JP4140430B2 - 半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェハから切り出されシートに貼着された状態の半導体チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の電子部品の小型化に伴って半導体チップは薄型化する傾向にあり、100μm以下の極薄の半導体チップが実用化されるようになっている。しかしながら、このように薄型化した半導体チップは極めて破損しやすいことから、取り扱いが難しく、特にウェハから切り出された個片の半導体チップを取り出す作業が極めて困難になっている。
【0003】
この作業においては、シートに貼着された状態の半導体チップをシートから個片毎に剥離しながら吸着ノズルによってピックアップする動作が反復して行われるが、薄型の半導体チップに従来より用いられていた半導体チップの剥離方法、すなわちシートの下方からニードルによって半導体チップを突き上げる方法を用いると、半導体チップの割れや欠けなどの不具合が多発する。
【0004】
この不具合を解消するため、シートから半導体チップを取り出す際に、真空吸引力によってシートを半導体チップの下面から引き剥がす方法が用いられるようになっている(例えば特許文献1参照)。この方法によれば、ニードルによって半導体チップを突き上げる必要がないため、割れや欠けなどの不具合を防止することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−118862号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法では、シートを下方から真空吸引するのみではシートの剥離が困難で、シートの剥離を促進する補助手段、たとえば真空吸着面をシートの下面に対して面方向に相対移動させることによって粘着力を低下させるなどの剥離促進動作の併用を必要としている。このため、機構系の複雑な制御を必要とするとともに、各ピックアップ動作毎に複雑な動作を反復することによるタクトタイムの遅延が避けられず、高い生産性を実現することができなかった。
【0007】
そこで本発明は、薄型の半導体チップを対象として、割れや欠けなどの不具合を防止するとともに高い生産性を実現することができる半導体チップのピックアップ装置およびピックアップ方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の半導体チップのピックアップ装置は、シートに貼着された半導体チップをピックアップヘッドでピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、前記シートを保持する保持テーブルと、前記シートに貼着保持された半導体チップを撮像して認識する認識手段と、この認識手段の認識結果に基づいてピックアップ対象の半導体チップを前記ピックアップヘッドに対して相対的に位置決めする位置決め手段と、前記ピックアップ対象の半導体チップの周辺チップの配置状態を判断する判断部と、前記保持テーブルの下方に配設され前記シートの下面に吸着面を当接させてこの吸着面から真空吸引することによりシートを半導体チップから剥離するシート剥離機構と、前記吸着面を鉛直軸廻りに前記保持テーブルに対して相対的に回転させる回転駆動機構と、前記吸着面に一定方向に形成された複数の吸引溝と、隣接する前記吸引溝相互を区分するとともに真空吸引時にシートの下面に当接して支持する境界部と、前記吸引溝から真空吸引することによりシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離動作に先立って、前記境界部の方向が前記判断部によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように前記回転駆動機構を制御して吸着面を相対的に回転させる方向制御手段とを備えた。
【0009】
請求項2記載の半導体チップのピックアップ方法は、シートに貼着された半導体チップをピックアップヘッドでピックアップする半導体チップのピックアップ方法であって、ピックアップ対象の半導体チップの周辺チップの配置状態を判断する配置状態判断工程と、一定方向に形成された複数の吸引溝と隣接する前記吸引溝相互を区分するとともに真空吸引時にシートの下面に当接して支持する境界部とを有する吸着面を前記シートの下面に当接させてこの吸着面から真空吸引することによりシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離工程と、シートが剥離された半導体チップの上面を前記ピックアップヘッドによって吸着保持してピックアップする吸着保持工程とを含み、前記シート剥離工程において前記吸引溝から真空吸引することによりシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離動作に先立ち、前記境界部の方向が前記判断部によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように前記回転機構を制御して吸着面を相対的に回転させる。
