった。
【0013】
本発明は以上の様な事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、水系媒体中で粒子形成して得られるトナー粒子の洗浄工程において、研磨の様な機械的作用でトナー粒子表面より不純物を確実に除去することにより定着工程時にトナーブリスターが発生しない安定したトナー画像の得られるトナー製造技術を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、水系媒体中で粒子形成を行うトナーの製造工程において、粒子形成の完了したトナー粒子が分散してなる液(以下トナー粒子分散液という)を円筒状のスクリーン上に形成された狭い隙間(以下スリットともいう)に通過させた。そして、スリット通過させたトナー粒子が長期にわたる画像形成を行ってもトナーブリスターを発生させず、画像欠陥のない良好なトナー画像を安定して得られることを見出した。
【0015】
この様に、トナー粒子分散液をスクリーン上のスリットに通過させることにより画像欠陥の発生しない安定した画像形成が可能なトナーが得られた理由は明らかではないが、おそらく、トナー粒子が狭いスリットを通過する時にトナー粒子同士がお互いに激しくぶつかり合い、擦れ合い、研ぎ合って、トナー粒子表面に残存していた不純物が完全に除去され、トナー粒子表面から余分な水分が駆逐される結果トナーブリスターの発生がなくなったためと推測される。
【0016】
また、本発明は、特に円筒形状のスクリーン上のスリットにトナー粒子分散液を通過させることを特徴とし、円筒の外側から内側に向けてトナー粒子分散液を通過させる構成としたり、円筒の内側より外側に向けてトナー粒子分散液を通過させる構成とすると、得られたトナー粒子は100万枚を超える連続画像形成を行っても画像欠陥の発生がなく、長期にわたり細線再現性に優れたトナー画像が得られることが確認された。さらに、感光体フィルミングやクリーニング不良といった問題も全く発生しないことが確認された。
【0017】
本発明において、この様にトナー粒子分散液の通液方向を特定した状態でスクリーンを通液させて得られたトナー粒子の表面を分析すると、トナー粒子表面における金属元素濃度が激減していることが観察され、円筒形状のスクリーンに対し所定方向からトナー粒子分散液を通過させることにより、トナー粒子表面への洗浄がより効果的に行われていることが判明した。
【0018】
この様に、円筒形状のスクリーンを用いてトナー粒子分散液を特定の方向から通液させることによりトナー粒子表面への洗浄作用が向上する理由は明らかではないが、おそらく、円筒形状のスクリーンに対しトナー粒子分散液を特定方向から規則的に通液すると、スクリーン通過時におけるトナー粒子分散液の流速がスクリーンの全面に対してむらなく均等化し、その結果前述のスクリーン通過時におけるトナー粒子同士の研ぎ合いがスクリーン全面に対し均一かつ同程度に行われるために洗浄作用の向上が達成されるものと推測される。
【0019】
本発明は、以下のいずれか1項に記載の構成により達成される。
〔1〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法に用いられるトナー製造装置であって、該トナー製造装置は、トナー粒子分散液を通過させる複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンを有し、該円筒形状のスクリーンの外側より内側に向けて該トナー粒子分散液を通過させるものであることを特徴とするトナー製造装置。
【0020】
〔2〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法に用いられるトナー製造装置であって、該トナー製造装置は、トナー粒子分散液を通過させる複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンを有し、該円筒形状のスクリーンの内側より外側に向けて該トナー粒子分散液を通過させるものであることを特徴とするトナー製造装置。
【0021】
本発明における「トナー粒子分散液」とは、水系媒体中で粒子形成して得られたトナー粒子が分散状態にある液である。具体的な例としては、たとえば重合性単量体を水系媒体中で重合して得られた樹脂微粒子と着色剤微粒子とを凝集させて得たトナー粒子が分散した液や、樹脂を有機溶剤に溶解させて水系媒体中で溶剤を留去させて形成したトナー粒子が分散している液をいう。
【0022】
上記の「円筒形状を有するスクリーン」とは、後述するワイヤに代表される様な線状の固体部材をコイル状に捲装する等の加工処理を行って円筒形状に形成したスクリーンである。
【0023】
なお、上記の「複数のスリットを有するスクリーン」の具体的な意味については後述する。
【0024】
〔3〕前記スクリーンは、1つ以上の直線部分を有する断面形状を有する線状の固体部材(線状部材)より形成され、該スクリーンのトナー粒子分散液流入面は、該線状の固体部材の断面形状における直線部分より形成されてなるものであることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載のトナー製造装置。
【0025】
上記に記載の「スクリーンのトナー粒子分散液流入面」とは、トナー粒子分散液をスクリーン上に設けたスリットに通過させる時にトナー粒子分散液を投入する側のスクリーンの面をいう。具体的には後述する図1、3、4及び7中で番号24で表されるスクリーン面のことをトナー粒子分散液流入面という。
【0026】
上記の「線状の固体部材」とは、例えばワイヤなどに代表される線状の形状を有する固体部材を意味する。なお、本発明では「線状の固体部材」を「線状部材」ともいう。
【0027】
上記の「断面形状に1つ以上の直線部分を有する線状部材」とは、線状部材の断面における輪郭上に直線部分が存在することを意味するものである。
【0028】
〔4〕前記線状部材の断面形状が、三角形の形状を有するものであって、前記三角形の頂点に該当する個所が曲面で構成されているものであることを特徴とする前記〔3〕に記載のトナー製造装置。
【0029】
上記〔4〕に記載の構成は、本発明で使用されるスクリーンを形成する線状部材の断面形状が三角形の形状を有し、三角形の頂点に該当する個所(エッジ部分)が曲面を形成しているものである。
【0030】
すなわち、上記〔4〕に記載の構成は、線状部材の断面形状が、後述する図6(a)に示す様に線状部材の断面における輪郭が3つの直線より構成され、かつ三角形の頂点に該当する個所が頂点ではなく曲面で構成されていることを意味するものである。
【0031】
上記〔4〕に記載の構成によれば、断面形状が三角形の形状を有し、前記三角形の頂点に該当する個所が曲面で構成されているワイヤに代表される線状部材でスクリーンを作製し、トナー粒子分散液を該スクリーンのスリットに通過させて得られたトナー粒子は、画像形成時にトナーブリスターが発生せず画像欠陥のない良好なトナー画像を長期にわたり安定して得られることが確認され、細線再現性の要求されるデジタル画像を出力する画像形成装置に使用されるトナー粒子を製造する上で効果的である。
【0032】
〔5〕前記線状部材の断面形状は、前記直線部分と該直線部分に隣接する線分とで形成されるエッジ部分が曲面を有し、該曲面の曲率半径が、1μm以上20μm以下であることを特徴とする前記〔3〕または〔4〕に記載のトナー製造装置。
【0033】
上記の「直線部分と該直線部分に隣接する線分とで形成されるエッジ部分」について、本発明で使用されるワイヤに代表される線状部材の断面上の輪郭部は複数の線分より構成される。「エッジ部分」とは輪郭部を構成する複数の線分が交差する交点近傍の領域である。本発明で使用される線状部材は、その輪郭部を構成する複数の線分のうち少なくとも1つが直線であり、その直線部分に隣接する線分との交点近傍で形成されるエッジ部分が曲面で構成され、頂点を有さない。
