JP4140288B2 - 圧延機バックアップロール用軸受の研磨治具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延機バックアップロール用軸受の研磨治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧延機バックアップロール用軸受(バッキング軸受)は、外輪回転でロールと接触しているため、外輪外径が早期にだれたり、スリップ傷がつき、これが圧延中の板厚に影響を及ぼすために、頻繁に外輪外径の再研磨を行う必要がある。
従来、圧延機バックアップロール用軸受の外輪外径の研磨治具としては、特公昭63−41704号公報に記載のもの(以下、従来技術という)がある。従来技術の研磨治具(再研磨装置)は、内輪が嵌合される研磨治具を油圧で半径方向外方に張り出し膨脹させることにより、軸受のはめあいすきま・内部ラジアル隙間をなくした状態で、外輪に形成された係合孔を利用して外輪だけを回転させて外輪外径を高精度で研磨していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の研磨治具では、一つの研磨治具で一つのバッキング軸受しか研磨することができず、多数のバッキング軸受を研磨する場合には長い時間を要していた。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、本発明の課題は、従来技術のような油圧一体式の研磨治具を改良して、一つの研磨治具で複数の軸受を研磨できるようにするための新たな技術的手段を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、圧延機バックアップロール用軸受の内輪が嵌合する軸体を備え、当該軸体の内部に圧油が供給されることによって前記軸体の外周部を半径方向外方に張り出させる圧力油室を備えた圧延機バックアップロール用軸受の研磨治具において、
前記軸体に嵌合した複数の前記軸受の各内輪を軸方向に固定する内輪固定部と、前記各内輪の間に配置される内輪スペーサと、前記各外輪の間に配置されるとともにスペーサ用軸受を介して前記内輪スペーサに対して回転自在に設けられた外輪スペーサと、前記軸体に嵌合した複数の前記軸受の各外輪が一体的に回転するように当該各外輪を前記外輪スペーサに連結する連結部と、を備えていることを特徴とする。
【0005】
また、本発明(請求項1)は、前記軸体の内部には、前記軸体に固定される複数の軸受に対応してそれぞれ独立した複数の圧力油室が形成されているとともに、各圧力油室に通ずるそれぞれ独立した油路が形成されて各圧力油室の油圧を個別に調整可能に構成され、前記各圧力油室の油圧を個別に調整することにより、各軸受のラジアル隙間がなくなるように、前記軸体の外周部の半径方向外方への張り出し量を前記各軸受に対応して個別に調整可能となっており、
前記連結部は、前記外輪スペーサに設けられた連結ピンからなり、この連結ピンを前記外輪の対向側面に形成された係合孔に係合させて複数の前記外輪を前記外輪スペーサに連結し、この状態で、前記複数の外輪とこれらに挟まれた前記外輪スペーサを前記内輪及び前記内輪スペーサに対して相対回転させることによって当該複数の外輪が研磨可能となっていることを特徴とする。
本発明によると、軸体には、複数の軸受を軸方向に並べて嵌合させ、各内輪を固定することができる。しかも、各軸受に対応して複数の圧力油室が形成されているので、各軸受の内輪に対して半径方向外方向への張り出し力を与えることができ、複数の軸受外径を精度良くかつ効率良く研磨することができる。
【0006】
また、本発明によると、複数の軸体に対応してそれぞれ独立した複数の圧力油室と油路とが形成され、各圧力油室の油圧が個別に調整可能であるため、各軸受の個々の内輪内径寸法や内部ラジアル隙間のばらつきに対して軸体の張り出し量を調節することができ、各軸受を最適な状態で研磨することができる。
更に、本発明によると、各外輪が連結部によって連結されていることで複数の軸受外輪を同時に回転させるのが容易となる。
【0007】
また、本発明によると、各内輪の間に配置される内輪スペーサと、各外輪の間に配置されるとともにスペーサ用軸受を介して前記内輪スペーサに対して回転自在に設けられた外輪スペーサと、を備えているので、各軸受の回転精度が向上し、1個ずつ研磨するのと同等の研磨精度を確保できる。
【0008】
本発明において、前記連結部は、前記外輪スペーサに設けられた連結ピンから構成することができ、この場合、連結ピンが前記外輪の対向側面に形成された係合孔に係合することで、複数の前記軸受の外輪を前記外輪スペーサに同時に連結させることができる(請求項1)。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る研磨治具1を示しており、この研磨治具1は、複数(具体的には2個)の圧延機バックアップロール用軸受(バッキング軸受)100を分解することなく軸受組立体のまま外輪外径101bを再研磨するために用いられるものである。