【0010】
本発明によれば、吸着面に形成された吸引溝から真空吸引することによりシートに貼着された半導体チップをシートとともに撓み変形させこの撓み変形によってシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離動作に先立ち、吸引溝を区分する境界部の方向が判断部によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように回転機構を制御して吸着面を回転させることにより、薄型の半導体チップを対象として、割れや欠けなどの不具合を防止するとともに高い生産性を実現することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置の構成を示すブロック図、図2は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置のシート剥離機構の斜視図、図3は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置のシート剥離機構の部分断面図、図4は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置の吸着剥離ツールの形状説明図、図5、図6,図7,図8は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法におけるシート剥離動作の動作説明図、図9は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置の対象となるシートの部分平面図、図10は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置における周辺チップの配置パターンを示す図、図11は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置における周辺チップの配置状態検出の説明図、図12は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法のフロー図、図13,図14は本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法における周辺チップの配置状態と吸着溝の方向との関係を示す図である。
【0012】
まず図1を参照して半導体チップのピックアップ装置の構成について説明する。図1においてチップ供給部1は、XYテーブル2に立設されたブラケット3上に保持テーブル4を結合して構成されている。保持テーブル4には半導体チップ6(以下、単に「チップ6」と略記する)が多数貼着されたシート5が保持されている。
【0013】
ここで、チップ6は薄化加工された薄型チップであり、剛性が小さく撓みやすい特性を有している。シート5の材質には、撓みやすいシリコーン系の樹脂が用いられ、チップ6が貼着された状態においてシート5がチップ6とともに容易に撓み変形を生じるようになっている。後述するシート剥離動作では、この性質を利用して、シート5をチップ6ととも撓み変形させることにより、シート5をチップ6の下面から剥離するようにしている。
【0014】
保持テーブル4の下方にはシート剥離機構7が配設されている。シート剥離機構7は、シート5の下面に当接して吸引する吸着面をそなえており、シート剥離動作においては、この吸着面から真空吸引することによりシート5をチップ6ととも撓み変形させる。
【0015】
次に図2,図3を参照して、シート剥離機構7の構成について説明する。図2に示すように、シート剥離機構7は機構本体部21,機構本体部21に回転自在に保持された支持軸部21aおよび吸着剥離ツール22より構成される。吸着剥離ツール22は対象となるチップ6の形状・サイズに応じて別体で準備され、ボルト孔22e(図4参照)を用いて、ボルト23によって支持軸部21aの上面に交換自在に装着される。
【0016】