【0034】
また、上記の「直線部分と該直線部分に隣接する線分とで形成されるエッジ部分」は、図5の204で示される領域を言う。すなわち、直線部分203を延長し、かつ該直線部分203に隣接する線分202を延長した時に双方の延長線が交差する領域をエッジ部分と呼ぶ。
【0035】
本発明では、エッジ部分に形成される曲面の曲率半径の値が上記範囲内にある時、トナー粒子分散液がスリット通過する際にトナー粒子に作用する洗浄作用が最も効率よく行われることが確認されている。おそらく、スリットを通過するトナー粒子同士が効率よく研ぎあうことによりトナー粒子表面に付着した不純物が効果的に除去されるものと推測される。
【0036】
また、曲率半径の値が上記範囲の時はトナー粒子分散液を繰り返し通過させてもワイヤのエッジ部が磨耗することなく長期にわたり安定した帯電性能を有するトナー粒子が得られることが確認されている。
【0037】
〔6〕前記線状部材の断面形状が、前記直線部分と該直線部分に隣接する線分とで形成されるエッジ部分で曲面を有し、該曲面の曲率半径が、トナー粒子の平均粒径Dv50の0.25倍以上5倍以下であることを特徴とする前記〔3〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
【0038】
上記の「トナー粒子の平均粒径Dv50」とは、50%体積粒径あるいは50%体積平均粒径と呼ばれ、トナー粒子の体積平均粒径における中央値となる粒径の値をいう。なお、50%体積粒径(Dv50)は、コールターカウンターTA−II型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)といった測定手段により算出される。
【0039】
本発明では、線状部材のエッジ部分における曲面の曲率半径とトナー粒子の平均粒径Dv50との間に上記関係を有する時に、トナー粒子分散液のスリット通過時におけるトナー粒子の洗浄性能を効率よく発現させる。
【0040】
〔7〕前記スクリーンのスリット幅が、15μm以上50μm以下であることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
【0041】
上記の「スクリーンのスリット幅」は後述の図1(b)や図7中でpで示される個所をいう。本発明では、「スクリーンのスリット幅」が上記範囲にある時、トナー粒子がスクリーンを通過した時に破砕せず、かつ画像形成時にトナーブリスターが発生せず安定したトナー画像が得られる。
【0042】
〔8〕前記線状部材が、ニッケル合金製のものであることを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
【0043】
上記〔8〕に記載の様に、本発明ではスクリーンを構成する線状部材をニッケル合金製のワイヤを用いることにより、得られたトナー粒子を繰り返し画像形成に使用しても長期にわたり良好な階調性の画像が得られた。
【0044】
〔9〕前記トナー粒子分散液が前記スクリーンを通過する時の速度が、12.5cm/分以上167cm/分以下となる様に該トナー粒子分散液の通過速度を制御する制御手段を有することを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
【0045】
本発明に係るトナー製造装置では、トナー粒子分散液がスクリーンを通過する際の速度を上記範囲内の値とすることにより、スクリーン通過によるトナー粒子の破砕をおこさずに安定した不純物の除去を可能にしている。
【0046】
〔10〕前記スクリーンに周波数10kHz以上38kHz以下、パワー密度0.01W/cm2以上0.5W/cm2以下の超音波を印加する超音波印加装置を有することを特徴とする前記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
【0047】
本発明では、スクリーンに上記条件の超音波を印加することにより、得られたトナーで画像形成を行うと高階調のトナー画像を長期にわたり安定して得られることが確認されている。
【0048】
以下〔11〕〜〔14〕に記載の構成は、トナー製造方法に関する。
〔11〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法であって、トナー粒子分散液を複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンに通過させて該トナー粒子を洗浄する時に、該トナー粒子分散液を該円筒形状のスクリーンの外側より内側に向けて通過させることを特徴とするトナー製造方法。
【0049】
〔12〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法であって、トナー粒子分散液を複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンに通過させて該トナー粒子を洗浄する時に、該トナー粒子分散液を該円筒形状のスクリーンの内側より外側に向けて通過させることを特徴とするトナー製造方法。
【0050】
〔13〕前記スクリーンは、断面を構成する輪郭部に1つ以上の直線部分を有する線状部材より形成され、かつ、該輪郭部の直線部分でトナー粒子分散液を流入させる面を形成するものであって、該線状部材を一定間隔で配置することにより形成されたスリットに該トナー粒子分散液を通過させることを特徴とする前記〔11〕または〔12〕に記載のトナー製造方法。
【0051】
〔14〕前記トナー粒子分散液を狭い間隙に通過させて、通過前後でのトナー粒子の表面組成が変化するまで該トナー粒子分散液を狭い間隙に通過させることを特徴とする前記〔11〕〜〔13〕のいずれか1項に記載のトナー製造方法。
【0052】
上記〔14〕に記載の「狭い間隙」とは、上述の線状部材より構成されるスクリーンに形成されるスリットの他に、例えば後述する図5(d)に示す様な孔からなる間隙も含まれる。また、「表面組成が変化」とは、トナー粒子表面上に残存する不純物の量が変化することを表し、具体的にはESCAによる表面分析で炭素の面積占有率が間隙通過前に対し2面積%以上変化することをいう。
【0053】
以下〔15〕に記載の構成は、上記記載のトナー製造装置あるいはトナー製造方法により得られたトナーに関する。
【0054】
〔15〕水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させて得られるトナーであって、該トナーは、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の製造装置、または、前記〔11〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の製造方法により製造され、該トナー粒子表面に存在する遊離離型剤粒子の数が、トナー粒子100個あたり3個以下であることを特徴とするトナー。
【0055】
なお、本発明では、スクリーンを形成する際に、ワイヤに代表される線状部材を所定間隔で平行に配置して形成することが好ましい。すなわち、線状部材を等間隔に配置してスクリーンを形成し、線状部材間に形成される隙間(スリット)がスクリーンのどの部分でも同じ幅を有することが好ましい。線状部材を等間隔で平行に配置することにより、線状部材の断面における輪郭部を構成する直線部分で形成されるスリットをトナー粒子が通過する時に不純物を効率よく除去できるものと推測される。
【0056】