ここで、研磨対象物であるバッキング軸受100は、外輪101、内輪104、ころ105を備えている。外輪101の側面101aには、円筒研削盤等の研磨機のワークヘッドに突設されたケレーが係合する係合孔101cが形成されており、ケレーが係合孔101cと係合することによって外輪101がワークヘッドと同体に回転する。
【0010】
前記研磨治具1は、軸受組立体100の内輪104が嵌合される軸体2を備えている。軸体2は、シャフト6と、シャフト6の外周に装着されたスリーブ7とを備えている。シャフト6は、円筒研削盤等の研削機の両センタ間に支持固定されるためのものである。スリーブ7は、シャフト6の軸方向中央部外周に嵌着されている。スリーブ7は、2個(複数個)のバッキング軸受100の軸方向長さより長く形成され、外周に2個のバッキング軸受100を軸方向に並べた状態で装着可能とされている。
スリーブ7の内周面には、スリーブ7に装着されるバッキング軸受100の位置に対応して軸方向に2カ所(複数箇所)の凹所が形成されており、これによって軸体2の内部に2つ(複数)の圧力油室12,12が形成されている。各圧力油室12,12は、シャフト6の外周面とスリーブ7の内周面との間の空間であって、円周方向に連続し軸方向には対応する軸受100の内輪104の寸法とほぼ見合って、後述の圧油の供給により内輪104を精度良く固定し得る長さとされている。
【0011】
2つの圧力油室12,12は、それぞれ独立しており、シャフト6内部には、各圧力油室12,12にそれぞれ通ずる2つ(複数)の油路13が設けられている。各油路13も独立しており、各圧力油室12,12に対して個別に圧油を供給することができ、各圧力油室の油圧を個別に調整することができる。シャフト6の外周面上には各油路13,13の開口端がそれぞれ位置し、これらの開口端に圧油供給装置を接続し得る圧油供給ポート14がそれぞれ設けられている。
なお、複数の圧力油室12,12の間は、O−リング15a等によってシールされて圧油の漏洩が防止されている。その他、シャフト6とスリーブ7との間には、圧油の漏洩を防止するためのO−リング15bが適宜配置されている。
【0012】
スリーブ7の軸方向一端側(図1の右側)には半径方向外方に突出した外鍔16が形成され、軸方向他端側(図1の左側)には半径方向内方に突出した内鍔17が形成されている。外鍔16には、ボルト18によって固定環状19が取り付けられ、また、内鍔17側にはスリーブ固定ナット20がシャフト6に螺合して配置されて、スリーブ7がシャフト6に対して軸方向に位置決め固定されている。
【0013】
スリーブ固定ナット20よりも軸方向外側方(図1において左方)の位置にはバッキング軸受100の内輪104を固定するための内輪固定用ナット22が設けられている。この内輪固定用ナット22は、シャフト6に形成されたねじ部6aに螺合してシャフト6に装着されており、回転させることによってシャフト6の軸方向に移動させたり、シャフト6から取り外したり、バッキング軸受100を締付固定することが可能となっている。
内輪固定用ナット22は、スリーブ7の外鍔16と対向配置されており、ナット22と外鍔16とで、2個(複数個)のバッキング軸受100,100の内輪104,104を(後述のスペーサとともに)まとめて軸方向両側から挟み込んで軸方向に位置決め固定する内輪固定部を構成している。
【0014】
各バッキング軸受100,100の間には、バッキング軸受間の間隔を確保するためのスペーサが設けられている。スペーサは、内輪104,104間に配置される環状の内輪スペーサ25と、外輪間101,101間に配置される環状の外輪スペーサ26と、内輪スペーサ25と外輪スペーサ26との間に配置された軸受(単列深溝軸受)27とを備えている。
【0015】
外輪スペーサ26は、軸受27によって内輪スペーサ25に対して回転自在である。外輪スペーサ26は、各バッキング軸受100,100の対向側面に形成された連結ピン係合孔29,29に係合して各軸受外輪101,101が一体的に回転するように軸受外輪101,101同士を連結する連結ピン(連結部)30を備えている。連結ピン30で複数の外輪101,101を連結すると、いずれかの外輪101を回転させるだけですべての外輪101を同時に回転させることができる。
なお、連結ピン係合孔29は、前記係合孔101cとは反対の側面であって、当該係合孔101cに対して周方向に180゜ずれて配置されており、係合孔29,101cを形成することによる強度低下を防止している。また、ここでは便宜上、連結ピン係合孔29と係合孔101cとを区別して説明したが、両者は同様の孔でよく、軸受100には両者29,101cを区別せずに2カ所の係合孔を形成しておけば足りる。
【0016】
また、各バッキング軸受間にはスペーサが設けられているため各外輪101の回転精度に優れ、バッキング軸受100を1個ずつ研磨するのと同様の研磨精度を確保できる。
なお、外輪スペーサ26の外径は、外輪外径の研磨を阻害しないようバッキング軸受100の外径より小さくされている。また、外輪スペーサ26が外輪101,101と接する側面にはO−リング31等の密封部材が設けられており、研磨液や異物の内部への侵入が防止されている。
【0017】