吸着剥離ツール22の上面はシート5に当接して真空吸引する吸着面22aとなっている。吸着面22aには、複数の直線状の吸引溝22bが形成されており、各吸引溝22bの底部に設けられた吸引孔22cは、支持軸部21aの内部孔21bに連通している。内部孔21bは真空吸引源25と接続されており、真空吸引源25を駆動することにより、吸引溝22bから真空吸引することができる。ここで、吸引孔22cは1つの吸引溝22bについて複数設けられており、1つの吸引孔22cが閉塞された状態にあっても、吸引溝22b内の真空吸引が可能となっている。
【0017】
機構本体部21内には、図3に示す回転駆動機構24が内蔵されており、吸着剥離ツール22は回転駆動機構24によって鉛直軸廻りに回転可能となっている。すなわち吸着剥離ツール22の吸着面22aは鉛直軸廻りに保持テーブル4に対して相対的に回転する。これにより吸着面22aの平面角度を任意の角度に設定することができ、後述するように吸引溝22bの方向を、剥離対象の矩形のチップ6の一辺に対して吸着剥離動作に最適な特定方向に設定することができるようになっている。なお、吸着剥離ツール22を回転させる替わりに、保持テーブル4をθ回転させる構成を用いてもよい。
【0018】
チップ供給部1の上方には、移動テーブル9に装着されたピックアップヘッド8が水平動自在に配設されており、シート5が剥離されたチップ6はピックアップヘッド8の吸着ノズル8aによって真空吸着によりピックアップされる。ピックアップされたチップ6は、移動テーブル9によって移動するピックアップヘッド8にて、基板保持テーブル10に載置された基板11上に実装される。
【0019】
保持テーブル4の上方には、カメラ13を備えた撮像部12が配設されている。撮像部12はシート5上の複数のチップ6を撮像し、撮像によって取得された画像データは画像認識部14に伝達される。画像認識部14は画像データを画像処理し、ピックアップ対象となるチップ6の位置を検出するとともに、当該チップの周辺チップの配置状態を判断するための認識処理を行う。この周辺チップの配置状態については後述する。撮像部12および画像認識部14は、シート5に貼着保持されたチップ6を撮像して認識する認識手段となっている。演算部15はCPUであり、記憶部16に記憶されたプログラムを実行することにより各種動作処理や演算を行う。すなわち、画像認識部14の認識結果を受け取る他、以下に説明する各部を制御する。
【0020】
記憶部16は各部の動作に必要なプログラムや認識対象のチップ6のサイズやシート5上での配列データなどの各種データを記憶する。これらのプログラムには、シート剥離機構7の吸着面22aに設けられた吸着溝22bの方向を特定方向に制御するための方向制御プログラムが含まれる。判断部17は、画像認識部14による画像認識結果または後述する配置状態データに基づき、ピックアップ対象のチップの周辺チップの配置状態を判断する。この判断結果は、後述するようにシート5上のチップ配置に応じて最良のシート剥離結果が得られるように吸着溝22bを区分する境界部22dの方向を制御する際に用いられる。
【0021】
演算部15が記憶部16に記憶された方向制御プログラムを実行することにより実現される機能は方向制御手段となっている。そしてこの方向制御手段は、吸引溝22bを区分する境界部22dの方向が判断部17によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように、回転駆動機構24を制御して吸着面22aを鉛直軸まわりに回転させるように機能する。
【0022】
表示部18は撮像されたチップ6の画像や操作・入力時の画面を表示する。操作・入力部19はキーボードなどの入力装置であり、操作入力やデータ入力を行う。機構制御部20は、ピックアップヘッド8およびピックアップヘッドを移動させる移動テーブル9、シート剥離機構7、XYテーブル2を制御する。XYテーブル2,保持テーブル4,移動テーブル9、演算部15および機構制御部20は、認識手段の認識結果に基づいてピックアップ対象のチップ6をピックアップヘッドに対して相対的に位置決めする位置決め手段となっている。
【0023】
次に図4を参照して、吸着面22aに形成された吸引溝22bの形状について説明する。図4に示すように、吸着面22aには幅B、長さLの吸引溝22bが一定方向に4列形成されている。隣接する吸引溝相互は、境界部22dによって区分されており、各吸引溝22bの内部には突起物などが設けられておらず、シート5の吸着時にシート5の撓み変形を妨げないようになっている。
【0024】
吸引溝22bの幅Bや長さLおよび溝配列数は、対象とするチップ6の大きさに応じて設定されており、吸着面22aをシート5の下面に当接させた状態において、1つのチップ6に対応する範囲が複数の吸引溝22bによって吸引されるように、しかもチップ6の端部が境界部22dの直上に位置しないように、吸引溝22dの幅Bおよび吸着面22aとチップ6との相対位置が設定される(図5参照)。