なお、本発明でいう不純物とは、粒子の生成を行う際に用いられた水系媒体中に存在する界面活性剤や分散安定剤、或いは粒子内部に取り込まれなかった着色剤粒子や遊離離型剤等をいう。
【0057】
本発明は、水系媒体中で形成されたトナー粒子を含有する分散液を上記円筒形状を有するスクリーンに通過させることにより、トナー粒子表面から不純物を除去するものである。すなわち、円筒形状のスクリーンにおいて、円筒の外側より内側に向けてトナー粒子分散液を通過させたり、あるいは、円筒の内側より外側に向けてトナー粒子分散液を通過させる様に、トナー粒子分散液を特定の方向からスクリーンに設けられたスリットに通過させると、得られたトナー粒子を用いて画像形成を行った時に定着時の加熱によるトナーブリスターと呼ばれるトナー層破壊が発生せず、画像欠陥のない良好なトナー画像を安定して得られるトナーの提供を可能にした。
【0058】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0059】
【発明の実施の形態】
本発明は、樹脂微粒子を凝集させて得られる着色粒子を分散させた分散液から不純物を含有しないトナー粒子を製造するトナー製造技術に関する。
【0060】
すなわち、狭いスリットにトナー粒子分散液を通過させて着色粒子表面から不純物の除去を行う。そして、スリットを有するスクリーン表面を摺擦部材で摺擦させながらトナー粒子分散液のスリット通過を行うことを特徴とするトナー製造技術に関する。
【0061】
図1と図2は、本発明に係るトナー製造装置の代表例であるワイヤを円筒状に捲装してなるスクリーンにトナー粒子分散液を通過させてトナー粒子を洗浄するトナー粒子分散液通過装置1の模式図である。図1は、円筒形状のスクリーン2に対し、円筒の外側より内側に向けてトナー粒子分散液を通過させるトナー粒子分散液通過装置で、図2は、円筒の内側より外側に向けてトナー粒子分散液を通過させるトナー粒子分散液通過装置である。
【0062】
また、図3は、図1及び図2のトナー粒子分散液通過装置に用いられる円筒形状のスクリーン2と、スクリーン2を構成するワイヤが間隔を開けて配置した状態を示す模式図である。
【0063】
図1と図2に示すトナー粒子分散液通過装置1は、筐体11の内部にトナー粒子分散液を通過させる円筒状のスクリーン2を有し、該装置1内でトナー粒子分散液は図中の→で示される方向に送液される。スクリーン2は隙間22(以下スリット22とも言う。)を有しており、トナー粒子分散液がこの隙間22(スリット22)を通過する時にトナー粒子表面に付着している不純物が除去される。この様に、トナー粒子分散液通過装置1では、水系媒体中で形成された樹脂粒子であるトナー粒子を含有するトナー粒子分散液を、トナー粒子分散液入口3より装置内に搬入し、スクリーン2のスクリーン面24上よりスリット22を通過させて不純物を除去し、スリット22を通過したトナー粒子分散液はトナー粒子分散液出口4より装置外に排出される。
【0064】
次に、円筒形状のスクリーン2について、図3を用いて説明する。
本発明で用いられる円筒形状を有するスクリーン2は、ワイヤに代表される線状の固体材料(線状部材ともいう)よりなるスクリーン部材21を捲装してなる。スクリーン部材21は、その断面における輪郭部に直線部分を有することを特徴とするもので、輪郭部の直線部分がスクリーンを形成した時にトナー粒子分散液が流入する面(スクリーン面24、トナー粒子分散液流入面ともいう)を形成する。
【0065】
本発明では、スクリーン部材21を捲装してスクリーン2を形成するが、スクリーン部材21を間隔pを設けて捲装し、スクリーン部材21の間に一定の間隔を付与したスクリーン2を形成する。前記間隔pは、具体的には、10〜100μm、より好ましくは15〜50μmとなるよう設定するのが好ましい。
【0066】
次に、スクリーン2を構成するスクリーン部材21の断面形状について説明する。図4は、本発明に使用されるスクリーン部材21を構成する線状部材であるワイヤの断面形状の例を示す模式図である。
【0067】
本発明で用いられるスクリーン部材21は、図4に示す様に、断面部201の輪郭部に直線部分203を有し、直線部分203と隣接する線分部分202との間に形成されるエッジ部分204が曲面を有している。本発明では、エッジ部分204の曲率半径rは具体的には1μm〜20μmで、より好ましくは10〜18μmである。
【0068】
スクリーン部材21の断面部201の輪郭部に設けられる直線部分203は、トナー粒子分散液流入面24(スクリーン面24)と呼ばれるトナー粒子分散液がスリット22を通過する時の入口を形成する。スクリーン面24は、図1及び図2で白い矢印の延長線上に示す面である。
【0069】
前述の様に、トナー粒子分散液通過装置1内に供給されたトナー粒子分散液は、トナー粒子分散液流入面(スクリーン面)24よりスリット22を通過する時にトナー粒子表面に付着する不純物を除去しながらスクリーン2を通過する。
【0070】
本発明で使用されるスクリーン部材21は、その断面部201の輪郭部に少なくとも1つ以上の直線部分203を有するものであればよい。スクリーン部材21の断面形状としては、例えば、図4(a)のかまぼこ型(半円)形状、(b)の三角形状、(c)の台形状あるいは(d)の長円形状が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でも、図3(b)や図4(b)に示す三角形の形状を有するスクリーン部材21よりなるスクリーンは、トナー粒子分散液をスリット22に通過させた時にトナー粒子表面の不純物除去を最も効率よく行うものであることが確認されているので特に好ましい。
【0071】
本発明ではスクリーン部材21の断面部201の輪郭部におけるエッジ部分204が曲面を有することが好ましい。エッジ部分204が曲面を有する、すなわち、曲面の曲率半径の値が前述の範囲内の時、トナー粒子分散液がスリット22を通過する時にトナー粒子表面からの不純物を除去する作用が最も効果的に発現することが確認されている。エッジ部分204が所定範囲内の曲率半径を有することがトナー粒子の洗浄作用を促進させる理由は、明らかではないが、おそらく、スリット22を通過する時にトナー粒子同士の研ぎ合いが効果的に発現されることにより、トナー粒子表面に付着した不純物を効果的に除去するものと推測される。
【0072】
また、曲率半径の値が上記範囲の時、トナー粒子分散液を繰り返し通過させてもスクリーン部材21のエッジ部分204が磨耗せずに長期にわたり安定した洗浄性能を維持することが可能で、トナーブリスターによる画像欠陥が発生しないトナー画像が形成可能なトナー粒子を安定して作製することが可能である。
【0073】
次に、トナー粒子分散液のスクリーン2のスリット22を通過する仕組みについて説明する。図5は、トナー粒子分散液流入面であるスクリーン面24におけるトナー粒子分散液の通過状態を示す模式図である。図5(a)は、スクリーン部材21の断面形状が三角形状の場合で、図5(b)は、スクリーン部材21の断面形状がかまぼこ型の半円形状の場合である。また、図中の↓で示される矢印は、トナー粒子分散液中のトナー粒子Tの移動方向を表す。
【0074】
本発明では、スクリーン21の断面部201の輪郭部における直線部分203で形成されるスクリーン面24側より供給されたトナー粒子分散液が、スクリーン部材21間に形成されたスリット22を通過する。スリット22の幅pは、単独のトナー粒子Tよりも大きい。本発明では、スリット22を通過したトナー粒子Tは画像欠陥のない良好なトナー画像が得られることが見出されているが、これは、トナー粒子Tがスリット22を通過する時に、トナー粒子Tの表面に付着していた不純物が、スリット22の通過により効果的に除去されて、粒子表面に不純物のないきれいなトナー粒子Tが得られるため、達成されるものと推測される。
