JP4140240B2 - 二次電池用のゲル電解質および二次電池,二次電池用のゲル電解質製造方法 - Google Patents

二次電池用のゲル電解質および二次電池,二次電池用のゲル電解質製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル電解質およびこれを備える二次電池,ゲル電解質製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロデバイス分野発展に伴って二次電池の更なる高エネルギー密度化が要求されている。例えば、リチウム二次電池は、正極,負極,電解質からなり、その電解質としては、安全性などの観点からゲル電解質が多く採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このゲル電解質では、保持される電解液の比率に応じて機械的強度やイオン伝導度が決定される。したがって、電解質中の電解液の比率を多くすると、イオン伝導度は向上するが、機械的強度が不足してセパレータとしての機能が発揮されずに正電極と負電極とのショートを招くおそれがある。そのため、二次電池としての信頼性が低下する場合がある。逆に、電解質中の電解液の比率を少なくすると、機械的強度が向上して前述の問題は解消するが、イオン伝導度が低下して電解質と電極との接触電気抵抗が増加するおそれがある。そのため、二次電池としての性能(出力)が低下する場合がある。
【0004】
本発明のゲル電解質およびゲル電解質製造方法は、こうした問題を解決し、二次電池としての信頼性と性能を両立させるゲル電解質を提供することを目的の一つとする。また、本発明のゲル電解質およびゲル電解質製造方法は、イオン伝導度と機械的強度とを両立させたゲル電解質を提供することを目的の一つとする。
【0005】
本発明の二次電池は、信頼性と性能を両立させることを目的の一つとする。また、本発明の二次電池は、イオン伝導度と機械的強度とを両立させたゲル電解質を用いた二次電池とすることを目的の一つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明のゲル電解質およびこれを備える二次電池,ゲル電解質製造方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の二次電池用のゲル電解質は、
含有する電解液の比率が異なる少なくとも2種類のゲル電解質を貼り合わせてなることを要旨とする。
【0008】
この本発明の二次電池用のゲル電解質では、含有する電解液の比率が異なる少なくとも2種類のゲル電解質を貼り合わせる、即ち電解液の比率が高いゲル電解質と電解液の比率が低いゲル電解質とを貼り合わせる。これにより、電解液の比率が高いゲル電解質から電解液の比率が低いゲル電解質へ電解液が移動するから、全体として十分な比率の電解液を含有する高イオン伝導度のゲル電解質とすることができると同時に、電解液の比率が低いゲル電解質の高い機械的強度により全体として十分な機械的強度を有するゲル電解質とすることができる。
【0009】
こうした本発明の二次電池用のゲル電解質において、前記少なくとも2種類のゲル電解質のうち、含有する電解液の比率が低いゲル電解質を、含有する電解液の比率が高いゲル電解質により挟持してなるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の二次電池用のゲル電解質において、前記少なくとも2種類のゲル電解質のうちの一のゲル電解質は、40〜60量%の電解液を含有するゲル電解質であり、前記少なくとも2種類のゲル電解質のうちの他のゲル電解質は、85〜95量%の電解液を含有するゲル電解質であるものとすることもできる。この態様の本発明の二次電池用のゲル電解質において、前記一のゲル電解質は、5量%の電解液を含有するゲル電解質であり、前記他のゲル電解質は、9量%の電解液を含有するゲル電解質であるものとすることもできる。
【0011】
本発明の二次電池は、
上記各態様の本発明のゲル電解質を備えることを要旨とする。
【0012】
この本発明の二次電池では、全体として十分な比率の電解液を含有すると共に十分な機械的強度を有するゲル電解質を組み込む二次電池としたから、信頼性と性能を両立する二次電池とすることができる。