【0025】
そしてこの吸着面22aによる真空吸引に際しては、境界部22dは吸着面22aと同一面であることから、複数の吸引溝22bを区分する複数の境界部22dの上面がシート5の下面に当接して下方から支持する。すなわち、チップ6も同様にシート5を介して複数の境界部22dによって支持され、吸引過程においてチップ6の姿勢が水平に保持される。
【0026】
そしてこの状態で真空吸引を行うことにより、後述するように、シート5に貼着されたチップ6をシート5とともに撓み変形させ、この撓み変形によってシート5をチップ6の下面から剥離させる。なお、境界部22としては、各吸引溝22bを連続した仕切面で完全に区切る必要はなく、途中が途切れた不連続形状であってもよく、さらには上面が吸着面22aと同一面に位置する柱状の仕切部を点列状に設ける構成でもよい。
【0027】
この半導体チップのピックアップ装置は上記のように構成されており、次にチップ6のピックアップ工程におけるシート5の剥離動作について各図を参照して説明する。まずチップ6が貼着されたシート5を保持テーブル4に保持させる(図1参照)。次に、シート剥離機構7の吸着面22aをシート5の下面に当接させる。
【0028】
このとき、図5に示すように、剥離対象となるチップ6の辺6aに対して、吸引溝22bが予め設定された所定の角度α(この例では45゜)になるよう、シート剥離機構7の回転駆動機構24を駆動して吸着剥離ツール22の回転角度を調整する。また、チップ6の角端部6bが、境界部22dの直上に位置することなく、吸引溝22bの幅方向の略中間に位置するよう、シート5に対するシート剥離機構7の相対位置を調整する。なお、図5以降の各図面では、シート5に格子状に貼着されたチップ6のうち、当該吸着剥離動作で対象となるチップ6のみを図示して他のチップの図示は省略している。
【0029】
次いで、吸着剥離動作を実行する。まず真空吸引源25を駆動して、図6(a)に示すように、吸引孔22cから真空吸引し、シート5に貼着されたチップ6を、吸引溝22d内に凹入する形状に撓み変形させる。このときの変形挙動について、図7,図8を参照して説明する。
【0030】
図7(a)は、チップ6の支持位置と変形範囲を示している。この例では、チップ6は対角線位置を中心にして、3つの境界部22dによって下方から支持された形態となっている。そしてこの状態で真空吸引することにより、図7(b)に示すように、真空吸引によって吸引溝22bと外部との間に生じる圧力差によってチップ6には上方からの等分布押圧力が作用する。そしてこの押圧力によって、チップ6はシート5とともに下に凸の形状に撓み変形する。また、チップ6の各辺の外側のダイシング溝に対応する範囲のシート5bには、この圧力差による押圧力が直接作用する。
【0031】
上記チップ6の撓み変形は、図7(a)の平面図において各境界部22d間の斜線範囲で示すように、チップ6の1つの辺6aの外縁部から他の辺6aの外縁部にいたる範囲で、略同一の撓み形状で生じる。そしてこの撓み変形においては、チップ6とシート5との機械的性質の相違により膜方向の変位量が異なり、この結果チップ6とシート5の貼着界面5aには相対的なすべりが生じる。
【0032】
そして吸引孔22cからの吸引をさらに継続すると撓み量Dが増大して大撓み変形を生じる。これにより貼着界面5aの相対すべりは増大しチップ6とシート5の密着力が低下する。この密着力の低下につれて、図8(b)に示すように、チップ6の外縁部では貼着界面5aが部分的に分離する口開き(図中矢印で示す隙間G参照)が発生し易くなる。
【0033】
この口開きは、チップ6の外縁部のうち形状的に突形状となった角端部6bにおいて顕著に発生する。そして一旦口開きが発生すると、この部分のシート5には吸引溝22b内部との圧力差分の押圧力が作用して口開きがさらに促進される。そして口開きによりシート5から分離した角端部6bの近傍は、チップ6の弾性復元力により撓みが減少し、これによりチップ6とシート5との口開きを促進して剥離を進展させるように作用する。このようにして、口開き部位が増大することにより、吸着孔22cからの真空吸引によってシート5のみが下方に押し下げられ、図8(c)に示すように、チップ6の下面の全範囲にわたってシート5が剥離される。
【0034】
この後、さらにシート5のチップ6からの剥離が進展し、図6(b)に示すようにシート5が吸引溝22b内の吸引孔22cに吸着された状態では、チップ6は弾性復元力により撓みが消失して平面状態に復帰する。このとき、吸引溝22b内には複数の吸引孔22cが設けられているため、1つの吸引孔22cがシート5によって閉塞された場合にあっても、他の吸引孔22cから真空吸引を継続できる。この吸着剥離動作は数十ms以下の短時間のうちに完了し,極めて効率的にシートの剥離が行える。そして図6(c)に示すように、このチップ6に対して吸着ノズル8aを上下動させて取り出すことにより、チップ6のピックアップが完了する。