【0075】
図5に示す様に、トナー粒子Tはスクリーン面24側でスリット22の周辺領域に堆積し滞留し、最終的に個々のトナー粒子Tがスリット22を通過する。トナー粒子Tがスリット22の入口で堆積、滞留状態を経てスリット22を通過するのは、トナー粒子Tが大量にスリット22を通過するためと推測される。あまり妥当な表現ではないが、満員電車の乗客がわれさきに出口に殺到すると乗客がなかなか出口から出られない状態になる様に、スリット22の入口付近では大量のトナー粒子Tが相互にぶつかり合う状態を経てスリット22を通過するものと推測される。トナー粒子T同士が相互にぶつかり合ってスリット22を通過する結果、トナー粒子T同士が相互に表面を研ぎ合い、トナー粒子表面に付着している不純物をそぎ落として不純物の除去がなされるものと推測される。
【0076】
この様に、本発明に係るトナー粒子分散液通過装置1では、トナー粒子分散液がスリット22を通過する間、トナー粒子同士が相互に研ぎ合ってトナー粒子表面に付着、残存していた不純物を完全に除去するので、トナーブリスターが発生しない良好なトナー画像が安定して得られると推測される。
【0077】
また、本発明では、スクリーン部材21を相互に平行、かつ等間隔に配置してスクリーン2を形成することが好ましい。スクリーン部材21を等間隔に配置すると、スクリーン部材21間のスリット22の幅pが一定となり、各スリット22を通過するトナー粒子Tの量やトナー粒子T同士の研ぎ合いの効果にばらつきを発生させないので、通過によるトナー粒子T同士の研ぎ合いの効果を均一化させることが可能である。
【0078】
前述の様に、本発明ではスクリーン21を構成するスリット22の幅pはトナー粒子Tの径よりも大きく、具体的には、10〜100μm、より好ましくは15〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。スリット幅pの大きさにより、トナー粒子Tのスリット22における通過性と通過時に行うトナー粒子Tの相互衝突を制御することが可能である。すなわち、スリット22の幅pを狭く設定すると、スリット22を通過する際のトナー粒子T同士が研ぎ合う機会を増大させるのでトナー粒子表面に付着した不純物がより効果的に除去できると考えられる。また、スリット22の幅pをある程度の大きさに設定してトナー粒子Tがスリット22をある程度円滑に通過できる様に制御するとよい。
【0079】
本発明では、スリット22の幅pを上記範囲に設定した時にトナー粒子Tを効率よくスリット通過させるとともに、通過したトナーで画像形成を行うと、トナーブリスターによる画像欠陥がない安定したトナー画像が得られることが確認されている。
【0080】
また、本発明では、エッジ部204の曲率半径の値が、トナー粒子Tのスリット22における洗浄性能をより向上させることが確認されており、エッジ部204の曲率半径rが2μm〜12μmの時に好ましい結果が得られた。
【0081】
また、エッジ部204の曲率半径が小さいと、トナー粒子分散液を繰り返し通過させるにしたがってエッジ部204が摩耗し易くなる傾向を有することが確認されている。また、エッジ部204の曲率半径が大きくなると、スクリーン面24上のスリット22入口付近におけるトナー粒子T同士の研ぎ合いが強くなる傾向があるので、曲率半径の値があまりに大きいと通過時の研ぎ合いによりトナー粒子の耐久性に影響を与えることがある。
【0082】
また、本発明では、前述のエッジ部204の曲率半径の値がトナーの平均粒径Dv50の0.25〜5倍の値を有する時に、画像形成時にトナーブリスタによる画像欠陥のない安定したトナー画像が得られることが確認されている。
【0083】
以上の様に、本発明ではワイヤに代表されるスクリーン部材21の断面部201におけるエッジ部204が所定の曲率半径で特定される曲面を形成してなることにより、トナー粒子分散液をスクリーン2に通過させた時にスリット22におけるトナー粒子T同士の洗浄性能を向上させている。
【0084】
なお、本発明でいう曲率半径とは、例えば、社団法人 実践教育訓練研究会編機械用語大辞典(1997年初版 日刊工業新聞社発行)に記載の様に、3点を通る曲線や曲面を極限値化した時に円弧とみなし、該円弧の半径を曲率半径と言い曲率の逆数を意味する。因みに曲率とは曲線又は曲面の曲がり具合を意味するもので、例えば曲線上の任意の点Pのごく近くに点Qをとり、QをPに限りなく近づけた時の2点における接線のなす角と2点間の円弧の長さの比を極限値化して表したものである。これらの曲率や曲率半径をユークリッド空間の部分空間に対して数学的な原理に基づき算出することは、岩波理化学辞典等の曲率の項の記載が参照可能である。
【0085】
また、スクリーン部材21の材質は、トナー粒子分散液の性質によって変性や劣化をおこすものでなければ特に限定されるものではないが、大量のトナー粒子分散液を連続的かつ高速に通過させることから、ある程度の剛性を有すること、及びトナー粒子分散液中の溶存化学物質の影響を受けない耐蝕性を有すること、また、円筒形状や円盤形状に捲装加工し易い材質が好ましい。
【0086】
具体的には、ステンレス、ニッケル、チタン、ジルコニウム、モリブテン等の金属材料の他にケブラー等の高弾性高剛性を有する有機材料が挙げられる。その中でも、ステンレス及びニッケル含有量が25%以上のニッケル合金が好ましい。本発明では、スクリーン部材21の材質として、ステンレスまたはニッケル合金を選択すると、長期にわたる大量の画像形成を繰り返しても、画像欠陥のない安定したトナー画像が得られるとともにクリーニング不良が発生しない。
【0087】
また、スクリーン部材21の径(太さ)は、効果的なトナー粒子の洗浄を効果的に行う様にスリットを設けることが可能であれば特に限定されるものではない。すなわち、小径であれば小さなスペースである程度の数のスリットを設けることが可能なのでトナー粒子分散液通過装置を小型化する上で好ましく、大径になれば高強度のスクリーンが得られるので洗浄作業の高速化が期待される。
【0088】
また、スクリーン部材の具体的な例としては、ワイヤが代表的であるが、ワイヤ以外の固体部材として例えば金属板にエッチング処理を行って一定間隔のスリットを形成した板状部材でスクリーン2を形成するものが挙げられる。すなわち、本発明ではスクリーン部材としてワイヤに代表される線状部材に限定されるものではなく、円筒形状のスクリーンを形成し、かつ、スリットを形成可能なものであれば板状部材より作製したスクリーンも含まれる。
【0089】
これは、本発明では「複数のスリットからなるスクリーン」にトナー粒子分散液を通過させるが、「複数のスリットからなるスクリーン」の他の例として、メッシュスクリーンと呼ばれる、板状部材上にエッチング処理等を施してトナー粒子分散液を通過させるスリットを設けたスクリーンである。
【0090】
また、本発明ではトナー粒子分散液をスクリーン2に通過させる時のトナー粒子分散液の通過速度を12.5〜167cm/分とすると、スリット22におけるトナー粒子Tでの洗浄性能が効率よく発揮されるとともに、スクリーンに対して過大な負荷がかからないのでスクリーンの保全性の見地から好ましい。
【0091】
なお、本発明でいうトナー粒子分散液の通過速度とは、トナー粒子分散液の移動速度を測定することにより算出されるもので通常知られた流量測定装置を使用して測定される。具体的には、例えば図1のトナー粒子分散液通過装置1では、スクリーン面上方s、スクリーン面中央t、スクリーン面下方u、の3カ所の流速の平均値とする。
【0092】
流速の測定は、トナー粒子分散液をスクリーン面に通過させている状態を少なくとも1分間以上経過した後に、上記3点で中央工測社製の3次元流速計で測定する。流速値は次の式で求めた合成値とする。