【0013】
本発明の第1の二次電池用のゲル電解質製造方法は、
所定比率以上の電解液を含有する二次電池用のゲル電解質を製造する方法であって、
前記所定比率よりも少ない比率の電解液を含有する第1のゲル電解質を作製すると共に前記所定比率よりも多い比率の電解液を含有する第2のゲル電解質を作製する第1の工程と、
作製された前記第1のゲル電解質と前記第2のゲル電解質とを貼り合わせる第2の工程と
を備えることを要旨とする。
【0014】
この本発明の第1の二次電池用のゲル電解質製造方法では、所定比率よりも低い比率の電解液を含有する第1のゲル電解質を作製すると共に所定比率よりも高い比率の電解液を含有する第2のゲル電解質を作製して、両ゲル電解質を貼り合わせることにより、所定比率以上の電解液を含有するゲル電解質を作製する。したがって、電解液の比率が高い第2のゲル電解質から電解液の比率が低い第1のゲル電解質へ電解液が移動するから、全体として所定比率以上の電解液を含有する高伝導度のゲル電解質を作製することができると同時に、電解液の比率が低い第1のゲル電解質の高い機械的強度により全体として十分な機械強度を有するゲル電解質を提供することができる。
【0015】
本発明の第2の二次電池用のゲル電解質製造方法は、
所定比率以上の電解液を含有する二次電池用のゲル電解質を製造する方法であって、
前記所定比率よりも少ない比率の電解液を含有するゲル電解質を作製する第1の工程と、
該作製されたゲル電解質に電解液を再充填して前記所定比率以上の電解液を含有させる第2の工程と
を備えることを要旨とする。
【0016】
この本発明の第2の二次電池用のゲル電解質製造方法では、所定比率よりも少ない比率の電解液を含有するゲル電解質を作製し、該作製されたゲル電解質に電解液を再充填して所定比率以上の電解液を含有させることにより、ゲル電解質を作製する。したがって、電解液の比率が低いゲル電解質へ電解液が移動するから、全体として所定比率以上の電解液を含有する高伝導度のゲル電解質を作製することができると同時に、電解液の比率が低いゲル電解質の高い機械的強度により、電解液の再充填後も十分な機械的強度を有するゲル電解質を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である二次電池20の構成の概略を示す構成図である。実施例の二次電池20は、例えば、リチウム二次電池として構成されており、図示するように、
膜状のゲル電解質22と、ゲル電解質22を狭持する正極活物質30,負極活物質32と、正極活物質30,負極活物質32に各々取り付けられた正側集電電極34,負側集電電極36と、正側集電電極34,負側集電電極36に各々リード線38,40を介して電気的に接続された正側端子42,負側端子44とを備える。この実施例の二次電池20では、ゲル電解質22,正極活物質30,負極活物質32とからなる単電池を複数積層して構成した積層型の二次電池とすることもできるし、巻回して構成した巻回型の二次電池とすることもできる。
【0018】
ゲル電解質22は、各々含有する電解液の比率が異なる2種類の膜状の第1,第2ゲル電解質24,26から構成、より具体的には、電解液の含有率の高い(例えば、85〜95量%、好ましくは9量%の含有率)2つの第1ゲル電解質24により、電解液の含有率の低い(例えば、40〜60量%、好ましくは5質量%の含有率)第2ゲル電解質26を挟持して構成されている。ゲル電解質は、含有する電解液の比率が高いと高いイオン伝導度および低い機械的強度をしめし、含有する電解液の比率が低いと低いイオン伝導度および高い機械的強度をしめすから、ゲル電解質22は、高いイオン伝導度と低い機械的強度をもつ2つの第1ゲル電解質24により、低いイオン伝導度と高い機械的強度をもつ第2ゲル電解質を挟持して構成されている。図2は、こうしたゲル電解質22の製造工程の一例を示す工程図である。ゲル電解質22の製造工程は、電解液の含有率の高い2つの第1ゲル電解質24を作製すると共に(工程S10)、電解液の含有率の低い第2ゲル電解質26を作製し(工程S12)、両ゲル電解質24,26を交互に貼り合わせることにより(工程S14)完成する。