【0035】
上記説明したように、本実施の形態に示すシート剥離動作においては、チップ6の貼着界面における貼着力が低下してシート5との間に口開きが生じる程度にチップ6をシート5とともに大撓み変形させ、発生した口開き部位を起点として、シート5とチップ6との剥離をチップ全面に伝播させるようにしている。
【0036】
これにより、シートの剥離を促進する補助手段、たとえば真空吸着面をシートの下面に対して面方向に相対移動させることによって粘着力を低下させるなどの剥離促進動作の併用を必要とする従来の方法と比較して、極めて優れたシート剥離機構が実現される。
【0037】
すなわち、剥離動作においては単に吸着剥離ツール22の吸着面22aをシート5に当接させて真空吸引するのみでよいため、従来方法では不可欠であった機構系の複雑な制御を必要とせず、しかも各ピックアップ動作毎に複雑な動作を反復することによるタクトタイムの遅延が発生しない。これにより、薄型の半導体チップを対象として、割れや欠けなどの不具合を防止するとともに高い生産性を実現することが可能となる。
【0038】
次に、上述の吸着剥離ツール22を用いたシート剥離における境界部22dの方向と、周辺チップの配置状態との関係について説明する。図9はシート5に貼着された状態のチップ6の配置を示しており、チップ6はシート5に半導体ウェハから切り出された状態の格子配列で貼着されている。このようなチップ6をシート5から取り出す際には、取り出し順序に規則性が存在する。
【0039】
図9に示す例では、一方側の端部に位置する1つのチップ(6*で示す)を取り出し起点として、同一行において隣接するチップ6を一定方向(右方向矢印参照)に順次取り出す。そして取り出し位置が行端まで取り進んだならば次行へ移行し、この行のチップを逆方向(左方向矢印参照)に順次取り出す。すなわち、格子配列のチップ6を順次連続して取り出す過程においては、同一行における取り出し位置の移動方向が交互に入れ替わるような方法が採用される場合が多い。
【0040】
このため、同一のシート5からチップ6を取り出す過程において、チップ6の位置によってピックアップ時の支持状態、すなわち周辺チップの配置状態が異なる。そしてこの周辺チップの配置状態は、上述のシート剥離の難易度に差異を生じることが、経験的に判明している。
【0041】
本実施の形態に示すピックアップ装置においては、このようなピックアップ時の支持状態に起因するシート剥離難易度のばらつきを排除するため、以下に説明する方策を用いている。すなわち、チップ6の位置認識のための画像認識において、前述のようにピックアップ対象のチップ6の位置検出のみならず、当該チップ6の周辺チップの配置状態を画像認識によって判断し、判断された配置状態に応じて、吸着溝22bを区分する境界部22dの方向を特定方向に合わせることにより、支持状態の差異に起因するシート剥離難易度のばらつきを排除するようにしている。
【0042】
次に図10を参照して、周辺チップの配置状態について説明する。図10はシート5に貼着されたチップ6の配列のうち、3行3列の範囲のみを取り出したものである。図中の単ハッチング部はチップ6が存在する範囲を示しており、白地部分は既にチップが取り出されて存在しない部分を示している。そして複ハッチングが施されたチップ(6)は、ピックアップ対象のチップを示している。
【0043】
図10(a)は、チップ(6)の周辺が全て4辺とも隣接チップに取り囲まれた状態を示している。この状態では、チップ(6)の4辺はこれら周辺の隣接チップによって厚み方向の変位が幾分拘束された拘束辺E1となっている。実際の取り出し動作においては、図9において取り出し起点からチップを取り出す場合に、この配置状態に類似した状態が生じる。
【0044】
図10(b)は、チップ(6)の直上、左側および左斜め上方にチップ6が存在しない状態を示している。この状態では、チップ(6)の4辺のうち左辺および上辺は隣接チップによる拘束のない自由辺E2となっており、下辺および右辺は拘束辺E1となっている。この配置状態は、図9において同一行のチップを右方向に取り進んでいく場合に発生する。
【0045】
また、図10(c)に示す状態では、チップ(6)の直上、右側および右斜め上方にはチップ6が存在せず、チップ(6)の4辺のうち右辺および上辺は周辺のチップによる拘束のない自由辺E2となっており、下辺および左辺は拘束辺E1となっている。この配置状態は、図9において同一行のチップを左方向に取り進んでいく場合に発生する。