【0093】
V=(Vs2+Vt2+Vu2)1/2
V :合成値
Vs:スクリーン面上方の流速値
Vt:スクリーン面中央における流速値
Vu:スクリーン下方における流速値
また、本発明では、上述したスクリーン面24におけるトナー粒子分散液の移動速度を算出する方法の他に、単位時間当たりのトナー粒子分散液供給量からトナー粒子分散液の移動速度を算出することも可能である。
【0094】
本発明では、トナー粒子分散液通過装置1のスクリーン2に周波数10〜38kHz、パワー密度0.01〜0.5W/cm2の超音波を印加して該超音波により発生する振動を付与しながらトナー粒子分散液をスクリーン2に通過させると、超音波からの振動によりトナー粒子T同士の研ぎ合いが促進され短時間でトナー粒子分散液をスリット22に通過させてもトナー粒子の洗浄が効果的に行われて、画像欠陥のない良好なトナー画像が得られる。なお、パワー密度とは、レーザ光や超音波等の波動を用いて仕事を行ったりエネルギーを付与した時の作用面における単位面積当たりの仕事量をいう。本発明では、超音波のパワー密度をW/cm2の単位で表している。
【0095】
本発明で使用される超音波発振機は、10kHz以上38kHz以下の周波数、0.01W/cm2以上0.5W/cm2以下のパワー密度を出力することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば超音波工業社製の磁歪型ニッケル振動子(ホーン型)、磁歪型チタン酸バリウム振動子(ホルダ型)等が挙げられる。なお、本発明ではスクリーン2に印加する超音波を連続的に印加する場合でも、また間欠的に繰り返し印加する場合でもよい。
【0096】
なお、超音波のパワー密度が大きいとスクリーン面24に滞留中のトナー粒子に付与される振動も大きくなるのでより短時間のトナー粒子洗浄が可能になる。
【0097】
この様に、本発明に係るトナー粒子分散液通過装置は、線状部材の断面における輪郭部の直線部分で形成されたスクリーンにトナー粒子分散液を流入させて線状部材間に形成されたスリットに通過させた時にトナー粒子T同士を衝突させ研ぎ合せることで、トナー粒子同士が効率よく洗浄されるものと推測される。
【0098】
また、本発明で使用される線状部材は、線状部材の断面における直線部分と隣接部分とで形成されるエッジ部分を曲面とすることにより、トナー粒子をスクリーンに通過させる時、スリットでのトナー粒子の洗浄を効率よく行いながら円滑な通過が可能なのでトナー粒子の洗浄作業が高速化可能である。
【0099】
また、本発明では、一度スクリーンに設けられたスリットを通過したトナー粒子を水に分散させて、この分散液を再度スクリーンに通過させてトナー粒子の洗浄を繰り返し行うものでもよい。さらには、酸やアルカリ処理といったケミカル的な洗浄手段を併用してトナー粒子分散液をスクリーンに通過させる洗浄方法を採用してもよい。
【0100】
次に本発明に係るトナーの製造方法の一例を説明する。
本発明に係るトナー製造方法は、水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得る。代表的なトナー粒子の形成方法としては、例えば特開2002−351142号公報等に開示される、水系媒体中で樹脂粒子を形成し、さらにこの樹脂粒子に着色剤粒子を会合させてトナー粒子を製造する方法が挙げられる。
【0101】
また、本発明で得られるトナー粒子を製造する方法としては、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に開示される樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法が挙げられる。すなわち、樹脂粒子と着色剤等の構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法である。
【0102】
具体的には、水中でこれらを乳化剤を用いて分散させた後、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加えて塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することによりトナー粒子を形成するものである。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0103】
また、本発明に好ましく用いられるトナー製造方法の一例としては、前述の様に特開2002−351142号公報等に開示される、重合性単量体に離型剤としてエステル化合物を含有させた後、重合性単量体を重合せしめる工程を経て形成した複合樹脂粒子と着色剤粒子とを会合させて得られるトナー粒子の製造に特に好ましく用いられる。
【0104】
なお、本発明でいう水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0105】
前述した様に、本発明では例えば樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で塩析、凝集、融着させてトナー粒子を得た後、該トナー粒子を水系媒体から分離する濾過を行うとともにトナー粒子の洗浄を行う工程(以下濾過・線上工程という)を経る。濾過・洗浄工程では、トナー粒子が分散してなる分散液から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とを施す工程である。本発明では前述したトナー粒子分散液通過装置を用いてトナー粒子の洗浄が行われる。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0106】
また、本発明では、スクリーンに設けられたスリットにトナー粒子分散液を通過させて機械的作用を利用してトナー粒子上に残存した不純物の洗浄を促進するので、トナー粒子の洗浄を繰り返し行う場合、洗浄水の使用量を従来技術よりも低減化することが可能である。
【0107】
この様に、洗浄処理されたトナー粒子は次の乾燥工程で乾燥処理される。
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0108】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0109】
上記に代表される製造方法で得られる代表的なトナー粒子としては、特開2002−351142号公報等の文献に開示される海島構造を有するトナー粒子が挙げられる。上記文献に開示されたトナー粒子は、透過型電子顕微鏡によるトナー粒子の断面写真上に輝度の異なる領域が存在することが見られる。すなわち、上述した製造方法を好ましく用いその結果得られるトナー粒子としては、図6の模式図に示す連続相中(樹脂の相)に輝度の異なる粒状の島(離型剤の相と着色剤の相)が存在する海島構造を有するものが挙げられる。
【0110】
なお、トナー粒子の製造に用いられる、重合性単量体、着色剤、離型剤などの各構成因子としては、例えば特開2002−351142号公報等に開示されるものが挙げられる。
【0111】
また、本発明に係るトナー粒子、すなわち前述のトナー粒子分散液通過装置を用いてトナー粒子の洗浄を行う工程を経て得られたトナーで画像形成を行うと、トナーブリスターが発生しないことが確認されている。
【0112】
すなわち、トナー粒子表面に水分が残存していると定着時に加えられる熱により水分が蒸発する。この時水蒸気がトナー層を破壊して画像の外に排出する結果粒上の画像抜けが発生する。しかしながら、本発明に係るトナー粒子分散液通過装置を用いて製造されたトナーではトナー粒子表面に余分な水分が残存しないので、トナーブリスターが発生しない。