【0019】
ここで、電解液の含有率の高い、即ち伝導度の高いゲル電解質24は、例えば、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを3:7の体積比で混合した有機溶媒中にLi(CF3SO22を0.75mol/l溶かした電解液と、ポリエチレンオキサイド(PEO)のトリアクリレートのゲル材料と、刺激性重合開始剤と、を所定の割合(90:10:1の重量比)で混合した溶液を樹脂フィルム上にドクターブレード法を用いて塗布した後、UV線を所定時間(1分程度)照射することにより電解質膜として作製することができる。なお、電解液としては、公知の種々のものを用いるものとしてもよく、ゲル材料としては、電解液との混合後、熱や紫外線により架橋可能な種々のものを用いるものとしてもよい。これは、電解液の含有率の低いゲル電解質26についても同様である。また、ゲル電解質24は、電解質膜として作製するものとしてもよいし、正負極活物質30,32上に直接担持させるものとしてもよい。
【0020】
一方、電解液の含有率の低い、即ち機械的強度の高いゲル電解質26は、例えば、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを3:7の体積比で混合した有機溶媒中にLi(CF3SO22を0.75mol/l溶かした電解液と、ポリエチレンオキサイド(PEO)のトリアクリレートのゲル材料と、刺激性重合開始剤と、を所定の割合(50:50:1の重量比)で混合した溶液を、樹脂フィルム上にドクターブレード法を用いて塗布した後、UV線を所定時間(2分程度)照射することにより作製することができる。
【0021】
上記手法により作製されたゲル電解質22の伝導率の変化についての実験結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0004140240
表1に示すように、電解液の含有率の高い即ち高伝導度のゲル電解質24と電解液の含有率の低い即ち高強度のゲル電解質26とを貼り合わせたときには、貼り合わせる前のゲル電解質(電解液の含有率の低いゲル電解質26の伝導度に依存する)に対して、イオン伝導度が大きく(4倍)向上しており、全体としてのゲル電解質22のイオン伝導度が二次電池用のゲル電解質として必要なイオン伝導度約1mS/cmを大きく超えていることがわかる。同時に、ゲル電解質22は、高機械的強度のゲル電解質26により十分な機械的強度を維持することができる。
【0022】
以上説明した実施例の二次電池20では、電解液の含有率の高い、即ち伝導度の高いゲル電解質24と、電解液の含有率の低い、即ち機械的強度の高いゲル電解質26とを貼り合わせてゲル電解質22を形成したから、機械的強度を保持しつつイオン伝導度の高いゲル電解質、即ち、機械的強度とイオン伝導度とを両立したゲル電解質を備える二次電池とすることができる。この結果、高い信頼性と性能とを合わせもつ二次電池とすることができる。
【0023】
実施例の二次電池20では、ゲル電解質22を、電解液の含有率の高い2つの第1ゲル電解質24により電解液の含有率の低い第2ゲル電解質26を挟持して構成するものとしたが、電解液の含有率の高いゲル電解質と電解液の含有率の低いゲル電解質とを貼り合わせた構成であれば、種々の態様を採用することができる。また、実施例の二次電池20では、第1ゲル電解質24,第2ゲル電解質26の2種類のゲル電解質を貼り合わせることによりゲル電解質22を形成するものとしたが、互いに含有する電解液の比率が異なる3種類以上のゲル電解質を貼り合わせてゲル電解質を形成するものとしても構わない。
【0024】
実施例の二次電池20では、電解液の含有率の高いゲル電解質24と、電解液の含有率の低いゲル電解質26とを貼り合わせてゲル電解質22を形成するものとしたが、電解液の含有率の低いゲル電解質に更に電解液を充電して最終的なゲル電解質を形成するものとしても構わない。図3は、ゲル電解質の製造工程の他の例を示す製造工程図である。ゲル電解質は、電解液の含有率の低い(機械的強度の高い)ゲル電解質を作製し(工程S20)、作製されたゲル電解質に電解液を再充填して(工程S22)完成する。
【0025】