【0046】
シート5におけるチップ6の配置状態のパターンは、各格子点におけるチップ有無の組み合わせから考えれば上記3パターン以外にも幾通りかの組み合わせが可能であるが、ピックアップ動作において生じる可能性があるチップ6の4辺の拘束状態は上記3パターンが多いと考えられることから、実用上は上記3パターンを想定すれば足りる。
【0047】
次に図11を参照して、ピックアップ動作過程において周辺チップの配置状態を判断する方法について説明する。図11は、図10に示す3行3列のチップをカメラ13で撮像して得られる画像中に設定される検査ウィンドウの配置を示している。鎖線で示す枠W1は撮像視野を示しており、この撮像視野内は、ピックアップ対象となるチップ(6)を中心にして、周囲を取り囲む8個のチップ6の一部を含むように設定される。
【0048】
チップ(6)を囲むウインドウW2は、チップ(6)の位置検出用のウインドウであり、チップ(6)の内部に設定されるウインドウW3はチップ(6)の欠けなどの形状不良を検出するためのウインドウである。そしてチップ(6)の4辺に隣接するチップ6に設定されるウインドウW4は、前述の配置状態判断用のウインドウである。
【0049】
すなわち、これらの4つのウインドウW4内にチップ6の一部が検出されるか否かによって、配置状態が図10に示す3つのパターンのうちのいずれに該当するかを判断する。この判断処理は、カメラ13でシート5を撮像し得られた画像データを画像認識部14で認識処理し、この認識結果に基づいて判断部17が行う。
【0050】
次に図12を参照して、半導体チップのピックアップ方法について説明する。まず、ピックアップ対象チップおよびその周辺に隣接するチップを認識する(ST1)。そして認識結果に基づき、ピックアップ対象チップの認識結果がOKであるか否かを判断する(ST2)。ここで認識結果がOKでなければ、不良チップと判断して、ピックアップ対象を次のチップへ移動させる(ST3)。
【0051】
(ST2)にて認識結果がOKならば、隣り合う2辺に隣接するチップがなく、かつその他の辺にチップありの条件に該当するか否かを判断する(ST4)。すなわち、ピックアップ対象チップの4辺の支持状態が、隣接する2辺が自由辺で他の2辺が拘束辺となる条件に該当するか否かを判断する。この条件は、図10(b)、(c)に示す配置状態に相当する。
【0052】
ここで条件に該当しないならば、対称性により吸着溝22bの方向をチップ6のいずれの対角線の方向に合わせても自由辺または拘束辺と対角線との位置関係は同様となるので、吸着溝22bの方向の角度を予め定められた所定の角度にしてシート剥離動作を行った上でピックアップする(ST5)。例えば、図10(a)に示すような配置状態であるような場合には、予め設定された所定の角度(例えば図5(a)に示す角度α=45度またはα=135度のうち都合の良い方)にする。
【0053】
そして(ST4)にて条件に該当すると判断されたならば、吸着溝22bの方向が、周辺チップの配置状態に応じた特定方向に合うように、吸着面22aを回転させる。すなわち、ピックアップ対象のチップの4辺において、2つの自由辺が交わる点と2つの拘束辺が交わる点とを結んでできる対角線の方向に吸着剥離ツール22の吸引溝22bの方向を合わせる(ST6)。この吸着溝22bの方向合わせは、演算部15が方向制御プログラムを実行して回転駆動機構24を制御することによって行われる。
【0054】
ここで、この条件を満たす吸着溝22bの方向は、シート5におけるピックアップ対象チップの位置によって異なる。すなわち、図9に示すチップ6の配列において、ピックアップ対象のチップの取り出し位置が右方向に移動している場合には、図13(a)に示す方向となり、またこれと反対方向に移動している場合には、図13(b)に示す方向となる。すなわち、いずれの場合においても、吸着溝22bの方向は、2つの自由辺が交わる点P2と2つの拘束辺が交わる点P1とを結んでできる対角線DLの方向に合わされる。
【0055】
そしてこの状態で吸引溝22bから真空吸引することにより、チップ6を撓ませながらシート5から剥離してピックアップする(ST7)。このような条件が満たされることにより、前述のシート剥離過程(図7参照)において剥離の進展が均一に行え、安定したシート剥離結果を得ることができる。
【0056】
このような条件が満たされることにより、どのようなメカニズムによってシート剥離が安定するのかについては、次のような定性的な類推が可能である。すなわちシート剥離は、チップ6の外縁部に発生した口開きが両側から内側に向かって進展することによって行われる(図13(a)、(b)に示す矢印参照)ことから、チップ6の撓み状態の対角線DLについての対称性が確保されている方が、良好なシート剥離には望ましい。