研磨治具1に2個のバッキング軸受100,100を装着するには、まず、内輪固定用ナット22を軸体2から取り外した状態で図1の左側からスペーサを挟み込んで連結した両軸受100,100を軸体2に嵌合させ、一方の軸受内輪104の一側面を外鍔16に当てる。そして、内輪固定用ナット22を装着して、両軸受100,100を挟み込むことで両軸受100,100が軸方向に固定される。
【0018】
バッキング軸受100,100が装着された研磨治具1は、研磨機に取り付けられる。そして、シャフト6の圧油供給ポート14,14に図示しない手動又は自動圧油供給装置の圧油配管をそれぞれ接続して各圧力油室12,12に圧油を供給する。各圧力油室12に圧油が供給されることで軸体外周部(スリーブ7)が半径方向外方に張り出し、さらに各内輪104が半径方向外方に張り出す。各圧力油室12,12をそれぞれ調節し、ラジアル方向隙間がなくなるようにすることで、精度よく研磨することができる。
また、油圧は個々の圧力油室12,12ごとに調節することができるので、各バッキング軸受100の個々の内輪内径寸法や内部ラジアル隙間のばらつきに対して容易に対応できる。
【0019】
そして、軸体2が回転しないように固定したまま、研磨機を駆動して係合孔101cを介して一方の外輪101を回転させると、連結ピン30で連結された他の外輪101もともに回転し、図示しない砥石によって複数の外輪外径101aを同時に再研磨することができる。
すなわち、連結ピン30を外輪101の対向側面に形成された係合孔101cに係合させて左右両側の外輪101,101を外輪スペーサ26に連結し、この状態で、各外輪101,101とこれらに挟まれた外輪スペーサ26を内輪104,104及び内輪スペーサ25に対して相対回転させることによって、当該左右両側の外輪101,101が研磨可能となっている。
【0020】
【発明の効果】
本発明によると、軸体には、複数の軸受を軸方向に並べて嵌合させ、各内輪を固定することができる。しかも、各軸受に対応して複数の圧力油室が形成されているので、各軸受の内輪に対して半径方向外方向への張り出し力を与えることができ、複数の軸受外径を精度良くかつ効率良く研磨することができる。
【0021】
また、本発明によると、複数の軸体に対応してそれぞれ独立した複数の圧力油室と油路とが形成され、各圧力油室の油圧が個別に調整可能であるため、各軸受の個々の内輪内径寸法や内部ラジアル隙間のばらつきに対して軸体の張り出し量を調節することができ、各軸受を最適な状態で研磨することができる。
【0022】
更に、本発明によると、各外輪が連結部によって連結されていることで複数の軸受外輪を同時に回転させるのが容易となる。また、各内輪の間に配置される内輪スペーサと、各外輪の間に配置されるとともにスペーサ用軸受を介して前記内輪スペーサに対して回転自在に設けられた外輪スペーサと、を備えている場合には、各軸受の回転精度が向上し、1個ずつ研磨するのと同等の研磨精度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 研磨治具の断面図である。
【符号の説明】
1 研磨治具
2 軸体
12 圧力油室
16 外鍔(内輪固定部)
22 内輪固定用ナット(内輪固定部)
25 内輪スペーサ
26 外輪スペーサ
27 単列深溝軸受
30 連結ピン(連結部)
100 バッキング軸受
101 外輪
101b 外輪外径
104 内輪

Claims (1)

  1. 圧延機バックアップロール用軸受の内輪が嵌合する軸体を備え、当該軸体の内部に圧油が供給されることによって前記軸体の外周部を半径方向外方に張り出させる圧力油室を備えた圧延機バックアップロール用軸受の研磨治具において、
    前記軸体に嵌合した複数の前記軸受の各内輪を軸方向に固定する内輪固定部と、
    前記各内輪の間に配置される内輪スペーサと、
    前記各外輪の間に配置されるとともにスペーサ用軸受を介して前記内輪スペーサに対して回転自在に設けられた外輪スペーサと、
    前記軸体に嵌合した複数の前記軸受の各外輪が一体的に回転するように当該各外輪を前記外輪スペーサに連結する連結部と、を備えており、
    前記軸体の内部には、前記軸体に固定される複数の軸受に対応してそれぞれ独立した複数の圧力油室が形成されているとともに、各圧力油室に通ずるそれぞれ独立した油路が形成されて各圧力油室の油圧を個別に調整可能に構成され、
    前記各圧力油室の油圧を個別に調整することにより、各軸受のラジアル隙間がなくなるように、前記軸体の外周部の半径方向外方への張り出し量を前記各軸受に対応して個別に調整可能となっており、
    前記連結部は、前記外輪スペーサに設けられた連結ピンからなり、この連結ピンを前記外輪の対向側面に形成された係合孔に係合させて複数の前記外輪を前記外輪スペーサに連結し、この状態で、前記複数の外輪とこれらに挟まれた前記外輪スペーサを前記内輪及び前記内輪スペーサに対して相対回転させることによって当該複数の外輪が研磨可能となっていることを特徴とする圧延機バックアップロール用研磨治具。
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