【0113】
本発明により得られたトナー粒子を用いて記録紙やOHPシートなどの画像形成支持体上にトナー像を形成して該トナー像を加熱定着する方法として、例えば加熱ローラと加圧ローラよりなる定着方式が挙げられる。図7は、本発明により得られたトナーを用いる画像形成方法で使用される代表的な定着装置を示す断面図である。なお、図7はローラを用いた定着方式が開示されているが、本発明で得られたトナーは、定着時にトナー画像を加熱するものであれば前述のローラを用いた定着方式以外のどの様な定着方式にも適用可能であり、トナーブリスターを発生させない。
【0114】
この方式による定着装置は、前述の様に加熱ローラーと、これに当接する加圧ローラーとを備えている。なお、図7において、T′は転写紙(画像形成支持体)上に形成されたトナー像である。
【0115】
加熱ローラー71は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層82が芯金81の表面に形成されてなり、線状ヒーターよりなる加熱部材75を内包している。
【0116】
芯金81は、金属から構成され、その内径は10〜70mmとされる。芯金81を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
【0117】
芯金81の肉厚は0.1〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0118】
被覆層82を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などを例示することができる。
【0119】
フッ素樹脂からなる被覆層82の厚みは10〜500μmとされ、好ましくは20〜400μmとされる。
【0120】
フッ素樹脂からなる被覆層82の厚みが10μm未満であると、被覆層としての機能を十分に発揮することができず、定着装置としての耐久性を確保することができない。一方、500μmを超える被覆層の表面には紙粉によるキズがつきやすく、当該キズ部にトナーなどが付着し、これに起因する画像汚れを発生する問題がある。
【0121】
また、被覆層82を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムなどを用いることが好ましい。
【0122】
被覆層82を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。
【0123】
また、弾性体からなる被覆層82の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0124】
被覆層82を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および当該被覆層82の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果(例えば、平滑化された界面のトナー層による色再現性の向上効果)を発揮することができない。
【0125】
加熱部材75としては、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。加圧ローラー72は、弾性体からなる被覆層84が芯金83の表面に形成されてなる。被覆層84を構成する弾性体としては特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴムおよびスポンジゴムを挙げることができ、被覆層84を構成するものとして例示したシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。
【0126】
被覆層84を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満とされる。
【0127】
また、被覆層84の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0128】
被覆層84を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および被覆層84の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果を発揮することができない。
【0129】
芯金83を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
【0130】
加熱ローラー10と加圧ローラー72との当接荷重(総荷重)としては、通常40〜350Nとされ、好ましくは50〜300N、さらに好ましくは50〜250Nとされる。この当接荷重は、加熱ローラー10の強度(芯金81の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラーにあっては、250N以下とすることが好ましい。
【0131】
また、耐オフセット性および定着性の観点から、ニップ幅としては4〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
【0132】
図7に示した定着装置による定着条件の一例を示せば、定着温度(加熱ローラー10の表面温度)が150〜210℃とされ、定着線速が230〜900mm/secとする場合が挙げられる。
【0133】
この様に、本発明ではトナー粒子表面に余分な水分が全く残存していないトナー粒子を得ることが可能であるので、上述の様に定着時の加熱に起因して発生するトナーブリスターの問題がなく、画像欠陥のない良好なトナー画像を長期にわたり安定して作製することが可能である。また、本発明により得られたトナーは、トナーブリスターによる画像再現性への影響を懸念することがないので1200dpi(1インチ当たりのドット数、1インチは2.54cm)レベルの微細な細線も確実に再現することが可能でありデジタルの画像形成を繰り返し行う場合にも効果的である。
【0134】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
トナー粒子分散液の調製
トナー用樹脂粒子の製造例
〔ラテックス1HML〕
(1)核粒子の調製(第一段重合):
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコにアニオン系界面活性剤
(101) C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
7.08gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0135】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「ラテックス(1H)」とする。
(2)中間層の形成(第二段重合):
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に離型剤として、下記式で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0136】
例示化合物(19)
CH3(CH2)20COOCH2C(CH2OCO(CH2)20CH3)3
一方、アニオン系界面活性剤(上記式(101))1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記ラテックス(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させて284nmの分散粒子径を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0137】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750mlとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「ラテックス(1HM)」とする。