【0057】
したがってこの撓み状態の対称性がより実現されやすい支持状態、すなわち図13(a)、(b)に示す支持状態が実現されることにより、チップ6の外縁部から内側へ向かってシート剥離がより安定して進展することになる。幾種類かのチップを対象としてシート剥離を試行した結果においても、上述の支持状態によって良好なシート剥離結果が得られることが確認されている。
【0058】
上述の半導体チップのピックアップ方法は、ピックアップ対象のチップ6の周辺チップの配置状態を判断する配置状態判断工程と、一定方向に形成された複数の吸引溝22bと隣接する吸引溝22b相互を区分するとともに真空吸引時にシート5の下面に当接して支持する境界部22dとを有する吸着面22aをシート5の下面に当接させてこの吸着面22aから真空吸引することによりシート5を複数のチップ6の下面から剥離させるシート剥離工程と、シート5が剥離されたチップ6の上面をピックアップヘッド8によって吸着保持してピックアップする吸着保持工程とを含む形態となっている。
【0059】
そしてシート剥離工程において吸引溝22bから真空吸引することによりシート5に貼着されたチップ6をシート5とともに撓み変形させこの撓み変形によってシート5を複数のチップ6の下面から剥離させるシート剥離動作に先立ち、吸引溝22bの方向が判断部17によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように、回転駆動機構14を制御して吸着面22aをチップ6に対して相対的に回転させるようにしている。
【0060】
なお上記実施の形態では、自由辺が交わる点P2と拘束辺が交わる点P1とを結んでできる対角線DLの方向に吸着剥離ツール22の吸引溝22bの方向を合わせるようにしているが、チップ6の厚みや吸引溝22bの幅などの条件の組み合わせによっては、図14に示すように、自由辺が交わる点P2と拘束辺が交わる点P1とを結んでできる対角線DLと直交する方向に、吸引溝22bの方向を合わせるようにしてもよい。
【0061】
すなわち、シート5とチップ6との剥離挙動は、チップ6の厚みや吸引溝22bの幅などの単に寸法的な要因のみならず、シート5とチップ6との貼着力や真空吸引力などの要因に複合的に依存していることから、必ずしもすべての場合について図13に示す吸着溝の方向が最良であるとは限らない。したがって、個々の具体例について最も良好に剥離が行える方向を予め試行実験によって求めておき、ピックアップ動作においてこの最適条件が実現されるように、吸着剥離ツール22の回転位置を制御するようにすればよい。
【0062】
また上記実施の形態では、カメラ13でシート5を撮像した画像を認識処理することによって周辺チップの配置状態を判断するようにしているが、同一種類のシートを対象としてピックアップ作業を継続して実行するような場合には、ピックアップ動作の都度配置状態を求める必要はない。すなわちこの場合には、既知情報として与えられるチップ配列情報と、ピックアップ順序のパターンとに基づいて、周辺チップの配置状態を予め与える配置状態データを作成し、この配置状態データに基づいて、図13(a)、(b)のいずれであるかを判断させるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、シート剥離機構7を水平方向(XY方向)に固定とし、保持テーブル4を移動させる例を示しているが、保持テーブル4を水平方向(XY方向)に固定とし、シート剥離機構7を移動させるような構成にしてもよい。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、吸着面に形成された吸引溝から真空吸引することによりシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離動作に先立ち、吸引溝を区分する境界部の方向が判断部によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように回転機構を制御して吸着面を回転させることにより、半導体チップの割れや欠けなどの不具合を防止するとともに高い生産性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置のシート剥離機構の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置のシート剥離機構の部分断面図
【図4】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置の吸着剥離ツールの形状説明図