ここで電解液の含有率の低いゲル電解質は、実施例の二次電池20のゲル電解質26と同一のものを用いることができる。また、再充填する電解液は、再充填する前のゲル電解質に含まれる電解液と同じものあるいはそれと同種のものを用いる。また、工程S22における再充填の手法としては、例えば、図4に示すように、電解液の含有率の低いゲル電解質を予め電解液が充填されている電解液槽に直接浸漬したり、図5に示すように、電解液の含有率の低いゲル電解質を正負電極と共に予め二次電池として組み付けておきその後に電解液を充填したりすることにより行なうことができる。
【0026】
以下に、上記のゲル電解質に電解液を再充填する前と後でのイオン伝導度の変化についての実験結果を示す。
【表2】
Figure 0004140240
表2に示すように、電解液の含有比率の低い(50量%)ゲル電解質に電解液を再充填すると、イオン伝導率が大きく(5倍)向上(3mS/cm)しており、二次電池用のゲル電解質として最低限必要なイオン伝導度約1mS/cmを大きく超えていることがわかる。しかも、電解液の含有率の低いゲル電解質は、高い機械的強度を有するため、電解液の再充填によっても十分な強度を維持することができる。
【0027】
したがって、変形例の二次電池でも、実施例の二次電池20と同様の効果を奏することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明のこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である二次電池20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】 実施例の二次電池20のゲル電解質22の製造工程の一例を示す製造工程図である。
【図3】 変形例の二次電池のゲル電解質の製造工程の一例を示す製造工程図である。
【図4】 電解液の含有率が低いゲル電解質に電解液の再充填する様子の一例を示す図である。
【図5】 電解液の含有率が低いゲル電解質の電解液を再充填する様子の他の例を示す図である。
【符号の説明】
20 二次電池、22 ゲル電解質、24 第1ゲル電解質、26 第2ゲル電解質、30 正極活物質、32 負極活物質、34 正側集電電極、36 負側集電電極、38,40 リード線、42 正側端子、44 負側端子。

Claims (5)

  1. 含有する電解液の比率が異なる少なくとも2種類のゲル電解質を貼り合わせてなる二次電池用のゲル電解質であって、
    前記少なくとも2種類のゲル電解質のうち、含有する電解液の比率が低い一のゲル電解質を、含有する電解液の比率が高い他のゲル電解質により挟持してなり、
    前記一のゲル電解質は、40〜60量%の電解液を含有するゲル電解質であり、
    前記他のゲル電解質は、85〜95量%の電解液を含有するゲル電解質である
    二次電池用のゲル電解質。
  2. 請求項1記載の二次電池用のゲル電解質であって、
    前記一のゲル電解質は、5量%の電解液を含有するゲル電解質であり、
    前記他のゲル電解質は、9量%の電解液を含有するゲル電解質である
    二次電池用のゲル電解質。
  3. 請求項1または2記載のゲル電解質を備える二次電池。
  4. 所定比率以上の電解液を含有する二次電池用のゲル電解質を製造する方法であって、
    前記所定比率よりも低い比率の電解液を含有する第1のゲル電解質を作製すると共に前記所定比率よりも高い比率の電解液を含有する第2のゲル電解質を作製する第1の工程と、
    作製された前記第1のゲル電解質と前記第2のゲル電解質とを貼り合わせる第2の工程と
    を備える二次電池用のゲル電解質製造方法。
  5. 所定比率以上の電解液を含有する二次電池用のゲル電解質を製造する方法であって、
    前記所定比率よりも低い比率の電解液を含有するゲル電解質を作製する第1の工程と、
    該作製されたゲル電解質に電解液を再充填して前記所定比率以上の電解液を含有させる第2の工程と
    を備える二次電池用のゲル電解質製造方法。
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