【0138】
前記ラテックス(1HM)を乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、ラテックスに取り囲まれなかった例示化合物(19)を主成分とする粒子(400〜1000nm)が観察された。
(3)外層の形成(第三段重合):
上記の様にして得られたラテックス(1HM)に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(1HML)」とする。
【0139】
このラテックス(1HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の質量平均粒径は122nmであった。
〔トナー粒子分散液1〕
アニオン系界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック420.0g徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製した。
【0140】
ラテックス1HML420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8に調整した。
【0141】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6〜60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った。その状態で、「コールターカウンター TA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が6.4μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて2時間加熱攪拌することにより、粒子の融着を完結させた。
【0142】
その後、30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを4.5に調整し、トナー粒子分散液を得た。なお、得られたトナー粒子分散液1を構成するトナー粒子のDv50を測定したところ、6.4μmであった。
〔スクリーンの調整、スクリーン通過工程〕
上記トナー粒子分散液を通液させるスクリーンの条件を表1に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1中のワイヤ材質として使用したNi合金は、インコロイ855(JISG4901、4902、4903、4904)である。また、SUSはSUS316である。
〔固液分離工程、乾燥工程、及び外部添加剤混合工程〕
表1に示すスクリーン通過させた各トナー粒子分散液を濾布を設置した遠心分離装置で濾過した後、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄を行い、その後、40℃の温風で乾燥したのち、外部添加剤である疎水性シリカを1質量%となるように混合して、表2に示すトナー1〜26、比較用トナー1〜4を作製した。なお、比較用トナー1〜4は、以下の手順で作製した。
比較用トナー1
上記トナー粒子分散液をスクリーン通過工程を行わずに固液分離、乾燥して、疎水性シリカを1質量%となるように添加混合して比較用トナー1を得た。
比較用トナー2〜4
トナー粒子分散液1を表2に示すスクリーンに通過させた後、固液分離、乾燥工程を経て、疎水性シリカを1質量%となるように添加混合して比較用トナー2〜4を得た。
【0145】
【表2】
【0146】
〔現像剤の調製〕
各トナーを体積平均粒径60μmのフェライトキャリアと混合し、トナー濃度が6%の二成分現像剤を得て、後述の表3に示す様に実施例1〜26、及び比較例1〜4とした。
実写評価
以下の様に条件設定したデジタル複写機(コロナ帯電、レーザ露光、反転現像、静電転写、爪分離、クリーニングブレードを有する)を用い、各現像剤を搭載してトナーブリスタの発生状況を評価するべく、ベタ黒画像におけるトナーブリスタ(画像欠陥)と網点画像上のドット抜けの有無を評価した。評価は、低温低湿環境(10℃、20%RH)で50万枚にわたる連続画像形成を行い、初期及び50万枚時のトナーブリスタの発生状況を評価したものである。
【0147】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
露光部電位を−50Vにする露光量に設定
現像条件
DCバイアス;−550V
転写極;コロナ帯電方式
また、定着装置は、図7に示す方式のもので、以下の設定条件に基づく。
【0148】
加熱ローラ:鉄の芯金を使用、該芯金上にPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を厚さ25μmに被覆してなる。表面粗さRaが0.8μm
加圧ローラ:鉄の芯金を使用し、該芯金上にHTVシリコーンゴムを被覆し、さらにその上に厚み120μmのPFAチューブを被覆してなる。表面粗さRaが0.8μm
ニップ幅:3.8mm
ニップ面圧:1.0×105Pa
線速:420mm/sec
定着温度:加熱ローラの表面温度を165℃に設定
なお、定着装置のクリーニング機構及びシリコンオイル供給機構は装着していない。
【0149】
評価項目
<画像抜けの発生>
初期及び50万枚画像形成終了時にベタ黒画像を出力し画像欠陥の有無を評価した。△以上を合格とした。
【0150】
◎ : 画像抜け(ブリスター)が全く発生せず
○ : 拡大(×50倍)観察で確認されるブリスターが数個あるが、目視では確認されない
△ : 目視観察で確認される大きさのブリスターが所々に存在する
× : 目視観察で確認される大きさのブリスターが全面に存在する。
<ドットの抜け>
50万枚の連続印字実施後、600dpiで網点画像を出力し、ドットの抜けを評価した。
ルーペ(50倍)でドットの観察を行い網点再現性の評価を行った。
【0151】
◎:ドットの抜けが全く検知されない
○:拡大(×50倍)観察では抜けが確認されたが、目視では確認されない
×:目視でドットの抜けが確認される
<帯電量の経時変化>
現像剤をセットして1枚目の画像を出したときの帯電量をQa,75万枚の画像を出したときの帯電量をQbとし、両者の比Qb/Qaを評価した。△以上を合格とした。
【0152】
◎ : Qb/Qaの値が0.9以上1.1未満
○ : Qb/Qaの値が0.8以上0.9未満又は1.1以上1.2未満
△ : Qb/Qaの値が0.7以上0.8未満又は1.2以上1.3未満
× : Qb/Qaの値が0.7未満又は1.3以上
<階調性変動>
初期相対濃度が0.3〜0.4となるパッチ画像を形成し、75万枚コピー後の濃度変化ΔDにより評価した。△以上を合格とした。
【0153】
◎ : ΔD=0.000以上0.003未満
○ : ΔD=0.003以上0.006未満
△ : ΔD=0.006以上0.01未満
× : ΔD=0.01以上
以上の結果を表3に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
表3の結果から明らかな様に、本発明に係るトナー粒子通過装置を用いて、あるいはトナー製造方法を経て得られたトナー粒子では、初期段階及び50万枚の連続画像形成後もトナーブリスター及びドットの抜けがなく、画像欠陥のない安定したトナー画像が形成されることが確認された。
【0156】