【図5】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法におけるシート剥離動作の動作説明図
【図6】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法におけるシート剥離動作の動作説明図
【図7】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法におけるシート剥離動作の動作説明図
【図8】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法におけるシート剥離動作の動作説明図
【図9】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置の対象となるシートの部分平面図
【図10】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置における周辺チップの配置パターンを示す図
【図11】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ装置における周辺チップの配置状態検出の説明図
【図12】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法のフロー図
【図13】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法における周辺チップの配置状態と吸着溝の方向との関係を示す図
【図14】本発明の一実施の形態の半導体チップのピックアップ方法における周辺チップの配置状態と吸着溝の方向との関係を示す図
【符号の説明】
1 チップ供給部
4 保持テーブル
5 シート
6 半導体チップ
7 シート剥離機構
8 ピックアップヘッド
17 判断部
22 吸着剥離ツール
22a 吸着面
22b 吸引溝
22d 境界部
24 回転駆動機構
Claims (2)
- シートに貼着された半導体チップをピックアップヘッドでピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、前記シートを保持する保持テーブルと、前記シートに貼着保持された半導体チップを撮像して認識する認識手段と、この認識手段の認識結果に基づいてピックアップ対象の半導体チップを前記ピックアップヘッドに対して相対的に位置決めする位置決め手段と、前記ピックアップ対象の半導体チップの周辺チップの配置状態を判断する判断部と、前記保持テーブルの下方に配設され前記シートの下面に吸着面を当接させてこの吸着面から真空吸引することによりシートを半導体チップから剥離するシート剥離機構と、前記吸着面を鉛直軸廻りに前記保持テーブルに対して相対的に回転させる回転駆動機構と、前記吸着面に一定方向に形成された複数の吸引溝と、隣接する前記吸引溝相互を区分するとともに真空吸引時にシートの下面に当接して支持する境界部と、前記吸引溝から真空吸引することによりシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離動作に先立って、前記境界部の方向が前記判断部によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように前記回転駆動機構を制御して吸着面を相対的に回転させる方向制御手段とを備えたことを特徴とする半導体チップのピックアップ装置。
- シートに貼着された半導体チップをピックアップヘッドでピックアップする半導体チップのピックアップ方法であって、ピックアップ対象の半導体チップの周辺チップの配置状態を判断する配置状態判断工程と、一定方向に形成された複数の吸引溝と隣接する前記吸引溝相互を区分するとともに真空吸引時にシートの下面に当接して支持する境界部とを有する吸着面を前記シートの下面に当接させてこの吸着面から真空吸引することによりシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離工程と、シートが剥離された半導体チップの上面を前記ピックアップヘッドによって吸着保持してピックアップする吸着保持工程とを含み、前記シート剥離工程において前記吸引溝から真空吸引することによりシートを複数の半導体チップの下面から剥離させるシート剥離動作に先立ち、前記境界部の方向が前記判断部によって判断された周辺チップの配置状態に応じた特定方向となるように前記回転機構を制御して吸着面を相対的に回転させることを特徴とする半導体チップのピックアップ方法。
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