なお、本発明では、本実施例実施後、さらに150万枚、450万枚及び750万枚の連続画像形成を継続して行った。そして、上記評価項目及び感光体表面へのフィルミング発生とクリーニング性能を評価したところ、本発明に係るトナーはいずれも画像欠陥のない良好なトナー画像が安定して得られるとともに、フィルミング発生が見られず、良好なクリーニング性能が維持されることが確認された。
【0157】
【発明の効果】
本発明に係るトナー製造装置あるいはトナー製造方法では、複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンに対して、円筒の外側より内側に向けて、あるいは、円筒の内側より外側に向けてといった特定方向からのトナー粒子分散液を通過を行ってトナー粒子の洗浄を行う。この様な洗浄工程を経て得られたトナー粒子は、トナー粒子表面から残存不純物を有効かつ確実に除去されて、長期にわたり定着工程でトナーブリスターを発生させず画像欠陥のない良好なトナー画像を安定して作製することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤを円筒状に捲装し円筒の外側より内側に向けてトナー粒子分散液の通過を行うトナー粒子分散液通過装置の模式図である。
【図2】ワイヤを円筒状に捲装し円筒の内側より外側に向けてトナー粒子分散液の通過を行うトナー粒子分散液通過装置の模式図である。
【図3】円筒形状のスクリーンとワイヤを間隔を開けて配置してなるスクリーンの模式図である。
【図4】ワイヤの断面形状の例を示す模式図である。
【図5】スクリーンにトナー粒子分散液を通過させた時のトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図6】本発明で得られる代表的なトナー粒子の構造のを示す模式図である。
【図7】本発明で得られるトナーを用いた画像形成で使用される定着装置の一例を示す断面図である。
【図8】比較例4に用いたトナーを製造した円盤状のスクリーンの模式図である。
【符号の説明】
1 トナー粒子分散液通過装置
2 スクリーン部
3 トナー粒子分散液の入口
4 トナー粒子分散液の出口
21 スクリーン部材
22 スリット
24 スクリーン面(トナー粒子分散液流入面)
201 スクリーン部材の断面部
202 スクリーン部材の断面部における直線部分に隣接する線分
203 スクリーン部材の断面部における直線部分
204 スクリーン部材の断面部におけるエッジ部分
T トナー粒子
p スリット幅
r 曲率半径
Claims (15)
- 水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法に用いられるトナー製造装置であって、
該トナー製造装置は、トナー粒子分散液を通過させる複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンを有し、
該円筒形状のスクリーンの外側より内側に向けて該トナー粒子分散液を通過させるものであることを特徴とするトナー製造装置。 - 水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法に用いられるトナー製造装置であって、
該トナー製造装置は、トナー粒子分散液を通過させる複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンを有し、
該円筒形状のスクリーンの内側より外側に向けて該トナー粒子分散液を通過させるものであることを特徴とするトナー製造装置。 - 前記スクリーンは、1つ以上の直線部分を有する断面形状を有する線状の固体部材(線状部材)より形成され、
該スクリーンのトナー粒子分散液流入面は、該線状の固体部材の断面形状における直線部分より形成されてなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー製造装置。 - 前記線状部材の断面形状が、三角形の形状を有するものであって、前記三角形の頂点に該当する個所が曲面で構成されているものであることを特徴とする請求項3に記載のトナー製造装置。
- 前記線状部材の断面形状は、前記直線部分と該直線部分に隣接する線分とで形成されるエッジ部分が曲面を有し、
該曲面の曲率半径が、1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項3または4に記載のトナー製造装置。 - 前記線状部材の断面形状が、前記直線部分と該直線部分に隣接する線分とで形成されるエッジ部分で曲面を有し、
該曲面の曲率半径が、トナー粒子の平均粒径Dv50の0.25倍以上5倍以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のトナー製造装置。 - 前記スクリーンのスリット幅が、15μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
- 前記線状部材が、ニッケル合金製のものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
- 前記トナー粒子分散液が前記スクリーンを通過する時の速度が、12.5cm/分以上167cm/分以下となる様に該トナー粒子分散液の通過速度を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
- 前記スクリーンに周波数10kHz以上38kHz以下、パワー密度0.01W/cm2以上0.5W/cm2以下の超音波を印加する超音波印加装置を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のトナー製造装置。
- 水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法であって、
トナー粒子分散液を複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンに通過させて該トナー粒子を洗浄する時に、該トナー粒子分散液を該円筒形状のスクリーンの外側より内側に向けて通過させることを特徴とするトナー製造方法。 - 水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させてトナー粒子を得るトナー製造方法であって、
トナー粒子分散液を複数のスリットを有する円筒形状のスクリーンに通過させて該トナー粒子を洗浄する時に、該トナー粒子分散液を該円筒形状のスクリーンの内側より外側に向けて通過させることを特徴とするトナー製造方法。 - 前記スクリーンは、断面を構成する輪郭部に1つ以上の直線部分を有する線状部材より形成され、かつ、該輪郭部の直線部分でトナー粒子分散液を流入させる面を形成するものであって、
該線状部材を一定間隔で配置することにより形成されたスリットに該トナー粒子分散液を通過させることを特徴とする請求項11または12に記載のトナー製造方法。 - 前記トナー粒子分散液を狭い間隙に通過させて、通過前後でのトナー粒子の表面組成が変化するまで該トナー粒子分散液を狭い間隙に通過させることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載のトナー製造方法。
- 水系媒体中でトナー粒子を形成し、乾燥させて得られるトナーであって、
該トナーは、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造装置、または、請求項11〜14のいずれか1項に記載の製造方法により製造され、
該トナー粒子表面に存在する遊離離型剤粒子の数が、トナー粒子100個あたり3個以下であることを特徴とするトナー。
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